説明

樹脂容器の成形方法

【課題】自動車用の樹脂製燃料タンクなどの樹脂容器の成形方法において、異なる複数の機能を具備しつつ、複雑な金型構造を有することなく、確実に開口周縁部を接合可能な成形方法についての技術の提供を課題とする。
【解決手段】燃料透過防止機能を有する三層のフィルム材11と、該フィルム材11の表裏面に積層する溶融樹脂シート12・12と、を加圧ロール5によって圧着して積層し、積層シート10・10を成形する第一工程と、二組の成形金型20・20に積層シート10・10を配設して、積層シート10・10を所定形状の成形体23・23に加圧成形する第二工程と、凹型金型21・21同士を型合わせして成形体23・23同士を圧着結合する第三工程と、を備え、第二工程では、積層シート10・10の一面側の溶融樹脂シート12が凹型金型21・21側に配置され、他面側の溶融樹脂シート12が凸型金型22・22側に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂容器の成形方法についての技術に関する。より詳しくは、例えば、自動車用の樹脂製燃料タンクなどの成形方法において、異なる複数の機能を具備するとともに、複雑な金型構造を有することなく容易、且つ確実に開口周縁部を接合可能な、樹脂容器の成形方法についての技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車用燃料タンクについては、車体重量の軽量化を図るべく樹脂製のものが公知となっている(例えば、「特許文献1」を参照。)。前記樹脂製燃料タンクは通常、バリヤー層と、高密度ポリエチレン層と、接着層と、の積層構造からなる樹脂をブロー成形することで成形される。よって、前記樹脂製燃料タンクはバリヤー層を構成するナイロン層の特性によりガソリンの気化、漏洩の防止機能(ガソリンの透過防止機能)を具備するとともに、高密度ポリエチレン層の特性により十分な強度を保つことのできる構成となっている。
【0003】
ここで、ブロー成形法とは、押出機から下方に押し出されたチューブ状のパリソン(溶融樹脂)を一対の凹型金型で挟み込み、ブローノズルを介してパリソン内に空気を吹き込み膨らますことで、パリソンを金型の内壁面に密着させ、所定の形状の樹脂容器(樹脂製燃料タンク)を成形する手法である。
【0004】
しかし、ブロー成形法により大型の樹脂製燃料タンクを成形する場合、成形される樹脂製燃料タンクは外形形状が規制されるのみであるとともに、パリソンは流動性を有するため自重による伸びが生じ、上部の肉厚が下部に比べて薄くなる傾向にある。このようなことから、ブロー成形法による大型の樹脂製燃料タンクでは、肉厚の均一化を図るのは困難であった。また、複雑な形状からなる樹脂製燃料タンクの場合、パリソン膨張時の展開率が製品の部位によって異なるため、やはり肉厚の均一化を図るのは困難であった。
【0005】
このような点を改善するべく、予め分割構造として凹形状の成形体を各々成形し、これら成形体の開口周縁部を互いに接合することで、中空体構造からなる樹脂製燃料タンクを成形する方法が提案されている(例えば、「特許文献2」乃至「特許文献4」を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平01−044220号公報
【特許文献2】特開2000−318029号公報
【特許文献3】特許第3047595号公報
【特許文献4】特許第3099579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記「特許文献2」によれば、上方に開口し、内部に成形面を有する凹型金型において、該凹型金型の上方開口端に積層構造を有する溶融樹脂を載置して前記成形面が形成される金型内部の空間を密封し、その後、前記溶融樹脂により密封した金型内部の空間を吸気ポンプの作動により負圧にすることで前記溶融樹脂を成形面に密着し、成形面に密着した溶融樹脂を冷却固化することで、成形体を成形する成形方法が開示されている。
このような成形方法を用いれば、溶融樹脂は水平状態で凹型金型の上方開口端に載置されることとなり、自重による肉厚の不均一化は改善できる。
【0008】
しかし、溶融樹脂の肉厚は、依然として吸気ポンプの負圧によって規制されるのみであり、複雑な形状からなる樹脂製燃料タンクに対しては、溶融樹脂の展開率が製品の部位によって異なるため、やはり肉厚の均一化を図るのは困難であった。また、一旦冷却した成形体の開口周縁部を接合するので確実な溶着が行われにくく、接合強度、および気密性について疑問が残るものであった。
【0009】
一方、前記「特許文献3」によれば、凹型、および凸型で一対を成す金型の間に高温状態の溶融樹脂を挟み込んで加圧し、燃料タンクの上部と下部とを構成する凹形状の成形体を各々成形し、一定の高温状態を維持しつつ、これら成形体の開口周縁部を接合することで、中空体の樹脂製燃料タンクを成形する成形方法が開示されている。
このような成形方法を用いれば、前記「特許文献2」と同じく、溶融樹脂は水平状態で凹型金型の上方開口端に載置されることとなり、自重による肉厚の不均一化は改善できる。また、複雑な形状からなる樹脂製燃料タンクであっても、凹型、および凸型にて加圧成形を行うため、溶融樹脂のあらゆる部位において肉厚が規制されることとなり、肉厚の均一化を図ることができる。
【0010】
しかし、各成形体の開口周縁部の接合箇所については、依然として接合強度、および気密性について疑問が残る。即ち、本成形方法における溶融樹脂は単一の樹脂素材から成形されており、確実な溶着状態を確保するための、各成形体温度の高温状態保持の要求と、成形体自身の十分な強度を確保するための、早急な成形体の冷却の要求と、の両方を同時に満足することが困難である。
【0011】
そこで、前述の両方の要求を満足するための技術として、前記「特許文献4」により、凹型、および凸型で一対を成す金型の一部分に加熱手段と、断熱手段と、を備える成形方法が開示されている。
このような成形方法を用いれば、各成形体の開口周縁部の接合箇所を集中的に高熱状態とすることができるため、単一の樹脂素材からなる溶融樹脂であっても成形体自身の十分な強度を確保しつつ、互いの成形体の溶着状態を確実なものとし、接合箇所の接合強度、および気密性を確実なものとすることが可能である。
【0012】
しかし、加熱手段と、断熱手段と、を別途装置として設けることで、金型構造は複雑、且つ大掛かりなものとなり、設備コストが嵩むこととなる。
また、これら前記「特許文献3」や「特許文献4」に示される成形方法では単一の樹脂素材からなる溶融樹脂を対象としており、成形された樹脂製燃料タンクの機能は前記樹脂素材の特性によって決まるため、バリヤー層を含まない樹脂製燃料タンクにあっては、確実にガソリンの透過防止機能を具備することは困難である。
【0013】
以上のような点に鑑み、本発明においては、例えば、自動車用の樹脂製燃料タンクなどの樹脂容器の成形方法において、ガソリンの透過防止機能と樹脂容器の強度保持機能といったように異なる複数の機能を具備するとともに、複雑な金型構造を有することなく、確実に開口周縁部を接合可能な樹脂容器の成形方法についての技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0015】
即ち、請求項1においては、樹脂容器内部に貯留される物質の透過を防止するバリヤー層と、該バリヤー層の表裏面に積層する接着層とを有する三層フィルム材の表裏面に、前記バリヤー層とは異なる特性を有した樹脂シートを積層して、積層シートを成形する第一工程と、互いに嵌合可能な凹型金型と凸型金型との間に前記積層シートを各々配設して、前記凸型金型と前記凹型金型とで前記積層シートをプレス成形することで、前記積層シートを所定の凹形状を有する成形体に成形する第二工程と、前記第二工程にて成形された前記成形体を保持する二つの前記凹型金型を、前記各成形体の凹形状が対向する方向に型合わせして、前記成形体同士を圧着結合する第三工程と、を備え、前記第二工程では、前記積層シートの一面側の溶融樹脂シートが前記凹型金型側に配置され、他面側の溶融樹脂シートが前記凸型金型側に配置されるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、例えばガソリンなどの透過防止機能と樹脂容器の強度保持機能といったように、異なる複数の機能を具備するとともに、複雑な金型構造を有することなく、確実に開口周縁部を接合可能な樹脂製燃料タンク(樹脂容器)を成形することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例に係る成形装置の積層工程部の構成を示した断面図。
【図2】積層シートを成形金型の形状にプレス成形する工程を示した図であり、(a)は凹型および凸型金型の間に積層シートを配設した直後の状態を示した断面図、(b)は凹型および凸型金型によって積層シートをプレス成形した直後の状態を示した断面図。
【図3】成形体同士を圧着結合する工程を示した図であり、(a)は凸型金型が離脱した直後の凹型金型の状態を示した断面図、(b)は凹型金型同士を型合わせした直後の状態を示した断面図。
【図4】本発明に係る成形方法により成形された樹脂製燃料タンクを示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0020】
[成形装置1]
先ず、本発明における樹脂容器の成形方法を用いた成形装置1の構成について、図1および図2を用いて説明する。尚、便宜上、図1および図2の上下方向を成形装置1の上下方向とし、且つ矢印Aの方向を前方と規定して、以下説明する。
【0021】
本実施例における成形装置1は、中空体構造からなる樹脂容器において、例えば自動車用の樹脂製燃料タンク50(図4を参照)を成形する装置である。
より具体的には、予め燃料(ガソリン)透過防止機能を有するバリヤー層11aを含んだフィルム材11の表裏面に、二枚の溶融樹脂シート12・12を重ね合わせて積層シート10を成形し、この積層シート10を二組の成形金型20・20によって加圧成形することで二組の成形体23・23(図3を参照)を成形し、前記成形金型20・20の凹型金型21・21同士を型合わせすることで、これら成形体23・23同士を圧着結合して樹脂製燃料タンク50を成形するものである。
【0022】
成形装置1は主に積層工程部2や、成形工程部3などにより構成される。
先ず、積層工程部2の構成について、図1を用いて説明する。
積層工程部2は溶融樹脂シート12・12と、フィルム材11と、を重ね合わせて積層シート10を成形し、成形金型20・20に積層シート10を供給するための工程部であり、押出機4・4や、加圧ロール5や、中間ロール6や、ボビン7などにより構成される。
【0023】
前記押出機4・4は先端部におけるダイ4a・4aを介して、高密度ポリエチレンにて構成される溶融樹脂をシート状に押し出す装置である。ここで、本成形装置1では押出機4・4は二基設けられており、互いに前後方向に所定寸法だけ離間した状態で対向して配設され、各々単独で溶融樹脂シート12・12の成形条件を設定することが可能になっている。
【0024】
押出機4・4の下方には加圧ロール5が配設される。
前記加圧ロール5は一対のロール部5a・5aや、該ロール部5a・5aを各々軸支する軸部5b・5bなどにより構成される。そして、加圧ロール5は、これらロール部5a・5aの軸心を水平左右方向(水平方向で押出機4・4の離間方向と直交する方向)に向けつつ、互いに前後方向(押出機4・4の離間方向)に対向して配設される。
【0025】
前記軸部5b・5bには、例えば駆動チェーンなどからなる図示せぬ駆動伝達手段が各々設けられており、該駆動伝達手段を介して駆動部からの駆動力が前記軸部5b・5bに対して伝達されて、前記ロール部5a・5aは互いに対向する部分が下方へ向けて回動するように各々単独で回転駆動される構成となっている。
即ち、前側(図1における左側)のロール部5aは時計回りに回転駆動され、後側(図1における右側)のロール部5aは反時計回りに回転駆動される構成となっている。
【0026】
また、加圧ロール5の軸部5b・5bは図示せぬガイドレールなどによって前後方向へ各々案内されており、両ロール部5a・5aの位置は互いに近接離間する方向に移動可能となっている。
つまり、前記両ロール部5a・5aの間隙寸法(図1に示す寸法X)は容易に変更することが可能であり、寸法Xの値を変更することで、後述する積層シート10の厚み寸法を容易、且つ高精度に変更することができるようになっている。
【0027】
加圧ロール5の上方には中間ロール6が設けられる。
前記中間ロール6は二本のロール部6a・6aや、図示せぬ軸受などを介して該ロール部6a・6aを各々軸支する軸部6b・6bなどにより構成される。そして、中間ロール6は押出機4・4と、加圧ロール5と、の間において、これらロール部6a・6aの軸心を水平左右方向(水平方向で押出機4・4の離間方向と直交する方向)に向けつつ、互いに前後方向(押出機4・4の離間方向)に対向して配設される。
【0028】
中間ロール6の上方にはボビン7が設けられる。
前記ボビン7は筒状の部材からなり、その外周面には長尺のフィルム材11が予め巻き付けられている。
【0029】
ここで、フィルム材11はガソリンなど燃料の透過防止機能を有する樹脂材、例えば、エチレンビニルアルコール(EVOH)やポリアミドなどからなるバリヤー層11aと、該バリヤー層11aの表裏面に各々積層される無水マレイン酸変性ポリエチレンなどの樹脂材からなる接着層11b・11bと、が積層密着された三層フィルムとして構成されるものである。
このような構成からなるフィルム材11を用いて、後述する積層シート10を成形することで、完成品である樹脂製燃料タンク50(図4を参照)に、ガソリンなど燃料の透過防止機能を容易に具備させることができるのである。
【0030】
前記ボビン7の中央部には軸心に沿って貫通する貫通孔7aが設けられており、該貫通孔7a内に支持軸8が貫通することで、ボビン7は支持軸8を介して回転自在に支持される。
前記支持軸8は、加圧ロール5の各ロール部5a・5aの軸部5b・5bと平行、且つ両ロール部6a・6aの上方に設けられており、その前後方向の位置は、ボビン7から巻き解かれるフィルム材11が両ロール部5a・5a間に位置するように配置されている。また、前記支持軸8は、その一端部(例えば右端部)が図示せぬフレーム部に固定保持されている。
【0031】
また、ボビン7の貫通孔7aの断面寸法は、支持軸8の断面寸法に比べて幾分大きく形成されており、ボビン7は容易に支持軸8より着脱可能となっている。
つまり、成形装置1による樹脂製燃料タンク50の成形中において、ボビン7に巻かれたフィルム材11の全てが繰り出されたとしても、作業者の手により空になったボビン7を支持軸8より離脱させ、再びフィルム材11が巻かれたボビン7を支持軸8に容易に挿入することができるようになっている。
【0032】
このように、積層工程部2は二基の押出機4・4を互いに前後方向に対向して設け、その下方側に、上から順にボビン7、中間ロール6、加圧ロール5を配置して構成されている。
そして、二基の押出機4・4のダイ4a・4aより押し出された二枚の溶融樹脂シート12・12は、自重により各々下方に垂下した後、中間ロール6を介して一旦斜下方へと規制され、加圧ロール5の両ロール部5a・5aの間隙に導かれるようになっている。また、ボビン7より繰り出されたフィルム材11も自重により下方へと垂下し、そのまま加圧ロール5の両ロール部5a・5aの間隙に導かれ、二枚の溶融樹脂シート12・12の間に挟み込まれるようになっている。
【0033】
つまり、フィルム材11を中心にしてその表面(前面)、および裏面(後面)に溶融樹脂シート12・12が配置された状態で、前記フィルム材11および溶融樹脂シート12・12が加圧ロール5の両ロール部5a・5aの間隙を通過することで、これらのフィルム材11と溶融樹脂シート12・12とが積層されるとともに、前記両ロール部5a・5aに扱かれながら圧着され、積層シート10が成形されるのである。
【0034】
そして、積層工程部2の下方には、後述する二組の成形金型20・20が設けられており、成形された積層シート10は加圧ロール5より下方に垂下されつつ、両成形金型20・20に供給されるようになっている。
【0035】
次に、成形工程部3の構成について、図2を用いて説明する。
成形工程部3は上述の積層工程部2より供給された積層シート10を用いて二個の成形体23・23(図3を参照)を成形し、これら成形体23・23を接合して最終製品である樹脂製燃料タンク50(図4を参照)を成形するための工程を実施する部分であり、主に二組の成形金型20・20により構成される。
【0036】
前記各成形金型20は一対の凹型金型21と、凸型金型22と、により構成されており、これら凹型金型21、および凸型金型22の一方の側面部に各々形成される凹部21a、および凸部22aが互いに嵌合しあうようにして、水平方向に所定寸法だけ離間した状態で対向して配設される。
【0037】
即ち、図2(a)に示すように、各成形金型20は水平前後方向における前側に凸型金型22が、凸部22aを後方に突出するようにして配設されるとともに、後側に凹型金型21が、凹部21aを前面側に位置するようにして配設される。
また、凹型金型21、および凸型金型22は図示せぬガイドレールなどによって各々案内されており、互いに近接離間する方向に移動可能となっている。
【0038】
これにより、凸型金型22は、対向する凹型金型21の方向へと移動されるとともに、凹型金型21も対向する凸型金型22の方向へと移動され、凸型金型22の凸部22aと、凹型金型21の凹部21aと、が嵌合しあうようになっている。
【0039】
このように、一対の凹型金型21と、凸型金型22とからなる成形金型20が、積層工程部2の下方において二組設けられており、これら両成形金型20・20による積層シート10のプレス成形が完了し、二個の成形体23・23が成形されると、凹型金型21、および凸型金型22は互いに離間するよう各々前後方向へ一旦移動されることとなる。
【0040】
その後、既知の移動機構や位置決め機構などから構成される型合わせ機構により、両成形金型20・20の凹型金型21・21のみが互いに凹部21a・21aを向かい合わせて、例えば前後方向に配設される状態となり、このような状態から各凹型金型21・21を互いに近接するように前後方向に移動させて型合わせを行うことで、二個の成形体23・23の開口周縁部が互いに接合され、最終製品である樹脂製燃料タンク50が成形されるのである。
【0041】
[樹脂製燃料タンク50の成形手順]
次に本実施例における成形装置1を用いた樹脂製燃料タンク50の成形手順について、図1乃至図4を用いて説明する。尚、便宜上、図3の上下方向を成形装置1の上下方向とし、且つ矢印Aの方向を前方と規定して、以下説明する。
【0042】
先ず、図1に示すように、第一工程として押出機4・4によって溶融樹脂シート12・12が下方に向かってシート状に押し出されるとともに、ボビン7に巻き付けられたフィルム材11も下方に向かって繰り出される。
ここで、各押出機4・4の溶融樹脂シート12・12の成形条件はそれぞれ異なる設定となっている。より具体的には、前方の押出機4より押し出される溶融樹脂シート12は、後述のとおり、成形体23・23同士の圧着状態を確実なものとするべく高温状態に保たれ、後方の押出機4より押し出される溶融樹脂シート12は、急速冷却により成形形状の安定化を図るべく、前方の押出機4より押し出される溶融樹脂シート12の温度に対して比較的低温状態に保たれる設定となっている。
【0043】
そして、加圧ロール5の上方において、これら2枚の溶融樹脂シート12・12の間にフィルム材11を挟むようにして、これら溶融樹脂シート12・12と、フィルム材11と、は積層され、このような状態を維持しつつ加圧ロール5の両ロール部5a・5aの間隙を通過することで、フィルム材11は接着層11b・11bを介して溶融樹脂シート12・12と圧着され、積層シート10が成形される。
【0044】
次に、図2(a)に示すように、第二工程として加圧ロール5より繰り出された積層シート10は、二組の成形金型20・20を構成する各凸型金型22・22、および凹型金型21・21の間に各々垂下する状態にて供給される。
この際、先ず一方の成形金型20を構成する凸型金型22、および凹型金型21の間に積層シート10を垂下し、これら凸型金型22、および凹型金型21によって積層シート10のプレス成形が開始され(図2(b)を参照)、その後、プレス成形を開始した成形金型20は、既知の移動機構などにより加圧ロール5の直下の位置から離隔されるとともに、他方の成形金型20が凹型金型21と凸型金型22とを離間した状態にて加圧ロール5の直下の位置に搬送(セット)される。
【0045】
そして、再び凹型金型21と凸型金型22との間に積層シート10が垂下され(図2(a)を参照)、成形金型20のプレス成形が開始される。
【0046】
ここで、加圧ロール5の直下にセットされる際の二組の成形金型20・20は、ともに前側に凸型金型22・22が、後側に凹型金型21・21が位置するようにして各々配設されるようになっている。
【0047】
つまり、前側の押出機4より押し出された高温状態の溶融樹脂シート12は、常に凸型金型22・22の配設される側に向くこととなり、後側の押出機4より押し出された比較的低温状態の溶融樹脂シート12は、常に凹型金型21・21の配設される側に向くこととなる。
換言すれば、前記積層シート10の後面側(一面側)の溶融樹脂シート12が前記凹型金型21側に配置され、前面側(他面側)の溶融樹脂シート12が前記凸型金型22側に常に配置されることとなる。
【0048】
従って、両成形金型20・20によって成形される成形体23・23は、常に開口側(樹脂製燃料タンク50における内部側)が高温状態の溶融樹脂シート12によって形成され、突出側(樹脂製燃料タンク50における外部側)が比較的低温状態の溶融樹脂シート12によって形成されることとなるのである。
なお、この場合、積層工程部2・2を二つの成形金型20・20にそれぞれ一台ずつ設置し、二つの成形金型20・20で同時に成形体23・23を成形してもよい。
【0049】
その後、プレス成形を開始してから、予め定められた設定時間が経過すると、各成形金型20・20は各々「型開き」される。即ち、各成形金型20・20を構成する凹型金型21・21、及び凸型金型22・22は、互いに離隔するように各々移動され、図2(a)に示すような、積層シート10が供給される前の初期の状態へと復元される。
【0050】
ここで、例えば、凹型金型21・21の凹部21a・21aの表面は、凸型金型22・22の凸部22a・22aの表面に比べて僅かに粗く形成されており、両成形金型20・20を「型開き」すると、プレス成形によって成形された成形体23・23は、常に凹型金型21・21の凹部21a・21aに残存されることとなる。
【0051】
その後、第三工程として、図3(a)に示すように、型合わせ機構などにより、両成形金型20・20の凹型金型21・21のみが互いに凹部21a・21aを向かい合わせて、前後方向に配設される状態となり、このような状態から図3(b)に示すように、各凹型金型21・21を互いに近接するように前後方向に移動して型合わせすることで、該凹型金型21・21の凹部21a・21aに留まる成形体23・23同士が圧着結合され、図4に示す樹脂製燃料タンク50が成形されるのである。
【0052】
尚、両成形体23・23は、上述のように、互いに開口側(樹脂製燃料タンク50における内部側)が高温状態の溶融樹脂シート12側となるため、これら凹型金型21・21を型合わせすれば、両成形体23・23の開口周縁部では、互いに高温状態の溶融樹脂シート12側の表面にて密着されることとなる。
その後、製品となる両成形体23・23の外周端材は、既知の方法でトリミングする。
【0053】
このように、本実施形態においては、樹脂製燃料タンク50内部に貯留される燃料の透過防止機能を有するバリヤー層11aと、該バリヤー層11aの表裏面に積層する接着層11b・11bとからなる三層のフィルム材11と、二基の押出機4・4により押出され該フィルム材11の表裏面に各々配置された溶融樹脂シート12・12と、を加圧ロール5に具備される複数のロール部5a・5aの間隙に通過させつつ圧着することで、前記フィルム材11の表裏面に、前記バリヤー層11aとは異なる特性を有した溶融樹脂シート12・12を積層して、積層シート10・10を成形する第一工程と、互いに嵌合可能な凹型金型21・21と凸型金型22・22との間に前記積層シート10・10を各々配設して、前記凸型金型22・22と前記凹型金型21・21とで前記積層シート10・10をプレス成形することで、前記積層シート10・10を所定の凹形状を有する成形体23・23に成形する第二工程と、前記第二工程にて成形された前記成形体23・23を保持する二つの前記凹型金型21・21を、前記各成形体23・23の凹形状が対向する方向に型合わせして、前記成形体23・23同士を圧着結合する第三工程と、を備え、前記第二工程では、前記積層シート10・10の一面側の溶融樹脂シート12が前記凹型金型21・21側に配置され、他面側の溶融樹脂シート12が前記凸型金型22・22側に配置される成形方法により、樹脂製燃料タンク(樹脂容器)50を成形することとしている。
【0054】
このような成形方法を用いることで、本成形装置1では例えばガソリンなどの透過防止機能や、樹脂製燃料タンク(樹脂容器)50の強度保持機能といったように、異なる複数の機能を具備するとともに、複雑な金型構造を有することなく、確実に開口周縁部を接合可能な樹脂製燃料タンク(樹脂容器)50の成形を可能としている。
【0055】
即ち、第一工程において、バリヤー層11aを含むフィルム材11を積層シート10内に取り込むことで、溶融樹脂シート12・12独自の特性に加えて、前記溶融樹脂シート12・12の特性とは異なる前記フィルム材11の有する特性をも積層シート10に付加することができ、完成品である樹脂製燃料タンク50に、ガソリンなど燃料の透過防止機能を容易に具備させることができるのである。
また、積層シート10は、取り込むフィルム材11の種類に応じて、酸素透過防止機能や、水分透過防止機能などを具備することも可能である。
【0056】
また、第一工程にて積層シート10を成形する際には、フィルム材11の一面側に配置される溶融樹脂シート12の温度を、他面側へ配置される溶融樹脂シート12の温度よりも高い温度に保持し、第二工程で積層シート10を成形金型20・20に供給する際には、高温に保持された溶融樹脂シート12の側が凹型金型21・21とは反対側に向き、低温に保持された溶融樹脂シート12の側が凹型金型21・21側に向くように供給するように構成している。
【0057】
従って、第三工程において、凹型金型21・21同士を型合わせすることで、互いに一方側(凹型金型21・21とは反対側)が高温状態である成形体23・23の開口周縁部同士を密着することができる。
【0058】
その結果、他に加熱手段や断熱手段を別途設けるなど、複雑な金型構造を有することもなく、両成形体23・23の開口周縁部を高温状態に保ったまま接合することができ、完成品である樹脂製燃料タンク(樹脂容器)50の接合箇所での接合強度、および気密性を確実なものとすることが可能である。
また、前記樹脂製燃料タンク(樹脂容器)50の外側(凹型金型21・21側)を形成する溶融樹脂シート12は、常に低温に保持された溶融樹脂シート12によって形成されることとなるため、強度保持機能も具備されるのである。
【0059】
さらに、本発明における成形方法では、互いに嵌合可能な一対の凹型金型21、および凸型金型22によって成形体23の肉厚を規制するだけでなく、加圧ロール5の両ロール部5a・5aの間隙寸法Xの値を変更することで、積層シート10自身の厚みをも規制可能としている。
従って、完成品の樹脂製燃料タンク50の肉厚については、より高精度に該肉厚の均一化を図ることができるのである。
【符号の説明】
【0060】
4 押出機
5 加圧ロール
5a ロール部
10 積層シート
11 フィルム材
11a バリヤー層
11b 接着層
12 溶融樹脂シート
20 成形金型
21 凹型金型
22 凸型金型
23 成形体
50 樹脂製燃料タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂容器内部に貯留される物質の透過を防止するバリヤー層と、該バリヤー層の表裏面に積層する接着層とを有する三層フィルム材の表裏面に、前記バリヤー層とは異なる特性を有した樹脂シートを積層して、積層シートを成形する第一工程と、
互いに嵌合可能な凹型金型と凸型金型との間に前記積層シートを各々配設して、前記凸型金型と前記凹型金型とで前記積層シートをプレス成形することで、前記積層シートを所定の凹形状を有する成形体に成形する第二工程と、
前記第二工程にて成形された前記成形体を保持する二つの前記凹型金型を、前記各成形体の凹形状が対向する方向に型合わせして、前記成形体同士を圧着結合する第三工程と、
を備え、
前記第二工程では、前記積層シートの一面側の溶融樹脂シートが前記凹型金型側に配置され、他面側の溶融樹脂シートが前記凸型金型側に配置される、
ことを特徴とする樹脂容器の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−240889(P2010−240889A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89481(P2009−89481)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】