説明

樹脂組成物、半導体ウエハー接合体および半導体装置

【課題】半導体ウエハーと透明基板とがスペーサを介して接合された半導体ウエハー接合体を形成したとき、この半導体ウエハー接合体に生じる反りの大きさが低減された前記スペーサを得ることができる樹脂組成物、反りの大きさが低減された半導体ウエハー接合体および半導体装置を提供すること。
【解決手段】本発明の樹脂組成物は、半導体ウエハー101’と透明基板102との間に、平面視で格子状をなすスペーサ104を設けるのに用いられ、アルカリ可溶性樹脂と、熱硬化性樹脂と、光重合開始剤とを含む構成材料で構成されるものであり、半導体ウエハー101’と透明基板102とをスペーサ104を介して接合する際、スペーサ104を平面視で、そのほぼ全面に形成し、その後、半導体ウエハー101’を1/5の厚さにしたときの反りの大きさが3000μm以下となるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、半導体ウエハー接合体および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOSセンサーやCCDセンサー等に代表される半導体装置であって、受光部を備えた半導体基板と、半導体基板上に設けられたスペーサと、該スペーサを介して半導体基板に接合された透明基板とを有する半導体装置が知られている。
【0003】
このような半導体装置の製造方法として、半導体装置の生産性の向上を図るために、感光性フィルムを用いた方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この感光性フィルムを用いて、半導体装置は、例えば、下記のようにして複数のものが一括して製造される。
【0005】
まず、複数の受光部を備えた半導体ウエハー上に、この半導体ウエハーを覆うように感光性フィルム(スペーサ形成層)を貼り付ける。
【0006】
次に、感光性フィルムに対して、光を選択的に照射(露光)した後、現像することにより、半導体ウエハー上の各受光部を囲む領域に、感光性フィルムを選択的に残存させてスペーサを格子状に形成する。
【0007】
次に、スペーサが形成された半導体ウエハーと透明基板とを、スペーサが介在するようにして対向配置させた後、これらを圧着することにより、半導体ウエハーと透明基板とがスペーサを介して接合された半導体ウエハー接合体を得る。
【0008】
次に、この半導体ウエハー接合体を、半導体ウエハーが備える受光部単位に応じて分割することにより、複数の前記半導体装置が一括して製造される。
【0009】
以上のようにして、半導体装置は、半導体ウエハーと透明基板とがスペーサを介して接合された半導体ウエハー接合体を分割することにより製造されるが、近年、半導体装置の小型化、薄型化に伴い、半導体ウエハーの厚さを100〜600μm程度、さらに半導体装置をより小型化、薄型化する場合には、50μm程度にまで薄くすることが求められている。
【0010】
また、このような半導体ウエハーは、かかる薄さに設定するために、半導体ウエハーのスペーサと反対側の面を研削および/または研磨するバックグラインド工程が施されることから、この工程の後に、半導体ウエハーに反りが生じたり、この反りが大きくなる可能性が高い。
【0011】
このように反りが生じた半導体ウエハー接合体は、バックグラインド工程の後、裏面加工(例えば、TSV加工)、ダイシング加工等が施される。
【0012】
裏面加工工程には、例えば、感光性のレジストをラミネート、露光、現像する工程がある。
【0013】
そのため、半導体ウエハー接合体をラミネーター、露光機、現像機およびダイシングソー等の装置にセットする際には、マガジンケースに半導体ウエハー接合体を入れ、そのマガジンケースを装置にセットする必要があるが、この際、バックグラインド工程を施すことにより、半導体ウエハー接合体の反りが大きくなっていると、このマガジンケースに半導体ウエハー接合体が入らないため、装置にセットできず、工程を通せないといった不具合が発生する。
【0014】
さらに、マガジンケースに半導体ウエハー接合体がおさまったとしても、各装置では、半導体ウエハー接合体を、吸引する等して、搬送したり、ステージ上で固定したりしているため、バックグラインド後に、半導体ウエハー接合体の反りが大きくなると、吸引による搬送および固定ができないため、裏面加工やダイシング加工を実施できないといった不具合も発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−91399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、半導体ウエハーと透明基板とがスペーサを介して接合された半導体ウエハー接合体を形成し、半導体ウエハーの裏面を研削および/または研磨した後に、この半導体ウエハー接合体に生じる反りの大きさが低減された前記スペーサを得ることができる樹脂組成物、および、反りの大きさが低減された半導体ウエハー接合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような目的は、下記(1)〜(11)に記載の本発明により達成される。
(1) 半導体ウエハーと透明基板との間に、平面視で格子状をなすスペーサを設けるのに用いられ、アルカリ可溶性樹脂と、熱硬化性樹脂と、光重合開始剤とを含む構成材料で構成される樹脂組成物であって、
ほぼ円形状をなす直径8インチで厚さ725μmの前記半導体ウエハーと、ほぼ円形状をなす直径8インチで厚さ350μmの前記透明基板とを前記スペーサを介して接合する際、前記スペーサを平面視で、そのほぼ全面に形成し、その後、前記半導体ウエハーの前記スペーサと反対側の面をほぼ均一に研削および/または研磨する加工を施して、前記半導体ウエハーを1/5の厚さにしたとき、
前記透明基板側を下側にして平面上に載置した際に、前記平面と前記透明基板の表面に形成される空隙の最大高さである反りの大きさが3000μm以下となることを特徴とする樹脂組成物。
【0018】
(2) 前記アルカリ可溶性樹脂は、(メタ)アクリル変性フェノール樹脂である上記(1)に記載の樹脂組成物。
【0019】
(3) 前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂である上記(1)または(2)に記載の樹脂組成物。
【0020】
(4) 前記構成材料として、さらに、光重合性樹脂を含有する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0021】
(5) 前記スペーサは、当該樹脂組成物で構成される層を光硬化および熱硬化の双方で硬化させたものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0022】
(6) 前記スペーサは、その弾性率が25℃において、0.1〜15GPaである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0023】
(7) 前記スペーサは、0℃〜30℃の平均線膨張係数が3〜150ppm/℃である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0024】
(8) 前記スペーサは、その残留応力が25℃において、0.1〜150MPaである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0025】
(9) 前記スペーサは、その厚さが5〜500μmである上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0026】
(10) 半導体ウエハーと、上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の樹脂組成物で構成され、格子状に配置された複数の空隙部を備えるスペーサと、透明基板とがこの順に積層されたほぼ円形状をなすことを特徴とする半導体ウエハー接合体。
【0027】
(11) 上記(10)に記載の半導体ウエハー接合体を個片化することにより得られることを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ほぼ円形状をなす直径8インチで厚さ725μmの半導体ウエハーと、ほぼ円形状をなす直径8インチで厚さ350μmの透明基板とをスペーサを介して接合する際、前記スペーサを平面視で、そのほぼ全面に形成し、その後、前記半導体ウエハーの前記スペーサと反対側の面をほぼ均一に研削および/または研磨する加工を施して、前記半導体ウエハーを1/5の厚さにしたとき、半導体ウエハー接合体の反りの大きさが3000μm以下に低減されているので、半導体ウエハー接合体の裏面加工やダイシング工程の際に、これらの工程を施す装置内に半導体ウエハー接合体が納まらなかったり、半導体ウエハー接合体が装置に引っ掛かり破損してしまうことを的確に抑制または防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】半導体装置の一例を示す断面図である。
【図2】半導体装置の製造方法の一例を示す工程図である。
【図3】半導体装置の製造方法の一例を示す工程図である。
【図4】半導体装置の製造過程で得られる本発明の半導体ウエハー接合体の平面図である。
【図5】半導体ウエハー接合体の反りの大きさを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の樹脂組成物および半導体ウエハー接合体を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0031】
<半導体装置(イメージセンサ)>
まず、本発明の樹脂組成物および半導体ウエハー接合体を説明するのに先立って、本発明の半導体ウエハー接合体より製造された半導体装置(半導体素子)について説明する。
【0032】
図1は、本発明の半導体ウエハー接合体より製造された半導体装置の一例を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0033】
図1に示すように、半導体装置(受光装置)100は、ベース基板101と、ベース基板101に対向配置された透明基板102と、ベース基板101上に形成された受光部を含む個別回路103と、受光部を含む個別回路103の縁部に形成されたスペーサ104と、ベース基板101の下面に形成された半田バンプ106とを有する。
【0034】
ベース基板101は、半導体基板であり、この半導体基板には図示しない回路(後述する半導体ウエハーが備える個別回路)が設けられている。
【0035】
ベース基板101上には、受光部を含む個別回路103が設けられている。この受光部を含む個別回路103は、例えば、ベース基板101側から受光素子とマイクロレンズアレイとがこの順に積層された構成となっている。
【0036】
透明基板102は、ベース基板101に対向配置されており、ベース基板101の平面寸法と略同じ平面寸法となっている。透明基板102は、例えば、アクリル樹脂基板、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)基板、ガラス基板等で構成される。
【0037】
スペーサ104は、受光部を含む個別回路103が備えるマイクロレンズアレイと透明基板102とを、これらの縁部において直接接着されており、ベース基板101および透明基板102を接着するものである。そして、このスペーサ104は、受光部を含む個別回路103(マイクロレンズアレイ)と透明基板102との間に空隙部105を形成している。
【0038】
このスペーサ104は、受光部を含む個別回路103の縁部に、この受光部を含む個別回路103の中心部を取り囲むように配置されているため、受光部を含む個別回路103のうち、スペーサ104に取り囲まれた部分が実質的な受光部として機能する。
【0039】
なお、受光部を含む個別回路103が備える受光素子としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサー等が挙げられ、この受光素子において、受光部を含む個別回路103で受光した光が電気信号に変換されることとなる。
【0040】
半田バンプ106は、導電性を有し、ベース基板101の下面及び中において、このベース基板101に設けられた配線と電気的に接続されている。これにより、受光部を含む個別回路103で光から変換された電気信号が、半田バンプ106に伝達される。
【0041】
このような半導体装置100は、例えば、以下のようにして製造することができる。
図2および図3は、半導体装置の製造方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、図2および図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0042】
[1]まず、受光部を含む個別回路103が設けられ、1つの半導体装置100に対応した図示しない複数の個別回路が形成された半導体ウエハー101’を用意する。
【0043】
本実施形態では、図2(a)に示すように、半導体ウエハー101’に設けられた個別回路に電気的に接続して形成される受光部を含む個別回路103が一体的に形成されている。
【0044】
[2]次に、半導体ウエハー101’の上面側、すなわち受光部を含む個別回路103が設けられている側に、接着性を有するスペーサ形成層12を形成する。
【0045】
このスペーサ形成層12の形成方法としては、特に限定されず、例えば、I:支持基材(フィルム)11上に形成されたスペーサ形成層12を半導体ウエハー101’上に転写する方法、II:スペーサ形成層12の構成材料を含有するワニス(液状材料)を塗布した後、乾燥してスペーサ形成層12を形成する方法、III:スペーサ形成層12の構成材料を含有するワニスを直接描画する方法等が挙げられるが、これらの中でも、Iの方法を用いるのが好ましい。Iの方法において、後述するスペーサ形成層12の露光を、支持基材11を介して行う構成とすれば、スペーサ形成層12に不本意に塵等が付着するのを効果的に防止することができる。
【0046】
以下では、Iの方法を用いてスペーサ形成層12を半導体ウエハー101’に形成する場合を一例に説明する。
【0047】
[2−1]まず、図2(b)に示すように、支持基材11上にスペーサ形成層12が設けられたスペーサ形成用フィルム1を用意する。
【0048】
本発明では、スペーサ形成層12は、アルカリ可溶性樹脂と、熱硬化性樹脂と、光重合開始剤とを含有するものである。このようなスペーサ形成層12は、光が照射された部分が硬化する光硬化性、光が照射されていない部分がアルカリ液に対して溶解するアルカリ現像性、および、光が照射された部分が加熱によりさらに硬化する熱硬化性の何れの特性をも備えるものである。
【0049】
かかる特性を備えるスペーサ形成層12を構成する樹脂組成物の構成材料については、後に詳述する。
【0050】
支持基材(フィルム)11は、シート状の基材で、スペーサ形成層12を支持する機能を備えている。
【0051】
この支持基材11は、後述するスペーサ形成層12の露光(露光工程[4])を、支持基材11を介して行う構成とする場合、光透過性を有する材料で構成される。支持基材11をかかる構成のものとしてスペーサ形成層12の露光をすることにより、半導体装置100の製造において、スペーサ形成層12に不本意に塵等が付着するのを効果的に防止しつつ、スペーサ形成層12を確実に露光することができる。
【0052】
このような支持基材11を構成する材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等が挙げられる。これらの中でも、光透過性と破断強度のバランスに優れる点で、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いるのが好ましい。
【0053】
なお、このようなスペーサ形成用フィルム1は、例えば、アルカリ可溶性樹脂、熱硬化性樹脂および光重合開始剤と、必要に応じて、光重合性樹脂や、その他の成分とを溶媒中に溶解させてスペーサ形成層形成用材料(液状材料)を調製し、その後、この液状材料を、支持基材11上に塗布し、所定の温度で、溶媒を除去して乾燥させることにより得ることができる。
【0054】
ここで用いられる溶媒としては、特に限定されず、スペーサ形成層(樹脂組成物)12の構成材料に対して、不活性なものが好適に用いられる。
【0055】
具体的には、溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、DIBK(ジイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、DAA(ジアセトンアルコール)等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、BCSA(ブチロセルソルブアセテート)等のセロソルブ系、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMAC(ジメチルアセトアミド)、DBE(ニ塩基酸エステル)、EEP(3−エトキシプロピオン酸エチル)、DMC(ジメチルカーボネート)等が挙げられる。
【0056】
また、スペーサ形成層形成用材料(液状材料)中における、溶媒の含有量は、溶媒に混合した固形成分(スペーサ形成層12の構成材料)の含有量が10〜60重量%程度となる範囲に設定されているのが好ましい。
【0057】
[2−2]次に、図2(c)に示すように、半導体ウエハー101’の受光部を含む個別回路103側の面と、スペーサ形成用フィルム1のスペーサ形成層12(接着面)とを貼り合わせる(ラミネート工程)。これにより、半導体ウエハー101’の受光部を含む個別回路103側にスペーサ形成層12が、半導体ウエハー101’の反対側に支持基材11を備えた状態で、半導体ウエハー101’にスペーサ形成層12が貼り合わされる。
【0058】
なお、半導体ウエハー101’の受光部を含む個別回路103側の面(上面)へのスペーサ形成層12の貼り合わせは、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0059】
まず、スペーサ形成用フィルム1と半導体ウエハー101’とを位置合わして、一端側において、スペーサ形成用フィルム1の下面と半導体ウエハー101’の上面とを接触させる。
【0060】
次に、この状態で、スペーサ形成用フィルム1および半導体ウエハー101’を、スペーサ形成用フィルム1の下面と半導体ウエハー101’の上面とを接触させた箇所において、一対のローラ間に挟持されるように接合装置に設置する。これにより、スペーサ形成用フィルム1と半導体ウエハー101’とが加圧される。
【0061】
次に、一対のローラを一端側から他端側に向かって移動させる。これにより、一対のローラ間で挟持された部分において、受光部を含む個別回路103にスペーサ形成層12が順次接合され、その結果、スペーサ形成用フィルム1と半導体ウエハー101’とが貼り合わされる。
【0062】
スペーサ形成用フィルム1および半導体ウエハー101’を一対のローラ間で挾持する際の加圧の圧力は、特に限定されないが、0.1〜10kgf/cm程度であるのが好ましく、0.2〜5kgf/cm程度であるのがより好ましい。これにより、受光部を含む個別回路103に対して確実にスペーサ形成層12を貼り付けることができる。
【0063】
各ローラの移動速度は、特に限定されないが、0.1〜1.0m/分程度であるのが好ましく、0.2〜0.6m/分程度であるのがより好ましい。
【0064】
また、各ローラには、それぞれ、例えばヒータのような加熱手段が設置されており、スペーサ形成用フィルム1および半導体ウエハー101’は、一対のローラで挟持された部分において加熱される。加熱する温度は、0〜120℃程度であるのが好ましく、40〜100℃程度であるのがより好ましい。
【0065】
[3]次に、半導体ウエハー101’上に形成されたスペーサ形成層12を加熱する(PLB(ポストラミネートベーク)工程)。
【0066】
これにより、スペーサ形成層12の樹脂表面の凹凸を改善し、平坦化することができる。
【0067】
スペーサ形成層12を加熱する温度は、20〜120℃程度であるのが好ましく、30〜100℃程度であるのがより好ましい。
【0068】
また、加熱する時間は、0.1〜10分程度であるのが好ましく、2〜7分程度であるのがより好ましい。
【0069】
[4]次に、スペーサ形成層12のスペーサ104とすべき部分に、光(紫外線)を照射し、露光する(露光工程)。
【0070】
これにより、スペーサ形成層12において、スペーサ104とすべき部分が選択的に光架橋する。
【0071】
このようなスペーサ形成層12のスペーサ104とすべき部分への光の照射は、例えば、図2(d)に示すように、スペーサ104とすべき部分に対応した開口部201を備えるマスク20を介して、光を照射することにより行われる。
【0072】
なお、本実施形態では、スペーサ形成層12の露光は、支持基材11を介して行われる。スペーサ形成層12の露光をかかる構成とすれば、スペーサ形成層12に不本意に塵等が付着するのを効果的に防止しつつ、スペーサ形成層12を確実に露光することができる。さらに、スペーサ形成層12の露光の際に、支持基材11を取り外していると、スペーサ形成層12がマスク20に付着してしまい、これに起因して、スペーサ形成層12の表面が平坦でなくなったり、次に露光する半導体ウエハー101’が備えるスペーサ形成層12に、この付着したスペーサ形成層12が再付着してしまうことがあるが、スペーサ形成層12の露光を、支持基材11を介して行う構成であれば、かかる問題点を効果的に防止することができるという利点も得られる。
【0073】
スペーサ形成層12に照射する光の波長は、150〜700nm程度であるのが好ましく、170〜450nm程度であるのがより好ましい。
【0074】
また、照射する光の積算光量は、200〜3000mJ/cm程度であるのが好ましく、300〜2500mJ/cm程度であるのがより好ましい。
【0075】
[5]次に、露光後のスペーサ形成層12を加熱する(PEB(ポストエクスプロージャーベーク)工程)。
【0076】
これにより、スペーサ形成層12のスペーサ104とすべき部分をより強固に硬化させることができるとともに、スペーサ形成層12のスペーサ104とすべき部分をより強固に受光部を含む個別回路103に接着させることができる。さらに、スペーサ形成層12に残存する残留応力を緩和させることができる。
【0077】
スペーサ形成層12を加熱する温度は、30〜120℃程度であるのが好ましく、30〜100℃程度であるのがより好ましい。
【0078】
また、加熱する時間は、1〜10分程度であるのが好ましく、2〜7分程度であるのがより好ましい。
【0079】
[6]次に、露光後のスペーサ形成層12を、アルカリ液を用いて現像する(現像工程)。
【0080】
これにより、図2(e)に示すように、スペーサ形成層12の露光されていない部分が除去(エッチング)されて、この除去された部分で空隙部105が構成されたスペーサ104を得ることができる。すなわち、露光された部分で構成されたスペーサ104を得ることができる。
【0081】
なお、本発明の樹脂組成物は、前記工程[4]における光に対する感度が高く、パターンニング性に優れている。そのため、本工程において、所望の形状のスペーサ104を容易に形成することができる。
【0082】
また、本実施形態では、スペーサ形成層12上には支持基材11が設けられているので、このスペーサ形成層12の現像に先立って、支持基材11をスペーサ形成層12から取り剥がしておく。
【0083】
用いるアルカリ液のpHは、9.5以上であるのが好ましく、11.0〜14.0程度であるのがより好ましい。これにより、スペーサ形成層12の効率のよい除去が可能となる。
【0084】
このようなアルカリ液としては、例えば、NaOH、KOHのようなアルカリ金属水酸化物の水溶液、Mg(OH)のようなアルカリ土類金属水酸化物の水溶液、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの水溶液、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系有機溶媒等が挙げられ、これらを単独または混合して用いることができる。
【0085】
[7]次に、図3(a)に示すように、半導体ウエハー101’上に形成されたスペーサ104に対して、透明基板102を貼り合わせる。すなわち、半導体ウエハー101’に、スペーサ104を介して透明基板102を貼り合わせる(貼り合わせ工程)。
【0086】
なお、この半導体ウエハー101’と透明基板102との貼り合わせは、例えば、前記工程[2−2]において、半導体ウエハー101’とスペーサ形成用フィルム1とを貼り合わせる際に説明したのと同様の方法を用いて行うことができる。
【0087】
[8]次に、半導体ウエハー101’と透明基板102とをスペーサ104を介して貼り合わせた状態で、加熱することにより、スペーサ104を熱硬化させる(熱硬化工程)。
【0088】
これにより、スペーサ104と透明基板102とが物理的に接合される。その結果、半導体ウエハー101’と透明基板102とがスペーサ104を介して接合された半導体ウエハー接合体1000、すなわち、半導体ウエハー101’と透明基板102との間に複数の空隙部105を備えた半導体ウエハー接合体1000が得られる(図4参照)。
【0089】
スペーサ104を加熱する温度は、80〜180℃程度であるのが好ましく、110〜160℃程度であるのがより好ましい。これにより、形成されるスペーサ104の形状を良好なものとすることができる。
【0090】
[9]次に、図3(b)に示すように、半導体ウエハー101’の透明基板102を接合したのと反対側の下面(裏面)111を研削および研磨のうちの少なくとも一方の加工を施す(バックグラインド工程)。
【0091】
この下面111は、例えば、研削装置(グラインダー)が備える研削盤により研削される。
【0092】
かかる下面111の加工により、半導体ウエハー101’の厚さは、半導体装置100が適用される電子機器によっても異なるが、通常、100〜600μm程度に設定され、より小型の電子機器に適用する場合には、50μm程度に設定される。
【0093】
このように半導体ウエハー101’の厚さが薄くなってくると、前述したように、半導体ウエハー接合体1000に生じる反りが大きくなり、後工程である半導体ウエハー接合体1000の裏面加工工程[10]やダイシング工程[11]の際に、以下のような問題が生じる。
【0094】
すなわち、半導体ウエハー接合体1000は、本工程[9]の後、裏面加工工程[10]やダイシング工程[11]が施される。
【0095】
裏面加工工程[10]には、例えば、感光性のレジストをラミネート、露光、現像する工程がある。
【0096】
そのため、半導体ウエハー接合体1000をラミネーター、露光機、現像機およびダイシングソー等の装置にセットする際には、マガジンケースに半導体ウエハー接合体1000を入れ、そのマガジンケースを装置にセットする必要があるが、この際、工程[9]を施すことにより、半導体ウエハー接合体1000の反りが大きくなっていると、このマガジンケースに半導体ウエハー接合体1000が入らないため、装置にセットできず、工程を通せないといった不具合が発生する。
【0097】
さらに、マガジンケースに半導体ウエハー接合体1000がおさまったとしても、各装置では、半導体ウエハー接合体1000を、吸引する等して、搬送したり、ステージ上で固定したりしているため、バックグラインド後に、半導体ウエハー接合体1000の反りが大きくなると、吸引による搬送および固定ができないため、裏面加工工程[10]やダイシング工程[11]を実施できないといった不具合も発生する。
【0098】
かかる問題点を解消するために本発明では、半導体ウエハー接合体の反りの大きさを規定するための規定用の半導体ウエハー接合体2000を用意し、この半導体ウエハー接合体2000において認められる反りの大きさが3000μm以下となっている。
【0099】
ここで、本発明では、半導体ウエハー接合体2000は、ほぼ円形状をなす直径8インチで厚さ725μmの前記半導体ウエハーと、ほぼ円形状をなす直径8インチで厚さ350μmの前記透明基板とを前記スペーサを介して接合する際、前記スペーサを平面視で、そのほぼ全面に形成し、その後、前記半導体ウエハーの前記スペーサと反対側の面をほぼ均一に研削および/または研磨する加工を施して、前記半導体ウエハーを1/5の厚さにしたものである。
【0100】
また、半導体ウエハー接合体2000は、半導体ウエハー101’、透明基板102およびスペーサ104の線膨張係数および弾性率等の関係から、透明基板102側を下側にして平面上に載置した際に、図5に示すように、透明基板102の外周部が下側に、その中央部が上側になるようにして、前記平面と透明基板102の表面との間に空隙112が形成される。本発明では、この空隙112の最大高さXのことを、半導体ウエハー接合体2000に生じる反りと言うこととする。
【0101】
このような半導体ウエハー接合体2000において、その反りの大きさを3000μm以下、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下(0μmを除く)とすると、後述する半導体ウエハー接合体1000の裏面加工工程[10]やダイシング工程[11]の際に、これらの工程を施す装置内に半導体ウエハー接合体1000が納まらなかったり、半導体ウエハー接合体1000が装置に引っ掛かり破損してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0102】
すなわち、半導体ウエハー接合体の反りの大きさを規定するための規定用の半導体ウエハー接合体2000における反りをかかる範囲内に設定することにより、実製品として用いられる半導体ウエハー接合体1000の反りが裏面加工工程[10]およびダイシング工程[11]を実施するのに、実質上問題のない大きさとなるため、これら工程[10]、[11]を施す際に生じる問題を確実に抑制または防止することができる。
【0103】
本発明では、以上のように、半導体ウエハー接合体2000の反りの大きさが3000μm以下となるように、平面視で格子状をなすスペーサ104を構成する樹脂組成物の構成材料として、アルカリ可溶性樹脂と、熱硬化性樹脂と、光重合開始剤とを含むものが用いられる。
【0104】
なお、本発明では、半導体ウエハー接合体2000において、スペーサ104は、その厚さが好ましくは20〜80μm程度、より好ましくは50μm程度に設定される。
【0105】
さらに、透明基板102としては、半導体ウエハー101’とほぼ同様の弾性率および線膨張係数を有するものが好適に選択され、具体的には、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、シリカ(水晶)等の酸化シリコン系材料で構成されるものが好適に用いられる。
【0106】
スペーサ104の厚さがかかる範囲内に設定され、透明基板102の構成材料の種類が選択された半導体ウエハー接合体2000において、その反りの大きさが3000μm以下となるように、スペーサ104を構成する樹脂組成物の構成材料が選択される。
【0107】
アルカリ可溶性樹脂と、熱硬化性樹脂と、光重合開始剤とを含む樹脂組成物で構成されるスペーサ形成層12は、前述したように、I:光が照射された部分が硬化する光硬化性、II:光が照射されていない部分がアルカリ現像液に対して溶解するアルカリ現像性、および、III:光が照射された部分が加熱によりさらに硬化する熱硬化性の何れの特性をも備えると伴に、IV:半導体ウエハー接合体2000の反りの大きさを3000μm以下に確実にし得るものである。
【0108】
ここで、この樹脂組成物の構成材料は、I〜IIIの特性を好適に発揮しつつ、IVで挙げた半導体ウエハー接合体2000の反りの大きさがより小さくなるものが好適に選択される。
【0109】
以下、この樹脂組成物の各構成材料について詳述する。
(アルカリ可溶性樹脂)
スペーサ形成層12を構成する樹脂組成物(本発明の樹脂組成物)は、アルカリ可溶性樹脂を含んでいる。これにより、スペーサ形成層12は、アルカリ現像性を有するものとなる。
【0110】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えばクレゾール型、フェノール型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、カテコール型、レゾルシノール型、ピロガロール型等のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、水酸基またはカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを重合して得られるアクリル系樹脂、水酸基またはカルボキシル基を有するエポキシアクリレートやウレタンアクリレート等の(メタ)アクリレート樹脂、水酸基およびカルボキシル基等を含む環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂(具体的には、ポリベンゾオキサゾール構造およびポリイミド構造の少なくとも一方を有し、かつ主鎖または側鎖に水酸基、カルボキシル基、エーテル基またはエステル基を有する樹脂、ポリベンゾオキサゾール前駆体構造を有する樹脂、ポリイミド前駆体構造を有する樹脂、ポリアミド酸エステル構造を有する樹脂等)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0111】
前記水酸基またはカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを重合して得られるアクリル系樹脂に使用される水酸基またはカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、水酸基を有する2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸等が挙げられ、これらを単独でラジカル重合してもよいが、加熱硬化後のスペーサの接着性、耐熱性、耐湿性を鑑み、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、ニトリル基を有するアクリロニトリル、スチレン、ジビニルベンゼン、ブタジエン等の二重結合を有するモノマーと共重合してもよい。
【0112】
これらアルカリ可溶性樹脂の中でも、アルカリ現像に寄与するアルカリ可溶性基および二重結合の双方を有するものを用いるのが好ましい。
【0113】
アルカリ可溶性基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基等が挙げられる。このアルカリ可溶性基は、アルカリ現像に寄与することができるとともに、熱硬化反応に寄与することもできる。また、アルカリ可溶性樹脂は、二重結合を有していることにより、光硬化反応に寄与することができる。
【0114】
このようなアルカリ可溶性基および二重結合を有する樹脂としては、例えば、光および熱の両方で硬化可能な硬化性樹脂を挙げることができ、具体的には、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基およびビニル基等の光反応基を有する熱硬化性樹脂や、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシル基、酸無水物基等の熱反応基を有する光硬化性樹脂等が挙げられる。
【0115】
なお、熱反応基を有する光硬化性樹脂は、さらに、エポキシ基、アミノ基、シアネート基等の他の熱反応基を有していてもよい。かかる構成の光硬化性樹脂としては、具体的には、(メタ)アクリル変性フェノール樹脂、(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型樹脂、(メタ)アクリロイル基含有アクリル酸重合体およびカルボキシル基含有(エポキシ)アクリレート、二重結合を有するポリベンゾオキサゾール前駆体樹脂、二重結合を有するポリイミド前駆体等が挙げられる。また、カルボキシル基含有アクリル樹脂のような熱可塑性樹脂であっても構わない。
【0116】
以上のようなアルカリ可溶性基および二重結合を有する樹脂(光および熱の両方で硬化可能な硬化性樹脂)の中でも、(メタ)アクリル変性フェノール樹脂や(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型樹脂を用いるのが好ましい。(メタ)アクリル変性フェノール樹脂や(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型樹脂を用いれば、アルカリ可溶性基を含有することから、現像処理により未反応の樹脂を除去する際に、現像液として通常用いられる有機溶剤の代わりに、環境に対する負荷のより少ないアルカリ現像液を適用することができる。さらに、二重結合を含有することにより、この二重結合が硬化反応に寄与することとなり、その結果として、樹脂組成物の耐熱性を向上させることができる。また、(メタ)アクリル変性フェノール樹脂や(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型樹脂を用いることにより、半導体ウエハー101’の加工前(研削および/または研磨前)での半導体ウエハー接合体2000の反りの大きさを確実に小さくでき、かつ、半導体ウエハー101’の加工後(研削および/または研磨後)における半導体ウエハー接合体2000の反りの増大率を確実に小さくできる点からも(メタ)アクリル変性フェノール樹脂や(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型樹脂が好ましく用いられる。
【0117】
(メタ)アクリル変性フェノール樹脂や(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型樹脂としては、例えば、フェノール類やビスフェノール類が備える水酸基と、エポキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物のエポキシ基とを反応させて得られた、(メタ)アクリル変性フェノール樹脂や(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型樹脂が挙げられる。
【0118】
具体的には、このような(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型樹脂としては、例えば、下記化1に示すようなものが挙げられる。
【0119】
【化1】

【0120】
また、その他、エポキシ樹脂の両末端に(メタ)アクリロイル基が導入された(メタ)アクリロイル変性エポキシ樹脂の分子鎖中に、この(メタ)アクリロイル変性エポキシ樹脂の分子鎖中の水酸基と、二塩基酸中の一つのカルボキシル基とがエステル結合で結合することにより、二塩基酸が導入されている化合物(なお、この化合物中のエポキシ樹脂の繰り返し単位は1以上、分子鎖中に導入されている二塩基酸の数は1以上)が挙げられる。なお、かかる化合物は、例えば、先ず、エピクロルヒドリンと多価アルコールとを重合させて得られるエポキシ樹脂の両末端のエポキシ基と、(メタ)アクリル酸とを反応させることにより、エポキシ樹脂の両末端に(メタ)アクリロイル基が導入された(メタ)アクリロイル変性エポキシ樹脂を得、次いで、得られた(メタ)アクリロイル変性エポキシ樹脂の分子鎖中の水酸基と、二塩基酸の無水物を反応させることにより、この二塩基酸の一方のカルボキシル基とエステル結合を形成させることにより得られる。
【0121】
ここで、光反応基を有する熱硬化性樹脂を用いる場合、この光反応基の変性率(置換率)は、特に限定されないが、アルカリ可溶性基および二重結合を有する樹脂の反応基全体の20〜80%程度であるのが好ましく、30〜70%程度であるのがより好ましい。光反応基の変性量を上記の範囲とすることで、特に解像性に優れる樹脂組成物を提供することができる。
【0122】
一方、熱反応基を有する光硬化性樹脂を用いる場合、この熱反応基の変性率(置換率)は、特に限定されないが、アルカリ可溶性基および二重結合を有する樹脂の反応基全体の20〜80%程度であるのが好ましく、30〜70%程度であるのがより好ましい。熱反応基の変性量を上記の範囲とすることで、特に解像性に優れる樹脂組成物を提供することができる。
【0123】
また、アルカリ可溶性樹脂としてアルカリ可溶性基および二重結合を有する樹脂を用いる場合、この樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、30000以下であることが好ましく、5000〜150000程度であるのがより好ましい。重量平均分子量が前記範囲内であると、フィルム上にスペーサ形成層を形成する際の成膜性に特に優れるものとなる。
【0124】
ここで、アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、例えばGPC(ゲル浸透クロマトグラム)を用いて評価でき、予め、スチレン標準物質を用いて作成された検量線により重量平均分子量を算出することができる。なお、測定溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、40℃の温度条件下で測定した。
【0125】
また、樹脂組成物におけるアルカリ可溶性樹脂の含有量は、特に限定されないが、この樹脂組成物全体において、15〜50重量%程度であるのが好ましく、20〜40重量%程度であるのがより好ましい。なお、樹脂組成物が後述する充填材を含有する場合、アルカリ可溶性樹脂の含有量は、樹脂組成物の樹脂成分(充填材を除く全部の成分)のうち、10〜80重量%程度であってもよく、好ましくは15〜70重量%程度であってもよい。アルカリ可溶性樹脂の含有量が前記下限値未満であると、樹脂組成物中の他の成分(例えば、後述する光硬化性樹脂および熱硬化性樹脂)との相溶性を向上させる効果が低下するおそれがあり、前記上限値を超えると現像性またはフォトリソグラフィ技術により形成されるスペーサのパターニングの解像性が低下するおそれがある。換言すれば、アルカリ可溶性樹脂の含有量を上記の範囲とすることで、フォトリソグラフィ法により樹脂をパターニングしたあと、熱圧着できるという機能をより確実に発揮し得るものとすることができる。
【0126】
(熱硬化性樹脂)
また、スペーサ形成層12を構成する樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含んでいる。これにより、スペーサ形成層12は、露光、現像した後でも、その硬化により接着性を発揮するものとなる。すなわち、スペーサ形成層12と半導体ウエハーとを接合して、露光、現像した後、透明基板102をスペーサ形成層12に熱圧着することができる。
【0127】
なお、この熱硬化性樹脂としては、前述したアルカリ可溶性樹脂として、熱で硬化可能な硬化性樹脂を用いた場合には、この樹脂とは異なるものが選択される。
【0128】
具体的には、熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾールフェノール樹脂等のフェノール樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂、エポキシ変性シロキサン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特に、エポキシ樹脂を用いるのが好ましい。これにより、耐熱性および透明基板102との密着性をより向上させることができる。さらに、半導体ウエハー接合体2000の反りの大きさを確実に小さくできる。
【0129】
さらに、エポキシ樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂としては、室温で固形のエポキシ樹脂(特にビスフェノール型エポキシ樹脂)と、室温で液状のエポキシ樹脂(特に室温で液状のシリコーン変性エポキシ樹脂)とを併用することが好ましい。これにより、耐熱性を維持しつつ、可撓性と解像性との両方に優れるスペーサ形成層12とすることができる。
【0130】
樹脂組成物における熱硬化性樹脂の含有量は、特に限定されないが、この樹脂組成物全体において、10〜40重量%程度であるのが好ましく、15〜35重量%程度であるのがより好ましい。熱硬化性樹脂の含有量が前記下限値未満であると、得られるスペーサ形成層12の熱硬化後の耐熱性を向上させる効果が低下するおそれがある。また、熱硬化性樹脂の含有量が前記上限値を超えると、熱硬化後のスペーサ形成層12の靭性を向上する効果が低下するおそれがある。
【0131】
また、熱硬化性樹脂には、上述したようなエポキシ樹脂を用いる場合、このエポキシ樹脂の他に、フェノールノボラック樹脂をさらに含んでいるのが好ましい。フェノールノボラック樹脂を添加することにより、得られるスペーサ形成層12の現像性を向上させることができる。さらに、樹脂組成物中の熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂とフェノールノボラック樹脂との双方を含ませることにより、エポキシ樹脂の熱硬化性がより向上し、形成されるスペーサ104の強度をさらに向上させることができるという利点も得られる。
【0132】
(光重合開始剤)
スペーサ形成層12を構成する樹脂組成物は、光重合開始剤を含んでいる。これにより、光重合によりスペーサ形成層12を効率良くパターニングすることができる。
【0133】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾインメチルエーテル、ベンジルフィニルサルファイド、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル等が挙げられる。
【0134】
樹脂組成物における光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、この樹脂組成物全体において、0.5〜5重量%程度であるのが好ましく、0.8〜3.0重量%程度であるのがより好ましい。光重合開始剤の含有量が下限値未満であると、光重合開始する効果が十分に得られないおそれがある。また、光重合開始剤の含有量が前記上限値を超えると、反応性が高くなり、保存性や解像性が低下するおそれがある。
【0135】
(光重合性樹脂)
スペーサ形成層12を構成する樹脂組成物は、上記成分の他、光重合性樹脂を含んでいるのが好ましい。これにより、前述したアルカリ可溶性樹脂と共に樹脂組成物中に含まれることとなり、得られるスペーサ形成層12のパターニング性をより向上させることができる。
【0136】
なお、この光重合性樹脂としては、前述したアルカリ可溶性樹脂として、光で硬化可能な硬化性樹脂を用いた場合には、この樹脂とは異なるものが選択される。
【0137】
光重合性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、不飽和ポリエステル、アクリロイル基またはメタクリロイル基を、一分子中に少なくとも1個以上有する(メタ)アクリル系モノマーやオリゴマー等の(メタ)アクリル系化合物、スチレン等のビニル系化合物等が挙げられ、これらは単独で用いることも可能であり、また、2種類以上を混合して用いることもできる。
【0138】
これらの中でも、(メタ)アクリル系化合物を主成分とする紫外線硬化性樹脂が好ましい。(メタ)アクリル系化合物は、光を照射した際の硬化速度が速く、これにより、比較的少量の露光量で樹脂をパターニングすることができるから好ましく用いられる。
【0139】
この(メタ)アクリル系化合物としては、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのモノマー等が挙げられ、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレートのような2官能(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのような三官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートのような四官能(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートのような六官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0140】
これらの(メタ)アクリル系化合物の中でも、(メタ)アクリル系多官能モノマーを用いるのが好ましい。これにより、スペーサ形成層12から得られる露光、現像後のスペーサ104を優れた強度を発揮するものとすることができる。その結果、このスペーサ104を備える半導体装置100は、形状保持性により優れたものとなる。また、(メタ)アクリル系多官能モノマーを用いることにより、半導体ウエハー接合体2000の反りの大きさを確実に小さくできる点からも(メタ)アクリル系多官能モノマーが好ましく用いられる。
【0141】
なお、本明細書中において、(メタ)アクリル系多官能モノマーとは、3官能以上のアクリロイル基またはメタアクリロイル基を有する(メタ)アクリル酸エステルのモノマーのことを言うこととする。
【0142】
さらに、(メタ)アクリル系多官能モノマーの中でも、特に、三官能(メタ)アクリレートまたは四官能(メタ)アクリレートを用いるのが好ましい。これにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
【0143】
なお、光重合性樹脂として、(メタ)アクリル系多官能モノマーを用いる場合、さらに、エポキシビニルエステル樹脂を含有するのが好ましい。これにより、スペーサ形成層12の露光時には、(メタ)アクリル系多官能モノマーとエポキシビニルエステル樹脂とがラジカル重合するため、形成されるスペーサ104の露光、現像後の強度をより効果的に高めることができる。また、現像時には、スペーサ形成層12の露光していない部分のアルカリ現像液に対する溶解性を向上させることができるため、現像後の残渣を低減することができる。
【0144】
エポキシビニルエステル樹脂としては、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、エポライト40Eメタクリル付加物、エポライト70Pアクリル酸付加物、エポライト200Pアクリル酸付加物、エポライト80MFアクリル酸付加物、エポライト3002メタクリル酸付加物、エポライト3002アクリル酸付加物、エポライト1600アクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、エポライト200Eアクリル酸付加物、エポライト400Eアクリル酸付加物等が挙げられる。
【0145】
光重合性樹脂に(メタ)アクリル系多官能ポリマーが含まれる場合、樹脂組成物における(メタ)アクリル系多官能ポリマーの含有量は、特に限定されないが、この樹脂組成物全体において、1〜50重量%程度であるのが好ましく、5%〜25重量%程度であるのがより好ましい。これにより、露光後のスペーサ形成層12すなわちスペーサ104の強度をより効果的に向上させることができ、半導体ウエハー101’と透明基板102とを貼り合せる際の形状保持性をより効果的に向上させることができる。
【0146】
さらに、光重合性樹脂に、(メタ)アクリル系多官能ポリマーの他にエポキシビニルエステル樹脂を含有する場合、エポキシビニルエステル樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体において、3〜30重量%程度であるのが好ましく、5%〜15重量%程度であるのがより好ましい。これにより、半導体ウエハーと透明基板との貼り付け後における、半導体ウエハーおよび透明基板の各表面に残存する異物の残存率をより効果的に低減させることができる。
【0147】
また、以上のような光重合性樹脂は、常温で液状であることが好ましい。これにより、光照射(例えば、紫外線照射)による硬化反応性をより向上させることができる。また、他の配合成分(例えば、アルカリ可溶性樹脂)との混合作業を容易にすることができる。常温で液状の光重合性樹脂としては、例えば、前述した(メタ)アクリル化合物を主成分とする紫外線硬化性樹脂等が挙げられる。
【0148】
なお、光重合性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、5,000以下であるのが好ましく、150〜3000程度であるのがより好ましい。重量平均分子量が前記範囲内であると、スペーサ形成層12の感度に特に優れる。さらに、スペーサ形成層12の解像性にも優れる。
【0149】
ここで、光重合性樹脂の重量平均分子量は、例えばGPC(ゲル浸透クロマトグラム)を用いて評価でき、前述したのと同様の方法を用いて算出することができる。
【0150】
(溶解促進剤)
スペーサ形成層12を形成するために用いられる樹脂組成物は、溶解促進剤を含有していてもよい。溶解促進剤としては、例えば、水酸基またはカルボキシル基を含有する化合物を挙げることができ、フェノール類またはフェノール樹脂が特に好ましい。
【0151】
前記フェノール類またはフェノール樹脂を加えることにより、樹脂組成物中のフェノール性水酸基濃度が上がり、アルカリ現像液に対する溶解性が向上する。また、アルカリ現像液に対する溶解性向上剤として作用した後は、熱硬化性樹脂の硬化物のマトリクスに取り込まれるために、被接着部材である透明基板と、半導体ウエハー等を汚染することを抑制できるとともに、耐熱性、耐湿性の低下も抑制できる。
【0152】
(無機充填材)
なお、スペーサ形成層12を形成するために用いられる樹脂組成物中は、無機充填材を含有していてもよい。これにより、スペーサ形成層12により形成されるスペーサ104の強度をより向上させることができる。
【0153】
ただし、樹脂組成物中における無機充填材の含有量が大きくなり過ぎると、スペーサ形成層12の現像後に半導体ウエハー101’上に無機充填材に起因する異物が付着したり、アンダーカットが発生してしまうという問題が生じる。そのため、樹脂組成物における無機充填材の含有量は、この樹脂組成物全体において、9重量%以下とするのが好ましい。
【0154】
また、光重合性樹脂として、(メタ)アクリル系多官能モノマーを含有する場合には、(メタ)アクリル系多官能モノマーの添加により、スペーサ形成層12により形成されるスペーサ104の現像、露光後の強度を十分に向上させることができるので、樹脂組成物中への無機充填材の添加を省略することができる。
【0155】
無機充填材としては、例えば、アルミナ繊維、ガラス繊維のような繊維状充填材、チタン酸カリウム、ウォラストナイト、アルミニウムボレート、針状水酸化マグネシウム、ウィスカーのような針状充填材、タルク、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、鱗片状黒鉛、板状炭酸カルシウムのような板状充填材、炭酸カルシウム、シリカ、溶融シリカ、焼成クレー、未焼成クレーのような球状(粒状)充填材、ゼオライト、シリカゲルのような多孔質充填材等が挙げられる。これらを1種または2種以上混合して用いることもできる。これらの中でも、特に、多孔質充填材を用いるのが好ましい。
【0156】
無機充填材の平均粒子径は、特に限定されないが、0.01〜90μm程度であるのが好ましく、0.1〜40μm程度であるのがより好ましい。平均粒子径が前記上限値を超えると、スペーサ形成層12の外観異常や解像性不良となるおそれがある。また、平均粒子径が前記下限値未満であると、スペーサ104の透明基板102に対する加熱貼り付け時の接着不良となるおそれがある。
【0157】
なお、平均粒子径は、例えばレーザ回折式粒度分布測定装置SALD−7000((株)島津製作所製)を用いて評価することができる。
【0158】
また、無機充填材として多孔質充填材を用いる場合、この多孔質充填材の平均空孔径は、0.1〜5nm程度であるのが好ましく、0.3〜1nm程度であるのがより好ましい。
【0159】
ここで、樹脂組成物を上記のような構成材料を含む構成とすることにより、この樹脂組成物で構成されるスペーサ104を、その弾性率を25℃において、好ましくは0.1〜15GPa程度、より好ましくは1〜7GPa程度のものとし得る。スペーサ104の弾性率をかかる範囲内とすれば、半導体ウエハー接合体2000の反りの大きさをより確実に3000μm以下とすることができる。
【0160】
25℃における弾性率は、例えば、動的粘弾性装置(TAインスツルメント社製、「RSA3」)を用いて、−30〜200℃まで、昇温速度5℃/分、周波数10Hzで測定し、25℃での弾性率を読み取ることにより求めることができる。
【0161】
また、樹脂組成物を上記のような構成材料を含む構成とすることにより、この樹脂組成物で構成されるスペーサ104を、0℃〜30℃の範囲内における平均線膨張係数を、好ましくは20〜150ppm/℃程度、より好ましくは50〜100ppm/℃程度のものとし得る。スペーサ104の線膨張係数をかかる範囲内とすれば、半導体ウエハー接合体2000の反りの大きさをより確実に3000μm以下とすることができる。
【0162】
線膨張係数は、例えば、線膨張係数測定装置(セイコーインスツルメント社製、「TMA/SS6000、EXSTAR6000」)を用いて、−30〜150℃、昇温速度5℃/分で、測定サンプルの寸法変化量を測定し、0〜30℃の寸法変化量と測定サンプルの測定前の寸法から、0〜30℃の平均線膨張係数を求めることができる。
【0163】
さらに、樹脂組成物を上記のような構成材料を含む構成とすることにより、この樹脂組成物で構成されるスペーサ104において、その弾性率および線膨張係数を上述したような範囲内に設定できるので、その残留応力を25℃において、好ましくは0.1〜150MPa程度、より好ましくは0.1〜100MPa程度のものとし得る。スペーサ104の残留応力をかかる範囲内とすれば、半導体ウエハー接合体2000の反りの大きさをより確実に3000μm以下とすることができる。
【0164】
25℃における残留応力は、例えば、まず、8インチのベアシリコンウエハー上に、樹脂層を形成(樹脂フィルムの場合はラミネートして貼り付ける。液状樹脂の場合はスピンコート後に熱乾燥、もしくは、印刷にする)し、365nmの波長、1000mj/cmの条件で露光し、次いで180℃、2時間の条件で熱硬化し、評価用サンプルを準備する。次に、表面粗さ形状測定装置(東京精密製、SURFCOM1400D)を用いて、反りを測定し、下記式(1)および(2)より残留応力を求めることができる。
【0165】
R=(a+4X)/8X ・・・ (1)
σ=[DE/{6Rt(1−υ)}]×9.8 ・・・ (2)
[式中、Xは反りの大きさ[mm]、aは測定長さ[mm]、Rは曲率半径[mm]、ベアシリコンウエハーの厚さ[mm]、Eはシリコンの弾性率(16200kg/mm)、tは樹脂層の厚さ[mm]、υはポアソン比(0.3)、σは残留応力[MPa]をそれぞれ表す。]
【0166】
なお、半導体ウエハー101’の下面111を加工(研削および/または研磨)する本工程[9]は、前記熱硬化工程[8]に先立って行うようにしてもよい。
【0167】
[10]次に、研削および/または研磨された半導体ウエハー101’の下面(裏面)111に加工を施す(裏面加工工程)。
【0168】
かかる加工としては、例えば、下面111に対する配線の形成や、図3(c)に示すような、半田バンプ106の接続等が挙げられる。
【0169】
[11] 次に、半導体ウエハー101’に形成された個別回路、すなわち、スペーサ104が備える各空隙部105に対応するように、半導体ウエハー接合体1000を個片化することにより、複数の半導体装置100を得る(ダイシング工程)。
【0170】
半導体ウエハー接合体の個片化は、例えば、まず、透明基板102側からダイシングソーにより、スペーサ104が形成されている位置に対応するように切込み21を入れた後、半導体ウエハー101’側からもダイシングソーにより切込み21に対応して切込みを入れることにより行われる。
【0171】
以上のような工程を経ることにより、半導体装置100を製造することができる。
このように、半導体ウエハー接合体1000を個片化して、一括して複数の半導体装置100を得る構成とすることにより、半導体装置100を大量生産することができ、生産性の効率化を図ることができる。
【0172】
なお、半導体装置100は、例えば、半田バンプ106を介して、パターニングされた配線を備える支持基板上に搭載され、これにより、支持基板が備える配線と、ベース基板101の下面に形成された配線とが半田バンプ106を介して電気的に接続されることとなる。
【0173】
また、半導体装置100は、前記支持基板に搭載された状態で、例えば、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ、小型カメラ等の電子機器に広く適用することができる。
【0174】
なお、本実施形態では、スペーサ形成層12の形成の後に加熱するPLB工程[3]、および、スペーサ形成層12の露光の後に加熱するPEB工程[5]を行う場合について説明したが、これらの工程は、スペーサ形成層12を構成する樹脂組成物(本発明の樹脂組成物)の種類によっては省略することができる。
【0175】
また、半導体ウエハー101’の裏面111を研削するバックグラインド工程[9]の後に半導体ウエハー接合体1000を加熱するようにしてもよい。バックグラインド工程[9]の後に半導体ウエハー接合体1000を加熱する構成とすれば、スペーサ104に残存する残留応力を確実に緩和させることができ、半導体ウエハー接合体1000の反りの大きさを的確に低減させることができる。
【0176】
以上、本発明の樹脂組成物および半導体ウエハー接合体について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0177】
例えば、本発明の樹脂組成物では、上述した構成材料以外に、本発明の目的を損なわない範囲内で他の構成材料が含まれていてもよく、このような他の構成材料としては、例えば、可塑性樹脂、レベリング剤、消泡剤およびカップリング剤等が挙げられる。
【実施例】
【0178】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]半導体ウエハー接合体の製造
各実施例および比較例の半導体ウエハー接合体を、それぞれ、以下のようにして5個ずつ製造した。
【0179】
(実施例1)
1.アルカリ可溶性樹脂(メタクリル変性ビスフェノールAノボラック樹脂:MPN001)の合成
【0180】
ノボラック型ビスフェノールA樹脂(大日本インキ化学工業社製、「フェノライトLF−4871」)を固形分として60重量%含有するメチルエチルケトン(MEK、大伸化学社製)溶液500gを、2Lフラスコ中に投入し、これに触媒としてトリブチルアミン1.5g、および重合禁止剤としてハイドロキノン0.15gを添加し、100℃に加温した。その中へ、グリシジルメタクリレート180.9gを30分間で滴下し、100℃で5時間攪拌反応させることにより、固形分74%のメタクリル変性ビスフェノールAノボラック樹脂(メタクリロイル変性率50%)を得た。
【0181】
2.スペーサ形成層を構成する樹脂組成物を含有する樹脂ワニスの調製
アルカリ可溶性樹脂として前記(メタ)アクリル変性ビスAノボラック樹脂(MPN001)の固形分30.0重量%と、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、「エピクロンN−665」)19.0重量%およびシロキサン変性エポキシ樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、「BY16−115」)5.0重量%と、光重合性樹脂として、エチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製、「NKエステル A−200」)10.0重量%と、無機充填材として球状シリカ(電気化学工業社製、SFP−20M、平均粒子径:0.33μm、最大粒径:0.8μm)35.0重量%とを秤量し、これらに対して、さらにメチルエチルケトン(MEK、大伸化学社製)を添加し、最終的に得られる樹脂ワニス中の樹脂成分濃度が71重量%となるように調整した。そして、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN−665)が溶解するまで攪拌した。
【0182】
次に、ビーズミル(ビーズ直径400μm、処理速度6g/s、5パス)を用いて、シリカを分散させた。
【0183】
次に、光重合開始剤として、ベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア651」)1.0重量%を添加し、攪拌羽根(450rpm)で、1時間攪拌することにより樹脂ワニスを得た。
【0184】
3.スペーサ形成用フィルムの製造
まず、支持基材として、ポリエステルフィルム(三菱樹脂社製、「MRX50」、厚さ50μm)を用意した。
【0185】
次に、支持基材上に、上記で調整した樹脂ワニスをコンマコーター(廉井精機社製、「MFG No.194001 type3−293」)で塗布することにより、樹脂ワニスで構成される塗膜を形成した。その後、形成した塗膜を80℃、20分の条件で乾燥してスペーサ形成層を形成することによりスペーサ形成用フィルムを得た。得られたスペーサ形成用フィルムは、スペーサ形成層の平均厚さが50μmであった。
【0186】
4.反り測定用半導体ウエハー接合体の製造
まず、ほぼ円形状をなす直径8インチの半導体ウエハー(Siウエハー、直径20.3cm、厚さ725μm)を用意した。
【0187】
次に、半導体ウエハーに、ロールラミネーターを用いて、ロール温度60℃、ロール速度0.3m/分、シリンジ圧2.0kgf/cmの条件で、上記で製造したスペーサ形成用フィルムをラミネートして、スペーサ形成用フィルム付き半導体ウエハーを得た。
【0188】
次に、スペーサ形成用フィルム付き半導体ウエハーに、スペーサ形成用フィルム側から、紫外線(波長365nm、積算光量700mJ/cm)を照射することにより、スペーサ形成層を平面視で全面に露光した後、支持基材を取り剥がした。
【0189】
次に、透明基板(石英ガラス基板、直径20.3cm、厚さ350μm)を用意し、このものをスペーサが形成された半導体ウエハーに、サブストレート・ボンダ(ズース・マイクロテック社製、「SB8e」)を用いて圧着することにより、スペーサを介して半導体ウエハーと透明基板とが接合された半導体ウエハー接合体を製造した。
【0190】
5.半導体ウエハー接合体の製造
まず、ほぼ円形状をなす直径8インチの半導体ウエハー(Siウエハー、直径20.3cm、厚さ725μm)を用意した。
【0191】
次に、半導体ウエハーに、ロールラミネーターを用いて、ロール温度60℃、ロール速度0.3m/分、シリンジ圧2.0kgf/cmの条件で、上記で製造したスペーサ形成用フィルムをラミネートして、スペーサ形成用フィルム付き半導体ウエハーを得た。
【0192】
次に、マスクを介して、スペーサ形成用フィルム付き半導体ウエハーに、スペーサ形成用フィルム側から、紫外線(波長365nm、積算光量700mJ/cm)を照射することにより、スペーサ形成層を平面視で格子状に露光した後、支持基材を取り剥がした。なお、スペーサ形成層に対する露光では、格子状に露光される露光部の幅が0.6mmとなるように、平面視でスペーサ形成層の50%を露光することとした。
【0193】
次に、現像液(アルカリ液)として、2.38w%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて、現像液圧0.3MPa、現像時間90秒の条件で露光後のスペーサ形成層を現像することにより、凸条の幅(ピッチ)が0.6mmのスペーサを半導体ウエハー上に形成した。
【0194】
次に、透明基板(石英ガラス基板、直径20.3cm、厚さ350μm)を用意し、このものをスペーサが形成された半導体ウエハーに、サブストレート・ボンダ(ズース・マイクロテック社製、「SB8e」)を用いて圧着することにより、スペーサを介して半導体ウエハーと透明基板とが接合された半導体ウエハー接合体を製造した。得られた半導体ウエハー接合体の透明基板側を下側にし、半導体ウエハー接合体を平面に載置し、加工前反りを測定した。
【0195】
なお、この半導体ウエハー接合体において、スペーサの25℃における弾性率は7.8GPaであり、0℃〜30℃の平均線膨張係数は、68ppm/℃であり、25℃における残留応力は16MPaであった。
【0196】
(実施例2)
樹脂ワニスの調整(前記工程2.)を以下に示すようにしたこと以外は、前記実施例1と同様にして、半導体ウエハー接合体を製造した。
【0197】
アルカリ可溶性樹脂として前記(メタ)アクリル変性ビスAノボラック樹脂(MPN001)の固形分40.0重量%と、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、「エピクロンN−665」)19.0重量%、シロキサン変性エポキシ樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、「BY16−115」)3.0重量%およびフェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製、「PR−HF−6」)2.0重量%と、光重合性樹脂として、エチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製、「NKエステル A−200」)10.0重量%と、粒子状の無機充填材としてシリカ(電気化学工業社製、SFP−20M、平均粒子径:0.33μm、最大粒径:0.8μm)25.0重量%とを秤量し、これらに対して、さらにメチルエチルケトン(MEK、大伸化学社製)を添加し、最終的に得られる樹脂ワニス中の樹脂成分濃度が71重量%となるように調整した。そして、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN−665)が溶解するまで攪拌した。
【0198】
次に、ビーズミル(ビーズ直径400μm、処理速度6g/s、5パス)を用いて、シリカを分散させた。
【0199】
次に、光重合開始剤として、ベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア651」)1.0重量%を添加し、攪拌羽根(450rpm)で、1時間攪拌することにより樹脂ワニスを得た。
【0200】
なお、得られた半導体ウエハー接合体において、スペーサの25℃における弾性率は3.0GPaであり、0℃〜30℃の平均線膨張係数は、70ppm/℃であり、25℃における残留応力は16MPaであった。
【0201】
(実施例3)
樹脂ワニスの調整(前記工程2.)を以下に示すようにしたこと以外は、前記実施例1と同様にして、半導体ウエハー接合体を製造した。
【0202】
アルカリ可溶性樹脂として前記(メタ)アクリル変性ビスAノボラック樹脂(MPN001)の固形分55.0重量%と、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、「エピクロンN−665」)15.0重量%、シロキサン変性エポキシ樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、「BY16−115」)5.0重量%およびフェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製、「PR−HF−6」)7.0重量%と、光重合性樹脂として、トリメチロールプロパントリメタクリレート(新中村化学工業社製、「NKエステルA−TMP」)17.0重量%とを秤量し、これらに対して、さらにメチルエチルケトン(MEK、大伸化学社製)を添加し、最終的に得られる樹脂ワニス中の樹脂成分濃度が71重量%となるように調整した。そして、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN−665)が溶解するまで攪拌した。
【0203】
次に、光重合開始剤として、ベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア651」)1.0重量%を添加し、攪拌羽根(450rpm)で、1時間攪拌することにより樹脂ワニスを得た。
【0204】
なお、得られた半導体ウエハー接合体において、スペーサの25℃における弾性率は2.4GPaであり、0℃〜30℃の平均線膨張係数は、84ppm/℃であり、25℃における残留応力は18MPaであった。
【0205】
(実施例4)
樹脂ワニスの調整(前記工程2.)を以下に示すようにしたこと以外は、前記実施例1と同様にして、半導体ウエハー接合体を製造した。
【0206】
アルカリ可溶性樹脂として前記(メタ)アクリル変性ビスAノボラック樹脂(MPN001)の固形分45.0重量%と、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、「エピクロンN−665」)27.0重量%と、シロキサン変性エポキシ樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、「BY16−115」)3.0重量%と、光重合性樹脂として、テトラメチロールメタンテトラアクリレート(新中村化学工業社製、「NKエステルA−TMMT」)23.0重量%とを秤量し、これらに対して、さらにメチルエチルケトン(MEK、大伸化学社製)を添加し、最終的に得られる樹脂ワニス中の樹脂成分濃度が71重量%となるように調整した。そして、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN−665)が溶解するまで攪拌した。
【0207】
次に、光重合開始剤として、ベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア651」)2.0重量%を添加し、攪拌羽根(450rpm)で、1時間攪拌することにより樹脂ワニスを得た。
【0208】
なお、得られた半導体ウエハー接合体において、スペーサの25℃における弾性率は5.1GPaであり、0℃〜30℃の平均線膨張係数は、95ppm/℃であり、25℃における残留応力は63MPaであった。
【0209】
(実施例5)
樹脂ワニスの調整(前記工程2.)を以下に示すようにしたこと以外は、前記実施例1と同様にして、半導体ウエハー接合体を製造した。
【0210】
アルカリ可溶性樹脂として前記(メタ)アクリル変性ビスAノボラック樹脂(MPN001)の固形分45.0重量%と、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、「エピクロンN−665」)30.0重量%と、シロキサン変性エポキシ樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、「BY16−115」)8.0重量%と、光重合性樹脂として、テトラメチロールメタンテトラアクリレート(新中村化学工業社製、「NKエステルA−TMMT」)15.0重量%とを秤量し、これらに対して、さらにメチルエチルケトン(MEK、大伸化学社製)を添加し、最終的に得られる樹脂ワニス中の樹脂成分濃度が71重量%となるように調整した。そして、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN−665)が溶解するまで攪拌した。
【0211】
次に、光重合開始剤として、ベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア651」)2.0重量%を添加し、攪拌羽根(450rpm)で、1時間攪拌することにより樹脂ワニスを得た。
【0212】
なお、得られた半導体ウエハー接合体において、スペーサの25℃における弾性率は4.5GPaであり、0℃〜30℃の平均線膨張係数は、91ppm/℃であり、25℃における残留応力は32MPaであった。
【0213】
(実施例6)
樹脂ワニスの調整(前記工程2.)を以下に示すようにしたこと以外は、前記実施例1と同様にして、半導体ウエハー接合体を製造した。
【0214】
アルカリ可溶性樹脂として前記(メタ)アクリル変性ビスAノボラック樹脂(MPN001)の固形分45.0重量%と、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、「エピクロンN−665」)30.0重量%と、シロキサン変性エポキシ樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、「BY16−115」)8.0重量%と、光重合性樹脂として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学社製、「ライトアクリレートDPE−6A」)15.0重量%とを秤量し、これらに対して、さらにメチルエチルケトン(MEK、大伸化学社製)を添加し、最終的に得られる樹脂ワニス中の樹脂成分濃度が71重量%となるように調整した。そして、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN−665)が溶解するまで攪拌した。
【0215】
次に、光重合開始剤として、ベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア651」)2.0重量%を添加し、攪拌羽根(450rpm)で、1時間攪拌することにより樹脂ワニスを得た。
【0216】
なお、得られた半導体ウエハー接合体において、スペーサの25℃における弾性率は3.8GPaであり、0℃〜30℃の平均線膨張係数は、89ppm/℃であり、25℃における残留応力は43MPaであった。
【0217】
(実施例7)
樹脂ワニスの調整(前記工程2.)を以下に示すようにしたこと以外は、前記実施例1と同様にして、半導体ウエハー接合体を製造した。
【0218】
アルカリ可溶性樹脂として前記(メタ)アクリル変性ビスAノボラック樹脂(MPN001)の固形分45.0重量%と、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、「エピクロンN−665」)30.0重量%と、シロキサン変性エポキシ樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、「BY16−115」)8.0重量%と、光重合性樹脂として、エチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製、「NKエステルA−200」)15.0重量%とを秤量し、これらに対して、さらにメチルエチルケトン(MEK、大伸化学社製)を添加し、最終的に得られる樹脂ワニス中の樹脂成分濃度が71重量%となるように調整した。そして、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN−665)が溶解するまで攪拌した。
【0219】
次に、光重合開始剤として、ベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア651」)2.0重量%を添加し、攪拌羽根(450rpm)で、1時間攪拌することにより樹脂ワニスを得た。
【0220】
なお、得られた半導体ウエハー接合体において、スペーサの25℃における弾性率は1.4GPaであり、0℃〜30℃の平均線膨張係数は、93ppm/℃であり、25℃における残留応力は23MPaであった。
【0221】
(実施例8)
樹脂ワニスの調整(前記工程2.)を以下に示すようにしたこと以外は、前記実施例1と同様にして、半導体ウエハー接合体を製造した。
【0222】
アルカリ可溶性樹脂として前記(メタ)アクリル変性ビスAノボラック樹脂(MPN001)の固形分20.0重量%と、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、「エピクロンN−665」)14.0重量%およびシロキサン変性エポキシ樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、「BY16−115」)3.0重量%と、光重合性樹脂として、エチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製、「NKエステル A−200」)7.0重量%と、無機充填材として球状シリカ(電気化学工業社製、SFP−20M、平均粒子径:0.33μm、最大粒径:0.8μm)55.0重量%とを秤量し、これらに対して、さらにメチルエチルケトン(MEK、大伸化学社製)を添加し、最終的に得られる樹脂ワニス中の樹脂成分濃度が71重量%となるように調整した。そして、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN−665)が溶解するまで攪拌した。
【0223】
次に、ビーズミル(ビーズ直径400μm、処理速度6g/s、5パス)を用いて、シリカを分散させた。
【0224】
次に、光重合開始剤として、ベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア651」)1.0重量%を添加し、攪拌羽根(450rpm)で、1時間攪拌することにより樹脂ワニスを得た。
なお、得られた半導体ウエハー接合体において、スペーサの25℃における弾性率は9.9GPaであり、0℃〜30℃の平均線膨張係数は、49ppm/℃であり、25℃における残留応力は9MPaであった。
【0225】
(実施例9)
樹脂ワニスの調整(前記工程2.)を以下に示すようにしたこと以外は、前記実施例1と同様にして、半導体ウエハー接合体を製造した。
【0226】
アルカリ可溶性樹脂として前記(メタ)アクリル変性ビスAノボラック樹脂(MPN001)の固形分25.0重量%と、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、「エピクロンN−665」)16.0重量%およびシロキサン変性エポキシ樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、「BY16−115」)4.0重量%と、光重合性樹脂として、エチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製、「NKエステル A−200」)8.0重量%と、無機充填材として球状シリカ(電気化学工業社製、SFP−20M、平均粒子径:0.33μm、最大粒径:0.8μm)45.0重量%とを秤量し、これらに対して、さらにメチルエチルケトン(MEK、大伸化学社製)を添加し、最終的に得られる樹脂ワニス中の樹脂成分濃度が71重量%となるように調整した。そして、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN−665)が溶解するまで攪拌した。
【0227】
次に、ビーズミル(ビーズ直径400μm、処理速度6g/s、5パス)を用いて、シリカを分散させた。
【0228】
次に、光重合開始剤として、ベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア651」)2.0重量%を添加し、攪拌羽根(450rpm)で、1時間攪拌することにより樹脂ワニスを得た。
なお、得られた半導体ウエハー接合体において、スペーサの25℃における弾性率は8.5GPaであり、0℃〜30℃の平均線膨張係数は、60ppm/℃であり、25℃における残留応力は11MPaであった。
【0229】
(比較例1)
樹脂ワニスの調整(前記工程2.)を以下に示すようにしたこと以外は、前記実施例1と同様にして、半導体ウエハー接合体を製造した。
【0230】
アルカリ可溶性樹脂として前記(メタ)アクリル変性ビスAノボラック樹脂(MPN001)の固形分45.0重量%と、光重合性樹脂として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学社製、「ライトアクリレートDPE−6A」)53.0重量%とを秤量し、これらに対して、さらにメチルエチルケトン(MEK、大伸化学社製)を添加し、最終的に得られる樹脂ワニス中の樹脂成分濃度が71重量%となるように調整した。
【0231】
次に、光重合開始剤として、ベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア651」)2.0重量%を添加し、攪拌羽根(450rpm)で、1時間攪拌することにより樹脂ワニスを得た。
【0232】
なお、得られた半導体ウエハー接合体において、スペーサの25℃における弾性率は5.0GPaであり、0℃〜30℃の平均線膨張係数は、101ppm/℃であり、25℃における残留応力は90MPaであった。
【0233】
なお、各実施例および比較例における、スペーサ形成層を構成する樹脂組成物に含まれる各種構成材料の含有量(重量%)を表1に示す。
【0234】
【表1】

【0235】
[2]半導体ウエハー接合体の反りの評価
まず、各実施例および比較例の半導体ウエハー接合体を、それぞれ、150℃、90分の条件で加熱することにより、半導体ウエハー接合体が備えるスペーサを熱硬化させた。
【0236】
次に、各実施例および比較例の半導体ウエハー接合体について、研削装置(DISCO社製、「DFG8540」)を用いて、半導体ウエハーの下面(裏面)を研削して加工することにより、半導体ウエハーの厚さを145μmとした。そして、研削(バックグラインド)後の半導体ウエハー接合体の反りの大きさを、表面粗さ計(東京精密社製、「surfcom1400D−64」)を用いて測定した。
【0237】
以上のようにして測定された、研削(バックグラインド)後の各実施例および比較例の半導体ウエハー接合体の反りの大きさを、それぞれ、以下の表1に示す。
【0238】
なお、各実施例および比較例の半導体ウエハー接合体の反りの大きさは、それぞれ、5個の半導体ウエハー接合体で測定された測定値の平均値である。
【0239】
[3]半導体ウエハー接合体のダイシング性
次に、前記[2]で研削した半導体ウエハー接合体をダイシングソー(DISCO社製、DFD6450)により、7mm×8mmのサイズに個片化した。
【0240】
そして、個片化された半導体ウエハー接合体について、それぞれ、以下の基準にしたがって評価した。
【0241】
◎:個片化の歩留まりが95%以上であった。
○:個片化の歩留りが90〜95%未満であった。
×:半導体ウエハー接合体の反りにより、吸着治具による搬送が不可能であった。
以上のようにして実施した、各種評価[2]、[3]の評価結果を表2に示す。
【0242】
【表2】

【0243】
表2から明らかなように、各実施例の研削後の半導体ウエハー接合体では、その反りの大きさが3000μm以下に低減される結果が得られた。
【0244】
これに対して、比較例の半導体ウエハー接合体では、反りの大きさが3000μmを超える結果が得られた。
【0245】
以上のことから、スペーサを設けるのに用いられる樹脂組成物として、アルカリ可溶性樹脂と、熱硬化性樹脂と、光重合開始剤とを含む構成材料で構成されるものを用いることにより、研削後の半導体ウエハー接合体の反りの大きさを3000μm以下に低減し得ることが明らかとなった。
【0246】
そして、研削後の半導体ウエハー接合体の反りの大きさを3000μm以下に低減することにより、半導体ウエハー接合体を歩留まりよく個片化できることが判った。
【符号の説明】
【0247】
1 スペーサ形成用フィルム
11 支持基材
12 スペーサ形成層
100 半導体装置
101 ベース基板
101’ 半導体ウエハー
102 透明基板
103 受光部を含む個別回路
104 スペーサ
105 空隙部
106 半田バンプ
111 下面
112 空隙
201 開口部
21 切込み
1000、2000 半導体ウエハー接合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハーと透明基板との間に、平面視で格子状をなすスペーサを設けるのに用いられ、アルカリ可溶性樹脂と、熱硬化性樹脂と、光重合開始剤とを含む構成材料で構成される樹脂組成物であって、
ほぼ円形状をなす直径8インチで厚さ725μmの前記半導体ウエハーと、ほぼ円形状をなす直径8インチで厚さ350μmの前記透明基板とを前記スペーサを介して接合する際、前記スペーサを平面視で、そのほぼ全面に形成し、その後、前記半導体ウエハーの前記スペーサと反対側の面をほぼ均一に研削および/または研磨する加工を施して、前記半導体ウエハーを1/5の厚さにしたとき、
前記透明基板側を下側にして平面上に載置した際に、前記平面と前記透明基板の表面に形成される空隙の最大高さである反りの大きさが3000μm以下となることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記アルカリ可溶性樹脂は、(メタ)アクリル変性フェノール樹脂である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂である請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記構成材料として、さらに、光重合性樹脂を含有する請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記スペーサは、当該樹脂組成物で構成される層を光硬化および熱硬化の双方で硬化させたものである請求項1ないし4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記スペーサは、その弾性率が25℃において、0.1〜15GPaである請求項1ないし5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記スペーサは、0℃〜30℃の平均線膨張係数が3〜150ppm/℃である請求項1ないし6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記スペーサは、その残留応力が25℃において、0.1〜150MPaである請求項1ないし7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記スペーサは、その厚さが5〜500μmである請求項1ないし8のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項10】
半導体ウエハーと、請求項1ないし9のいずれかに記載の樹脂組成物で構成され、格子状に配置された複数の空隙部を備えるスペーサと、透明基板とがこの順に積層されたほぼ円形状をなすことを特徴とする半導体ウエハー接合体。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体ウエハー接合体を個片化することにより得られることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−84658(P2011−84658A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238756(P2009−238756)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】