説明

樹脂組成物並びにこれを用いた成形体、多層構造体及びバッグインボックス用内容器

【課題】高い耐屈曲性を有し、かつ、EVOHが本来有するガスバリア性や透明性に優れる成形体等を得ることができ、溶融成形性にも優れる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、(A)エチレン−ビニルアルコール共重合体、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂、及び(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含有し、上記(A)成分と、上記(B)成分及び上記(C)成分の合計との質量比〔(A)/((B)+(C))〕が、50/50以上90/10以下であり、上記(B)成分と上記(C)成分との質量比〔(B)/(C)〕が、50/50以上99/1以下である樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記することもある。)を含有する樹脂組成物並びにこれを用いた成形体、多層構造体及びバッグインボックス用内容器に関する。
【背景技術】
【0002】
EVOHは、酸素等のガスに対して優れたバリア性を示し、かつ溶融成形性にも優れることから、フィルムなどに加工され、食品包装材料等として広く利用されている。しかし、EVOHのフィルムは高い結晶性を有するために剛直であり、屈曲によりピンホールを生じやすいという欠点を有する。
【0003】
一方、近年、利便性、軽量、耐落下性などの利点から、ミネラルウォーターやワインなどの飲料用液体を輸送・保存するためにバッグインボックスが利用されるようになってきた。上記バッグインボックスは、ダンボール箱の内部に、液体注入口を設けたフレキシブルなプラスチックの内容器を収納させたものである。上記内容器としてEVOH層を有する多層構造体も用いられている。
【0004】
しかし、このバッグインボックスの内容器は、輸送時に繰り返しの屈曲に晒されるために、従来のEVOH層を有する多層構造体では輸送中にピンホールを生じる場合がある。そこで、この問題を解決すべく柔軟性及び耐屈曲性に優れるバッグインボックス用内容器が提案されている。
【0005】
例えば、特開平6−91826号公報(特許文献1)には、EVOHとポリアミド・ポリエーテル共重合体との混合物からなる樹脂組成物を中間層とするバッグインボックス用内容器が提案されている。特開平6−106688号公報(特許文献2)には、EVOH、ポリアミド・ポリエーテル共重合体及びポリアミド系樹脂の混合物からなる樹脂組成物を中間層とするバッグインボックス用内容器が提案されている。さらには、特開2010−254968号公報(特許文献3)には、EVOH、水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体及び極性基を有する水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の混合物からなる樹脂組成物を用いたバッグインボックス用バックが提案されている。
【0006】
しかしながら、上記各樹脂組成物は、耐屈曲性に優れる成形体やバッグインボックス用内容器は提供できるものの、得られる成形体や内容器等において、EVOHが本来有するガスバリア性、透明性等の特性や、熱安定性、溶融粘度(MFR)等の溶融成形性が低下するといった不都合を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−91826号公報
【特許文献2】特開平6−106688号公報
【特許文献3】特開2010−254968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の不都合に基づいてなされたものであり、高い耐屈曲性を有し、かつ、EVOHが本来有するガスバリア性や透明性に優れる成形体等を得ることができ、溶融成形性にも優れる樹脂組成物を提供することを目的とする。また、このような樹脂組成物を用いた成形体、多層構造体及びバッグインボックス用容器を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、(A)EVOH、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂、及び(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーを特定の割合で混合することにより、EVOHが本来有するガスバリア性、透明性等の特性や、溶融成形性を低下させることなく、耐屈曲性に優れる成形体及び多層構造体を提供できる樹脂組成物が得られることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、
(A)エチレン−ビニルアルコール共重合体、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂、及び(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含有し、
上記(A)成分と、上記(B)成分及び上記(C)成分の合計との質量比〔(A)/((B)+(C))〕が、50/50以上90/10以下であり、
上記(B)成分と上記(C)成分との質量比〔(B)/(C)〕が、50/50以上99/1以下である樹脂組成物である。
【0011】
当該樹脂組成物においては、(A)EVOH、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂、及び(A)EVOHと(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂との両方に相溶性を有する(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーが特定の割合で配合されている。その結果、当該樹脂組成物によれば、(A)EVOH中に、柔軟な(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂が微分散された状態となるため、(A)EVOHが本来有するガスバリア性や透明性などの特性を低下させることがない。また、(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、(A)EVOHと(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂とも反応しないため、(A)EVOHが本来有する溶融粘度(MFR)などの溶融成形性を損なうこともない。
【0012】
(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂が、スチレン系熱可塑性エラストマー又はα―オレフィン系重合体であることが好ましい。
【0013】
(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂がスチレン系熱可塑性エラストマーであり、このスチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン/イソプレン−スチレンブロック共重合体及びスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種のブロック共重合体の水素添加体であることが好ましい。
【0014】
また、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂がスチレン系熱可塑性エラストマーであり、このスチレン系熱可塑性エラストマーにおけるスチレンモノマー単位からなる重合体ブロック(以下、「スチレンモノマー重合体ブロック」と略記することもある)の含有率が10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0015】
(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂として上記化合物を採用することで、当該樹脂組成物において、EVOHの有する諸特性をより維持しつつ、耐屈曲性等もさらに高めることができる。
【0016】
(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーが、ポリアミド6からなるポリアミドブロックを有することが好ましい。
【0017】
また、(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーが、ポリテトラメチレングリコールからなるポリエーテルブロックを有することが好ましい。
【0018】
(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーとして上記の化合物を採用することで、(A)EVOH及び(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂との相溶性がさらに高まる。従って、この場合、当該樹脂組成物において、EVOHの有する諸特性を発揮しつつ、耐屈曲性もより高めることができる。
【0019】
本発明の成形体は、当該樹脂組成物からなる。当該成形体は、ガスバリア性、透明性、溶融成形性等が高く、かつ優れた耐屈曲性を有する。
【0020】
本発明の多層構造体は、当該樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層構造体である。当該多層構造体は、ガスバリア性、透明性、溶融成形性が高く、かつ優れた耐屈曲性を有する。
【0021】
本発明のバッグインボックス用内容器は、当該多層構造体からなる。当該バッグインボックス用内容器は、ガスバリア性、透明性等が高く、かつ、優れた耐屈曲性を有する。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明の樹脂組成物は、高い耐屈曲性を有し、かつ、EVOHが本来有するガスバリア性や透明性に優れる成形体等を得ることができ、溶融成形性にも優れる樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明の成形体、多層構造体及びバッグインボックス用内容器は、このような樹脂組成物から形成されているため、高い耐屈曲性を有し、ガスバリア性、透明性及び溶融成形性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の樹脂組成物、成形体、多層構造体及びバッグインボックス用内容器の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において特定の機能を発現するものとして具体的な材料を例示する場合があるが、本発明に用いることができる材料はこれらに限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)EVOH、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂、及び(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーを特定の質量比で含有する。当該樹脂組成物は、さらにその他の成分を含有していてもよい。
【0025】
[(A)EVOH]
(A)EVOHは、主にエチレン単位とビニルアルコール単位とを有する共重合体である。(A)EVOHは、例えば、エチレンとビニルエステルとからなる共重合体をアルカリ触媒等を用いてケン化して得られる。ビニルエステルとしては、酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。
【0026】
また、EVOHは、共重合成分として、例えばビニルシラン化合物0.0002〜0.2モル%を含有することができる。ここで、ビニルシラン系化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシランが挙げられる。これらのなかでも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。さらに、EVOHは、本発明の目的が阻害されない範囲で、他の共単量体、例えば、プロピレン、ブチレン、あるいは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、若しくは(メタ)アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸又はそのエステル、及びN−ビニルピロリドンなどのビニルピロリドンを共重合することもできる。
【0027】
EVOHのエチレン含有率は、20モル%以上60モル%以下であることが好ましく、25モル%以上55モル%以下であることがより好ましく、27モル%以上50モル%以下であることがさらに好ましい。エチレン含量が20モル%未満では、当該樹脂組成物の溶融成形性が低下する。逆に、エチレン含有率が60モル%を超えると、当該樹脂組成物のガスバリア性が低下する。
【0028】
また、EVOHのケン化度は、特に限定されるものではないが、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることがさらに好ましい。EVOHのケン化度を上記の範囲とすることが、当該樹脂組成物のガスバリア性を維持する観点から好ましい。
【0029】
(A)EVOHの溶融粘度は、210℃、2160g荷重下におけるMFRが、1.0〜100g/10分であることが好ましく、2.0〜60g/10分であることがより好ましい。このような溶融粘度の(A)EVOHを用いることで、当該樹脂組成物の溶融成形性等をより高めることができる。
【0030】
(A)EVOHは、単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0031】
((A’)変性EVOH)
(A)EVOHとして、EVOHを(E)炭素−炭素二重結合を有するエポキシ化合物(以下、「(E)エポキシ化合物」と略記することがある。)で変性して得られる(A’)変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、「(A’)変性EVOH」と略記することがある。)を用いてもよい。(A’)変性EVOHは結晶化度が低く柔軟であるために、当該樹脂組成物から得られる成形体及び多層積層体は優れた耐屈曲性を有する。
【0032】
(A’)変性EVOHは、上記(A)EVOHを炭素−炭素二重結合を有するエポキシ化合物(E)で変性して得られるものであり、例えば、EVOHの水酸基にエポキシ化合物(E)が反応したものが挙げられる。
【0033】
このような(A’)変性EVOHは、(A)EVOHを含む樹脂(以下、「EVOH樹脂」と略記することがある)と(E)炭素−炭素二重結合を有するエポキシ化合物とを押出機内で反応させることによって得ることができる。なお、その際にEVOH樹脂が過剰にアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含有していると、得られる(A’)変性EVOHが着色したり、粘度低下によって成形性が低下するおそれがある。また、後述するように、上記反応を触媒を用いて行う場合には、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩が上記触媒を失活させることがある。そのため、EVOH樹脂中のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の含有量はできるだけ少ないことが好ましい。
【0034】
上記(E)エポキシ化合物としては、分子中にエポキシ基を1個有し、かつ分子内に炭素−炭素二重結合を1個又は複数個有する一価のエポキシ化合物が好ましい。(E)エポキシ化合物の分子量は500以下であることが好ましい。分子内にエポキシ基を2個以上有する二価以上のエポキシ化合物は、EVOHと反応する際に架橋反応を引き起こす場合がある。
【0035】
上記炭素−炭素二重結合の種類としては、反応性の観点から、1置換オレフィンであるビニル基、2置換オレフィンであるビニレン基若しくはビニリデン基、又は3置換オレフィンであることが好ましく、ビニル基、ビニレン基、又はビニリデン基であることがより好ましく、ビニル基であることがさらに好ましい。
【0036】
また、(E)エポキシ化合物は、変性の際に過剰に添加したものを、得られた(A’)変性EVOHから容易に除去できることが好ましい。このような除去方法の1つとしては、押出機のベントから(E)エポキシ化合物を揮発させる方法が挙げられるため、(E)エポキシ化合物の沸点は250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。また、(E)エポキシ化合物の炭素数は4〜10であることが好ましい。このような(E)エポキシ化合物の具体例としては、1,2−エポキシ−3−ブテン、1,2−エポキシ−4−ペンテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテル、エチレングリコールアリルグリシジルエーテルなどが挙げられ、アリルグリシジルエーテルが好ましい。さらに、上記の除去方法の別の方法としては、押出機のベントから水洗除去する方法が挙げられ、この場合、(E)エポキシ化合物は水に可溶であることが好ましい。
【0037】
(A)EVOHと(E)エポキシ化合物との反応の条件は特に制限されないが、国際公開第02/092643号に記載された方法と同様に、押出機内で行うことが好ましい。このとき、触媒を添加することが好ましく、その場合には、反応後にカルボン酸塩等の触媒失活剤を添加することが好ましい。押出機内で溶融状態にあるEVOH樹脂に対して(E)エポキシ化合物(E)を添加すると、(E)エポキシ化合物の揮散を防止することができるとともに反応量を制御しやすくなることから好ましい。
【0038】
(A’)変性EVOHにおける(E)エポキシ化合物の変性量は、EVOHのモノマー単位の全モル数に対して0.1〜10モル%であることが好ましく、0.3〜5モル%であることがより好ましく、0.5〜3モル%であることがさらに好ましい。変性量が0.1モル%未満である場合は変性による効果が得られないおそれがある。一方、10モル%を超える場合は熱安定性が低下するおそれがある。
【0039】
(A’)変性EVOHの溶融粘度は、210℃、2160荷重下におけるメルトフローレート(MFR)が、1.0〜100g/10分であることが好ましく、2.0〜60g/10分であることがより好ましく、3.0〜30g/10分であることがさらに好ましい。このような溶融粘度の(A’)変性EVOHを用いることで、当該樹脂組成物の溶融成形性等をより高めることができる。
【0040】
[(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂]
(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、α−オレフィン共重合体などのポリオレフィン;天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴムなどのゴム;スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系エラストマーなどが挙げられる。これらの中でも、当該樹脂組成物から得られる成形体及び多層構造体の耐屈曲性が向上する観点から、α−オレフィン共重合体及びスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0041】
(α−オレフィン共重合体)
α−オレフィン共重合体としては、特に限定されるものではなく、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、エチレン−ブテン共重合体(EB)、プロピレン−ブチレン共重合体(PB)、ブチレン−エチレン共重合体(BE)等を挙げることができる。これらの中でも、柔軟性に優れ、当該樹脂組成物から得られる成形体及び多層構造体の耐屈曲性が向上する観点から、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、エチレン−ブテン共重合体(EB)が好ましい。
【0042】
(スチレン系熱可塑性エラストマー)
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。スチレン系熱可塑性エラストマーは、通常、ハードセグメントとなるスチレンモノマー重合体ブロック(b1)と、ソフトセグメントとなる共役ジエン化合物重合体ブロック又はその水添ブロック(b2)とを有する。このスチレン系熱可塑性エラストマーの構造としては、b1−b2で表されるジブロック構造、b1−b2−b1若しくはb2−b1−b2で表されるトリブロック構造、b1−b2−b1−b2で表されるテトラブロック構造、又はb1とb2とが計5個以上直鎖状に結合しているポリブロック構造であってもよい。
【0043】
上記スチレンモノマー重合体ブロック(b1)に使用されるスチレン系モノマーとしては、特に限定されるものではなく、スチレン及びその誘導体等を挙げることができる。具体的には、例えば、スチレン、α―メチルスチレン、2−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、t−ブトキシスチレン等のスチレン類;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類などのビニル基含有芳香族化合物;インデン、アセナフチレン等のビニレン基含有芳香族化合物などを挙げることができる。これらの中でも、スチレンが好ましい。スチレン系モノマーは1種のみでも良く、2種以上であっても良い。
【0044】
また、上記共役ジエン化合物重合体ブロック(b2)に使用される共役ジエン化合物も、特に限定されるものではない。このような共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン等を挙げることができる。これらの中でも、ブタジエンが好ましい。共役ジエン化合物は1種のみでも良く、2種以上であっても良い。さらに、他の共単量体、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、スチレンを共重合することもできる。また、共役ジエン化合物重合体ブロック(b2)は、部分的又は完全に水素添加されている水素添加体であっても良い。
【0045】
スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレンモノマー重合体ブロック単位(b1)の含有率は、通常、5質量%以上80質量%以下であり、耐屈曲性の観点から10質量%以上50質量%以下が好ましく、20質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0046】
スチレン系熱可塑性エラストマーの共役ジエン化合物重合体ブロック及び/又はその水添ブロック(b2)の含有率は、通常、20質量%以上95質量%以下であり、耐屈曲性の観点から50質量%以上90質量%以下が好ましく、60質量%以上80質量%以下がより好ましい。
【0047】
スチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SI)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン/イソプレン−スチレンブロック共重合体(SB/IS)、及びスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)並びにその水素添加体が挙げられる。特に、耐候性等に優れる観点からスチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加体(SEP)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加体(SEB)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加体(SEPS)、スチレン−ブタジエン/イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加体(SEEPS)、及びスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加体(SEBS)が好ましく、柔軟性に優れ、樹脂組成物から得られる成形体及び多層構造体の耐屈曲性が向上する観点から、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加体(SEBS)がさらに好ましい。
【0048】
(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂の溶融粘度は、210℃、2160g荷重下におけるMFRが、1.0〜100g/10分であることが好ましく、2.0〜60g/10分であることがより好ましい。このような溶融粘度の(B)熱可塑性樹脂を用いることで、当該樹脂組成物の溶融成形性、得られる成形体等の耐屈曲性や透明性等をより高めることができる。
【0049】
(A)EVOHと(B)熱可塑性樹脂との溶融粘度(210℃、2160g荷重下におけるMFR)の差としては、30g/10分以下が好ましく、10g/10分以下がより好ましい。このように、(A)EVOHの溶融粘度と、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂の溶融粘度とが近い程、溶融混練が容易となり、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂が(A)EVOH中に微分散した状態となり易い。このような樹脂組成物によれば、耐屈曲性や透明性に優れた成形体や多層構造体が得られやすい。
【0050】
[ポリアミド系熱可塑性エラストマー(C)]
ポリアミド系熱可塑性エラストマー(C)としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。ポリアミド系熱可塑性エラストマー(C)は、ハードセグメントとなるポリアミドブロック(c1)と、ソフトセグメントとなるポリエーテルブロック(c2)とを有するものが好ましい。
【0051】
ポリアミドブロック(c1)としては、ポリアミド6、ポリアミド10、ポリアミド6,6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,12、ポリアミド6,10、ポリアミド6/6,6共重合体、ポリアミド6,6/6,10共重合体、ポリアミド6,11、ポリアミド6,6/6,10/6共重合体等が挙げられるが、(A)EVOHとの相溶性の観点からポリアミド6が好ましい。
【0052】
ポリエーテルブロック(c2)としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリブチレングリコール(PBG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のポリアルキレングリコールが挙げられる。これらの中でも、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂との相溶性の観点からポリテトラメチレングリコール(PTMG)が好ましい。
【0053】
(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーのポリアミドブロック(c1)の含有率は、通常20質量%以上80質量%以下であり、30質量%以上70質量%以下が好ましく、40質量%以上60質量%以下がさらに好ましい。ポリアミドブロック(c1)の含有率を上記範囲とすることで、(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーと(A)EVOHとの相溶性をより高めることができる。
【0054】
(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーのポリエーテルブロック(c2)の含有率は、通常20質量%以上80質量%以下であり、30質量%以上70質量%以下が好ましく、40質量%以上60質量%以下がさらに好ましい。ポリエーテルブロック(c2)の含有率を上記範囲とすることで、(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーと(B)極性基を持たない熱可塑性樹脂との相溶性をより高めることができる。
【0055】
(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーの溶融粘度は、210℃、2160g荷重下におけるMFRが、1.0〜100g/10分であることが好ましく、2.0〜60g/10分であることがより好ましい。このような溶融粘度の(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーを用いることで、当該樹脂組成物の溶融成形性、得られる成形体等の耐屈曲性や透明性等をより高めることができる。
【0056】
(A)EVOH、(B)熱可塑性樹脂及び(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーの溶融粘度(210℃、2160g荷重下におけるMFR)において、最大と最小との差が50g/10分以下が好ましく、30g/10分以下がより好ましく、20g/10分以下がさらに好ましい。このように、(A)EVOHの溶融粘度、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂の溶融粘度、及び(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーの溶融粘度が近い程、溶融混練が容易となり、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂が(A)EVOH中に微分散した状態となり易い。このような樹脂組成物によれば、耐屈曲性や透明性に優れた成形体や多層構造体が得られやすい。
【0057】
[配合比]
当該樹脂組成物において、(A)EVOH、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂及び(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーの合計との質量比[(A)/((B)+(C))]は、50/50以上90/10以下である。この範囲は、ガスバリア性と耐屈曲性とを両立する観点から、60/40以上80/20以下であることが好ましく、65/35以上75/35以下であることがより好ましい。(A)EVOHの含有量がこの範囲より少ないと、当該樹脂組成物のマトリックスが(A)EVOHではなくなるためガスバリア性が著しく低下する。また、(A)EVOHの含有量がこの範囲より多いと、耐屈曲性の改善効果が得られにくい。
【0058】
当該樹脂組成物において、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂と(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーとの質量比[(B)/(C)]は、50/50以上99/1以下である。この範囲は、耐屈曲性と透明性及び溶融成形性とを両立する観点から60/40以上97/3以下が好ましく、65/30以上93/7以下がより好ましい。(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂の含有量がこの範囲より少ないと、耐屈曲性の改善効果が得られにくく、また、ガスバリア性が低下する。逆に、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂の含有量がこの範囲より多いと、(A)EVOH中への分散性が悪くなり、良好な成形体を得ることができなくなる。
【0059】
当該樹脂組成物では、(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーが、(A)EVOHと、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂との相容化剤として作用していると考えられる。従って、当該樹脂組成物においては、(A)〜(C)の各成分の含有比率を上記のように調節することにより、マトリックスである(A)EVOH中に、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂が微分散した海島構造をとると考えられる。当該樹脂組成物は、このような分散構造をとることで、EVOHが本来有する性能を維持しつつ、耐屈曲性に優れる成形体等を得ることができると考えられる。
【0060】
(A)〜(C)成分を以上のような質量比で含有する当該樹脂組成物は、EVOHが本来有する溶融成形性を維持している。具体的には、当該樹脂組成物の210℃、2160gにおけるメルトフローレート(MFR)が、1.0〜100g/10分であることが好ましく、2.0〜60g/10分であることがより好ましい。当該樹脂組成物としてのMFRが上記範囲となることにより、溶融成形時のトラブルが少なく、良好な成形体を得ることができる。
【0061】
[その他の成分]
当該樹脂組成物は、熱安定性や粘度調整の観点で種々の酸や金属塩等の化合物を含有していることが好ましい。この化合物としては、アルカリ金属塩、カルボン酸、リン酸化合物及びホウ素化合物などであり、具体的な例としては次のようなものが挙げられる。なお、これらの化合物は、あらかじめ(A)EVOHと混合した状態のものが用いられる場合がある。
アルカリ金属塩:酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩等
カルボン酸:シュウ酸、コハク酸、安息香酸、クエン酸、酢酸、乳酸等
リン酸化合物:リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等
ホウ素化合物:ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等
【0062】
また、当該樹脂組成物には、必要に応じて上記以外の各種添加剤が配合されていてもよい。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー及び他の高分子化合物を挙げることができ、これらを本発明の作用効果が阻害されない範囲でブレンドすることができる。添加剤の具体的な例としては次のようなものが挙げられる。
酸化防止剤:2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’, 5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)等
可塑剤:フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル等
紫外線吸収剤:エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等
帯電防止剤:ペンタエリスリトールモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、ポリエチレンオキシド等
滑剤:エチレンビスステアロアミド、ブチルステアレート
【0063】
また、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、当該樹脂組成物に、(A)EVOH、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂、及び(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を配合していてもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリスチレンなどが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、これら樹脂の変性物の単品又は混合物などが挙げられる。
【0064】
[樹脂組成物の調製]
当該樹脂組成物の調製方法は、特に限定されないが、(A)EVOH(又はEVOHを主成分として含む樹脂、以下同様)、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂、及び(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーをドライブレンドして溶融混練する方法、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂と(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーとを溶融混練し造粒したペレットを、(A)EVOHにドライブレンドしてから溶融混練する方法、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂と(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマー(C)とを(A)EVOHの一部に高濃度で配合して造粒したマスターバッチを作成し、それを残りの(A)EVOHとドライブレンドして溶融混練する方法などが挙げられる。これらの中でも、(A)EVOH、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂、及び(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーをドライブレンドして溶融混練する方法が、各成分を均一にブレンドすることができるため好ましい。
【0065】
当該樹脂組成物を調製するための溶融混練の手段としては、特に限定されないが、例えば、リボンブレンダー、高速ミキサーコニーダー、ミキシングロール、押出機(単軸又は二軸押出機等)、インテンシブミキサーなどが挙げられる。これらの中でも、単軸又は二軸押出機を用いる方法が好ましい。溶融混練の温度は、用いる樹脂の種類、分子量、組成物の配合割合又は成形機の種類などにより適宜選択されるが、通常、170〜350℃の範囲である。
【0066】
押出機を用い溶融混練する際は、混練度の高い押出機を使用し、ホッパー口を窒素シールし、低温で押出すことが好ましい。このようにすることで、分散状態を均一にし、ゲルや異物の発生や混入を抑制することができる。
【0067】
[成形体]
本発明の成形体は、当該樹脂組成物からなる。当該成形体は、ガスバリア性、透明性、溶融成形性等が高く、かつ優れた耐屈曲性を有する。
【0068】
当該成形体を得るための成形機としては、例えば、溶融押出成形機、圧縮成形機、トランスファ成形機、射出成形機、吹込成形機、熱成形機、回転成形機、ディップ成形機などを挙げることができる。また、当該成形体は、具体的には、フィルム、シート、チューブ、ボトル、カップ、パイプなどを挙げることができる。成形に際しての押出温度は、用いる樹脂の種類、分子量、組成物の配合割合又は成形機の種類などにより適宜選択されるが、通常、170〜350℃の範囲である。
【0069】
[多層構造体]
本発明の多層構造体は、当該樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層構造体である。当該多層構造体は、ガスバリア性、透明性、溶融成形性が高く、かつ優れた耐屈曲性を有する。従って、当該多層構造体は、フレキシブルな包装材として有用である。
【0070】
当該多層構造体の層構造としては、特に限定されないが、本発明の樹脂組成物から得られる層をE、接着性樹脂から得られる層をAd、熱可塑性樹脂から得られる層をTで表わした場合、以下の層構成が例示できる。ここで、接着性樹脂としては不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリオレフィンが好適に用いられる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィンが好適である。
2層 Ad/E
3層 T/Ad/E、Ad/E/Ad、E/Ad/E
4層 T/Ad/E/Ad、Ad/E/Ad/E
5層 E/Ad/T/Ad/E、T/Ad/E/Ad/T、
Ad/E/Ad/E/Ad、T/Ad/E/Ad/E
6層 T/Ad/E/Ad/E/Ad
7層 T/Ad/E/Ad/E/Ad/T
【0071】
また、当該多層構造体において、熱可塑性樹脂及び/又は接着性樹脂は、多層構造体のスクラップで代用することもできる。また、他のポリオレフィン成形体のスクラップを混合して使用することもできる。
【0072】
当該多層構造体を製造する方法としては、特に限定されない。例えば、当該樹脂組成物から得られる成形体(フィルム、シート等)に熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、当該樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法、当該樹脂組成物と熱可塑性樹脂とを共射出する方法、当該樹脂組成物から成形された成形体と他の基材のフィルム、シートとを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物等の公知の接着剤を用いてラミネートする方法等が挙げられる。
【0073】
[バッグインボックス用内容器]
本発明のバッグインボックス用内容器は、当該多層構造体を備える。当該バッグインボックス用内容器としては、例えば、液体注入口が他の樹脂組成物から成形され、その他の容器本体が当該多層構造体で形成されたものを挙げることができる。なお、内容器全体が当該多層構造体から形成されていてもよい。
【0074】
バッグインボックスは、通常、輸送時等に繰り返しの屈曲に晒される。そこで、当該バッグインボックス用内容器によれば、優れた耐屈曲性を有する当該多層構造体を備えるため、優れた耐久性を発揮することができる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0076】
なお、得られた樹脂組成物等の評価は、以下の方法にて行った。また、溶融混練条件及び成膜条件を以下に示す。
【0077】
[(A)EVOHのエチレン含有量及びケン化度]
DMSO−dを溶媒としたH−NMR測定(日本電子製JNM−GX−500型を使用)により求めた。
【0078】
[メルトフローレート(MFR)]
メルトインデクサ(宝工業製L244)を用い、温度210℃、荷重2160gの条件下で、試料の流出速度(g/10分)を測定し求めた。
【0079】
[溶融混練条件]
(A)EVOH、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂、及び(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーをドライブレンドした後に、以下の条件で溶融混練、造粒、乾燥し、当該樹脂組成物のペレットを得た。
装置:26mmφ二軸押出機(東洋精機製作所製ラボプラストミル15C300)
L/D:25
スクリュー:同方向完全噛合型
ダイスホール数:2ホール(3mmφ)
押出し温度(℃):C1=200、C2〜C5=230、Die=230
回転数:100rpm
吐出量:約5kg/hr
乾燥:熱風乾燥80℃/6hr
【0080】
[製膜条件]
得られた樹脂組成物を以下の条件で製膜し、厚み20μmの単層フィルムを得た。
装置:20mmφ単軸押出機(東洋精機製作所製ラボプラストミル15C300)
L/D:20
スクリュー:フルフライト
ダイ:300mmコートハンガーダイ
押出し温度(℃):C1=200、C2〜C5=230、Die=230
スクリーン:50/100/50
冷却ロール温度:80℃
引取り速度:3.0〜3.5m/分
フィルム厚み:20μm
【0081】
[耐屈曲性]
得られた20μmのフィルムを20℃/65%RHの条件下で調湿したのち、理学工業製のゲルボフレックステスターを使用し、屈曲性の測定を行った。具体的には、まず、12インチ×8インチのフィルムを直径3.5インチの円筒状とした。この両端を把持し、初期把持間隔7インチ、最大屈曲時の把持間隔1インチ、ストロークの最初の3.5インチで角度440度のひねりを加え、その後2.5インチは直進水平運動である動作の繰り返しからなる往復運動を40回/分の早さで行った。最初のピンホールが発生するまでの屈曲回数について測定した。
【0082】
[内部ヘイズ]
得られた厚み20μmのフィルムを用いて、ASTM D1003−61に準じて、ポイック積分球式光線透過率・全光線反射率計(村上色彩技術研究所製HR−100型)を使用し、内部ヘイズ値を測定した。
【0083】
[酸素透過量(OTR)]
得られた厚み20μmのフィルムを20℃/65%RHの条件下で調湿したのち、酸素透過度測定装置(Modern Control製OX−Tran2/20)を使用し、20℃/65%RHの条件下で酸素透過度(OTR)を測定した。
【0084】
(実施例1)
(A)EVOHとしてEVOH(クラレ製、エチレン含有量32モル%、ケン化度99モル%以上、MFR3.7g/10分(210℃、2160g荷重))70質量部、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂としてSEBS(旭化成ケミカルズ製タフテックH1041、スチレンモノマー重合体ブロック含有率30質量%、MFR1.8g/10分(210℃、2160g荷重))25質量部、(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマー(C)としてPA6−PTMGブロック共重合体(アルケマ製ぺバックスMP1878、MFR11.8g/10分(210℃、2160g荷重))5質量部をドライブレンドし、上述した方法により、二軸押出機を使用して溶融混練、造粒し、熱風乾燥機にて80℃/6hr乾燥させ、樹脂組成物(1)(MFR4.5g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(1)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(1)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(1)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を、上述の方法により評価し、結果を表1にまとめた。
【0085】
(実施例2)
(A)EVOHとしてEVOH(クラレ製、エチレン含有量27モル%、ケン化度99モル%以上、MFR4.0g/10分(210℃、2160g荷重))を用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(2)(MFR4.8g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(2)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(2)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(2)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表1にまとめた。
【0086】
(実施例3)
配合比を(A)EVOH50質量部、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂40質量部、(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマー10質量部とした以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(3)(MFR7.6g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(3)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(3)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(3)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表1にまとめた。
【0087】
(実施例4)
配合比を(A)EVOH90質量部、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂8質量部、(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマー2質量部とした以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(4)(MFR3.8g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(4)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(4)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(4)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表1にまとめた。
【0088】
(実施例5)
配合比を(A)EVOH60質量部、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂30質量部、(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマー10質量部とした以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(5)(MFR6.4g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(5)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(5)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(5)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表1にまとめた。
【0089】
(実施例6)
配合比を(A)EVOH80質量部、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂15質量部、(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマー5質量部とした以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(6)(MFR4.1g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(6)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(6)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(6)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表1にまとめた。
【0090】
(実施例7)
配合比を(A)EVOH70質量部、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂15質量部、(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマー15質量部とした以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(7)(MFR4.5g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(7)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(7)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(7)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表1にまとめた。
【0091】
(実施例8)
配合比を(A)EVOH70質量部、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂29質量部、(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマー1質量部とした以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(8)(MFR4.5g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(8)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(8)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(8)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表1にまとめた。
【0092】
(実施例9)
配合比を(A)EVOH70質量部、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂20質量部、(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマー10質量部とした以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(9)(MFR4.5g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(9)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(9)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(9)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表1にまとめた。
【0093】
(実施例10)
配合比を(A)EVOH70質量部、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂8質量部、(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマー28質量部とした以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(10)(MFR4.5g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(10)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(10)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(10)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表1にまとめた。
【0094】
(実施例11)
(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂としてスチレン含有量の異なるSEBS(旭化成ケミカルズ製タフテックH1043、スチレンモノマー重合体ブロック含有率67質量%、MFR0.18g/10分(210℃、2160g荷重))を用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(11)(MFR4.5g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(11)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(11)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(11)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表1にまとめた。
【0095】
(実施例12)
(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂としてEP(三井化学製タフマーP0280、MFR3.8g/10分(210℃、2160g荷重))を用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(12)(MFR3.4g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(12)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(12)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(12)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表1にまとめた。
【0096】
(実施例13)
(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂としてEB(三井化学製タフマーA4085、MFR2.9g/10分(210℃、2160g荷重))を用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(13)(MFR3.4g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(13)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(13)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(13)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表1にまとめた。
【0097】
(実施例14)
(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしてPA6−PEGブロック共重合体(アルケマ製MH1657、MFR29.1g/10分(210℃、2160g荷重))を用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(15)(MFR5.0g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(14)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(14)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(14)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表1にまとめた。
【0098】
(実施例15)
配合比を(A)EVOH70質量部、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂20質量部、(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマー10質量部とした以外は実施例14と同様にして、樹脂組成物(15)(MFR5.0g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(15)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(15)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(15)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表1にまとめた。
【0099】
(比較例1)
樹脂組成物として、単独のEVOH(クラレ製、エチレン含有量32モル% 、ケン化度99モル%以上、MFR3.7g/10分(210℃、2160g荷重))を用いた以外は実施例1と同様にして、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(16)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(16)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表2にまとめた。
【0100】
(比較例2)
配合比を(A)EVOH40質量部、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂50質量部、(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマー10質量部とした以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(17)(MFR8.2g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(17)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(17)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(17)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表2にまとめた。
【0101】
(比較例3)
配合比を(A)EVOH95質量部、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂4質量部、(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマー1質量部とした以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(18)(MFR3.7g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(18)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(18)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(18)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表2にまとめた。
【0102】
(比較例4)
(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーを用いずに、配合比を(A)EVOH70質量部、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂30質量部とした以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(19)を得た。続いて、樹脂組成物(19)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルムを作成しようとしたが、厚み斑が激しく、フィルムに穴が開くなどして良好なフィルムを得ることができなかった。
【0103】
(比較例5)
(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーを用いずに、配合比を(A)EVOH70質量部、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂30質量部とした以外は実施例12と同様にして、樹脂組成物(20)を得た。続いて、樹脂組成物(19)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルムを作成しようとしたが、厚み斑が激しく、フィルムに穴が開くなどして良好なフィルムを得ることができなかった。
【0104】
(比較例6)
配合比を(A)EVOH70質量部、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂10質量部、(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマー20質量部とした以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(21)(MFR4.1g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(21)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(21)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(21)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表2にまとめた。
【0105】
(比較例7)
(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂を用いずに、配合比を(A)EVOH70質量部、(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマー30質量部とした以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(22)(MFR3.5g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(22)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(22)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(22)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表2にまとめた。
【0106】
(比較例8)
(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂を用いずに、配合比を(A)EVOH70質量部、(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマー30質量部とした以外は実施例14と同様にして、樹脂組成物(23)(MFR6.4g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(23)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(23)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(23)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表2にまとめた。
【0107】
(比較例9)
(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーの代わりに、無水マレイン酸変性SEBS(旭化成ケミカルズ製タフテックM1911、MFR1.9g/10分(210℃、2160g荷重))を用いた以外は実施例9と同様にして、樹脂組成物(24)(MFR0.8g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(24)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(24)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(24)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表2にまとめた。
【0108】
(比較例10)
(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーの代わりに、ナイロンアイオノマー(デュポン製ハイミランAM7932、MFR4.3g/10分(210℃、2160g荷重))を用いた以外は実施例12と同様にして、樹脂組成物(25)(MFR2.6g/10分(210℃、2160g荷重))を得た。続いて、樹脂組成物(25)を用い、上述した方法により、単軸押出機を使用し、20μmの単層フィルム(25)を作成した。
得られた20μmの単層フィルム(25)の耐屈曲性、内部ヘイズ、酸素透過度を上述の方法により評価し、結果を表2にまとめた。
【0109】
【表1】

【0110】
【表2】

【0111】
以上の実施例より、本発明の樹脂組成物はEVOH本来が有するガスバリア性、透明性などの特性や、溶融粘度(MFR)などの溶融成形性を低下させることなく、かつ耐屈曲性に優れる単層フィルムを提供できることがわかる。
【0112】
一方、比較例1のEVOHそのものからなる単層フィルムでは耐屈曲性が悪く、比較例2のように配合比[(A)/((B)+(C))]のEVOH(A)が本発明の範囲より少ないと酸素ガスバリア性が大きく低下し、また比較例3のように配合比[(A)/((B)+(C))]のEVOH樹脂(A)が本発明の範囲より多いと耐屈曲性改善効果が不十分である。
【0113】
比較例4、5のようにポリアミド系熱可塑性エラストマー(C)を用いないと、極性基を有さない熱可塑性樹脂(B)の分散性が悪いために溶融成形性が低下し、製膜不良となる。比較例6、7、8のように配合比[(B)/(C)]のポリアミド系熱可塑性エラストマー(C)が本発明の範囲より多いとガスバリア性が大きく低下する。
【0114】
比較例9のようにポリアミド系熱可塑性エラストマー(C)の代わりに相容化剤として無水マレイン酸変性SEBSを用いると透明性が低下し、さらに溶融粘度(MFR)も低くなる。比較例10のようにポリアミド系熱可塑性エラストマー(C)の代わりに相容化剤としてナイロンアイオノマーを用いると透明性が悪いフィルムが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の樹脂組成物は、優れた透明性、酸素ガスバリア性、及び溶融成形性を有し、耐屈曲性に優れる成形体及び多層構造体を提供できる。本発明の樹脂組成物からなる多層構造体はフレキシブルな包装材として有用である。特に優れた耐屈曲性を有することから、輸送時に繰り返しの屈曲に晒されるバッグインボックス用内容器として有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン−ビニルアルコール共重合体、(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂、及び(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含有し、
上記(A)成分と、上記(B)成分及び上記(C)成分の合計との質量比〔(A)/((B)+(C))〕が、50/50以上90/10以下であり、
上記(B)成分と上記(C)成分との質量比〔(B)/(C)〕が、50/50以上99/1以下である樹脂組成物。
【請求項2】
(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂が、スチレン系熱可塑性エラストマー又はα―オレフィン系重合体である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂がスチレン系熱可塑性エラストマーであり、
このスチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン/イソプレン−スチレンブロック共重合体及びスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種のブロック共重合体の水素添加体である請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(B)極性基を有さない熱可塑性樹脂がスチレン系熱可塑性エラストマーであり、
このスチレン系熱可塑性エラストマーにおけるスチレンモノマー単位からなる重合体ブロックの含有率が10質量%以上50質量%以下である請求項2又は請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーが、ポリアミド6からなるポリアミドブロックを有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(C)ポリアミド系熱可塑性エラストマーが、ポリテトラメチレングリコールからなるポリエーテルブロックを有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる成形体。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層構造体。
【請求項9】
請求項8に記載の多層構造体を備えるバッグインボックス用内容器。

【公開番号】特開2013−18875(P2013−18875A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153437(P2011−153437)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】