説明

樹脂供給装置

【課題】カッターマークの両端部に形成される角形状の痕跡をプリフォームの成形時に消滅若しくはプリフォーム胴部の側壁まで及ばせなくさせることができる樹脂供給装置を提供すること。
【解決手段】圧縮成形機に溶融樹脂を供給する樹脂供給装置には、軌道上を回転可能に移動する保持ユニット17を備え、保持ユニット17には溶融樹脂の保持及び解放が可能な一対のホルダー22,23を備えている。カッターによる溶融樹脂の切断時に溶融樹脂の切断方向に対して直角方向へ向けて樹脂の切断面に直線状のカッターマーク29が形成される。一対のホルダー22,23による溶融樹脂の保持時に、カッターマーク29の端部をカッターマークの内側へ変形させる突部32,33をホルダー22,23の内周面に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機から排出された溶融樹脂を保持ユニットによって保持し、溶融樹脂を保持ユニットから圧縮成形機の金型に供給する樹脂供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料等のための容器として、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)のような合成樹脂から形成された合成樹脂製容器が広く実用に供されている。ブロー成形することによって合成樹脂製容器にされる前成形体(プリフォーム)は、圧縮成形機を用いた圧縮成形によって一体成形が可能である。
このような圧縮成形の遂行に際し、押出ノズルの開口から押し出された溶融状態の合成樹脂は、樹脂供給装置によって圧縮成形機に供給される。
図8のAは、従来の樹脂供給装置の保持ユニットの溶融樹脂107を保持している状態の平面図、図8のBは保持ユニットを開いた状態の平面図、図8のCはAのX−X線方向から見た側面図である。
保持ユニット101は、図示しない回転手段によって回転軌道を移動可能に保持されている。保持ユニット101は、基部102と一対のホルダー103とを備えている。基部102には、半円柱状の収納凹部104が形成されている。基部102の上方にはカッター105が形成され、刃先が進行方向斜め上方に向かって突出し、刃が保持ユニット101の回転半径方向に対し平行に伸び備わっている。一対のホルダー103は、基部102に回転可能に支持され、ホルダー103を開閉することができる。
【0003】
保持ユニット101は、回転軌道を移動しながら、押出装置のダイヘッド(実施例の図2参照)の上流側で図8のBに示すようにホルダー103を開き、ダイヘッドから排出された溶融樹脂(ドロップ)107をカッター105で切断するとともに、図8のAに示すように、ホルダー103を閉じて溶融樹脂107を保持し、圧縮成形機の金型の直上方まで搬送されて、金型の雌型に溶融樹脂107を供給する。
なお、下記の特許文献1には、ダイヘッドの押出開口から切り離された合成樹脂をホルダーで保持し、ホルダーが圧縮成形機の雌型の上方位置まで移送されると、ホルダーを開状態に設定して雌型に溶融樹脂を供給するようにした溶融樹脂供給装置が開示されている。
【特許文献1】特開2000−108127
【特許文献2】特開2005−059240
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9のA及びBは、ダイヘッドのノズルの先端から排出された溶融樹脂をカッター105で切断した後の形状の一形態例を示し、図9のAはカッター105の切断方向(溶融樹脂107または保持ユニット101の移動方向)に対して直角方向から見た溶融樹脂107の形状で、図9のBは保持ユニット101の移動方向の前方側から見た溶融樹脂107である。溶融樹脂107がカッター105で切断されるときに、カッター105に初めに当たる側の溶融樹脂107の上端部は、斜め後方に延びる傾斜面107aに変形され、その終端部が頂き部となるカッターマーク107bが形成され、カッターマークの後方側(保持ユニット101の移動方向の前方寄り側)はほぼ後方側に向かって下向きの湾曲面107cに変形される。すなわち、溶融樹脂107の全体としては、カッター105の形状と動きから、溶融樹脂107を保持ユニット101の回転半径方向に横断するカッターマーク107bを頂部とした山形状に形成される。
【0005】
図9のBに示すように、カッターマーク107bは溶融樹脂107の直径とほぼ同じ長さの直線形状に形成され、カッターマーク107bの両端部では角107d形状に形成されている。この後、溶融樹脂107は、圧縮成形機の雌型内に供給され雄型とともに圧縮成形される。
しかしながら、上述したようなカッターマーク107bが形成され、カッターマーク107bの両端部が角107d形状に形成されたままの形状で圧縮成形をすると、角形状の痕跡が圧縮成形金型の雌型または雄型に沿ってプリフォームの胴部まで上昇し、プリフォームの高さ方向に縦痕として発現される。図10は、そのプリフォームの縦痕を図面化して示している。縦痕111はプリフォーム110の胴部110aから下部の半球部110bにわたって縦方向へ線状になって現れ、プリフォームの半球部110bでは、縦痕は消滅するか、あるいは1本若しくは図10に示すように二股に分岐して2本になって残ることもある。縦痕111は、プリフォームの内面に形成されるが、プリフォームの外側から見ると、光の屈折などによってプリフォームの表面側に形成されているように見える。
【0006】
このような縦痕111は、プリフォーム底部(半球部)では、ブロー成形により容器となっても延伸されにくく、また見えにくい底部に留まるため、この痕跡は目立ちにくく、また、さらにはプリフォーム底部をブロー成形時、必要に応じて延伸ロッド(;ストレッチロッド)や支持ピン(;プレスロッド)などによる押圧加工を行うことで、さらに痕跡を低減させることが可能である。しかし、胴部の縦痕は、プリフォームを容器へブロー成形後、延伸薄肉化された容器胴部に、広げられてより目立った縦痕(外観不良)を残すという問題点があった。
【0007】
これに対し、特許文献2では前の図8の保持ユニット101において、ホルダー103の換わりに凹部が設けられた挟持壁が備えられ、この挟持壁により溶融樹脂を挟持することで、凹部から外れた溶融樹脂107の上部と下部が押し潰されることにより、カッターマーク107bの径(幅)を小さくし、カッターマークの端部107d(図9)が圧縮成形中に雌型表面(図5における、キャビティー型52の内孔54の表面)に接触されることなく、縦痕が有効に防止される旨が開示されている。
ところが、特許文献2の装置でもカッターマーク端部107dがごく稀ではあるが雄型側壁外径の箇所に位置することがあり、そうすると、縦痕が雄型の側壁に沿って上昇し、プリフォームの内面側の側壁に発現されてしまうことがある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、カッターマークの両端部に形成される角形状の痕跡をプリフォームの成形時に消滅若しくはプリフォーム胴部の側壁まで及ばせなくさせることができる樹脂供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の樹脂供給装置は、軌道上を移動する保持ユニットを備え、該保持ユニットが開閉によって溶融樹脂の保持及び解放が可能な一対のホルダーと、該ホルダーを開閉可能に支持し該ホルダーと共に溶融樹脂を保持する基部とを備え、押出成形機から排出されてカッターによって切断された溶融樹脂を前記保持ユニットによって保持し、溶融樹脂を該保持ユニットから圧縮成形機の雌型に供給するようにした溶融樹脂供給装置において、前記溶融樹脂の切断時に溶融樹脂の切断面に前記カッターによってカッターマークが形成され、前記保持ユニットの前記溶融樹脂の保持時に、前記カッターマークの端部をカッターマークの内側へ変形させる突部を前記一対のホルダーの少なくとも1つのホルダーの内周面に形成した。
上記溶融樹脂供給装置の前記一対のホルダーが、前記溶融樹脂のカッターマーク方向へ開閉するようにすることができる。
上記溶融樹脂供給装置は、各々に前記突部が形成されている前記一対のホルダーのうち一方のホルダーの突部を他方のホルダーの突部よりも前記カッターマークの内側へ突出させるようにすることができる。
上記溶融樹脂供給装置の前記突部は、前記雌型内孔の半径と前記圧縮成形機の雄型の先端部の半径とにおける半径差の長さよりも大きく形成し、前記溶融樹脂のカッターマークを該カッターマークの内側へ変形させることができる。
上記保持ユニットの前記溶融樹脂の保持時に、前記カッターマークの端部をカッターマークの内側へ変形させる、少なくとも一方の突部と、他方の突部またはホルダーの内周面前記溶融樹脂の挟持部分との距離を、前記圧縮成形機の雄型の先端部の直径よりも狭く設定することができる。
保持ユニットは回転軌道を移動し、前記カッターは該保持ユニットに搭載され、該カッターの刃は該保持ユニットの回転軌道の半径方向に対し平行に配置され、
上記溶融樹脂のカッターマーク方向へ開閉する一対のホルダーのうち、該保持ユニットの回転半径方向の外側に該一対のホルダーの一方が配設され、前記回転半径方向内側に該一対のホルダーの他方が配設されるようにすることができる。
さらに、押出機から押し出された合成樹脂の溶融樹脂を、カッターにて切断後、柱状胴部を有する雄型と、雌型と、を備えた圧縮成形機の該雌型内に、前記カッターによる切断によって生じたカッターマークを該雌型の開口側に向けて供給し、該雄型と雌型との協働によって有底筒状物を圧縮成形する方法であって、該カッターマークの最大幅が該柱状胴部の最小幅より狭くなるよう、溶融樹脂を圧縮成形前に押し潰す成形方法をとった。
上記雄型の柱状胴部が円柱状胴部であり、前記合成樹脂がポリエステルであって、前記有底筒状物が、ブロー成形容器の前成形体とした。
また、さらには、容器へブロー成形するための有底筒状前成形体であって、該有底筒状前成形体の内面側には、スジ状の痕が該前成形体の底部のみに存在することとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の溶融樹脂供給装置は、カッターによる溶融樹脂の切断時に溶融樹脂の切断方向に対して直角方向へ向けて溶融樹脂の切断面に直線状のカッターマークが形成され、一対のホルダー部の前記溶融樹脂の保持時に、前記カッターマークの端部をカッターマークの内側へ変形させる突部をホルダーの内周面に形成するようにしたので、カッターマークの角形状の痕跡がプリフォームの胴部まで上昇することが防止される。よって、ボトル側面に延長する縦痕の発生を防止することでき、プリフォーム及び容器の生産性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態による樹脂供給装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、プリフォームと呼ばれるPETボトルなどの前成形体を形成する圧縮成形装置の概略平面図を示している。
圧縮成形装置1は、押出機2、樹脂供給装置3、圧縮成形機4、出口ホイール6及び取出しコンベア7を備えている。
押出機2は、ほぼ筒状の外形を有しており、PET等の合成樹脂素材を加熱溶融及び混練して、溶融樹脂をギヤポンプ8に搬送する。ギヤポンプ8は、歯車の噛み合いによって、溶融樹脂を安定した状態で吐出する。ギヤポンプ8の吐出口は、導管2aを介して下向きのダイヘッド10と接続されている。ダイヘッド10は円筒断面を有しており、溶融状態の合成樹脂は、ダイヘッド10からほぼ円柱形状の状態で連続的に下方に押し出される。
【0011】
図2は、本発明の一実施形態にかかる樹脂供給装置の拡大平面図を示している。
樹脂供給装置3は、カッターホイール11を備え、カッターホイール11は、回転板12、揺動カム14、揺動ユニット15、伸縮ユニット16及び保持ユニット17を備えている。
回転板12は、円板状部材であり、周縁部に等角度間隔で、図では6個の揺動ユニット15が回転板12とともに回動自在に配設されている。この回転板12は、駆動手段をモータ(図示せず)として、上方から見て時計回り方向に回転する。
揺動ユニット15は、下部にカムフォロワーが設けられており、回転板12が回転すると、カムフォロワーが揺動カム14に形成された溝18に沿って移動することにより、揺動する。
【0012】
伸縮ユニット16は、ほぼ回転板12の径方向に延びた棒状部材であり、外周側先端部に、保持ユニット17が設けられている。伸縮ユニット16は、リニアベアリングなどを介して、揺動ユニット15の上部に揺動ユニット15の長手方向に往復移動自在に設けられており、例えばエアシリンダ,カム,スプリング,モーター、またはこれらの組合せ(図示せず)などによって、ほぼ回転板12の径方向に往復移動する。
保持ユニット17は、揺動ユニット15の揺動運動と伸縮ユニット16の往復移動とによって、運転時の軌跡19に沿って回転し、圧縮成形機4の金型51に溶融樹脂を受け渡しする前後においては、金型51の回転軌跡20に沿って移動する。これにより、高速運転した場合であっても、溶融樹脂の受け渡しを確実に行なうことができる。
【0013】
図3及び図4は、本発明の一実施形態にかかる保持ユニットの構造を説明するための要部の概略拡大図である。
保持ユニット17は、基部21と一対のホルダー22,23とを備えている。基部21は、半円形状若しくはほぼ半楕円形状の収納凹部25が上下方向に形成され、一対のホルダー22,23が基部21に設けられた図示しない回動軸に回動可能に取付けられ、カム機構やアクチュエータなどの手段によってホルダー22,23を開閉することができる。
ホルダー22,23は、閉状態にあるときに、上述の収納凹部24と共に溶融樹脂を収納する収納凹部25を形成している。
【0014】
保持ユニット17は、図3に示す平面図の状態では、矢印a方向に回転し一方のホルダー22が回転半径の外側に配置され、他方のホルダー23が回転半径の内側に配置されている。そして、ホルダー22,23は、矢印bに示すように、回転方向に対してほぼ直角方向へ開閉することができる。したがって、保持ユニット17を回転させる回転板12の回転軸Oは、図3及び図4中の保持ユニット17の右側に位置する。
基部21の上部にはカッター28(図2参照)が、その刃が保持ユニット17および回転板12の回転半径方向に対し平行に配置されるよう設けられ、溶融樹脂がこのカッター28により切断されたときには、溶融樹脂の上端部に回転板12の半径方向に延びるカッターマーク29が形成される。なお、カッター28の刃が保持ユニット17の回転半径方向に対し傾斜して配置されている場合はカッターマーク29も回転半径方向に対し傾斜して形成され、カッター28の刃が直線ではなく、弧状や曲線状に形成されている場合は、カッターマーク29も弧状や曲線状等、カッター28の刃の形状、もしくはそれに類似した形に形成される。
【0015】
一方のホルダー22の収納凹部25側端部には、他方のホルダー23側へ突出する突部32が形成され、他方のホルダー23の収納凹部24側端部には、一方のホルダー22側へ突出する突部33が形成されている。加えて、これらの突部32,33が形成される位置は、ホルダー22,23が溶融樹脂を保持するときに、溶融樹脂の上端部に位置するようにしている。さらに、一方の突部32は、溶融樹脂のカッターマーク29が形成される位置の一端側に対応する位置であり、この一端側にカッターマーク29がカッターマーク29の内側(溶融樹脂の軸中心方向)へ変形するように突部32を突出させる。他方の突部33は、カッターマーク29が形成される位置の他端側に対応する位置であり、この他端側にカッターマーク29がカッターマーク29の内側へ変形するように突部33を突出させる。すなわち、カッターマーク29の両端部を内側へ変形させる突部32,33を、ホルダー22,23の内周面に形成している。
【0016】
図3及び図4に示すように、具体的に突部32,33は、基部21側の面を該基部21側へ突出させ、カッターマーク29の長さをカッターマーク29の両端からほぼ等幅だけ減縮するようにしており、さらに収納凹部25側の面に収納凹部25を狭める方向へ上方に延びる傾斜面32a,33aを形成している。
このような保持ユニット17は、ダイヘッド10の上流側でホルダー22,23が開き、ダイヘッド10を通過した直後にホルダー22,23が閉じる。これにより、カッター28によって切断されながら収納凹部24,25に収納された溶融樹脂9を保持する。また、保持ユニット17は、切断し保持した溶融樹脂9を、ホルダー22,23を閉じた状態で、圧縮成形機4に搬送する。
【0017】
図5のAは、保持ユニット17がキャビティー型52の直上方へ搬送された状態を示す。
圧縮成形機4は、複数のキャビティー型52が連続して円軌道上を移動するように回転可能に設けられている。キャビティー型52は上方が開放し、キャビティー型52の上部には図5の各図に示すように、上型となるネックハーフ53が、キャビティー型52に対して昇降可能に設けられている。
図5のAに示すように、溶融樹脂9の受け渡し位置では、保持ユニット17がネックハーフ53とキャビティー型52との間に配設され、ホルダー22,23を開放することによって、溶融樹脂9をキャビティー型52の内孔54に供給する。図5のBに示すように、保持ユニット17は、溶融樹脂9をキャビティー型52に供給した後は、圧縮成形機4の回転軌道20から離れる(図2参照)。
【0018】
ネックハーフ53は水平方向に開閉する左右一対の型によって形成され、キャビティー型52の上部には、上下動が可能なコア55が配設され、コア55がネックハーフ53の貫通孔53a及びキャビティー型52の内孔54に押し込まれることによって、溶融樹脂9を圧縮成形してプリフォームを成形することができる。
図1に示すように、圧縮成形機4の下流側には、プリフォームを取り出す出口ホイール6が設置され、出口ホイール6には、プリフォームを次工程に搬送する取り出しコンベア7が設置されている。
【0019】
次に、本発明の実施形態における樹脂供給装置の作用について説明する。
押出機2は、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂素材を加熱溶融及び混練して、溶融樹脂9をギヤポンプ8に搬送する。ギヤポンプ8では、溶融樹脂9の供給を安定させるために、歯車の噛み合いによって、溶融樹脂9の吐出を行うよう構成されている。ギヤポンプ8は、導管2aを介して図2に示す下向きのダイヘッド10に搬送され、ダイヘッド10は、その下端部に形成した押出口から略円柱形状に形成された溶融樹脂9を連続的に下方に押し出している。
【0020】
押し出された溶融樹脂9は、カッター28によって切断され、押出口から切り離される。切り離された溶融樹脂9は、上端部にカッターマーク29が回転板12の半径方向へ形成される。溶融樹脂9が切り離された時には、保持ユニット17のホルダー22,23を閉じることによって溶融樹脂9を保持する。このとき、ホルダー22,23に形成した突部32,33がカッターマーク29の両端部に位置する角部を押圧してカッターマーク29の内側へ向けて変形させる。そして、ホルダー22,23が閉状態の保持ユニット17に保持された溶融樹脂9は、圧縮成形機4に備えられたキャビティー型52の上方位置まで移動させられる。
【0021】
図2に示すように、保持ユニット17が圧縮成形機4のキャビティー型52が同一軌道31上に移動したときに、図5のAに示すように、保持ユニット17は、キャビティー型52とネックハーフ53との間に入り込む。すなわち、保持ユニット17の上にはネックハーフ53が、保持ユニット17の下にはキャビティー型52が配置され、互いの軌道が同一軌道31上に移動したときに、保持ユニット17のホルダー22,23を開状態にして、保持ユニット17からキャビティー型52の内孔54に溶融樹脂9が供給され、その後、図5のBに示すように、保持ユニット17が、キャビティー型52の軌道上から離れる。
【0022】
図6は、キャビティー型52の内孔54を示している。内孔54内の一点鎖線55aは、図5のAに示すコア55の先端側円柱部における外周部55bを示す。ほぼ円柱状の側胴部を有するコア55は、溶融樹脂9を圧縮成形するときは、内孔54に同心円上に内孔54の中央に配置される。
溶融樹脂9がキャビティー型52の内孔54に収納されるときは、押し潰された変形後のカッターマーク29の端部Pの位置が、コア55の先端側円柱部の外周部55bの位置よりも径方向内側に位置させることが必要である。したがって、まず、カッターマーク29の端部Pの押し潰し量δが、内孔54の半径とコア55の先端側円柱部の半径との差Δrを超えるようにカッターマーク29を突部32,33で挟み込んで押し潰す必要がある。本実施形態のように、金型51が図2に示す回転軌跡20に沿って移動する場合は、溶融樹脂9は遠心力により回転外方へ移動しようとするので、少なくとも金型の回転軌跡20の外方に位置する側のカッターマーク29の端部P(図6においては回転中心の外方である左側のPであり、図4においては右側(ホルダー23側)。図2と合わせて比較参照。)の押し潰し量δを、内孔54の半径とコア55の先端側円柱部の半径との差Δrを超えるようにしてカッターマーク29を突部32,33で挟み込んで押し潰せば、溶融樹脂9が回転軌道20を回転するキャビティー52の内孔54に供給・配置された後、溶融樹脂が遠心力によって回転外方側へ傾斜しても、カッターマーク29の端部Pはコア55の外径位置よりも確実に径方向内側に位置するようになる。(さらに、この押し潰しの後、カッターマーク29の最大幅(本実施例に於いては両端部P間の距離と同じ)がコア55の外周部55bの外径より狭くなっていなければならないが、前に述べたとおり本実施形態ではカッターマーク29を突部32,33によって両側からほぼ等幅だけ減縮するようにしていることにより、自ずとカッターマーク29の最大幅がコア55の外周部55bの外径より狭くなるよう潰されている。)
【0023】
このような押し潰し操作を行うためには、ホルダー22,23の閉状態における突部32,33の先端間の距離を、コア55の先端円柱部の直径よりも小さく設定しておけば、ホルダー22,23を閉じて溶融樹脂9を保持しつつ突部32,33でカッターマーク29を押し潰す際、自ずとカッターマークの最大幅はコア55の先端円柱部の直径より狭くなる。また、カッターマーク29を両側からほぼ等幅だけ減縮する本実施形態においては、この設定で自ずと押し潰し量δも前述のΔr以上となる。
なお、溶融樹脂9の温度によっては突部32,33によってカッターマーク29を押し潰した後、弾性復元により広がる事も考えられるので、その分を見積もって余分に押し込んでもよい。また、コア55の先端の狭い領域にカッターマーク29を集めるために余分に押し潰すことも有効である。
【0024】
次いで、図5のCに示すように、ネックハーフ53が下降してキャビティー型52の上に配設され、その後コア55が下降して、ネックハーフ53の貫通孔53aと内孔54内に差し込まれる。この際、溶融樹脂9は、変形後のカッターマーク29の両端部Pの位置をコア55の先端側円柱部よりも内方側に位置させることによって、カッターマーク29の角形状の痕跡をコア55の先端に貼り付かせて固定させることにより、外周部55bまではみ出させ縦痕状に伸ばされることがなくなるので、プリフォームの内面側の側壁に縦痕を発現させることなく、プリフォームを圧縮成形することが可能になる。こうして、図5のDに示すように、成形されるプリフォーム27と同じ形状の隙間が形成され、溶融樹脂9が内孔54及びネックハーフ53側の隙間を充填し、溶融樹脂9がコア55に圧縮されてプリフォーム27が形成される。
プリフォーム27が成形されると、プリフォーム27は冷却されながら、図1に示すように、キャビティー型52の移動により。出口ホイール6のグリップ35の円軌道に接近する。そして、ネックハーフ53とコア55がプリフォーム27を支持したまま上昇し、キャビティー型52からプリフォーム27を抜き出して、取り出しコンベア7に移送し、プリフォーム27は次工程に搬送される。
【0025】
このように、本実施形態では、溶融樹脂9をホルダー22,23で保持するときに、ホルダー22,23の内周面に突部32,33を形成したので、突部32,33がカッターマーク29の長さが短くなるように、かつ本実施形態のように溶融樹脂の切断方向に対して直角に近い角形状の痕跡を鈍角になるように変形させているので、プリフォーム27の成形時に角形状の痕跡がコア55の底部によって押圧され消滅するか、またはコア55の底部内に留まることで側壁に沿ってプリフォーム27に形成されることがなくなる。よって、プリフォーム27及びペットボトルの生産性の向上を図ることができる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的思想に基づいて、勿論、本発明は種々の変形又は変更が可能である。
図7は、本発明の樹脂供給装置のホルダーの変形例であって、保持ユニット17のホルダー22,23には、回転板12(図2参照)の半径方向外側に位置するホルダー22の突部32の突出長さL1を、半径方向内側に位置するホルダー23の突部33の突出長さL2よりも小さく形成している。
保持ユニット17から内孔54に供給された溶融樹脂9は、キャビティー型52に受け渡される際に回転運動と揺動運動を合わせた複雑な動きをしたり、あるいはより高速で圧縮成形装置が稼働された場合、キャビティー型52の内孔54に収容される際に、内孔の一方に過度に片寄って溶融樹脂9を全体的に変形させたり、過度に傾かせるような場合は、図7に示すように、突部の一方による側の突部を大きくして、他方の突部を小さくしたり若しくは省略すると、カッターマーク29を過度に押し潰して溶融樹脂9を異常に変形させることなく、プリフォームの縦痕を抑えて成形することができる。なお、このように一方の突部を大きくする場合もカッターマークの両端間あるいは最大幅部を2×Δrを超える押し潰しを行う。
【0027】
また、カッターマーク29を押し潰すために溶融樹脂9を押し潰す高さ範囲は、溶融樹脂9の上端から溶融樹脂9の全高の3/4以下にすると、キャビティー型52の内孔54に供給された後、溶融樹脂9が過度に傾斜してカッターマーク29の端部Pがコア55の外周部55bの外径域をはみ出したり、内孔54に接触する虞がない。
さらに、コア55の先端は半球状に限らず、例えば円錐状や平面状であってもよい。またコア55では円柱状の胴部であったが、雄型の先端近傍であって、圧縮成形方向に平行な側壁を備えた部分であれば、楕円柱状や多角柱状などであってもよい。
また、上記実施形態では、突部32,33に傾斜面32a,33aを形成し、傾斜面32a,33aによって、カッターマーク29を変形させたが、カッターマーク29の長さを短くできれば、その形状は垂直円筒面(図7のB)や曲面状断面など他の形状であってもよい。
【0028】
さらに、カッターマーク29が保持ユニットの回転半径方向に傾斜している場合や、カッターマーク29が曲線状の場合も、適宜突部の配置を変更してカッターマーク29がコア55の外周部55bの外径内に収まるように押し潰せるよう設定してもよい。
また、カッター28は保持ユニット17に備えなくとも、例えば押出機2のダイヘッド10の下方側に別途設けられていてもよい。
また、ホルダーは、カッターマークを押し潰すための少なくとも一対が備わっていれば、3点以上の多数備わっていてもよいし、その多数のホルダーを用いて適宜、カッターマークの端部をカッターマークの内側へ変形させてもよい。
さらには、本装置や方法は、保持ユニット17や金型が多数、連続回転するものに限らず、1個取りでもよいし、直線搬送形式でも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態による樹脂供給装置を備えた圧縮成形装置の全体の概略平面図である。
【図2】図1の樹脂供給装置周辺の拡大平面図である。
【図3】図2の樹脂供給装置に配設されているホルダーの突部が溶融樹脂を押し潰している状態を示す平面図である。(分かりやすくするため、図2におけるカッター28を省略してある。)
【図4】図2の樹脂供給装置に配設されているホルダーの突部が溶融樹脂を押し潰している状態を示す図3におけるY−Y断面図である。(分かりやすくするため、図2におけるカッター28を省略してある。)
【図5】図1に示す圧縮成形機のプリフォームの圧縮工程を示す図であって、Aは、保持ユニットからキャビティー型に溶融樹脂を供給する直前の状態の断面図、Bはキャビティー型に溶融樹脂を供給した状態の断面図、Cはネックハーフがキャビティー型上に連結され、コアがそれらの貫通孔及び内孔に差し込まれている状態の断面図、Dは溶融樹脂を圧縮してプリフォームを成形している状態(ほぼ圧縮が完了した状態)の断面図である。
【図6】図1に示す圧縮成形機のキャビティー型及びコアと、切断された溶融樹脂の変形後切断ラインとの位置関係を説明するための平面図である。
【図7】本発明の変形例による樹脂供給装置のホルダーであって、Aは一対のホルダーの突部の突出高さを異なるようにした例の断面図、Bは傾斜面に変えて垂直円筒面とした断面図である。
【図8】従来のホルダーであって、Aはホルダー閉状態の平面図、Bはホルダー開状態の平面図、CはAのX−X線方向における側面図である。
【図9】Aはカッターで切断された溶融樹脂のカッターマークを切断方向に対して直角方向からみた溶融樹脂の側面図、Bはカッターマークを切断方向からみた溶融樹脂の正面図である。
【図10】従来の方法で成形されたプリフォームの縦痕を示す該プリフォームの正面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 圧縮成形装置
2 押出機
3 溶融樹脂供給装置
4 圧縮成形機
17 保持ユニット
21 基部
22,23 ホルダー
28 カッター
29 カッターマーク
32,33 突部
32a,33a 傾斜面
52 キャビティー型
55 コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道上を移動する保持ユニットを備え、該保持ユニットが開閉によって溶融樹脂の保持及び解放が可能な少なくとも一対のホルダーと、該ホルダーを開閉可能に支持し該ホルダーと共に溶融樹脂を保持する基部とを備え、
押出成形機から排出されてカッターによって切断された溶融樹脂を前記保持ユニットによって保持し、溶融樹脂を該保持ユニットから圧縮成形機の雌型に供給するようにした溶融樹脂供給装置において、
前記溶融樹脂の切断時に溶融樹脂の切断面に前記カッターによってカッターマークが形成され、
前記保持ユニットの前記溶融樹脂の保持時に、前記カッターマークの端部をカッターマークの内側へ変形させる突部を前記一対のホルダーの少なくとも1つのホルダーの内周面に形成したことを特徴とする溶融樹脂供給装置。
【請求項2】
前記一対のホルダーが、前記溶融樹脂のカッターマーク方向へ開閉することを特徴とする請求項1に記載の溶融樹脂供給装置。
【請求項3】
各々に前記突部が形成されている前記一対のホルダーのうち一方のホルダーの突部を他方のホルダーの突部よりも前記カッターマークの内側へ突出させるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の溶融樹脂供給装置。
【請求項4】
前記突部は、前記雌型内孔の半径と前記圧縮成形機の雄型の先端部の半径とにおける半径差の長さよりも大きく形成し、前記溶融樹脂のカッターマークを該カッターマークの内側へ変形させるようしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶融樹脂供給装置。
【請求項5】
前記保持ユニットの前記溶融樹脂の保持時に、前記カッターマークの端部をカッターマークの内側へ変形させる、少なくとも一方の突部と、他方の突部またはホルダーの内周面前記溶融樹脂の挟持部分との距離を、前記圧縮成形機の雄型の先端部の直径よりも狭く設定することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の溶融樹脂供給装置。
【請求項6】
前記保持ユニットは回転軌道を移動し、前記カッターは該保持ユニットに搭載され、該カッターの刃は該保持ユニットの回転軌道の半径方向に対し平行に配置され、
前記溶融樹脂のカッターマーク方向へ開閉する一対のホルダーのうち、該保持ユニットの回転半径方向の外側に該一対のホルダーの一方が配設され、前記回転半径方向内側に該一対のホルダーの他方が配設されるようにしたことを特徴とする、請求項2〜5のいずれかに記載の溶融樹脂供給装置。
【請求項7】
押出機から押し出された合成樹脂の溶融樹脂を、
カッターにて切断後、
柱状胴部を有する雄型と、雌型と、を備えた圧縮成形機の該雌型内に、前記カッターによる切断によって生じたカッターマークを該雌型の開口側に向けて供給し、
該雄型と雌型との協働によって有底筒状物を圧縮成形する方法であって、
該カッターマークの最大幅が該柱状胴部の最小幅より狭くなるよう、溶融樹脂を圧縮成形前に押し潰すことを特徴とする、有底筒状物の圧縮成形方法。
【請求項8】
前記雄型の柱状胴部が円柱状胴部であり、前記合成樹脂がポリエステル樹脂であって、
前記有底筒状物が、ブロー成形容器の前成形体であることを特徴とする、請求項7に記載の有底筒状物の圧縮成形方法。
【請求項9】
容器へブロー成形するための有底筒状前成形体であって、
該有底筒状前成形体の内面側には、スジ状の痕が該前成形体の底部のみに存在することを特徴とする、有底筒状前成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−66956(P2009−66956A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238926(P2007−238926)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】