説明

樹脂組成物およびそれを用いた高周波回路用積層板

【課題】高周波信号の伝送に対応する積層板を提供することのできる新規な樹脂組成物を提供することである。より詳細には、低誘電率、低誘電正接、耐熱性、そして寸法安定性を併せ持つ樹脂組成物、及び該樹脂組成物を用いた高周波回路用積層板を提供することである。
【解決手段】
(A)環状オレフィン系共重合体100重量部、
(B)エチレン・α―オレフィン共重合体及び/またはプロピレン・α−オレフィン共重合体であって、ガラス転移温度が0℃以下である軟質共重合体50〜200重量部、
(C)無機フィラー50〜400重量部、
(D)ジビニルベンゼン系化合物1種以上を含む化合物10〜200重量部、
を含むことを特徴とする樹脂組成物及び該樹脂組成物から得られるワニス、シート、フィルム、高周波回路用積層板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電率・低誘電正接、耐熱性、寸法安定性に優れた樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いた絶縁層を有する高周波回路用積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報・通信機器分野では、伝送情報の大容量化が進展し、これに対応するために信号の高周波化が進んでいる。これまでGHzを超えるような高周波信号は、レーダーや衛星通信など限られた用途で用いられてきたが、最近では携帯電話や無線LANなどきわめて身近に用いられるようになってきた。また、コンピュータや通信機器の高速化・高機能化にともない、これらの機器間の情報伝送に用いられる信号も飛躍的に高周波化している。従来、プリント配線基板用材料としては、主にエポキシ樹脂やフェノール樹脂が用いられてきた。しかしこれらの樹脂は、高周波領域における誘電特性が悪く、伝送ロスが大きいなどの理由で高周波回路に用いることができない。
【0003】
またセラミック・アルミナなどの無機系基板材料は一般に誘電正接が低いが、取扱い性、入手性、コストなどの観点から、有機系材料への置き換えが進みつつある。このような現状から、GHz領域で使用可能な電気特性(高周波伝送特性、低誘電特性)に優れる基板材料の開発が強く要望され、ポリフェニレンエーテル樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂などが開発・実用化されてきた。(非特許文献1および特許文献1参照)。しかし信号の高周波化は数GHzを超えてさらに数十GHzへと進み、これらの新規材料ですら対応できない領域に達しようとしている。
【0004】
一方、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンは、誘電率・誘電正接の面で非常に優れるが、単独では耐熱性に劣るため、ハンダ付け作業など200℃を超える温度がかかる電気回路製造工程に耐えることができない。さらに最近でははんだの鉛フリー化によるはんだ付け温度の上昇などで、260℃以上の高い耐熱温度および寸法安定性が望まれるようになってきている。これを改善するため、ポリブタジエン樹脂に無機成分を複合化した基板が開発されている(特許文献2参照)。しかし樹脂に対して無機成分の割合が多いため、耐熱性は満足するものの誘電特性が悪くなってしまう。
【0005】
また環状オレフィンを共重合させ、優れた誘電特性を保持したまま耐熱性を向上させた材料が開発された(特許文献3参照)。しかし複合樹脂だけでは寸法安定性が維持できないため補強材を用いる必要があり、誘電特性が悪くなってしまう。
【0006】
さらに環状オレフィンを共重合させ、軟質共重合体をブレンドした樹脂組成物が開発されている(特許文献4参照)。しかし、該公報に記載の樹脂組成物は、リフロー耐熱性は満足するものであるが、より良好な寸法安定性が求められていた。
【0007】
このように、耐熱性と寸法安定性を満足し、かつ、より高周波での利用が可能な基板の開発が待ち望まれているのである。
【非特許文献1】高周波用高分子材料、株式会社シーエムシー、1999年発行
【特許文献1】特公昭52−31279号公報
【特許文献2】特開平8−208856号公報
【特許文献3】特開2005−47991号公報
【特許文献4】特開2006−45318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、高周波信号の伝送に対応する積層板を製造できる新規な樹脂組成物を提供することである。より詳細には、低誘電率、低誘電正接、耐熱性、そして寸法安定性を併せ持つ樹脂組成物、及び該樹脂組成物を用いた高周波回路用積層板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願人らは前記課題を解決するべく鋭意検討した結果、環状オレフィン系共重合体と、軟質共重合体、無機フィラーおよびジビニルベンゼン系化合物を特定の比率で含む樹脂組成物を用いた積層板が、低誘電率、低誘電正接、耐熱性、さらに寸法安定性に優れていることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、
(A)下記一般式(1)で示されるモノマー成分を含み重合体中において該モノマー成分が下記一般式(2)で示される構造をとる環状オレフィン系共重合体100重量部、
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R1〜R12は水素原子、アルキル基またはハロゲン原子であり、それぞれ同一または異なっていてもよく、さらにR9またはR10とR11またはR12とは互いに環を形成してもよい。lは0または1以上の整数であり、R5〜R8が複数回繰り返される場合には、これらは各同一または異なっていてもよい)
(B)エチレン・α―オレフィン共重合体、またはプロピレン・α−オレフィン共重合体で、ガラス転移温度が0℃以下である軟質共重合体50〜200重量部、
(C)無機フィラー50〜400重量部、
(D)下記一般式(3)で示される化合物1種以上を含む化合物10〜200重量部、
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、A1〜A6はそれぞれ同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基であり、mは1〜2の整数である)
を含むことを特徴とする樹脂組成物、及び該樹脂組成物から得られるワニス、シート、フィルム、さらには高周波回路用積層板である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、高周波特性の指標である誘電率・誘電正接に優れ、高耐熱性および高寸法安定性という特徴を併せ持った、高周波回路用積層板の提供が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、
(A)前記一般式(1)で示されるモノマー成分を含み重合体中において該モノマー成分が前記一般式(2)で示される構造をとる環状オレフィン系共重合体、
(B)エチレン・α―オレフィン共重合体、またはプロピレン・α−オレフィン共重合体で、ガラス転移温度が0℃以下である軟質共重合体、
(C)無機フィラー、
(D)前記一般式(3)で示される化合物1種以上を含む化合物
の成分を特定の比率で含む樹脂組成物、およびそれを用いた高周波回路用積層板である。
【0018】
本発明で(A)の成分として用いられる環状オレフィン系共重合体は、前述した一般式(1)で表されるモノマー成分を含むものであって、重合体中においては該モノマー成分が主として一般式(2)で示される構造をとっているものである。かかる重合体として好ましい態様は、一般式(1)のモノマー成分とともにα―オレフィンおよび/または一般式(1)以外の環状オレフィンとからなる共重合体が例示でき、好適なものとして一般式(1)で表されるモノマー及びエチレンを含むものを挙げることができる。
【0019】
(A)成分中、一般式(1)のモノマー成分は少なくとも2モル%以上含むべきであるが、エチレンを共存させる場合には、エチレン/一般式(1)のモノマー成分のモル比が5/95〜95/5、とくに40/60〜90/10の範囲が好ましく、さらにエチレン以外のα―オレフィンや鎖状ジエンあるいは一般式(1)以外の環状オレフィンや環状ジエンたとえばサリチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどを共存させる場合には、これらのモノマー合計量/一般式(1)のモノマー成分のモル比が5/95〜95/5、とくに30/70〜90/10の範囲が好ましい。また一般式(1)のモノマー成分は単品のみならず、一般式(1)で表される複数の成分が混合していてもよい。
【0020】
一般式(1)で示される式中、R1〜R12は水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などのアルキル基、または、フッ素原子、塩素塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子であり、それぞれ同一または異なっていてもよく、さらにR9またはR10とR11またはR12とは互いに環を形成してもよい。また、lは0または1以上の整数であり、R5〜R8が複数回繰り返される場合には、これらは各同一または異なっていてもよい
一般式(1)で示されるモノマー成分の具体例を示すと以下のものを挙げることができるが、ここで示される例は一例であって、一般式(1)で示されるものであればいかなるものも本発明のモノマー成分になりうる。
【0021】
【化5】

【0022】
【化6】

【0023】
【化7】

【0024】
これらの中では一般式(1)においてl=1のもの、すなわち一般式(5)
【0025】
【化8】

【0026】
(式中、R1〜R12は前記と同じ意味を示す。)
で示されるモノマー成分が、モノマーの入手しやすさあるいはモノマー合成のしやすさの面で好ましく、例えば、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンや、2,3−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンなどが好ましい。
【0027】
上述のモノマー成分は、特開昭57−154133号等にも記載のようにシクロペンタジエン類と相応するオレフィン類とをディールス・アルダー反応で縮合させることにより容易に製造することが可能である。例えば、上述の一般式(5)のモノマー成分を合成するには、下記式のようにノルボルネンに対してシクロペンタジエンを縮合することにより得ることができる。
【0028】
【化9】

【0029】
(式中、R1〜R12は前記と同じ意味を示す。)
一般式(5)以外の一般式(1)で示されるモノマー成分も、基本的には出発物質の違いだけであり、同じ縮合反応の応用で製造することができる。前記一般式(1)のモノマー成分と共重合されうるα−オレフィンとしては、炭素原子数2〜20、好ましくは炭素原子数2〜10のα−オレフィンが好ましく、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−イコセンなどが挙げられる。これらの中では特にエチレンが共重合性の面から好ましく、他のα−オレフィン(炭素原子数3以上)あるいは後述する環状オレフィンや環状ジエンを一般式(1)のモノマー成分と共重合させる場合にも、エチレンが存在したほうが共重合性は良好である。
【0030】
前記一般式(1)のモノマー成分と共重合されうる別の成分である一般式(1)以外の環状オレフィン及び環状ジエンとしては、たとえばシクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、スチレン、α−メチルスチレン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネンなどを例示できる。さらに以上述べてきたモノマー成分のほかに、ほかの共重合可能なモノマー成分を本発明の目的を損なわない範囲内で、重合体中に少量含んでいてもよい。
【0031】
本発明で(A)の成分として用いられる環状オレフィン系共重合体は、いかなる方法で製造されたものであっても構わないが、好ましい製造方法の一例として、上記一般式(1)で表される不飽和単量体とα−オレフィンおよび/又は環状オレフィンなどを、チーグラー触媒とくにバナジウム系のチーグラー触媒をはじめとする周知の触媒を使用して重合することにより製造することができる。
【0032】
本発明で(A)の成分として用いられる環状オレフィン共重合体のより好ましい態様は、上記一般式(1)のモノマー成分と少なくともエチレンを含み、必要に応じて他のオレフィンや環状オレフィンを含むものである。この場合、エチレン/式(1)のモノマー成分とのモル比は、5/95〜95/5、とくには40/60〜90/10の範囲にあるのが好ましく、さらにエチレン以外の他のモノマー成分すなわち炭素原子数3以上のα−オレフィンや環状オレフィンなどが存在する場合には、これらのモノマー成分の合計量/式(1)のモノマー成分(モル比)が5/95〜95/5、とくには30/70〜90/10の範囲にあるのが好ましい。
【0033】
本発明で(A)の成分として用いられる環状オレフィン共重合体の分子量は、限定されるものではないが、好ましくは、135℃のデカリン中で測定される還元粘度(η)が、0.03〜10dL/g、さらに好ましくは0.05〜5dL/gであり、特に好ましくは0.1〜2dL/gである。この範囲のものを用いると均質なワニスの調整が容易であり、シート、フィルムとした場合、良好な強度のものが得られる。
【0034】
本発明で(B)成分としては、エチレン・α―オレフィン共重合体、またはプロピレン・α−オレフィン共重合体であって、DSCによるガラス転移温度が0℃以下、好ましくは−10℃以下、さらに好ましくは−20℃以下である軟質共重合体が用いられる。
【0035】
エチレン・α―オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとして具体的には、炭素数3〜20のα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、またはこれらの混合物を挙げることができる。これらのうち、特に炭素数3〜10のα−オレフィンが好ましい。
【0036】
プロピレン・α―オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとして具体的には、炭素数4〜20のα−オレフィン、例えば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、またはこれらの混合物を挙げることができる。これらのうち、特に炭素数4〜10のα−オレフィンが好ましい。これらエチレン・α−オレフィン共重合体のエチレンモル分率、またはプロピレン・α−オレフィン共重合体のプロピレンモル分率は、30〜95モル%であることが好ましい。
【0037】
このようなエチレン・α−オレフィン共重合体、またはプロピレン・α−オレフィン共重合体は、従来公知の方法で製造できるが、例えば、触媒存在下、エチレンまたはプロピレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合させることによって製造することができる。市販品ならば、例えば三井化学社製「タフマー(登録商標)」を使用することができる。
【0038】
本発明の(B)成分である軟質共重合体の分子量は、限定されるものではないが、135℃のデカリン中で測定される還元粘度(η)が、0.01〜10dL/g、さらに好ましくは0.08〜7dL/gであり、特に好ましくは0.1〜2dL/gである。この範囲のものは、ワニスの粘度が適度でありフィルム、シートへの加工性が良好であり、またシート、フィルムが丈夫であり、好ましい。
【0039】
本発明で(C)の成分として用いられる無機フィラーは特に制限はないが、具体的には例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、硫化モリブデン等が挙げられる。その中でもシリカが最も好ましい。
【0040】
無機フィラーの粒子の平均粒径は0.1〜60μmが好ましく、より好ましくは0.5〜30μm、さらに好ましくは1〜15μmである。粒子の平均粒径が上記範囲内の場合は取扱上の操作性が良好である。また、積層板の耐熱性が損なわれることもなく好ましい。形状としては特に制限はないが、例えばシリカの場合、球状および破砕状のものが好ましく用いられる。
【0041】
上記シリカ粒子はそのまま用いても良いが、表面処理して用いた方が好ましい。さらには、架橋反応性を有する官能基で表面処理されているシリカ微粒子が好ましい。表面処理シリカとしては、結晶性シリカ、溶融シリカ等の微粒子に、メタクリル基、ビニル基、エポキシ基等の官能基を有するシランカップリング剤により表面処理したものなどが挙げられる。
【0042】
シランカップリング剤の具体例としては、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジ−β−メトキシエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス−β−メトキシエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジエトキシメチルシラン等が挙げられる。
【0043】
シランカップリング剤の処理量は、特に制限はないが、シリカ粒子に対して0.1〜5重量%のシランカップリング剤を処理することが好ましい。処理量が上記範囲である場合特に耐熱性が良好である。シランカップリング剤によるシリカ粒子の表面処理は、従来公知の方法で行うことができ、例えば、メタノール等の有機溶媒中でシランカップリング剤とシリカを混合撹拌して反応させる等の方法で行うことができる。
【0044】
本発明で(D)の成分として用いられる化合物としては、前記一般式(3)で示される化合物1種以上を含むものが用いられる。一般式(3)中、A1〜A6はそれぞれ同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基であり、mは1〜2の整数である。
【0045】
前記一般式(3)で示される化合物として好ましく用いられる化合物の具体例としては、例えば、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、p−ジイソプロペニルベンゼン、1,3,5−トリビニルベンゼン、1,3,5−トリイソプロペニルベンゼン等が挙げられる。好ましくは、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼンが挙げられる。
【0046】
また、一般式(3)で示される化合物に下記一般式(4)
【0047】
【化10】

【0048】
(式中、A1〜A4は前記と同じ意味を示し、nは0〜5の整数である)で示される化合物を混合して用いることが好ましい。
【0049】
一般式(4)として用いられる化合物は、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−プロピルスチレン、p−プロピルスチレン、o−イソプロピルスチレン、p−イソプロピルスチレン、o−ブチルスチレン、p−ブチルスチレン、o−イソブチルスチレン、p−イソブチルスチレン、o―t―ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、α,β−ジメチルスチレン、β,β−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、α,2−ジメチルスチレン等が挙げられる。
【0050】
一般式(3)で示される化合物と一般式(4)で示される化合物を混合して用いる場合、好ましい混合重量比は、[一般式(3)/一般式(4)]≧0.1、より好ましくは、[一般式(3)/一般式(4)]≧0.5、さらに好ましくは、[一般式(3)/一般式(4)]≧1である。
【0051】
本発明で(D)成分として用いられる化合物は分散助剤としての働きもあると考えられ、これらの一般式(3)および一般式(4)の化合物を併せた含有量が、分散助剤中に少なくとも70重量%以上であることが好ましい。より好ましくは、80重量%以上、さらに好ましくは、90重量%以上である。一般式(3)(4)の化合物以外に分散助剤の中には、不純物としてエチルベンゼン等が含まれ、一般式(3)および一般式(4)の化合物を併せた含有量が上記範囲より少ない場合には、(A)、(B)、(C)成分が均質に分散したワニスの調製が困難になり好ましくない。
【0052】
本発明においては、(A)〜(D)成分を含んだ樹脂組成物を溶媒に溶解または分散させてワニスを調製して用いることも好ましい態様である。ワニスを調整するための溶媒としては、(D)成分より低い沸点を有して、(A)〜(D)成分の分散が可能な程度に、溶解性、親和性を有するもの好ましく、その他特に制限はなく用いることができる。溶媒として好ましく用いられるものは、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。好ましくはトルエン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレンである。これらの溶媒は単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
本発明で(A)〜(D)成分を含んだワニスを調製する方法としては、いかなる方法で実施してもよい。各成分の混合については、その順序に制限はなく、一括または分割等のいかなる方式でも実施することができる。ワニスを調製する装置としても、制限はなく、撹拌、混合が可能な、バッチ式、もしくは連続式の、いかなる装置で実施してもよい。ワニスを調製する際の温度は、室温から溶媒の沸点までの範囲で任意に選択することができる。
【0054】
本発明で(A)〜(D)成分を含んだワニスを調製するに際し、ワニスの粘度は、25℃で100〜20000mPa・sに調節するのが好ましく、より好ましくは200〜10000mPa・s、さらに好ましくは、300〜5000mPa・sである。ワニスの粘度が上記の範囲内である方がフィルム、シートへの加工が良好であり好ましい。
【0055】
本発明において、(A)、(B)、(C)、(D)の成分の配合量は、(A)100重量部当たり、(B)が50〜200重量部、(C)が50〜400重量部、(D)が10〜200重量部である。好ましくは(B)が60〜180重量部、(C)が70〜350重量部、(D)が30〜180重量部、より好ましくは(B)が70〜150重量部、(C)が90〜300重量部、(D)が50〜150重量部である。この範囲において、それぞれの成分の配合量を調節することにより、その樹脂組成物から、低誘電率、低誘電正接で、耐熱性および寸法安定性に優れた性質の高周波回路用積層板を得ることができる。
【0056】
(B)の組成が下限を下回ると、樹脂組成物のフィルム、シートへの加工性が低下し好ましくない。また、上限を上回ると、積層板が耐熱性を満足できなくなり好ましくない。(C)の組成が下限を下回ると、積層板が耐熱性を満足できなくなり好ましくない。また、上限を上回ると、積層板の誘電率、誘電正接の特性が満足できなくなり好ましくない。(D)の組成が下限を下回ると、ワニスのゲル化によりシートへの加工性が低下し好ましくない。また、上限を上回ると、ワニス中の各成分の分散性が悪化し、均質な樹脂組成物の製造が難しくなり好ましくない。
【0057】
本発明の樹脂組成物には、所望に応じて難燃剤、熱安定剤、酸化安定剤、耐光安定剤等の各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。難燃剤としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化アンチモン、ピロリン酸メラミン、臭素化ポリスチレン等が挙げられる。熱安定剤や酸化安定剤としては、例えばチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製のイルガノックスやイルガフォス等が挙げられる。耐光安定剤としては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製のTINUVINやCHIMASSORB等が挙げられる。
【0058】
本発明で得られる樹脂組成物からシートまたはフィルムを形成する方法としては、各種公知の方法が適用可能であるが、例えば、ワニスを支持基材上に塗布して乾燥、加熱処理等する方法で行うことができる。ワニスの支持基材への塗布方法は特に限定されないが、例えば、スピンコーターを用いた塗布、スプレーコーターを用いた塗布、バーコーターを用いた塗布等を挙げることができる。
【0059】
また、本発明の樹脂組成物と補強繊維とを複合してシートまたはフィルムを形成することも可能であり、本発明の好ましい一態様である。この製造方法としては、各種公知の方法を適用可能であるが、例えば、補強繊維にワニスをディップやスプレー等で含浸させて乾燥する方法により行うことができる。補強繊維としては、特に制限はないが、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、芳香族ポリエステル繊維、高強度ポリエチレン繊維等の短繊維、編織布、不織布等を用いることができる。好ましくはガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、芳香族ポリエステル繊維等を挙げることができ、積層板中に2〜50重量パーセント、より好ましくは5〜30重量パーセントの範囲で複合するのが好ましい。
【0060】
支持基材上にワニスを塗布した後、または補強繊維に含浸した後に、乾燥する条件は、乾燥時間及び乾燥温度は特に限定されないが、一般に25℃〜250℃、5分〜24時間で充分である。乾燥は、空気雰囲気下で行っても構わないが、窒素雰囲気下または減圧下で行っても構わない。
【0061】
本発明の樹脂組成物は、低誘電率・低誘電正接等の物性を有することから、本発明の樹脂組成物を用いて高周波回路用積層板を形成することも可能である。その形式としては、例えば、上記方法にて得られる本発明の樹脂組成物から得られるフィルムまたはシートを少なくとも一層以上含む基材の両面または片面に導体層を形成することで高周波回路用積層板を得ることができる。高周波回路用積層板の製造方法としては特に制限はないが、例えば、前述の方法により製造した樹脂組成物のシートまたはフィルム、およびまたは、樹脂組成物と補強繊維を複合したシートまたはフィルムを積層プレスによりコア材を形成するなどし、導体層となる金属箔を公知の方法にて張り合わせて得ることができる。必要に応じてそれらシート、フィルム、コア材等を金属箔とともに多重に積層して多層板を得ることもできる。
【0062】
具体的な一例としては、この樹脂組成物のシート1枚または複数枚を用い、さらに電解銅箔などの金属箔を重ねた構成とし、成形圧力1〜15MPaで一定時間加熱圧締することにより、誘電特性、耐熱性、寸法安定性の優れた高周波回路用積層板を製造することができる。この加熱圧締の温度は、金属箔と樹脂組成物のシートまたはフィルムの組み合わせなどによるが、樹脂組成物のガラス転移温度以上で、130〜300℃くらいの範囲にするのが好ましい。
【0063】
また、樹脂組成物と補強繊維を複合したシートまたはフィルムを用いることで、より寸法安定性の良好な積層板を製造することができる。
【0064】
しかし補強繊維の誘電特性が樹脂組成物よりも悪い場合、積層板の誘電特性が悪化してしまう可能性がある。したがって高周波回路用積層板として好ましい積層構成は、樹脂組成物のシートまたはフィルムを可能な限り多くし、樹脂組成物と補強繊維を複合したシートまたはフィルムを少なくする構成である。具体的には、例えば、本発明の樹脂組成物と補強繊維を複合したシートまたはフィルムを2枚を用い、その両側に、少なくとも1枚以上の補強繊維を複合してない本発明の樹脂組成物のシートまたはフィルムを積層し、さらに電解銅箔などの金属箔を重ねた構成を有する高周波回路用積層板が好ましく、製造の際、成形圧力1〜15MPa程度で一定時間加熱圧締することが好ましい。
【0065】
樹脂組成物のシートまたはフィルムの使用枚数が多いほど、基板中の補強繊維含有量は少なくなり、誘電特性が良好となる。補強繊維の含有量を前述記載の範囲になるように、樹脂組成物と補強繊維を複合したシートまたはフィルムと、樹脂組成物のシートまたはフィルムの枚数を制御することで、より寸法安定性の優れた高周波回路用積層板を製造することができる。
【0066】
導体層となる金属としては、銅、アルミニウム、ニッケル、金、銀、ステンレス等の金属を用いることができる。導体層の形成方法としては、該金属類を箔等にして熱融着させる方法以外にも、接着剤を用いて張り合わせる方法、もしくはスパッタ、蒸着、めっき等の方法で積層して形成する方法で作成することができる。積層板の態様としては、片面板、両面板のいずれでも良い。
【0067】
本発明の高周波回路用積層板の好ましい電気特性は、周波数12GHzにおける円筒空洞共振器法による測定値が、比誘電率(ε)が2.8以下で、かつ、誘電正接(tanδ)が0.003以下、より好ましくはεが2.6以下で、かつ、tanδが0.002以下である。このような誘電特性の組成物とすることで、電子部品や基板としたときに、優れた高周波特性を得ることができる。
【0068】
本発明の高周波回路用積層板は、プリント配線板のコア基材として利用される。その加工工程において穴あけ、メッキ、回路形成、はんだ処理といった工程を通らなければならない。特にはんだ処理時には鉛フリーはんだ温度(260℃)に耐える熱時強度が必要である。
【0069】
また本発明の高周波回路用積層板の寸法安定性は、エッチング処理および加熱処理後の4辺の長さの変化率により評価することができる。好ましい変化率は、0.2%以下、より好ましくは0.1%以下、さらに好ましくは0.05%以下である。寸法変化率が低ければ低いほど、基板加工後の銅配線のずれが小さくなり不良率が低くなる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何等制限されるものではない。実施例中の各評価方法を以下に示す。
ガラス転移温度(Tg):DSC(示差走査型熱量計、島津製作所株式会社製・DSC−60)により、25℃から400℃まで昇温速度10℃/分で測定した。
還元粘度(η):サンプルの樹脂を所定の濃度で135℃のデカリンに溶解し、ウベローデ型粘度計により測定した。なお、コントロールユニットとして、ラウダ製PVS1を使用した。
溶液安定性:ワニス状態での分散性を目視により評価した。
フィルム形成性:フィルム化の可否を目視により評価した。
はんだ耐熱性:JIS規格C6481の方法に準じて前処理後、260℃のはんだ浴に10秒間浸せき後、試験片外観形状の変化の有無を評価した。
寸法安定性:50×50mm基板サンプルを作製し4辺の長さを測定した後、80℃で30分間エッチング処理、次いで170℃で30分間加熱処理した。再度4辺の長さを測定し、その変化率により寸法安定性を評価した。
誘電率および誘電正接:円筒空洞共振器法により、25℃で12GHzにおける誘電率および誘電正接を測定した。
【0071】
本実施例において、シリカは、龍森(株)社製のシリカ(商品名:AS−1、平均粒径3μm)をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理したものを用いた。また、その他の原材料は、下記合成例のとおりに合成して用いた。
【0072】
合成例1(環状オレフィン共重合体の合成−1)
攪拌翼を備えた2L重合器を用いて、連続的にエチレンと1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン(以下DMONと省略)の共重合反応を行った。すなわち、重合器上部からDMONシクロヘキサン溶液を、重合器内でのDMON濃度が60g/lとなるように毎時0.4l、触媒としてVO(OC)Clのシクロヘキサン溶液を重合器内でのバナジウム濃度が0.7mmol/lとなるように毎時0.7l、エチルアルミニウムセスキクロリド(Al(C15Cl15)のシクロヘキサン溶液を重合器内でのアルミニウム濃度が5.6mol/lとなるように毎時0.4lおよびシクロヘキサンを毎時0.5lの速度でそれぞれ重合器内に連続的に供給し、一方、重合器下部から重合器内の重合液が常に1lになるように連続的に抜き出した。また重合器上部からエチレンを毎時80l、窒素を毎時80l、水素を毎時0.2lの速度で供給した。共重合反応は、重合器上部に取り付けられたジャケットに冷媒を循環させることにより10℃で行った。上記条件で共重合反応を行うと、エチレン・DMONランダム共重合体を含む重合反応混合物が得られた。重合器下部から抜き出した重合液に、シクロヘキサン/イソプロピルアルコール(1/1)混合液を添加して重合反応を停止させた。その後、水1lに対し濃塩酸5mlを添加した水溶液と重合溶液とを1対1の割合でホモミキサーを用い強攪拌下で接触させ、触媒残渣を水層へ移行させた。上記混合液を静置し、水層を除去後さらに蒸留水で2回水洗を行い、重合液を精製分離した。
【0073】
得られた重合液を3倍量のアセトンと強攪拌下で接触させ、固体部を濾過により採取し、アセトンで十分洗浄した。以上の方法により、環状オレフィン共重合体のポリマー粉を得た。このポリマーを135℃のデカリン中で測定した還元粘度は0.95dl/gであった。13C−NMR分析による共重合体のエチレン組成は55モル%、ガラス転移温度:140℃であった。
【0074】
合成例2(環状オレフィン共重合体の合成−2)
合成例1の重合におけるDMONの代わりに、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンを用いる他は同様に重合反応を行った。その結果、得られた環状オレフィン共重合体は、還元粘度は1.05dl/g、エチレン組成53モル%、ガラス転移温度は145℃であった。
【0075】
合成例3(環状オレフィン共重合体の合成−3)
合成例1の重合におけるDMONの代わりに、6−エチルビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エンを用いる他は同様に重合反応を行った。その結果、得られた環状オレフィン共重合体は、還元粘度1.30dl/g、エチレン組成60モル%、ガラス転移温度は102℃であった。
【0076】
実施例1〜7
下記の表1に示した割合にて、(A)合成例1で示した環状オレフィン共重合体(以下COC−1と省略)、(B)軟質共重合体として「タフマー」(商品名、三井化学(株)製:以下TFと省略)、(C)表面処理シリカ、および(D)分散助剤としてジビニルベンゼン(純度55%:和光純薬工業(株)、表中DVB)とを、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに入れ、溶媒としてキシレンを加えて140℃で攪拌・分散して混合樹脂組成物のワニスを得た。室温付近まで冷却後、得られたワニスの外観は白色のペースト状であった。得られたワニスをアプリケーターを用いて、ギャップ500μmでガラス板上に塗布した。その後、送風乾燥機中で140℃、5分間乾燥してからガラス板より剥がし、重量0.005〜0.01g/cmのフィルムを得た。上記フィルムを5cm角に切り出し、総重量が5〜6gになるように30〜40枚を積層し、ミニテストプレス((株)東洋精機製)を用いて、温度140℃、圧力3MPaで30分間、温度200℃、圧力3MPaで2時間熱プレスすることにより、厚さ1.0〜1.5mmの積層板を作製した。この積層板を用いて、誘電率(ε)および誘電正接(tanδ)の測定を行った。
【0077】
また、5cm角に切り出したフィルムの総重量が5〜6gになるように30〜40枚を積層し、さらにその上下に、厚さ18μmの銅箔(三井金属鉱業(株)製:3EC−III)をマット面がフィルム側になるように積層し、上記と同条件で熱プレスすることにより、厚さ1.0〜1.5mmの両面銅張板を作製した。得られた両面銅張板から切り出した試験片を用いて、はんだ耐熱性の試験を行った。
【0078】
各試験の結果を表1に示す。溶液安定性の評価は「○が溶液分離・無し」、「×が溶液分離・有り」、フィルム形成性の評価は「○がフィルム化可能」、「△がフィルム化難」「×がフィルム化不可」を表す。はんだ耐熱性の評価は、「○が試験片の変形無し」、「△が試験片の変形若干有り」、「×が試験片の変形・発泡有り」を表す。また寸法安定性の評価は、「◎が変化率0.05%未満」、「○が変化率0.05〜0.1%」、「△が変化率0.1〜0.2%」、「×が変化率0.2%以上」を表す。
【0079】
【表1】

【0080】
比較例1〜7
(A)COC−1、(B)TF、(C)表面処理シリカ、および(D)ジビニルベンゼンを、下記の表2に示した割合で用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。比較例1ではフィルム化出来なかったため、基材化ができなかった。また比較例6では溶液がゲル化、比較例7では溶液中で各成分が分離したため、基材化ができなかった。一方、比較例2〜4では基材化できたものの、寸法安定性やはんだ耐熱性を満足できなかった。比較例5では寸法安定性は良好だが、シリカ含有量が多いため誘電特性が悪かった。
【0081】
【表2】

【0082】
実施例8〜11
(A)合成例1〜3で示した環状オレフィン共重合体(以下COC−1〜3と省略)、(B)TF、(C)表面処理シリカ、および(D)ジビニルベンゼンを、下記の表3に示した割合で用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0083】
【表3】

【0084】
実施例12
表4に示す組成のワニスを厚さ90μmのEガラスクロス(旭シュエーベル(株)製、0.01g/cm)に含浸し、送風乾燥機中で140℃、5分間乾燥して、重量0.012〜0.016g/cmの複合シートを得た。得られた複合シート8枚と実施例1と同様にして得られたフィルム11枚を、最外層がフィルム2枚となるように交互に積層し、温度140℃、圧力3MPaで30分間、温度200℃、圧力3MPaで2時間熱プレスすることにより、厚さ1.5mmの積層板を作製した。この積層板を用いて、誘電率(ε)および誘電正接(tanδ)の測定を行った。さらに、上記と同様に積層した複合シートおよびフィルムの外層に金属箔(銅箔)をマット面がフィルム側になるように積層して、上記と同条件で熱プレスすることにより、厚さ1.5mmの両面銅張板を作製した。得られた両面銅張板から切り出した試験片を用いて、はんだ耐熱性の試験を行った。
【0085】
実施例13
実施例12と同様にして得られた複合シート2枚の間に、実施例1と同様にして得られたフィルム20枚を積層し、複合シートの外層にそれぞれ3枚ずつのフィルムを積層した。これを実施例12と同様に熱プレスすることで厚さ1.5mmの積層板を作製し、誘電率(ε)および誘電正接(tanδ)の測定を行った。さらに、上記と同様に積層した複合シートおよびフィルムの外層に金属箔(銅箔)をマット面がフィルム側になるように積層して、上記と同条件で熱プレスすることにより、厚さ1.5mmの両面銅張板を作製した。得られた両面銅張板から切り出した試験片を用いて、はんだ耐熱性の試験を行った。各試験の結果を表4に示す。
【0086】
【表4】

【0087】
比較例8
樹脂組成物を表5のように替え、その樹脂を実施例12と同様に厚さ90μmのEガラスクロス(旭シュエーベル(株)製、0.01g/cm)に含浸することにより、重量0.02〜0.03g/cmの複合シートを得た。得られた複合シート8枚を積層し、実施例12と同様に熱プレスすることで、厚さ1.5mmの積層板および両面銅張板を作製した。
【0088】
比較例9
樹脂組成物を表5のように替え、その樹脂を実施例12と同様に厚さ90μmのEガラスクロス(旭シュエーベル(株)製、0.01g/cm)に含浸することにより、重量0.012〜0.016g/cmの複合シートを得た。得られた複合シート8枚と実施例1と同様にして得られたフィルム11枚を、最外層がフィルム2枚となるように交互に積層し、実施例12と同様に熱プレスすることで、厚さ1.5mmの積層板および両面銅張板を作製した。各試験の結果を表に示す。比較例8では寸法安定性は良好だが、シリカの影響で誘電特性が悪化した。比較例9では実施例12に比べ寸法安定性が悪かった。
【0089】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の樹脂組成物は、高周波特性の指標である誘電率・誘電正接に優れ、高耐熱性および寸法安定性という特徴を併せ持つため、特に高周波信号伝送に対応する積層板として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で示されるモノマー成分を含み重合体中において該モノマー成分が下記一般式(2)で示される構造をとる環状オレフィン系共重合体100重量部、
【化1】


【化2】

(式中、R1〜R12は水素原子、アルキル基またはハロゲン原子であり、それぞれ同一または異なっていてもよく、さらにR9またはR10とR11またはR12とは互いに環を形成してもよい。lは0または1以上の整数であり、R5〜R8が複数回繰り返される場合には、これらは各同一または異なっていてもよい)
(B)エチレン・α―オレフィン共重合体及び/またはプロピレン・α−オレフィン共重合体であって、ガラス転移温度が0℃以下である軟質共重合体50〜200重量部、
(C)無機フィラー50〜400重量部、
(D)下記一般式(3)で示される化合物1種以上を含む化合物10〜200重量部、
【化3】

(式中、A1〜A6はそれぞれ同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基であり、mは1〜2の整数である)
を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物を溶媒に溶解または分散させたワニス。
【請求項3】
請求項1に記載の樹脂組成物により形成されたシートまたはフィルム。
【請求項4】
請求項1に記載の樹脂組成物と補強繊維とを複合して形成されるシートまたはフィルム。
【請求項5】
請求項3記載のフィルムまたはシートを少なくとも一層以上含む基材の両面または片面に導体層を形成して得られる高周波回路用積層板。
【請求項6】
請求項4記載のフィルムまたはシートを少なくとも一層以上含む基材の基材の両面または片面に導体層を形成して得られる高周波回路用積層板。
【請求項7】
請求項4に記載のシートまたはフィルム2枚を含み、該シートまたはフィルムの両側に、補強繊維と複合していない請求項3記載のフィルムまたはシート1枚以上を積層して成る、請求項6に記載の高周波回路用積層板。

【公開番号】特開2007−297430(P2007−297430A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124545(P2006−124545)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】