説明

樹脂充填基板の製造方法

【課題】開口部の未充填やボイドの巻き込みがなく、研磨負荷の小さい(生産性に優れた)樹脂充填基板の製造方法を提供する。
【解決手段】非接触ロール8を、基板面に対して水平方向にかつ非接触ロールの回転軸10に対して垂直方向に所定の移動速度で直線移動させながら、非接触ロールの回転軸10より基板側の部分の回転方向が移動方向と逆で、かつ移動速度と開口部の最大深さと開口部の最小面積との相関より決まる所定の周速度で非接触ロール8を回転させて、50〜100000Paの損失弾性率を持つ樹脂ペースト9を基板に設けられた開口部に充填する充填工程を含むことを特徴とする樹脂充填基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂充填基板の製造方法に関する。更に詳しくはプリント配線板やシリコーンウェハー等の基板に設けられた開口部(凹部や貫通孔等)を樹脂ペーストで充填した樹脂充填基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂充填基板の製造方法としては、スクリーン印刷法を用いる製造方法(特許文献1)、ロールで圧入する方法を用いる製造方法(特許文献2)等が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−177254号公報
【特許文献2】特開2001−358433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の製造方法では、基板に設けられた多種の開口部(凹部や貫通孔等)のうち、開口部の最小面積が0.1mm2以下で、且つ開口部の深さと開口面積の平方根との比(開口部の深さ/開口面積の平方根)が1を超えると、未充填の開口部が発生するという問題がある。特に、この問題は特に樹脂のタレや充填部分の凹みを防止するために粘度の高い充填用樹脂ペーストを用いると顕著となる。
また、従来の製造方法では、充填部分の凹みを防止するために印刷時に基板に設けられた開口部の位置、大きさに対応した印刷マスクを介して印刷することが必要である。このため、小さな開口面積の開口部に充填する場合、印刷マスクを高精度に位置合わせする必要がある(印刷マスクがずれた場合、未充填やボイドの巻き込みが開口部に発生する)という問題がある。さらに樹脂充填後に印刷マスクの厚みに相当する部分を研磨する必要があり、研磨時の負荷により基板の反りが発生する問題がある。
本発明の目的は、開口部の未充填やボイドの巻き込みがなく、研磨負荷の小さい(生産性に優れた)樹脂充填基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果本発明に達した。すなわち本発明の樹脂充填基板の製造方法は、非接触ロール(R)を、基板面に対して水平方向にかつ(R)の回転軸に対して垂直方向に移動速度(i)(mm/秒)で直線移動させながら、(R)の回転軸より基板側の部分の回転方向が移動方向と逆となるようにして周速度(v)(mm/秒)で(R)を回転させて、
50〜100000Paの損失弾性率(G”)を持つ樹脂ペースト(J)を基板に設けられた開口部に充填する充填工程を含み、
移動速度(i)と周速度(v)とが次式で表される関係である点を要旨とする。
【0006】
【数1】

tは開口部の深さの最大値(mm)、Sは開口部の最小面積(mm2)を表す。

ここで、非接触ロール(R)の直線移動は、非接触ロール(R)と基板とが相対的に直線移動すればよい。従って、停止している基板に対して非接触ロール(R)が移動してもよく、停止している(回転運動は行っている)非接触ロール(R)に対して基板が移動してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法は、開口部の最小面積が0.1mm2以下で、且つ開口部の深さと開口面積の平方根との比(開口部の深さ/開口面積の平方根)が1を超える基板であっても未充填やボイドの巻き込みがなく凹部や貫通孔への充填用樹脂の充填が容易である。また、印刷マスクを用いなくても充填部の凹みは発生せず、印刷マスクの位置合わせ工程を削減することや研磨負荷低減による基板の反りを防止することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で使用される樹脂ペースト(J)の損失弾性率(G”)(単位:Pa)は、充填性(充填しやすさ)の観点等から、50〜100000が好ましく、さらに好ましくは60〜10000、特に好ましくは80〜5000、最も好ましくは100〜2000である。この範囲であると、未充填やボイドの巻き込みの発生がさらに抑制できる。
【0009】
本発明における損失弾性率(G”)(単位:Pa)は、「レオロジー工学とその応用技術」(株)フジ・テクノシステム、2001年1月12日 初版第1刷発行、第204〜206頁に記載の応力制御方式で測定可能な粘弾性測定装置(例えば、HAAKE社製レオストレスRS75)を用いて充填時と同じ温度で測定した値であり、次のようにして求められる。
測定冶具{上部コーン型円盤と下部平面円盤(図1参照、図1中の矢印は正弦振動の方向を示す)との間}に測定サンプルを挟み込み、上部コーン型円盤の上面に対して垂直な中心軸を軸として角速度(ω)(単位:rad/秒)を変化させながら正弦振動させることにより、測定サンプルに応力(σ)(単位:Pa)をかけて、その結果発生するひずみ(ε)(単位:rad)と位相角(δ)(単位:rad)とを測定する。
そして、JIS K7244−1:1998「プラスチック−動的機械特性の試験方法 第1部:通則」に準拠して、応力(σ)とひずみ(ε)との比(σ/ε)から複素弾性率(G*=σ/ε)(単位:Pa)を算出した後、複素弾性率(G*)の嘘数部分として、式{G”=G*×sinδ}から損失弾性率(G”)を算出する。
算出結果をプロットして得られる「角速度−損失弾性率曲線」から、充填時に使用する非接触ロール(R)の周速度(v)に対応する角速度(ω)での損失弾性率を読み取る。なお、周速度(v)と角速度(ω)は次の式により変換する。
角速度(ω)=周速度(v)/ロール(R)の半径(r)
【0010】
以下に測定条件を示す。
測定装置:動的粘弾性測定装置(たとえば、HAAKE社製レオストレスRS75)
測定治具:直径20mmアルミニウム製円盤(上部コーン型円盤角度2度)
サンプル量:0.5mL
回転ずり応力:10Pa
測定温度:充填時と同じ温度(通常20〜30℃)
角速度:0.628〜628rad/秒
【0011】
従来の製造法では樹脂ペーストの充填性を粘度で規定している場合が多いが、粘度は回転型粘度計を用いて一定の応力条件及び時間条件下で測定されるもので、時間による応力や速度の変化に対応した測定には適しておらず、常に樹脂ペーストに対するせん断力や樹脂ペーストの流速が変化するロール回転による充填性を回転粘度計で規定することは困難であるため、本発明においては、樹脂ペースト(J)を損失弾性率(G”)で定義するものである。
【0012】
樹脂ペースト(J)は、フィラー(F)と硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂との混合物等が使用される。
フィラー(F)としては、公知の無機フィラー及び有機フィラーが使用できる。
無機フィラーとしては、酸化物{シリカ(酸化ケイ素)、チタニア(酸化チタン)、アルミナ(酸化アルミニウム)、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、チタン酸バリウム等}、炭酸塩{炭酸カルシウム等}、硫酸塩{硫酸バリウム等}、金属{金、白金、銅、銀、ニッケル、スズ、鉄等及びこれらの複合体(混合形成体及び固溶体等を含む)}等が挙げられる。これらのうち、シリカ、銅及び銀が好ましい。
有機フィラーとしては、アクリル樹脂粉、エポキシ樹脂粉、フッ素樹脂粉、ポリエーテルスルフォン樹脂粉、シリコーン樹脂及びナイロン樹脂粉等が挙げられる。これらのうち、アクリル樹脂粉が好ましい。
【0013】
フィラー(F)の含有量(重量%)は、熱膨張係数の観点等から、フィラー(F)、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、30〜95が好ましく、さらに好ましくは50〜90、特に好ましくは60〜85である。この範囲であると、開口部の未充填やボイドの発生がさらに抑制される。
フィラー(F)の体積平均粒径(μm)は、0.1〜30が好ましく、さらに好ましくは0.5〜20、特に好ましくは1.0〜10である。この範囲であると、開口部の未充填やボイドの発生がさらに抑制される。
なお、体積平均粒子径は、JIS Z8825−1:2001「粒子径解析−レーザー回折法」に準拠した測定原理を有するレーザー回折式粒度分布測定装置(例えば島津製作所製 商品名SALD−1100型等)で測定される。
【0014】
フィラー(F)の形状は、球状、涙滴状、角状、樹枝状、片状、粒状、不規則形状、針状、繊維状(JIS Z2500:2000「粉末や金用語」4.用語および定義、4)粉末の粒子形状)等のいずれでもよいが、開口部の充填性の観点等から、球状、涙滴状、片状及び粒状が好ましく、さらに好ましくは球状である。
【0015】
フィラー(F)は単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて使用してもよい。例えば、球状のシリカと樹枝状の銅粉と粒状の炭酸カルシウムの組み合わせ等である。
【0016】
硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂及び活性エネルギー線硬化性樹脂等が含まれる。
熱硬化性樹脂としては、特開2004−149758号公報に記載されたエポキシ樹脂やポリイミド樹脂等が使用できる。
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、特開2004−149758号公報に記載のエポキシ樹脂や、特開2001−330951号公報に記載された重合性二重結合を有する化合物及び光ラジカル発生剤からなる組成物等が使用できる。
【0017】
熱硬化性樹脂のうち、液状エポキシ樹脂(液状エポキシド及びび硬化剤から構成される)が好ましい。
液状エポキシドは25℃で液状であるエポキシドを意味するが、25℃で固状であるエポキシドを液状であるエポキシドと共に用いて全体として液状となるものも含まれる。液状エポキシドのうち、ビスフェノールF型エポキシド、ビスフェノールA型エポキシド及びグリシジルアミン型エポキシドが好ましく、さらに好ましくはビスフェノールF型エポキシド及びビスフェノールA型エポキシド、特に好ましくはビスフェノールF型エポキシドである。これらの液状エポキシドは1種又は2種以上の混合物でもよい。
硬化剤のうち、フェノール化合物、有機酸無水物、及びアミン化合物、ジシアンジアミド、イミダゾール化合物、有機酸ヒドラジド化合物及び固体分散型アミンアダクト(潜在性硬化剤)が好ましく、さらに好ましくはフェノール化合物、有機酸無水物、イミダゾール化合物である。これら硬化剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
活性エネルギー線硬化性樹脂としては重合性二重結合を有する化合物及び光ラジカル発生剤からなる組成物が好ましい。
重合性二重結合を有する化合物のうち、多価アルコール又は多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸とのエステル{ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等}、ウレタン(メタ)アクリレート{イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、多価イソシアネートと活性水素含有基(ヒドロキシ基、カルボキシ基及びアミノ基等)を有する(メタ)アクリレートとの反応物:ヘキサメチレンジイソシアネートとヒドロキシエチルアクリレートとの反応物等}及びエポキシ(メタ)アクリレート{多官能エポキシドと(メタ)アクリ酸との反応物:ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート及びフェノールノボラック(メタ)アクリレート等}が好ましく、さらに好ましくは多価アルコール又は多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸とのエステルである。
これらの重合性二重結合を有する化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明において、「・・・(メタ)アクリ・・」とは、「・・・アクリ・・」、「・・・メタクリ・・」を意味する。
【0019】
光ラジカル発生剤としては、ジフェニル−(2,4,6−トリエチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジメチルヒドロキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン及び2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン等が好ましい。これらの光ラジカル発生剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
これら硬化性樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
硬化性樹脂を用いる場合、硬化性樹脂の含有量(重量%)は、フィラー(F)の重量に基づいて、5〜233が好ましく、さらに好ましくは11〜100、特に好ましくは18〜67である。この範囲であると、凹部の未充填やボイドの発生がさらに抑制される。この範囲であると、開口部の未充填やボイドの発生がさらに抑制される。
【0021】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアミド、ポリウレタン及びフェノキシ樹脂等が使用できる。熱可塑性樹脂は、溶剤(水、有機溶媒等)に溶解して液状化し、充填後、溶剤を留去することにより、固状とするか、または、充填の際に、その融点以上の温度で溶融液状化し、充填後に室温(25℃程度)に戻すことにより、固状とするものである。したがって、後者の場合、この融点が高すぎると樹脂の劣化や装置の耐熱性等の問題が懸念されるため、熱可塑性樹脂の融点(℃)は、100〜250が好ましく、さらに好ましくは120〜200、特に好ましくは140〜180である。一方、前者の場合、熱可塑性樹脂の融点に制限はなく、高融点のものも使用できる。
【0022】
熱可塑性樹脂を用いる場合、熱可塑性樹脂の含有量(重量%)は、フィラー(F)の重量に基づいて、5〜233が好ましく、さらに好ましくは11〜100、特に好ましくは18〜67である。これらの範囲であると、凹部の未充填やボイドの発生がさらに抑制される。この範囲であると、開口部の未充填やボイドの発生がさらに抑制される。
【0023】
硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂を用いる場合、硬化性樹脂の含有量(重量%)は、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、40〜99が好ましく、さらに好ましくは50〜95、特に好ましくは60〜90である。この範囲であると、開口部の未充填やボイドの発生がさらに抑制される。また、この場合、熱可塑性樹脂の含有量(重量%)は、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、1〜60が好ましく、さらに好ましくは5〜50、特に好ましくは10〜40である。これらの範囲であると、開口部の未充填やボイドの発生がさらに抑制される。
【0024】
樹脂ペースト(J)には、さらに通常使用される添加剤{消泡剤、分散剤、有機・無機着色剤、難燃剤及び/又は揺変剤}を添加してもよい。消泡剤を添加する場合、この含有量(重量%)は、フィラー(F)、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、0.05〜5が好ましく、さらに好ましくは0.5〜3、特に好ましくは1〜2である。分散剤を添加する場合、この含有量(重量%)はフィラー(F)、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.03〜2、特に好ましくは0.05〜1である。有機・無機着色剤を添加する場合、この含有量(重量%)は、フィラー(F)、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.03〜2、特に好ましくは0.05〜1である。難燃剤を添加する場合、この含有量(重量%)は、フィラー(F)、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、0.5〜10が好ましく、さらに好ましくは0.8〜8、特に好ましくは1〜5である。揺変剤を添加する場合、この含有量(重量%)は、フィラー(F)、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.03〜2、特に好ましくは0.05〜1である。
【0025】
樹脂ペースト(J)にはさらに溶剤を含んでもよいが、充填時に真空にする場合、ボイド発生を防ぐために充填時の真空度及び温度における(J)に含まれる揮発分は10重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは5重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。なお、揮発分はJIS K0067−1992「化学製品の減量及び残分試験方法」に準拠して測定される。このような溶剤としては、炭化水素溶剤(トルエン及びキシレン等)、グリコールエーテル溶剤(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及びトリエチレングリコールジメチルエーテル等)及びケトン溶剤(メチルエチルケトン及びメチルイゾブチルケトン等)等が使用できる。
溶剤を含有させる場合、溶剤の含有量(重量%)は、樹脂ペースト(J)の重量に基づいて、0.1〜10が好ましく、さらに好ましくは0.1〜5、特に好ましくは0.1〜1である。
【0026】
樹脂ペースト(J)の損失弾性率(G”)は、フィラー(F)の含有量、体積平均粒径及び/又は形状等で調整できるが、硬化性樹脂、添加剤(特に揺変剤)及び/又は溶剤の種類や含有量等によっても調整できる。
【0027】
樹脂ペースト(J)は市場から入手でき、サンノプコ株式会社製のノプコキュアSVC−710(熱硬化性穴埋め樹脂ペースト)、ノプコキュアSVC−712(熱硬化性穴埋め樹脂ペースト)、ノプコキュアSVC−720(熱硬化性銅ペースト);タツタシステムエレクトロニクス株式会社製のDDペーストAE3030(導電性銅ペースト)、DDペーストAE1125HD(熱硬化性銅ペースト);化研テック株式会社製のTKペーストCT−1129(導電性銀ペースト);有限会社ワイズテクノインク製のYSM2002(穴埋め兼ソルダーレジスト)等が挙げられる。
【0028】
本発明の製造方法に適用できる基板としては、JIS C6480−1994「プリント配線板用銅張積層板通則」で定義されるプリント配線板用銅張積層板(ガラス布基材エポキシ樹脂、ガラス布基材ポリイミド樹脂、ガラス布基材ビスマレイミド/トリアジン/エポキシ樹脂等)が好ましいが、ポリフェニレンエーテル等の熱可塑性樹脂やシリカ等の無機フィラーが混合されたものや、シリコンウェハー等の基材にも適用できる。また銅張積層板を用いて回路形成や絶縁層形成がなされたプリント配線板用コア基板にも適用できる。
【0029】
開口部とは基板にドリルや炭酸ガスレーザー等を用いて形成した貫通孔(いわゆるスルーホール)であったり、基板上の有底孔(いわゆるビアホール)であったり、基板上に回路が形成された後の回路間の凹部や基板の一部を削り取って形成された凹部等を意味する。
【0030】
本発明の製造方法には、非接触ロール(R)を、基板面に対して水平方向にかつ(R)の回転軸に対して垂直方向に移動速度(i)(mm/秒)で直線移動させながら、回転軸より基板側の部分の回転方向が移動方向と逆となるようにして周速度(v)(mm/秒)で(R)を回転させて、樹脂ペースト(J)を基板に設けられた開口部に充填する充填工程を含み、移動速度(i)と周速度(v)とが式(1)で表される関係であることが好ましく、さらに好ましくは式(2)を満たすことである。
【0031】
【数2】

式(1)と式(2)中、tは開口部の深さの最大値、Sは開口部の面積の最小値を表す。
【0032】
周速度(v)が上記の範囲内であると、未充填やボイドの巻き込みの発生がさらに抑制できる。すなわち、開口部の最大深さ(t)と最小面積(S)の平方根との比が大きくなるほど、開口部に充填されにくくなるため、周速度(v)を大きくして充填力を高めることが好ましい。一方、周速度(v)を大きくしすぎると、未充填やボイドの巻き込みの原因となりやすいため、周速度(v)は式(1)を満たすことが好ましく、さらに好ましくは式(2)を満たすことである。
【0033】
非接触ロール(R)は、この回転軸を基板面に対して水平に保ちつつ直線移動できればその速度に制限はないが、非接触ロール(R)の直線移動速度(i)(mm/秒)は、5〜100が好ましく、さらに好ましくは10〜70、特に好ましくは20〜50である。この範囲であると、未充填やボイドの巻き込みの発生がさらに抑制できる。
【0034】
非接触ロール(R)の移動方向は、(R)の回転軸に対して垂直方向であるが、移動方向と回転軸との角度は、厳密に90°だけではなく、60〜120°を含むものである。
非接触ロール(R)の回転方向は、回転軸より基板側の部分の回転方向が移動方向と逆となる方向、すなわち、直線移動方向に非接触ロール(R)が転がるように回転する方向である。この反対方向(回転軸より基板側の部分の回転方向が移動方向と同じなる方向、すなわち、非接触ロール(R)が、直線移動方向と逆方向に非接触ロール(R)が転がるように回転する方向)に回転すると、本発明の目的を達成し得ない。
【0035】
非接触ロール(R)の周速度(v)(mm/秒)は、{ロールの角速度(ω)}×{(ロールの半径(r)}で表され、式(1)を満たす範囲が好ましく、さらに好ましくは式(2)を満たす範囲である。なお、直径50mmのロールが毎秒1回転する場合の周速度は25mm×6.28rad/秒=157mm/秒となる。
【0036】
非接触ロール(R)には、ドクター{樹脂ペースト(J)掻き取り用スキージー}を配していることが好ましい。ドクターは、非接触ロール(R)の移動方向とは反対側に、非接触ロール(R)と接触するように配され、非接触ロール(R)と共に直線移動するものである。また、ドクターの先端部分の移動方向側には、基板に対して5〜45°の角度をもつ平面を有することが好ましく、この角度は約15°であることがさらに好ましい(図7、8参照)。
ドクターの存在により、開口部の未充填やボイドの巻き込みがさらに減少する。すなわち、ドクターは非接触ロール(R)の回転により集められる樹脂ペースト(J)を(R)と共に移動方向に移動させる働きがある{基板面に過剰の樹脂ペースト(J)を残さない}。さらに、ドクターと非接触ロール(R)と基板との間に掻き集められる樹脂ペースト(J)を加圧状態に保持する働きがある{非接触ロール(R)の回転により加圧される。この加圧状態が、樹脂ペースト(J)を開口部に押し込む作用を発生させる}。
ドクターを配する場合、ドクターと非接触ロール(R)と基板との間に密閉空間が形成されるように、「ドクターと非接触ロール(R)と基板」の両末端に、ガード(堰板)(たとえば、図11及び12)を配することが好ましい。このガードは、非接触ロール(R)及びドクターと共に直線移動する。
【0037】
開口部の深さの最大値(t)(mm)は、開口部がスルーホールである場合は基板厚みとなり、通常0.4〜1.6程度であるが、場合によっては0.4未満(0.1以下)の薄板基板や1.6を超える(3.0以上の)厚板基板等にも適用できる。一方、開口部がビアホールや回路間等の凹部の場合、開口部の深さの最大値(t)(mm)は、0.1以下である場合が多い。開口部の深さの最大値(t)は、JIS C5012−1993「プリント配線板試験方法」に準拠して測定される深さのうち、最大の値を意味する。
【0038】
開口部の面積の最小値(S)(mm2)は、開口部がスルーホールやビアホールの場合、穴径が0.05〜0.5mm程度であるので、0.002〜0.2mm2程度である。開口部が回路間の凹部等の場合、回路間隔が0.01〜1mm程度、回路長さが1mm〜100mm程度であるので0.01〜100mm2程度である。開口部の最小面積(S)はJIS C5012−1993「プリント配線板試験方法」に準拠して測定される。単一の基板に存在する複数の開口部の面積を上記に基づき測定し、これらの面積の最小値を開口部の面積の最小値(S)とする。
【0039】
基板表面と非接触回転ロール表面との最短間隔(mm)は、充填性の観点等から、0.1〜5が好ましく、さらに好ましくは0.3〜3、特に好ましくは0.5〜1.5である。この範囲であると、未充填やボイドの巻き込みの発生がさらに抑制される。
【0040】
充填工程は、開口面積及び/又は深さの異なる開口部を同時に充填する工程であることが好ましく、開口面積及び/又は深さの異なる開口部を同時に充填するとともに基板表面に樹脂層を形成する工程であることがさらに好ましい。
【0041】
開口面積及び/又は深さの異なる開口部を同時に充填する工程とは、開口面積の異なる複数の貫通孔(スールーホール等)を同時に充填する工程、貫通孔と有底孔(ビアホール、部品搭載用の凹部及び回路間凹部等)とを同時に充填する工程、開口面積の異なる複数の貫通孔と有底孔とを同時に充填する工程、及び開口面積の異なる複数の貫通孔と開口面積の異なる複数の有底孔とを同時に充填する工程等を意味する。
開口面積が異なる場合とは、開口面積0.002mm2(直径50μm)、開口面積19.7mm2(直径5000μm)、及び開口面積2500mm2(間隔5mm長さ500mmの回路間凹部)からなる群より選ばれる少なくとも2種の組合せ等が例示される。
深さが異なる場合とは、深さ30μmの凹部(ビアホール)と深さ3.2mmの貫通孔との組合せ等が例示される。
【0042】
開口面積及び/又は深さの異なる開口部を同時に充填するとともに基板表面に樹脂層を形成する工程では、基板表面にスペーサーを装着して、上記と同様に充填する方法やドクター{樹脂ペースト(J)掻き取り用スキージー}の先端部分と基板表面との間隔を一定に保持して充填する方法等が適用できる。
スペーサーとしては、メタルマスク(ステンレスメタルマスク等)、樹脂フィルム(ポリエステルフィルム等)及びスクリーンメッシュ(ポリエステルスクリーンメッシュ及びステンレススクリーンメッシュ等)等が使用できる。
スペーサーの厚み及びドクターの先端部分と基板表面との間隔(μm)は、5〜500が好ましく、さらに好ましくは10〜200、特に好ましくは20〜100である。この厚みが形成される樹脂層の厚みになる。なお、ドクターの先端と基板表面との間隔は、樹脂層の膜厚の制御の観点等から、非接触ロール(R)と基板との間隔よりも小さいことが好ましい。
この樹脂層を形成する工程は、プリント配線板の製造工程においてスルーホールやビアホール、回路間凹部の充填と同時に絶縁層やソルダーレジスト層を同時に形成するのに有用である。
【0043】
充填工程は、10〜10000Paの圧力下で充填する工程(a)、及び工程(a)の後に実施され大気圧下で充填する工程(b)を含んで構成されることが好ましく、さらに好ましくは工程(a)と工程(b)の間に、樹脂ペースト(J)の仮硬化工程(c)を含むことである。
充填工程(a)の雰囲気圧力(Pa)は、充填性の観点等から、10〜10000が好ましく、さらに好ましくは50〜5000、特に好ましくは100〜1000である。この範囲であると、未充填やボイドの巻き込みの発生がさらに抑制される。
【0044】
充填工程(a)で充填された樹脂ペーストは大気圧に戻した際に、体積減少により凹みが発生する場合があり、この凹み部分を充填するために、大気圧下で充填する工程(b)を設けることが好ましい。
工程(a)は、同じ基板面に対して複数回実施してもよい。工程(a)を複数回(2〜4回が好ましく、さらに好ましくは2又は3回である)実施した後に工程(b)を実施することにより未充填やボイドの巻き込みの発生がさらに抑制される。
工程(a)と工程(b)の間に樹脂ペースト(J)の仮硬化工程(c)を設けることにより硬化収縮による凹みをなくすことができるため好ましい。
【0045】
仮硬化工程(c)は、樹脂ペーストが熱硬化性樹脂の場合は加熱処理、活性エネルギー線硬化型樹脂の場合は紫外線等の活性エネルギー線の照射処理、熱可塑性樹脂の場合は冷却処理により達成される。仮硬化工程(c)は次に平坦化工程で研磨を実施する場合、研磨の負荷を低減させるために樹脂ペーストが半硬化状態になる条件が好ましい。例えば樹脂ペーストが熱硬化性樹脂で150℃で30分間のエネルギーで完全硬化する場合、仮硬化工程(c)は150℃で10分間程度加熱する。または樹脂ペーストが活性エネルギー線硬化型樹脂と熱硬化性樹脂を含み、1J/cm2の紫外線照射と150℃で30分間の熱エネルギーにより完全硬化する場合、仮硬化工程(c)は1J/cm2の紫外線照射のみとする。
【0046】
深さ(t)と最小面積(S)との平方根の比(t/√S)は、0.1〜30が好ましく、さらに好ましくは1〜25、特に好ましくは1.5〜20、最も好ましくは2〜15である。なお、t/√Sが15以上のような貫通孔を含む開口部に充填する場合、工程(a)の前に、工程(a)とは反対側の基板面に対して大気圧下で樹脂ペースト(J)を充填する工程(e)、及び工程(e)の後に樹脂ペースト(J)の仮硬化工程(f)を含むことが好ましい。
工程(e)及び(f)を含むと未充填やボイドの巻き込みの発生がさらに抑制される。
工程(e)は、先の充填工程と同じ方法でも、この方法以外の通常の充填方法(スクリーン印刷法及びロール印刷法等)であってもよい。
なお、工程(e)及び(f)を含む場合、これらの工程の後に実施する工程(a)における式(1)の開口部の深さの最大値tは工程(e)及び(f)の実施後の開口部の深さの最大値を適用する。すなわち、工程(e)及び(f)により、すべての貫通孔を有底孔に変換した後、工程(a)を行うことになる。工程(e)で充填する樹脂ペーストと工程(a)で充填する樹脂ペーストは同じであっても異なってもよい。例えば工程(e)及び(f)では導電性の樹脂ペーストを用い、工程(a)及び(b)では絶縁性の樹脂ペーストを用いてもよい。
前硬化工程(f)は、樹脂ペーストが熱硬化性樹脂の場合、加熱処理によって、同様に活性エネルギー線硬化型樹脂の場合、紫外線等の活性エネルギー線の照射処理によって、同様に熱可塑性樹脂の場合、冷却処理によって樹脂ペーストを硬化させればよい。仮硬化工程(f)の条件は、仮硬化工程(c)と同じ程度でよい。
【0047】
充填工程の後、仮硬化工程(d)を設けることが好ましい。仮硬化工程(d)の条件は仮硬化工程(c)と同様の条件であるが、たとえば、後で研磨工程を実施しない場合や研磨性に影響が少ない場合は完全硬化させても良い。仮硬化工程(d)の後に、基板表面上に残った硬化済み樹脂の薄膜状残渣を研磨して取り除いて平坦化するため、または樹脂層を形成した場合に樹脂層の凹凸を無くし膜厚を均一化するため、平坦化工程(g)を設けてもよい。従来の製造方法によると、使用する印刷マスクの厚みに相当する膜厚10〜100μm程度の樹脂が基板表面に残るため、平坦化工程には、ベルトサンダーやセラミックロールバフ等の強力な研磨力を有する装置を用いて行われるが、本発明の製造法による場合、基板表面に膜厚が数μmの薄膜の樹脂層が残っているだけであるので、不繊布ロールバフ研磨、デスミア処理(過マンガン酸塩処理)及びプラズマ処理等の弱い研磨のみで平坦化が可能である。したがって、従来の製造方法のように強力な研磨力で平坦化すると、その負荷により基板に伸びが発生して、基板の反りや変形が生じるという問題があるが、本発明の製造方法では、弱い研磨力で平坦化できるため、基板の反りや変形を防止することができ、不良品の低減を達成できる。さらに本発明の製造方法によると、工程時間の削減等も達成できる。
平坦化工程(g)の後、樹脂ペースト(J)の完全硬化が必要な場合はさらに本硬化工程(h)を設けてもよい。本硬化工程(h)は、平坦化工程で研磨負荷を低減するために仮硬化工程で半硬化状態とした場合等に完全に硬化させるために実施される。
【0048】
基板の両面に有低孔(ビアホール等)がある場合、充填した基板面とは反対側の基板面にも同様にして充填する。
本発明の製造方法により得られた樹脂充填基板に、絶縁層及び/又は配線層を(交互に)積層することによって(必要により、さらに上記の充填工程を設けてもよい)、いわゆるビルドアップ多層プリント配線板を得ることができる。
例えば、配線層は、開口部へ樹脂ペースト(J)を充填し、これを硬化させた後(基板表面に樹脂層を形成した場合を含む)、デスミア処理等により粗化し、無電解めっき(銅等)及び電解めっき(銅等)等により導電体層を形成し、さらに、不要部分をエッチング等して除去することにより形成される。
本発明の製造方法では、樹脂ペースト(J)の充填後の開口部が平坦性に優れているため(凹みが発生しないため)、導体の厚みや幅が均一な配線層を容易に形成できる
【0049】
本発明の製造方法は、印刷マスクを使用しなくても充填できるが、もし充填したくない開口部等が存在する場合や、基板上に電極バンプ等の吐出部を作成したい場合は充填時に印刷マスクを使用してもよい。印刷マスクは、基板上に置かれ、充填が必要な開口部上に対応した位置に通孔を有し、充填が不必要な部分を覆うものであれば制限は無い。印刷マスクとしては、ステンレス製メタルマスク板、ポリエステル等の樹脂フィルム、スクリーン版及び感光性フィルム等が使用できる。
【実施例】
【0050】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
以下に示す充填装置、樹脂ペースト及び基板を用いて、樹脂充填基板を製造した。
<充填装置(図2〜5、11及び12を参照)>
充填装置は、真空チャンバー(3)内に、基板固定台(4)、ドクター(7)、非接触ロール(8)及びガード(14)を配している。ドクター(7)、非接触ロール(8)及びガード(14)は一体になって、基板面に対して水平方向にかつ非接触ロール(8)の回転軸に対して垂直方向に移動速度(i)(mm/秒)で直線移動できるようになっている。
ドクター(7)は、基板の開口部に樹脂ペースト(9)が充填された後に基板上に残る過剰の樹脂ペーストをかきとることができるようになっている。また、ドクター(7)は硬度80度のポリウレタン樹脂製であり、幅70mm、厚み20mm、長さ510mmであり、この先端は図7に図示した形状を持つ。
ガード(14)は、ドクター(7)及び非接触ロール(8)の両末端部から樹脂ペースト(J)がはみ出すの防止できるようになっている。ガード(14)は、ポリアセタール製板(高さ80mm、幅100mm、厚さ20mm)の中央部に直径51mmの貫通孔を設けたものである{貫通孔は非接触ロール(8)と基板固定台(4)との間が0.1mmとなる位置に存在する}。そして、この穴に、非接触ロール(8)の末端部がはめ込まれるようになっている。また、ガード(14)は、基板固定台(4)の上面、及びドクター(7)の両末端部と接するようになっている。
真空チャンバー(3)内は、減圧にすることができる。
また、非接触ロール(8)は、非接触ロール(8)の回転軸より基板側の部分の回転方向がドクター(7)及び非接触ロール(8)の移動方向とは逆となるようにして{非接触ロール(8)の直線移動方向に前転するようにして}、周速度(v)(mm/秒)で回転できるようになっている。図3中に非接触ロール(R)の回転方向を矢印26で示している。
なお、非接触ロール(8)の表面材質はステンレス製であり、この大きさは直径50mm、長さ550mmである。
【0051】
<樹脂ペースト>
表1に示した組成及び使用量(重量部)で、プラネタリーミキサー(商品名「PLM−50」、株式会社井上製作所製、公転回転数:20rpm、温度:22℃、時間:30分間)でプレミックスした後、3本ロール(商品名「HHC−178X356」、株式会社井上製作所製、ロール間の圧力:3MPa、温度:22℃、パス回数:2回)で混練することにより、樹脂ペーストJ1〜J10を得た。
樹脂ペーストJ1〜J10の損失弾性率(G”)を粘弾性測定装置(HAAKE社製レオストレスRS75)を用いて、23℃(充填作業温度)で測定して、「角速度−損失弾性率曲線」を得た。次いで、充填時に使用する非接触ロール(8)の周速度に対応する角速度(表3〜6)0.628、3.14、6.28、31.4、62.8における損失弾性率を読みとり、表1に示した。
【0052】
【表1】

【0053】
シリカ:龍森(株)製 TH6R(体積平均粒径6μm球状シリカ)
銅粉 :福田金属箔粉(株)製 SRC−Cu15(体積平均粒径12μm球状銅粉)
銀粉:福田金属箔粉(株)製 体積平均粒子径4μmの球状銀粉(50重量%)と体積平均粒子径3μmのフレーク状銀粉(50重量%)との混合物
硫酸バリウム:堺化学工業(株)製 B−30(体積平均粒径0.3粒状硫酸バリウム粉)
エピコート807:ビスフェノールF型エポキシド{ジャパンエポキシレジン(株)製 エピコート807}
硬化剤:四国化成(株)製イミダゾール 2MZ−A(2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン)
DPE−6:ジペンタエリストールヘキサアクリレート{共栄社(株)製 DPE−6A}
光ラジカル発生剤:チバスペシャリティーケミカルス(株)製 イルガキュア184
消泡剤:信越化学(株)製 KF6001(カルビノール変性シリコーン)
揺変剤:楠本化成(株)製 ディスパロン3900(ポリアマイド)
【0054】
<基板>
FR−4両面銅張積層板(JIS C6480−1994「プリント配線板用銅張積層板通則」に準拠したもの)を用いて、表2に示す開口部を有するコア基板を特開2002−141661号公報に準拠して作成した。作成した基板について、開口部の最大深さ(t)と開口部の面積の最小値(S)、t/√S及び式(1)の左辺の係数(1.2+0.1×t/√S)および右辺の係数(1.2+0.01×t/√S)を表2に記載した。
【0055】
【表2】

【0056】
<実施例1>
基板固定台(4)の上に離型フィルム(5){基板と同じサイズのポリエステルフィルム:パナック株式会社製 再剥離フィルムST 厚み50μm}を配置し、基板K1(6)を固定台(4)の凹部(基板厚みと離型フィルム(5)厚み合計と同じ深さ)にはめ込むことにより固定した。次いで、樹脂ペーストJ1を基板の端部に載せた後(図2)、真空チャンバー(3)内を150Paまで減圧にし、移動速度20.0mm/秒、回転周速度40.0mm/秒、非接触ロールと基板との間隔0.5mm、ドクター(7)の押しつけ圧3MPa、ドクターと基板表面との角度15度で充填を行った(充填工程a:図3〜4)。充填終了後、真空チャンバー(3)内の圧力を大気圧に戻した後、ドクターと基板表面との角度15度を40度に変更して、再度、同じ移動速度及び周速度で再度充填して、充填基板を得た(充填工程b:図2〜4)。
【0057】
充填基板を循風式加熱オーブン中で130℃、30分間加熱硬化(硬化工程d)させて、硬化基板を得た。次いで、1軸不繊布バフ研磨装置(商品名「IDB−600」石井表記株式会社製、粗さ320番バフ2回、粗さ600番バフ2回)を用い研磨して表面を平坦化(平坦化工程g)して、樹脂充填基板1を得た。次いで、開口部のあった充填箇所について、無作為に各100箇を選択し、次のようにして充填不良発生数を評価した。
【0058】
<充填不良発生数>
卓上ハンドカッター(商品名「ハンドカッターPC−300」サンハヤト株式会社製)を用いて基板を基板面に対して垂直に切断し、研磨/琢磨機(商品名「Struers Planopol−3」、丸本工業株式会社製)を用いて切断面を研磨して開口部のあった充填断面を整面した。そして、この充填断面を顕微鏡(倍率200倍)で観察し、開口部内が完全に充填されずに発生した凹みやボイドを数え、この数(不良発生数)を表3に示した。なお、充填された樹脂の表面と開口部周辺の基板面との段差が10μm以上あるものを凹みとし、直径10μm以上の空洞(気泡)をボイドとした。
【0059】
<実施例2〜40>
基板、樹脂ペースト、真空チャンバー内の圧力、移動速度、周速度、非接触ロールと基板との間隔を、表3に記載した内容に変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂充填基板2〜40を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表3に示した。
なお、充填工程(a)と充填工程(b)との間に仮硬化(仮硬化工程c)を実施した場合、表3の仮硬化工程のカラムに「有り」と記載し、実施例1のように仮硬化工程cを実施しなかった場合は「無し」と記載した。仮硬化(仮硬化工程c)は、充填基板を循風式加熱オーブン中で130℃、30分間の加熱処理することにより行った。
【0060】
【表3】

【0061】
<実施例41〜52>
基板、樹脂ペースト、真空チャンバー内の圧力、移動速度、周速度、非接触ロールと基板との間隔を、表4に記載した内容に変更し、仮硬化工程cの条件を1J/cm2の紫外線照射に変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂充填基板41〜52を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表4に示した。
なお、充填工程(a)と充填工程(b)との間に仮硬化(仮硬化工程c)を実施した場合、表4の仮硬化工程のカラムに「有り」と記載し、実施例1のように仮硬化工程cを実施しなかった場合は「無し」と記載した。仮硬化(仮硬化工程c)は、1J/cm2の紫外線を照射することにより行った。
【0062】
【表4】

【0063】
<実施例53〜64>
基板、樹脂ペースト、真空チャンバー内の圧力、移動速度、周速度、非接触ロールと基板との間隔を、表5に記載した内容に変更し、図5に示しすように厚さ50μmのスペーサー(13)(ステンレス製メタルマスク)を使用した以外は実施例1と同様にして、図6に示すような樹脂充填基板53〜64を得た。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表5に示した。なお、充填工程(a)と充填工程(b)との間に仮硬化(仮硬化工程c)を実施した場合、表5の仮硬化工程のカラムに「有り」と記載し、実施例1のように仮硬化を実施しなかった場合は「無し」と記載した。仮硬化(仮硬化工程c)は、実施例59〜64については1J/cm2の紫外線を照射することにより行い、その他は充填基板を循風式加熱オーブン中で130℃、30分間の加熱処理することにより行った。
【0064】
【表5】

【0065】
<実施例65>
樹脂ペーストJ1をスクリーン印刷穴埋め充填装置{東海精機株式会社製スクリーン印刷装置「SSA−PC660」}を用い、乳剤厚20μmの250メッシュのステンレス製メッシュ版を通して、印刷速度20mm/秒、印圧0.5MPa、スキージ角度15度で、大気圧下で基板K7の基板表面にスクリーン印刷して開口部に樹脂ペーストを充填した後、循風式加熱オーブン中で130℃、30分間加熱して、図9に示すような仮硬化基板を得た。このとき、開口部のすべては基板表面から1mmまで樹脂ペーストで充填されていた(残った開口部の深さは3.0mm)。
次いで、仮硬化基板を裏返して基板K7の裏面(スクリーン印刷した面の裏側の面)に対して、実施例1と同様にして(ただし離型フィルムを使用しなかった。)図10に示すような樹脂充填基板65を得た。
【0066】
<実施例66〜72>
基板、樹脂ペースト、真空チャンバー内の圧力、移動速度、周速度、非接触ロールと基板との間隔を、表6に記載した内容に変更し以外は実施例65と同様にして、図10に示すような樹脂充填基板66〜72を得た。
なお、充填工程(a)と充填工程(b)との間に仮硬化(仮硬化工程c)を実施した場合、表6の仮硬化工程のカラムに「有り」と記載し、実施例1のように仮硬化を実施しなかった場合は「無し」と記載した。仮硬化(仮硬化工程c)は充填基板を循風式加熱オーブン中で130℃、30分間の加熱処理することにより行った。そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表6に示した。
【0067】
【表6】

【0068】
<実施例73〜80>
基板、樹脂ペースト、真空チャンバー内の圧力、移動速度、周速度、非接触ロールと基板との間隔を、表7に記載した内容に変更したこと、及び離型フィルムを使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、樹脂充填基板76’〜83’を得た。
なお、充填工程(a)と充填工程(b)との間に仮硬化を実施した場合、表7の仮硬化工程のカラムに「有り」と記載し、実施例1のように仮硬化工程cを実施しなかった場合は「無し」と記載した。仮硬化工程cは充填基板を循風式加熱オーブン中で130℃、30分間の加熱処理することにより行った。
次いで樹脂充填基板76’〜83’の裏面を上記と同じ条件で充填して、樹脂充填基板76〜83を得た。
そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表7に示した。
【0069】
【表7】

【0070】
<比較例1〜28>
基板、樹脂ペースト、真空チャンバー内の圧力、移動速度、周速度、非接触ロールと基板との間隔を、表8記載した内容に変更した以外は実施例1と同様にして、充填工程a、充填工程b、仮硬化工程d、平坦化工程gを行い比較樹脂充填基板1〜17を得た。
なお、比較例1〜17において、充填工程(a)と充填工程(b)との間に仮硬化を実施した場合、表8の仮硬化工程のカラムに「有り」と記載し、実施例1のように仮硬化工程cを実施しなかった場合は「無し」と記載した。仮硬化(仮硬化工程c)は、充填基板を循風式加熱オーブン中で130℃、30分間の加熱処理することにより行った。
また、比較例18〜28において、スクリーン印刷穴埋め充填装置{東海精機株式会社製スクリーン印刷装置「SSA−PC660」}、及び基板の開口径に対する1.2倍の通孔径をもつ厚み100μmのメタルマスクを用い、印刷速度20mm/秒、印圧0.5MPa、スキージ角度15度で、スクリーン印刷により樹脂ペーストを充填した後、循風式加熱オーブン中で130℃、30分間加熱して、比較樹脂充填基板18〜28を得た。
なお、比較例18〜28の比較樹脂充填基板18〜28について、実施例1と同じ平坦化条件では平坦化(表面研磨)することができず、基板表面に凸状の樹脂が残った。
そして、実施例1と同様にして評価した充填不良発生数を表8に示した。
【0071】
【表8】

【0072】
比較例に示した製造方法によると、凹みやボイド等の充填不良が多発するのに対して、本発明の製造方法では、開口部に凹みやボイド等の充填不良を発生させることなく樹脂充填基板を容易に製造できた。また、本発明の製造方法では、開口面積や深さが異なる開口部が存在しても、これらを同時に充填することができた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の製造法はプリント配線板(ビルドアッププリント配線板や多層積層プリント配線板、及び両面プリント配線板等)の製造過程で、開口部(凹部及び/又は貫通孔)に樹脂ペーストを充填して作成する樹脂充填基板の製造に使用できる。これ以外に、金属、石、ガラス、コンクリート及び/又はプラスチック等で製造された板状のものに形成された開口部を埋め、研磨して平面を平滑にする方法に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明における損失弾性率(G”)を測定するための粘弾性測定装置のうち、上部コーン型円盤及び下部平面円盤の構成部分を模式的に示した断面図である。
【図2】実施例において、本発明の製造方法を適用している様子のうち、充填工程の開始時の状態を模式的に示した垂直断面図である。
【図3】実施例において、本発明の製造方法を適用している様子のうち、充填工程の充填中の状態を模式的に示した垂直断面図である。
【図4】実施例において、本発明の製造方法を適用している様子のうち、充填工程の充填終了時の状態を模式的に示した垂直断面図である。
【図5】実施例53〜64において、本発明の製造方法を適用している様子のうち、充填工程と樹脂膜の形成を同時に行った状態を模式的に示した垂直断面図である。
【図6】実施例53〜64において製造した樹脂充填基板を模式的に示した断面図である。
【図7】ドクターの先端の先端形状の一例を模式的に示した断面図である。
【図8】ドクターの先端の先端形状の一例を模式的に示した断面図である。
【図9】実施例65〜72において製造した前硬化基板を模式的に示した断面図である。
【図10】実施例65〜72において製造した樹脂充填基板を模式的に示した断面図である。
【図11】ガード(14)を模式的に示した斜視図である。
【図12】ドクター(7)、非接触ロール(8)及びガード(14)の位置関係を概念的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0075】
1.上部コーン型円盤
2.下部平面円盤
3.真空チャンバー
4.基板固定台
5.離型フィルム
6.基板
7.ドクター
8.非接触ロール(R)
9.樹脂ペースト(J)
10.非接触ロール(R)の回転軸
11.有底孔(ビアホール)
12.貫通孔(スルーホール)
13.スペーサー
14.ガード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触ロール(R)を、基板面に対して水平方向にかつ(R)の回転軸に対して垂直方向に移動速度(i)(mm/秒)で直線移動させながら、(R)の回転軸より基板側の部分の回転方向が移動方向と逆となるようにして周速度(v)(mm/秒)で(R)を回転させて、50〜100000Paの損失弾性率(G”)を持つ樹脂ペースト(J)を基板に設けられた開口部に充填する充填工程を含み、
移動速度(i)と周速度(v)とが式(1)で表される関係であることを特徴とする樹脂充填基板の製造方法。
【数1】

tは開口部の深さの最大値(mm)、Sは開口部の面積の最小値(mm2)を表す。
【請求項2】
基板と非接触ロール(R)との最短間隔が0.1〜5mmである請求項1に記載の樹脂充填基板の製造方法。
【請求項3】
充填工程が開口面積及び/又は深さの異なる開口部を同時に充填する工程である請求項1又は2に記載の樹脂充填基板の製造方法。
【請求項4】
充填工程が開口面積及び/又は深さの異なる開口部を同時に充填するとともに基板表面に樹脂層を形成する工程である請求項1又は2に記載の樹脂充填基板の製造方法。
【請求項5】
充填工程が10〜10000Paの圧力下で充填する工程(a)、及び工程(a)の後に実施され大気圧下で充填する工程(b)を含んで構成される請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂充填基板の製造方法。
【請求項6】
開口部として少なくとも貫通孔を含み、工程(a)の前に、工程(a)とは反対側の基板面に対して大気圧下で樹脂ペースト(J)を充填する工程(e)及び工程(e)の後に樹脂ペースト(J)の仮硬化工程(f)を含む請求項5に記載の樹脂充填基板の製造方法。
【請求項7】
樹脂ペースト(J)がフィラー(F)と硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂とを含んでなり、(F)の含有量が、(F)、硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計重量に基づいて30〜95重量%である請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂充填基板の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法で製造される樹脂充填基板。
【請求項9】
請求項8に記載の樹脂充填基板に、絶縁層及び/又は配線層を積層して構成されるビルドアップ多層プリント配線板。
【請求項10】
請求項9に記載のビルドアップ多層プリント配線板を内蔵する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−310789(P2006−310789A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64294(P2006−64294)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000106438)サンノプコ株式会社 (124)
【Fターム(参考)】