説明

樹脂パネル部材の成形方法

【課題】成形サイクルを長くすることなく、薄肉ソリッド部を十分に冷却硬化させて後発泡膨れ現象をなくす。
【解決手段】キャビティ容積を拡大させるコアバック法により基材3上にパッド13を一体に成形する時、基材3を保持するコア型103の型成形面109に突設された突出部109aを、基材3のパッド13外周縁部に対応する開口部27に嵌入してキャビティ117に臨ませ、キャビティ空間117aの熱可塑性樹脂をキャビティ容積拡大前に冷却硬化させて、パッド13の外周縁部に薄肉ソリッド部29を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コアバック法(Moving Cavity法)により、樹脂製基材の表面に樹脂製パッドが一体に成形された樹脂パネル部材の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コアバック法とは、固定型と可動型とからなる成形型を型閉じしてキャビティに熱可塑性樹脂を充填し、該熱可塑性樹脂の型成形面近傍にスキン層が生成され始めた時点で、上記可動型を型開き方向に僅かに後退させてキャビティ容積を拡大させることで上記熱可塑性樹脂を発泡させ、これにより、樹脂密度が高いソリッド層からなるスキン層の内部に該スキン層に比べて樹脂密度が低い発泡層が一体に成形された発泡層を得る方法である。
【0003】
このコアバック法により、樹脂製基材の表面に樹脂製パッド(発泡層)が一体に成形された樹脂パネル部材を成形する場合、例えば、固定型の型成形面に予め成形した基材をセットして可動型を接近させて型閉じしたり、あるいは成形した基材を固定型に残したままで、可動型をパッド成形用の可動型と取り替えて型閉じし、キャビティに熱可塑性樹脂を充填する。そして、この熱可塑性樹脂の基材表面近傍及び可動型の型成形面近傍にスキン層が生成され始めた時点で、可動型を型開き方向に移動させてキャビティ容積を拡大し、上記熱可塑性樹脂を発泡させる。これにより、樹脂密度が高いソリッド層からなるスキン層の内部に該スキン層に比べて樹脂密度が低い発泡層が一体に成形された厚肉の樹脂製パッドが上記基材上に一体に成形された樹脂パネル部材が得られる。
【0004】
ところで、パッドの外周縁部に薄肉ソリッド部が形成されている樹脂パネル部材の場合、成形サイクルを短縮しようとしてコアバックのタイミングを早めると、上記薄肉ソリッド部が十分に硬化しておらず、しかも、可動型はコアバックにより薄肉ソリッド部から離れているため、薄肉ソリッド部が発泡してしまう,いわゆる後発泡膨れ現象が起きる。さりとて、コアバックのタイミングを遅くして薄肉ソリッド部の十分な硬化を待つと、パッドのスキン層が必要以上に厚くなってしまう。
【0005】
特許文献1には、コアバック法により基材上に一体に成形した発泡層の外周縁部をコアバック時に後発泡膨れしない程度にまで硬化させる技術が開示されている。そのやり方は、キャビティ周縁部のキャビティ空間を他の箇所のキャビティ空間よりも狭小にして当該箇所において熱可塑性樹脂の冷却を促進させている。具体的には、基材周縁部の肉厚を厚くすることで当該箇所のキャビティ空間を狭小にしたり、あるいは、キャビティ周縁部において基材と対向する型の型成形面を基材に接近させることで当該箇所のキャビティ空間を狭小にしている。そして、この技術を上述の如き樹脂パネル部材の成形方法に適用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−328470号公報(段落0020〜0023欄、段落0033欄、段落0036欄、図1,2,5,6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の特許文献1では、基材周縁部の肉厚が他の箇所に比べて厚かったり、あるいは基材全体が同じ厚みであるため、キャビティ周縁部の熱可塑性樹脂に基材側の型の型温が影響し難く、特許文献1を上述の如き樹脂パネル部材の成形方法に適用すると、薄肉ソリッド部が冷え難く、基材と対向する型がコアバックにより薄肉ソリッド部から離れていることもあって、薄肉ソリッド部が発泡して後発泡膨れ現象が起きてしまい、樹脂パネル部材の品質が低下する。
【0008】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、成形サイクルを長くすることなく、薄肉ソリッド部を十分に冷却硬化させて後発泡膨れ現象をなくすことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、この発明は、基材側の型の型形成面に突設した突出部を基材のパッド外周縁部に対応する箇所に嵌入させることを特徴とする。
【0010】
具体的には、この発明は、第1型に保持された樹脂製基材と、上記第1型に対向して配置された第2型との間のキャビティに熱可塑性樹脂を充填し、該熱可塑性樹脂の基材表面近傍及び第2型の型成形面近傍にスキン層が生成され始めた時点で、上記第1型又は第2型を型開き方向に移動させてキャビティ容積を拡大して上記熱可塑性樹脂を発泡させることにより、樹脂密度が高いソリッド層からなるスキン層の内部に該スキン層に比べて樹脂密度が低い発泡層が一体に成形された厚肉の樹脂製パッドを上記基材上に一体に成形する樹脂パネル部材の成形方法を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明は、上記第1型の型成形面には、突出部が上記パッドの外周縁部に対応するように突設され、パッド成形時、上記突出部がキャビティに臨むか、又は上記基材に形成された薄肉部に接触して他の箇所よりもキャビティに接近し、当該キャビティ空間の熱可塑性樹脂がキャビティ容積拡大前に冷却硬化して上記パッドの外周縁部に薄肉ソリッド部を形成することを特徴とする。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、上記パッドは、基材露出部を有するように上記基材上に一体に成形され、パッド外周縁部には、上記基材露出部よりも一段高くなるように段差部が傾斜して設けられ、上記第1型の突出部は、上記段差部に対応するように形成されていることを特徴とする。
【0013】
第3の発明は、第2の発明において、上記基材の段差部対応箇所には、上記突出部が嵌入する開口部が形成され、パッド成形時、上記突出部が上記開口部からキャビティに臨んでいることを特徴とする。
【0014】
第4の発明は、第2の発明において、上記基材裏面の段差部対応箇所には、上記突出部が嵌入する嵌入凹部が形成され、当該嵌入凹部対応箇所の基材の肉厚が他の箇所よりも薄く形成されて上記薄肉部を構成していることを特徴とする。
【0015】
第5の発明は、第1の発明において、上記パッドは、上記基材全体を覆うように基材上に一体に成形されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、突出部が第2型の型成形面に他の箇所に比べて接近しているため、当該箇所のキャビティ空間の熱可塑性樹脂が、上記突出部の型温の影響により他の箇所よりも多く熱を奪われ、キャビティ容積拡大前に確実に冷却硬化して薄肉ソリッド部が形成され、上記第2型がコアバックにより薄肉ソリッド部から離れても、該薄肉ソリッド部は後発泡膨れ現象が起きず、短い成形サイクルで品質の優れた樹脂パネル部材が確実に得られる。
【0017】
第2の発明によれば、基材露出部を有し、かつパッド外周縁部に基材露出部よりも一段高くなるように段差部(23)が傾斜して設けられているタイプの樹脂パネル部材を、後発泡膨れ現象なく、短い成形サイクルで品質良好に成形できる。
【0018】
第3の発明によれば、突出部先端面がキャビティ空間の熱可塑性樹脂(薄肉ソリッド部)に直接に接触しているため、該薄肉ソリッド部が突出部の型温の影響により他の箇所よりも多く熱を奪われて速やかに冷却硬化される。
【0019】
また、キャビティへの熱可塑性樹脂充填時、キャビティ内の気体を突出部と開口部との間を通して型外に排出でき、パッド表面にガス焼けによる見栄え不良をなくすことができる。
【0020】
第4の発明によれば、突出部先端面がキャビティ空間の熱可塑性樹脂(薄肉ソリッド部)に他の箇所に比べて接近して当該箇所の基材が薄肉になって薄肉部を構成しているため、第3の発明と同様に、該薄肉ソリッド部が突出部の型温の影響により他の箇所よりも多く熱を奪われて速やかに冷却硬化される。
【0021】
また、基材の突出部対応箇所は薄肉ではあるが、開口部が形成されている第3の発明の場合に比べて薄肉ソリッド部対応箇所の剛性を確保できる。
【0022】
さらに、基材の基材露出部と基材非露出部との境界(パッドの段差部)が、第3の発明の方法により成形された樹脂パネル部材では、基材に開口部が形成されていることによって弾性変形し易くなっているため、また、第4の発明の方法により成形された樹脂パネル部材では、基材に嵌入凹部が形成されていることによって弾性変形し易くなっているため、衝撃が段差部に加わっても、その衝撃を上記段差部で吸収緩和することができる。
【0023】
第5の発明によれば、パッドが基材全体を覆っているタイプの樹脂パネル部材を、後発泡膨れ現象なく、短い成形サイクルで品質良好に成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態1に係る成形方法により成形された樹脂パネル部材としての車両用インストルメントパネル部材の斜視図である。
【図2】図1のA−A線で破断した斜視図である。
【図3】図2に対応する基材の斜視図である。
【図4】実施形態1において成形型のキャビティ内に熱可塑性樹脂を射出充填した状態を示すインストルメントパネル部材の成形工程である。
【図5】実施形態1において成形型の可動型をキャビティ容積が拡大する方向に後退させてインストルメントパネル部材が成形された状態を示す成形工程図である。
【図6】実施形態1で使用する成形型の図1におけるB−B線に対応する概略構成図である。
【図7】実施形態2の図2相当図である。
【図8】実施形態2の図3相当図である。
【図9】実施形態2の図4相当図である。
【図10】実施形態2の図5相当図である。
【図11】実施形態3に係る成形方法により成形された樹脂パネル部材としてのコンソールリッドアウターが適用されたコンソールリッドを実線で示す車両用コンソールの斜視図である。
【図12】図11のD−D線に対応するコンソールリッドアウターの断面図である。
【図13】実施形態3の図4相当図である。
【図14】実施形態3の図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0026】
(実施形態1)
図1は、この発明の実施形態1に係る成形方法により成形された樹脂パネル部材としての車両用インストルメントパネル部材(アッパパネル)1を示し、当該成形方法を説明する前に、このインストルメントパネル部材1の構成を説明する。このインストルメントパネル部材1は、左右のロアパネル(図示せず)とセンタパネル(図示せず)との四者で、自動車のフロントガラス下方に配設されるインストルメントパネルを構成する。
【0027】
上記インストルメントパネル部材1は、図2及び図3に示すように、インストルメントパネル部材1の本体を構成する樹脂製基材3を備えている。この基材3は、例えば、ポリプロピレン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ノリル樹脂等からなる。
【0028】
上記インストルメントパネル部材1の車体前方側領域は、上記基材3が露出した単層構造であり、以下、当該露出部分を基材露出部5という。この基材露出部5には、車幅方向に延びるフロントデフロスターエア吹出口7が形成され、上記基材3の基材露出部5よりも車体後方側領域には、サイドベントエア吹出口9、センターパネル取付部11等が形成されている(図1参照)。
【0029】
上記基材3の基材露出部5よりも車体後方側領域には、厚肉の樹脂製パッド13が一体に成形されている。このパッド13は、例えば、サーモプラスチックオレフィン、サーモプラスチックスチレン等の熱可塑性エラストマーからなり、表裏両面に亘って形成された樹脂密度が高いソリッド層からなる薄肉のスキン層15の内部に該スキン層15に比べて樹脂密度が低い発泡層17が一体に成形されて構成され、発泡層17の内部に多数の空隙(図示せず)を有している。
【0030】
上記基材3のうちパッド13で覆われた基材非露出部21は、基材露出部5よりも一段高くなっていて、両者は、車体前方に向かって前下がりに傾斜する車幅方向に間隔をあけた複数個(図3では1個のみ表れる)の橋絡部25で連結され、これら橋絡部25により複数個の開口部27が車幅方向に間隔をあけて形成されている。そして、上記パッド13の外周縁部は、上記橋絡部25及び開口部27を覆っていて、該外周縁部には、薄肉ソリッド部29からなる段差部23が車体前方に向かって前下がりに傾斜するように形成され、該薄肉ソリッド部29は、上記開口部27内には入らず、上記橋絡部25に支えられている。これにより、上記基材3の段差部23対応箇所に上記開口部27が形成されている。
【0031】
上述の如きインストルメントパネル部材1を成形するに際し、図6に示すような成形型101を用意する。
【0032】
上記成形型101は、第1型としてのコア型103と、基材キャビ型105と、第2型としてのパッドキャビ型107とを備えている。
【0033】
上記コア型103の両側面には、基材3の裏面形状に対応した型成形面109がそれぞれ同形状に形成されている。上記コア型103は、上下両面に突設された回転軸111回りに駆動装置(図示せず)により鉛直面内で180°反転可能になっている。上記型成形面109には、図4及び図5に示すように、複数個の突出部109aが上記パッド13の外周縁部である段差部23に対応するように突設されている。この各突出部109aの突出寸法は、パッド13成形時に各突出部109aが上記各開口部27に嵌入して上記各橋絡部25と面一になるように設定されている。
【0034】
上記基材キャビ型105には、上記基材3の表面形状に対応した型成形面113が形成されている(図6参照)。この型成形面113には、上記パッド13の段差部23(基材露出部5と基材非露出部21との間)に対応して傾斜面(図示せず)が形成され、該傾斜面は、基材3成形時に上記各突出部109a先端面に当接し、コア型103の型成形面109と基材キャビ型105の型成形面113との間にキャビティ(図示せず)を形成するようになっている。
【0035】
上記パッドキャビ型107には、パッド13の表面形状に対応した型成形面115が形成されている(図6参照)。この型成形面115には、図4及び図5に示すように、上記パッド13の段差部23に対応する傾斜面115aが形成されているとともに、車幅方向に延びる凸条部115bが上記傾斜面115aに連続して形成され、該凸条部115bは、パッド13成形時に基材3の基材露出部5に当接し、該基材3と型成形面115との間にキャビティ117を形成するようになっている。このキャビティ117の上記傾斜面115aと各突出部109a先端面との間のキャビティ空間117aは、他の箇所に比べて狭小に設定され、パッド13成形時、上記各突出部109aが上記開口部27から上記狭小なキャビティ空間117aに臨むようになっている。また、上記傾斜面115aの傾斜角度方向は、最小の型抜き角度を有してパッドキャビ型107の型開き方向(図4矢印C方向)とほぼ同じ方向に設定されている。
【0036】
図4及び図5中、119は高温の樹脂温の熱影響で型温が上昇するのを抑制するために冷却水を循環させる冷却水通路である。
【0037】
このように構成された成形型101を用いてインストルメントパネル部材1を成形する要領について説明する。なお、以下に括弧書で付した番号は成形工程の順番を示す。
【0038】
(1)コア型103と基材キャビ型105とを型閉めしてコア型103と基材キャビ型105との間にキャビティを形成し、該キャビティに例えば、ポリプロピレン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ノリル樹脂等からなる熱可塑性樹脂を充填する。これにより、図3に示すように、パッド13で覆われる基材非露出部21が基材露出部5よりも一段高くなった基材3が成形され、基材非露出部21と基材露出部5との間に、車体前方に向かって前下がりに傾斜する複数個(図3では1個のみ表れる)の橋絡部25が車幅方向に間隔をあけて形成され、これら橋絡部25により複数個の開口部27が車幅方向に間隔をあけて形成されている。
【0039】
(2)基材キャビ型105を後退させてコア型103と基材キャビ型105とを型開きする。成形された基材3は、コア型103に保持され、各突出部109aが上記各開口部27に嵌入して上記各橋絡部25と面一になり、各突出部109a先端面が各開口部27から露呈している。この状態でコア型103を回転軸111回りに駆動装置(図示せず)により鉛直面内で180°反転させる。
【0040】
(3)パッドキャビ型107を進出させて上記コア型103とパッドキャビ型107とを型閉めし、図4に示すように、基材3とパッドキャビ型107との間にキャビティ117を形成する。このキャビティ117は、パッドキャビ型107の傾斜面115aと各突出部109a先端面との間の間隔が他の箇所に比べて狭小に設定されて、狭小なキャビティ空間117aを構成し、上記各突出部109aが上記狭小なキャビティ空間117aに臨んで他の箇所よりもキャビティ117に接近している。
【0041】
(4)このように、上記コア型103に保持された基材3と、上記コア型103に対向して配置されたパッドキャビ型107との間のキャビティ117に例えば、サーモプラスチックオレフィン、サーモプラスチックスチレン等の熱可塑性エラストマーからなる熱可塑性樹脂Rを充填する。この熱可塑性樹脂Rとしては、例えば、化学反応によりガスを発生させる化学的発泡剤や、MuCell(ミューセル:登録商標) Processのように二酸化炭素ガス及び窒素ガス等の不活性ガス(物理的発泡剤)等が超臨界状態で混入された熱可塑性樹脂であり、ガラス繊維等の繊維が混入されていてもよいが、必ずしもこれらを混入していなくてもよい。
【0042】
(5)上記熱可塑性樹脂Rの基材3表面近傍及びパッドキャビ型107の型成形面115近傍が型温により冷却されて当該箇所にスキン層15が生成され始めた時点で、上記パッドキャビ型107を基材3から型開き方向(図4矢印C方向)に移動(後退)させてキャビティ容積を拡大する。このキャビティ117の容積拡大により、それまで基材3とパッドキャビ型107との間で圧縮されている熱可塑性樹脂Rが、パッドキャビ型107に引っ張られるとともに、熱可塑性樹脂R中の化学反応によって発生したガスや不活性ガス等の内部ガスによって発泡膨張するが、上記狭小なキャビティ空間117aの熱可塑性樹脂Rが上記突出部109aの型温の影響により他の箇所よりも多く熱を奪われ、キャビティ容積拡大前に冷却硬化して、上記パッド13の外周縁部に薄肉ソリッド部29が一足早く形成される。
【0043】
その結果、熱可塑性樹脂Rの外周りに樹脂密度が高いソリッド層からなるスキン層15が形成され、該スキン層15の内部に該スキン層15に比べて樹脂密度が低い発泡層17が一体に成形された厚肉のパッド13が、車体前方側領域に基材露出部5を有するように上記基材3上に一体に成形されたインストルメントパネル部材1が得られる。
【0044】
また、上記傾斜面115aの傾斜角度方向は、最小の型抜き角度を有してパッドキャビ型107の型開き方向(図4矢印C方向)とほぼ同じ方向に設定されているので、上記パッドキャビ型107を基材3から型開き方向(図4矢印C方向)に移動させても、薄肉ソリッド部29の熱可塑性樹脂Rがパッドキャビ型107によって膨張する方向へ引っ張られることはない。
【0045】
(6)パッドキャビ型107を後退させてコア型103とパッドキャビ型107とを型開きし、成形されたインストルメントパネル部材1をコア型103から脱型する。なお、このようにパッドキャビ型107側で基材3表面にパッド13を成形する過程で、基材キャビ型105側では、前述した要領で基材3を成形する。
【0046】
上述した工程を繰り返すことで、コア型103の両側面でインストルメントパネル部材1の成形を連続して行う。
【0047】
このように、実施形態1では、コア型103の各突出部109a先端面をパッドキャビ型107の型成形面115に他の箇所に比べて接近させているので、当該箇所の狭小なキャビティ空間117aの熱可塑性樹脂Rから上記各突出部109aの型温の影響により他の箇所よりも多く熱を奪い、上記熱可塑性樹脂Rをキャビティ容積拡大前に確実に冷却硬化させて薄肉ソリッド部29を形成し、上記パッドキャビ型107がコアバックにより薄肉ソリッド部29から離れても、該薄肉ソリッド部29に後発泡膨れ現象が起きないようにすることができ、短い成形サイクルで品質の優れたインストルメントパネル部材1を確実に得ることができる。
【0048】
また、実施形態1では、上記各突出部109a先端面が狭小なキャビティ空間117aの熱可塑性樹脂R(薄肉ソリッド部29)に直接に接触しているので、該薄肉ソリッド部29から各突出部109aの型温の影響により熱を速やかに奪い、薄肉ソリッド部29の冷却硬化を一段と促進させることができる。
【0049】
さらに、実施形態1では、キャビティ117への熱可塑性樹脂R充填時、キャビティ117内の気体を各突出部109aと各開口部27との間から基材3の裏面とコア型103の型成形面109との間を通して型外に排出できるので、パッド13表面にガス焼けによる見栄え不良をなくすことができる。
【0050】
さらにまた、実施形態1では、基材3の基材露出部5と基材非露出部21との境界(パッド13の段差部23)を、基材3に形成された複数個の開口部27によって弾性変形し易くしているので、歩行者が衝突してフロントガラスを突き破って段差部23に当たっても、その際の衝撃を上記段差部23で吸収緩和することができ、歩行者保護の観点から望ましい。
【0051】
(実施形態2)
図7〜10は実施形態2に係る成形方法及び該成形方法により成形された樹脂パネル部材としての車両用インストルメントパネル部材1を示す。実施形態2では、実施形態1の開口部27に代えて、各突出部109aが嵌入する嵌入凹部31を基材3裏面の段差部23対応箇所に複数個形成し、当該嵌入凹部31対応箇所の基材3の肉厚が他の箇所よりも薄く形成されて薄肉部33を構成している。つまり、各突出部109aの突出寸法が実施形態1に比べて短くなっている。そのほかは、実施形態1と同様に構成されているので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0052】
したがって、実施形態2では、各突出部109a先端面を狭小なキャビティ空間117aの熱可塑性樹脂R(薄肉ソリッド部29)に他の箇所に比べて接近させて基材3の突出部109a対応箇所を薄肉にして薄肉部33としているので、実施形態1と同様に、該薄肉ソリッド部29から各突出部109aの型温の影響により熱を速やかに奪い、薄肉ソリッド部29の冷却硬化を一段と促進させることができる。したがって、上記パッドキャビ型107がコアバックにより薄肉ソリッド部29から離れても、該薄肉ソリッド部29に後発泡膨れ現象が起きないようにすることができ、短い成形サイクルで品質の優れたインストルメントパネル部材1を確実に得ることができる。
【0053】
また、実施形態2では、基材3の109a対応箇所は薄肉ではあるが、開口部27が形成されている実施形態1の場合に比べて薄肉ソリッド部29対応箇所の剛性を確保することができる。
【0054】
さらに、実施形態2では、基材3の基材露出部5と基材非露出部21との境界(パッド13の段差部23)を、基材3に形成された嵌入凹部31によって弾性変形し易くしているので、歩行者が衝突してフロントガラスを突き破って段差部に当たっても、その際の衝撃を上記段差部23で吸収緩和することができ、歩行者保護の観点から望ましい。
【0055】
(実施形態3)
図11は車両用コンソール51を示す。このコンソール51は、コンソール本体53(仮想線で示す)とコンソールリッド55とからなり、該コンソールリッド55は、図12に示すように、コンソールリッドアウター57とコンソールリッドインナー59(仮想線で示す)とで構成されている。図12中、61は上記コンソールリッドアウター57裏面に一体に突設されたボスであり、該ボス61のネジ挿入孔61aにタッピングネジ63をねじ込むことで、上記コンソールリッドインナー59をコンソールリッドアウター57に固定してコンソールリッド55を組み立てるようになっている。65はコンソールリッドインナー59をコンソールリッドアウター57に位置決めするリブである。そして、上記コンソールリッドアウター57が、実施形態3に係る成形方法により成形された樹脂パネル部材である。
【0056】
上記コンソールリッドアウター57は、基材3と該基材3全体を覆うように基材3上に一体に成形されたパッド13とで構成され、基材3外周縁部には薄肉部33が全周に亘って形成されている。上記パッド13は、実施形態1,2と同様に、表裏両面に亘って形成された樹脂密度が高いソリッド層からなる薄肉のスキン層15の内部に該スキン層15に比べて樹脂密度が低い発泡層17が一体に成形されて構成され、発泡層17の内部に多数の空隙(図示せず)を有している。
【0057】
図13及び図14は、上記コンソールリッドアウター57を成形するためのコア型103及びパッドキャビ型107を示す。
【0058】
上記コア型103の型成形面109外周縁部には、突出部109aが上記基材3の薄肉部33に対応するように全周に亘って突設され、該基材3の薄肉部33と上記コア型103の突出部109aとは共に、上記パッド13外周縁部に対応するように形成されている。そのほか、実施形態1と同じ型構造部分には同じ符号を付している。
【0059】
上記コンソールリッドアウター57は実施形態1で説明した要領にて成形される。そして、パッド13成形時、上記突出部109aが上記基材3の薄肉部33に接触して他の箇所よりもキャビティ117に接近し、当該キャビティ空間117aの熱可塑性樹脂Rがキャビティ容積拡大前に冷却硬化して上記パッド13外周縁部に薄肉ソリッド部29を形成するようになっている。
【0060】
したがって、実施形態3では、各突出部109a先端面をキャビティ空間117aの熱可塑性樹脂R(薄肉ソリッド部29)に他の箇所に比べて接近させて基材3の突出部109a対応箇所を薄肉にして薄肉部33としているので、実施形態1と同様に、該薄肉ソリッド部29から各突出部109aの型温の影響により熱を速やかに奪い、薄肉ソリッド部29の冷却硬化を一段と促進させることができる。したがって、上記パッドキャビ型107がコアバックにより薄肉ソリッド部29から離れても、該薄肉ソリッド部29に後発泡膨れ現象が起きないようにすることができ、短い成形サイクルで品質の優れたコンソールリッドアウター57を確実に得ることができる。
【0061】
なお、実施形態2において、コア型103の突出部109aを車幅方向に連続させて長尺状にすることで、基材3の段差部23対応箇所を橋絡部25のない薄肉部33のみとしてもよい。
【0062】
また、実施形態1,2では、樹脂パネル部材が車両用インストルメントパネル部材1であり、実施形態3では、車両のコンソールリッドアウター57である場合を示したが、ドアトリム等のトリム類、ピラー類、マッドガード等であってもよい。
【0063】
さらに、実施形態3では、基材3外周縁部に薄肉部33を全周に亘って形成したが、これを省略してパッド13外周縁部を基材3外周縁部から延出させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
この発明は、キャビティ容積を拡大させるコアバック法により、樹脂製基材の表面に樹脂製パッドが一体に成形されたインストルメントパネル部材等の樹脂パネル部材の成形方法について有用である。
【符号の説明】
【0065】
1 インストルメントパネル部材(樹脂パネル部材)
3 基材
5 基材露出部
13 パッド
15 スキン層
17 発泡層
23 段差部
27 開口部
29 薄肉ソリッド部
31 嵌入凹部
33 薄肉部
57 コンソールリッドアウター(樹脂パネル部材)
103 コア型(第1型)
107 パッドキャビ型(第2型)
109 コア型(第1型)の型成形面
109a 突出部
115 パッドキャビ型(第2型)の型成形面
117 キャビティ
117a キャビティ空間
R 熱可塑性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1型(103)に保持された樹脂製基材(3)と、上記第1型(103)に対向して配置された第2型(107)との間のキャビティ(117)に熱可塑性樹脂(R)を充填し、該熱可塑性樹脂(R)の基材(3)表面近傍及び第2型(107)の型成形面(115)近傍にスキン層(15)が生成され始めた時点で、上記第1型(103)又は第2型(107)を型開き方向に移動させてキャビティ容積を拡大して上記熱可塑性樹脂(R)を発泡させることにより、樹脂密度が高いソリッド層からなるスキン層(15)の内部に該スキン層(15)に比べて樹脂密度が低い発泡層(17)が一体に成形された厚肉の樹脂製パッド(13)を上記基材(3)上に一体に成形する樹脂パネル部材の成形方法であって、
上記第1型(103)の型成形面(109)には、突出部(109a)が上記パッド(13)の外周縁部に対応するように突設され、
パッド(13)成形時、上記突出部(109a)がキャビティ(117)に臨むか、又は上記基材(3)に形成された薄肉部(33)に接触して他の箇所よりもキャビティ(117)に接近し、当該キャビティ空間(117a)の熱可塑性樹脂(R)がキャビティ容積拡大前に冷却硬化して上記パッド(13)の外周縁部に薄肉ソリッド部(29)を形成することを特徴とする樹脂パネル部材の成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂パネル部材の成形方法において、
上記パッド(13)は、基材露出部(5)を有するように上記基材(3)上に一体に成形され、パッド(13)外周縁部には、上記基材露出部(5)よりも一段高くなるように段差部(23)が傾斜して設けられ、
上記第1型(103)の突出部(109a)は、上記段差部(23)に対応するように形成されていることを特徴とする樹脂パネル部材の成形方法。
【請求項3】
請求項2に記載の樹脂パネル部材の成形方法において、
上記基材(3)の段差部(23)対応箇所には、上記突出部(109a)が嵌入する開口部(27)が形成され、
パッド(13)成形時、上記突出部(109a)が上記開口部(27)からキャビティ(117)に臨んでいることを特徴とする樹脂パネル部材の成形方法。
【請求項4】
請求項2に記載の樹脂パネル部材の成形方法において、
上記基材(3)裏面の段差部(23)対応箇所には、上記突出部(109a)が嵌入する嵌入凹部(31)が形成され、当該嵌入凹部(31)対応箇所の基材(3)の肉厚が他の箇所よりも薄く形成されて上記薄肉部(33)を構成していることを特徴とする樹脂パネル部材の成形方法。
【請求項5】
請求項1に記載の樹脂パネル部材の成形方法において、
上記パッド(13)は、上記基材(3)全体を覆うように基材(3)上に一体に成形されることを特徴とする樹脂パネル部材の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−179777(P2012−179777A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43566(P2011−43566)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】