説明

樹脂組成物及び樹脂硬化物

【課題】電気絶縁性及び熱伝導性が高い均質な樹脂硬化物を与え、且つ成形性に優れた樹脂組成物を提供する。
【解決手段】メソゲン基を含む液晶ユニットと、前記液晶ユニットの両端に結合した柔軟ユニットと、末端の重合性基とを有する化合物を含有する樹脂組成物であって、前記柔軟性ユニットは、以下の式:
【化1】


(式中、nは18以下の整数である)からなる群より選択される一種以上の基を含み、且つ前記液晶ユニットの一端に結合した前記柔軟ユニットと前記液晶ユニットの他端に結合した前記柔軟ユニットとが異なることを特徴とする樹脂組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び樹脂硬化物に関し、特に、電気絶縁性及び熱伝導性に優れた絶縁シートの製造に使用される樹脂組成物及び樹脂硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化・小型化・軽量化に伴い、電子部品の高密度化が進んでいる。その結果、電子部品内での発熱量が著しく増大し、電子部品の信頼性及び寿命を低下させる要因となっている。このように、電子機器における熱問題は極めて重要な課題であり、その対策に使用される放熱材料には熱伝導性の更なる向上が求められている。放熱材料の中でも、特に電気絶縁性が求められる分野では樹脂が放熱材料として使用されているが、この樹脂の熱伝導性向上策としては、熱伝導性の高い無機セラミックスなどの無機充填材を添加する手法が一般的である。しかしながら、この方法では、添加量の制限から十分な熱伝導性を得ることが難しいため、樹脂自体の熱伝導性を向上させることが望まれている。
【0003】
上記のように樹脂自体の熱伝導率を向上させることは極めて重要な課題であり、熱伝導率を向上させた樹脂硬化物を与えるものとして、メソゲン基を有するエポキシ樹脂を含有する樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。この樹脂組成物から得られる樹脂硬化物は、メソゲン骨格が規則的に配列するため、無機充填剤を添加しなくても0.6W/m・K以上の高い熱伝導率を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4118691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているようなメソゲン基を有するエポキシ樹脂は融点が高く、エポキシ樹脂用硬化剤と均一に混合して樹脂組成物を調製するためには高温で融解させる必要がある。このようなエポキシ樹脂を高温下でエポキシ樹脂用硬化剤と混合した場合、エポキシ樹脂の硬化反応が急速に進み、ゲル化時間が短くなる。つまり、これらの成分の均一混合が難しいため、均一な樹脂組成物を調製できず、その結果、均質な樹脂硬化物が得られないという問題がある。また、シート状の樹脂硬化物(例えば、絶縁シート)を製造する場合、溶剤を添加した樹脂組成物が一般的に使用されるところ、特許文献1に記載されているようなエポキシ樹脂は、溶剤に対する溶解性が低いため、このエポキシ樹脂を用いた樹脂組成物ではシート状に成形することが難しいという問題もある。
【0006】
従って、本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、電気絶縁性及び熱伝導性が高い均質な樹脂硬化物を与え、且つ成形性に優れた樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、電気絶縁性及び熱伝導性が高い均質な樹脂硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記のような問題を解決すべく鋭意研究した結果、メソゲン基を含む液晶ユニットを有する化合物において、液晶ユニットの両端に、種類が異なる所定の柔軟性ユニットをそれぞれ導入することで化合物の対称性を低下させ、化合物の融点を低下させると共に樹脂組成物に一般的に使用される溶剤に対する化合物の溶解性を向上させることができ、しかもこの化合物を含む樹脂組成物を重合させることで電気絶縁性及び熱伝導性が高い樹脂硬化物を得ることができることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、メソゲン基を含む液晶ユニットと、前記液晶ユニットの両端に結合した柔軟ユニットと、末端の重合性基とを有する化合物を含有する樹脂組成物であって、
前記柔軟性ユニットは、以下の式:
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、nは18以下の整数である)からなる群より選択される一種以上の基を含み、且つ前記液晶ユニットの一端に結合した前記柔軟ユニットと前記液晶ユニットの他端に結合した前記柔軟ユニットとが異なることを特徴とする樹脂組成物である。
また、本発明は、上記の樹脂組成物を重合させて得られることを特徴とする樹脂硬化物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電気絶縁性及び熱伝導性が高い均質な樹脂硬化物を与え、且つ成形性に優れた樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、電気絶縁性及び熱伝導性が高い均質な樹脂硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
本実施の形態の樹脂組成物は、メソゲン基を含む液晶ユニットと、前記液晶ユニットの両端に結合した柔軟ユニットと、末端の重合性基とを有する化合物を含有する。
液晶ユニットが有するメソゲン基は、液晶性を示す官能基であり、例えば、安息香酸フェニル、ビフェニル、シアノビフェニル、ターフェニル、シアノターフェニル、フェニルベンゾエート、アゾベンゼン、ジアゾベンゼン、アゾメチン、アゾキシベンゼン、スチルベン、フェニルシクロヘキシル、ビフェニルシクロヘキシル、フェノキシフェニル、ベンジリデンアニリン、ベンジルベンゾエート、フェニルピリミジン、フェニルジオキサン、ベンゾイルアニリン、トラン及びこれらの誘導体が挙げられる。これらの中でも、熱伝導性の観点から、安息香酸フェニル、ビフェニル、スチルベン、ジアゾベンゼン、ベンジリデンアニリン及びこれらの組合せや誘導体が好ましい。特に、式(1)又は(2)で表されるビフェニルエステル構造、式(3)で表されるビフェニルエーテル構造、式(4)で表されるビフェニルケトン構造、式(5)で表されるビフェニルアミド構造を有するものがより好ましい。
【0013】
【化2】

【0014】
また、メソゲン基は、剛直で平面性が高いベンゾオキサゾール構造、ベンゾチアゾール構造、又はベンゾイミダゾール構造を有するものであってもよい。
ベンゾオキサゾール構造としては、特に限定されず、例えば、ベンゾオキサゾール、ビスベンゾオキサゾール、フェニレンビスベンゾオキサゾール、ビフェニレンビスベンゾオキサゾール、ターフェニレンビスベンゾオキサゾール、クォーターフェニレンベンゾオキサゾール、ナフチレンベンゾオキサゾール、フェニルベンゾオキサゾール、ジフェニルベンゾオキサゾール及びこれらの誘導体を有する構造が挙げられる。
ベンゾチアゾール構造としては、特に限定されず、例えば、ベンゾチアゾール、ビスベンゾオキサゾール、フェニレンビスベンゾチアゾール及びこれらの誘導体を有する構造が挙げられる。
ベンゾイミダゾール構造としては、特に限定されず、例えば、ベンゾイミダゾール、ビスベンゾイミダゾール、フェニレンビスベンゾイミダゾール及びこれらの誘導体を有する構造が挙げられる。
上記の各構造の典型的な例は、下記の式により表すことができる。
【0015】
【化3】

【0016】
上記式中、Zは、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル又はナフタレンを表す。
また、液晶ユニットは非対称構造を有することが好ましい。液晶ユニットが非対称構造を有していれば、化合物の対称性を低下させることができる。その結果、化合物の融点を低下させる効果、及び樹脂組成物に一般的に使用される溶剤に対する化合物の溶解性を向上させる効果がより一層高くなる。
【0017】
柔軟ユニットは、化合物の融点を低下させると共に、溶剤に対する化合物の溶解性を向上させる効果を与えるユニットである。この柔軟ユニットは、液晶ユニットの両端に結合しており、以下の式からなる群より選択される一種以上の基を含む。
【0018】
【化4】

【0019】
上記式中、nは18以下、好ましくは3以上18以下の整数である。nが18より大きいと、熱伝導性が高い樹脂硬化物が得られないことがある。ここで、上記式において、炭素部分が液晶ユニットに結合する。また、柔軟ユニットは、液晶ユニットと直接結合することができるが、酸素などの所定の原子を介して結合していてもよい。合成の容易性の観点からは、柔軟性ユニットは酸素を介して液晶ユニットに結合していることが好ましい。
【0020】
また、液晶ユニットの両端に結合した柔軟ユニットの種類は異なる。すなわち、液晶ユニットの一端に結合した柔軟ユニットと液晶ユニットの他端に結合した柔軟ユニットは異なる構造(具体的には、上記式中のnの数や構造自体が異なる)を有する。このような構造を有することにより、化合物の対称性を低下させることができる。その結果、化合物の融点を低下させる効果、及び樹脂組成物に一般的に使用される溶剤に対する化合物の溶解性を向上させる効果が得られる。
【0021】
柔軟ユニットは、液晶ユニットの両端に1つずつ結合していればよいが、液晶ユニットの少なくとも一方の端部に2つ以上結合していてもよい。液晶ユニットの少なくとも一方の端部に柔軟ユニットが2つ以上ずつ結合している場合、化合物が分岐構造となり、化合物の対称性がより一層低下する。その結果、化合物の融点を低下させる効果、及び樹脂組成物に一般的に使用される溶剤に対する化合物の溶解性を向上させる効果がより一層高くなる。
【0022】
液晶ユニットと柔軟ユニットとの間には、カルボニル基及びエステル基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基と、この官能基に結合した不斉炭素とが存在することが好ましい。ここで、本明細書において不斉炭素とは、4個の互いに異なる原子や原子団と結合している炭素のことを意味する。また、上記の官能基は、液晶ユニット又は柔軟ユニットとは別のユニットとして導入することができるが、液晶ユニット又は柔軟ユニットの一部であっても構わない。上記のような不斉炭素を化合物に導入することにより、化合物の分子軸方向の秩序性に加えて分子間方向の秩序性も向上するため、樹脂硬化物の熱伝導性を大きく向上させることができる。不斉炭素に結合した原子又は原子団としては、特に限定されないが、例えば、水素、メチル基やエチル基などのアルキル基、フェニル基などが挙げられる。
【0023】
化合物は、様々な樹脂原料として使用するために、使用目的に合わせて、少なくとも1つの重合性基を末端に有する。重合性基としては、特に限定されることはなく、例えば、エポキシ基、ビニル基、アミノ基、水酸基、アクリロイル基、シクロヘキセン基、メタクリロイル基、シンナモイル基、イソシアナート基、ジカルボン酸無水物基などが挙げられる。特に、これらの例示した重合性基は、架橋反応性に優れているので好ましい。
【0024】
上記のような構造を有する化合物は、一般的に公知の合成手法により調製することができる。例えば、液晶ユニットや柔軟ユニットとなる原料化合物を反応させて結合した後、末端に重合性基を導入すればよい。この反応の具体的な条件については、使用する原料化合物や反応方法などによって異なるため、一義的に定義することができない。そのため、使用する原料化合物や反応方法などに応じて適宜設定する必要がある。
【0025】
本実施の形態の樹脂組成物において、液晶ユニット、柔軟ユニット及び重合性基を有する上記の化合物は、融点が低く、且つ樹脂組成物に一般的に使用される溶剤に対する溶解性が高いため、様々な樹脂原料(例えば、単独重合体を調製するための単量体、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤など)として使用することができる。
末端の重合性基が単独重合可能な基(例えば、ビニル基やエポキシ基など)である場合、化合物は単独重合体を調製するための単量体として使用される。この単量体を含む樹脂組成物は、単量体同士の反応によって架橋した樹脂硬化物を与えることができる。また、この樹脂組成物は、重合開始剤をさらに含むことができる。
この樹脂組成物に使用可能な重合開始剤としては、特に限定されることはなく、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤及び過硫酸酸塩開始剤などを用いることができる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、及び2,2’−アゾビス(メチルイソブチレ−ト)などが挙げられる。
【0027】
過酸化物開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、及び過酸化ジクミルなどが挙げられる。
過硫酸塩開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸アンモニウムが挙げられる。
この樹脂組成物における重合開始剤の配合量は、使用する各成分に応じて適宜設定すればよく、一般的に100質量部の単量体に対して0.1質量部以上200質量部以下である。
【0028】
末端の重合性基がエポキシ基である場合、化合物はエポキシ樹脂として使用される。このエポキシ樹脂を含む樹脂組成物は、エポキシ樹脂用硬化剤をさらに配合することにより、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤との反応によって架橋した樹脂硬化物を与えることができる。
この樹脂組成物に使用可能なエポキシ樹脂用硬化剤としては、特に限定されることはなく、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及び無水ハイミック酸などの脂環式酸無水物;ドデセニル無水コハク酸などの脂肪族酸無水物;無水フタル酸、及び無水トリメリット酸などの芳香族酸無水物;ジシアンジアミド、及びアジピン酸ジヒドラジドなどの有機ジヒドラジド;並びにトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン及びその誘導体、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、及び2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール類を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂用硬化剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
上記エポキシ樹脂用硬化剤の中でも、樹脂組成物を重合して得られる樹脂硬化物(重合体)の液晶構造の配列性を向上させる観点から、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、及びジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ジアミン;並びにカテコール、メチルカテコール、ジメチルカテコール、ブチルカテコール、フェニルカテコール、メトキシカテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、テトラヒドロキシベンゼン、ブロモカテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、メチル−1,2−ジヒドロキシナフタレン、ジメチル−1,2−ジヒドロキシナフタレン、ブチル−1,2−ジヒドロキシナフタレン、メトキシ−1,2−ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキシ−1,2−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシ−1,2−ジヒドロキシナフタレン、ブロモ−1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、メチル−2,3−ジヒドロキシナフタレン、ジメチル−2,3−ジヒドロキシナフタレン、ブチル−2,3−ジヒドロキシナフタレン、メトキシ−2,3−ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキシ−2,3−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシ−2,3−ジヒドロキシナフタレン、ブロモ−2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、メチル−1,8−ジヒドロキシナフタレン、ジメチル−1,8−ジヒドロキシナフタレン、ブチル−1,8−ジヒドロキシナフタレン、メトキシ−1,8−ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキシ−1,8−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシ−1,8−ジヒドロキシナフタレン、及びブロモ-1,8-ジヒドロキシナフタレンなどの多価フェノール化合物が好ましい。
この樹脂組成物におけるエポキシ樹脂用硬化剤の配合量は、使用する各成分に応じて適宜設定すればよく、一般的に100質量部のエポキシ樹脂に対して0.1質量部以上200質量部以下である。
【0030】
末端の重合性基がエポキシ樹脂と反応可能な基(例えば、水酸基、アミノ基など)である場合、化合物はエポキシ樹脂用硬化剤として使用される。このエポキシ樹脂用硬化剤を含む樹脂組成物は、エポキシ樹脂をさらに配合することにより、エポキシ樹脂用硬化剤とエポキシ樹脂との反応によって架橋した樹脂硬化物を与えることができる。
この樹脂組成物に使用可能なエポキシ樹脂としては、特に限定されることはなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環脂肪族エポキシ樹脂、及びグリシジル−アミノフェノール系エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0031】
上記エポキシ樹脂の中でも、樹脂組成物を重合して得られる樹脂硬化物(重合体)の液晶構造の配列性を向上させる観点から、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びアントラセン型エポキシ樹脂が好ましい。
この樹脂組成物におけるエポキシ樹脂用硬化剤の配合量は、使用する各成分に応じて適宜設定すればよく、一般的に100質量部のエポキシ樹脂に対して0.1質量部以上200質量部以下である。
【0032】
上記の各樹脂組成物は、メソゲン基を含む液晶ユニットを有する化合物を含有しているので、特定の温度範囲において、メソゲン構造が規則的に配列して液晶状態となる性質を有している。液晶状態の種類としては、ネマティック相、スメクティック相、コレステリック相などが挙げられる。また、この樹脂組成物を重合して得られる樹脂硬化物(重合体)でも、液晶状態の場合と同じように、メソゲン構造が規則的に配列した構造を与えることができる。この配列構造は、メソゲン構造が一定方向に配向したスメクティック相及びネマティック相であることが好ましい。ここで、スメクティック相とは、重合体の長軸方向が一定の方向に向かって並んでおり、さらに重合体が層状に配置されている状態のものを意味する。また、ネマティック相とは、重合体の重心位置に秩序は無いが、その長軸方向が一定の方向に向かって並んでいる状態のものを意味する。このような配列構造の規則性が高いほど熱伝導性が高くなる。
【0033】
本実施の形態の樹脂組成物は、樹脂硬化物の熱伝導性を向上させる観点から、無機充填材をさらに含むことができる。
本実施の形態の樹脂組成物に使用可能な無機充填材としては、特に限定されることはなく、例えば、ニッケル、すず、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、コバルト、インジウム及びこれらの合金などの金属粒子;酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、酸化インジウムすず(ITO)、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム及び酸化チタンなどの金属酸化物粒子;窒化ホウ素、窒化ケイ素及び窒化アルミニウムなどの金属窒化物粒子;炭化珪素、黒鉛、ダイヤモンド、非晶質カーボン、カーボンブラック及び炭素繊維などの炭素化合物粒子;石英及び石英ガラスなどのシリカ化合物粉類が挙げられる。これらの無機充填材は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
上記無機充填材の中でも、樹脂硬化物の絶縁性の観点から、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ダイヤモンド、石英、石英ガラスなどが好ましい。
【0034】
無機充填材の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上150μm以下、より好ましくは3μm以上120μm以下である。ここで、本明細書において「無機充填材の平均粒径」とは、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定によって得られた粒径の平均値を意味する。無機充填材の平均粒径が0.1μm未満であると、二次凝集のために無機充填材の分散が困難になることがある。一方、無機充填材の平均粒径が150μmを超えると、シート状に成形した場合に、樹脂硬化物の表面荒れが発生し易くなることがある。
【0035】
本実施の形態の樹脂組成物における無機充填材の配合割合は、無機充填材が樹脂硬化物中で好ましくは20体積%以上80体積%以下、より好ましくは30体積%以上70体積%以下となるような割合であることが望ましい。この範囲の割合であれば、樹脂組成物をシート状に成形する場合に作業性が優れると共に、樹脂硬化物の熱伝導性をより一層高めることができる。樹脂硬化物における無機充填材の割合が20体積%未満であると、所望の熱伝導性を有する樹脂硬化物が得られないことがある。一方、樹脂硬化物における無機充填材の割合が80体積%を超えると、シート状の樹脂硬化物を製造する際に、樹脂硬化物中に無機充填材を均一に分散させることが困難となり、作業性や成形性に支障を生じることがある。
【0036】
また、無機充填材の濡れ性の改善や、樹脂成分と無機充填材との界面の補強、無機充填材の分散性の向上を目的として、無機充填材にカップリング処理を施すこともできる。この処理に使用可能なカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらのカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カップリング剤の使用量は、樹脂成分やカップリング剤の種類などに応じて適宜設定すればよいが、一般的に、100質量部の無機充填材成分に対して0.01質量部以上3質量部以下である。
【0037】
本実施の形態の樹脂組成物は、上記の各成分を混合することによって調製することができる。混合方法としては特に限定されず、公知の混合装置を用いることができる。
このようにして得られる本実施の形態の樹脂組成物は、融点が低く、且つ樹脂組成物に一般的に使用される溶剤に対する溶解性が高い化合物を用いているため、成形性に優れている。また、この樹脂組成物は、硬化させると、メソゲン構造が規則的に配列するために熱伝導性が高く、また、電気絶縁性も良好である。
【0038】
実施の形態2.
本実施の形態の樹脂硬化物は、上記の樹脂組成物を重合させて得ることができる。具体的には、上記の樹脂組成物を所望の形状に成形した後、加熱して重合させることにより、所望の形状を有する樹脂硬化物を得ることができる。特に、シート状の樹脂硬化物を製造する場合には、本発明の樹脂組成物を配向基材に塗工して乾燥させた後、加熱して重合させればよい。
配向基材上への塗工方法としては、特に限定されず、溶融法及び溶液法のいずれを採用してもよいが、作業性の観点からは溶液法が好適である。また、溶液法にて塗工する場合、バーコーター、マルチコーター、スピナー、ロールコーターなどの適切な塗工機を用いることができる。また、樹脂硬化物の表面品質の点でキャスト法を用いることが適切である。
【0039】
溶液法を用いる場合、上記の樹脂組成物に溶剤を配合してもよい。溶剤としては、特に限定されず、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、及びクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;フェノール、及びパラクロロフェノールなどのフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、及び1,2−ジメトキベンゼンなどの芳香族炭化水素類;アセトン;酢酸エチル;tert−ブチルアルコール;グリセリン;エチレングリコール;トリエチレングリコール;エチレンブリコールモノメチルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル;エチルセルソルブ;ブチルセルソルブ;2−ピロリドン;N−メチル−2−ピロリドン;ピリジン;トリエチルアミン;テトラヒドロフラン;ジメチルホルムアミド;ジメチルアセトアミド;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;ブチロニトリル;二硫化炭素;メチルエチルケトン;シクロヘキサノン;シクロペンタノンなどが挙げられる。
樹脂組成物における溶剤の含有量は、特に限定されることはなく、一般的に20質量%以上200質量%以下である。
【0040】
配向基材に塗工した樹脂組成物の乾燥は、室温で行うことができるが、必要に応じて60℃以上180℃以下に加熱し、溶剤の揮発を促進させてもよい。
樹脂組成物を重合させるための加熱温度は、各成分にあわせて適宜設定する必要があるが、一般的に60℃以上280℃以下である。また、重合時間も同様に各成分や樹脂組成物の量などに応じて適宜設定する必要がある。
【0041】
本実施の形態の樹脂硬化物は、熱伝導性及び絶縁性が高いので、電子機器の放熱材料として一般的に使用されている絶縁シートとして用いることができる。
樹脂硬化物を絶縁シートとして用いる場合、絶縁シートの厚みは、好ましくは20μm以上800μm以下、より好ましくは30μm以上300μm以下である。絶縁シートの厚みが20μm未満であると、部材間に挟着されたとき、挟着面の凹凸に対する追従性が不十分で、界面熱抵抗が上昇することがある。一方、絶縁シートの厚みが800μmを超えると、熱の伝達距離が長くなるため、熱抵抗が上昇することがある。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明の詳細を説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
(実施例1)
18.6gの4,4’−ビフェノール、10.8gの6−ブロモ−1−ヘキセン、11gの炭酸カリウム、及び200mLのジメチルホルムアミドをナス型フラスコに入れ、窒素置換を行った後、80℃にて24時間加熱撹拌して反応させた。反応終了後、反応物を1Lの水に投入し、これに酢酸エチルを入れて抽出操作を行った。この酢酸エチル溶液を200mLの水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて水分を除去した後、エバポレーターによって酢酸エチルを除去した。得られた粗生成物を、クロロホルムを用いたカラムクロマトグラフィーによって精製し、白色結晶の4’−(ヘキサ−5−エン−1−イルオキシ)−[1,1’−ビフェニル]−4−オールを12g得た。
次に、12gの4’−(ヘキサ−5−エン−1−イルオキシ)−[1,1’−ビフェニル]−4−オール、12.7gの10−ブロモ−1−デセン、8.0gの炭酸カリウム、及び100mLのジメチルホルムアミドをナス型フラスコに入れ、窒素置換を行った後、80度にて24時間加熱撹拌して反応させた。反応終了後、反応物を1Lの水に投入し、これに酢酸エチルを入れて抽出操作を行った。この酢酸エチル溶液を200mLの水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて水分を除去した後、エバポレーターによって酢酸エチルを除去した。得られた粗生成物を、クロロホルムを用いたカラムクロマトグラフィーによって精製し、白色結晶の4−(デカ−9−エン−1−イルオキシ)−4’−(ヘキサ−5−エン−1−イルオキシ)−1,1’−ビフェニルを12.7g得た。
【0043】
次に、4.6gの4−(デカ−9−エン−1−イルオキシ)−4’−(ヘキサ−5−エン−1−イルオキシ)−1,1’−ビフェニルを40mLのクロロホルムに溶解した後、この溶液に5.6gの3−クロロ過安息香酸をゆっくり投入し、室温で48時間撹拌して反応させた。反応終了後、反応溶液を分液ロートに移し、1Nの炭酸水素ナトリウム水溶液100mLを入れて洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後、有機相に硫酸マグネシウムを加えて水分を除去し、さらにエバポレーターによって溶媒を除去した。得られた固体を50mLのジクロロメタンに溶解し、これを300mLのヘキサンに投入することによって再沈殿させ、下記式(A)で表されるエポキシ樹脂を3.5g得た。
【0044】
【化5】

【0045】
合成したエポキシ樹脂の構造は、赤外分光分析、H−NMR及び13C−NMRによるスペクトル測定を行うことによって確認した。なお、以下の実施例及び比較例において、各化合物の構造の確認は、この方法と同様にして行った。
次に、上記で得られたエポキシ樹脂10gを、180℃に保ったホットプレート上に置いたアルミ製のカップに入れ、150℃のオーブンで予め溶解させたジアミノジフェニルメタン(DDM)硬化剤2.1gを加えた後、攪拌混合することによって均一な樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を180℃のオーブンで4時間加熱して重合させることによって均質な樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物について偏光顕微鏡を用いて観察を行ったところ、重合体の配向が確認された。
【0046】
(実施例2)
21.2gの4−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、25gの6−ブロモ−1−ヘキセン、57.8gの炭酸カリウム、及び200mLのジメチルホルムアミドをナス型フラスコに入れ、窒素置換を行った後、80℃にて24時間加熱撹拌して反応させた。反応終了後、反応物を1Lの水に投入し、これに300mLのジクロロメタンを入れて抽出操作を行った。このジクロロメタン溶液を200mLの水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて水分を除去した後、エバポレーターによってジクロロメタンを除去した。得られた粗生成物をジクロロメタン及びヘキサンの混合溶媒(容積比:ジクロロメタン/ヘキサン=10/1)を用いたカラムクロマトグラフィーによって精製し、黄色液状の4−(5−ヘキセニロキシ)安息香酸メチルエステルを30g得た。
次に、16.1gの4−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、25gの10−ブロモ−1−デセン、43.9gの炭酸カリウム、及び200mLのジメチルホルムアミドをナス型フラスコに入れ、窒素置換を行った後、80℃にて24時間加熱撹拌して反応させた。反応終了後、反応物を1Lの水に投入し、これに300mLのジクロロメタンを入れて抽出操作を行った。このジクロロメタン溶液を200mLの水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて水分を除去した後、エバポレーターによってジクロロメタンを除去した。得られた粗生成物をジクロロメタン及びヘキサンの混合溶媒(容積比:ジクロロメタン/ヘキサン=10/1)を用いたカラムクロマトグラフィーによって精製し、黄色固体の4−(9−デセニロキシ)安息香酸メチルエステルを25g得た。
【0047】
次に、30gの4−(5−ヘキセニロキシ)安息香酸メチルエステルを3Nの水酸化カリウム水溶液に加え、80℃で24時間撹拌した。この溶液をろ過した後、室温まで冷却し、6Nの塩酸水溶液をゆっくり投入することで酸析を行った。その後、塩化カルシウムを乾燥剤として用いて減圧乾燥を行うことによって白色結晶の4−(5−ヘキセニロキシ)安息香酸を25.8g得た。
次に、25gの4−(9−デセニロキシ)安息香酸メチルエステルを3Nの水酸化カリウム水溶液に加え、80℃で24時間撹拌した。この溶液をろ過した後、室温まで冷却し、6Nの塩酸水溶液をゆっくり投入することで酸析を行った。その後、塩化カルシウムを乾燥剤として用いて減圧乾燥を行うことによって白色結晶の4−(9−デセニロキシ)安息香酸を21.7g得た。
【0048】
次に、10gの4−(5−ヘキセニロキシ)安息香酸をフラスコに入れた後、100mLの塩化チオニルをゆっくり投入し、40℃で2時間撹拌した。その後、減圧蒸留により過剰な塩化チオニルを除去することによって4−(5−ヘキセニロキシ)安息香酸クロリドを10g得た。
次に、10gの4−(9−デセニロキシ)安息香酸をフラスコに入れた後、100mLの塩化チオニルをゆっくり投入し、40℃で2時間撹拌した。その後、減圧蒸留により過剰な塩化チオニルを除去することによって4−(9−デセニロキシ)安息香酸クロリドを10g得た。
【0049】
次に、100mLのテトラヒドロフランに、4.7gのビフェニル−4,4’−ジオール、及び4.6gのトリエチルアミンを室温にて溶解させた後、この溶液を氷浴バスで冷却した。この冷却溶液に、4.0gの4−(5−ヘキセニロキシ)安息香酸クロリドを溶解した60mLテトラヒドロフラン溶液をゆっくりと滴下し、滴下終了後に室温で4時間撹拌した。次に、得られた溶液をろ過してトリエチルアミン塩酸塩を除去した後、エバポレーターによって溶媒を除去した。その後、得られた生成物を、クロロホルムを用いたカラムクロマトグラフィーによって精製し、白色結晶の4’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル−4−(ヘキサ−5−エン−1−イルオキシ)ベンゾエートを5.2g得た。
次に、100mLのテトラヒドロフランに、5.2gの4’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル−4−(ヘキサ−5−エン−1−イルオキシ)ベンゾエート、及び4.6gのトリエチルアミンを室温にて溶解させた後、この溶液を氷浴バスで冷却した。この冷却溶液に、6.0gの4−(9−デセニロシロキシ)安息香酸クロリドを溶解した60mLテトラヒドロフラン溶液をゆっくりと滴下し、滴下終了後に室温で4時間撹拌した。次に、得られた溶液をろ過してトリエチルアミン塩酸塩を除去した後、エバポレーターによって溶媒を除去した。その後、得られた生成物を、クロロホルムを用いたカラムクロマトグラフィーによって精製し、白色結晶の4’−((4−(デカ−9−エン−1−イルオキシ)ベンゾイル)オキシ)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル−4−(ヘキサ−5−エン−1−イルオキシ)ベンゾエートを6.0g得た。
【0050】
次に、4.6gの4’−((4−(デカ−9−エン−1−イルオキシ)ベンゾイル)オキシ)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル−4−(ヘキサ−5−エン−1−イルオキシ)ベンゾエートを40mLのクロロホルムに溶解した後、この溶液に3.0gの3−クロロ過安息香酸をゆっくり投入し、室温で48時間撹拌して反応させた。反応終了後、反応溶液を分液ロートに移し、1Nの炭酸水素ナトリウム水溶液100mLを入れて洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後、有機相に硫酸マグネシウムを加えて水分を除去し、さらにエバポレーターによって溶媒を除去した。得られた固体を50mLのジクロロメタンに溶解し、これを300mLのヘキサンに投入することによって再沈殿させ、下記式(B)で表されるエポキシ樹脂4.3gを得た。
【0051】
【化6】

【0052】
次に、上記で得られたエポキシ樹脂10gを、150℃に保ったホットプレート上に置いたアルミ製のカップに入れ、150℃のオーブンで予め溶解させたジアミノジフェニルメタン(DDM)硬化剤1.5gを加えた後、攪拌混合することによって均一な樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を180℃のオーブンで4時間加熱して重合させることによって均質な樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物について偏光顕微鏡を用いて観察を行ったところ、重合体の配向が確認された。
【0053】
(実施例3)
700mLエタノール溶液に、47gの4−ヒドロキシフェニル安息香酸及び10mLの濃硫酸を加え、100℃で24時間加熱撹拌して反応させた。反応終了後、エバポレーターでエタノールを除去し、ろ過後、水で洗浄した。得られた粗生成物を水とエタノールとの混合液(容積比:水/エタノール=1/1)で再結晶することによって精製し、白色固体のエチル4’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボキシレートを48g得た。
次に、8.5gのエチル4’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボキシレート、10−ブロモ−1−デセン、7.3gの炭酸カリウム、0.3gのヨウ化カリウム、及び70mLのアセトンをナス型フラスコに入れ、70℃にて48時間加熱撹拌して反応させた。反応終了後、ろ過し、エバポレーターでアセトンを除去した。得られた粗生成物をエタノールで再結晶することにより精製し、白色固体のエチル4’−(デカ−9−エン−1−イルオキシ)−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボキシレートを11.6g得た。
【0054】
次に、140mLのエタノールに、11.6gのエチル4’−(デカ−9−エン−1−イルオキシ)−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボキシレート、25mLの水、及び3.9gの水酸化カリウムを加え、90℃で3時間加熱撹拌して反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、2Nの塩酸水溶液を180mL投入することで酸析を行った。その後、得られた粗生成物をエタノールで再結晶することにより精製し、白色固体の4’−(デカ−9−エン−1−イルオキシ)−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸を9.9g得た。
次に、7.5gの4−ヒドロキシ安息香酸、5.9gの6−ブロモ−1−ヘキセン、5.5gの炭酸カリウム、0.3gのヨウ化カリウム、及び75mLのジメチルホルムアミドをナス型フラスコに入れ、80℃にて21時間加熱撹拌して反応させた。反応終了後、反応物を1Lの水に投入し、これに酢酸エチルを入れて抽出操作を行った。この酢酸エチル溶液を1Nの炭酸水素ナトリウム溶液で3回洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて水分を除去した後、エバポレーターによって酢酸エチルを除去した。次に、塩化カルシウムを用いて減圧乾燥することにより、白色固体のヘキサ−5−エン−1−イル−4−ヒドロキシベンゾエートを6.5g得た。
【0055】
次に、50mLの塩化メチレン溶液に、1.7gのヘキサ−5−エン−1−イル−4−ヒドロキシベンゾエート、1.9gの4’−(デカ−9−エン−1−イルオキシ)−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸、1.6gのジシクロヘキシルカルボジイミド、及び0.1gの4−ジメチルアミノピリジンを加え、室温で72時間撹拌して反応させた。反応終了後、反応溶液をろ過し、エバポレーターによって溶媒を除去した。得られた粗生成物を展開溶媒に塩化メチレンを用いたシリカゲルによるカラムクロマトグラフィーを行うことによって精製し、白色固体の下記式(C)で表されるビニル化合物を2.7g得た。
【0056】
【化7】

【0057】
次に、上記で得られたビニル化合物10gをアルミ製のカップに入れ、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.006gを加え、攪拌混合することによって均一な樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を200℃のオーブンで4時間加熱して重合させることによって均質な樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物について偏光顕微鏡を用いて観察を行ったところ、重合体の配向が確認された。
【0058】
(実施例4)
上記式(C)で表されるビニル化合物2.4gを10mLの塩化メチレンに溶解した後、この溶液に3.1gの3−クロロ過安息香酸を投入し、室温で2時間撹拌して反応させた。反応終了後、反応溶液を分液ロートに移し、1Nの炭酸水素ナトリウム水溶液を入れて洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後、有機相に硫酸マグネシウムを加えて水分を除去し、さらにエバポレーターによって溶媒を除去した。得られた粗生成物をエタノールで再結晶することにより、下記式(D)で表されるエポキシ樹脂を1.8g得た。
【0059】
【化8】

【0060】
次に、上記で得られたエポキシ樹脂10gを、100℃に保ったホットプレート上に置いたアルミ製のカップに入れ、150℃のオーブンで予め溶解させたジアミノジフェニルメタン(DDM)硬化剤1.7gを加えた後、攪拌混合することによって均一な樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を180℃のオーブンで4時間加熱して重合させることによって均質な樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物について偏光顕微鏡を用いて観察を行ったところ、重合体の配向が確認された。
【0061】
(実施例5)
700mLのエタノール溶液に、47gの4−ヒドロキシフェニル安息香酸、及び10mLの濃硫酸を加え、100℃で24時間加熱撹拌して反応させた。反応終了後、エバポレーターでエタノールを除去し、吸引ろ過を行った後、水で洗浄した。得られた粗生成物を水とエタノールとの混合液(容積比:水/エタノール=1/1)で再結晶することによって精製し、白色固体のエチル4’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボキシレートを48g得た。
次に、8.5gのエチル4’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボキシレート、10−ブロモ−1−デセン、7.3gの炭酸カリウム、0.3gのヨウ化カリウム、及び70mLのアセトンをナス型フラスコに入れ、70℃にて48時間加熱撹拌して反応させた。反応終了後、ろ過し、エバポレーターでアセトンを除去した。得られた粗生成物をエタノールで再結晶することにより、白色固体のエチル4’−(デカ−9−エン−1−イルオキシ)−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボキシレートを11.6g得た。
【0062】
次に、140mLのエタノールに、11.6gのエチル4’−(デカ−9−エン−1−イルオキシ)−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボキシレート、25mLの水、及び3.9gの水酸化カリウムを加え、90℃で3時間加熱撹拌して反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、2Nの塩酸水溶液を180mL投入することで酸析を行った。その後、得られた粗生成物をエタノールで再結晶することにより精製し、白色固体の4’−(デカ−9−エン−1−イルオキシ)−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸を9.9g得た。
次に、2.6gの4−ヒドロキシフタル、4.5gの6−ブロモ−1−ヘキセン、2.9gの炭酸水素カリウム、0.3gのヨウ化カリウム、及び30mLのジメチルホルムアミドをナス型フラスコに入れ、80℃にて72時間加熱撹拌して反応させた。反応終了後、反応物を300mLの水に投入し、これに酢酸エチルを入れて抽出操作を行った。この酢酸エチル溶液を1Nの炭酸水素ナトリウム溶液で3回洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて水分を除去した後、エバポレーターによって酢酸エチルを除去した。その後、減圧乾燥することにより、無色液体のジ(ヘキサ−5−エン−1−イル)4−ヒドロキシフタレートを3.5g得た。
【0063】
次に、50mLの塩化メチレン溶液に、2.8gのジ(ヘキサ−5−エン−1−イル)4−ヒドロキシフタレート、2.4gの4’−(デカ−9−エン−1−イルオキシ)−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸、1.7gのジシクロヘキシルカルボジイミド、及び0.1gの4−ジメチルアミノピリジンを加え、室温で72時間撹拌して反応させた。反応終了後、反応溶液をろ過し、エバポレーターによって溶媒を除去した。得られた粗生成物を展開溶媒にクロロホルムを用いたシリカゲルによるカラムクロマトグラフィーを行うことによって精製し、白色液体のジ(ヘキサ−5−エン−1−イル)4−((4’−(デカ−9−エン−1−イルオキシ)−[1,1’−ビフェニル]−4カルボニル)オキシ)フタレートを2.4g得た。
次に、2.3gのジ(ヘキサ−5−エン−1−イル)4−((4’−(デカ−9−エン−1−イルオキシ)−[1,1’−ビフェニル]−4カルボニル)オキシ)フタレートを30mLの塩化メチレンに溶解した後、この溶液に3.3gの3−クロロ過安息香酸を投入し、室温で2時間撹拌して反応させた。反応終了後、反応溶液を分液ロートに移し、1Nの炭酸水素ナトリウム水溶液を入れて洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後、有機相に硫酸マグネシウムを加えて水分を除去し、さらにエバポレーターによって溶媒を除去した。得られた粗生成物を展開溶媒に塩化メチレン及び酢酸エチルの混合溶媒(容積比:塩化メチレン/酢酸エチル=8/1)を用いたシリカゲルによるカラムクロマトグラフィーを行うことによって精製し、下記式(E)で表されるエポキシ樹脂を0.8g得た。
【0064】
【化9】

【0065】
次に、上記で得られたエポキシ樹脂10gを、100℃に保ったホットプレート上に置いたアルミ製のカップに入れ、150℃のオーブンで予め溶解させたジアミノジフェニルメタン(DDM)硬化剤1.4gを加えた後、攪拌混合することによって均一な樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を180℃のオーブンで4時間加熱して重合させることによって均質な樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物について偏光顕微鏡を用いて観察を行ったところ、重合体の配向が確認された。
【0066】
(実施例6)
700mLのエタノール溶液に、47gの4−ヒドロキシフェニル安息香酸、及び10mLの濃硫酸を加え、100℃で24時間加熱撹拌して反応させた。反応終了後、エバポレーターでエタノールを除去し、吸引ろ過を行った後、水で洗浄した。得られた粗生成物を水とエタノールとの混合液(容積比:水/エタノール=1/1)で再結晶することによって精製し、白色固体のエチル4’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボキシレートを48g得た。
次に、8.5gのエチル4’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボキシレート、10−ブロモ−1−デセン、7.3gの炭酸カリウム、0.3gのヨウ化カリウム、及び70mLのアセトンをナス型フラスコに入れ、70℃にて48時間加熱撹拌して反応させた。反応終了後、ろ過し、エバポレーターでアセトンを除去した。得られた粗生成物をエタノールで再結晶することにより精製し、白色固体のエチル4’−(デカ−9−エン−1−イルオキシ)−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボキシレートを11.6g得た。
【0067】
次に、140mLのエタノールに、11.6gのエチル4’−(デカ−9−エン−1−イルオキシ)−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボキシレート、25mLの水、及び3.9gの水酸化カリウムを加え、90℃で3時間加熱撹拌して反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、2Nの塩酸水溶液を180mL投入することで酸析を行った。その後、得られた粗生成物をエタノールで再結晶することにより精製し、白色固体の4’−(デカ−9−エン−1−イルオキシ)−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸を9.9g得た。
次に、90mLの脱水テトラヒドロフランに、1.9gのヨウ化銅、及び1.0Mのアリルマグネシウムブロミドのジエチルエーテル溶液100mLを加えた後、この溶液を−78℃まで冷却した。この冷却溶液に3.9gのS−プロピレンオキシドを加え、−78℃で4時間撹拌した後、−20℃で16時間撹拌して反応させた。反応終了後、100mLの塩化アンモニウム水溶液を加え、室温で撹拌した。得られた溶液にジエチルエーテルによる抽出操作を行い、エバポレーターにて溶媒を除去した後、蒸留を行うことで、無色液体の(S)ヘキサ−5−エン−2−オールを4.7g得た。
【0068】
次に、18gの4−ヒドロキシ安息香酸を1.5Nの水酸化ナトリウム水溶液に溶解した後、この溶液を氷浴バスで冷却した。この冷却溶液に25gのメチルクロロフォメートを投入し、0℃で1時間撹拌して反応させた。反応終了後、反応溶液をろ過し、溶液を塩酸により酸性にした後、酢酸エチルによる抽出操作を行った。有機相に硫酸マグネシウムを加えて水分を除去し、さらにエバポレーターによって溶媒を除去することで、白色固体の4−((メトキシカルボニル)オキシ)安息香酸を18g得た。
次に、50mLの脱水テトラヒドロフランに4.0gの(S)ヘキサ−5−エン−2−オール及び13gのトリフェニルホスフィンを溶解させた。この溶液に、10.6gの4−((メトキシカルボニル)オキシ)安息香酸及び2.2Mのアゾジカルボン酸ジエチルのトルエン溶液25mLを溶解させた100mLの脱水テトラヒドロフラン溶液を滴下し、室温で72時間撹拌して反応させた。反応終了後、150mLの塩化アンモニウム水溶液を加え、撹拌した後、酢酸エチルによる抽出操作を行った。有機相に硫酸マグネシウムを加えて水分を除去し、さらにエバポレーターによって溶媒を除去した。その後、得られた生成物を展開溶媒にヘキサン及び酢酸エチルの混合溶媒(容積比:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)を用いたシリカゲルによるカラムクロマトグラフィーを行った。その後、得られた溶液を展開溶媒にヘキサン及び酢酸エチルの混合溶媒(容積比:ヘキサン/酢酸エチル=20/1)を用いたシリカゲルによるカラムクロマトグラフィーを行った。これより、無色液体である(R)−ヘキサ−5−エン−2−イル−4−((メトキシカルボニル)オキシ)ベンゾエートを9.4g得た。
【0069】
次に、40mLのテトラヒドロフラン溶液に6.5gの(R)−ヘキサ−5−エン−2−イル−4−((メトキシカルボニル)オキシ)ベンゾエート、及び8mLのアンモニウム水溶液を加え、4時間撹拌して反応させた。反応終了後、酢酸エチルを入れて抽出操作を行い、この酢酸エチル溶液を炭酸水素ナトリウム溶液で3回洗浄した。得られた溶液に硫酸マグネシウムを加えて水分を除去した後、エバポレーターによって酢酸エチルを除去した。これより、無色液体である(R)−ヘキサ−5−エン−2−イル−4−ヒドロキシベンゾエートを4.9g得た。
次に、100mLの塩化メチレン溶液に、4.7gの4’−(デカ−9−エン−1−イルオキシ)−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸、3.5gの(R)−ヘキサ−5−エン−2−イル−4−ヒドロキシベンゾエート、3.3gのジシクロヘキシルカルボジイミド、及び0.1gの4−ジメチルアミノピリジンを加え、室温で72時間撹拌して反応させた。反応終了後、反応溶液をろ過し、エバポレーターによって溶媒を除去した。得られた粗生成物を展開溶媒に塩化メチレンを用いたシリカゲルによるカラムクロマトグラフィーを行うことによって精製し、白色固体の(R)−4−((ヘキサ−5−エン−2−イルオキシ)カルボニル)フェニル−4’−(デカ−9−エン−1−イルオキシ)−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボキシレートを6.3g得た。
【0070】
3.0gの(R)−4−((ヘキサ−5−エン−2−イルオキシ)カルボニル)フェニル−4’−(デカ−9−エン−1−イルオキシ)−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボキシレートを10mLの塩化メチレンに溶解した後、この溶液に4.0gの3−クロロ過安息香酸を投入し、室温で2時間撹拌して反応させた。反応終了後、反応溶液を分液ロートに移し、1Nの炭酸水素ナトリウム水溶液を入れて洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後、有機相に硫酸マグネシウムを加えて水分を除去し、さらにエバポレーターによって溶媒を除去した。得られた粗生成物をエタノールで再結晶することにより、下記式(F)で表されるエポキシ樹脂を1.1g得た。
【0071】
【化10】

【0072】
次に、上記で得られたエポキシ樹脂10gを、100℃に保ったホットプレート上に置いたアルミ製のカップに入れ、150℃のオーブンで予め溶解させたジアミノジフェニルメタン(DDM)硬化剤1.7gを加えた後、攪拌混合することによって均一な樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を180℃のオーブンで4時間加熱して重合させることによって均質な樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物について偏光顕微鏡を用いて観察を行ったところ、重合体の配向が確認された。
【0073】
(実施例7)
上記式(D)のエポキシ樹脂30gと、ジアミノジフェニルメタン(DDM)硬化剤5.1gと、メチルエチルケトン(MEK)107gとを攪拌混合した後、樹脂硬化物中の窒化ホウ素粒子(無機充填材、昭和電工株式会社製)が50体積%となるように窒化ホウ素粒子66.4gを添加して十分に攪拌混合することによって均一な樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物をマルチコーターにてPETフィルム上に塗工して乾燥させた後、180℃で4時間加熱して重合させることによって、厚みが100μmの均質な樹脂硬化物のシートを得た。この樹脂組成物は、塗工性やシートへの成形性も良好であった。
【0074】
(比較例1)
下記式(G)で表されるエポキシ樹脂を公知の方法によって合成した。
【0075】
【化11】

【0076】
このビフェニル型エポキシ樹脂10gを200℃に加熱し、ジアミノジフェニルメタン硬化剤(DDM)3.1gを加えて攪拌混合することによって樹脂組成物を調製した。しかし、エポキシ樹脂の硬化反応が急速に進み、均一混合が難しく、均一な樹脂組成物を得ることができなかった。
次に、この樹脂組成物を200℃のオーブンで4時間加熱して重合させることによって樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物について偏光顕微鏡を用いて観察を行ったところ、重合体の配向が確認された。しかし、この樹脂硬化物は不均質であった。
【0077】
(比較例2)
21.2gの4−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、25gの6−ブロモ−1−ヘキセン、57.8gの炭酸カリウム、及び200mLのジメチルホルムアミドをナス型フラスコに入れ、窒素置換を行った後、80℃にて24時間加熱撹拌して反応させた。反応終了後、反応物を1Lの水に投入し、これに300mLのジクロロメタンを入れて抽出操作を行った。このジクロロメタン溶液を200mLの水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて水分を除去した後、エバポレーターによってジクロロメタンを除去した。得られた粗生成物をジクロロメタン及びヘキサンの混合溶媒(容積比:ジクロロメタン/ヘキサン=10/1)を用いたカラムクロマトグラフィーによって精製し、黄色液状の4−(5−ヘキセニロキシ)安息香酸メチルエステルを30g得た。
次に、30gの4−(5−ヘキセニロキシ)安息香酸メチルエステルを3Nの水酸化カリウム水溶液に加え、80℃で24時間撹拌した。この溶液をろ過した後、室温まで冷却し、6Nの塩酸水溶液をゆっくり投入することで酸析を行った。その後、塩化カルシウムを乾燥剤として用いて減圧乾燥を行うことによって白色結晶の4−(5−ヘキセニロキシ)安息香酸を25.8g得た。
【0078】
次に、20gの4−(5−ヘキセニロキシ)安息香酸をフラスコに入れた後、100mLの塩化チオニルをゆっくり投入し、40℃で2時間撹拌した。その後、減圧蒸留により過剰な塩化チオニルを除去することによって4−(5−ヘキセニロキシ)安息香酸クロリドを20g得た。
次に、100mLのテトラヒドロフランに、4.7gのビフェニル−4、4’−ジオール、及び7.7gのトリエチルアミンを室温にて溶解させた後、この溶液を氷浴バスで冷却した。この冷却溶液に、15.8gの4−(5−ヘキセニロキシ)安息香酸クロリドを溶解した100mLのテトラヒドロフラン溶液をゆっくりと滴下し、滴下終了後に室温で4時間撹拌した。次に、得られた溶液をろ過してトリエチルアミン塩酸塩を除去した後、エバポレーターによって溶媒を除去した。その後、得られた生成物をメタノールで洗浄することによって、白色結晶の[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイルビス(4−(ヘキサ−5−エン−1−イルオキシ)ベンゾエート)を13.9g得た。
【0079】
次に、13.9gの[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイルビス(4−(ヘキサ−5−エン−1−イルオキシ)ベンゾエート)を100mLのクロロホルムに溶解した後、この溶液に6.9gの3−クロロ過安息香酸をゆっくり投入し、室温で48時間撹拌して反応させた。反応終了後、反応溶液を分液ロートに移し、1Nの炭酸水素ナトリウム水溶液100mLを入れて洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後、有機相に硫酸マグネシウムを加えて水分を除去し、さらにエバポレーターにて溶媒を除去した。得られた固体を50mLのジクロロメタンに溶解し、これを300mLのヘキサンに投入することによって再沈殿させ、下記式(H)で表されるエポキシ樹脂を13g得た。
【0080】
【化12】

【0081】
次に、上記で得られたエポキシ樹脂10gを、180℃に保ったホットプレート上に置いたアルミ製のカップに入れ、150℃のオーブンで予め溶解させたジアミノジフェニルメタン(DDM)硬化剤3.3gを加えた後、攪拌混合することによって均一な樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を180℃のオーブンで4時間加熱して重合させることによって均質な樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物について偏光顕微鏡を用いて観察を行ったところ、重合体の配向が確認された。
【0082】
(比較例3)
上記式(G)のエポキシ樹脂30gと、ジアミノジフェニルメタン(DDM)硬化剤10.0gと、メチルエチルケトン(MEK)118gとを攪拌混合した後、樹脂硬化物中の窒化ホウ素粒子(無機充填材、昭和電工株式会社製)が50体積%となるように窒化ホウ素粒子75.7gを添加して十分に攪拌混合することによって均一な樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物をマルチコーターにてPETフィルム上に塗工して乾燥させたところ、乾燥中に樹脂成分が剥がれ落ち、評価に値するような樹脂硬化物のシートを得ることができなかった。この結果は、使用したエポキシ樹脂が、高い結晶性を有しているために溶剤への溶解性が低く、また融点が高いことに起因しているものと考えられる。
【0083】
実施例1〜7及び比較例1〜3で調製した各化合物の融点を、示差走査熱量測定(DSC)により、昇温速度10℃/分の条件下で測定した。
また、実施例1〜7及び比較例1〜2で得られた樹脂硬化物及びそのシートの熱拡散率について、熱拡散率測定装置(株式会社アイフェイズ製)を用いた温度波熱分析法(TWA)により測定した。
上記の各測定結果を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
表1において、液晶ユニットの構造が同じである実施例1と比較例1、及び実施例1と比較例2を比較するとわかるように、液晶ユニットの両端に異なる種類の柔軟ユニットを結合させて化合物の対称性を低下させることにより、硬化物の熱拡散率(熱伝導率)を高く保持したまま化合物の融点を低下させることができた。
また、実施例3〜6では、液晶ユニットに非対称のものを用いたことにより、化合物の対称性がより一層低下し、しかも硬化物の熱拡散率(熱伝導率)も高かった。中でも、実施例5では、液晶ユニットの一方の端部に2つの液晶ユニットを結合させて化合物を分岐構造にしたことにより、化合物の融点が低下し、常温(25℃)で粘性の化合物となった。
【0086】
また、実施例6では、エステル基に結合した不斉炭素を液晶ユニットと柔軟ユニットとの間に設けたことにより、硬化物中の分子鎖の秩序性が向上し、熱拡散率(熱伝導率)がより一層高くなった。
さらに、無機充填材を配合した実施例7と比較例3とを比較するとわかるように、所定の柔軟ユニットを有する化合物を含む樹脂組成物は、溶剤に対する溶解性が高く、樹脂組成物中で均一に混合することができるため、成形性も良好であったのに対し、所定の柔軟ユニットを有さない化合物を含む樹脂組成物は、溶剤に対する溶解性が低く、樹脂組成物中に均一に混合することができないため、十分な成形性が得られなかった。
【0087】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、電気絶縁性及び熱伝導性が高い均質な樹脂硬化物を与え、且つ成形性に優れた樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、電気絶縁性及び熱伝導性が高い均質な樹脂硬化物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソゲン基を含む液晶ユニットと、前記液晶ユニットの両端に結合した柔軟ユニットと、末端の重合性基とを有する化合物を含有する樹脂組成物であって、
前記柔軟性ユニットは、以下の式:
【化1】

(式中、nは18以下の整数である)からなる群より選択される一種以上の基を含み、且つ前記液晶ユニットの一端に結合した前記柔軟ユニットと前記液晶ユニットの他端に結合した前記柔軟ユニットとが異なることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記液晶ユニットは非対称構造を有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記化合物は分岐構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記液晶ユニットは、ビフェニルエステル構造、ビフェニルエーテル構造、ビフェニルケトン構造、ビフェニルアミド構造、ベンゾオキサゾール構造、ベンゾチアゾール構造、及びベンゾイミダゾール構造からなる群より選択される構造を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記化合物は、カルボニル基及びエステル基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基と前記官能基に結合した不斉炭素とを前記液晶ユニットと前記柔軟ユニットとの間に有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
無機充填材をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物を重合させて得られることを特徴とする樹脂硬化物。
【請求項8】
絶縁シートとして使用されることを特徴とする請求項7に記載の樹脂硬化物。

【公開番号】特開2012−177060(P2012−177060A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41806(P2011−41806)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】