説明

樹脂組成物

【課題】耐熱性、熱伝導性、絶縁性、成形時の流動性、成形時の機器磨耗性に優れ、得られる成形品が割れにくく、安価な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】結晶性熱可塑性樹脂(A)と、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)と、熱伝導率が10〜100W/m・Kである充填剤(C)とを含有する樹脂組成物であって、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)は、エチレン、プロピレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも2種のオレフィンに由来する単量体単位を含有し、分子量分布(Mw/Mn)が1〜4である非晶性α−オレフィン系共重合体であり、結晶性熱可塑性樹脂(A)の含有量が0.3〜40容量%、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)の含有量が15〜80容量%、充填剤(C)の含有量が20〜70容量%である樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子・電気機器に用いられる集積回路で発生した熱を逃がす技術(放熱技術)が知られており、LED電球の電子部品のハウジング(放熱筐体)などには、熱伝導率の高いアルミ合金などが用いられてきた。近年、種々の形状に成形しやすく、軽量化および小型化が容易であることから、樹脂組成物が用いられている。例えば、特許文献1には、熱伝導率と機械的強度を有する熱可塑性樹脂に高熱伝導性無機繊維及び高熱伝導性無機粉末を共に充填せしめてなる樹脂組成物が記載されており、特許文献2には、導電性、熱伝導性を有する黒鉛粒子と樹脂とで構成された導電性組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−283456号
【特許文献2】特開2003−253127号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1および2に記載された樹脂組成物においても、耐熱性、熱伝導性、絶縁性、成形時の流動性、成形時の機器磨耗性、コストについては改良が求められていた。また、上記樹脂組成物を含む成形品はもろく、割れてしまうことがあった。
本発明の解決しようとする課題、即ち本発明の目的は、耐熱性、熱伝導性、絶縁性、成形時の流動性、成形時の機器磨耗性に優れ、得られる成形品が割れにくく、安価な樹脂組成物を提供することにある。また、該樹脂組成物を含む成形品、および該樹脂組成物を含む熱伝導部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち本発明は、結晶性熱可塑性樹脂(A)と、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)と、熱伝導率が10〜100W/m・Kである充填剤(C)とを含有する樹脂組成物であって、
非晶性α−オレフィン系共重合体(B)は、エチレン、プロピレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも2種のオレフィンに由来する単量体単位を含有し、分子量分布(Mw/Mn)が1〜4である非晶性α−オレフィン系共重合体であり、
結晶性熱可塑性樹脂(A)と非晶性α−オレフィン系共重合体(B)と充填剤(C)の合計を100容量%としたときに、結晶性熱可塑性樹脂(A)の含有量が0.3〜40容量%、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)の含有量が15〜80容量%、充填剤(C)の含有量が20〜70容量%である樹脂組成物である。また、該樹脂組成物を含む成形品、および該樹脂組成物を含む熱伝導部材である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐熱性、熱伝導性、絶縁性、成形時の流動性、成形時の機器磨耗性に優れ、得られる成形品が割れにくく、安価な樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の結晶性熱可塑性樹脂(A)としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エチレン−環状オレフィン共重合体樹脂などが挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、エチレン−不飽和エステル共重合体樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂などが挙げられる。
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などが挙げられる。
エチレン−不飽和エステル共重合体樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸エステル共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸グリシジル共重合体樹脂などが挙げられる。
本発明の結晶性熱可塑性樹脂(A)は、好ましくは、ポリオレフィン系樹脂であり、得られる樹脂組成物の耐熱性を高める観点から、より好ましくは、ポリプロピレン系樹脂である。また、結晶性熱可塑性樹脂(A)として、例えば無水マレイン酸などの誘導体で変性された結晶性熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0008】
ポリプロピレン系樹脂の製造方法としては、例えば、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分とからなるチーグラー・ナッタ型触媒、または、少なくとも1個のシクロペンタジエニル骨格を有する周期表第4族〜第6族の遷移金属化合物と助触媒成分とからなるメタロセン触媒を重合用触媒として用い、スラリー重合法、気相重合法、バルク重合法、溶液重合法またはこれらを組合せた重合法で、一段重合法または多段重合法によって、プロピレンを重合してプロピレン単独重合体を製造する方法や、プロピレンと、エチレン及び/または炭素原子数4〜12のオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンを共重合して共重合体を製造する方法が挙げられる。また、ポリプロピレン系樹脂として、市販品を用いてもよい。
【0009】
本発明の結晶性熱可塑性樹脂(A)は、示差走査熱量測定(DSC)によって観測される融解ピーク温度が120℃〜165℃の温度範囲にあることが好ましく、125℃〜160℃の温度範囲にあることがより好ましい。融解ピーク温度が120℃以上であると樹脂組成物の耐熱性が向上するため好ましい。融解ピーク温度が165℃以下であると、低温で樹脂を溶融するときの樹脂の流動性が高く、低温で成形することができるため好ましい。結晶性熱可塑性樹脂(A)の結晶融解熱量は、好ましくは30〜120J/gであり、より好ましくは60〜120J/gである。
【0010】
本発明の非晶性α−オレフィン系共重合体(B)は、エチレン、プロピレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも2種のオレフィンに由来する単量体単位を含有する非晶性α−オレフィン系共重合体である。炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、鎖状オレフィンなどが挙げられ、鎖状オレフィンとしては、直鎖状オレフィンや分岐状オレフィンなどが挙げられる。
直鎖状オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。
分岐状オレフィンとしては、例えば、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテンなどが挙げられる。
【0011】
該α−オレフィンの2種以上の具体的な組み合わせとしては、本発明の樹脂組成物の耐熱性を高める観点から、該α−オレフィンの炭素原子数の合計が6以上である組み合わせであることが好ましい。該α−オレフィンの2種以上の具体的な組み合わせとしては、例えば、エチレンと1−ブテン、エチレンと1−ヘキセン、エチレンと1−オクテン、エチレンと4−メチル−1−ペンテン、エチレンとプロピレンと1−ブテン、エチレンとプロピレンと1−ヘキセン、エチレンと1−ブテンと1−ヘキセン、プロピレンと1−ブテン、プロピレンと1−ヘキセン、プロピレンと1−オクテン、プロピレンと4−メチル−1−ペンテン、プロピレンと1−ブテンと1−ヘキセン、1−ブテンと1−ヘキセン、1−ブテンと1−オクテン、1−ヘキセンと1−オクテン等の組み合わせが挙げられるが、これらのうち、好ましくはプロピレンと1−ブテン、プロピレンと1−ヘキセン、プロピレンと1−オクテン、プロピレンと1−ブテンと1−ヘキセンであり、さらに好ましくはプロピレンと1−ブテン、プロピレンと1−ヘキセン、プロピレンと1−オクテンであり、最も好ましくは、プロピレンと1−ブテンである。
【0012】
本発明の非晶性α−オレフィン系共重合体(B)は、本発明の目的を損なわない範囲で、エチレン、プロピレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィン以外の単量体を更に共重合して得られる共重合体でもよく、該単量体としては、例えば、環状オレフィン、ビニル芳香族化合物、ポリエン化合物を挙げることができ、好ましくは環状オレフィンである。
【0013】
環状オレフィンとしては、例えば、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,5,6−トリメチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネン、5−エチリデンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−ヘキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−フルオロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,5−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−シクロへキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジクロロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−イソブチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、5−クロロノルボルネン、5,5−ジクロロノルボルネン、5−フルオロノルボルネン、5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメチルノルボルネン、5−クロロメチルノルボルネン、5−メトキシノルボルネン、5,6−ジカルボキシルノルボルネンアンハイドレート、5−ジメチルアミノノルボルネン、5−シアノノルボルネン、シクロペンテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3,5−ジメチルシクロペンテン、3−クロロシクロペンテン、シクロへキセン、3−メチルシクロへキセン、4−メチルシクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロヘキセン、3−クロロシクロヘキセン、シクロへプテン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0014】
ビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0015】
ポリエン化合物としては、共役ポリエン化合物および非共役ポリエン化合物を挙げることができる。
共役ポリエン化合物としては、例えば、脂肪族共役ポリエン化合物、脂環式共役ポリエン化合物などが挙げられる。脂肪族共役ポリエン化合物としては、直鎖状脂肪族共役ポリエン化合物や分岐状脂肪族共役ポリエン化合物などが挙げられる。
非共役ポリエン化合物としては、例えば、脂肪族非共役ポリエン化合物、脂環式非共役ポリエン化合物、芳香族非共役ポリエン化合物等が挙げられる。
これらは、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基等を有していてもよい。
【0016】
直鎖状脂肪族共役ポリエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−プロピル−1,3−ブタジエン、2−イソプロピル−1,3−ブタジエン、2−ヘキシル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、2−メチル−1,3−デカジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−オクタジエン、2,3−ジメチル−1,3−デカジエン等が挙げられる。
【0017】
脂環式共役ポリエン化合物としては、例えば、2−メチル−1,3−シクロペンタジエン、2−メチル−1,3−シクロヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−シクロペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−シクロヘキサジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−フルオロ−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ペンタジエン、2−クロロ−1,3−シクロペンタジエン、2−クロロ−1,3−シクロヘキサジエン等が挙げられる。
【0018】
脂肪族非共役ポリエン化合物としては、例えば、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,13−テトラデカジエン、1,5,9−デカトリエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−エチル−1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,5−ヘキサジエン、3,3−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、3,4−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘプタジエン、5−エチル−1,4−ヘプタジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、5−エチル−1,5−ヘプタジエン、3−メチル−1,6−ヘプタジエン、4−メチル−1,6−ヘプタジエン、4,4−ジメチル−1,6−ヘプタジエン、4−エチル−1,6−ヘプタジエン、4−メチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,4−オクタジエン、4−エチル−1,4−オクタジエン、5−エチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,5−オクタジエン、5−エチル−1,5−オクタジエン、6−エチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、6−エチル−1,6−オクタジエン、6−プロピル−1,6−オクタジエン、6−ブチル−1,6−オクタジエン、4−メチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,4−ノナジエン、4−エチル−1,4−ノナジエン、5−エチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,5−ノナジエン、5−エチル−1,5−ノナジエン、6−エチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,6−ノナジエン、6−エチル−1,6−ノナジエン、7−エチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,7−ノナジエン、8−メチル−1,7−ノナジエン、7−エチル−1,7−ノナジエン、5−メチル−1,4−デカジエン、5−エチル−1,4−デカジエン、5−メチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,5−デカジエン、5−エチル−1,5−デカジエン、6−エチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,6−デカジエン、6−エチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,6−デカジエン、7−エチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,7−デカジエン、7−エチル−1,7−デカジエン、8−エチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,8−デカジエン、9−メチル−1,8−デカジエン、8−エチル−1,8−デカジエン、6−メチル−1,6−ウンデカジエン、9−メチル−1,8−ウンデカジエン、6,10−ジメチル−1,5,9−ウンデカトリエン、5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、13−エチル−9−メチル−1,9,12−ペンタデカトリエン、5,9,13−トリメチル−1,4,8,12−テトラデカジエン、8,14,16−トリメチル−1,7,14−ヘキサデカトリエン、4−エチリデン−12−メチル−1,11−ペンタデカジエン等が挙げられる。
【0019】
脂環式非共役ポリエン化合物としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、2,5−ノルボルナジエン、2−メチル−2,5−ノルボルナジエン、2−エチル−2,5−ノルボルナジエン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、1,4−ジビニルシクロヘキサン、1,3−ジビニルシクロヘキサン、1,3−ジビニルシクロペンタン、1,5−ジビニルシクロオクタン、1−アリル−4−ビニルシクロヘキサン、1,4−ジアリルシクロヘキサン、1−アリル−5−ビニルシクロオクタン、1,5−ジアリルシクロオクタン、1−アリル−4−イソプロペニルシクロヘキサン、1−イソプロペニル−4−ビニルシクロヘキサン、1−イソプロペニル−3−ビニルシクロペンタン、メチルテトラヒドロインデン等が挙げられる。
【0020】
芳香族非共役ポリエン化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ビニルイソプロペニルベンゼン等が挙げられる。
【0021】
本発明における非晶性α−オレフィン系共重合体(B)は、本発明の樹脂組成物を含む成形品を割れにくくするという観点から、好ましくは示差走査熱量測定(DSC)によって観測される結晶融解熱量が30J/g未満であり、より好ましくは10J/g以下であり、さらに好ましくは5J/g以下であり、特に好ましくは結晶融解ピークが実質的に観測されないことである。結晶融解ピークが実質的に観測されないとは、−100〜200℃の温度範囲に、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。そして最も好ましくは、−100〜200℃の温度範囲に、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークおよび結晶化熱量が1J/g以上の結晶化ピークのいずれもが観測されないことである。
【0022】
本発明における非晶性α−オレフィン系共重合体(B)の分子量分布(Mw/Mn)は、本発明の樹脂組成物のべたつきを少なくし、成形品の取り扱い性を高める観点から1〜4であり、より好ましくは1〜3である。なお、分子量分布はゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)によって測定される。
【0023】
本発明における非晶性α−オレフィン系共重合体(B)がエチレンに由来する単量体単位を含有する場合、本発明の樹脂組成物を含む成形品を割れにくくするという観点から、下記の関係式を満たすことが好ましい。
[y/(x+y)]≧0.5
より好ましくは、
[y/(x+y)]≧0.6であり、
更に好ましくは、
[y/(x+y)]≧0.8である。
なお、上記関係式において、xは非晶性α−オレフィン系共重合体(B)中のエチレンに由来する単量体単位の含有量(モル%)であり、yは非晶性α−オレフィン系共重合体(B)中の炭素原子数4〜20のα−オレフィンに由来する単量体単位の含有量(モル%)である。
【0024】
非晶性α−オレフィン系共重合体(B)の極限粘度は、本発明の樹脂組成物のべたつきを少なくし、本発明の樹脂組成物を含む成形品を割れにくくするという観点から、好ましくは0.1dl/g以上であり、より好ましくは0.3dl/g以上であり、更に好ましくは0.5dl/g以上であり、特に好ましくは0.7dl/g以上である。また、極限粘度は、本発明の樹脂組成物を用いた射出成形などの成形時の流動性を高める観点から、好ましくは10dl/g以下であり、より好ましくは7dl/g以下であり、更に好ましくは5dl/g以下であり、特に好ましくは4dl/g以下である。なお、極限粘度は、135℃テトラリン中でウベローデ粘度計を用いて測定される。
【0025】
本発明の非晶性α−オレフィン系共重合体(B)は、チーグラー・ナッタ型触媒またはシングルサイト触媒(メタロセン系等)を用いて製造することができるが、本発明の樹脂組成物の耐熱性を高める観点から、シングルサイト触媒が好ましく、かかるシングルサイト触媒としては、メタロセン系触媒や非メタロセン系の錯体触媒などが挙げられる。
メタロセン系触媒としては、例えば、特開昭58−19309号公報、特開昭60−35005号公報、特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、特開昭60−35008号公報、特開昭61−130314号公報、特開平3−163088号公報、特開平4−268307号公報、特開平9−12790号公報、特開平9−87313号公報、特開平11−80233号公報、特表平10−508055号公報等に記載されたものが挙げられる。
非メタロセン系の錯体触媒としては、特開平10−316710号公報、特開平11−100394号公報、特開平11−80228号公報、特開平11−80227号公報、特表平10−513489号公報、特開平10−338706号公報、特開平11−71420号公報等に記載されたものが挙げられる。
これらの中でも、入手容易性の観点から、好ましくはメタロセン系触媒であり、より好ましくはシクロペンタジエン形アニオン骨格を少なくとも1個有し、C1対掌構造を有する周期表第3族〜第12族の遷移金属錯体である。また、メタロセン系触媒を用いた製造方法としては、例えば欧州特許公開第1211287号明細書の方法が挙げられる。
【0026】
本発明における充填剤(C)は、熱伝導率が10〜100W/m・Kである充填剤である。具体的には、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミなどの熱伝導性フィラー、芳香族ポリアミドなどの有機繊維や有機繊維をさらに延伸した延伸有機繊維やセラミック繊維や、金属粉、金属フレーク、金属リボンなどが挙げられる。金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できるが、熱伝導性、絶縁性、成形性、価格や入手しやすさの観点から、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛が好ましく、高温での物性安定性の観点から、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛がより好ましい。本発明においては、これら充填剤(C)を単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0027】
本発明における充填剤(C)は、成形時の機器磨耗性の観点から、モース硬度が6以下であることが好ましく、より好ましくはモース硬度が5以下である。モース硬度が6以下であれば、成形機内でスクリューなどを磨耗させてしまう場合がある。
【0028】
本発明に用いられる充填剤(C)の形状は、球状、板状、立方体状、核部と該核部から異なる4軸方向に伸びた針状部とからなるテトラポット状のいずれかの形状であることが好ましい。これら充填剤を単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0029】
本発明における充填剤(C)を、2種以上用いる場合、球状、および/または立方体状の充填剤と、核部と該核部から異なる4軸方向に伸びた針状部とからなるテトラポット状の充填剤を併用する方が好ましい。その場合、「球状、および/または立方体状の充填剤」と、「核部と該核部から異なる4軸方向に伸びた針状部とからなるテトラポット状の充填剤」の容量比は、「球状、および/または立方体状の充填剤」の容量と「テトラポット状の充填剤」の容量の合計を100容量%とするときに、「球状、および/または立方体状の充填剤」の容量が95〜50容量%であり、「テトラポット状の充填剤」の容量が5〜50容量%であることが、成形時の樹脂組成物の流動性が良好であり、低コストであるため好ましく、より好ましくは、「球状、および/または立方体状の充填剤」の容量が90〜60容量%であり、「テトラポット状の充填剤」の容量が10〜40容量%である。
【0030】
なお、本発明に使用する上記の充填剤はその表面をカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
【0031】
本発明における充填剤(C)の平均粒径は、好ましくは0.01〜50μm、より好ましくは0.1〜30μm、さらに好ましくは0.1〜20μmである。充填剤(C)の平均粒径が0.01μm以上であると、充填剤が凝集しにくく、充分な放熱性を発揮し、充填剤(C)の平均粒径が50μmであると、充填剤の価格が安価であるため好ましい。
【0032】
本発明の樹脂組成物は、結晶性熱可塑性樹脂(A)と非晶性α−オレフィン系共重合体(B)と充填剤(C)の合計を100容量%としたときに、結晶性熱可塑性樹脂(A)の含有量が0.3〜40容量%、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)の含有量が15〜80容量%、充填剤(C)の含有量が20〜70容量%である樹脂組成物からなる。なお、本願における容量は23℃で測定したときの値である。
【0033】
本発明の樹脂組成物中の(A)の含有量は、該組成物中の(A)と(B)と(C)の合計を100容量%とするとき、耐熱性を高める観点から、0.3容量%以上であり、好ましくは0.5容量%以上であり、より好ましくは1.0容量%以上である。また、本発明の樹脂組成物中の(A)の含有量は、本発明の樹脂組成物を含む成形品を割れにくくするという観点から、好ましくは37容量%以下であり、より好ましくは35容量%以下であり、さらに好ましくは30容量%以下である。
【0034】
本発明の樹脂組成物中の(B)の含有量は、該組成物中の(A)と(B)と(C)の合計を100容量%とするとき、耐熱性を高める観点から、好ましくは70容量%以下であり、より好ましくは65容量%以下であり、さらに好ましくは60容量%以下である。また、本発明の樹脂組成物中の(B)の含有量は、本発明の樹脂組成物を含む成形品を割れにくくするという観点から、好ましくは20容量%以上であり、より好ましくは25容量%以上であり、さらに好ましくは30容量%以上である。
【0035】
本発明の樹脂組成物中の(A)と(B)の容量比((A)(容量%)/(B)(容量%))は、該組成物中の(A)と(B)と(C)の合計を100容量%とすると、熱伝導性を高める観点から、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.02以上であり、さらに好ましくは0.03以上である。また、該組成物中の(A)と(B)の容量比は、本発明の樹脂組成物を含む成形品を割れにくくするという観点から、好ましくは1.0以下であり、より好ましくは0.8以下であり、さらに好ましくは0.5以下である。
【0036】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、結晶性熱可塑性樹脂や非晶性α−オレフィン系共重合体以外の樹脂やエラストマーと組み合わせて用いてもよい。
【0037】
エラストマーとしては、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、液状ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンランダム共重合体ゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体ゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体ゴム、水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体ゴム、水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体ゴム、ポリアクリロニトリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、部分水添アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソブチレン−イソプレン共重合体ゴム、ハロゲン化イソブチレン−イソプレン共重合体ゴムが挙げられる。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、イオウ架橋、過酸化物架橋、金属イオン架橋、シラン架橋、樹脂架橋、電子線架橋等の架橋をさせることができる。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、有機化酸化物、金属石鹸などのフィラー分散剤、老化防止剤、ヒンダードフェノール系やリン系等の酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、ベンゾフェノール系やベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系等の光安定剤、シランカップリング剤、着色剤、アンチブロッキング剤、滑剤、難燃剤、粘着付与剤等の添加剤、ナフテン油およびパラフィン系鉱物油等の鉱物油系軟化剤を含んでいてもよい。
【0040】
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、例えば、各成分を、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、一軸および二軸押出機等の通常の混練装置で混練した後、シートあるいはストランド状で押出し、ペレタイザーやシート粉砕機などにより、ペレット化する方法などが挙げられる。混練温度は、通常120〜300℃であり、好ましくは130℃〜250℃である。混練時間は、用いられる成分の種類や量、混練装置の種類に依存するが、加圧ニーダーやバンバリーミキサー等の混練装置を使用する場合、通常約3〜60分程度である。混練工程においては、各成分を一括して混練する方法を採用してもよいし、各成分の一部を混練した後、残部を添加して混練を継続する多段分割混練法を採用しても良いが、混練時間を短縮し、製造コストを抑制する観点から結晶性熱可塑性樹脂(A)や非晶性α−オレフィン系共重合体(B)などの熱可塑性樹脂を溶融混練した後、充填剤(C)などの粉体を多段投入し、分割混練する方法が好ましい。
【0041】
本発明の樹脂組成物からなる成形品は、押出成形、射出成形、プレス成形、カレンダー成形、インフレーション成形、Tダイ成形、発泡成形等の公知の方法によって成形される。成形時の樹脂温度は、通常120〜300℃であり、好ましくは130〜250℃である。また、結晶性熱可塑性樹脂(A)や非晶性α−オレフィン系共重合体(B)などの熱可塑性樹脂を溶媒に溶かし、その溶媒に充填剤(C)を懸濁させ、次いで溶媒を除去する方法によっても得ることができる。
【0042】
本発明の樹脂組成物からなる成形品は、耐熱性、熱伝導性、絶縁性に優れていることなどの特性を生かし、各種ケース、ギヤーケース、LEDランプ熱伝導部材関連部品、コネクター、リレーケース、スイッチ、バリコンケース、光ピックアップレンズホルダー、光ピックアップスライドベース、各種端子板、変成器、プリント配線板、液晶パネル枠、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、コンピューター、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスク・デジタルビデオディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、プリンター・複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディマー用ポテンショメーターベース、パワーシートギアハウジング、エアコン用サーモスタットベース、エアコンパネルスィッチ基板、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ランプハウジング、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品、パソコンハウジング、携帯電話ハウジングなどに用いられる熱伝導部材に好適である。
【実施例】
【0043】
以下の実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。
[I]測定方法
物性測定は、下記のとおりに行った。
(1)メルトフローレイト(MFR、単位:g/10分)
結晶性熱可塑性樹脂(A)および樹脂組成物のメルトフローレイト(MFR)はJIS K 7210に従って測定した。試験温度230℃、試験荷重21.18Nで、重量法にて測定した。
樹脂組成物のメルトフローレイトが大きいほど、成形性に優れると判定した。
(2)結晶融解熱量(単位:J/g)および融解ピーク温度(Tm、単位:℃)
結晶性熱可塑性樹脂(A)、および非晶性α−オレフィン系共重合体(B)の結晶融解熱量および融解ピーク温度(Tm)は、JIS K 7122に従い、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)社製DSC220C:入力補償DSC)によって測定を行った。 具体的には、状態調整として、試料重合体を室温から200℃まで30℃/分で昇温し、200℃で5分間保持した。次に、10℃/分で−50℃まで降温し、−50℃で5分間保持した後、−50℃から200℃まで10℃/分で昇温し、結晶融解熱量および結晶化ピーク温度の測定を行った
(3)分子量分布
ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法によって測定した。測定装置としてはWaters社製150C/GPCを用い、測定溶媒としてはo−ジクロロベンゼンを用い、カラムとしては昭和電工(株)社製Sodex Packed ColumnA−80M(2本)を用い、分子量標準物質としては標準ポリスチレン(東ソー(株)社製、分子量68〜8,400,000)を用い、溶出温度140℃、溶出溶媒流速1.0ml/分の条件で、試料重合体約5mgを5mlのo−ジクロロベンゼンに溶解したものを400μl注入し、示差屈折検出器にてポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、両者の比である分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
(4)非晶性α-オレフィン系共重合体(B)に含有される各単量体に由来する単量体単位の含有量(単位:モル%)
実施例で用いた非晶性α-オレフィン系共重合体(B)であるプロピレン−1−ブテン重合体中の各単量体単位の含有量は、核磁気共鳴装置(Bruker社製 商品名AC−250)を用いて、13C NMRスペクトルの測定結果に基づき算出した。具体的には、13C NMRスペクトルのプロピレンに由来する単量体単位に由来するメチル炭素のスペクトル強度と1−ブテンに由来する単量体単位に由来するメチル炭素のスペクトル強度の比からプロピレンに由来する単量体単位と1−ブテンに由来する単量体単位の組成比を算出した。
(5)極限粘度([η]、単位:dl/g)
ウベローデ粘度計を用いて、135℃のテトラリン溶媒中で測定を行った。非晶性オレフィン系共重合体の濃度(c)が、0.6、1.0、1.5mg/mlであるテトラリン溶液を調製し、試料溶液の液面が標線間を流過する時間を3回測定した。それぞれの濃度で3回繰り返し測定し、得られた3回の値の平均値をその濃度における比粘度(ηsp)とし、ηsp/cのcをゼロ外挿した値を極限粘度([η])として求めた。
(6)密度(単位:kg/m
結晶性熱可塑性樹脂(A)、および非晶性α−オレフィン系共重合体(B)の密度は、JIS K 7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定した。
(7)耐熱性(樹脂組成物の融解ピーク温度Tm、単位:℃)
JIS K 7121に従い、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)社製DSC220C:入力補償DSC)によって融解ピーク温度(Tm)の測定を行った。融解ピーク温度が高いほど、耐熱性に優れる。
(8)熱伝導率(W/m・K)
ホットディスク法熱物性測定装置TPS−2500(京都電子工業株式会社製)を使用して測定した。測定試料は、本発明の樹脂組成物を、180℃熱プレスシート成形にて縦30mm×横20mm×厚み3mmのシートを2個作成した。直径4mmφのセンサ−を、用意したシートで上下に挟み、冶具にセットした。
ホットディスク法で測定した熱伝導率の数値が大きいほど、熱伝導性に優れる。
(9)絶縁性
JIS−K−6911に規定された方法に従って、表面固有抵抗値(単位:Ω)を測定した。測定試料は、本発明の樹脂組成物を、180℃熱プレスシート成形にて、縦100mm×横100mm×厚み3mmのシートを作成し、東亜DKK社製 デジタル絶縁計DSM−8103(電極:SME−8311)により、500Vの測定電圧にて表面固有抵抗値を測定した。表面固有抵抗値が1×1014Ω以上の場合、絶縁性に優れる(記号○で表示する)と判定した。
(10)成形時の機器磨耗性
樹脂組成物を5回混練し、混練前後のスクリューの磨耗を目視にて確認し、下記のように判定した。
○:磨耗なし
△:スクリューに若干の磨耗あり
(11)成形品の割れにくさ
樹脂組成物を、180℃5分予熱、180℃5分10MPa、30℃5分冷却プレス成形にて、縦150mm×横25mm×厚み1mmのシートを作成し、折り曲げ、下記のように判定した。
◎:鈍角、鋭角に折り曲げても割れない。
○:鋭角、鈍角に折り曲げても割れないが、何回か折り曲げると少しひびが入る。
△:鈍角に折り曲げても割れないが、鋭角に折り曲げると割れる。
×:鈍角、鋭角に折り曲げると割れる。
【0044】
実施例1
[非晶性α−オレフィン系共重合体(B)の製造]
攪拌器を備えた100LのSUS製反応器中で、プロピレンおよび1−ブテンを、分子量調節剤として水素を用い、以下の方法で連続的に重合させて、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)に相当するプロピレン−1−ブテン共重合体を得た。
反応器の下部から、重合溶媒としてヘキサンを100L/時間の供給速度で、プロピレンを24.00kg/時間の供給速度で、1−ブテンを1.81kg/時間の供給速度で、それぞれ連続的に供給した。
また同様に、重合用触媒として、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドを0.005g/時間の供給速度で、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.298g/時間の供給速度で、トリイソブチルアルミニウムを2.315g/時間の供給速度で、それぞれ連続的に供給した。
反応器内部の反応液の容量が常に100Lを維持するように、反応器の上部から反応液を連続的に抜き出した。
重合反応は、反応器の外部に取り付けられたジャケットに冷却水を循環させることによって、45℃で行った。
反応器の上部から連続的に抜き出された反応液に、少量のエタノールを添加して重合反応を停止させた後、未反応の単量体を除去し、次いで、反応液に含まれる重合用触媒の残渣を除去するため水洗浄し、最後に大量の水中でスチームによって重合溶媒を除去することによって、プロピレン−1−ブテン共重合体(以下、重合体(B−1)と称する。)を得、これを80℃で1昼夜減圧乾燥した。重合体(B−1)のプロピレンに由来する単量体単位の含有量は94.5モル%、1−ブテンに由来する単量体単位の含有量は5.5モル%であった。また、重合体(B−1)の[η]は2.3dl/gであり、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であり(Mw=420000、Mn=191000)、密度860kg/m、結晶融解ピークまたは結晶化ピークのいずれも観測されなかった。
【0045】
[結晶性熱可塑性樹脂(A)と非晶性α−オレフィン系共重合体(B)のマスターバッチの製造]
外層に上記によって製造された非晶性プロピレン−1−ブテン共重合体95重量部にヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製「Irganox1010」0.2重量部および芳香族フォスファイト系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製「Irgafos168」0.2重量部を配合し、次に、過酸化物(日本油脂(株)製「パーカドックスPO−25B−10」0.3重量部を配合したものを用い、内層に結晶性プロピレン系重合体(住友化学(株)社製、結晶性プロピレン単独重合体「ノーブレンFLX80E4」、MFR=8.0g/10分、密度=900kg/m、Tm=160℃)5重量部用いて、二軸押出機によって220℃でシートを押出し、粉砕ペレット化した。得られたのマスターバッチ(A−B−1)のMFRは10.0g/10分であった。
【0046】
評価用の樹脂組成物は、次の方法に従って作成した。
[樹脂組成物の作成]
結晶性熱可塑性樹脂(A)と非晶性α−オレフィン系共重合体(B)として、上記で得られたマスターバッチ(A−B−1)を44.6容量%(内訳:結晶性熱可塑性樹脂(A)2.1容量%、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)42.5容量%)、充填材(C)として、堺化学(株)社製「酸化亜鉛1種」(球状、粒径0.6μm、熱伝導率25W/m・K、比重5.6、モース硬度5.5)を55.4容量%用いた。あらかじめ、充填材(C)の「酸化亜鉛1種」に、分散剤(堺化学(株)社製「ステアリン酸マグネシウム」)0.5重量部と過酸化物(日本油脂(株)製「パーカドックスPO−25B−10」)0.3重量部を混合した。
二軸のバッチ式混練機ブラベンダープラスチコーダー(ブラベンダー社製)を用いて温度230℃、スクリュー回転数20rpmでマスターバッチ(A−B−1)を溶融させた後、充填材(C)の「酸化亜鉛1種」と分散剤と過酸化物の混合物を3回に分けて投入し、2分間混練した後、100rpmで5分間溶融混練した。得られた樹脂組成物の物性評価結果を表1に示す。
【0047】
実施例2
上記で得られたマスターバッチ(A−B−1)を36.5容量%(内訳:結晶性熱可塑性樹脂(A)1.8容量%、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)34.7容量%)、さらに結晶性熱可塑性樹脂(A)として、住友化学(株)製、結晶性プロピレン単独重合体「ノーブレンU501E1」(MFR=120g/10分、Tm=164℃、結晶融解熱量=90J/g)を15容量%追加し、充填材(C)として、「酸化亜鉛1種」を48.5容量%用い、スクリュー回転数20rpmでマスターバッチ(A−B−1)と追加した結晶性熱可塑性樹脂(A)を溶融混練させた後、充填材(C)の「酸化亜鉛1種」と分散剤と過酸化物の混合物を投入した以外は、実施例1と同様に行った。得られた樹脂組成物の物性評価結果を表1に示す。
【0048】
実施例3
上記で得られたマスターバッチ(A−B−1)を39.2容量%(内訳:結晶性熱可塑性樹脂(A)2.0容量%、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)37.2容量%)、さらに結晶性熱可塑性樹脂(A)として、「ノーブレンU501E1」を12.3容量%追加した以外は、実施例2と同様に行った。得られた樹脂組成物の物性評価結果を表1に示す。
【0049】
実施例4
上記で得られたマスターバッチ(A−B−1)を43.8容量%(内訳:結晶性熱可塑性樹脂(A)2.2容量%、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)41.6容量%)、さらに結晶性熱可塑性樹脂(A)として、「ノーブレンU501E1」を7.7容量%追加し、過酸化物を1重量部にした以外は、実施例2と同様に行った。得られた樹脂組成物の物性評価結果を表1に示す。
【0050】
実施例5
上記で得られたマスターバッチ(A−B−1)を46.4容量%(内訳:結晶性熱可塑性樹脂(A)2.3容量%、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)44.1容量%)、さらに結晶性熱可塑性樹脂(A)として、「ノーブレンU501E1」を5.1容量%追加した以外は、実施例2と同様に行った。得られた樹脂組成物の物性評価結果を表1に示す。
【0051】
実施例6
上記で得られたマスターバッチ(A−B−1)を52.7容量%(内訳:結晶性熱可塑性樹脂(A)2.6容量%、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)50.1容量%)、さらに結晶性熱可塑性樹脂(A)として、「ノーブレンU501E1」を9.3容量%追加し、充填材(C)として、堺化学(株)社製「酸化亜鉛1種」(粒径0.6ミクロン、熱伝導率25W/m・K、比重5.6)を26.6容量%と松下産業情報機器(株)製「パナテトラWZ−0511」(テトラポット状、熱伝導率25.3W/m・K、比重5.78、モース硬度5.5)を11.4容量%とし、過酸化物を1重量部にした以外は、実施例2と同様に行った。得られた樹脂組成物の物性評価結果を表1に示す。
【0052】
実施例7
上記で得られたマスターバッチ(A−B−1)を37.2容量%(内訳:結晶性熱可塑性樹脂(A)1.9容量%、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)35.3容量%)、さらに結晶性熱可塑性樹脂(A)として、「ノーブレンU501E1」を24.8容量%追加し、充填材(C)として、「酸化亜鉛1種」を38容量%とした以外は、実施例2と同様に行った。得られた樹脂組成物の物性評価結果を表1に示す。
【0053】
実施例8
上記で得られたマスターバッチ(A−B−1)を52.7容量%(内訳:結晶性熱可塑性樹脂(A)2.6容量%、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)50.1容量%)、さらに結晶性熱可塑性樹脂(A)として、「ノーブレンU501E1」を9.3容量%追加し、充填材(C)として、「酸化亜鉛1種」を38容量%とした以外は、実施例2と同様に行った。得られた樹脂組成物の物性評価結果を表2に示す。
【0054】
実施例9
上記で得られたマスターバッチ(A−B−1)を46.6容量%(内訳:結晶性熱可塑性樹脂(A)2.3容量%、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)44.3容量%)、充填材(C)として、神島化学(株)社製「炭酸マグネシウム MSS」(球状、粒径1.2ミクロン、熱伝導率15W/m・K、比重3.0、モース硬度3.5)を53.4容量%とした以外は、実施例1と同様に行った。得られた樹脂組成物の物性評価結果を表2に示す。
【0055】
実施例10
上記で得られたマスターバッチ(A−B−1)を53.2容量%(内訳:結晶性熱可塑性樹脂(A)2.7容量%、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)50.5容量%)、充填材(C)として、住友化学(株)社製「アルミナA−21」(球状、粒径45ミクロン、熱伝導率35W/m・K、比重3.9、モース硬度9)を46.8容量%とした以外は、実施例9と同様に行った。得られた樹脂組成物の物性評価結果を表2に示す。
【0056】
実施例11
上記で得られたマスターバッチ(A−B−1)を44.6容量%(内訳:結晶性熱可塑性樹脂(A)2.1容量%、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)42.5容量%)、
充填材(C)として、堺化学(株)社製「酸化亜鉛1種」を49.9容量%と松下産業情報機器(株)製「パナテトラWZ−0511」を5.5容量%とした以外は、実施例1と同様に行った。得られた樹脂組成物の物性評価結果を表2に示す。
【0057】
実施例12
充填材(C)として、堺化学(株)社製「酸化亜鉛1種」を38.8容量%と松下産業情報機器(株)製「パナテトラWZ−0511」を16.6容量%とした以外は、実施例1と同様に行った。得られた樹脂組成物の物性評価結果を表2に示す。
【0058】
実施例13
充填材(C)として、堺化学(株)社製「酸化亜鉛1種」を27.7容量%と松下産業情報機器(株)製「パナテトラWZ−0511」を27.7容量%とした以外は、実施例1と同様に行った。得られた樹脂組成物の物性評価結果を表2に示す。
【0059】
実施例14
充填材(C)として、松下産業情報機器(株)製「パナテトラWZ−0511」を55.4容量%とした以外は、実施例1と同様に行った。得られた樹脂組成物の物性評価結果を表2に示す。
【0060】
比較例1
上記で得られたマスターバッチ(A−B−1)を43.1容量%(内訳:結晶性熱可塑性樹脂(A)2.1容量%、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)41.0容量%)、充填材(C)として、林化成(株)社製「エスカロン#2000」(炭酸カルシウム、球状、粒径1.7ミクロン、熱伝導率2W/m・K、比重2.6、モース硬度3.5)を56.9容量%とした以外は、実施例1と同様に行った。得られた樹脂組成物の物性評価結果を表3に示す。
【0061】
比較例2
結晶性熱可塑性樹脂(A)として、住友化学(株)製、結晶性プロピレン単独重合体「ノーブレンU501E1」(MFR=120g/10分、Tm=164℃、結晶融解熱量=90J/g)を45.4容量%、充填材(C)として、「酸化亜鉛1種」を54.6容量%とした以外は、実施例1と同様に行った。得られた樹脂組成物の物性評価結果を表3に示す。
【0062】
比較例3
上記で得られたマスターバッチ(A−B−1)を51.8容量%(内訳:結晶性熱可塑性樹脂(A)2.6容量%、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)49.2容量%)、さらに結晶性熱可塑性樹脂(A)として、「ノーブレンU501E1」を29.5容量%追加し、充填材(C)として、「酸化亜鉛1種」を18.7容量%とした以外は、実施例2と同様に行った。得られた樹脂組成物の物性評価結果を表3に示す。
【0063】
比較例4
上記で得られたマスターバッチ(A−B−1)を2.6容量%(内訳:結晶性熱可塑性樹脂(A)0.1容量%、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)2.5容量%)、さらに結晶性熱可塑性樹脂(A)として、「ノーブレンU501E1」を48.7容量%追加し、充填材(C)として、「酸化亜鉛1種」を48.7容量%とした以外は、実施例2と同様に行った。得られた樹脂組成物の物性評価結果を表3に示す。
【0064】
比較例5
上記で得られたマスターバッチ(A−B−1)を25.6容量%(内訳:結晶性熱可塑性樹脂(A)1.3容量%、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)24.3容量%)、充填材(C)として、「酸化亜鉛1種」を74.4容量%とした以外は、実施例1と同様に行った。得られた樹脂組成物の物性評価結果を表3に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
本発明の樹脂組成物は、耐熱性、熱伝導性、絶縁性、成形時の流動性、成形時の機器磨耗性に優れ、得られる成形品が割れにくく、安価な樹脂組成物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性熱可塑性樹脂(A)と、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)と、熱伝導率が10〜100W/m・Kである充填剤(C)とを含有する樹脂組成物であって、
非晶性α−オレフィン系共重合体(B)は、エチレン、プロピレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも2種のオレフィンに由来する単量体単位を含有し、分子量分布(Mw/Mn)が1〜4である非晶性α−オレフィン系共重合体であり、
結晶性熱可塑性樹脂(A)と非晶性α−オレフィン系共重合体(B)と充填剤(C)の合計を100容量%としたときに、結晶性熱可塑性樹脂(A)の含有量が0.3〜40容量%、非晶性α−オレフィン系共重合体(B)の含有量が15〜80容量%、充填剤(C)の含有量が20〜70容量%である樹脂組成物。
【請求項2】
非晶性α−オレフィン系共重合体(B)が、下記の要件(1)と(2)の両方を満たす請求項1記載の樹脂組成物。
(1)示差走査熱量測定によって融解ピークが実質的に観測されないこと。
(2)極限粘度が0.1〜10dl/gであること。
【請求項3】
充填剤(C)のモース硬度が6以下である請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
充填剤(C)の形状が、球状、板状、立方体状、核部と該核部から異なる4軸方向に伸びた針状部とからなるテトラポット状のいずれかの形状である充填剤群から選ばれる少なくとも1種の充填剤である請求項1から3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
結晶性熱可塑性樹脂(A)が示差走査熱量測定によって観測される融解ピーク温度が120℃〜165℃である結晶性ポリプロピレンである請求項1から4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の樹脂組成物を含む成形品。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の樹脂組成物を含む熱伝導部材。

【公開番号】特開2012−102202(P2012−102202A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250559(P2010−250559)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】