説明

樹脂スタンパー、その製造方法

【課題】寿命の長い樹脂スタンパーを形成する。
【解決手段】第1次型締め力で型締めを行った後、第1の型締め力に対し1/7ないし1/25の第2次型締め力で型締めを行なって、熱硬化性樹脂を2段階で加圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録層表面にディスクリートトラックを有する磁気記録媒体の製造プロセスに使用される樹脂スタンパー、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気記録媒体の記録密度を向上するために、記録トラック同士を物理的に分離したディスクリートトラックレコーディング媒体(DTR媒体)が提案されている。
【0003】
このDTR媒体の製造する過程で、磁気記録層表面に塗布されたレジストに対してインプリントスタンパを押し付け、レジストに凹凸パターンを転写し、さらに、このレジストをマスクとして磁気記録層を加工する(例えば特許文献1参照)。
【0004】
従来、このようなインプリントスタンパとしては、電鋳プロセスにより作製されたNiスタンパが、ファザースタンパ、マザースタンパまたはサンスタンパとして用いられていた。しかし、電鋳プロセスを用いた場合、Niスタンパ1枚あたり1時間程度の長い作製時間がかかり、またNiスタンパは寿命が短く大量生産には適していないという問題があった。これに対して、電鋳プロセスにより、ファザースタンパとして最初のNiスタンパを作製し、その後に作成されるマザースタンパまたはサンスタンパは、射出成形プロセスを用いて作製すれば、1枚当たり数秒程度の短い作製時間で樹脂スタンパが得られる。
【0005】
このような射出形成プロセスは、これまで光ディスクの作製に使用されてきた。
【0006】
例えば2枚の成形基板を貼り合わせたDVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスクでは、少なくとも1枚の成形基板にトラックピッチ300nm以上の凹凸パターンが形成され、この凹凸を含む厚さ30μm以上の光記録層が成膜されている。
【0007】
しかし、DTR媒体では、トラックピッチ、凹凸高さ共に100nm以下のパターンを形成する。このように、データが高密度化されトラックが微細になると、レジストパターンの転写、剥離により樹脂スタンパの寿命が低下しやすかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−157520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、低コストで寿命の長い樹脂スタンパーを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の樹脂スタンパーは、磁気記録媒体の磁気記録層をドライエッチングして、該磁気記録層の表面に凹凸パターンからなるディスクリートトラックを形成するためのマスクとして使用される紫外線硬化性樹脂に、該凹凸パターンを転写するための樹脂スタンパーであって、
該磁気記録媒体の中心孔の孔径よりも3mm以上小さい孔径を持つ中心孔を有することを特徴とする。
【0011】
樹脂スタンパーの製造方法は、磁気記録媒体の磁気記録層をドライエッチングして、該磁気記録層の表面に凹凸パターンからなるディスクリートトラックを形成するためのマスクとして使用される紫外線硬化性樹脂に、該凹凸パターンを転写するための樹脂スタンパーの製造方法であって、
固定側金型上に凹凸パターンを有する原盤を設け、該固定側金型上に移動側金型を合わせて配置し、該原盤と該移動側金型と間のキャビティー内に溶融した射出成形樹脂材料を射出し、第1次型締め力で型締めを行った後、該第1の型締め力に対し1/7ないし1/25の第2次型締め力で型締めを行なって、該射出成形樹脂材料を2段階で加圧し、冷却することにより樹脂を成形し、成形された樹脂に中心孔を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明を用いると、低コストで寿命の長い樹脂スタンパーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】磁気ディスクの製造工程の一例を表す図
【図2】射出成形プロセスの一例を表す図
【図3】射出成形プロセスの一例を表す図
【図4】射出成形プロセスの一例を表す図
【図5】樹脂スタンパー中心孔径と転写パターン深さとの関係を表す図
【図6】樹脂スタンパー中心孔径と高次偏芯量との関係を表す図
【図7】樹脂スタンパー外径と基板の反りとの関係を表す図
【図8】樹脂スタンパー中心孔径と転写パターン深さとの関係を表す図
【図9】樹脂スタンパー中心孔径と高次偏芯量との関係を表す図
【図10】樹脂スタンパー外径と基板の反りとの関係を表す図
【図11】型締め比と偏芯量との関係を表す図
【図12】型締め比と偏芯量との関係を表す図
【図13】型締め比と偏芯量との関係を表す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の樹脂スタンパーは、磁気記録媒体の磁気記録層をドライエッチングして、該磁気記録層の表面に凹凸パターンからなるディスクリートトラックを形成するためのマスクとして使用される紫外線硬化性樹脂に、凹凸パターンを転写する際に適用される。この樹脂スタンパーは、ドライエッチングに供される磁気記録媒体の中心孔の孔径よりも3mm以上小さい孔径を持つ中心孔を有する。
【0015】
また、本発明の樹脂スタンパの製造方法は、磁気記録媒体の磁気記録層をドライエッチングして、該磁気記録層の表面に凹凸パターンからなるディスクリートトラックを形成するためのマスクとして使用される紫外線硬化性樹脂に、該凹凸パターンを転写する際に適用される樹脂スタンパーの製造方法である。この方法は、固定側金型上に凹凸パターンを有する原盤を設け、固定側金型上に移動側金型を組み合わせて配置し、該原盤と該移動側金型と間のキャビティー内に溶融した射出成形樹脂材料を射出し、加圧し、冷却することにより樹脂を成形し、成形された樹脂に中心孔を設けることを含み、射出成形樹脂材料の加圧は、第1次型締め力で型締めを行った後、該第1の型締め力に対し1/7ないし1/25の第2次型締め力で型締めを行なうことにより、2段階で行われることを特徴とする。
【0016】
ディスクリートトラック媒体の製造方法において、磁気記録媒体の磁気記録層をドライエッチングして、磁気記録層の表面に凹凸パターンからなるディスクリートトラックを形成するためのマスクとして使用される紫外線硬化性樹脂に、凹凸パターンを転写する場合に、Niスタンパー(マザースタンパー)から射出成形により樹脂スタンパーを複製し、その樹脂スタンパーと磁気記録層を紫外線硬化樹脂を介して真空貼り合わせを行い、紫外線照射により紫外線硬化樹脂を硬化させた後樹脂スタンパーと剥離することにより、パターン転写させる方法を用いることがコスト低減可能で微細化に適している。
【0017】
本発明の樹脂スタンパーを用いると、この樹脂スタンパーの中心孔の孔径をドライエッチングに供される磁気記録媒体の中心孔の孔径よりも3mm以上小さくすることにより、偏芯量が少なく、真空貼り合わせと剥離の繰り返しに対する耐久性をもつ、寿命の長い樹脂スタンパを得ることが出来る。
【0018】
本発明の樹脂スタンパー外径を、磁気記録媒体の外径よりも7mm以上大きくすることができる。これにより、さらに、樹脂スタンパーの反りの発生を抑制することが出来る。
【0019】
また、本発明の樹脂スタンパーの製造方法を用いると、射出成形樹脂材料の加圧を所定の比率で2段階で行うことにより、偏芯量が少なく、真空貼り合わせと剥離の繰り返しに対する耐久性を向上し、寿命の長いを得ることが出来る。
【0020】
また、この方法において、樹脂スタンパーの中心孔を、該磁気記録媒体の中心孔の孔径よりも3mm以上小さくすることができる。
【0021】
さらに、この方法において、さらに樹脂スタンパー外径は、磁気記録媒体の外径よりも7mm以上大きくすることができる。
【0022】
本発明によれば、磁気記録媒体の製造コスト低減可能であり高データ密度化が可能である。上述のように、樹脂スタンパーの内径は磁気ディスク原料媒体の内径よりも3mm以上小さくし、外径は7mm以上大きくするのが良好である。より好ましくは樹脂スタンパーの内径を6.5mmから7.5mmの範囲に設定し、外径70mmから78mmの範囲に設定することで高品質な磁気記録媒体の製造が可能である。
【0023】
本発明に使用できる射出成形材料としては、例えば日本ゼオン社製 環状オレフィンポリマー ZEONOR 1060R、及び帝人化成製 ポリカーボネート材AD5503等があげられる。
【0024】
本発明に使用できる紫外線硬化樹脂材料は、モノマー、オリゴマー、重合開始剤を含む。溶媒は含まない。
【0025】
本発明に使用される紫外線硬化性樹脂材料は、モノマー、オリゴマー、接着剤、重合開始剤を混合してなってもよい。モノマーやオリゴマー材料は複数種類を混合しても良い。
【0026】
モノマー材料としては、下記のようなものが使われる。
【0027】
・アクリレート類
ビスフェノールA・エチレンオキサイド変性ジアクリレート(BPEDA)
ジペンタエリスリトールヘキサ(ペンタ)アクリレート(DPEHA)
ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート(DPEHPA)
ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)
エトキシレイテドトリメチロールプロパントリアクリレート(ETMPTA)
グリセリンプロポキシトリアクリレート(GPTA)
4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)
2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)
2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)
イソボルニルアクリレート(IBOA)
ポリエチレングリコールジアクリレート(PEDA)
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)
テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)
トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)
・メタクリレート類
テトラエチレングリコールジメタクリルレート(4EDMA)
アルキルメタクリレート(AKMA)
アリルメタクリレート(AMA)
1,3-ブチレングリコールジメタクリレート(BDMA)
n-ブチルメタクリレート(BMA)
ベンジルメタクリレート(BZMA)
シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)
ジエチレングリコールジメタクリレート(DEGDMA)
2-エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)
グリシジルメタクリレート(GMA)
1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA)
2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA)
イソボルニルメタクリレート(IBMA)
ラウリルメタクリレート(LMA)
フェノキシエチルメタクリレート(PEMA)
t-ブチルメタクリレート(TBMA)
テトラヒドロフルフリルメタクリレート(THFMA)
トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPMA)
特に、イソボルニルアクリレート(IBOA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(NPDA)、
エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(TITA)などが粘度10CP以下にすることができるため良好である。
【0028】
オリゴマー材料としては、例えばウレタンアクリレート系材料、たとえば、ポリウレタンジアクリレート(PUDA)やポリウレタンヘキサアクリレート(PUHA)、その他、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、フッ化ポリメチルメタクリレート(PMMA−F)、ポリカーボネートジアクリエート、フッ化ポリカーボネートメチルメタクリレート(PMMA−PC−F)などが使われる。
【0029】
重合開始剤としては、チバガイギー社製 イルガキュア184及びチバガイギー社製 ダロキュア1173などが使われる。
【0030】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0031】
図1に、本実施例に使用される磁気ディスクの製造工程を示す
ディスクは半径9mm〜22mmのデータゾーンにおいて、トラック密度が325kTPI(track per inch、78nmトラックピッチに相当)である。
【0032】
このようなサーボ領域を有する磁気ディスクを製造するには、磁気ディスク上の磁性層パターンと対応する凹凸パターンを有するスタンパを用いてインプリントを行う。なおインプリントおよびその後の加工によって形成された磁性層の凹凸パターンは非磁性体材料によってその凹部が埋め込まれ、表面が平坦化されていても構わない。
【0033】
以下、本実施例に使用される磁気ディスクの製造方法を説明する。
まず、本発明に係る樹脂スタンパを作製した。
スタンパの型となる原盤の基板として6インチ径のSiウエハーを用意した。一方、日本ゼオン社製のレジストZEP−520Aをアニソールで2倍に希釈し、0.05μmのフィルタでろ過した。Siウエハー上にレジスト溶液をスピンコートした後、200℃で3分間プリベークして、厚さ約50nmのレジスト層を形成した。
【0034】
ZrO/W熱電界放射型の電子銃エミッターを有する電子ビーム描画装置を用い、加速電圧50kVの条件で、Siウエハー上のレジストに所望のパターンを直接描画した。描画時にはサーボパターン、バーストパターン、アドレスパターン、トラックパターンを形成するための信号と、描画装置のステージ駆動系(少なくとも一方向の移動軸の移動機構と回転機構とを有する、いわゆるX−θステージ駆動系)へ送る信号と、電子ビームの偏向制御信号とを同期させて発生する信号源を用いた。描画中は線速度500mm/秒のCLV(Constant Linear Velocity)でステージを回転させるとともに、半径方向にもステージを移動させた。また、1回転毎に電子ビームに偏向をかけて、同心円をなすトラック領域を描画した。なお、1回転あたり7.8nmずつ送り、10周で1トラック(1アドレスビット幅に相当)を形成した。
【0035】
SiウエハーをZED−N50(日本ゼオン社製)に90秒間浸漬してレジストを現像した後、ZMD−B(日本ゼオン社製)に90秒間浸漬してリンスを行い、エアーブローにより乾燥させ、レジスト原盤を作製した。
【0036】
レジスト原盤5上にスパッタリングによってNiからなる導電膜を形成した。具体的には、ターゲットに純ニッケルを使用し、8×10−3Paまで真空引きした後、アルゴンガスを導入して圧力を1Paに調整したチャンバー内で400WのDCパワーを印加して40秒間スパッタリングを行い、厚さ約10nmの導電膜を成膜した。
【0037】
導電膜をつけたレジスト原盤をスルファミン酸ニッケルメッキ液(昭和化学(株)製、NS−160)に浸漬し、90分間Ni電鋳して、厚さ約300μmの電鋳膜を形成した。電鋳浴条件は次の通りである。
【0038】
スルファミン酸ニッケル:600g/L
ホウ酸:40g/L
界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム):0.15g/L
液の温度:55℃
pH:4.0
電流密度:20A/dm
【0039】
レジスト原盤から、電鋳膜および導電膜をレジスト残渣がついた状態で剥離した。酸素プラズマアッシングによりレジスト残渣を除去した。具体的には、酸素ガスを100ml/分で導入して圧力を4Paに調整したチャンバー内で100Wのパワーを印加して20分間プラズマアッシングを行った。図1(a)に示すように、こうした導電膜および電鋳膜を含むファザースタンパ1を得た。その後、さらに電鋳を行い、図1(b)に示すようなマザースタンパー2を複製し、マザースタンパ2の不要部を金属刃で打ち抜くことにより射出成形用スタンパ3を得た。
【0040】
このマザースタンパー2から射出成形装置により樹脂スタンパー3を複製した。射出成形樹脂材料として、例えば日本ゼオン製環状オレフィンポリマーZEONOR 1060Rを使用することができる。あるいは、帝人化成製 ポリカーボネート材AD5503を使用することが出来る。
【0041】
射出成形装置による樹脂スタンパーの複製を更に詳しく説明する。
【0042】
図2ないし4に、射出成形装置により樹脂スタンパを形成する射出成形プロセスの一例を表す図を示す。
【0043】
図2に示すように、本発明に用いられる樹脂スタンパの製造には、中心cを持つ円盤状の可動式金型10と、この可動式金型10に対向して中心cと同心上に設けられた円盤状の固定式金型20とを使用することができる。
【0044】
可動式金型10は、その中心部に、成形後に得られる樹脂スタンパの中心孔を打ち抜くためのカットパンチ11が設けられている。可動式金型10の固定式金型20との対向面には、その周縁部に沿ってキャビティーリング12が設けられ、可動式金型10と固定式金型20とを密着した時に、可動式金型10と固定式金型20との間に所定のキャビティーが得られるようになっている。
【0045】
固定式金型20は、その中心部に、樹脂スタンパへ凹凸パターンを転写するための例えばNiスタンパ等の金属スタンパ2の中心孔に嵌合し得る寸法形状を有するスタンパホルダ15と、スタンパホルダ15内を貫通し、射出成形樹脂材料を注入するためのスプルブッシュ13とを有する。スプルブッシュ13のキャビティー側にはカットパンチ11の外形形状に沿って加工されたカットパンチ受け16が設けられている。スタンパホルダ15には金属スタンパ2がはめ込まれている。
【0046】
図3に示すように、可動式金型10を矢印aの方向に移動して、可動式金型10と固定式金型20を合わせた後、矢印bの方向から樹脂注入孔17を通して可動式金型10と固定式金型20の間に樹脂材料を注入すると共に、矢印aの方向に第1の型締め力で型締めを行い、その後第1の型締め力に対し1/7ないし1/25の第2次型締め力で型締めを行なうことにより2段階で樹脂材料を加圧し、冷却する。射出成形では溶融した樹脂材料を注入し圧力をかけることにより、ナノオーダーの微細パターンでも転写が可能である。
【0047】
その後、可動式金型10と固定式金型20を離型することにより、図4に示すように金属スタンパ14の凹凸パターンが転写された樹脂スタンパ3を形成することができる。
【0048】
次に、図1に示すように、この樹脂スタンパ3を用いて磁気ディスクを作製した。
【0049】
図1(g)に示す1.8インチ径のドーナツ型ガラスからなるディスク基板4上に、図1(h)に示すように、スパッタリングにより、軟磁性下地層及び磁性層を含む磁気記録層5を形成した。
【0050】
磁気記録層5は、軟磁性下地層と磁性層を含む二層膜媒体用の磁気記録層である。ターゲットとしてCoZrNbを用いて軟磁性下地層を100nm形成した後、Ruターゲットを用いて下地層を20nm形成し、さらにターゲットとしてCoPtCrSiを使用し、Arガス雰囲気で、公知の手法によりスパッタリングを行うことにより、垂直磁気記録層を20nmの厚さに形成した。
【0051】
図1(i)に示すように、この磁気記録層5上に表面保護層6を形成した後、紫外線硬化樹脂材料からなるレジスト7を図3(j)に示すように、回転数10000rpmでスピンコートした。
【0052】
図1(c)に示すように、真空貼り合わせ法により樹脂スタンパ3をディスク基板表面の紫外線硬化樹脂レジスト7に貼り合わせ、紫外線照射し樹脂を硬化させた後、図1(d)に示すように、樹脂スタンパー3を剥離した。
【0053】
紫外線インプリントによる凹凸形成プロセスでは、パターン凹部の底にレジスト残渣が残る。
【0054】
次に、酸素ガスを用いたRIEにより、パターン凹部の底にあるレジスト残渣を除去した。レジスト7のパターンをマスクとして、Arイオンミリングにより、図1(e)に示すように、磁気記録層をエッチングした。続いて、図1(f)に示すように、酸素RIEによりレジストのパターンを剥離した。さらに全面に図示しないカーボン保護層を成膜した。その後、作製した磁気ディスクに潤滑剤を塗布する。
【0055】
ここで、上述した磁気ディスク媒体においては、磁気記録層をレジストのマスクがない部位において底までエッチングしているが、途中でArイオンミリングを止め、凹凸が出来る程度の媒体であっても構わない。また、初めに磁性層を設けずにスタンパを基板上のレジストにインプリントした後エッチングするなどして先に基板形状に凹凸を設け、その後磁性膜を製膜した媒体であっても構わない。さらに、上述したものを含めいずれの場合にも溝部が何らかの非磁性材料によって埋め込まれていても構わない。
【0056】
実施例1
まず、次に中心孔径12mm、外径48mmの磁気ディスク媒体の場合を記す。
【0057】
射出成形される樹脂スタンパーの中心孔の直径を1mmから15mmまで変化させた場合の、内周部の溝深さの測定結果を表1に示す。
【0058】
また、そのグラフを図5に示す。
【表1】

【0059】
樹脂スタンパーの中心孔の直径が細すぎると成形樹脂注入速度が遅くなり、内周部の転写状態が悪くなる傾向が見られた。実験結果からは、6.5mm以上の内径で良好な転写ができることがわかった。
【0060】
また、転写後の樹脂スタンパー(真空貼り合わせ〜剥離後の樹脂スタンパー)の記録媒体のトラックパターンの繰り返し回転誤差いわゆるRRO(Repeatable Run Out)を、樹脂スタンパー表面に光再生を行なうことにより測定した。RROの高次成分の偏芯量を測定した結果を表2に示す。そのグラフを図6に示す。図中、グラフ101,102,103,104は、各々、偏芯次数が12次、15次、26次、32次の場合を各々示している。
【表2】

【0061】
樹脂スタンパーの中心孔径が細すぎると樹脂スタンパーの歪みが増すことでRROが悪くなる傾向が見られ、中心孔径が大きすぎると、樹脂スタンパーに発生するバリの高さ及び高さ変動が増すことで貼り合わせ時に歪みが増すためにRROが悪くなる傾向が見られた。このことから、樹脂スタンパーの中心孔径が4mmから9mmまでの範囲が偏芯量1nm以下で良好であった。さらに、樹脂スタンパーの中心孔径が6.5mmから7.5mmまでの範囲がより偏芯量が少なく、良好であった。
【0062】
次に、樹脂スタンパーの外径を35mmから120mmまで変化させた際の磁気ディスク基板との真空貼り合わせ後の基板反り(ラジアルチルト)の測定結果を表3に示す。そのグラフを図7に示す。
【表3】

【0063】
表3には、樹脂スタンパーの剥離が問題無くできた場合を○、剥離装置の真空吸着がしにくく、及び剥離がしにくかった場合を×とした。
【0064】
樹脂スタンパーの外径が大きすぎると磁気ディスクガラス基板からはみ出した面積が大きくなり紫外線吸収して変形する面積が大きくなるために貼り合わせ後の基板反りが増加し変形するため真空吸着しにくくなる傾向があった。樹脂スタンパーの外径が小さすぎると磁気ディスクガラス基板内にて樹脂スタンパー外径部の厚みが薄くなること、樹脂スタンパー外径部のバリが干渉することで貼り合わせ状態が悪くなり反りが増加する傾向があった。
【0065】
この結果から、樹脂スタンパーの外径は55mm以上が良好であることがわかった。より好ましくは55から85mmが良いことがわかった。
【0066】
次に中心孔径20mm、外径65mmの磁気ディスク媒体の場合を記す。
【0067】
射出成形される樹脂スタンパーの内径を1mmから23mmまで変化させた際の内周部の溝深さの測定結果を表4に示す。そのグラフを図8に示す。
【表4】

【0068】
樹脂スタンパーの中心孔径が細すぎると射出成形樹脂材料の注入速度が遅くなり、内周部の転写状態が悪くなる傾向が見られた。ある程度以上の内径が必要であることが分かった。実験結果からは6.5mm以上の中心孔径で良好な転写ができた。
【0069】
転写後の樹脂スタンパー(真空貼り合わせ〜剥離後の樹脂スタンパー)のリピータブルランアウト(RRO)の光再生により測定た。その高次偏芯量を表5に示す。そのグラフを図9に示す。
【表5】

【0070】
図9中、201,202,203,204は、偏芯次数が12次、15次、26次、32次の場合を各々示している。
【0071】
樹脂スタンパーの中心孔径が細すぎると成形樹脂の歪みが増すことでRROが悪くなる傾向が見られ、内径が大きすぎると成形バリの高さ及び高さ変動が増すことで貼り合わせ時に歪みが増すためにRROが悪くなる傾向が見られた。中心孔径4mmから中心孔径17mmまでの範囲が偏芯量1nm以下で良好であった。さらに好ましくは中心孔径6.5mmから9mmまでの範囲が特に良好であった。
【0072】
次に、樹脂スタンパーの外径を50mmから120mmまで変化させた際の磁気ディスク基板との真空貼り合わせ後の基板反り(ラジアルチルト)の測定結果を表6に示す。
【表6】

【0073】
そのグラフを図10に示す。表6には樹脂スタンパーの剥離が問題無くできた場合を○、剥離装置の真空吸着がしにくく、及び剥離がしにくかった場合を×をしてある。
【0074】
樹脂スタンパーの外径が大きすぎると磁気ディスクガラス基板からはみ出した面積が大きくなり紫外線吸収して変形する面積が大きくなるために貼り合わせ後の基板反りが増加し変形するため真空吸着しにくくなる傾向があった。樹脂スタンパーの外径が小さすぎると磁気ディスクガラス基板内にて樹脂スタンパー外径部の厚みが薄くなること、樹脂スタンパー外径部のバリが干渉することで貼り合わせ状態が悪くなり反りが増加する傾向があった。
【0075】
この結果からすると樹脂スタンパーの外径は70mm以上が良好であること、より好ましくは72から85mmが良いことがわかった。
【0076】
このように、樹脂スタンパーの中心孔径は磁気ディスク原料媒体の中心孔径よりも3mm以上小さくすることが必要であり、好ましくは、外径は7mm以上大きくするのが良好であることが分かった。中心孔径を磁気ディスク原料媒体の中心孔径よりも3mm以上小さくした樹脂スタンパーにより、1000枚の磁気ディスクを製造した。適当なインプリント回数ごとに製造された磁気ディスクを用いて磁気記録装置を作製し、アドレス信号を検出した。その結果、1000枚目の磁気ディスクを含めていずれの磁気ディスクを用いた場合にも、内周位置から外周位置にかけて所定のアドレス信号が得られた。またRROも全面で良好な結果が得られた。
【0077】
さらに、中心孔径を磁気ディスク原料媒体の中心孔径よりも3mm以上小さくし、かつ外径が7mm以上大きい樹脂スタンパーにより、1000枚の磁気ディスクを製造した。適当なインプリント回数ごとに製造された磁気ディスクを用いて磁気記録装置を作製し、アドレス信号を検出した。その結果、1000枚目の磁気ディスクを含めていずれの磁気ディスクを用いた場合にも、内周位置から外周位置にかけて所定のアドレス信号が得られた。またRROも全面で良好な結果が得られた。
【0078】
実施例2
第1次型締め力、第2次型締め力を種々変化させて、樹脂スタンパーを作成した。
【0079】
表7、表8に射出成形時の第1次型締め力、第2次型締め力と偏芯量の関係を示す。
【0080】
そのグラフを図11、図12に示す。
【表7】

【0081】
【表8】

【0082】
また、図11中、301,302は、偏芯次数が12次、15次の場合を各々示している。図12中、401,402は、偏芯次数が12次、15次の場合を各々示している。
【0083】
型締め力の比(第1次型締め力/第2次型締め力)が7以上25以下の範囲で高次偏芯量が1nm以下となり良好な結果が得られることがわかった。また、型締め力の比(第1次型締め力/第2次型締め力)が7以上25以下の範囲で成形され、高次偏芯量が1nm以下となる樹脂スタンパーにより、1000枚の磁気ディスクを製造した。適当なインプリント回数ごとに製造された磁気ディスクを用いて磁気記録装置を作製し、アドレス信号を検出した。その結果、1000枚目の磁気ディスクを含めていずれの磁気ディスクを用いた場合にも、内周位置から外周位置にかけて所定のアドレス信号が得られた。またRROも全面で良好な結果が得られた。
【0084】
実施例3
樹脂スタンパーの中心孔径は磁気ディスク原料媒体の中心孔径よりも3mm以上小さくし、型締め力の比(第1次型締め力/第2次型締め力)が7以上25以下の範囲で実施例2と同様にして樹脂スタンパーを得たところ、高次偏芯量及びラジアルチルトが良好な樹脂スタンパーが得られた。さらに、外径を7mm以上大きくすること以外は同様にして樹脂スタンパーを得たところ、高次偏芯量及びラジアルチルトが良好な樹脂スタンパーが得られた。
【0085】
これらの樹脂スタンパーにより、1000枚の磁気ディスクを製造した。
【0086】
適当なインプリント回数ごとに製造された磁気ディスクを用いて磁気記録装置を作製し、アドレス信号を検出した。
【0087】
その結果、1000枚目の磁気ディスクを含めていずれの磁気ディスクを用いた場合にも、内周位置から外周位置にかけて所定のアドレス信号が得られた。またRROも全面で良好な結果が得られた。
【0088】
なお、RROは、例えば以下のような装置を使用して測定することが出来る。
【0089】
図13は、スタンパを再生してRROを調べるためのRRO評価装置の概略構成を示す。
【0090】
図に示すように、光源には半導体レーザ光源120が用いられる。その出射光の波長は、例えば400nm〜410nmの範囲の紫色波長帯のものである。半導体レーザ光源120からの出射光110は、コリメートレンズ121により平行光となり偏光ビームスプリッタ122、λ/4板123を透過して、対物レンズ124に入射される。その後、スタンパSの基板を透過し、基板上の溝が形成されている面に集光される。このとき、レーザの開口数(以下NAという)は対象となる媒体によって異なる。例えば樹脂スタンパの場合には0.6mm厚の樹脂スタンパ内部を透過するような評価方法とした場合、NAは約0.5〜0.7となる。一方、Niスタンパなどの光を透過しない材料を用いたスタンパの場合、あるいは樹脂スタンパの表面を再生する場合には、NAを0.85以上に調整するか、あるいは樹脂材料の0.6mm厚相当となるような収差補正板をレーザとスタンパの間に挿入することができる。スタンパの情報記録層による反射光111は、再びスタンパDの基板を透過し、対物レンズ124、λ/4板123を透過し、偏光ビームスプリッタ122で反射された後、集光レンズ125を透過して光検出器126に入射される。
【0091】
光検出器127の受光部は、通常複数に分割されており、それぞれの受光部から光強度に応じた電流を出力する。出力された電流は、図示しないI/Vアンプ(電流電圧変換)により電圧に変換された後、演算回路140に入力される。入力された電圧信号は、演算回路140により、チルト誤差信号、HF信号、フォーカス誤差信号、及びトラック誤差信号などに演算処理される。チルト誤差信号はチルト制御を行うためのものであり、HF信号は光ディスクDに記録された情報を再生するためのものであり、フォーカス誤差信号はフォーカス制御を行うためのものであり、またトラック誤差信号はトラッキング制御を行うためのものである。
【0092】
対物レンズ124はアクチュエータ128にて上下方向、ディスクラジアル方向、およびチルト方向(ラジアル方向または/およびタンジェンシャル方向)に駆動可能であり、サーボドライバ150によってスタンパD上の情報トラックに追従するように制御される。
【0093】
なお、本評価装置では、半導体レーザの波長の例として400−410nmの範囲としているが、これに限ることはなく、さらに短波長でもよい。トラックピッチは、レーザースポット径によって決めることが出来る。スタンパのダミー溝のトラックピッチは評価装置のプッシュプル法を用いたトラッキングを行う場合、レーザースポット径の0.5〜1.2倍にすることができる。レーザースポット径はλ/NAで表すことができる。例えば、レーザー波長が405nm、NA0.65の場合、トラックピッチは0.31μm〜0.75μmにすることができる。また、例えば固定レーザーとして波長355nm,NA0.85のものを用いた場合、レーザースポット径は0.42μmとなり、最小トラックピッチは0.2μmとすることができる。トラックピッチは、広すぎるとダミー領域が広くなり、評価装置のレーザースポット径も大きくなる傾向があり、データ領域に対して粗い評価になりやすいため、できるだけ狭いほうがよい。一方、レーザーの波長は355nmより狭いものは取扱が困難で現実的でない。これよりダミー溝のトラックピッチの下限を0.2μmとすることが可能である。
【0094】
このようなRRO評価装置を用いて、本発明のスタンパを再生することができる。本実施例においては、パルステック社製DDU−1000を用いた。このときのレーザ波長は405nm、NAは0.65であった。
【0095】
次に、スタンパのRRO評価方法について説明する。
【0096】
上記評価装置にスタンパをセットし、1.2m/秒の線速度でスタンパを回転させる。なお線速度は、装置のトラッキング特性があるところから周波数が高くなるにつれて低下する傾向にある(サーボゲイン特性)。このため、スピンドルモータの最低回転数以上でできるだけ遅いほうが、RROの高次成分を、その次数における変位量を増幅させて、より正確に調べることができる。この評価装置では、ディスクの一回転分を周波数に変換し、これを回転周波数とし、偏芯次数をこの回転周波数で表すことができる。
【0097】
レーザを照射し、チルトやオフセットを、差信号(プッシュプル信号)最大となるところに調整し、トラッキングを行う。トラッキング後のプッシュプル信号の周波数解析を、FFTアナライザ(小野測器社製CF−5210使用)を用いて行った。
【0098】
次に、トラッキングをOFFにして、フォーカスのみ調整した状態で、同じプッシュプル信号のpeak−to peak値を調べた。このpeak−to peak電圧値は1/2トラックピッチ変位量に相当する。FFTアナライザにて測定した各周波数での電圧値を、peak−to peak電圧値で割ることにより変位量を計算した。なお、FFTアナライザの測定条件は1つのトラックを100回測定し、平均化したデータを1回測定とし、かつダミー領域内でトラックを変えて5回測定した結果の最大値を変位量としている。この計算結果を本発明中でのスタンパのRROとした。この中で、特にスタンパの回転周波数を基準の1次として15次から40次の変位量に注目した。15次未満の場合、スタンパを載置する位置による誤差が生じやすく、また、40次を超えるところまで測定しなくても、ある程度安定した変位量が得られる。
【0099】
RRO特性を調べる装置の特性上、プッシュプル信号PPの振幅(p−p)を和信号SUMの電圧値(p−G)で規格化した値 PP/SUMが、少なくともPP/SUM<0.1となればトラッキングを行うことが不可能となるため、このようにならないようトラッキングを行えるようなランドとグルーブの比を選定することができる。
【符号の説明】
【0100】
3…樹脂スタンパ、5…磁気記録層、7…紫外線硬化性樹脂層、9…中心孔、61…磁気記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体の磁気記録層をドライエッチングして、該磁気記録層の表面に凹凸パターンからなるディスクリートトラックを形成するためのマスクとして使用される紫外線硬化性樹脂に、該凹凸パターンを転写するための樹脂スタンパーであって、
該磁気記録媒体の中心孔の孔径よりも3mm以上小さい孔径を持つ中心孔を有することを特徴とする樹脂スタンパー。
【請求項2】
前記磁気記録媒体の外径よりも7mm以上大きい外径を有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂スタンパー。
【請求項3】
磁気記録媒体の磁気記録層をドライエッチングして、該磁気記録層の表面に凹凸パターンからなるディスクリートトラックを形成するためのマスクとして使用される紫外線硬化性樹脂に、該凹凸パターンを転写するための樹脂スタンパーの製造方法であって、
固定側金型上に凹凸パターンを有する原盤を設け、該固定側金型上に移動側金型を合わせて配置し、該原盤と該移動側金型と間のキャビティー内に溶融した射出成形樹脂材料を射出し、第1次型締め力で型締めを行った後、該第1の型締め力に対し1/7ないし1/25の第2次型締め力で型締めを行なって、該射出成形樹脂材料を2段階で加圧し、冷却することにより樹脂を成形し、成形された樹脂に中心孔を設けることを特徴とする樹脂スタンパーの製造方法。
【請求項4】
前記中心孔は、該磁気記録媒体の中心孔の孔径よりも3mm以上小さい孔径を持つことを特徴とする樹脂スタンパの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−170624(P2010−170624A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13471(P2009−13471)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】