説明

樹脂射出成形装置

【課題】 工程が簡略で効率の改善を図ることができる樹脂射出成形装置を提供する。
【解決手段】 細管1の両端部に挿入されるスライドコア7の突起部8に、細管1内へ検査流体を供給・排出自在な通路13が形成されているため、樹脂射出成形装置4で細管1をインサート成形した樹脂成形体2を製造した状態のままで、細管1の検査が行える。従って、専用の検査装置に樹脂成形体2をセットする工程が不要となり、工程が簡略化され、効率が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細管がインサートされた樹脂成形体を成形する樹脂射出成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱交換用として熱媒体を複数の細管に循環させる構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の細管は両端部が樹脂成形体にインサート成形された状態で使用される。そして、一方の樹脂成形体側に開口した細管の一端部から熱媒体を供給し、他方の樹脂成形体側に開口した他端部より排出するようになっている。
【0004】
このような細管をインサートした樹脂成形体の成形は、まず細管の両端部に樹脂射出成形装置のライドコアに形成された突起部を挿入した状態で支持する。そして、支持された細管の周囲に一対の成形型によりキャビティ空間を形成し、該キャビティ空間内に樹脂材料を射出する。そうすると、細管がインサートされた樹脂成形品が成形型内において成形される。
【0005】
樹脂成形体にインサート成形された細管は、使用した場合に気体や液体状の熱媒体が漏れないかどうか検査する。すなわち、専用の検査装置を使用して、細管の一端部から気体や液体状の検査流体を所定の圧力で供給し、その検査流体が細管の他端部からどのような圧力で排出されるかを検査する。排出される側の圧力を測定することにより、細管に亀裂等がないかどうか検査することができる。
【特許文献1】特表2002−535600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、細管をインサートした樹脂成形体を樹脂射出成形装置により成形した後に、その細管付きの樹脂成形体を樹脂射出成形装置とは別の検査装置にセットして、細管の検査を別工程として行うようになっているため、工程数が多く、効率的でない。
【0007】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、工程が簡略で効率の改善を図ることができる樹脂射出成形装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、複数の細管に、該細管の両端部にスライドコアに形成された突起部を挿入した状態で支持し、細管の周囲に一対の成形型によるキャビティ空間を形成し、該キャビティ空間内に樹脂材料を射出して細管がインサートされた樹脂成形品を成形する樹脂射出成形装置であって、前記細管の両端部に挿入されるスライドコアの突起部に、細管内へ検査流体を供給・排出自在な通路が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、細管の両端部に挿入されるスライドコアの突起部に、細管内へ検査流体を供給・排出自在な通路が形成されているため、樹脂射出成形装置で細管をインサート成形した樹脂成形体を製造した状態のままで、細管の検査が行える。従って、専用の検査装置に樹脂成形体をセットする工程が不要となり、工程が簡略化され、効率が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
工程が簡略で効率の改善を図ることができる樹脂射出成形装置を提供するというと目的を、複数の細管に、該細管の両端部にスライドコアに形成された突起部を挿入した状態で支持し、細管の周囲に一対の成形型によるキャビティ空間を形成し、該キャビティ空間内に樹脂材料を射出して細管がインサートされた樹脂成形品を成形する樹脂射出成形装置であって、前記細管の両端部に挿入されるスライドコアの突起部に、細管内へ検査流体を供給・排出自在な通路が形成されたことで、実現した。以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0011】
図1〜図6は、本発明の一実施例を示す図である。図1は、複数の丸筒状の細管1を間に挟んだ状態でインサート成形した一対の樹脂成形体2を示す。樹脂成形体2は四角フレーム状で、各樹脂成形体2は熱交換機として利用される場合は、上下のヘッダーとして機能する。すなわち、熱媒体が一方の樹脂成形体2から細管1を介して他方の樹脂成形体2に送られる。
【0012】
複数の細管1は、まず最初に途中部分を一対の仮保持駒3間に挟持することにより間隔が均一にされる。そして、細管1は仮保持駒3ごと、樹脂射出成形装置4にセットされる。樹脂射出成形装置4は一対の成形型としての上型5と下型6を備え、上型5を開いた状態で下型6上にセットされる。
【0013】
樹脂射出成形装置4には左右一対のスライドコア7が設けられている。スライドコア7には、それぞれ突起部8が対向状態で設けられており、突起部8の先端部は先細りになる先端テーパ部が形成されている。これらのスライドコア7を接近させることにより、その突起部8が細管1の両端部内に内接状態で挿入される。尚、このとき細管1の外周に形成される樹脂成形体2の仮保持駒3側の側端面部位置まで突起部8を挿入し、前記樹脂成形体2の側端面部位置より突起部8の先端テーパ部の傾斜面部の一部を突出させ、樹脂成形体2の側端面が位置する部分の細管1の内周部に空間を形成している。
【0014】
そして、細管1の両端部にスライドコア7の突起部8を挿入した状態で、上型5を下降させて型閉めし、細管1の両端部に上型5と下型6及びスライドコア7、仮保持駒3によるキャビティ空間9をそれぞれ形成する。
【0015】
キャビティ空間9には、シリンダ10から樹脂材料11が射出され、細管1の両端部がインサートされた樹脂成形体2を成形する。また、細管1の両端部は、射出成形工程でアンカー形状12(図6参照)が全周に形成され、細管1と樹脂成形体2との結合力が高められている。これは、細管1の樹脂成形体2の側端面が位置する部分の内周部には、空間部が形成されているため、この空間部が射出圧力により細管1が突起部8の先端テーパ部の傾斜面部に沿う様に変形し、アンカー形状12が形成される。尚、細管1の両端部に、レーザー加工により予めアンカー形状12を形成してもよい。
【0016】
樹脂成形体2が冷却された後、細管1の検査を行う。一対のスライドコア7における突起部8には、先端から通路13がそれぞれ形成されている。各通路13は、検査流体供給装置14と、圧力検査装置15とにそれぞれ接続されている。従って、検査流体供給装置14から通路13を介して細管1内に検査流体(気体又は液体)を供給し、細管1の反対側から排出した検査流体を圧力検査装置15で検査して、細管1における亀裂の有無等を調べることができる。
【0017】
そして、検査が終了したら、上型5を開いて、スライドコア7をスライドさせ、突起部8を細管1から抜いて、エジェクタピン16により樹脂成形体2を下型6から取り出す。
【0018】
以上説明したように、この実施例によれば、細管1の両端部に挿入されるスライドコア7の突起部8に、細管1内へ検査流体を供給・排出自在な通路13が形成されているため、樹脂射出成形装置4で細管1をインサート成形した樹脂成形体2を製造した状態のままで、細管1に亀裂の有無等があるか否かの検査が行える。従って、専用の検査装置に樹脂成形体2をセットする工程が不要となり、工程が簡略化され、効率が改善される。
【産業上の利用可能性】
【0019】
以上の実施例では、丸筒状の細管1を例にしたが、角筒状であっても良い。また、上記実施例では、独立した複数の細管1を示したが、押し出し成形等で複数の孔が一体に形成された細管も使用できる。このような一体細管であれば、細管の樹脂射出成形装置へのセットが容易になり、成形効率を向上させる事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】細管をインサートした樹脂成形体を示す斜視図。
【図2】図1の断面図。
【図3】図1及び図2に係る細管を仮保持駒により挟持した状態を示す平面図。
【図4】図3中矢示DA方向から見た正面図。
【図5】本発明の一実施例に係る樹脂射出成形装置を示す断面図。
【図6】細管に挿入した突起部を示す図5の拡大断面図。
【符号の説明】
【0021】
1 細管
2 樹脂成形体
4 樹脂射出成形装置
5 上型(成形型)
6 下型(成形型)
7 スライドコア
8 突起部
9 キャビティ空間
11 樹脂材料
12 アンカー
13 通路
14 検査流体供給装置
15 圧力検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の細管(1)に、該細管(1)の両端部にスライドコア(7)に形成された突起部(8)を挿入した状態で支持し、細管(1)の周囲に一対の成形型(5,6)によるキャビティ空間(9)を形成し、該キャビティ空間(9)内に樹脂材料(11)を射出して細管(1)がインサートされた樹脂成形品(2)を成形する樹脂射出成形装置であって、
前記細管(1)の両端部に挿入されるスライドコア(7)の突起部(8)に、細管(1)内へ検査流体を供給・排出自在な通路(13)が形成されていることを特徴とする樹脂射出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−213029(P2006−213029A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30724(P2005−30724)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】