説明

樹脂フィルム、それよりなる加飾フィルム並びに加飾成形品

【課題】透明性に優れ、かつ環境にも配慮した加飾フィルム、この樹脂フィルムに意匠層を備える加飾フィルム、この加飾フィルムと成形体とを積層一体化した加飾成形品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸を含む樹脂フィルムであって、当該ポリ乳酸が、ポリD−乳酸成分及びポリL−乳酸成分を含むポリ乳酸であり、ステレオコンプレックス結晶化度(S)が90%以上で、MD方向、TD方向におけるフィルム破断伸度(100℃測定値)100〜1000%且つ100%伸張時応力(100℃測定値)が0.1〜100MPaの範囲にあることを特徴とする、ポリ乳酸を含む樹脂フィルムを加飾フィルム2の基板1として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加飾フィルムの基板として好適に用いることのできる樹脂フィルム、それよりなる加飾フィルム並びに加飾成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パソコン、テレビ等の電気製品の外装や自動車の内装などには、射出成形等による樹脂成形体や金属の成形体などの成形体が用いられている。かかる成形体の表面を加飾するために、様々な手法が用いられている。
とりわけ、成形体の最表面を、支持体としての基材と、基材上に意匠を施すための意匠層を備える加飾フィルムで加飾して加飾成形品を得る方法は、そのまま成形体表面にインク等を使って表面に印刷する方法よりも、より意匠の自由度が高く、たとえば三次元的な凹凸を有する成形体表面にも容易に加飾することが可能であるといった利点を有する。
【0003】
成形体を、加飾フィルムを用いて加飾する方法のうち、代表的な方法を2つ説明する。
1つは成形体が樹脂成形体の場合のみ用いられる、射出成形同時貼合法と呼ばれる手法である。この射出成形同時貼合法は、さらに2つに分けられる。1つは、加飾フィルムを、射出成形の雌雄金型間に挿入し、その金型の一方の側から溶融樹脂を射出して、射出成形体を形成すると同時にその成形体に上記のフィルムを貼合する方法であり、これはインモールド法とも呼ばれることがある。もう1つの方法は、加飾フィルムを、真空成形や圧空成形等により予備賦形してから射出成形金型内に挿入し、そこに溶融樹脂を射出して、加飾フィルムと一体成型する方法である。これはインサートモールド法とも呼ばれることがある。このような射出成形同時貼合法は、例えば、特開昭59−31130号公報(特許文献1)、特開昭62−196113号公報(特許文献2)、特開平7−9484号公報(特許文献3)等にて提案されている。
【0004】
もう一方は真空貼合法である。予め作成した成形体に、加飾フィルムを真空中にて被覆接着するものであり、例えば、特許第3733564号公報(特許文献4)、特開2006−224459号公報(特許文献5)等にて提案されている。
また、環境意識の高まりから加飾フィルムの基板としてポリ乳酸系フィルムを用いることも特開2005−15783号公報(特許文献6)にて提案されている。
しかしながら、ポリ乳酸系フィルムを用いた加飾フィルムは、加飾成形品において、透明性等が劣るという技術課題がある。
即ち、印刷等の意匠を施した加飾フィルムは、成形体と一体化されて最表面を飾るためのフィルムであるため、特に、透明性が要求される。
【0005】
通常のポリ乳酸の結晶は球晶等の大きな体積を有する高次構造を構成しやすい。そのため、上述の加飾フィルム貼合の代表的な2つの技術(射出成形同時貼合法、真空貼合法)、いずれの方法においても、加飾フィルムと成形体を貼合する工程において、フィルムへの加熱および延伸変形が生じる際にフィルムのヘーズが上昇し透明性を確保することが難しい。
【0006】
また、先に本出願人はポリ乳酸として、ステレオコンプレックスポリ乳酸を含む樹脂フィルムを特開2008−248162号公報(特許文献7)にて提案しているが、これを加飾フィルムの基板として用いた場合に、特に三次元的な凹凸が大きい成形体を加飾フィルムと貼合する場合、例えば、鋭角な折れ曲がりの部分を有する形状に深絞り加工された成形体に貼合する場合に、先述した従来の射出成形同時貼合法や真空貼合法を用いて貼合すると、加飾フィルムが破断したり、成形不良が生じたりする可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−31130号公報
【特許文献2】特開昭62−196113号公報
【特許文献3】特開平7−9484号公報
【特許文献4】特許第3733564号公報
【特許文献5】特開2006−224459号公報
【特許文献6】特開2005−15783号公報
【特許文献7】特開2008−248162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記した従来技術の問題を解決することにあり、透明性に優れ、かつ環境にも配慮した加飾フィルムを提供することのできる樹脂フィルム、この樹脂フィルムに意匠層を備える加飾フィルム、この加飾フィルムと成形体とを積層一体化した加飾成形品およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記従来技術に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
即ち、本発明の第1の目的は、
1.ポリ乳酸(A成分)を含む樹脂フィルムであって、当該ポリ乳酸(A成分)が、ポリD−乳酸成分及びポリL−乳酸成分を含むポリ乳酸であり、ステレオコンプレックス結晶化度(S)が90%以上で、MD方向、TD方向におけるフィルム破断伸度(100℃測定値)100〜1000%且つ100%伸張時応力(100℃測定値)が0.1〜100MPaの範囲にあることを特徴とする、樹脂フィルムによって達成することができる。
{ステレオコンプレックス結晶化度(S)は示差走査熱量計(DSC)測定で、190℃未満に観測されるポリ乳酸ホモ結晶融解熱(△Hm)、190℃以上に観測されるポリ乳酸ステレオコンプレックス結晶融解熱(△Hmsc)より次式(I)により求めた。
[数1]
(S)=〔△Hmsc / (△Hm +△Hmsc)〕×100 (I)}
【0010】
上記の発明には、以下も包含される。
2.MD方向、TD方向におけるフィルム破断伸度(100℃測定値)100〜1000%且つ100%伸張時応力(100℃測定値)が0.5〜25MPaの範囲にある、上記1に記載の樹脂フィルム。
3.樹脂フィルムが、さらにアクリル系樹脂(B成分)を含む、上記1または2記載の樹脂フィルム。
4.ポリ乳酸(A成分)に、カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物(C成分)を含む、上記1または2記載の樹脂フィルム。
5.樹脂フィルムが、ポリ乳酸(A成分)、アクリル系樹脂(B成分)及びカルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物(C成分)を含む、上記1または2記載の樹脂フィルム。
【0011】
6.C成分が下記式(1)で表される上記4または5記載の樹脂フィルム。
【化1】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
7.Qは、下記式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される2〜4価の結合基である上記6記載の樹脂フィルム。
【化2】

(式中、ArおよびArは各々独立に、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。RおよびRは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基またはこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。XおよびXは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。sは0〜10の整数である。kは0〜10の整数である。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。Xは、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。但し、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
【0012】
8.C成分が、下記式(2)で表される上記6記載の樹脂フィルム。
【化3】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
9.Qは、下記式(2−1)、(2−2)または(2−3)で表される2価の結合基である上記8記載の樹脂フィルム。
【化4】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)中のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。)
【0013】
10.C成分が、下記式(3)で表される上記6記載の樹脂フィルム。
【化5】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである3価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。Yは、環状構造を担持する担体である。)
11.Qは、下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される3価の結合基である、上記10記載の樹脂フィルム。
【化6】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。)
12.Yは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである、上記10または11記載の樹脂フィルム。
【0014】
13.C成分が、下記式(4)で表される上記6記載の樹脂フィルム。
【化7】

(式中、Qは、脂肪族基、芳香族基、脂環族基またはこれらの組み合わせである4価の結合基であり、ヘテロ原子を保有していてもよい。ZおよびZは、環状構造を担持する担体である。)
14.Qは、下記式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される4価の結合基である上記13記載の樹脂フィルム。
【化8】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
15.ZおよびZは各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである上記13または14記載の樹脂フィルム。
【0015】
また、本発明の第2の目的は、
16.上記1〜15のいずれか記載の樹脂フィルムを基板とし、該基板上に意匠層を備える加飾フィルムによって達成される。
上記の発明には以下も包含される。
17.基板が略非結晶状態である、上記16記載の加飾フィルム。
【0016】
また、本発明の第3の目的は、
18.成形体の表面に上記16記載の加飾フィルムが積層一体化されてなる加飾成形品によって達成される。
上記の発明には以下も包含される。
19.成形体が樹脂成形体である、上記18記載の加飾成形品。
20.樹脂成形体がステレオコンプレックスポリ乳酸を含む、上記19記載の加飾成形品。
【0017】
最後に本発明の第4の目的は、
21.上記18または19記載の加飾成形品の製造方法であって、加飾フィルムと成形体とを貼合するにあたり、加飾フィルムの基板が略非結晶状態のものを用いることを特徴とする、加飾成形品の製造方法、
22.上記18または19記載の加飾成形品の製造方法であって、加飾フィルムと成形体との貼合を加飾フィルムを加熱した状態で、真空下に成形体表面と接触させることによって行い、且つ、加熱前の加飾フィルムの基板が略非結晶状態のものを用いることを特徴とする、加飾成形品の製造方法、
23.上記19記載の加飾成形品の製造方法であって、加飾フィルムと成形体とを貼合するにあたり、貼合を、加飾フィルムを予備賦形した後に射出成形の金型内に挿入し、ついで成型物材料となる樹脂を金型内に射出するインサートモールド法によって行い、且つ、予備賦形前の加飾フィルムの基板が略非結晶状態のものを用いることを特徴とする、加飾成形品の製造方法、
24.上記18または19記載の加飾成形品の製造方法であって、加飾フィルムと成形体とを貼合するにあたり、加飾フィルムの基板が略非結晶状態にないものを用いることを特徴とする、加飾成形品の製造方法、によって達成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、透明性に優れ、かつ環境にも配慮した加飾フィルムを提供することのできる樹脂フィルム、この樹脂フィルムに意匠層を備える加飾フィルム、この加飾フィルムと成形体とを積層一体化した加飾成形品およびその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明における加飾成形品の一態様を示す模式図である。
【図2】本発明における加飾成形品の一態様を示す模式図である。
【図3】実施例、参考例、比較例における樹脂成形体の形状を表す模式図である。
【図4】実施例における樹脂成形体の形状を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
<樹脂フィルム>
本発明における、樹脂フィルムは、ポリ乳酸(A成分)を含む樹脂フィルムであって、当該ポリ乳酸(A成分)が、ポリD−乳酸成分及びポリL−乳酸成分を含むポリ乳酸であり、ステレオコンプレックス結晶化度(S)が90%以上で、MD方向、TD方向におけるフィルム破断伸度(100℃測定値)100〜1000%且つ100%伸張時応力(100℃測定値)が0.1〜100MPaの範囲にあることを特徴とする。
{ステレオコンプレックス結晶化度(S)は示差走査熱量計(DSC)測定で、190℃未満に観測されるポリ乳酸ホモ結晶融解熱(△Hm)、190℃以上に観測されるポリ乳酸ステレオコンプレックス結晶融解熱(△Hmsc)より次式(I)により求めた。
[数2]
(S)=〔△Hmsc / (△Hm +△Hmsc)〕×100 (I)}
【0021】
本発明の樹脂フィルムは、MD方向、TD方向におけるフィルム破断伸度(100℃測定値)100〜1000%且つ100%伸張時応力(100℃測定値)が0.1〜100MPaの範囲にあることが必要である。この範囲にあるときには、加飾フィルムの基板として用いた際に、得られる加飾フィルムが、対象となる成型品の表面に品質よく貼合することができ、しわなどが発生したり、フィルムの破断などがおこったりすることがない。
【0022】
特に、得られた加飾フィルムを、鋭角な折れ曲がりの部分を有する形状の成形体に貼合する場合を考慮すると、MD方向、TD方向におけるフィルム破断伸度(100℃測定値)100〜1000%且つ100%伸張時応力(100℃測定値)が0.1〜25MPaの範囲にあることが好ましく、より好ましくは、MD方向、TD方向におけるフィルム破断伸度200〜700%且つ100%伸張時応力(100℃測定値)が0.5〜20MPaの範囲、さらに好ましくは、MD方向、TD方向におけるフィルム破断伸度250〜600%且つ100%伸張時応力(100℃測定値)が1〜15MPaの範囲、最も好ましくは、MD方向、TD方向におけるフィルム破断伸度300〜500%且つ100%伸張時応力(100℃測定値)が2〜10MPaの範囲である。
【0023】
なお、本発明における、MD方向、TD方向におけるフィルム破断伸度(100℃測定値)、100%伸張時応力(100℃測定値)は、測定装置としてチャック部を加熱チャンバーで覆った引張試験機(株式会社島津製作所製 精密万能試験機オートグラフ AG−X)を用い、サンプルフィルムを幅10mm、長さ100mmに切り出し、チャック間50mmにサンプルを装着し、JIS−C2151に従って引張速度50mm/minの条件で引張試験を行って求めた。なお、サンプルの切り出し方向は、フィルム流れ方向であるMD方向、およびそれと直交する幅方向をTD方向として、それぞれMD方向、TD方向に平行な方向を長さ方向としてサンプリングし、MD方向、TD方向の引張り測定値を評価した。
【0024】
この時、引張試験機のチャック部分に設置されている加熱チャンバーにより、サンプルの存在する雰囲気下は100℃に保ち、測定は5回行って平均値を結果とした。
フィルム破断伸度(100℃測定値)は破断時の長さから引張前のサンプル長を引いた値を引張前のサンプル長で割った値の%として算出した。100%伸長時応力(100℃測定値)は荷伸曲線の100%伸張時の荷重を引張前のサンプル断面積で割って算出(MPa)した。
【0025】
本発明の樹脂フィルムは透明であることが好ましく、ヘーズ値(%)としては、5%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下、最も好ましくは1%以下である。また、加飾成形品となった後の樹脂フィルムのヘーズ値も低いことが好ましく、ヘーズ値(%)としては、5%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下、最も好ましくは1%以下である。
【0026】
ここで、樹脂フィルムとしては、後述するポリ乳酸(A成分)を含むことが必須であるが、後述のように、A成分とB成分とを少なくとも含むもの、A成分とC成分とを含むもの、A成分、B成分およびC成分を少なくとも含むものが好適に用いられる。
【0027】
樹脂フィルム中のポリ乳酸(A成分)成分の含有量は40重量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70%重量以上、最も好ましくは75重量%以上である。ポリ乳酸(A成分)の含有量が40重量%未満であると、ポリ乳酸(A成分)の結晶化が生じにくくなり、耐熱性に問題が生じる場合等がある。ポリ乳酸(A成分)以外の樹脂を含有させる場合には、樹脂フィルム成形性の観点から熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0028】
ポリ乳酸以外の熱可塑性樹脂としては、たとえばポリ乳酸樹脂以外のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、芳香族ポリケトン樹脂、脂肪族ポリケトン樹脂、フッソ樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、熱可塑性澱粉樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ACS樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ビニルエステル系樹脂、MS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0029】
特に好ましくは、ポリ乳酸(A成分)との相溶性が良く、また屈折率が近いという観点からアクリル系樹脂(B成分)、とりわけ、ポリメタクリル酸メチルである。樹脂フィルムにおけるアクリル系樹脂(B成分)含有量としては、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。アクリル系樹脂が50重量%より多い場合においてはポリ乳酸(A成分)を結晶化させることが困難であり、耐熱性等に問題が生じる場合がある。アクリル系樹脂については後述する。
【0030】
<ポリ乳酸(A成分)>
本発明において、樹脂フィルムは、ポリ乳酸(A成分)を含む。ポリ乳酸(A成分)は、ポリD−乳酸成分及びポリL−乳酸成分を含み、ステレオコンプレックス結晶化度(S)が90%以上である。
【0031】
ステレオコンプレックス結晶化度(S)は示差走査熱量計(DSC)測定で、190℃
未満に観測されるポリ乳酸ホモ結晶融解熱(ΔHm)、190℃以上に観測されるポリ乳酸ステレオコンプレックス結晶融解熱(ΔHmsc)より次式(I)により求められる値である。
[数3]
(S)=〔ΔHmsc / (ΔHm + ΔHmsc)〕×100 (I)
【0032】
ステレオコンプレックス結晶化度(S)は好ましくは93%から100%、より好ましくは95%から100%の範囲が選択される。特に好ましくはステレオコンプレックス結晶化度(S)は100%である。
ステレオコンプレックス結晶化度(S)が90%以上である樹脂フィルムを用いると、この樹脂フィルムから得られる加飾フィルム、および、加飾成形品において、表面の透明性を高く保つことができる。また、加飾成形品表面の耐熱性も高いものとなる。
【0033】
なお、ステレオコンプレックス結晶化度(S)は、ポリ乳酸(A成分)が示差走査熱量計(DSC)の測定条件下(190℃)におけるステレオコンプレックス結晶を形成する割合を表すものであり、ステレオコンプレックス結晶化度(S)が100%であったとしても、DSC測定前のポリ乳酸(A成分)は、結晶状態である場合も、非結晶状態である場合もあるが、本発明の樹脂フィルムは、さらに、略非結晶状態であることが好ましい。
【0034】
ここで「略非結晶状態」とは、DSC測定で(示差走査熱量計)、昇温速度は20℃/分で求めた、第一回昇温時のステレオコンプレックスポリ乳酸結晶のピーク熱量(ΔHcsc)が下記(30)式を満足することである。なお、本明細書においては、特に断りが無ければ高分子結晶のピーク熱量をΔHcと表すが、ΔHcscはステレオコンプレックスポリ乳酸の場合のΔHcであるとする。
[数4]
ΔHcsc > 1J/g (30)
【0035】
上記式を満足しない場合には、三次元的な凹凸が大きい成形体を、樹脂フィルムから得られる加飾フィルムと貼り合わせする場合、例えば、鋭角な折れ曲がりの部分を有する形状に深絞り加工された成形体に貼合する場合に、加飾フィルムが破断したり、成形不良が生じたりする。好ましくは、
[数5]
ΔHcsc > 3J/g (31)
さらに好ましくは、
[数6]
ΔHcsc > 5J/g (32)
最も好ましくは、
[数7]
ΔHcsc > 10J/g (33)
である。
【0036】
特に、鋭角な折れ曲がりの部分を有する成形体に貼合する加飾フィルムの基板となる場合を考慮すると、樹脂フィルムとしては、MD方向、TD方向におけるフィルム破断伸度(100℃測定値)100〜1000%且つ100%伸張時応力(100℃測定値)が0.5〜25MPaの範囲にあり且つ略非結晶状態であることが好ましい。
【0037】
上述のステレオコンプレックス結晶化度を好適に満たすために、ポリ乳酸において、ポリD−乳酸成分とポリL−乳酸成分との重量比は90/10から10/90であることが好ましい。
より好ましくは80/20から20/80、さらに好ましくは30/70から70/30、とりわけ好ましくは40/60から60/40の範囲であり、理論的には1/1にできるだけ近い方が好ましく選択される。
【0038】
また、本発明におけるポリL‐乳酸成分およびポリD‐乳酸成分の重量平均分子量は、フィルムの機械物性及び成形性を両立させるため、好ましくは10万から50万、より好ましくは11万から35万、さらに好ましくは12から25万の範囲が選択される。
【0039】
ポリL‐乳酸成分およびポリD‐乳酸成分は、従来公知の方法で製造することができる。
例えば、L‐ラクチドまたはD‐ラクチドを金属含有触媒の存在下、開環重合することにより製造することができる。また金属含有触媒を含有する低分子量のポリ乳酸を、所望により結晶化させた後、あるいは結晶化させることなく、減圧下または常圧から加圧下、不活性ガス気流の存在下、あるいは非存在下、固相重合させ製造することもできる。さらに有機溶媒の存在または非存在下、乳酸を脱水縮合させる直接重合法により製造することができる。
【0040】
重合反応は、従来公知の反応容器で実施可能であり、例えば開環重合あるいは直接重合法においてはヘリカルリボン翼等、高粘度用撹拌翼を備えた縦型反応器あるいは横型反応器を単独、または並列して使用することができる。また、回分式あるいは連続式あるいは半回分式のいずれでも良いし、これらを組み合わせてもよい。
【0041】
重合開始剤としてアルコールを用いてもよい。かかるアルコールとしては、ポリ乳酸の重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスルトールなどを好適に用いることができる。
【0042】
固相重合法で使用するポリ乳酸プレポリマーは、予め結晶化させることが、樹脂ペレット融着防止の面から好ましい実施形態と言える。プレポリマーは固定された縦型或いは横型反応容器、またはタンブラーやキルンの様に容器自身が回転する反応容器(ロータリーキルン等)中、プレポリマーのガラス転移温度から融点未満の温度範囲で固体状態で重合される。
【0043】
金属含有触媒としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、遷移金属類、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、チタン等の脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート等が例示される。
なかでもスズ、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、チタン、ゲルマニウム、マンガン、マグネシウムおよび稀土類元素より選択される少なくとも一種の金属を含有する脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラートが好ましい。
【0044】
触媒活性、副反応の少なさからスズ化合物、具体的には塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第二スズ、ミリスチン酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、テトラフェニルスズ等のスズ含有化合物が好ましい触媒として例示でされる。
なかでも、スズ(II)化合物、具体的にはジエトキシスズ、ジノニルオキシスズ、ミリスチン酸スズ(II)、オクチル酸スズ(II)、ステアリン酸スズ(II)、塩化スズ(II)などが好適に例示される。
【0045】
触媒の使用量は、ラクチド1kg当たり0.42×10−4から100×10−4(モル)でありさらに反応性、得られるポリラクチド類の色調、安定性を考慮すると1.68×10−4から42.1×10−4(モル)、特に好ましくは2.53×10−4から16.8×10−4(モル)モル使用される。
【0046】
ポリ乳酸重合に使用された金属含有触媒は、ポリ乳酸使用に先立ち、従来公知の失活剤で不活性化しておくのが好ましい。
かかる失活剤としては例えばイミノ基を有し且つ重合金属触媒に配位し得るキレート配位子の群からなる有機リガンド及びジヒドリドオキソリン(I)酸、ジヒドリドテトラオキソ二リン(II,II)酸、ヒドリドトリオキソリン(III)酸、ジヒドリドペンタオキソ二リン(III)酸、ヒドリドペンタオキソ二(II,IV)酸、ドデカオキソ六リン(III)酸、ヒドリドオクタオキソ三リン(III,IV,IV)酸、オクタオキソ三リン(IV,III,IV)酸、ヒドリドヘキサオキソ二リン(III,V)酸、ヘキサオキソ二リン(IV)酸、デカオキソ四リン(IV)酸、ヘンデカオキソ四リン(IV)酸、エネアオキソ三リン(V,IV,IV)酸等の酸価数5以下の低酸化数リン酸、式 xHO・yPで表され、x/y=3のオルトリン酸、2>x/y>1であり、縮合度より二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸等と称せられるポリリン酸及びこれらの混合物、x/y=1で表されるメタリン酸、なかでもトリメタリン酸、テトラメタリン酸、1>x/y>0で表され、五酸化リン構造の一部をのこした網目構造を有するウルトラリン酸(これらを総称してメタリン酸系化合物と呼ぶことがある。)、及びこれらの酸の酸性塩、一価、多価のアルコール類、あるいはポリアルキレングリコール類の部分エステル、完全エスエテル、ホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体などが例示される。
【0047】
触媒失活能から、式xHO・yPで表され、x/y=3のオルトリン酸、2>x/y>1であり、縮合度より二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸等と称せられるポリリン酸及びこれらの混合物、x/y=1で表されるメタリン酸、なかでもトリメタリン酸、テトラメタリン酸、1>x/y>0で表され、五酸化リン構造の一部をのこした網目構造を有するウルトラリン酸(これらを総称してメタリン酸系化合物と呼ぶことがある。)、及びこれらの酸の酸性塩、一価、多価のアルコール類、あるいはポリアルキレングリコール類の部分エステルリンオキソ酸あるいはこれらの酸性エステル類、ホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体及び上記のメタリン酸系化合物が好適に使用される。
【0048】
本発明で使用するメタリン酸系化合物は、3から200程度のリン酸単位が縮合した環状のメタリン酸あるいは立体網目状構造を有するウルトラ領域メタリン酸あるいはそれらの(アルカル金属塩、アルカリ土類金属塩、オニウム塩)を包含する。なかでも環状メタリン酸ナトリウムやウルトラ領域メタリン酸ナトリウム、ホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体のジヘキシルホスホノエチルアセテート(以下、DHPAと略称することがある)などが好適に使用される。
【0049】
本発明で使用するポリ乳酸は、含有ラクチド量が1から5000ppmのものが好ましい。ポリ乳酸中に含有するラクチドは溶融加工時、樹脂を劣化させ、色調を悪化させ、場合によっては製品として使用不可能にする場合がある。
【0050】
溶融開環重合された直後のポリL−D−乳酸および/またはポリD−乳酸は通常1から5重量%のラクチドを含有するが、ポリL−D−乳酸および/またはポリD−乳酸重合終了の時点からポリ乳酸成形までの間の任意の段階において、従来公知のラクチド減量法により、即ち一軸あるいは多軸押出機での真空脱揮法、あるいは重合装置内での高真空処理等を単独であるいは組み合わせて実施することにラクチドを好適な範囲に低減することができる。
【0051】
ラクチド含有量は少ないほど、樹脂の溶融安定性、耐湿熱安定性は向上するが、樹脂溶融粘度を低下させる利点もあり、所望の目的に合致した含有量にするのが合理的、経済的である。すなわち、実用的な溶融安定性が達成される1から1000ppmに設定するのが合理的である。さらに好ましくは1から700ppm、より好ましくは2から500ppm、特に好ましくは5から100ppmの範囲が選択される。
【0052】
ポリ乳酸成分がかかる範囲のラクチド含有量を有することにより、本発明のポリ乳酸フィルムの溶融製膜時の樹脂の安定性を向上せしめ、フィルムの製造を効率よく実施できる利点及びフィルムの耐湿熱安定性、低ガス性を高めることが出来る。
【0053】
本発明に使用されるポリ乳酸の重量平均分子量は、成形加工性と得られる成形品の機械的、熱的物性との関係を考察して選択される。即ち、組成物の強度、伸度、耐熱性等の機械的、熱的物性を発揮させるためには重量平均分子量は好ましくは8万以上、より好ましくは10万以上、さらに好ましくは13万以上である。
【0054】
しかし、重量平均分子量の上昇とともに、ポリ乳酸の溶融粘度は指数関数的に上昇し、射出成形等の溶融成形を行うとき、樹脂粘度を成形可能範囲にするため、成形温度をポリ乳酸の耐熱温度以上に高く設定しなければならない場合が発生する。
具体的には、ポリ乳酸は、300℃を超える温度で成形を行うと樹脂の熱分解のためフィルム品が着色し、商品としての価値が低いものとなってしまう可能性が高い。
【0055】
したがってポリ乳酸組成物の重量平均分子量は、好ましくは50万以下、より好ましくは40万以下、さらに好ましくは30万以下である。従ってポリ乳酸の重量平均分子量は、好ましくは8万から50万、より好ましくは10万から40万、さらに好ましくは13万から30万である。
【0056】
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比を分子量分散(Mw/Mn)という。分子量分散が大きいことは、平均分子量に比較し、大きな分子や小さな分子の割合が多いことを意味する。
【0057】
即ち、例えば重量平均分子量が25万程度で、分子量分散の3以上のポリ乳酸は、分子量が25万より大きい分子の割合が大きくなる場合があり、この場合、溶融粘度が大きくなり、上記の意味で成形上好ましくない。また8万程度の比較的小さい重量平均分子量で分子量分散の大きなポリ乳酸組成物では、分子量が8万より小さい分子の割合が大きくなる場合があり、この場合、成形品の機械的物性の耐久性が小さくなり、使用上好ましくない。かかる観点より分子量分散の範囲は、好ましくは1.5から2.4、より好ましくは1.6から2.4、さらに好ましくは1.6から2.3の範囲である。
【0058】
本発明の樹脂フィルムで用いられるポリ乳酸は、前述したようにポリL−乳酸成分とポリD−乳酸成分とを重量比で10/90から90/10の範囲で接触させることにより、好ましくは溶融接触させることにより、より好ましくは溶融混練接触させることにより得ることができる。
【0059】
このポリL−乳酸成分とポリD−乳酸成分との接触温度はポリ乳酸の溶融時の安定性及びステレオコンプレックス結晶化度の向上の観点より220から290℃、好ましくは220から280℃、さらに好ましくは225から275℃の範囲が選択される。
【0060】
溶融混練方法は特に限定されるものではないが、従来公知のバッチ式或いは連続式の溶融混合装置が好適に使用される。たとえば、溶融撹拌槽、一軸、二軸の押出し機、ニーダー、無軸籠型撹拌槽、住友重機械工業(株)製「バイボラック」、三菱重工業(株)製N−SCR,(株)日立製作所製めがね翼、格子翼あるいはケニックス式撹拌機、あるいはズルツァー式SMLXタイプスタチックミキサー具備管型重合装置などを使用できるが、生産性、ポリ乳酸の品質とりわけ色調の点でセルフクリーニング式の重合装置である無軸籠型撹拌槽、N−SCR、2軸押し出しルーダーなどが好適に使用される。
【0061】
本発明で用いるポリ乳酸には、本発明の主旨に反しない範囲において、ステレオコンプレックスポリ乳酸結晶の形成を安定的且つ高度に進めるために特定の添加物を配合する手法が好ましく適用される。
【0062】
すなわち、例えば、ステレオコンプレックス結晶化促進剤として下記式(22)または(23)で表されるリン酸金属塩を添加する手法が挙げられる。
【0063】
【化9】

【0064】
式(22)中、R11は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R12、R13はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子またはアルミニウム原子を表し、pは1または2を表し、qはMがアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子のときは0を、アルミニウム原子の時は1または2を表す。
【0065】
【化10】

【0066】
式(23)中R14、R15およびR16は各々独立に、水素原子または炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子またはアルミニウム原子を表し、pは1または2を表し、qはMがアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子のときは0を、アルミニウム原子の時は1または2を表す。
【0067】
式(22)または(23)で表されるリン酸金属塩のM、Mは、Na、K、Al、Mg、Ca、Liが好ましく、特に、K、Na、Al、LiなかでもLi、Alが最も好適に用いることができる。
【0068】
これらのリン酸金属塩は、(株)ADEKA製の商品名、「アデカスタブ」NA−11、NA−71等が好適な剤として例示される。ポリ乳酸に対して、リン酸金属塩は0.001から2wt%、好ましくは0.005から1wt%、より好ましくは0.01から0.5wt%さらに好ましくは0.02から0.3wt%用いることが好ましい。少なすぎる場合には、ステレオコンプレックス結晶化度(S)を向上する効果が小さく、多すぎるとステレオコンプレックス結晶融点を低下させるので好ましくない。
【0069】
さらに所望により、リン酸金属塩の作用を強化するため、以下記載する公知の結晶化核剤を併用することができる。なかでも珪酸カルシウム、タルク、カオリナイト、モンモリロナイトが好ましくは選択される。
結晶化核剤の使用量はポリ乳酸に対し0.05から5wt%、より好ましくは0.06から2wt%、さらに好ましくは0.06から1wt%の範囲が選択される。
【0070】
また、ステレオコンプレックス結晶化助剤[(エポキシ基、オキサゾリン基、オキサジン基、イソシアネート基、ケテン基及びカルボジイミド基)(以下特定官能基と略称することがある)の群より選択される官能基を分子中に少なくとも1個有する化合物]を添加する手法が挙げられる。
【0071】
本発明においてステレオコンプレックス結晶化助剤とは、特定官能基がポリ乳酸の分子末端と反応して、部分的にポリL−乳酸ユニットとポリD−乳酸ユニットとを連結し、ステレオコンプレックス結晶形成を促進させているものと本発明者らが推察する剤である。
【0072】
ステレオコンプレックス結晶化助剤としては以下に記載する従来ポリエステルのカルボキシル末端基封鎖剤として公知の剤を好適に適用することができる。なかでも、ステレオコンプレックス結晶形成促進効果よりカルボジイミド化合物が好適に選択される。
【0073】
しかしながらステレオコンプレックス結晶化助剤とりわけ、窒素を含有するステレオコンプレックス結晶化助剤は、ステレオコンプレックス結晶形成時、剤の熱分解のため悪臭による作業環境悪化、ポリ乳酸の色調悪化を引き起こす危険性が大きいため、使用しないことが好ましく、使用する場合には、ステレオコンプレックス結晶の高度形成に重点を置く場合に限定し、可能な限り少量に抑制して使用することが好ましい。
【0074】
ステレオコンプレックス結晶化助剤の使用量は上記と同じ基準において1wt%以下、好ましくは、0から0.5wt%、より好ましくは0から0.3wt%、さらに好ましくは0から0.1wt%の範囲が選択される。
【0075】
すなわち上記ステレオコンプレックス結晶化促進剤の手法は単独に適用することが好ましく、ステレオコンプレックス結晶形成により重点をおく場合にステレオコンプレックス結晶化助剤の手法と組み合わせて適用することが好ましく選択される。
【0076】
本発明においては、ポリ乳酸のカルボキシル末端基濃度は0.01から10(当量/10g)、{以下(当量/10g)を(当量/ton)と略称することがある。}が好ましい。より好ましくは0.02から2(当量/ton)、さらに好ましくは0.02から1(当量/ton)の範囲が好適に選択される。
【0077】
カルボキシル末端基濃度がこの範囲内にある時には、溶融安定性、湿熱安定性を良好なものとすることができる。ポリ乳酸のカルボキシル末端基濃度を10(当量/ton)以下にするには、ポリエステル組成物で従来公知のカルボキシル末端基濃度の低減方法を好適に適用することができ、例えばアルコール、アミンによってエステルまたはアミド化することもできるが、後述のC成分を用いることが好ましい。
【0078】
<アクリル系樹脂(B成分)>
上述のアクリル系樹脂(B成分)は、シクロヘキシルメタクリレート、4−tert−ブチルシクロへキシルメタクリレート、メチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステルより選ばれる1種以上の単量体を重合したものである。これらの単量体は、単独でまたは2種以上混合して用いることができる。なかでも、メタクリル酸メチルの単独重合体または他の単量体との共重合体が好ましい。
【0079】
メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体としては、他のメタリル酸アルキルエステル類、アクリル酸アルキルエステル類、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、N−フェニルマレイミド、N−シクロへキシルマレイミド等のマレイミド類、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和酸類が挙げられる。これらメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体の中でも、特にアクリル酸アルキルエステル類は耐熱分解性に優れる。またアクリル酸アルキルエステル類を共重合させて得られるメタクリル系樹脂は成形加工時の流動性が高く好ましい。
【0080】
メタクリル酸メチルにアクリル酸アルキルエステル類を共重合させる場合のアクリル酸アルキルエステル類の使用量は、耐熱分解性の観点から0.1重量%以上であることが好ましく、耐熱性の観点から15重量%以下であることが好ましい。0.2重量%以上14重量%以下であることがさらに好ましく、1重量%以上12重量%以下であることがとりわけ好ましい。
【0081】
このアクリル酸アルキルエステル類の中でも、特にアクリル酸メチルおよびアクリル酸エチルは、それを少量メタクリル酸メチルと共重合させても上記改良効果は著しく最も好ましい。上記メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体は一種または二種以上組み合わせて使用することもできる。
【0082】
アクリル系樹脂(B成分)の重量平均分子量は、好ましくは5万〜20万である。重量平均分子量は成形品の強度の観点から5万以上が好ましく、成形加工性、流動性の観点から20万以下が好ましい。さらに好ましい範囲は7万−15万である。また、本発明においてはアイソタクチックポリメタクリル酸エステルとシンジオタクチックポリメタクリル酸エステルを同時に用いることもできる。
【0083】
アクリル系樹脂(B成分)を製造する方法として、例えばキャスト重合、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、アニオン重合等の一般に行われている重合方法を用いることができるが、加飾シートとするにあたり、微小異物の混入は極力避けることが好ましく、この観点からは懸濁剤や乳化剤を用いない塊状重合や溶液重合が望ましい。溶液重合を行う場合には、単量体の混合物をトルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素の溶媒に溶解して調整した溶液を用いることができる。塊状重合により重合させる場合には、通常行われるように加熱により生じる遊離ラジカルや電離性放射線照射により重合を開始させることができる。
【0084】
重合反応に用いられる開始剤としては、一般にラジカル重合において用いられる任意の開始剤を使用することができ、例えばアゾビスイソブチルニトリル等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物が用いられる。また、特に90℃以上の高温下で重合を行わせる場合には、溶液重合が一般的であるので、10時間半減期温度が80℃以上でかつ用いる有機溶媒に可溶である過酸化物、アゾビス開始剤等が好ましい。具体的には1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソプチロニトリル等を挙げることができる。これらの開始剤は0.005〜5重量%の範囲で用いられる。
【0085】
重合反応に必要に応じて用いられる分子量調節剤は、一般的なラジカル重合において用いる任意のものが使用される。例えば、ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル等のメルカプタン化合物が特に好ましいものとして挙げられる。これらの分子量調節剤は、重合度が上記の範囲内に制御されるような濃度範囲で添加される。
【0086】
<C成分>
本発明において、ポリ乳酸成(A成分)、樹脂フィルムに好ましく含めてよいC成分、カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物、について説明する。C成分は環状構造を有する(以下、C成分を環状カルボジイミド化合物と略記することがある。)。環状カルボジイミド化合物は、環状構造を複数有していてもよい。
【0087】
ここで環状構造は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されて形成している。一つの環状構造中には、1個のカルボジイミド基のみを有するが、例えば、スピロ環など、分子中に複数の環状構造を有する場合にはスピロ原子に結合するそれぞれの環状構造中に1個のカルボジイミド基を有していれば、化合物として複数のカルボジイミド基を有していてよいことはいうまでもない。環状構造中の原子数は、好ましくは8〜50、より好ましくは10〜30、さらに好ましくは10〜20、特に、10〜15が好ましい。
【0088】
ここで、環状構造中の原子数とは、環状構造を直接構成する原子の数を意味し、例えば、8員環であれば8、50員環であれば50である。環状構造中の原子数が8より小さいと、環状カルボジイミド化合物の安定性が低下して、保管、使用が困難となる場合があるためである。また反応性の観点よりは環員数の上限値に関しては特別の制限はないが、50を超える原子数の環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より環状構造中の原子数は好ましくは、10〜30、より好ましくは10〜20、特に好ましくは10〜15の範囲が選択される。
【0089】
環状構造は、下記式(1)で表される構造であることが好ましい。
【化11】

【0090】
式中、Qは、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基である。ヘテロ原子とはこの場合、O、N、S、Pを指す。この結合基の価のうち2つの価は環状構造を形成するために使用される。Qが3価あるいは4価の結合基である場合、単結合、二重結合、原子、原子団を介して、ポリマーあるいは他の環状構造と結合している。
【0091】
結合基は、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基またはこれらの組み合わせであり、上記で規定される環状構造を形成するための必要炭素数を有する結合基が選択される。組み合わせの例としては、アルキレン基とアリーレン基が結合した、アルキレン−アリーレン基のような構造などが挙げられる。
【0092】
結合基(Q)は、下記式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される2〜4価の結合基であることが好ましい。
【0093】
【化12】

【0094】
式中、ArおよびArは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。
【0095】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基(2価)として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0096】
およびRは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、およびこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。
【0097】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0098】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0099】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これら芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0100】
上記式(1−1)、(1−2)においてXおよびXは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
【0101】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0102】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0103】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0104】
上記式(1−1)、(1−2)においてs、kは0〜10の整数、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0〜1の整数である。s及びkが10を超えると、環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より整数は好ましくは0〜3の範囲が選択される。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。
【0105】
上記式(1−3)においてXは、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
【0106】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂肪族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0107】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂環族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリーレン基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0108】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0109】
また、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
【0110】
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として、以下(a)〜(c)で表される化合物が挙げられる。
【0111】
<環状カルボジイミド化合物(a)>
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(2)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(a)」ということがある。)を挙げることができる。
【化13】

式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(2)の化合物においては、脂肪族基、脂環族基、芳香族基は全て2価である。Qは、下記式(2−1)、(2−2)または(2−3)で表される2価の結合基であることが好ましい。
【化14】

式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)中のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、これらは全て2価である。
【0112】
かかる環状カルボジイミド化合物(a)としては、以下の化合物が挙げられる。
【化15】

【0113】
【化16】

【0114】
【化17】

【0115】
【化18】

【0116】
【化19】

【0117】
【化20】

【0118】
【化21】

【0119】
【化22】

【0120】
【化23】

【0121】
【化24】

【0122】
【化25】

【0123】
【化26】

【0124】
【化27】

【0125】
【化28】

【0126】
<環状カルボジイミド化合物(b)>
さらに、本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(3)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(b)」ということがある。)を挙げることができる。
【0127】
【化29】

【0128】
式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基、またはこれらの組み合わせである3価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。Yは、環状構造を担持する担体である。脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(3)の化合物においては、Qを構成する基の内一つは3価である。
は、下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される3価の結合基であることが好ましい。
【0129】
【化30】

【0130】
式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。
Yは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーであることが好ましい。Yは結合部であり、複数の環状構造がYを介して結合し、式(3)で表される構造を形成している。
【0131】
かかる環状カルボジイミド化合物(b)としては、下記化合物が挙げられる。
【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【0132】
<環状カルボジイミド化合物(c)>
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(4)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(c)」ということがある。)を挙げることができる。
【0133】
【化35】

【0134】
式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである4価の結合基であり、ヘテロ原子を保有していてもよい。ZおよびZは、環状構造を担持する担体である。ZおよびZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(4)の化合物において、Qは4価である。従って、これらの基の内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
【0135】
は、下記式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される4価の結合基であることが好ましい。
【化36】

【0136】
Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。ZおよびZは各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーであることが好ましい。ZおよびZは結合部であり、複数の環状構造がZおよびZを介して結合し、式(4)で表される構造を形成している。
かかる環状カルボジイミド化合物(c)としては、下記化合物を挙げることができる。
【0137】
【化37】

【0138】
【化38】

【0139】
【化39】

【0140】
本発明における、樹脂フィルム中の環状カルボジイミド化合物(C成分)の割合は、ポリ乳酸(A成分)100重量部と基準にして環状カルボジイミド化合物(C成分)が0.001〜5重量部含有されることが好ましい。C成分の量がこの範囲にあれば、水分に対する安定性、耐加水分解安定性を好適に高めることができる。
【0141】
かかる観点より環状カルボジイミド化合物(C成分)の含有割合はより好ましくは、ポリ乳酸(A成分)100重量部あたり0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜4重量部の範囲が選択される。この範囲より少量であると環状カルボジイミド化合物(C成分)の効果が有効に認められないことがあり、また、この範囲を超えて多量に適用しても、耐加水分解安定性の更なる向上は期待されない。
【0142】
前述のように、樹脂フィルムがアクリル系樹脂(B成分)を含む場合には、樹脂フィルム中の環状カルボジイミド化合物(C成分)の割合は、上述の”ポリ乳酸(A成分)100重量部”を”ポリ乳酸(A成分)とアクリル系樹脂(B成分)との合計量100重量部”と読み代えればよい。
【0143】
本発明において、環状カルボジイミド化合物の製造方法は特に限定無く、従来公知の方法により製造することができる。例として、アミン体からイソシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からイソチオシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からトリフェニルホスフィン体を経由して製造する方法、アミン体から尿素体を経由して製造する方法、アミン体からチオ尿素体を経由して製造する方法、カルボン酸体からイソシアネート体を経由して製造する方法、ラクタム体を誘導して製造する方法などが挙げられる。
【0144】
また、本発明の環状カルボジイミド化合物は、以下の文献に記載された方法を組み合わせ、あるいは目的とする化合物に応じて適切に改変、組み合わせすることにより製造することができる。
【0145】
Tetrahedron Letters,Vol.34,No.32,515−5158,1993.
Medium−and Large−Membered Rings from Bis(iminophosphoranes):An Efficient Preparation of Cyclic Carbodiimides, Pedro Molina etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.61,No.13,4289−4299,1996.
New Models for the Study of the Racemization Mechanism of Carbodiimides.Synthesis and Structure(X−ray Crystallography and 1H NMR) of Cyclic Carbodiimides, Pedro Molina etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.43,No8,1944−1946,1978.
Macrocyclic Ureas as Masked Isocyanates, Henri Ulrich etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.48,No.10,1694−1700,1983.
Synthesis and Reactions of Cyclic Carbodiimides,R.Richteretal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.59,No.24,7306−7315,1994.
A New and Efficient Preparation of Cyclic Carbodiimides from Bis(iminophosphoranea)and the System BocO/DMAP,Pedro Molina etal.
【0146】
製造する化合物に応じて、適切な製法を採用すればよいが、例えば、(1)下記式(a−1)で表されるニトロフェノール類、下記式(a−2)で表されるニトロフェノール類および下記式(b)で表される化合物を反応させ、下記式(c)で表されるニトロ体を得る工程、
【化40】

【化41】

(2)得られたニトロ体を還元して下記式(d)で表わされるアミン体を得る工程、
【化42】

(3)得られたアミン体とトリフェニルホスフィンジブロミドを反応させ下記式(e)で表されるトリフェニルホスフィン体を得る工程、および
【化43】

(4)得られたトリフェニルホスフィン体を反応系中でイソシアネート化した後、直接脱炭酸させることによって製造したものは、本願発明に用いる環状カルボジイミド化合物として好適に用いることができる。
(上記式中、ArおよびArは各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい芳香族基である。EおよびEは各々独立に、ハロゲン原子、トルエンスルホニルオキシ基およびメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−ブロモベンゼンスルホニルオキシ基からなる群から選ばれる基である。Arは、フェニル基である。Xは、下記式(i−1)から(i−3)の結合基である。)
【0147】
【化44】

【化45】

【化46】

【0148】
なお、環状カルボジイミド化合物は、高分子化合物の酸性基を有効に封止することができるが、本発明の主旨に反しない範囲において、所望により、例えば、従来公知のポリマーのカルボキシル基封止剤を併用することができる。かかる従来公知のカルボキシル基封止剤としては、特開2005−2174号公報記載の剤、例えば、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、などが例示される。
【0149】
<A,B,C成分以外>
本発明の樹脂フィルムには、A,B,C成分以外の熱可塑性樹脂、安定剤、紫外線吸収剤、結晶化促進剤、充填剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤および耐衝撃性安定剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することができる。本発明に用いられるポリ乳酸は、安定剤を含有することが好ましい。安定剤としては通常の熱可塑性樹脂の安定剤に使用されるものを用いることができる。例えば酸化防止剤、光安定剤等を挙げることができる。これらの剤を配合することで機械的特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れたポリ乳酸フィルムを得ることができる。
【0150】
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物等を挙げることができる。
ヒンダードフェノール系化合物としては、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオ−ル−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。ヒンダードアミン系化合物として、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレン−ビス[3−(3’−メチル−5’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ジアミン、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオニル]ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4―トリアゾール、N,N’−ビス[2−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]オキシアミド等を挙げることができる。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
【0151】
ホスファイト系化合物としては、少なくとも1つのP−O結合が芳香族基に結合しているものが好ましく、具体的には、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンホスファイト、ビス(2,6―ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、トリス(ミックスドモノおよびジ−ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(フェニル−ジアルキルホスファイト)等が挙げられる。
【0152】
なかでもトリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,6―ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンホスファイト等が好ましく使用できる。
【0153】
チオエーテル系化合物の具体例として、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)等が挙げられる。
【0154】
光安定剤としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、環状イミノエステル系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることが出来る。光安定剤としては、紫外線吸収剤と光酸化で生成するラジカルを捕捉するものの組み合わせにて用いても良い。
【0155】
紫外線吸収剤としては、環状イミノエステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物が可視光における吸収を最小化できる点で好ましい。また、偏光膜や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、且つ液晶表示性能の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
【0156】
有用なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例として、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326、チヌビン(TINUVIN)328(何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を好ましく使用出来る。
【0157】
環状イミノエステル系化合物の具体例としては、2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが例示される。なかでも2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適であり、特に2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適である。環状イミノエステルは単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。
【0158】
当該環状イミノエステルは、WO03/035735号パンフレットに開示された各種の方法によって製造することができる。すなわち原料として無水イサト酸を利用する方法(殊に再結晶化された無水イサト酸を利用する方法)、並びにアントラニル酸を利用する方法のいずれも利用可能である。これらの酸化合物とカルボン酸クロライド化合物とを反応させて、環状イミノエステル化合物を得ることができる。これらは特公昭62−31027号公報に開示された如く、生成後に再結晶化処理を行ってもよい。かかる化合物は竹本油脂(株)からCEi−P(商品名)、およびCYTEC社からCYASORB UV−3638(商品名)として市販されており、容易に利用できる。
【0159】
ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メチル−アクリロキシイソプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸水和物、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ベンジロキシ−2−ハイドロキシベンゾフェノン、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)−ブタン等が挙げられる。
【0160】
本発明におけるポリ乳酸フィルムには、有機若しくは無機の結晶化促進剤を含有することができる。結晶化促進剤を含有することで、ステレオコンプレックス結晶促進剤の作用を一層増強することができ、機械的特性、耐熱性、および成形性に優れた成形品を得ることができる。
【0161】
本発明で使用する結晶化促進剤は一般に結晶性樹脂の結晶核剤として用いられるものを用いることができ、無機系の結晶核剤および有機系の結晶核剤のいずれをも使用することができる。
【0162】
無機系の結晶核剤として、タルク、カオリン、シリカ、合成マイカ、クレイ、ゼオライト、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化カルシウム、窒化ホウ素、モンモリロナイト、酸化ネオジム、酸化アルミニウム、フェニルフォスフォネート金属塩等が挙げられる。
【0163】
これらの無機系の結晶核剤は組成物中での分散性およびその効果を高めるために、各種分散助剤で処理され、一次粒子径が0.01から0.5μm程度の高度に分散状態にあるものが好ましい。
【0164】
有機系の結晶核剤としては、安息香酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カリウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、蓚酸カルシウム、テレフタル酸ジナトリウム、テレフタル酸ジリチウム、テレフタル酸ジカリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸バリウム、オクタコ酸ナトリウム、オクタコ酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、β−ナフトエ酸ナトリウム、β−ナフトエ酸カリウム、シクロヘキサンカルボン酸ナトリウム等の有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウム等の有機スルホン酸金属塩が挙げられる。
【0165】
また、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(tert−ブチルアミド)等の有機カルボン酸アミド、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリイソプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリビニルシクロアルカン、ポリビニルトリアルキルシラン、高融点ポリ乳酸、エチレン−アクリル酸コポマーのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、例えばジベンジリデンソルビトール等が挙げられる。
【0166】
これらのなかでタルク、および有機カルボン酸金属塩から選択された少なくとも1種が好ましく使用される。本発明のポリ乳酸フィルムで使用する結晶核剤は1種のみでもよく、2種以上を併用しても良い。
結晶化促進剤の含有量は、ポリ乳酸100重量部当たり、好ましくは0.01から30重量部、より好ましくは0.05から20重量部である。
【0167】
本発明で使用される帯電防止剤として、(β−ラウラミドプロピオニル)トリメチルアンモニウムスルフェート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の第4級アンモニウム塩系、スルホン酸塩系化合物、アルキルホスフェート系化合物等が挙げられる。
本発明のポリ乳酸フィルムにおいて帯電防止剤は1種類で用いても良いし2種以上を組み合わせて用いても良い。帯電防止剤の含有量は、ポリ乳酸100重量部に対し、好ましくは0.05から5重量部、より好ましくは0.1から5重量部である。
【0168】
本発明で使用する可塑剤としては一般に公知のものを使用することができる。例えば、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、およびエポキシ系可塑剤、等が挙げられる。
【0169】
ポリエステル系可塑剤として、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等の酸成分とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール等のジオール成分からなるポリエステルやポリカプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル等が挙げられる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸または単官能アルコールで末端封止されていても良い。
【0170】
グリセリン系可塑剤として、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンモノアセトモノモンタネート等が挙げられる。
【0171】
多価カルボン酸系可塑剤として、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシル等のトリメリット酸エステル、アジピン酸イソデシル、アジピン酸−n−デシル−n−オクチル等のアジピン酸エステル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)等のアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)等のセバシン酸エステルが挙げられる。
【0172】
リン酸エステル系可塑剤として、リン酸トリブチル、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸ジフェニル−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0173】
ポリアルキレングリコール系可塑剤として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチレンオキシド.プロピレンオキシド)ブロックおよびまたはランダム共重合体、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体等のポリアルキレングリコールあるいはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物および末端エーテル変性化合物等の末端封鎖剤化合物等が挙げられる。
【0174】
エポキシ系可塑剤として、エポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリド、およびビスフェノールAとエピクロルヒドリンを原料とするエポキシ樹脂が挙げられる。
【0175】
その他の可塑剤の具体的な例としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコール−ビス(2−エチルブチレート)等の脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド、オレイン酸ブチル等の脂肪酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル等のオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール、ポリアクリル酸エステル、シリコーンオイル、およびパラフィン類等が挙げられる。
【0176】
可塑剤として、特にポリエステル系可塑剤およびポリアルキレン系可塑剤から選択された少なくとも1種よりなるものが好ましく使用でき、1種のみでも良くまた2種以上を併用することもできる。
【0177】
可塑剤の含有量は、樹脂フィルム100重量部当たり、好ましくは0.01から30重量部、より好ましくは0.05から20重量部、さらに好ましくは0.1から10重量部である。本発明においては結晶核剤と可塑剤を各々単独で使用してもよいし、両者を併用して使用することがさらに好ましい。
【0178】
<樹脂フィルムの製造>
本発明の樹脂フィルムを得るには、押し出し成形、キャスト成形等の公知の成形手法を用いることができる。例えば、Tダイ、Iダイ、円形ダイ等が装着された押出機等を用いて、製膜することができる。
【0179】
押し出し成形により樹脂フィルムを得る場合は、事前にポリ乳酸(A成分)および他の成分を溶融混練した材料を用いることもできれば、押し出し成形時に溶融混練を経て成形することもできる。樹脂フィルムは、溶融フィルムを冷却ドラム上に押し出しついで該フィルムを回転する冷却ドラムに密着させ冷却することによって製造することができる。このとき溶融フィルムにはスルホン酸四級ホスホニウム塩等の静電密着剤を配合し、電極よりフィルム溶融面に非接触的に電荷を容易に印加し、それによってフィルムを、回転する冷却ドラムに密着させることにより表面欠陥の少ない樹脂フィルムを得てもよい。その際、押出し用ダイのリップ開度と冷却ドラム上に押出されたシートとの厚みとの比(ドラフト比)が2以上、80以下であることが好ましい。ドラフト比が2より小さくなると押出しダイリップからの引取り速度が遅くなり過ぎ、ダイリップからのポリマーの離れ速度が遅いため、ダイリップスジ欠点などの欠点が多くなり好ましくない場合がある。この観点からドラフト比は3以上が好ましく、5以上がより好ましく、9以上が更に好ましく、15以上が特に好ましい。また、ドラフト比が80より大きくなるとポリマーがダイリップから離れる時の変形が大きすぎるためか流動が不安定となり厚み変動(厚み斑)が悪くなり、好ましくない場合がある。この観点からはドラフト比は60以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましく、30以下であることが特に好ましい。
【0180】
前述のように、最終目的の加飾成形品の成形完了後においては、加飾フィルムにおいて基板となる樹脂フィルムは結晶化していることが好ましい。しかし、加飾フィルムを深絞り加工等、複雑な三次元形状を有する成形体の形状に合わせて貼合させる際には、上述の通りに樹脂フィルムは略非結晶状態としておくことが好ましい。
【0181】
ここで、略非結晶状態の樹脂フィルムを得るためには、ダイから出された溶融状態にある樹脂は急冷されることが好ましい。したがって、冷却ドラムの温度は10℃〜70℃に設定されることが好ましく、より好ましくは20℃〜60℃、最も好ましくは30℃〜50℃である。冷却ドラムの温度が10℃未満では冷却ドラムとの密着性が悪くなる場合があり、また、70℃より高い温度の場合には略非結晶状態を得ることが困難な場合がある。
【0182】
また、あらかじめ樹脂フィルムの延伸処理やその後に行う熱固定処理を行っても良い。複雑ではない三次元形状の成形体に貼合する場合には、このような手法を採用してもよい。
【0183】
樹脂フィルムの延伸は、公知の縦一軸延伸、横一軸延伸、同時二軸延伸等により行うことができ、該フィルムは、結晶性を高めるため、また、熱収縮性などの抑制のため延伸後、熱固定処理を行ってもよい。
【0184】
延伸倍率は目的によって適宜決定される。樹脂フィルムは、面積延伸倍率(縦倍率×横倍率)は、好ましくは6.0倍以下、より好ましくは4.0倍以下、さらに好ましくは2倍以下の範囲であり、次の熱固定工程において結晶化させる場合には、好ましくは1.02倍以上、さらに好ましくは1.05倍以上の範囲である。面積延伸倍率を6.0倍以上とした場合には、延伸性が悪くなり貼合成形性が困難となる場合がある。成形体と加飾フィルムの貼合一体化の前に、樹脂フィルムを結晶化させる場合においては、貼合性の観点から、延伸倍率は出来るだけ低い状態で延伸し、その後熱固定することが、好ましい。低倍率延伸でもステレオコンプレックスポリ乳酸は透明性が高く、通常のホモ結晶を有するポリ乳酸に比べて優位である。
【0185】
延伸温度は、樹脂フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)から結晶化温度(Tc)の範囲が好適に選択される。さらにTgより高温で、出来るだけTcに近いがポリ乳酸(A成分)の結晶化が進まない温度範囲がより好適に採用される。
【0186】
Tgより低い温度では分子鎖が固定されているので、延伸操作を好適に進めることが困難であるとともに、またTc以上ではポリ乳酸(A成分)の結晶化が進み、この場合も延伸工程を良好に進行させることが困難となる。
従って延伸温度としては、Tg−10℃以上がより好ましく、Tg−5℃以上がさらに好ましく、Tc+10℃以下がより好ましく、Tc+5℃以下がさらに好ましい。
【0187】
樹脂フィルムを成形体と貼合する前に結晶化させる場合には、樹脂フィルムを構成する樹脂の結晶化温度(Tc)からステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解開始温度(Tm)の温度範囲で熱固定処理することが好ましい。この熱固定処理をすることにより、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶化を進め、熱収縮率を好適に低下させるとともに、動的粘弾性(DMA)測定で貯蔵弾性率E’が常温(25℃)から150℃の温度範囲において極小値を発現することなく、0.5×10Paより大きな値を保つことができ、広い温度範囲で一定の弾性率を保つことができる。
【0188】
熱処理温度は、好ましくは90〜Tm(℃)、より好ましくは100〜(Tm−30)(℃)、さらに好ましくは105〜(Tm−40)(℃)である。
熱処理は1秒から30分の範囲で実施することが好ましい。熱処理温度が高いときは相対的に短い時間で、熱固定処理温度が低いときは相対的に長い時間の熱処理を要する。
【0189】
<加飾フィルム>
本発明において、加飾フィルムとは、樹脂フィルムを基板とし、少なくとも該基板上に意匠層を備えたものを意味する。
また、本発明において「意匠層」とは、加飾フィルムがその対象とする成形品に対していわゆる意匠を付与可能な層であればよく、例えば、印刷層、着色層、金属薄膜層、無機薄膜層、表面凹凸を有する賦形層等や、これらの多層構造等を挙げることができ、基板自体で意匠層としての効果を兼ねさせることができれば1層構成としてもよい。
【0190】
また、加飾フィルムの最表面にはこれら意匠層の他に傷着き防止のためのハードコート層、帯電防止層、防汚層、反射防止層、接着層、粘着層、帯電防止層、防汚層、反射防止層等を設けても良い。また、意匠層は、基板上表面に直接形成されていてもよいし、他の層を介して形成されていてもよい。
【0191】
基板上への印刷層の形成には、グラビア印刷、平板印刷、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、パット印刷、スクリーン印刷等の公知の印刷方法を製品形状や印刷用途に応じて使用することができる。特に多色刷りや階調表現を行うには、オフセット印刷やグラビア印刷が適している。また、加飾フィルムが複雑な形状に成型される場合は、延展性に優れた印刷インキを用いることが好ましく、バインダー樹脂がポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂等の柔軟な樹脂を主成分とするインキが好ましい。
【0192】
また、意匠層は、印刷層だけでなく、着色層、金属または金属酸化物の薄膜層であってもよく、印刷層と、金属(酸化物)の薄膜層との組み合わせからなるものでもよい。金属または金属酸化物の薄膜層を形成すると、加飾成形品内部の成形体への水蒸気や酸素の透過が抑制されるため、成型体の耐久性等を向上させることができる。
【0193】
金属(酸化物)の薄膜層を形成する方法としては、例えば、蒸着法、溶射法、メッキ法等が挙げられる。蒸着法としては、物理蒸着法、化学蒸着法のいずれも使用できる。物理蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング、イオンプレーティング等が例示される。化学蒸着(CVD)法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等が例示される。溶射法としては、大気圧プラズマ溶射法、減圧プラズマ溶射法等が例示される。メッキ法としては、無電解メッキ(化学メッキ)法、溶融メッキ法、電気メッキ法等が挙げられ、電気メッキ法においては、レーザーメッキ法等も使用することができる。上記の中でも、蒸着法およびメッキ法が金属層を形成する上で好ましく、蒸着法が金属酸化物層を形成する上で好ましい。また蒸着法とメッキ法は組み合わせて使用することができる。
【0194】
本発明の加飾フィルムには、成形体との接着性を向上させるために接着層または粘着層を有していても良い。接着層、粘着層としては特に限定されないが、ポリエステル系、ウレタン系、アクリル系、塩化ポリプロピレン系などが好ましく使用される。
その他、本発明の効果を奏する範囲内であれば、意匠層、接着層、粘着層等に用いられる材料、およびその形成方法は、加飾シートに用いられる公知のものをいずれも採用できる。
【0195】
また、本発明の加飾フィルムは基板が略非結晶状態にあるものと、略非結晶状態でないものとを含むが、略非結晶状態であれば、三次元的な凹凸が大きい成形体を、樹脂フィルムから得られる加飾フィルムと貼り合わせする場合、例えば、鋭角な折れ曲がりの部分を有する形状に深絞り加工された成形体に貼合する場合に、加飾フィルムが破断したり、成形不良が生じたりすることが無いので好ましい。
【0196】
<加飾成形品およびその製造方法>
加飾成形品の製造方法としては特に限定は無く、射出成形同時貼合法、真空貼合法等が好ましく用いられるが、特に射出成形同時貼合法の一種であるインサートモールド法、真空貼合法がより好ましく用いられる。
【0197】
対象とする成形体の形状などに応じ、貼合前の時点で加飾フィルムの基板が略非結晶状態のもの、略非結晶状態にないものをどちらも用いることもでき、例えば、深絞り加工等複雑な三次元的な構造を有する成形体を被覆する場合には、加飾フィルムの延伸性が向上するという観点から、成形体と貼合前の加飾フィルムの基板の状態は略非結晶状態とし、加飾フィルムと成形体との貼合後あるいは貼合途成中で熱を加えることにより結晶化させることが好ましい。
【0198】
結晶化の度合いとしては、広角X線回折(XRD)測定による回折ピークの強度比によって、式(II)で定義されるステレオコンプレックス結晶化率(Sc)が50%以上を有することがより好ましく、好ましくは50から100%、さらに好ましくは70から100%、とりわけ好ましくは90から100%の範囲が選択される。
【0199】
すなわちポリ乳酸が上記(Sc)を有することにより、フィルムの透明性、耐熱性、耐湿熱性をより好適に満たすことができる。特に透明性に関しては、ステレオコンプレックス結晶を有しないポリ乳酸に比べて、著しくヘーズを低減することが可能であり、加飾フィルムとしてはより好適である。
[数8]
Sc(%)=〔ΣISCi/(ΣISCi+IHM)〕×100 (II)
[ここで、ΣISCi=ISC1+ISC2+ISC3、ISCi(i=1から3)はそれぞれ2θ=12.0°, 20.7°, 24.0°付近の各回折ピークの積分強度、IHMは2θ=16.5°付近に現れるホモ結晶に由来する回折ピークの積分強度IHMを表す。]
【0200】
さらにポリ乳酸ステレオコンプレックス結晶の融点は190から250℃、より好ましくは200から230℃の範囲が好適に選択され、DSC測定による結晶融解エンタルピーは、20J/g以上、好ましくは20から80J/g、より好ましくは30から80J/gの範囲が選択される。
【0201】
インサートモールド法においては、真空成形や圧空成形等により予備賦形してから射出成形金型内に挿入し、そこに溶融樹脂を射出して、上記加飾フィルムと一体成型する。この方法の場合は、少なくとも予備賦形前の加飾フィルムの基板の状態は略非結晶状態であることが好ましい。
【0202】
この予備賦形の際のフィルム加熱温度の下限は加飾フィルムの基板のTg−20℃以上が好ましく、Tg−10℃以上がより好ましく、Tg−5℃以上がさらに好ましい。加熱温度の上限はTg+50℃以下が好ましく、Tg+40℃以下がより好ましく、Tg+30℃以下がさらに好ましい。ポリ乳酸のガラス転移温度は概ね55〜65℃であり、これはステレオコンプレックス結晶を有するポリ乳酸でも同様である。
【0203】
予備賦形された加飾フィルムは射出成形金型内に挿入され、成形体(樹脂)を構成する溶融樹脂を射出して、加飾フィルムと一体成型される。この射出成形の温度は樹脂の種類によって適宜設定される。また、金型の温度は、加飾フィルムの物性および工程を勘案して設定される。当該射出成形金型内で加飾フィルムの基板を略非結晶状態でないようにさせたい場合には、金型温度下限はTg−5℃以上が好ましく、Tg+5℃以上がより好ましく、Tg+10℃以上がさらに好ましい。金型温度上限はTc+30℃以下が好ましく、Tc+20℃以下がより好ましく、Tc+15℃以下がさらに好ましい。
【0204】
一方、射出成形工程後に、加飾成形品を取り出して、加飾フィルムの基板を略非結晶状態でないようにさせる場合には、金型温度下限はTg−10℃以上が好ましく、Tg−5℃以上がより好ましい。金型温度上限はTg+50℃以下が好ましく、Tg+40℃以下がより好ましく、Tg+30℃以下がさらに好ましい。
【0205】
真空貼合法においては、成形体は射出成形等で別途作っておき、これに加飾フィルムを真空中にて被覆接着するものである。本成形加飾方法は前述の特許文献4(特許第3733564号公報)や非特許文献(日本画像学会誌 第48巻 第4号 p277〜p284(2009))に記載の三次元表面加飾技術(「TOM工法」)を用いることが好ましい。この方法の場合は、貼合前の樹脂フィルムの状態は略非結晶状態であることが好ましい。
【0206】
接着層または粘着層を備える加飾フィルムおよび成形体を、真空装置に配置し、その後赤外線により加飾フィルムが加熱され、成形体と貼合される。この貼合前の加熱時の加飾フィルムの温度上限は、Tg+70℃以下が好ましく、Tg+60℃以下がより好ましく、Tg+50℃以下がさらに好ましい。
【0207】
下限は、Tg−10℃以上が好ましく、Tg+10℃以上がより好ましく、Tg+20℃以上がさらに好ましい。Tg+70℃以上では加飾フィルムが軟化し過ぎて真空装置中において貼合前の静置中に破断する場合があり、また、Tg−10℃未満の温度では、成形体と上手く貼合することが困難な場合がある。
【0208】
次いで、本発明の加飾成形品を図面を以って具体的に説明する。図1、2は本発明の一態様を示す模式図である。
図1で1は基板(樹脂フィルム)、2は加飾フィルム、3は意匠層、4は接着層または粘着層、5は成形体、6は加飾成形品であり、7は加飾成形品の最表面である。図1で3の意匠層は1と4との間にあるが、1の表面のいずれかまたは両方にあっても良い。
図2で11は基板(樹脂フィルム)、12は意匠層、13は加飾フィルム、14は加飾成形品、15は成形体、7は加飾成形品の最表面である。図2では12の意匠層は13の加飾フィルムの最表面にあるが、11の基板(樹脂フィルム)と15の成形体の間にあっても良い。
【0209】
<成形体>
本発明において加飾フィルムを貼合して加飾成形品とする対象の成形体としては、金属成形体、樹脂成形体のいずれも採用することができる。樹脂成形体として用いられる樹脂としては特に限定は無く、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、芳香族および脂肪族のポリケトン樹脂、フッソ樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、熱可塑性澱粉樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ACS樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ビニルエステル系樹脂、MS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0210】
特に環境および本発明の加飾シートとの接着性の観点からはポリ乳酸、さらに好ましくはホモ結晶のみを有するポリ乳酸よりも、結晶化速度が速く成形性に優れるステレオコンプレックスポリ乳酸が好適に用いられる。特に、樹脂成形体の材料は加飾フィルムに用いる材料と同じであることが材料再利用の観点から好ましい。
樹脂成形体の製法としては特に限定は無く、目的に応じて、圧縮成形法、射出成形法、回転成形法、注入成形、反応射出成形等が選択されるが、成形性、生産性の観点から好ましくは射出成形法である。樹脂成形体の射出成形において加飾フィルムと同時に一体化させる方法であるインモールド成形、インサートモールド成形等を利用してもよい。
【実施例】
【0211】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これにより何ら限定を受けるものではない。
【0212】
<ポリ乳酸(A成分)の製造>
(1)ポリL−乳酸(PLLA1)の製造:
L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100重量部に対し、オクチル酸スズを0.005重量部加え、窒素雰囲気下、撹拌翼のついた反応機にて180℃で2時間反応させ、オクチル酸スズに対し1.2倍当量のリン酸を添加しその後、13.3Paで残存するラクチドを減圧除去し、チップ化し、ポリL−乳酸(PLLA1)を得た。得られたポリL−乳酸(PLLA1)の重量平均分子量は15.2万、ガラス転移点(Tg)は55℃、融点は175℃であった。
【0213】
(2)ポリD−乳酸(PDLA1)の製造:
PLLA1の製造において、L−ラクチドをD−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)に変更したこと以外は同じ条件で重合を行い、ポリD−乳酸(PDLA1)を得た。得られたポリD−乳酸(PDLA1)の重量平均分子量(Mw)は15.1万、ガラス転移点(Tg)は55℃、融点は175℃であった。
【0214】
(3)ステレオコンプレックスポリ乳酸(SCPLA1)の製造:
上記操作で得られたPLLA1とPDLA1とを各50重量部およびリン酸金属塩((株)ADEKA製「アデカスタブ」NA−71:0.1重量部)を、2軸混練装置の第一供給口より供給、シリンダー温度250℃で溶融混練し、ステレオコンプレックスポリ乳酸(SCPLA1)を得た。ガラス転移点(Tg)は55℃、融点は216℃であった。
【0215】
<カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物(成分C)の製造>
o−ニトロフェノール(0.11mol)とペンタエリトリチルテトラブロミド(0.025mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N−ジメチルホルムアミド200mlを撹拌装置及び加熱装置を設置した反応装置にN2 雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物D(ニトロ体)を得た。
【0216】
次に中間生成物D(0.1mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(2g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)400mlを、撹拌装置を設置した反応装置に仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で反応させ、水素の減少がなくなったら反応を終了した。Pd/Cを回収し、混合溶媒を除去すると中間生成物E(アミン体)が得られた。
【0217】
次に撹拌装置及び加熱装置、滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、トリフェニルホスフィンジブロミド(0.11mol)と1,2−ジクロロエタン150mlを仕込み撹拌させた。そこに中間生成物E(0.025mol)とトリエチルアミン(0.25mol)を1,2−ジクロロエタン50mlに溶かした溶液を25℃で徐々に滴下した。滴下終了後、70℃で5時間反応させる。その後、反応溶液をろ過し、ろ液を水100mlで5回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、1,2−ジクロロエタンを減圧により除去し、中間生成物F(トリフェニルホスフィン体)が得られた。
【0218】
次に、撹拌装置及び滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、ジ−tert−ブチルジカーボネート(0.11mol)とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(0.055mol)、ジクロロメタン150mlを仕込み撹拌させる。そこに、25℃で中間生成物F(0.025mol)を溶かしたジクロロメタン100mlをゆっくりと滴下させた。滴下後、12時間反応させる。その後、ジクロロメタンを除去し得られた固形物を、精製することで、下記に示す構造を有するC成分(以降、TX1と略記することがある。)、(分子量:516)を得た。TX1の構造はNMR、IRにより確認した。
【0219】
【化47】

【0220】
<樹脂フィルム用材料の製造>
(1)C1:ステレオコンプレックスポリ乳酸;
上記操作で得られたSCPLA1と同じである。
【0221】
(2)C2:ステレオコンプレックスポリ乳酸とアクリル系樹脂(ポリメチルメタクリレート)とを含む組成物;
上記操作で得られたSCPLA1とアクリル系樹脂としての三菱レイヨン(株)製のポリメチルメタクリレート(以下、PMMAと略記することがある。)、商品名「アクリペットVH001」をそれぞれSCPLA1、80重量部、PMMA、20重量部をブレンダーで混合、110℃、5時間真空乾燥した後、混練機の第一供給口より、シリンダー温度230℃、ベント圧13.3Paで真空排気しながら溶融混練し、水槽中にストランド押し出し、チップカッターにてチップ化してSCPLA1とPMMAとの組成物(C2)を得た。ガラス転移点(Tg)は59℃、融点は216℃であった。
【0222】
(3)C3:ステレオコンプレックスポリ乳酸(TX1含有);
SCPLA1、100重量部、TX1、1.0重量部をブレンダーで混合、110℃、5時間真空乾燥した後、混練機の第一供給口より供給し、シリンダー温度230℃、ベント圧13.3Paで真空排気しながら溶融混練し、水槽中にストランド押し出し、チップカッターにてチップ化して組成物(C3)を得た。ガラス転移点(Tg)は56℃、融点は215℃であった。
【0223】
(4)C4:ステレオコンプレックスポリ乳酸とPMMAとを含む組成物(TX1含有);
上記操作で得られたSCPLA1、80重量部、三菱レイヨン(株)製のポリメチルメタクリレート、商品名「アクリペットVH001」20重量部、TX1、1.0重量部をブレンダーで混合、110℃、5時間真空乾燥した後、混練機の第一供給口より供給し、シリンダー温度230℃、ベント圧13.3Paで真空排気しながら溶融混練し、水槽中にストランド押し出し、チップカッターにてチップ化してブレンド組成物(C4)を得た。ガラス転移点(Tg)は59℃、融点は216℃であった。
【0224】
(5)C5:ポリ乳酸;
上記操作で得られたPLLA1と同じである。
【0225】
<樹脂フィルムの製造>
以下に記す樹脂フィルムの評価結果は表1に記す。
(1)樹脂フィルム(F1)の製造:
樹脂C1を100℃で5時間乾燥させた後、225℃で押出機にて溶融混練し、ダイ温度225℃でTダイよりフィルム状に溶融押し出し、40℃の冷却ドラム表面に密着、固化させ未延伸フィルム(F1−1)を得た。膜厚は100μmであった。その後、この未延伸フィルムをテンター横一軸延伸機により延伸温度75℃、倍率1.2倍にて延伸した後、同設備にて115℃にて熱固定を実施することにより、厚み85μmのフィルム(F1−2)を得た。
【0226】
(2)樹脂フィルム(F2)の製造:
樹脂C2を100℃で5時間乾燥させた後、225℃で押出機にて溶融混練し、ダイ温度228℃でTダイよりフィルム状に溶融押し出し、40℃の冷却ドラム表面に密着、固化させ未延伸フィルム(F2−1)を得た。膜厚は200μmであった。その後、この未延伸フィルムを逐次縦横2軸延伸機により縦延伸の延伸温度75℃、倍率2倍に、横延伸の延伸温度80℃、倍率2倍にて延伸した後、同設備にて135℃にて熱固定を実施することにより、厚み73μmのフィルム(F2−2)を得た。
【0227】
(3)樹脂フィルム(F3)の製造:
樹脂C3を100℃で5時間乾燥させた後、226℃で押出機にて溶融混練し、ダイ温度228℃でTダイよりフィルム状に溶融押し出し、40℃の冷却ドラム表面に密着、固化させ未延伸フィルム(F3−1)を得た。膜厚は120μmであった。フィルム製膜時にイソシアネートガス臭は全くしなかった。その後、この未延伸フィルムをテンター横一軸延伸機により延伸温度75℃、倍率1.2倍にて延伸した後、同設備にて125℃にて熱固定を実施することにより、厚み100μmのフィルム(F3−2)を得た。
【0228】
(4)樹脂フィルム(F4)の製造:
樹脂C4を100℃で5時間乾燥させた後、226℃で押出機にて溶融混練し、ダイ温度228℃でTダイよりフィルム状に溶融押し出し、40℃の冷却ドラム表面に密着、固化させ未延伸フィルム(F4−1)を得た。膜厚は130μmであった。フィルム製膜時にイソシアネートガス臭は全くしなかった。その後、この未延伸フィルムをテンター横一軸延伸機により延伸温度78℃、倍率1.3倍にて延伸した後、同設備にて125℃にて熱固定を実施することにより、厚み105μmのフィルム(F4−2)を得た。
【0229】
(5)樹脂フィルム(F5)の製造:
樹脂C5を100℃で5時間乾燥させた後、190℃で押出機にて溶融混練し、ダイ温度193℃でTダイよりフィルム状に溶融押し出し、40℃の冷却ドラム表面に密着、固化させ未延伸フィルム(F5−1)を得た。膜厚は130μmであった。その後、この未延伸フィルムをテンター横一軸延伸機により延伸温度78℃、倍率1.3倍にて延伸した後、同設備にて145℃にて熱固定を実施することにより、厚み104μmのフィルム(F5−2)を得た。
【0230】
<加飾フィルムの製造>
真空成形用の加飾フィルムにはすべて粘着層を基板とする樹脂フィルムの片面に層厚約25μmで設置した。なお、この粘着層は市販の剥離ポリエステルフィルムに挟まれた高透明粘着シートを用い粘着層を転写することで形成した。
なお、下記の実験例13にて用いる加飾フィルムにおいては、基板としての樹脂フィルム(F1−1)上に黒色の印刷層をスクリーン印刷法にて設け、さらにその上に当該粘着層を同じ方法で形成した。これを加飾フィルムD13とする。
【0231】
<真空貼合用樹脂成形体の製造>
帝人化成(株)製のポリカーボネート(PC)である商品名『パンライトAD5503』を120℃で6時間乾燥後、射出成形機にてシリンダー温度280℃、金型温度100℃にて図3の形状を有する樹脂成形体PC−Aを製造した。また、同様の条件にて図4の形状を有する樹脂成形体PC−Bを製造した。いずれも平面概略図の長辺が15cm、短辺が10cmである。なお、本発明で用いた図3、図4の形状を有する樹脂成形体の厚みは約2mmとした。
さらに、上記ステレオコンプレックス結晶を形成し得るポリ乳酸であるC1を110℃で5時間乾燥後、射出成形機にてシリンダー温度280℃、金型温度110℃にて図3の形状を有する樹脂成形体scPLA−Aを製造した。
なお、図3で31は樹脂成形体PC−Aで、32は以下説明するヘーズ測定点であり、33は鋭角な折れ曲がりの部分である。一方、図4で41は樹脂成形体PC−Bで、42は以下説明するヘーズ測定点である。
【0232】
<評価方法>
(1)ヘーズ評価:
下記実施例、参考例、比較例においては、樹脂成形体に貼合された樹脂フィルムおよび貼合前の樹脂フィルムの透明性を評価するために、ヘーズ測定を実施した。なお、樹脂成形体においては、図3、4の樹脂成形体の中央部のヘーズ測定点(符号32、符号42)を、ヘーズ測定器の光線と加飾フィルムとを垂直にしてヘーズを測定した。なお、上記方法で製造した樹脂成形体PC−Aのみ、樹脂成形体PC−Bのみを同方法で測定したヘーズは各0.4%であり、ほとんど光散乱の無い透明な状態であるため、この方法により、樹脂フィルムの樹脂成形体への貼合後のヘーズが評価可能である。日本電色工業(株)の商品名『COH−300A』を用いてヘーズ値(%)を評価した。
また、実施例9〜12で用いる樹脂成形体の透明性を確認するために、ポリメチルメタクリレートである商品名『アクリペットVH』を80℃で6時間乾燥後、射出成形機にてシリンダー温度240℃、金型温度70℃にて図4の形状を有する樹脂成形体を射出した。上記と同様にヘーズを測定した結果、ヘーズ値は0.3%であることが分かり、樹脂成形体単体としては透明性が高いことがわかった。
【0233】
(2)ポリマーの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn):
ポリマーの重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算した。GPC測定機器は、検出器;示差屈折計((株)島津製作所製)RID−6Aカラム;東ソ−(株)TSKgelG3000HXL、TSKgelG4000HXL,TSKgelG5000HXLとTSKguardcokumnHXL−Lを直列に接続したもの、あるいは東ソ−(株)TSKgelG2000HXL、TSKgelG3000HXLとTSKguardcokumnHXL−Lを直列に接続したものを使用した。
クロロホルムを溶離液とし温度40℃、流速1.0ml/minにて、濃度1mg/ml(1%ヘキサフルオロイソプロパノールを含むクロロホルム)の試料を10μl注入し測定した。
【0234】
(3)ステレオコンプレックス結晶化度〔S(%)〕,結晶融解温度などのDSC測定:
DSC(TAインストルメント社製,商品名『Q10』)を用いて試料を、第一サイクルにおいて、窒素気流下、20℃/分で260℃まで昇温し、ガラス転移温度(Tg)、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸結晶融点(Tmsc)、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸結晶化温度(Tcsc)、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸結晶融解エンタルピー(ΔHmsc)、ホモ相ポリ乳酸結晶融解エンタルピー(ΔHm)および結晶化熱量(ΔHc)を測定した。
ステレオコンプレックス結晶化度は上記測定で得られたステレオコンプレックス相およびホモ相ポリ乳酸結晶融解エンタルピーより、下記式(II)により求めた値である。
[数9]
S=[ΔHmsc /(ΔHm +ΔHmsc)]×100 (II)
(但し、ΔHmscはステレオコンプレックス相結晶の融解エンタルピー、ΔHmはホモ相ポリ乳酸結晶の融解エンタルピー)
【0235】
(4)厚み測定:
アンリツ社製の電子マイクロで測定した。
【0236】
(5)環状カルボジイミド構造の核磁気共鳴法(NMR)による同定およびポリエステル組成物中の環状カルボジイミドの定量:
合成した環状カルボジイミド化合物はH−NMR、13C−NMRによって確認した。NMRは日本電子(株)製の商品名『JNR−EX270』を使用した。溶媒は重クロロホルムを用いた。
【0237】
(6)環状カルボジイミドのカルボジイミド骨格の赤外分光法(IR)による同定:
合成した環状カルボジイミド化合物のカルボジイミド骨格の有無は、FT−IRによりカルボジイミドに特徴的な2100〜2200cm−1の確認を行った。FT−IRはサーモニコレー(株)製の商品名『Magna−750』を使用した。
【0238】
[実験例1〜4]
樹脂成形体PC−Aおよび樹脂フィルム(F1−1〜F4−1)を用いた粘着層付きの加飾フィルムを、粘着層側を樹脂成形体側にして、布施真空株式会社製の真空貼合装置である商品名『NGF−0709』の真空チャンバー中に設置した。真空チャンバーを閉じて真空後、加飾フィルムを100℃に赤外線で加熱し、その後、加飾フィルムを樹脂成形体に貼合した。貼合後、真空チャンバー内の気圧を大気圧に戻し、樹脂成形体を取り出した。その後、120℃で3分間恒温槽に入れ、樹脂フィルムの結晶化を促進させ目的の樹脂成形体を得た。この樹脂成形体の初期のヘーズを表2で初期ヘーズとして記載した。
また、この樹脂フィルムをカッターにて樹脂成形体から剥がし、DSCにて測定した結晶化熱ΔHcscを表2に記載する。すべて0であり、結晶化は十分に進んでいることがわかった。また、Sは100%であり、結晶はステレオコンプレックス結晶であることがわかる。
さらに、この樹脂成形体を80℃DRY、60℃90%RH500時間の耐熱、耐湿熱試験を実施し、その後測定したヘーズも表2に記す。耐熱、耐湿熱試験ともに、樹脂成形体における樹脂フィルムの透明性は確保されていることが分かる。
【0239】
[実験例5〜8]
樹脂成形体としてPC−Bを、樹脂フィルムとしてF1−2〜F4−2を用いた以外は実施例1と同様に成形体を製造、および評価した。結果を表2に示す。
【0240】
[実験例9〜12]
あらかじめ樹脂フィルム(F1−1〜F4−1)の形状を、図4の樹脂成形体を被覆できるように同型に真空成形機により予備賦形し、これを射出成形機に挿入して、溶融樹脂を挿入して一体化させるインサートモールド法により樹脂成形体を製造した。
射出成形する樹脂は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)である商品名『アクリペットVH』を80℃で6時間乾燥後、射出成形機にてシリンダー温度240℃、金型温度70℃にて射出した。図4の形状を有する樹脂フィルムと樹脂成形体が一体となった樹脂成形体を製造した。実施例1と同様に評価した結果を表2に記す。
【0241】
[実験例13]
樹脂フィルムをF1−1とした加飾フィルムD13を用い、樹脂成形体としてはscPLA−Aを用いた以外は実験例1と同様に加飾成形品を製造した。外観評価したが、樹脂フィルムが透明であり、観測者側から見て樹脂フィルムの裏側に形成されている黒色印刷層が鮮明に見えることを確認した。また、加飾フィルムと樹脂成形体との貼合の状態も極めて良好であった。
【0242】
[参考例1]
樹脂フィルムをF2−2とした以外は、実験例6と同様に加飾成形品を製造した。貼合状態を確認したが、同じ貼合成形法を用いた実験例1〜4と比較すると曲率の大きい部分に貼合ムラが観察されたが、透明性は高いことがわかった。評価結果は表2に記す。
【0243】
[比較例1、2]
樹脂フィルムとしてF5−1、F5−2を使用した以外は、それぞれ実験例1と同様に加飾成形品を製造した。貼合前にすでに樹脂フィルムのヘーズが高く、さらに真空貼合加工時にヘーズが悪化することが確認された。
【0244】
【表1】

【0245】
【表2】

【符号の説明】
【0246】
1 基板(樹脂フィルム)
2 加飾フィルム
3 意匠層
4 接着層または粘着層
5 成形体
6 加飾成形品
7 加飾成形品の最表面
11 基板(樹脂フィルム)
12 意匠層
13 加飾フィルム
14 加飾成形品
15 成形体
31 樹脂成形体PC−A
32 ヘーズ測定点
33 鋭角な折れ曲がりの部分
41 樹脂成形体PC−B
42 ヘーズ測定点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸(A成分)を含む樹脂フィルムであって、当該ポリ乳酸(A成分)が、ポリD−乳酸成分及びポリL−乳酸成分を含むポリ乳酸であり、ステレオコンプレックス結晶化度(S)が90%以上で、MD方向、TD方向におけるフィルム破断伸度(100℃測定値)100〜1000%且つ100%伸張時応力(100℃測定値)が0.1〜100MPaの範囲にあることを特徴とする、樹脂フィルム。
{ステレオコンプレックス結晶化度(S)は示差走査熱量計(DSC)測定で、190℃未満に観測されるポリ乳酸ホモ結晶融解熱(△Hm)、190℃以上に観測されるポリ乳酸ステレオコンプレックス結晶融解熱(△Hmsc)より次式(I)により求めた。
[数1]
(S)=〔△Hmsc / (△Hm +△Hmsc)〕×100 (I)}
【請求項2】
MD方向、TD方向におけるフィルム破断伸度(100℃測定値)100〜1000%且つ100%伸張時応力(100℃測定値)が0.5〜25MPaの範囲にあり且つ略非結晶状態である、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項3】
樹脂フィルムが、さらにアクリル系樹脂(B成分)を含む、請求項1または2記載の樹脂フィルム。
【請求項4】
ポリ乳酸(A成分)に、カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物(C成分)を含む、請求項1または2記載の樹脂フィルム。
【請求項5】
樹脂フィルムが、ポリ乳酸(A成分)、アクリル系樹脂(B成分)及びカルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物(C成分)を含む、請求項1または2記載の樹脂フィルム。
【請求項6】
C成分が下記式(1)で表される請求項4または5記載の樹脂フィルム。
【化1】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
【請求項7】
Qは、下記式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される2〜4価の結合基である請求項6記載の樹脂フィルム。
【化2】

(式中、ArおよびArは各々独立に、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。RおよびRは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基またはこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。XおよびXは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。sは0〜10の整数である。kは0〜10の整数である。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。Xは、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。但し、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
【請求項8】
C成分が、下記式(2)で表される請求項6記載の樹脂フィルム。
【化3】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
【請求項9】
は、下記式(2−1)、(2−2)または(2−3)で表される2価の結合基である請求項8記載の樹脂フィルム。
【化4】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)中のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。)
【請求項10】
C成分が、下記式(3)で表される請求項6記載の樹脂フィルム。
【化5】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである3価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。Yは、環状構造を担持する担体である。)
【請求項11】
は、下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される3価の結合基である請求項10記載の樹脂フィルム。
【化6】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。)
【請求項12】
Yは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである請求項10または11記載の樹脂フィルム。
【請求項13】
C成分が、下記式(4)で表される請求項6記載の樹脂フィルム。
【化7】

(式中、Qは、脂肪族基、芳香族基、脂環族基またはこれらの組み合わせである4価の結合基であり、ヘテロ原子を保有していてもよい。ZおよびZは、環状構造を担持する担体である。)
【請求項14】
は、下記式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される4価の結合基である請求項13記載の樹脂フィルム。
【化8】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
【請求項15】
およびZは各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである請求項13または14記載の樹脂フィルム。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか記載の樹脂フィルムを基板とし、該基板上に意匠層を備える加飾フィルム。
【請求項17】
基板が略非結晶状態である、請求項16記載の加飾フィルム。
【請求項18】
成形体の表面に請求項16記載の加飾フィルムが積層一体化されてなる加飾成形品。
【請求項19】
成形体が樹脂成形体である、請求項18記載の加飾成形品。
【請求項20】
樹脂成形体がステレオコンプレックスポリ乳酸を含む、請求項19記載の加飾成形品。
【請求項21】
請求項18または19記載の加飾成形品の製造方法であって、加飾フィルムと成形体とを貼合するにあたり、加飾フィルムの基板が略非結晶状態のものを用いることを特徴とする、加飾成形品の製造方法。
【請求項22】
請求項18または19記載の加飾成形品の製造方法であって、加飾フィルムと成形体との貼合を加飾フィルムを加熱した状態で、真空下に成形体表面と接触させることによって行い、且つ、加熱前の加飾フィルムの基板が略非結晶状態のものを用いることを特徴とする、加飾成形品の製造方法。
【請求項23】
請求項19記載の加飾成形品の製造方法であって、加飾フィルムと成形体とを貼合するにあたり、貼合を、加飾フィルムを予備賦形した後に射出成形の金型内に挿入し、ついで成型物材料となる樹脂を金型内に射出するインサートモールド法によって行い、且つ、予備賦形前の加飾フィルムの基板が略非結晶状態のものを用いることを特徴とする、加飾成形品の製造方法。
【請求項24】
請求項18または19記載の加飾成形品の製造方法であって、加飾フィルムと成形体とを貼合するにあたり、加飾フィルムの基板が略非結晶状態にないものを用いることを特徴とする、加飾成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−231240(P2011−231240A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103587(P2010−103587)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】