説明

樹脂付き基材及び樹脂付き銅箔

【課題】 絶縁層と導電層との接着性、耐熱衝撃性及び耐クラック性が十分であるプリント配線板若しくは多層配線板の形成を可能とする、加工時の発塵が十分少ない樹脂付き基材並びに樹脂付き銅箔を提供すること。
【解決手段】 樹脂付き基材10は、基材1と、該基材1上に設けられた樹脂層2とを備える樹脂付き基材であって、樹脂層2が、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂と、重量平均分子量が70000以上120000以下のポリアミドイミド樹脂と、を含む樹脂組成物から形成されるものであり、樹脂組成物におけるポリアミドイミド樹脂の含有量が、エポキシ樹脂100質量部に対して10〜50質量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂付き基材及び樹脂付き銅箔に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板用の積層板は、電気絶縁性の樹脂組成物をマトリックスとするプリプレグを所定枚数重ね、加熱加圧して一体化することにより得られる。また、プリント配線板の作製において、プリント回路をサブトラクティブ法により形成する場合には、金属張積層板が用いられる。この金属張積層板は、プリプレグの表面(片面又は両面)に銅箔などの金属箔を重ねて加熱加圧することにより製造される。電気絶縁性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂などのような熱硬化性樹脂が広く用いられている。また、フッ素樹脂やポリフェニレンエーテル樹脂などのような熱可塑性樹脂が用いられることもある。
【0003】
フェノール樹脂やエポキシ樹脂を主成分としたプリプレグは、材料が安価であることもあり金属張積層板の材料として広く普及している。中でもエポキシ樹脂を主成分としたプリプレグにおいては、樹脂の改良が重ねられ、高耐熱化、ハロゲンフリー難燃化、低誘電率化、低誘電損失化などが進んでいる。しかし、これらの材料は比較的分子量の小さい樹脂系であるため、Bステージのプリプレグに切断等の加工を行うと樹脂粉が発生しやすく、発塵による積層する銅箔への汚染に注意する必要があった。
【0004】
一方、パーソナルコンピュータや携帯電話等の情報端末機器の普及に伴って、これらに搭載される印刷配線板は小型化、高密度化が進んでいる。また、その実装形態はピン挿入型から表面実装型へ、さらにはプラスチック基板を使用したBGA(ボールグリッドアレイ)に代表されるエリアアレイ型へと進んでいる。BGAのようなベアチップを直接実装する基板ではチップと基板の接続は、熱超音波圧着によるワイヤボンディングで行うのが一般的である。このため、ベアチップを実装する基板は150℃以上の高温にさらされることになり、電気絶縁性樹脂にはある程度の耐熱性が必要となる。
【0005】
また、上記の基板では、一度実装したチップを外す、いわゆるリペア性も要求される場合がある。この場合の基板には、チップ実装時と同程度の熱がかけられ、その後再度チップ実装が施されることで更に熱処理が行われることになる。したがって、リペア性の要求される基板では、高温でのサイクル的な耐熱衝撃性が要求される。
【0006】
更に、上記の情報端末機器などにおいては、高密度配線が可能な多層配線板が多用されるようになってきている。一般的に、多層配線板は、コア基板の両表層に、銅箔にBステージの熱硬化性樹脂を塗布した樹脂付き銅箔を重ね、熱プレスにより硬化して多層化層を形成し、次いで銅箔をエッチングして回路を形成した後に、レーザー加工によりビアホールを形成し、メッキして層間を接続して製造される。熱硬化性樹脂として従来の絶縁性樹脂を用いた多層配線板は、上述した熱処理が施されると、コア基材と多層化層の樹脂との間や内層回路と多層化層の樹脂との間での剥離が発生しやすかった。更に、従来の樹脂付き銅箔から形成される絶縁層は、プリプレグから形成される絶縁層に比べて強度が弱く、クラックが入りやすいという問題を有していた。
【0007】
絶縁層の強度を向上させるために、Bステージの熱硬化性樹脂を介して銅箔と米坪30g/m以下のシート状繊維基材が接着された銅箔付き繊維基材を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。しかし、この繊維基材に用いられる熱硬化性樹脂は上述したプリプレグに用いられるものと同様のものであり、発塵についての検討がなされているものでない。
【0008】
また、処理速度の高速化に伴いMPUのI/O数が増加し、ワイヤボンディングで接続する端子数の増加と端子幅の狭小化が進んでいる。そのため、コア基材と回路形成を施される金属箔との接着には従来以上の接着力が望まれており、より細い配線を作製するために金属箔表面の粗化形状の微細化も要求されている。一方、信号の高周波化が進むことで回路導体には表面平滑性が要求されると考えられる。導体中の電流の付近には磁力線が発生するが、導体の中心部ほど磁力線の干渉が大きいため、電流は周辺とコーナーに集中する。これを表皮効果と呼び、周波数が高いほどこの傾向は強まる。導体の表面が平滑であるほど表皮効果による抵抗の増加を抑えられると考えられるが、従来の電気絶縁性樹脂による接着は主に導電層の粗表面へのアンカー効果によるところが大きく信号の高周波化とは相反するものとなっている。
【0009】
【特許文献1】特開2003−191377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、絶縁層と導電層との接着性、耐熱衝撃性及び耐クラック性が十分であるプリント配線板若しくは多層配線板の形成を可能とする、加工時の発塵が十分少ない樹脂付き基材並びに樹脂付き銅箔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、基材と、該基材上に設けられた樹脂層とを備える樹脂付き基材であって、樹脂層が、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂と、重量平均分子量が70000以上120000以下のポリアミドイミド樹脂と、を含む樹脂組成物から形成されるものであり、樹脂組成物におけるポリアミドイミド樹脂の含有量が、エポキシ樹脂100質量部に対して10〜50質量部である樹脂付き基材を提供する。
【0012】
本発明の樹脂付き基材によれば、加工時の発塵を十分少なくすることができ、絶縁層と導電層との接着性、耐熱衝撃性及び耐クラック性が十分であるプリント配線板若しくは多層配線板を形成することができる。このような効果は、上記構成を有する樹脂層が、硬化前の状態においては切断などの加工が施されても樹脂粉の発生しにくいものであり、硬化後には金属箔などの導電層と基板とを十分な強度で接着するとともに耐熱衝撃性及び耐クラック性に優れた絶縁層になることで得られるものと本発明者らは考えている。なお、本発明の樹脂付き基材の基材を金属箔とした場合は、上記樹脂層を、基材である金属箔と基板とを十分な強度で接着する絶縁層として機能させることができ、かかる金属箔に回路形成を施すことが可能となる。また、本発明の樹脂付き基材は、基材を剥離することによりフィルム状の樹脂(以下、これを「接着剤フィルム」という場合もある)を得ることができ、この接着剤フィルムを回路形成用金属箔と基板との接着に用いるという使用が可能である。
【0013】
上記ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量が70000未満であると、十分な発塵防止性及び耐クラック性を得ることが困難となり、120000を超えると、均一な樹脂層を形成することが困難となる。また、上記ポリアミドイミド樹脂の含有量が、エポキシ樹脂100質量部に対して10質量部未満であると、樹脂付き基材を切断する際の発塵を防止することが困難となり、また耐熱性も不十分となる。一方、50質量部を超えると、樹脂層の流動性が悪くなり、積層板を形成した場合に樹脂層の中にボイド等の欠陥が発生し、十分な耐熱衝撃性を得ることが困難となる。
【0014】
本発明の樹脂付き基材において、高接着性、高耐熱性の観点から、上記ポリアミドイミド樹脂がシロキサン変性ポリアミドイミドであることが好ましい。
【0015】
また、上記ポリアミドイミド樹脂が、シロキサンジアミンと無水トリメリット酸とを反応させて得られる反応生成物を含むジイミドジカルボン酸成分と、芳香族ジイソシアネート成分と、を反応させて得られるシロキサン変性ポリアミドイミドであることが好ましい。
【0016】
更に、高耐熱性、難燃性向上の観点から、上記ポリアミドイミド樹脂が、芳香族環を有するジアミン及びシロキサンジアミンの混合物と無水トリメリット酸とを反応させて得られる反応生成物を含むジイミドジカルボン酸成分と、芳香族ジイソシアネート成分と、を反応させて得られるシロキサン変性ポリアミドイミドであることが好ましい。
【0017】
また、本発明の樹脂付き基材において、上記ポリアミドイミド樹脂が、芳香族環を3個以上有するジアミン及びシロキサンジアミンの混合物、又はシロキサンジアミンと、無水トリメリット酸と、を反応させて得られる、下記一般式(1)で示されるジイミドジカルボン酸及び下記一般式(2)で示されるジイミドジカルボン酸を含むジイミドジカルボン酸成分、又は下記一般式(2)で示されるジイミドジカルボン酸を含むジイミドジカルボン酸成分と、下記一般式(3)で示される芳香族ジイソシアネート成分と、を反応させて得られるシロキサン変性ポリアミドイミドであることが好ましい。
【0018】
【化1】



[式(1)中、Rは、下記一般式(1−1)で表わされる2価の有機基を示す。
【0019】
【化2】



{式(1−1)中、Xは、
【0020】
【化3】



}]
【0021】
【化4】



[式(2)中、Rは、下記一般式(2−1)で表わされる2価の有機基を示す。
【0022】
【化5】



{式(2−1)中、R及びRは、2価の有機基を示し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、又は置換若しくは無置換のフェニル基を示し、nは、1〜50の整数を示す。}]
【0023】
【化6】



[式(3)中、Rは、
【0024】
【化7】




【0025】
更に、高耐熱性、難燃性向上の観点から、上記のシロキサン変性ポリアミドイミドが、芳香族環を3個以上有するジアミン(a)とシロキサンジアミン(b)との混合比率がa/b=99.9/0.1〜0/100モル比であるジアミン成分と、無水トリメリット酸と、を[(a)成分及び(b)成分の合計モル数]/[無水トリメリット酸のモル数]=1.0/2.0〜1.0/2.2のモル比で反応させて得られる、上記一般式(1)で示されるジイミドジカルボン酸及び上記一般式(2)で示されるジイミドジカルボン酸を含むジイミドジカルボン酸成分、又は上記一般式(2)で示されるジイミドジカルボン酸を含むジイミドジカルボン酸成分と、上記一般式(3)で示される芳香族ジイソシアネート成分と、を[(a)成分及び(b)成分の合計モル数]/[芳香族ジイソシアネート成分のモル数]=1.0/1.0〜1.0/1.5のモル比で反応させて得られるシロキサン変性ポリアミドイミドであることが好ましい。
【0026】
また、本発明は、上記基材が、樹脂層と接する面に離型処理が施されている樹脂基材である、上記本発明の樹脂付き基材を提供する。このような樹脂付き基材は、樹脂基材を剥離することによりフィルム状の樹脂(接着剤フィルム)が得られやすく、この接着剤フィルムを回路形成用の金属箔と基板との接着に用いるという使用方法に好適である。
【0027】
また、本発明は、上記本発明の樹脂付き基材における基材が銅箔である樹脂付き銅箔を提供する。この樹脂付き銅箔によれば、樹脂層が発塵の十分少ないものであることから、基板上に回路形成が施される銅箔を良好に積層することができる。そして、硬化後の樹脂層が、優れた接着力、耐熱性及び耐クラック性を発揮し得ることから、絶縁層と導電層との接着性、耐熱衝撃性及び耐クラック性が十分であるプリント配線板若しくは多層配線板の形成が可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、絶縁層と導電層との接着性、耐熱衝撃性及び耐クラック性が十分であるプリント配線板若しくは多層配線板の形成を可能とする、加工時の発塵が十分少ない樹脂付き基材並びに樹脂付き銅箔を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明については省略する。
【0030】
図1は、本発明の樹脂付き基材の一実施形態を示す模式断面図である。図1に示す樹脂付き基材10は、基材1と、この基材上に設けられた樹脂層2とを備えている。
【0031】
基材1としては、金属箔及び樹脂基材が挙げられる。金属箔としては、銅箔やアルミニウム箔を用いることができ、プリント配線板に用いられている5〜200μmのものが好ましい。また、ニッケル、ニッケル−リン、ニッケル−スズ合金、ニッケル−鉄合金、鉛、又は鉛−スズ合金等を中間層とし、この両面に0.5〜15μmの銅層と10〜300μmの銅層を設けた3層構造の複合箔や、アルミニウムと銅箔とを複合した2層構造複合箔などを基材として用いることができる。
【0032】
また、金属箔が表面粗化処理されたものである場合、その粗化処理面における十点平均粗さ(Rz)は10μm以下が好ましく、5μm以下であることがより好ましい。なお、十点平均粗さ(Rz)とは、JIS B0601−1994に定義された十点平均粗さ(Rz)をいうものとする。このような表面粗さを有する金属箔を基材として備える樹脂付き基材によれば、導電層と絶縁層との接着は十分なレベルとしつつ、得られるプリント配線板等の高周波伝送特性を更に向上させることができる。
【0033】
樹脂基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、アラミドなどの樹脂フィルムが挙げられる。これらのなかでも、価格、耐熱性、寸法安定性の点から、PETフィルムが好ましく用いられる。更に、樹脂基材は、樹脂層2が設けられる面に離型処理が施されていることが好ましい。樹脂基材の厚みとしては、10〜150μmが好ましい。
【0034】
樹脂層2は、本発明に係る樹脂組成物から形成されるものである。
【0035】
まず、本発明に係る樹脂組成物について説明する。
【0036】
本発明に係る樹脂組成物は、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂と、重量平均分子量が70000以上120000以下のポリアミドイミド樹脂とを含むものであり、樹脂組成物におけるポリアミドイミド樹脂の含有量が、エポキシ樹脂100質量部に対して10〜50質量部である。
【0037】
2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビスフェノールA、ノボラック型フェノール樹脂、オルトクレゾールノボラック型フェノール樹脂等の多価フェノール又は1,4−ブタンジオール等の多価アルコールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエステル、アミン、アミド又は複素環式窒素塩基を有する化合物のN−グリシジル誘導体、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせ用いることができる。
【0038】
本発明に係る樹脂組成物には、熱的、機械的、電気的特性を向上させるために、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂の硬化剤、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂の硬化促進剤、又は、かかる硬化剤及び硬化促進剤の両方を更に含有させることが好ましい。
【0039】
エポキシ樹脂の硬化剤及び硬化促進剤は、それぞれエポキシ樹脂と反応して硬化させ得るもの及び硬化を促進させるものであれば制限なく使用できる。例えば、アミン類、イミダゾール類、多官能フェノール類、酸無水物類等が挙げられる。アミン類として、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、グアニル尿素等が挙げられる。多官能フェノール類としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA及びこれらのハロゲン化合物、ホルムアルデヒドとの縮合物であるノボラック型フェノール樹脂、並びに、レゾール型フェノール樹脂などが挙げられる。酸無水物類としては、無水フタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルハイミック酸等が挙げられる。また、硬化促進剤としては、イミダゾール類としてアルキル基置換イミダゾール、ベンゾイミダゾール等が使用できる。
【0040】
本発明に係る樹脂組成物における、硬化剤又は硬化促進剤の好適な含有量は、以下のとおりである。例えば、アミン類を含有させる場合、アミンの活性水素の当量と、エポキシ樹脂のエポキシ当量がほぼ等しくなる量が好ましい。また、硬化促進剤であるイミダゾールを含有させる場合、その含有量は単純に活性水素との当量比とならず、エポキシ樹脂100質量部に対して0.001〜10質量部が好ましい。また、多官能フェノール類や酸無水物類を含有させる場合、エポキシ樹脂1当量に対して、フェノール性水酸基やカルボキシル基が0.6〜1.2当量となる量が好ましい。
【0041】
硬化剤や硬化促進剤の含有量が上記の好適な範囲よりも少ないと、未硬化のエポキシ樹脂が残りやすくなり、硬化後の樹脂層のTg(ガラス転移温度)が低くなる傾向にある。一方、硬化剤や硬化促進剤の含有量が上記の好適な範囲よりも多すぎると、未反応の硬化剤や硬化促進剤が残りやすくなり、樹脂層の絶縁性が低下する傾向にある。なお、エポキシ樹脂はポリアミドイミド樹脂のアミド基と反応することができるので、硬化剤や硬化促進剤の含有量を設定するときには、ポリアミドイミド樹脂のアミド基の含有量を考慮に入れることが好ましい。
【0042】
重量平均分子量が70000〜120000のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂としては、イオン性不純物の含有を低減する観点から、シロキサンジアミンと無水トリメリット酸とを反応させて得られる反応生成物を含むジイミドジカルボン酸成分と、芳香族ジイソシアネート成分とを反応させて得られるシロキサン変性ポリアミドイミド、又は、芳香族環を有するジアミン及びシロキサンジアミンの混合物と無水トリメリット酸とを反応させて得られる反応生成物を含むジイミドジカルボン酸成分と、芳香族ジイソシアネート成分とを反応させて得られるシロキサン変性ポリアミドイミドを用いることが好ましい。
【0043】
更に、高耐熱性、難燃性向上の観点から、シロキサン変性ポリアミドイミドは、芳香族環を3個以上有するジアミン及びシロキサンジアミンの混合物と無水トリメリット酸を反応させて得られるジイミドジカルボン酸を含む混合物と、芳香族ジイソシアネートとを反応させて得られるものであるとより好ましい。
【0044】
芳香族環を3個以上有するジアミンとしては、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下、BAPPと略す)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ポリアミドイミド樹脂の特性のバランス及びコストの点から、上記のジアミンのなかでもBAPPがより好ましい。
【0045】
シロキサンジアミンとしては、例えば、下記一般式(4)で表されるものが挙げられる。
【0046】
【化8】



式中R10及びR11は2価の有機基を示し、R12、R13、R14及びR15はそれぞれ独立に、アルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示し、mは、1〜15の整数を示す。
【0047】
上記一般式(4)で表わされるシロキサンジアミンとしては、市販品を用いることができ、例えば、「X−22−161AS」(アミン当量450)、「X−22−161A」(アミン当量840)、「X−22−161B」(アミン当量1500)(以上、信越化学工業株式会社製商品名)、「BY16−853」(アミン当量650)、「BY16−853B」(アミン当量2200)(以上、東レダウコーニングシリコーン株式会社製商品名)などのジメチルシロキサン系両末端アミンであるアミノ変性シリコーンオイルが挙げられる。
【0048】
芳香族ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと略す)、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等が挙げられる。これらは単独でまたは組み合わせて用いることができる。
【0049】
芳香族環を3個以上有するジアミン(a)とシロキサンジアミン(b)との混合比率は、a/b=99.9/0.1〜0/100モル比であることが好ましく、a/b=95/5〜30/70(モル比)であるとより好ましく、a/b=90/10〜40/60(モル比)であると更により好ましい。シロキサンジアミン(b)の混合比率が多くなると、Tgが低下する傾向にあり、少なくなると、樹脂付き基材を作製する場合に樹脂中に残存するワニス溶剤量が多くなる傾向にある。
【0050】
また、ジイミドジカルボン酸は、芳香族環を3個以上有するジアミン及びシロキサンジアミンの混合物と無水トリメリット酸とを、[(a)成分及び(b)成分の合計モル数]/[無水トリメリット酸のモル数]=1.0/2.0〜1.0/2.2のモル比で反応させて得られるものが好ましい。モル比がこの範囲外であり、無水トリメリット酸の割合が少なくなると、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の可撓性が低下する傾向にあり、一方、無水トリメリット酸の割合が多くても同様の傾向となる。
【0051】
更に、ジイミドジカルボン酸と芳香族ジイソシアネートとを[(a)成分及び(b)成分の合計モル数]/[芳香族ジイソシアネート成分のモル数]=1.0/1.0〜1.0/1.5のモル比で反応させてシロキサン変性ポリアミドイミドを得ることが好ましい。モル比がこの範囲外であり、芳香族ジイソシアネートの割合が少なくなると、重量平均分子量が70000以上であるシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂を得ることが困難となり、芳香族ジイソシアネートの割合が多くても、重量平均分子量が70000以上であるシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂を得ることが困難となり、また得られるポリアミドイミド樹脂の安定性が悪化する傾向にある。
【0052】
また、本実施形態において、芳香族環を3個以上有するジアミン及びシロキサンジアミンの混合物と無水トリメリット酸とを反応させて得られるジイミドジカルボン酸は、下記一般式(1)で示されるジイミドジカルボン酸及び下記一般式(2)で示されるジイミドジカルボン酸を含むものが好ましい。また、シロキサンジアミンと、無水トリメリット酸とを反応させて得られるジイミドジカルボン酸は、下記一般式(2)で示されるジイミドジカルボン酸を含むものが好ましい。芳香族ジイソシアネートとしては、下記一般式(3)で示されるものが好ましい。
【0053】
【化9】



[式(1)中、Rは、下記一般式(1−1)で表わされる2価の有機基を示す。
【0054】
【化10】



{式(1−1)中、Xは、
【0055】
【化11】



}]
【0056】
【化12】



[式(2)中、Rは、下記一般式(2−1)で表わされる2価の有機基を示す。
【0057】
【化13】



{式(2−1)中、R及びRは、2価の有機基を示し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、又は置換若しくは無置換のフェニル基を示し、nは、1〜50の整数を示す。}]
【0058】
【化14】



[式(3)中、Rは、
【0059】
【化15】




【0060】
また、シロキサン変性ポリアミドイミドは、芳香族環を3個以上有するジアミン(a)とシロキサンジアミン(b)との混合比率がa/b=99.9/0.1〜0/100モル比であるジアミン成分と、無水トリメリット酸と、を[(a)成分及び(b)成分の合計モル数]/[無水トリメリット酸のモル数]=1.0/2.0〜1.0/2.2のモル比で反応させて得られる、上記一般式(1)で示されるジイミドジカルボン酸及び上記一般式(2)で示されるジイミドジカルボン酸を含むジイミドジカルボン酸成分、又は上記一般式(2)で示されるジイミドジカルボン酸を含むジイミドジカルボン酸成分と、上記一般式(3)で示される芳香族ジイソシアネート成分と、を[(a)成分及び(b)成分の合計モル数]/[芳香族ジイソシアネート成分のモル数]=1.0/1.0〜1.0/1.5のモル比で反応させて得られるシロキサン変性ポリアミドイミドであることが好ましい。
【0061】
更に、芳香族環を3個以上有するジアミン(a)とシロキサンジアミン(b)の混合比率は、a/b=95/5〜30/70(モル比)であるとより好ましく、a/b=90/10〜40/60(モル比)であると更により好ましい。シロキサンジアミン(b)の混合比率が多くなると、Tgが低下する傾向にあり、少なくなると、樹脂付き基材を作製する場合に樹脂中に残存するワニス溶剤量が多くなる傾向にある。
【0062】
また、ジアミンと無水トリメリット酸とのモル比[(a)成分及び(b)成分の合計モル数]/[無水トリメリット酸のモル数]は、上記のように好ましくは1.0/2.0〜1.0/2.2である。モル比がこの範囲外であり、無水トリメリット酸の割合が少なくなると、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の可撓性が低下する傾向にあり、一方、無水トリメリット酸の割合が多くても同様の傾向となる。
【0063】
更に、ジイミドジカルボン酸と芳香族ジイソシアネートとを[(a)成分及び(b)成分の合計モル数]/[芳香族ジイソシアネート成分のモル数]=1.0/1.0〜1.0/1.5のモル比で反応させてシロキサン変性ポリアミドイミドを得ることが好ましい。モル比がこの範囲外であり、芳香族ジイソシアネートの割合が少なくなると、重量平均分子量が70000以上であるシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂を得ることが困難となり、芳香族ジイソシアネートの割合が多くても、重量平均分子量が70000以上であるシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂を得ることが困難となり、また得られるポリアミドイミド樹脂の安定性が悪化する傾向にある。
【0064】
本発明に係る樹脂組成物は、重量平均分子量が70000〜120000のポリアミドイミド樹脂を含むことが必要である。ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量が、70000未満であると、十分な発塵防止性及び耐クラック性を得ることが困難となり、120000を超えると、均一な樹脂層を形成することが困難となる。
【0065】
本発明において、ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は、一般的なゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される値を意味する。測定で用いられるカラムとしては、重量平均分子量が数千から20万までを分離できるものであれば特に制限されない。溶離液としては、ポリアミドイミド樹脂を溶解できるものであればよいが、テトラヒドフランとジメチルホルムアミドの混合液が好ましい。また、ポリアミドイミド樹脂同士の会合により見かけの分子量が増加するのを防ぐため、リン酸及びその塩を混合液に添加することが好ましい。
【0066】
本発明に係る樹脂組成物における重量平均分子量が70000〜120000のポリアミドイミド樹脂の含有量は、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂100質量部に対して10〜50質量部であることが必要である。ポリアミドイミド樹脂の含有量が、10質量部未満であると、樹脂付き基材を切断する際の発塵を防止することが困難となり、また耐熱性も不十分となる。一方、含有量が50質量部を超えると、樹脂層の流動性が悪くなり、積層板を形成した場合に樹脂層の中にボイド等の欠陥が発生し、積層板の耐熱性が低下してしまう。
【0067】
更に、発塵防止性、耐クラック性及び成形性の観点から、重量平均分子量が70000〜120000のポリアミドイミド樹脂の含有量は、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂100質量部に対して10〜40質量部がより好ましく、15〜30質量部がさらに好ましい。
【0068】
本発明に係る樹脂組成物には、難燃性の向上を目的として難燃剤が含まれていてもよい。難燃剤としては、例えば、添加型の難燃剤である「OP930」(クラリアント社製商品名)、「HP−360」(昭和電工株式会社製商品名)、「HCA−HQ」(三光株式会社製商品名)、ポリリン酸メラミン「PMP−100」、「PMP−200」、「PMP−300」(以上、日産化学株式会社製商品名)等が挙げられる。
【0069】
樹脂層2は、上記の本発明に係る樹脂組成物に有機溶媒を混合、溶解、分散して得られるワニスを、基材1上に塗工し、乾燥することにより形成できる。有機溶媒としては、樹脂組成物の溶解性が得られるものであればよく、例えば、メチエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、スルホラン、シクロヘキサノン等が挙げられる。塗工方法としては、公知の方法が挙げられ、例えば、キスコーター、ロールコーター、コンマコーター等を用いた方法が挙げられる。
【0070】
基材上に塗工したワニスの乾燥は、例えば、80℃〜180℃で乾燥させることができる。また、乾燥時間は、ワニスのゲル化時間に応じて適宜設定することが好ましい。更に、ワニスに含まれる有機溶剤が80質量%以上揮発することが好ましい。
【0071】
樹脂層2における上記エポキシ樹脂の含有量は、樹脂層全量を基準として30質量%〜80質量%であることが好ましい。
【0072】
樹脂層2の厚さは、10〜100μmであると好ましく、20〜80μmであるとより好ましい。樹脂層2の厚さが10μm未満であると、多層化した際に、内層基板に施した回路パターンの埋め込み性が低下する傾向にある。一方、100μmを超えると、多層配線板を形成した際に当該配線板の折り曲げ性が低下する傾向にある。
【0073】
また、樹脂層2は、半硬化(Bステージ化)させたものであってもよい。
【0074】
次に、プリント配線板の製造に用いる銅張積層板などの金属張積板を、本発明の樹脂付き基材を用いて製造する方法について説明する。第1の実施形態は、基材1が銅箔である樹脂付き基材10、すなわち、樹脂付き銅箔を用いる方法である。この樹脂付き銅箔を、用意した絶縁性基板の片面又は両面に、基板/樹脂層2/銅箔の順になるように重ねる。そして、得られた積層体を、好ましくは150〜280℃、より好ましくは170℃〜240℃の範囲の温度、好ましくは0.5〜20MPa、より好ましくは1〜8MPaの圧力で、加熱加圧成形する。これにより、基板の片面又は両面に銅箔が積層された銅張積層板(金属張積層板)が得られる。
【0075】
第2の実施形態は、基材1が樹脂基材である樹脂付き基材10を用いる方法である。まず、樹脂付き基材の樹脂基材を剥離することによりフィルム状の樹脂(接着剤フィルム)を得る。第2実施形態においては、樹脂基材が、樹脂層2と接する面に離型処理が施されていることが好ましい。次に、用意した絶縁性基板の片面又は両面に、上記で得られた接着剤フィルムを介して回路形成用銅箔を重ねる。そして、得られた積層体を、好ましくは150〜280℃、より好ましくは170℃〜240℃の範囲の温度、好ましくは0.5〜20MPa、より好ましくは1〜8MPaの圧力で、加熱加圧成形する。これにより、基板の片面又は両面に銅箔が積層された銅張積層板(金属張積層板)が得られる。
【0076】
なお、上記第1及び第2実施形態においては、絶縁性基板として、上記接着剤フィルムを所定枚数重ねた積層体を加熱加圧成形することにより得られたものを用いることができる。
【0077】
次に、本発明の樹脂付き基材を用いて多層配線板を製造する方法について図面を参照しながら説明する。図2は、本発明に係る多層配線板の製造方法を説明するための模式図である。本実施形態では、基材1が銅箔である樹脂付き基材10、すなわち、樹脂付き銅箔を用いる。まず、図2(a)に示すように、樹脂付き基材10の樹脂層2側を、絶縁層12a,12bと内層回路14とを有する配線板20に重ねる。次に、この積層体を、好ましくは150〜280℃、より好ましくは170℃〜240℃の範囲の温度で、好ましくは0.5〜20MPa、より好ましくは1〜8MPaの範囲の圧力で加熱加圧成形することにより、図2(b)に示される積層体を得る。この積層体においては、樹脂層2の硬化物3によって銅箔1と絶縁層12とが接着されている。次に、加熱加圧成形された積層体にスルーホールを形成し、そこにめっきを施すことにより、図2(c)に示される積層体を得る。図2(c)の積層体には、スルーホール22及びめっき層24が設けられている。スルーホールは、通常のドリルによる加工により設けることができる。次に、この積層体の銅箔1に回路加工を施すことにより、表面に回路4を備える多層配線板30が得られる(図2(d))。
【0078】
なお、上記の多層配線板の製造方法には、種々の変更が可能である。例えば、配線板20の両面に樹脂付き基材10を重ねて、両表面に回路を備える多層配線板を得ることができる。また、スルーホールに加えて若しくは代えて、ビア接続を行ってもよい。ビアは、例えば、コンフォーマルマスク法によるレーザー加工やドリルでの加工により形成することができる。
【0079】
また、別の実施形態として、基材1が樹脂基材である樹脂付き基材10を用いて多層配線板を製造する方法について説明する。図3は、本発明に係る多層配線板の別の製造方法を説明するための模式図である。まず、図3(a)に示すように、樹脂基材1b上に樹脂層2が設けられた樹脂付き基材11を用意する。ここで、樹脂基材1bの樹脂層2と接する面Sは離型処理が施されていることが好ましい。次に、樹脂付き基材11から樹脂基材1bを剥離することにより樹脂層2からなるフィルム状の樹脂(接着剤フィルム)16を得る(図3(b))。次に、図3(c)に示すように、回路形成用銅箔18と、接着剤フィルム16と、絶縁層12及び内層回路14を有する配線板20とをこの順に重ねる。次に、この積層体を、好ましくは150〜280℃、より好ましくは170℃〜240℃の範囲の温度で、好ましくは0.5〜20MPa、より好ましくは1〜8MPaの範囲の圧力で加熱加圧成形することにより、図2(b)に示される積層体と同様の積層体が得られる。この後、必要に応じてスルーホールやビアを形成し、これらにめっきを行った後、銅箔18に回路加工を施すことにより多層配線板が得られる。
【0080】
なお、本発明に係る多層配線板の製造方法は、上述の実施形態に限定されず種々の変更が可能である。例えば、内層回路を有する配線板を2つ以上用意し、これらの配線板の間に本発明に係る接着剤フィルムを挟み、更に多層化することが可能である。このとき、必要に応じて配線板間に複数枚の接着剤フィルムを用いることができる。また、各配線板の位置合わせを行うことが好ましい。接着剤フィルムを挟んで積み重ねられた配線板は、必要に応じて接着剤フィルム及び銅箔を更に重ねて、好ましくは150〜280℃、より好ましくは170℃〜240℃の範囲の温度で、好ましくは0.5〜20MPa、より好ましくは1〜8MPaの範囲の圧力で加熱加圧成形できる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0082】
[ポリアミドイミドの合成]
(合成例1)
環流冷却器を連結したコック付き25mlの水分定量受器、温度計及び撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、芳香族環を3個以上有するジアミンとしてBAPP(2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン)57.5g(0.07mol)、シロキサンジアミンとして反応性シリコンオイルKF−8010(信越化学工業株式会社製商品名、アミン当量421)50.5g(0.03mol)、TMA(無水トリメリット酸)80.7g(0.21mol)、及び、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)460gを仕込み、この反応液を80℃で30分間撹拌した。更に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mlを投入してから反応液の温度を上げ、約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約7.2ml以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、室温に戻した反応液に、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)60.1g(0.12mol)を投入し、190℃で2時間反応させた。反応終了後、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。得られたシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算値で82000であった。
【0083】
(合成例2)
環流冷却器を連結したコック付き25mlの水分定量受器、温度計及び撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、芳香族環を3個以上有するジアミンとしてBAPP(2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン)41.1g(0.05mol)、シロキサンジアミンとして反応性シリコンオイルKF−8010(信越化学工業株式会社製商品名、アミン当量421)84.2g(0.05mol)、TMA(無水トリメリット酸)80.7g(0.21mol)、及び、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)494gを仕込み、この反応液を80℃で30分間撹拌した。更に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mlを投入してから反応液の温度を上げ、約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約7.2ml以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、室温に戻した反応液に、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)60.1g(0.12mol)を投入し、190℃で2時間反応させた。反応終了後、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。得られたシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算値で78000であった。
【0084】
(合成例3)
環流冷却器を連結したコック付き25mlの水分定量受器、温度計及び撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、芳香族環を3個以上有するジアミンとしてBAPP(2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン)16.4g(0.02mol)、シロキサンジアミンとして反応性シリコンオイルKF−8010(信越化学工業株式会社製商品名、アミン当量421)134.7g(0.08mol)、TMA(無水トリメリット酸)80.7g(0.21mol)、及び、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)438gを仕込み、この反応液を80℃で30分間撹拌した。更に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mlを投入してから反応液の温度を上げ、約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約7.2ml以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、室温に戻した反応液に、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)60.1g(0.12mol)を投入し、190℃で2時間反応させた。反応終了後、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。得られたシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算値で76000であった。
【0085】
(合成例4)
環流冷却器を連結したコック付き25mlの水分定量受器、温度計及び撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、芳香族環を3個以上有するジアミンとしてBAPP(2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン)41.1g(0.05mol)、シロキサンジアミンとして反応性シリコンオイルKF−8010(信越化学工業株式会社製商品名、アミン当量421)84.2g(0.05mol)、TMA(無水トリメリット酸)80.7g(0.21mol)、及び、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)495gを仕込み、この反応液を80℃で30分間撹拌した。更に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mlを投入してから反応液の温度を上げ、約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約7.2ml以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、室温に戻した反応液に、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)60.1g(0.12mol)、及びトリエチルアミン1mlを投入し、170℃で4時間反応させた。反応終了後、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。得られたシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算値で105000であった。
【0086】
(合成例5)
環流冷却器を連結したコック付き25mlの水分定量受器、温度計及び撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、芳香族環を3個以上有するジアミンとしてBAPP(2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン)8.2g(0.01mol)、シロキサンジアミンとして反応性シリコンオイルKF−8010(信越化学工業株式会社製商品名、アミン当量421)151.6g(0.09mol)、TMA(無水トリメリット酸)80.7g(0.21mol)、及び、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)495gを仕込み、この反応液を80℃で30分間撹拌した。更に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mlを投入してから反応液の温度を上げ、約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約7.2ml以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、室温に戻した反応液に、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)60.1g(0.12mol)、及びトリエチルアミン1mlを投入し、170℃で4時間反応させた。反応終了後、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。得られたシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算値で76000であった。
【0087】
(合成例6)
環流冷却器を連結したコック付き25mlの水分定量受器、温度計及び撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、芳香族環を3個以上有するジアミンとしてBAPP(2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン)32.9g(0.04mol)、シロキサンジアミンとして反応性シリコンオイルKF−8010(信越化学工業株式会社製商品名、アミン当量421)67.4g(0.04mol)、脂肪族ジアミンとしてジェファーミンD−2000(三井化学ファイン社製商品名、アミン当量1000)40.0g(0.02mol)、TMA(無水トリメリット酸)80.7g(0.21mol)、及び、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)495gを仕込み、この反応液を80℃で30分間撹拌した。更に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mlを投入してから反応液の温度を上げ、約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約7.2ml以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、室温に戻した反応液に、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)60.1g(0.12mol)、及びトリエチルアミン1mlを投入し、170℃で4時間反応させた。反応終了後、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。得られたシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算値で92000であった。
【0088】
(比較合成例1)
環流冷却器を連結したコック付き25mlの水分定量受器、温度計及び撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、芳香族環を3個以上有するジアミンとしてBAPP(2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン)41.1g(0.05mol)、シロキサンジアミンとして反応性シリコンオイルKF−8010(信越化学工業株式会社製商品名、アミン当量421)84.2g(0.05mol)、TMA(無水トリメリット酸)80.7g(0.21mol)、及び、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)346gを仕込み、この反応液を80℃で30分間撹拌した。更に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mlを投入してから反応液の温度を上げ、約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約7.2ml以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、室温に戻した反応液に、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)60.1g(0.12mol)、及びトリエチルアミン1.5mlを投入し、160℃で5時間反応させた。反応終了後、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。得られたシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算値で129000であった。
【0089】
(比較合成例2)
環流冷却器を連結したコック付き25mlの水分定量受器、温度計及び撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、芳香族環を3個以上有するジアミンとしてBAPP(2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン)41.1g(0.05mol)、シロキサンジアミンとして反応性シリコンオイルKF−8010(信越化学工業株式会社製商品名、アミン当量421)84.2g(0.05mol)、TMA(無水トリメリット酸)80.7g(0.21mol)、及び、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)494gを仕込み、この反応液を80℃で30分間撹拌した。更に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mlを投入してから反応液の温度を上げ、約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約7.2ml以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、室温に戻した反応液に、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)52.6g(0.105mol)を投入し、190℃で2時間反応させた。反応終了後、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。得られたシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算値で45000であった。
【0090】
なお、上記の合成例1〜6、及び比較合成例1、2で得られたシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により下記条件で測定し、標準ポリスチレンの検量線を使用して換算した値である。
(GPC条件)
検出器:L−7490((株)日立製作所製)
カラム:GL−S300MDT−5(2本)(日立化成工業株式会社商品名)
溶離液:0.60MのH3PO4及び0.30MのLiBrを含むDMF/THF混合液(体積比:DMF/THF=1/1)
測定温度:30℃
試料濃度:0.2mg/1mL
注入量:100μL
圧力:40kgf/cm
流量:1mL/分
【0091】
(実施例1)
<樹脂組成物ワニスの調製>
まず、エポキシ樹脂としてYDCN−702(東都化成株式会社製商品名、エポキシ当量210)300g、EPICLON860(大日本インキ株式会社製商品名、エポキシ当量240)400g及びNC3000(日本化薬株式会社製商品名、エポキシ当量289)300g、並びに、フェノール樹脂としてKA−1165(社製商品名、水酸基当量120)496gを、メチルエチルケトン900g及びジメチルアセトアミド100gの混合溶媒に溶解した後、ここに難燃剤として水酸化アルミHP−360(昭和電工株式会社製商品名)300gを分散し、更に硬化促進剤として2E4MZ−CNを10g加えて、1時間撹拌した。次に、この混合物に、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の配合量が上記エポキシ樹脂の合計100質量部に対して20質量部の割合となるように合成例1のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液645g(樹脂固形分31質量%)を配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため12時間、室温で静置し樹脂組成物ワニスとした。
【0092】
<樹脂付き金属箔の作製>
上記で調製した樹脂組成物ワニスを、厚さ12μmの電解銅箔(古河金属株式会社製、商品名F3−WS−12、表面粗さ(十点平均粗さRz):2.4μm)上に、乾燥後の樹脂層の厚みが50μmになるように塗工し、140℃で15分加熱することにより、金属箔上に樹脂層が設けられた実施例1の樹脂付き金属箔を得た。
【0093】
<樹脂付き基材の作製>
上記で調製した樹脂組成物ワニスを、厚さ50μmの離型PETフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名「ピューレックスA63」)の離形処理面に、乾燥後の樹脂層の厚みが50μmになるように塗工し、140℃で15分加熱することにより、PETフィルム上に樹脂層が設けられた実施例1の樹脂付き基材を得た。
【0094】
<両面銅張積層板の作製>
上記と同様にして作製した樹脂付き基材からPETフィルムを剥離して得られる接着剤フィルムの両面に、厚さ12μmの電解銅箔(古河金属株式会社製、商品名「F3−WS−12」、表面粗さ(十点平均粗さRz):2.4μm)を、その接着面が接着剤フィルムと合わさるようにして重ね、積層体を得た。この積層体を、180℃、90分、4.0MPaのプレス条件で加熱・加圧して、実施例1の両面銅張積層板を得た。
【0095】
<樹脂付き金属箔、接着剤フィルム及び両面銅張積層板の評価項目>
(1)樹脂付き金属箔及び接着剤フィルムの発塵性
得られた樹脂付き金属箔及び接着剤フィルムをカッター(オルファ社製)で幅1cm×長さ25cmの大きさに10枚切り出し、このときに発生する樹脂粉の有無により発塵性を評価した。結果を表1に示す。なお、結果については、樹脂粉が見られた場合を「発塵あり」で、樹脂粉が見られなかった場合を「発塵なし」で示した。
【0096】
(2)はんだ耐熱性
得られた両面銅張積層板を、260℃及び288℃に加熱したはんだ浴のそれぞれに浸漬し、浸漬開始から20秒後の積層板の状態を目視にて観察し、ふくれ等の異常の有無によりはんだ耐熱性を評価した。結果を表1に示す。なお、結果については、ふくれ等の異常が見られなかった場合を「○」で、異常が見られた場合をその異常内容で示した。
【0097】
(3)銅箔引き剥がし強さ(銅箔接着強度)
得られた両面銅張積層板について90度方向の引き剥がし試験を行い、そのときの強度を銅箔引き剥がし強さ(銅箔接着強度)とした。結果を表1に示す。
【0098】
(4)折り曲げ性
得られた両面銅張積層板の銅をエッチングにより除去し、これを試験用基板とした。直径0.1mmのピンゲージを、試験用基板の折り曲げ箇所の内側となる主面上に接触させ、ピンゲージに沿って試験用基板を180度折り曲げて、そのときの試験用基板のクラックや破断の有無により折り曲げ性を評価した。結果を表1に示す。なお、クラック発生及び破断発生が見られない場合を「OK」で、クラック発生又は破断発生が見られた場合を「NG」で示した。
【0099】
(実施例2)
合成例1のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂溶液に代えて合成例2のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂溶液を用い、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の配合量がエポキシ樹脂の合計100質量部に対して30質量部の割合となるように合成例2のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液1000g(樹脂固形分30質量%)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ワニスを得た。
【0100】
得られた樹脂組成物ワニスを用いて、実施例1と同様にして、実施例2の樹脂付き金属箔、接着剤フィルム及び両面銅張積層板の作製と、その評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0101】
(実施例3)
合成例1のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂溶液に代えて合成例3のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂溶液を用い、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の配合量がエポキシ樹脂の合計100質量部に対して10質量部の割合となるように合成例3のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液250g(樹脂固形分32質量%)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ワニスを得た。
【0102】
得られた樹脂組成物ワニスを用いて、実施例1と同様にして、実施例3の樹脂付き金属箔、接着剤フィルム及び両面銅張積層板の作製と、その評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0103】
(実施例4)
合成例1のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂溶液に代えて合成例4のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂溶液を用い、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の配合量がエポキシ樹脂の合計100質量部に対して20質量部の割合となるように合成例4のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液571g(樹脂固形分35質量%)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ワニスを得た。
【0104】
得られた樹脂組成物ワニスを用いて、実施例1と同様にして、実施例4の樹脂付き金属箔、接着剤フィルム及び両面銅張積層板の作製と、その評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0105】
(実施例5)
合成例1のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液に代えてシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液である「KS−6600」(日立化成工業株式会社製商品名、樹脂固形分30.2質量%、重量平均分子量95000)を用い、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の配合量がエポキシ樹脂の合計100質量部に対して20質量部の割合となるように上記シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液655g(樹脂固形分30.2質量%)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ワニスを得た。
【0106】
得られた樹脂組成物ワニスを用いて、実施例1と同様にして、実施例5の樹脂付き金属箔、接着剤フィルム及び両面銅張積層板の作製と、その評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0107】
(実施例6)
合成例1のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂溶液に代えて合成例5のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂溶液を用い、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の配合量がエポキシ樹脂の合計100質量部に対して40質量部の割合となるように合成例5のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液1290g(樹脂固形分32質量%)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ワニスを得た。
【0108】
得られた樹脂組成物ワニスを用いて、実施例1と同様にして、実施例6の樹脂付き金属箔、接着剤フィルム及び両面銅張積層板の作製と、その評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0109】
(実施例7)
合成例1のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂溶液に代えて合成例2のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂溶液を用い、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の配合量がエポキシ樹脂の合計100質量部に対して40質量部の割合となるように合成例2のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液1332g(樹脂固形分32質量%)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ワニスを得た。
【0110】
得られた樹脂組成物ワニスを用いて、実施例1と同様にして、実施例7の樹脂付き金属箔、接着剤フィルム及び両面銅張積層板の作製と、その評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0111】
(実施例8)
合成例1のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂溶液に代えて合成例6のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂溶液を用い、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の配合量がエポキシ樹脂の合計100質量部に対して20質量部の割合となるように合成例6のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液571g(樹脂固形分35質量%)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ワニスを得た。
【0112】
得られた樹脂組成物ワニスを用いて、実施例1と同様にして、実施例8の樹脂付き金属箔、接着剤フィルム及び両面銅張積層板の作製と、その評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0113】
(比較例1)
合成例1のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂溶液に代えて比較合成例1のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂溶液を用い、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の配合量がエポキシ樹脂の合計100質量部に対して10質量部の割合となるように比較合成例1のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液285g(樹脂固形分35質量%)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ワニスの調製を試みたが、ポリアミドイミド樹脂が分離し、樹脂組成物ワニスを得ることができなかった。
【0114】
(比較例2)
合成例1のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂溶液に代えて比較合成例2のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂溶液を用い、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の配合量がエポキシ樹脂の合計100質量部に対して20質量部の割合となるように比較合成例2のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液667g(樹脂固形分30質量%)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ワニスを得た。
【0115】
得られた樹脂組成物ワニスを用いて、実施例1と同様にして、比較例2の樹脂付き金属箔、接着剤フィルム及び両面銅張積層板の作製と、その評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0116】
(比較例3)
合成例1のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂溶液に代えて合成例2のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂溶液を用い、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の配合量がエポキシ樹脂の合計100質量部に対して5質量部の割合となるように合成例2のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液167g(樹脂固形分30質量%)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ワニスを得た。
【0117】
得られた樹脂組成物ワニスを用いて、実施例1と同様にして、比較例3の樹脂付き金属箔、接着剤フィルム及び両面銅張積層板の作製と、その評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0118】
(比較例4)
合成例1のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂溶液に代えて合成例2のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂溶液を用い、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂の配合量がエポキシ樹脂の合計100質量部に対して60質量部の割合となるように合成例2のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液2000g(樹脂固形分30質量%)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ワニスを得た。
【0119】
得られた樹脂組成物ワニスを用いて、実施例1と同様にして、比較例4の樹脂付き金属箔、接着剤フィルム及び両面銅張積層板の作製と、その評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0120】
【表1】



【0121】
【表2】



【0122】
表1及び2に示すように、実施例1〜8の樹脂付き金属箔及び接着剤フィルムは発塵が見られず、一方、比較例2及び3の樹脂付き金属箔及び接着剤フィルムは発塵が見られた。また、実施例1〜8の銅張積層板は、はんだ耐熱性、銅箔接着強度及び折り曲げ性のすべてについて良好な結果を示すことが確認された。一方、比較例2及び3の銅張積層板は、折り曲げ試験でクラックが生じた。
【0123】
また、表2に示すように、比較例4の銅張積層板は260℃及び288℃でのはんだ耐熱性の試験でふくれが発生したが、このふくれは、銅張積層板の樹脂層にボイドが見られたことから、樹脂層の流動性が不足したことに起因するものと本発明者らは考えている。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の樹脂付き基材の一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る多層配線板の製造方法を説明するための模式図である。
【図3】本発明に係る多層配線板の別の製造方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0125】
1…基材、1b…樹脂基材、2…樹脂層、3…硬化物、4…回路、10,11…樹脂付き基材、12a,12b…絶縁層、14…内層回路、16…接着剤フィルム、18…回路形成用銅箔、20…配線板、22…スルーホール、24…めっき層、30…多層配線板。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に設けられた樹脂層と、を備える樹脂付き基材であって、
前記樹脂層が、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂と、重量平均分子量が70000以上120000以下のポリアミドイミド樹脂と、を含む樹脂組成物から形成されるものであり、
前記樹脂組成物における前記ポリアミドイミド樹脂の含有量が、前記エポキシ樹脂100質量部に対して10〜50質量部である、樹脂付き基材。
【請求項2】
前記ポリアミドイミド樹脂が、シロキサン変性ポリアミドイミドである、請求項1に記載の樹脂付き基材。
【請求項3】
前記ポリアミドイミド樹脂が、シロキサンジアミンと無水トリメリット酸とを反応させて得られる反応生成物を含むジイミドジカルボン酸成分と、芳香族ジイソシアネート成分と、を反応させて得られるシロキサン変性ポリアミドイミドである、請求項1に記載の樹脂付き基材。
【請求項4】
前記ポリアミドイミド樹脂が、芳香族環を有するジアミン及びシロキサンジアミンの混合物と無水トリメリット酸とを反応させて得られる反応生成物を含むジイミドジカルボン酸成分と、芳香族ジイソシアネート成分と、を反応させて得られるシロキサン変性ポリアミドイミドである、請求項1に記載の樹脂付き基材。
【請求項5】
前記ポリアミドイミド樹脂が、
芳香族環を3個以上有するジアミン及びシロキサンジアミンの混合物、又はシロキサンジアミンと、無水トリメリット酸と、を反応させて得られる、下記一般式(1)で示されるジイミドジカルボン酸及び下記一般式(2)で示されるジイミドジカルボン酸を含むジイミドジカルボン酸成分、又は下記一般式(2)で示されるジイミドジカルボン酸を含むジイミドジカルボン酸成分と、
下記一般式(3)で示される芳香族ジイソシアネート成分と、
を反応させて得られるシロキサン変性ポリアミドイミドである、請求項1に記載の樹脂付き基材。
【化1】



[式(1)中、Rは、下記一般式(1−1)で表わされる2価の有機基を示す。
【化2】



{式(1−1)中、Xは、
【化3】



}]
【化4】



[式(2)中、Rは、下記一般式(2−1)で表わされる2価の有機基を示す。
【化5】



{式(2−1)中、R及びRは、2価の有機基を示し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、又は置換若しくは無置換のフェニル基を示し、nは、1〜50の整数を示す。}]
【化6】



[式(3)中、Rは、
【化7】




【請求項6】
前記シロキサン変性ポリアミドイミドが、
前記芳香族環を3個以上有するジアミン(a)と前記シロキサンジアミン(b)との混合比率がa/b=99.9/0.1〜0/100モル比であるジアミン成分と、前記無水トリメリット酸と、を[前記(a)成分及び前記(b)成分の合計モル数]/[前記無水トリメリット酸のモル数]=1.0/2.0〜1.0/2.2のモル比で反応させて得られる、前記一般式(1)で示されるジイミドジカルボン酸及び前記一般式(2)で示されるジイミドジカルボン酸を含むジイミドジカルボン酸成分、又は前記一般式(2)で示されるジイミドジカルボン酸を含むジイミドジカルボン酸成分と、
前記一般式(3)で示される芳香族ジイソシアネート成分と、
を[前記(a)成分及び前記(b)成分の合計モル数]/[前記芳香族ジイソシアネート成分のモル数]=1.0/1.0〜1.0/1.5のモル比で反応させて得られるシロキサン変性ポリアミドイミドである、請求項5に記載の樹脂付き基材。
【請求項7】
前記基材が、前記樹脂層と接する面に離型処理が施されている樹脂基材である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂付き基材。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項記載の樹脂付き基材における前記基材が、銅箔である、樹脂付き銅箔。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−162084(P2012−162084A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−62527(P2012−62527)
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【分割の表示】特願2007−265823(P2007−265823)の分割
【原出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】