説明

樹脂厚測定装置

【課題】表面がフラットでない樹脂層の厚みを正確に測定する。
【解決手段】光透過性着色樹脂層(樹脂層)3が表面に形成された線材2を含む撮像領域Dを撮像して画像データD1を出力するカメラ5と、樹脂層3の厚みと彩度との対応を示す彩度相関データ、および樹脂層3の厚みと色相情報との対応を示す色相相関データが記憶された記憶部6と、画像データD1を画像処理して撮像領域D内の各位置における彩度および色相を抽出する色情報抽出処理、彩度および色相と彩度相関データおよび前記色相相関データとに基づいて撮像領域D内における樹脂層3の形成領域を検出する領域検出処理、並びに彩度および色相のうちのいずれか一方の情報と彩度相関データおよび色相相関データのうちのこの一方の情報に対応する一方の相関データとに基づいて形成領域における樹脂層3の厚みを測定する厚み測定処理を実行する画像処理部7とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象体の表面に形成された樹脂層(着色された樹脂からなる層)の厚みを測定する樹脂厚測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の測定装置として、下記特許文献1において開示された着色膜の膜厚測定装置が知られている。この膜厚測定装置は、液晶表示装置用カラーフィルタの着色膜の膜厚を分光干渉式で測定する膜厚測定装置であって、800nm以上の波長を使用し、着色膜の反射光の分光反射率から干渉による極大、極小波長を全て求め、極大、極小値を与える波長に対応した仮の干渉次数での膜厚をこの全ての中の複数につき計算し、計算された複数の膜厚値のばらつきが一番小さい干渉次数を真の干渉次数として、その真の干渉次数により算出された膜厚値の平均値を以って着色膜の膜厚としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−318106号公報(第2−5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のような分光干渉を利用した膜厚測定装置には、以下の解決すべき課題が存在している。すなわち、この膜厚測定装置には、投光範囲の膜厚(樹脂層の厚み)にムラがある場合(膜の表面がフラットでない場合)には、分光干渉波形が打ち消されるため、投光範囲の膜厚(樹脂層の厚み)を正確に測定できないという課題が存在している。
【0005】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、表面がフラットでない樹脂層の厚みを正確に測定し得る樹脂厚測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載の樹脂厚測定装置は、光透過性着色樹脂層が表面に形成された測定対象体の当該光透過性着色樹脂層の厚みを測定する樹脂厚測定装置であって、前記測定対象体を含む撮像領域を撮像すると共に当該撮像領域のカラー画像データを出力するカメラと、前記測定対象体の表面に形成された前記光透過性着色樹脂層の厚みと彩度情報との対応を示す彩度相関データ、および当該表面に形成された当該光透過性着色樹脂層の厚みと色相情報との対応を示す色相相関データが記憶された記憶部と、前記カラー画像データを画像処理して前記撮像領域内の各位置における彩度情報および色相情報を抽出する色情報抽出処理、前記彩度情報および前記色相情報のうちの少なくとも一方の情報と前記彩度相関データおよび前記色相相関データのうちの当該少なくとも一方の情報に対応する少なくとも一方の相関データとに基づいて当該撮像領域内における前記光透過性着色樹脂層の形成領域を検出する領域検出処理、並びに前記彩度情報および前記色相情報のうちのいずれか一方の情報と当該彩度相関データおよび当該色相相関データのうちの当該一方の情報に対応する一方の相関データとに基づいて前記検出した形成領域における前記光透過性着色樹脂層の厚みを測定する厚み測定処理を実行する画像処理部とを備えている。
【0007】
また、請求項2記載の樹脂厚測定装置は、請求項1記載の樹脂厚測定装置において、前記測定対象体の前記表面が非金属性光沢面のときに、前記画像処理部は、前記厚み測定処理において、前記色相情報と前記色相相関データとに基づいて前記形成領域における前記光透過性着色樹脂層の厚みを測定する。
【0008】
また、請求項3記載の樹脂厚測定装置は、請求項1記載の樹脂厚測定装置において、前記測定対象体の前記表面が金属性光沢面のときに、前記画像処理部は、前記厚み測定処理において、前記彩度情報と前記彩度相関データとに基づいて前記形成領域における前記光透過性着色樹脂層の厚みを測定する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の樹脂厚測定装置では、画像処理部が、カメラから出力されるカラー画像データを画像処理して撮像領域内の各位置における彩度情報および色相情報を抽出する色情報抽出処理、彩度情報および色相情報のうちの少なくとも一方の情報と記憶部に記憶されている彩度相関データおよび色相相関データのうちの少なくとも一方の情報に対応する少なくとも一方の相関データとに基づいて撮像領域内における光透過性着色樹脂層の形成領域を検出する領域検出処理、並びに彩度情報および色相情報のうちのいずれか一方の情報と彩度相関データおよび色相相関データのうちの一方の情報に対応する一方の相関データに基づいて、検出した形成領域における光透過性着色樹脂層の厚みを測定する厚み測定処理を実行する。
【0010】
したがって、この樹脂厚測定装置によれば、撮像領域内において測定対象体の配置位置にばらつきが生じたとしても、形成領域の位置を確実に検出しつつ、形成領域に形成された光透過性着色樹脂層の厚みを確実に測定することができる。また、この樹脂厚測定装置によれば、撮像領域内の彩度情報および色相情報に基づいて光透過性着色樹脂層の厚みを測定する構成のため、分光干渉を利用した膜厚測定装置とは異なり、表面がフラットでない光透過性着色樹脂層についても厚みを正確に測定することができる。
【0011】
請求項2記載の樹脂厚測定装置では、表面が非金属性光沢面である測定対象体に形成された光透過性着色樹脂層については、画像処理部は、厚み測定処理において、色相情報と色相相関データとに基づいて形成領域における光透過性着色樹脂層の厚みを測定する。この場合、非金属性光沢面上に形成された光透過性着色樹脂層の場合には、色相情報と厚みとの間に、色相情報が連続して変化したときに、それに対応して厚みが一方向に変化する対応関係が成り立っている。したがって、この樹脂厚測定装置によれば、厚み測定処理において、色相情報と色相相関データとに基づいて、形成領域における光透過性着色樹脂層の厚みを正確に測定することができる。
【0012】
請求項3記載の樹脂厚測定装置では、表面が金属性光沢面である測定対象体に形成された光透過性着色樹脂層については、画像処理部は、厚み測定処理において、彩度情報と彩度相関データとに基づいて形成領域における光透過性着色樹脂層の厚みを測定する。この場合、金属性光沢面上に形成された光透過性着色樹脂層の場合には、彩度情報と厚みとの間に、彩度情報の増加に伴い、厚みが一方向に変化する(増加する)対応関係が成り立っている。したがって、この樹脂厚測定装置によれば、厚み測定処理において、彩度情報と彩度相関データとに基づいて、形成領域における光透過性着色樹脂層の厚みを正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】樹脂厚測定装置1の構成図である。
【図2】搬送ライン9上の撮像領域Dに配置された線材2の平面図である。
【図3】図2における樹脂層3内の各領域E1,E2,E3での色の相違を説明するための説明図である。
【図4】図2における芯線2bの中心軸Lを含み、かつ搬送ライン9の表面と直交する仮想平面に沿った断面図である。
【図5】線材2の芯線2bの表面(金属性光沢面)に形成された樹脂層の厚みと彩度Sとの対応を示す相関図である。
【図6】芯線2bの表面に形成された樹脂層の厚みと色相Hとの対応を示す相関図である。
【図7】線材2の被覆2aの表面(非金属性光沢面)に形成された樹脂層の厚みと彩度Sとの対応を示す相関図である。
【図8】被覆2aの表面に形成された樹脂層の厚みと色相Hとの対応を示す相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、樹脂厚測定装置1の実施の形態について説明する。なお、一例として、測定対象体としての線材の表面に樹脂(光透過性着色樹脂)が塗布されて形成された樹脂層の厚みを測定する例を挙げて説明する。
【0015】
最初に、測定対象体である線材2、およびその表面に形成された樹脂層3について図面を参照して説明する。
【0016】
本例では、測定対象体としての線材2は、図1,2に示すように先端部分の被覆(樹脂製の被覆)2aが除去されて芯線2bが露出した状態に形成されている。この場合、線材2の芯線2bは、金属材料(本例では銀メッキ銅線)で構成されているため、その表面は金属性光沢面であり、一方、線材2の被覆2aで覆われた部位の表面は非金属性光沢面である。本例では、この線材2に対して、樹脂の塗布工程において、芯線2bが露出している領域Aと被覆2aで覆われている領域Bとの境界部分を含む領域(形成領域F)の表面に樹脂(光透過性着色樹脂)が塗布されて樹脂層3が形成されるものとする。
【0017】
この場合、下地に塗布した際の光透過性着色樹脂の色については、樹脂の厚みが薄いときには、下地の色(下地色)に樹脂の色(樹脂色)が弱く混ざった色(下地色が強い色)となり、厚みの増加に伴って下地色に混ざる樹脂色の割合が高まり(樹脂色が強くなり)、ある程度以上の厚みになったときには下地色が殆ど消えて樹脂色だけとなるという特徴を有している。
【0018】
次いで、樹脂厚測定装置1の構成について図面を参照して説明する。
【0019】
樹脂厚測定装置1は、図1に示すように、照明部4、カメラ5、記憶部6、画像処理部7および出力部8を備え、搬送ライン9によって搬送されて測定位置Cに配置された線材2について、被覆2aの表面に形成された樹脂層3の厚み(樹脂厚)d1、および芯線2bの表面に形成された樹脂層3の厚み(樹脂厚)d2(以下、特に区別しないときには「厚みd」ともいう)を測定する(図4参照)。
【0020】
照明部4は、図1に示すように、測定位置Cに配置された線材2に対して、光を照射して照明する。本例では一例として、照明部4は、中央部位に撮影用の孔11aが形成された半球形のドーム11と、ドーム11の内面に配設されたリング状の光源12とで構成されて、光源12からドーム11の内面に向けて照射された光をドーム11の内面で反射させることにより、線材2に対して360°の方向から光を間接的に照射する。この構成により、照明部4は、曲面で構成された線材2および樹脂層3について、影を生じさせることなく照明可能となっている。カメラ5は、測定位置Cに搬送された線材2を含む撮像領域D(図1,2参照)を、ドーム11の孔11aを通して撮像すると共に、撮像領域Dのカラー画像データ(以下、「画像データ」ともいう)D1を出力する。
【0021】
記憶部6は、ROMおよびRAMなどの半導体メモリやHDD(ハードディスク装置)などで構成されて、画像処理部7の動作プログラム、線材2の芯線2bの表面(金属性光沢面)に形成された樹脂層3についての厚みと彩度(彩度情報)Sとの対応を示す第1彩度相関データ(図5参照)についてのデータテーブルDT1、芯線2bの表面に形成された樹脂層3についての厚みと色相(色相情報)Hとの対応を示す第1色相相関データ(図6参照)についてのデータテーブルDT2、線材2の被覆2aの表面(非金属性光沢面)に形成された樹脂層3についての厚みと彩度Sとの対応を示す第2彩度相関データ(図7参照)についてのデータテーブルDT3、および被覆2aの表面に形成された樹脂層3についての厚みと色相Hとの対応を示す第2色相相関データ(図8参照)についてのデータテーブルDT4が予め記憶されている。なお、各相関データにおける樹脂層3の厚みについては、作製した種々の厚みの樹脂層3のサンプルについて、その厚みを一例としてX線CTで測定したものである。
【0022】
この場合、図5,7の各彩度相関データの彩度Sについては、色の「あざやかさ」の度合いを一例として0〜255の数値で示したものであって、数値「0」は最もくすんだ色(灰色)であることを示し、数値「255」は最も鮮やかな色であることを示している。また、図6,8の各色相相関データの色相Hについては、色の「種類」(赤、黄緑、緑、青、紫)を一例として0〜255の数値で示したものであって、一例として、数値「0(256)」は赤、数値「50」は黄緑、数値「85」は緑、数値「171」は青、数値「180」は青紫を示している。
【0023】
具体的には、本例の線材2は、一例として被覆2aの色が青紫で、かつ芯線2bの色が銀色(芯線2bが銀メッキ銅線のため)であり、また、本例の光透過性着色樹脂は黄緑色に着色された樹脂である。このため、図5の第1彩度相関データ(芯線2bに形成された樹脂層3のデータ)については、樹脂層3が薄いときには下地である芯線2bの表面色である銀色が灰色に近いため、彩度は低く、樹脂層3の厚みが増加するに従い、芯線2bの表面色に対して樹脂色(黄緑)が強くなって鮮やかさが増して彩度が増加し、樹脂層3の厚みが一定以上になると、樹脂色(黄緑)となって、彩度がほぼ一定となる。
【0024】
また、図6の第1色相相関データ(芯線2bに形成された樹脂層3のデータ)については、樹脂層3が薄いときには下地である芯線2bの表面色である銀色と光透過性着色樹脂は黄緑色とが混ざって緑色に近い色となり、樹脂層3の厚みが増加するに従い、芯線2bの表面色に対して樹脂色(黄緑)が強まり、樹脂層3の厚みが一定以上になると、樹脂色(黄緑)となる。
【0025】
また、図7の第2彩度相関データ(被覆2aに形成された樹脂層3のデータ)については、樹脂層3が薄いときには下地である被覆2aの表面色である紫に近い色となるため、彩度も紫の単色に近い値となる。その後、樹脂層3の厚みが増加するに従い、被覆2aの表面色である紫に樹脂色(黄緑)が混ざる量が次第に増加して全体として混合色が強くなる結果、鮮やかさが低下する。一方、さらに樹脂層3の厚みが増加するに従い、被覆2aの表面色である紫の影響が少なくなって樹脂色(黄緑)が強くなるため、黄緑の単色に近い色になることから、鮮やかさが増し始め(彩度が増加し)、樹脂層3の厚みが一定以上になると、樹脂色(黄緑)となって、彩度がほぼ一定となる。
【0026】
また、図8の第2色相相関データ(被覆2aに形成された樹脂層3のデータ)については、樹脂層3が薄いときには下地である被覆2aの表面色である紫に近い色となる。その後、樹脂層3の厚みが増加するに従い、被覆2aの表面色である紫から樹脂色(黄緑)に移行する。
【0027】
画像処理部7は、CPUを含んで構成されて、カメラ5から出力される画像データD1を画像処理して撮像領域D内の各位置における彩度S(彩度情報)および色相H(色相情報)を抽出する色情報抽出処理、抽出した彩度Sおよび色相Hのうちの少なくとも一方の情報と彩度相関データおよび色相相関データのうちの少なくともこの一方の情報に対応する一方の相関データとに基づいて撮像領域D内における樹脂層3の形成領域(本例では形成領域Fのうちの後述する領域E2,E3(図3参照))を検出する領域検出処理、および領域E2,E3における樹脂層3の厚みを測定する測定処理を実行する。
【0028】
この場合、樹脂層3の色は上記したように下地色に影響を受けて変化するため、この特性を利用して搬送ライン9上に載置された線材2に対して、搬送ライン9の表面の領域と、線材2および樹脂層3とを画像処理において容易に区別し得るように、搬送ライン9の表面色は、線材2および樹脂層3と異なる色(例えば、白色)に規定されている。
【0029】
このため、形成領域F内での樹脂層3の色は、図3に示すように、搬送ライン9の表面色が下地色となる領域E1、線材2の被覆2aの表面色が下地色となる領域(上記の光透過性着色樹脂の形成領域の一つ)E2、および線材2の芯線2bの表面色が下地色となる領域(上記の光透過性着色樹脂の形成領域の他の一つ)E3とで相違している。また、各領域E1,E2,E3の各色は、搬送ライン9の表面色(搬送ライン9の表面が直接撮像される領域の色)、線材2の被覆2aの表面色(被覆2aの表面が直接撮像される領域の色)、および線材2の芯線2bの表面色(芯線2bの表面が直接撮像される領域の色)とも相違している。したがって、画像処理部7は、領域検出処理において、各領域の色の相違、つまり、各領域の彩度および色相の相違に基づいて、撮像領域Dの中から光透過性着色樹脂の形成領域としての領域E2,E3を特定可能となっている。
【0030】
出力部8は、一例としてLCDなどのディスプレイ装置で構成されて、測定処理の結果を画面に表示する。
【0031】
続いて、樹脂厚測定装置1の動作について説明する。
【0032】
樹脂厚測定装置1の作動状態において、照明部4は搬送ライン9における測定位置Cを含む撮像領域D全体をほぼ均一な明るさに照明しており、またカメラ5は、撮像領域Dを予め決められた時間間隔で撮像して、その画像データD1を画像処理部7に出力している。
【0033】
この状態において、画像処理部7は、カメラ5から画像データD1を取得する都度、この画像データD1を画像処理することにより、撮像領域D内の測定位置Cに線材2が配置されたか否かを検出する。一例として、画像処理部7は、搬送ライン9の表面色と、線材2および樹脂層3の色とが相違することに基づいて、測定位置Cに線材2が配置されたことを検出する。
【0034】
次いで、画像処理部7は、色情報抽出処理を実行する。この色情報抽出処理では、画像処理部7は、測定位置Cに線材2が配置された状態のときの画像データD1を画像処理することにより、撮像領域D内の各位置における彩度Sおよび色相Hを抽出して、彩度データDsおよび色相データDhとして記憶部6に記憶させる。続いて、画像処理部7は、この抽出した撮像領域D内の各位置における彩度Sおよび色相Hに基づいて、領域検出処理を実行する。
【0035】
この領域検出処理では、画像処理部7は、まず、被覆2aの表面に形成された樹脂層3の領域E2を検出する。この際に、画像処理部7は、撮像領域D内の各位置での彩度Sについては記憶部6から読み出したデータテーブルDT3の第2彩度相関データと比較し、色相Hについては記憶部6から読み出したデータテーブルDT4の第2色相相関データと比較することにより、彩度Sが予め規定されたしきい値Dts2以下で、かつ色相Hが予め決められたしきい値Dth2以上となる領域を領域E2として検出する。また、検出したその領域E2に含まれる彩度データDs2および色相データDh2を記憶部6に記憶させる。なお、色相相関データについては、色相が連続して変化することにより、数値が「255」を超えたときには「0」に戻る構成のため、図8に示す第2色相相関データにおいて、厚みが0.4[mm]以上のときの色相を示す数値は、数値の大きさ自体はしきい値Dth2よりも小さいが、しきい値Dth2以上の数値として取り扱うものとする。
【0036】
この場合、上記したように、樹脂層3の色は、下地が異なる領域E1,E2,E3毎に異なるため、領域E2に含まれる各位置での彩度Sおよび色相Hはその厚みに基づいて図7,8に示すように変化し、その変化の態様は色の異なる他の領域E1,E3とは相違している。同様にして、樹脂層3の存在しない他の領域(搬送ライン9の表面が直接撮像される領域、被覆2aの表面が直接撮像される領域および芯線2bの表面が直接撮像される領域)の各色とも変化の態様が相違している。したがって、画像処理部7は、撮像領域D内の各位置での彩度Sおよび色相HをデータテーブルDT3,DT4の第2彩度相関データおよび第2色相相関データと比較することにより、予め規定された以上の厚みで被覆2aの表面に形成された樹脂層3の領域E2を検出することができる。
【0037】
次いで、画像処理部7は、芯線2bの表面に形成された樹脂層3の領域E3を検出する。この際に、画像処理部7は、撮像領域D内の各位置での彩度Sについては記憶部6から読み出したデータテーブルDT1の第1彩度相関データと比較し、また色相Hについては記憶部6から読み出したデータテーブルDT2の第1色相相関データと比較することにより、彩度Sが予め規定されたしきい値Dts1以上で、かつ色相Hが予め決められたしきい値Dth1以下となる領域を領域E3として検出して、その領域E3に含まれる彩度データDs1および色相データDh1を記憶部6に記憶させる。これにより、領域検出処理が完了する。
【0038】
この場合においても、上記したように、この領域E3に含まれる各位置での彩度Sおよび色相Hはその厚みに基づいて図5,6に示すように変化し、その変化の態様は色の異なる他の領域E1,E2とは相違している。同様にして、樹脂層3の存在しない上記の他の領域の各色とも変化の態様が相違している。したがって、画像処理部7は、撮像領域D内の各位置での彩度Sおよび色相HをデータテーブルDT1,DT2の第1彩度相関データおよび第1色相相関データと比較することにより、予め規定された以上の厚みで芯線2bの表面に形成された樹脂層3の領域E3を検出することができる。また、このようにして、画像処理部7が撮像領域Dにおける各領域E2,E3の位置を自動的に検出する構成のため、撮像領域D内において線材2の配置位置にばらつきが生じたとしても、各領域E2,E3の位置を確実に検出することが可能となっている。
【0039】
続いて、画像処理部7は、厚み測定処理を実行する。この厚み測定処理では、画像処理部7は、領域検出処理において検出した各領域E2,E3における樹脂層3の厚みd1,d2を測定する。具体的に、領域E2における樹脂層3の厚みd1については、記憶部6に記憶されている領域E2についての彩度データDs2および色相データDh2のいずれか一方に基づいて測定する。
【0040】
本例では、図8に示す第2色相相関データのように、色相Hと厚みとの間に、色相Hが連続して変化したときに、それに対応して厚みが一方向に変化する(増加または減少する)対応関係が成り立っている。具体的には、色相Hが赤、黄緑、緑、青、青紫というように、一定の方向に連続して変化したときに、それに対応して厚みが増加する対応関係が成り立っている。したがって、領域E2における樹脂層3の厚みd1については、画像処理部7は、色相データDh2とデータテーブルDT4に記憶されている第2色相相関データとに基づいて測定する。この場合、領域E2における樹脂層3の厚みd1として、領域E2内の予め決められた1または2以上のポイントでの樹脂層3の厚みd1を測定することもできるし、領域E2内の樹脂層3の厚みd1の平均値を測定することもできる。
【0041】
一例として、領域E2内の特定のポイントでの樹脂層3の厚みd1を測定する場合には、画像処理部7は、例えば、この特定のポイントでの色相Hの数値が「225」のときには、厚みd1を約0.32[mm]と測定し、また色相Hの数値が「25」のときには、厚みd1は約0.48[mm]と測定する。また、本例では、図8に示すように、第2色相相関データは、厚みd1が約0.67[mm]に達するまで、色相Hの数値が増加する特性を有している。このため、領域E2においては、0.67[mm]まで樹脂層3の厚みd1を測定可能となっている。
【0042】
また、領域E3における樹脂層3の厚みd2については、記憶部6に記憶されている領域E3についての彩度データDs1および色相データDh1のいずれか一方に基づいて測定する。本例では、図5に示す第1彩度相関データのように、彩度Sと厚みとの間に、彩度Sの増加に伴い、厚みが増加するという対応関係が成り立っている。したがって、領域E3における樹脂層3の厚みd2については、画像処理部7は、彩度データDs1とデータテーブルDT1に記憶されている第1彩度相関データとに基づいて測定する。この場合、領域E3における樹脂層3の厚みd2として、領域E3内の予め決められた1または2以上のポイントでの樹脂層3の厚みd2を測定することもできるし、領域E3内の樹脂層3の厚みd2の平均値を測定することもできる。
【0043】
一例として、領域E3内の予め決められた特定のポイントでの樹脂層3の厚みd2を測定する場合には、画像処理部7は、例えば、この特定のポイントでの彩度Sの数値が「75」のときには、厚みd2を約0.28[mm]と測定する。また、本例では、図5に示すように、第1彩度相関データは、厚みd2が約0.6[mm]に達するまで、彩度Sの数値が増加する。このため、領域E3においては、0.6[mm]まで樹脂層3の厚みd2を測定可能となっている。
【0044】
最後に、画像処理部7は、測定した各領域E2,E3での樹脂層3の厚みd1,d2を記憶部6に記憶させると共に、出力部8に表示させる。これにより、厚み測定処理が完了する。
【0045】
このように、この樹脂厚測定装置1では、画像処理部7が、カメラ5から出力される画像データD1を画像処理して撮像領域D内の各位置における彩度Sおよび色相Hを抽出する色情報抽出処理、彩度Sおよび色相Hのうちの少なくとも一方の情報と彩度相関データおよび色相相関データのうちの少なくとも一方の情報に対応する少なくとも一方の相関データとに基づいて撮像領域D内における樹脂層3の領域(形成領域)E2,E3を検出する領域検出処理、並びに彩度Sおよび色相Hのうちのいずれか一方の情報と彩度相関データおよび色相相関データのうちの一方の情報に対応する一方の相関データに基づいて、検出した領域E2,E3における樹脂層3の厚みを測定する厚み測定処理を実行する。
【0046】
したがって、この樹脂厚測定装置1によれば、撮像領域D内において線材2の配置位置にばらつきが生じたとしても、各領域E2,E3の位置を確実に検出しつつ、各領域E2,E3に形成された樹脂層3の厚みd1,d2を確実に測定することができる。また、この樹脂厚測定装置1によれば、撮像領域D内の彩度Sおよび色相Hに基づいて樹脂層3の厚みd1,d2を測定する構成のため、分光干渉を利用した膜厚測定装置とは異なり、表面がフラットでない樹脂層3についても厚みを正確に測定することができる。
【0047】
また、この樹脂厚測定装置1では、表面が非金属性光沢面である線材2の被覆2aに形成された樹脂層3については、画像処理部7は、厚み測定処理において、色相Hと第2色相相関データとに基づいて領域E2における樹脂層3の厚みd1を測定する。この場合、上記したように、非金属性光沢面上に形成された樹脂層3の場合には、図8に示す第2色相相関データのように、色相Hと厚みとの間に、色相Hが連続して変化したときに、それに対応して厚みが一方向に変化する(増加する)対応関係が成り立っている。したがって、この樹脂厚測定装置1によれば、厚み測定処理において、色相Hと第2色相相関データとに基づいて、非金属性光沢面上の領域E2における樹脂層3の厚みd1を正確に測定することができる。
【0048】
また、この樹脂厚測定装置1では、表面が金属性光沢面である線材2の芯線2bに形成された樹脂層3については、画像処理部7は、厚み測定処理において、彩度Sと第1彩度相関データとに基づいて領域E3における樹脂層3の厚みd2を測定する。この場合、上記したように、金属性光沢面上に形成された樹脂層3の場合には、図5に示す第1彩度相関データのように、彩度Sと厚みとの間に、彩度Sの増加に伴い、厚みが一方向に変化する(増加する)対応関係が成り立っている。したがって、この樹脂厚測定装置1によれば、厚み測定処理において、彩度Sと第1彩度相関データとに基づいて、金属性光沢面上の領域E3における樹脂層3の厚みd2を正確に測定することができる。
【0049】
なお、樹脂厚測定装置1を用いて、線材2における被覆2a(非金属性光沢面)と芯線2b(金属性光沢面)の双方に形成された樹脂層3の領域E2,E3を自動的に検出しつつ、この各領域E2,E3での樹脂層3の厚みd1,d2を測定する構成について上記したが、この樹脂厚測定装置1を用いて、被覆2a(非金属性光沢面)および芯線2b(金属性光沢面)のうちの任意の一方にのみ形成された樹脂層3の領域(領域E2,E3のうちの一方)を自動的に検出しつつ、この一方の領域での樹脂層3の厚み(厚みd1または厚みd2)を測定してもよいのは勿論である。
【0050】
また、測定対象体として線材2を例に挙げて説明したが、断面形状が円形の線材2に限らず、断面形状が長方形などの各種形状の各種測定対象体(板体など)の表面に形成された光透過性着色樹脂層の厚みの測定に樹脂厚測定装置1を適用できるのは勿論である。また、金属性光沢面の一例として銀メッキされた銅線で構成された線材2の芯線2bを例に挙げて、その表面に形成された樹脂層3の厚みd2を測定する例について説明したが、金属性光沢面はこれに限定されるものではなく、測定対象体に光透過性着色樹脂層を形成したサンプルを作製して、予め第1彩度相関データおよび第1色相相関データを取得しておくことにより、はんだメッキされた配線パターンの表面など各種金属体の表面に適用できるのは勿論である。
【0051】
また、非金属性光沢面を有する部材の一例として紫色の樹脂製の被覆2aが形成された線材2を挙げて説明したが、非金属性光沢面の色は紫色に限定されるものではなく、また非金属性光沢面を有する部材の材料についても樹脂に限定されるものではなく、種々の材料からなる部材に適用できるのは勿論である。また、光透過性着色樹脂についても、黄緑色に着色したものを例に挙げて説明したが、種々の色に着色された光透過性着色樹脂に適用することができる。この場合においても、測定対象体に光透過性着色樹脂層を形成したサンプルを作製して、第2彩度相関データおよび第2色相相関データを予め取得しておくことにより、光透過性着色樹脂層の形成領域を検出しつつ、この形成領域に形成された光透過性着色樹脂層の厚みを測定することができる。また、樹脂材料を塗布して形成された樹脂層についての厚みを測定する例について上記したが、塗布以外の形成方法、例えば貼付などの種々の方法で形成された樹脂層の厚み測定に適用できるのは勿論である。
【0052】
また、領域検出処理において形成領域を検出するに際して、彩度Sと色相Hの双方についてのデータを使用したが、いずれか一方のデータのみを使用する構成を採用することもできる。例えば、金属性光沢面に形成された樹脂層3の形成領域を検出する場合において、図5に示す第1彩度相関データにのみ基づいて形成領域を検出するときには、しきい値Dts1以上の彩度Sを示す位置が形成領域であると検出し、また、図6に示す第1色相相関データにのみ基づいて形成領域を検出するときには、しきい値Dth1以下の色相Hを示す位置が形成領域であると検出する構成を採用することができる。また、同様にして、非金属性光沢面に形成された樹脂層3の形成領域を検出する場合において、図7に示す第2彩度相関データにのみ基づいて形成領域を検出するときには、しきい値Dts2以下の彩度Sを示す位置が形成領域であると検出し、また、図8に示す第2色相相関データにのみ基づいて形成領域を検出する場合には、しきい値Dth2以上の色相Hを示す位置が形成領域であると検出する構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 樹脂厚測定装置
2 線材
3 樹脂層
5 カメラ
6 記憶部
7 画像処理部
D 撮像領域
D1 画像データ
DT1,DT3 彩度相関データについてのデータテーブル
DT2,DT4 色相相関データについてのデータテーブル
H 色相
S 彩度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性着色樹脂層が表面に形成された測定対象体の当該光透過性着色樹脂層の厚みを測定する樹脂厚測定装置であって、
前記測定対象体を含む撮像領域を撮像すると共に当該撮像領域のカラー画像データを出力するカメラと、
前記測定対象体の表面に形成された前記光透過性着色樹脂層の厚みと彩度情報との対応を示す彩度相関データ、および当該表面に形成された当該光透過性着色樹脂層の厚みと色相情報との対応を示す色相相関データが記憶された記憶部と、
前記カラー画像データを画像処理して前記撮像領域内の各位置における彩度情報および色相情報を抽出する色情報抽出処理、前記彩度情報および前記色相情報のうちの少なくとも一方の情報と前記彩度相関データおよび前記色相相関データのうちの当該少なくとも一方の情報に対応する少なくとも一方の相関データとに基づいて当該撮像領域内における前記光透過性着色樹脂層の形成領域を検出する領域検出処理、並びに前記彩度情報および前記色相情報のうちのいずれか一方の情報と当該彩度相関データおよび当該色相相関データのうちの当該一方の情報に対応する一方の相関データとに基づいて前記検出した形成領域における前記光透過性着色樹脂層の厚みを測定する厚み測定処理を実行する画像処理部とを備えている樹脂厚測定装置。
【請求項2】
前記測定対象体の前記表面が非金属性光沢面のときに、前記画像処理部は、前記厚み測定処理において、前記色相情報と前記色相相関データとに基づいて前記形成領域における前記光透過性着色樹脂層の厚みを測定する請求項1記載の樹脂厚測定装置。
【請求項3】
前記測定対象体の前記表面が金属性光沢面のときに、前記画像処理部は、前記厚み測定処理において、前記彩度情報と前記彩度相関データとに基づいて前記形成領域における前記光透過性着色樹脂層の厚みを測定する請求項1記載の樹脂厚測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−95075(P2011−95075A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248601(P2009−248601)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000214836)長野日本無線株式会社 (140)
【Fターム(参考)】