説明

樹脂製熱伝達ユニットの製造方法

【課題】効率的な熱交換を維持しつつ、効率的な製造を可能とする樹脂製熱伝達ユニットの製造方法の提供。
【解決手段】放熱用あるいは受熱用流体の内部流路を有する平板状の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法であって、互いのキャビティを対向させて配置され、型締め位置と開放位置との間で相対移動可能な一対の分割金型32A、32Bを準備する段階と、表面に内部流路の一部を形成すべき溶融状態の熱可塑性樹脂製シートP1と、伝熱板を構成する熱可塑性樹脂製シートP2とを互いに間隔を隔てて、開放位置の分割金型の間に配置する段階と、熱可塑性樹脂製シートP1と金型32Aとの間に密閉空間を形成して、該密閉空間から空気を減圧することにより、熱可塑性樹脂製シートを吸引して、内部流路と相補形状の第1凹溝を形成する段階と、前記一対の分割金型を型締め位置まで移動させて面溶着し、該第1凹溝を閉鎖することにより内部流路を形成する段階とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製熱伝達ユニットの製造方法に関し、より詳細には、効率的な熱交換を維持しつつ、効率的な製造を可能とする樹脂製熱伝達ユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本件出願人は、特許文献1において、床暖房パネルユニットの製造方法について提案している。
この床暖房パネルユニットは、金属薄膜と熱可塑性樹脂層とを接着し、金属薄膜側に放熱配管を収容する長溝を形成した伝熱シートと、熱可塑性樹脂製シートと、発泡樹脂製基体との矩形平板状の3層の積層構造から概略構成され、伝熱シートを上側、発泡樹脂製基体を下側にして床面に配置される。
【0003】
この床暖房パネルユニットの製造方法は、表面に長手方向に延びる突条を備えたキャビティを有する金型に対して、金属薄膜と熱可塑性樹脂層とを接着した伝熱シートを、該突条に略沿う形状に予め変形させたうえで、金属薄膜がキャビティ側となるようにキャビティ内に配置する段階と、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを伝熱シートの熱可塑性樹脂層の側に隣接するように金型に配置する段階と、金型のキャビティと溶融状態の熱可塑性樹脂製シートとにより密閉空間を形成する段階と、金型の側から密閉空間内を吸引することにより、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを熱可塑性樹脂層を介して伝熱シートに溶着するとともに、金属薄膜を突条に押し付けて、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートおよび熱可塑性樹脂層を賦形して、金属薄膜のキャビティに対向する面に熱媒流通用放熱管を収容するための長溝を形成する段階と、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートが冷えて固まる前に、伝熱シートが溶着されている側と反対側から発泡樹脂製基体を溶融状態の熱可塑性樹脂製シートに対して押し付けることにより、発泡樹脂製基体を熱可塑性樹脂製シートに溶着固定する段階と、を有する構成としている。
【0004】
このような床暖房パネルユニットの製造方法によれば、床の下方への放熱を抑制する発泡樹脂製基体と、床の上方への放熱を伝導形態で促進する伝熱シートとを一体成形することにより、前もってユニットとして完成可能であり、現場での施工性あるいは作業性を向上させることが可能である。
しかしながら、このような床暖房パネルユニットには、放熱配管と床暖房パネルユニットとが別々であることに起因して、以下のような技術的問題点が存する。
すなわち、放熱配管を含めた床暖房システムの効率的な製造が困難な点である。
【0005】
より詳細には、床暖房パネルユニットの一方の表面には、放熱配管を収容するための長溝を形成し、床暖房パネルユニットの製造後に、形成した長溝内に放熱配管を収容し、さらに通常金属箔から形成される帯状シートにより長溝を覆った後に、たとえば床仕上げ材を配置する必要があり、工数がかさみ、効率的な製造が困難となる。
特に、放熱配管は、通常、ループ状の蛇行形態で床全面に張り巡らされることから、直線部とU字状湾曲部とから構成され、直線部とU字状湾曲部とを交互に接続する必要があった。
【0006】
この点において、床暖房パネルユニットの製造段階において、放熱配管を収容するための長溝を形成するのではなく、放熱配管を内部流路として成形することが考えられる。
しかしながら、放熱配管を含め、2枚の樹脂製板状体を溶着することにより一体のパネル状とした場合に、たとえば2枚の樹脂製板状体それぞれにおいて、放熱配管の一部を構成する凹部(たとえば、半円状断面)を形成し、凹部の開口同士を突き合わせる態様でこの2枚の樹脂製板状体を突き合わせ溶着するとすれば、新たな技術的問題点が引き起こされる。
【0007】
第1に、放熱配管による放熱を樹脂製板状体を介して床面に効率的に伝えることが困難な点である。
より詳細には、平面状の床面に対して、2枚の樹脂製板状体のいずれかが突き合わせされて、突き合わせ面を通じて伝導形態で熱が伝達されるところ、放熱配管の一部を構成する凹部のために、樹脂製板状体の突き合わせ面には、外方に突出する凸部が形成されることになることから、床面と樹脂製板状体との間で密着した面接触が確保されず、その分、非効率な熱伝導形態となる。
このように、内部に流体が流れる内部配管を設け、流体を放熱用として外部へ熱を放熱、あるいは流体を受熱用として外部から熱を受熱する用途に用いる熱伝達ユニットにおいて、効率的な熱交換を維持しつつ、効率的な製造を可能にする樹脂製熱伝達ユニットの製造方法が業界で要望されている。
【0008】
第2に、蛇行状の内部流路のため、2枚の樹脂製シートに対してコアを利用して製造することが困難な点である。より詳細には、特許文献2に開示されているように、従来、このような中空内部流路を一般的に形成する場合、コアをシート間に挟み込んで型締めすることにより、内部流路の内径を規制していた。しかしながら、樹脂製熱伝達ユニットの場合、内部流路が曲線状に蛇行しており、型締め後に成形品からコアを抜くことが困難となる。
【0009】
第3に、このようなコアを利用せずに内部流路を形成するとすれば、2枚の樹脂製シート間の溶着方法に問題を生じる。より詳細には、特許文献3に開示されているように、2枚の樹脂製シートそれぞれにおいて、真空成形、圧空成形、プレス成形等一般的な成形方法により、たとえば断面半円の内部流路を賦形したうえで、高周波溶着方法により、貼り合わせて断面円形の内部流路を形成することが考えられる。
しかしながら、高周波溶着方法は、2枚の樹脂製シートの溶着すべき部分同士を押圧しつつ加熱した状態で、高周波により振動させることにより溶着させるものであり、溶融粕が生じ、冷却して樹脂の粉体を発生したり、あるいは内部流路内へ樹脂の染み出しが生じることがあり、そのための後処理工程が必要となる。
【0010】
第4に、樹脂製熱伝達ユニットに要求される機能に応じた肉厚を実現することが困難な点である。より詳細には、特許文献3に開示されているように、樹脂製熱伝達ユニットを成形する際、伝熱性能確保の観点から、一方のシートは薄肉平板状でありブロー比は小さく、他方のシートは内部流路が賦形されることから、薄肉平板に比べ、必然的にブロー比が高くなる。この場合、たとえば、溶融筒状パリソンを利用して、成形するとすれば、ブロー比が異なる一方のシートと他方のシートとが同じ肉厚の溶融パリソンに基づいて成形されざるを得ない。ブロー比の高い成形を行うシートに合わせて溶融パリソンの肉厚を決定するとすれば、ブロー比の低い成形を行うシートは、余分な肉厚となり、無駄が生じ、一方、このような無駄を生じないように、ブロー比の低いシートに合わせて溶融パリソンの肉厚を決定するとすれば、ブロー比の高いシートには、肉厚不足が生じ、成形不良あるいは成形不能な事態が生じ得る。
【特許文献1】特開2011−106727号
【特許文献2】特開昭61−228930号
【特許文献3】特開2009−233081号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、効率的な熱交換を維持しつつ、効率的な製造を可能とする樹脂製熱伝達ユニットの製造方法を提供することにある。
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、内部流路形状を精度よく形成可能な樹脂製熱伝達ユニットの製造方法を提供することにある。
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、内部流路形状を精度よく形成可能であり、要求される機能に応じた所望の肉厚を実現可能な樹脂製熱伝達ユニットの製造方法を提供することにある。

【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を達成するために、本発明の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法は、
放熱用あるいは受熱用流体の内部流路を有する平板状の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法であって、
互いのキャビティを対向させて配置され、型締め位置と開放位置との間で相対移動可能な一対の分割金型を準備する段階と、
表面に内部流路の一部を形成すべき溶融状態の一方の熱可塑性樹脂製シートと、伝熱板を構成する他方の熱可塑性樹脂製シートとを互いに間隔を隔てて、それぞれキャビティからはみ出す形態で、開放位置の一対の分割金型の間に配置する段階と、
一方の熱可塑性樹脂製シートと一対の金型の対応する金型との間に密閉空間を形成して、該密閉空間から空気を減圧することにより、一方の熱可塑性樹脂製シートを吸引して、内部流路と相補形状の凹部を表面に設けた対応するキャビティに沿って賦形して、キャビティに対向する内表面側に突出する第1凹溝を形成する段階と、
前記一対の分割金型を型締め位置まで移動させることにより、一方の熱可塑性樹脂製シートの外表面のうち、該第1凹溝以外の平面部と、他方の熱可塑性樹脂製シートの外表面とを面溶着させて、該第1凹溝を閉鎖することにより内部流路を形成する段階と、
を有する構成としている。
【0013】
以上の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法によれば、一方の熱可塑性樹脂製シートについて、内部流路の一部を構成する第1凹溝を形成するように賦形する一方、他方の熱可塑性樹脂製シートについて、このような賦形を回避することで、賦形に伴う成形誤差を小さくしつつ、賦形された第1凹溝を単に閉鎖することで蛇行状に延びる内部流路を精度よく形成可能である。
さらに、両方の熱可塑性樹脂製シートに凹溝を形成したうえで、両方の熱可塑性樹脂製シートを溶着することにより内部流路を形成するとすれば、溶着の際の位置ずれに伴って、形成される内部流路の断面形状が変わる可能性が高いところ、このようなリスクを回避することも可能であり、溶着の際、従来のように、高周波溶着方法を用いずに、分割金型の型締めを利用して、溶融状態の熱可塑性樹脂製シート同士を溶着することにより、高周波溶着方法に起因する樹脂の粉体の発生、あるいは樹脂の染み出し等の不都合を未然に防止することが可能である。
加えて、本樹脂製熱伝達ユニットの製造方法によれば、熱伝導面を形成するいずれかの熱可塑性樹脂製シートの外表面を平面状とすることにより、たとえば、熱を伝達すべき床面に対して密着して突き合わせることが可能であり、効率的な熱交換が可能であるとともに、従来のように、熱媒体の流通用配管を別途製造することなしに、樹脂製熱伝達ユニットの内部に内部流路を一体で形成することにより、効率的な製造が可能である。
【0014】
また、前記内部流路は、樹脂製熱伝達ユニットの縁部に設けられ、外部流路に接続される流入開口から、樹脂製熱伝達ユニットの縁部に設けられ、外部流路に接続される流出開口まで蛇行状に延び、
前記第1凹溝形成段階と併行して、他方の熱可塑性樹脂製シートと一対の金型の対応する金型との間に密閉空間を形成して、該密閉空間から空気を減圧することにより、他方の熱可塑性樹脂製シートを吸引して、前記流入開口および前記流出開口に対して前記第1凹溝と協働して相補形状をなす凹部を表面に設けた対応するキャビティに沿って賦形して、キャビティに対向する内表面側に突出する第2凹溝を形成する段階をさらに有し、
前記型締め段階により、一方の熱可塑性樹脂製シートの第1凹溝と、他方の熱可塑性樹脂製シートの第2凹溝とを突き合わせることにより、前記流入開口および前記流出開口がそれぞれ形成され、
さらに、前記内部流路形成後に、前記流入開口および前記流出開口それぞれに対して外部管路を接続する段階を有するのがよい。
【0015】
さらにまた、前記一方および/または前記他方の熱可塑性樹脂製シートは、予め予備成形され、再加熱して溶融状態とされるのがよい。
加えて、前記型締め段階後に、前記型締めにより形成される前記一対の金型間の密閉空間内にブロー圧をかけて、さらに前記一方および前記他方の熱可塑性樹脂製シートそれぞれを賦形する段階を有するのがよい。
さらに、前記型締め段階後に、前記型締めにより形成される前記一対の金型間の密閉空間内にブロー圧をかけつつ、前記一方および/または前記他方の熱可塑性樹脂製シートを対応するキャビティから真空引きすることにより、さらに前記一方および前記他方の熱可塑性樹脂製シートそれぞれを賦形する段階を有するのがよい。
【0016】
さらにまた、前記一方の熱可塑性樹脂製シートは、賦形後の最小肉厚部が所定肉厚以上となるように厚みを決定し、前記他方の熱可塑性樹脂製シートは、賦形後の最大肉厚部が所定肉厚以下となるように厚みを決定するのがよい。
加えて、前記一方の熱可塑性樹脂製シートの厚みは、前記他方の熱可塑性樹脂製シートの厚みより厚く設定するのがよい。
加えて、前記一方および前記他方の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを下方に垂下する形態で、前記一対の分割金型の間に向かって押し出す段階を有するのがよい。
さらに、前記押し出される熱可塑性樹脂製シートは、溶融状態のパリソンを押し潰してシート状に形成されるのがよい。
さらにまた、内部流路と相補形状の、前記キャビティの前記凹部の端部は、対応するキャビティの上下方向の縁部を抜けるように設けられるのがよい。
【0017】
さらに、熱可塑性樹脂を溶融混練する段階と、
溶融混練した熱可塑性樹脂を所定量貯留する段階と、
Tダイに設けられた所定間隔の押出スリットから溶融状態のシート状に下方に垂下するように、貯留された熱可塑性樹脂を単位時間当たり所定押出量で間欠的に押し出す段階と、を有し、
それにより、押出スリットから熱可塑性樹脂製シートが所定の厚みにて所定押出速度で下方に押し出され、
下方に押し出された熱可塑性樹脂製シートの最下部が、押出スリットの下方に配置され、かつ間隔が熱可塑性樹脂製シートの前記所定の厚みより広げられた一対のローラー間を通過した後に、一対のローラー同士を相対的に近接させることにより、一対のローラーで熱可塑性樹脂製シートを挟み込み、ローラーの回転駆動により前記所定押出速度以上の速度で下方へ送り出す段階とを有するのがよい。
【0018】
さらにまた、前記ローラーによる送り出し段階において、熱可塑性樹脂製シートの前記所定押出速度に応じて、一対のローラーによる送り出し速度が前記所定押出速度以上となる範囲で前記ローラーの回転速度を変動させる段階を有し、
それにより、押出スリットから押し出された際の厚み以下の範囲で前記一対のローラーを通過後の熱可塑性樹脂製シートの厚みを延伸薄肉化し、金型の側方に配置された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの厚みを押し出し方向に略一様に形成するのがよい。
【0019】
さらに、熱可塑性樹脂を溶融混練する段階と、
溶融混練した熱可塑性樹脂を所定量貯留する段階と、
Tダイに設けられた所定間隔の押出スリットから溶融状態のシート状に下方に垂下するように、貯留された熱可塑性樹脂を単位時間当たり所定押出量で間欠的に押し出す段階と、を有し、
sそれにより、押出スリットから熱可塑性樹脂製シートが所定の厚みにて所定押出速度で下方に押し出され、
前記一対の分割金型の間への配置する段階前に、熱可塑性樹脂製シートの下部を下方にけん引することにより、シートの肉厚を調整する段階を有するのがよい。
【0020】
さらにまた、前記減圧段階は、前記一対の分割金型それぞれの周縁に対して型締め方向に移動自在に外嵌する外枠を対応する熱可塑性樹脂製シートの外表面に向かって移動させる段階を有し、前記対応する熱可塑性樹脂製シートの外表面、前記外枠の内周面および前記一対の分割金型のそれぞれのキャビティにより密閉空間を構成するのがよい。
加えて、前記一対の金型の少なくとも一方の金型のキャビティの表面に、内部流路と相補形状の前記凹部とは連通しない第2凹部を設け、
前記一対の分割金型の型締めにより、一方の熱可塑性樹脂製シートの前記第1凹溝以外の平面部と他方の熱可塑性樹脂製シートの外表面とを面溶着させる際、前記内部流路と連通しない密閉中空部を形成するのでもよい。
さらに、前記一対の分割金型の型締の際、対向するキャビティの表面同士の間隔が、一方の熱可塑性樹脂製シートの厚みおよび他方の熱可塑性樹脂製シートの厚みの合計より少なくとも小さくなるように設定され、
前記一方の熱可塑性樹脂製シートに対応するキャビティの前記凹部の縁に沿って、対向するキャビティに向かって突出する突出部を設け、
それにより、前記前記一対の分割金型の型締の際、前記第1凹溝の縁に沿って前記他方の熱可塑性樹脂製シートの外表面との溶着性を高める段階を有するのがよい。
さらにまた、前記一対の分割金型の少なくとも一方に、キャビティを取り囲むようにピンチオフ部を設け、
該ピンチオフ部の高さは、前記一対の分割金型の型締の際、対向するキャビティの表面同士の間隔が、一方の熱可塑性樹脂製シートの厚みおよび他方の熱可塑性樹脂製シートの厚みの合計より少なくとも小さくなるように設定されるのがよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、樹脂製熱伝達ユニットとして、内部流路を流れる流体を放熱用として用いる床暖房パネルユニットを例に、以下、図面を参照しながら、その製造方法を説明する。
図1ないし図3に示すように、樹脂製床暖房パネルユニット200は、2枚の樹脂製シート216、218を貼り合わせたパネル状の2層構造をなし、第1樹脂製シート216の内表面224と第2樹脂製シート218の内表面226とを面溶着することにより、内部に内部流路202が形成されている。内部流路202は、樹脂製床暖房パネルユニット200面内において蛇行するように、全体に亘って形成されている。
床暖房パネルユニット200は、第2樹脂製シート218を上側、第1樹脂製シート216を下側にして床面Fに配置され、より具体的には、たとえば床合板の上に敷設され、床暖房パネルユニット10の上には、床仕上げ材が設けられ、床暖房パネルユニット10は、第2樹脂製シート218の高い熱伝導性により上方の床仕上げ材への熱伝導を促進するように構成されている。なお、床合板および床仕上げ材は、たとえば木製が採用され、主に放熱あるいは熱伝導の観点からその厚みが適宜定められる。
【0022】
樹脂製床暖房パネルユニット200は、第1樹脂製シート216には、内部流路202の一部を形成する蛇行凹溝205が形成され、第2樹脂製シート218は、平坦に形成され、床仕上げ材との面接触をすることにより伝熱性を確保するとともに、第1樹脂製シート216に形成される蛇行凹溝205を閉鎖することにより、内部流路202を構成するようにしている。第2樹脂製シート218は、良好な伝熱性を確保する観点から、なるべく薄肉とするのが好ましく、一方第1樹脂製シート216は、樹脂製床暖房パネルユニット200としての強度を確保する観点から、少なくとも第2樹脂製シート218より厚肉とするのが好ましい。この点、後に説明するように、樹脂製床暖房パネルユニット200は、第1樹脂製シート216の材料とする熱可塑性樹脂製シートP1と、第2樹脂製シート218の材料とする熱可塑性樹脂製シートP2とを用いて、それぞれ成形して、面溶着することにより製造するが、熱可塑性樹脂製シートP1は、蛇行凹溝205を賦形することから成形の際のブロー比が高く、それに対して、熱可塑性樹脂製シートP1は、平坦であることから相対的にブロー比が低い点を考慮して、熱可塑性樹脂製シートP1については、賦形後の最小肉厚部が所定肉厚以上となるように厚みを決定し、一方熱可塑性樹脂製シートP2については、賦形後の最大肉厚部が所定肉厚以下となるように厚みを決定する。
内部流路202は、図1に示すように、流入開口210から流出開口212に向かって、曲管部204と直管部206とが交互に連なる構成であり、直管部206は、互いに平行に配置されている。内部流路202の断面は、図3に示すように、外表面220側に突出する半円状に形成されている。
より詳細には、第1樹脂製シート216の内表面224には、半円状断面の蛇行凹溝205が成形され、第2樹脂製シート218は、平坦に成形されており、それらを貼り合わせて内部流路202が形成されている。内部流路202の流路断面、特に内径、および蛇行流路の全長、湾曲部の径等は、要求される暖房機能との関係で内部流路202内を流す流体の流量等から定めればよい。
図3に示すように、第1樹脂製シート216の外表面220には、内部流路202の縁部に相当する部分に沿って、切り込み207が形成されている。これは、後に説明するように、第1樹脂製シート216の内表面224のうち蛇行凹溝205が形成される部分以外の平面部と、第2樹脂製シート218の内表面226とを面溶着する際、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートP1、P2が押圧されることにより、内部流路202内に流れ込むのを防止する観点から、蛇行凹溝205の縁部を第2樹脂製シート218の内表面226に対して相対的に強く押圧することにより、形成されたものである。
【0023】
図1に示すように、樹脂製床暖房パネルユニット200における内部流路202の端部は、樹脂製床暖房パネルユニット200の外縁208に形成され、内部流路202と外部管路とは、樹脂製床暖房パネルユニット200の外縁部において接続されている。
図2に示すように、内部流路202の端部は、拡径の円形断面状に形成され、樹脂製床暖房パネルユニット200の外縁部で開口している。より詳細には、第1樹脂製シート216の蛇行凹溝205の内部流路202の端部に相当する位置に、第2樹脂製シート218の凹溝209が部分的に形成され、それにより、円形断面の流入開口210および流出開口212が形成されている。この内部流路202の各端部には、図1に示すように、接続管路214の一端部が挿入される。
【0024】
このような構成の樹脂製床暖房パネルユニット200によれば、樹脂製床暖房パネルユニット200の第2樹脂製シート218が平坦に形成され、内部流路202の内部流路202の断面が樹脂製床暖房パネルユニット200の第1樹脂製シート216側に突出する半円状に形成されているので、樹脂製床暖房パネルユニット200の第2樹脂製シート218を床仕上げ材に面接触させるとともに、蛇行凹溝205の開口が第2樹脂製シート218の内表面226に臨むことから、樹脂製床暖房パネルユニット200を通る液体からの熱を薄肉の第2樹脂製シート218を通じて、床仕上げ材に効率的に伝熱可能でありこれにより効率的に床暖房が行われる。
【0025】
また、接続管路214は、外周形状が内部流路202の流入開口210および流出開口212の断面に適合する円形に形成され、接続管路214の一端部が内部流路202に挿入され、それにより、内部流路202と接続管路214との接続が気密に行われ、液体の漏れを防止できる。
【0026】
次に、このような樹脂製床暖房パネルユニット200の成形装置について、以下に説明する。
図4に示すように、樹脂製床暖房パネルユニット200の成形装置10は、押出装置12と、押出装置12の下方に配置された型締装置14とを有し、押出装置12から押出された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPを型締装置14に送り、型締装置14により溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPを成形するようにしている。ここに、2枚の熱可塑性樹脂それぞれを押し出して、型締装置14まで送るまでの装置は、同様であるので、一方のみ説明し、他方については同様な参照番号を付することによりその説明は省略する。
熱可塑性樹脂製シートP1は、内部流路202に相当する蛇行凹溝205を成形するのに用いられ、一方熱可塑性樹脂製シートP2は、蛇行凹溝205を閉鎖するのに用いられ、熱可塑性樹脂製シートP2の外表面が、床仕上げ材に面接触する。
【0027】
押出装置12は、従来既知のタイプであり、その詳しい説明は省略するが、ホッパー16が付設されたシリンダー18と、シリンダー18内に設けられたスクリュー(図示せず)と、スクリューに連結された油圧モーター20と、シリンダー18と内部が連通したアキュムレータ22と、アキュムレータ22内に設けられたプランジャー24とを有し、ホッパー16から投入された樹脂ペレットが、シリンダー18内で油圧モーター20によるスクリューの回転により溶融、混練され、溶融状態の樹脂がアキュムレータ室22に移送されて一定量貯留され、プランジャー24の駆動によりTダイ28に向けて溶融樹脂を送り、押出スリット34を通じて所定の長さの連続的な熱可塑性樹脂製シートPが押し出され、間隔を隔てて配置された一対のローラー30によって挟圧されながら下方へ向かって送り出されて分割金型32の間に垂下される。これにより、後に詳細に説明するように、熱可塑性樹脂製シートPが上下方向(押出方向)に一様な厚みを有する状態で、分割金型32の間に配置される。
【0028】
押出装置12の押出の能力は、成形する樹脂成形品の大きさ、熱可塑性樹脂製シートPのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から適宜選択する。より具体的には、実用的な観点から、間欠押出における1ショットの押出量は好ましくは1〜10kgであり、押出スリット34からの樹脂の押出速度は、数百kg/時以上、より好ましくは700kg/時以上である。また、熱可塑性樹脂製シートPのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から、熱可塑性樹脂製シートPの押出工程はなるべく短いのが好ましく、樹脂の種類、MFR値、メルトテンション値に依存するが、一般的に、押出工程は40秒以内、より好ましくは10〜20秒以内に完了するのがよい。このため、熱可塑性樹脂の押出スリット34からの単位面積、単位時間当たりの押出量は、50kg/時cm以上、より好ましくは150kg/時cm以上である。
【0029】
一対のローラー30の回転により一対のローラー30間に挟み込まれた熱可塑性樹脂製シートPを下方に送り出すことで、熱可塑性樹脂製シートPを延伸薄肉化することが可能であり、押し出される熱可塑性樹脂製シートPの押出速度と一対のローラー30による熱可塑性樹脂製シートPの送り出し速度との関係を調整することにより、ドローダウンあるいはネックインの発生を防止することが可能であるから、樹脂の種類、特にMFR値およびメルトテンション値、あるいは単位時間当たりの押出量に対する制約を小さくすることが可能である。
なお、一対のローラー30の代替として、熱可塑性樹脂製シートPを一対の分割金型23の間に配置する前に、たとえば、既知のクランパにより、熱可塑性樹脂製シートPの下部を挟持して下方にけん引することにより、熱可塑性樹脂製シートPの肉厚を調整してもよい。
【0030】
図4を参照して、一対のローラー30について説明すれば、一対のローラー30は、押出スリット34の下方において、各々の回転軸が互いに平行にほぼ水平に配置され、一方が回転駆動ローラー30Aであり、他方が被回転駆動ローラー30Bである。より詳細には、図4に示すように、一対のローラー30は、押出スリット34から下方に垂下する形態で押し出される熱可塑性樹脂製シートPに関して、線対称となるように配置される。
それぞれのローラーの直径およびローラーの軸方向長さは、成形すべき熱可塑性樹脂製シートPの押出速度、シートの押出方向長さおよび幅、ならびに樹脂の種類等に応じて適宜設定すればよいが、後に説明するように、一対のローラー30間に熱可塑性樹脂製シートPを挟み込んだ状態で、ローラーの回転により熱可塑性樹脂製シートPを円滑に下方に送り出す観点から、回転駆動ローラー30Aの径は、被回転駆動ローラー30Bの径より若干大きいのが好ましい。ローラーの径は50〜300ミリの範囲であることが好ましく、熱可塑性樹脂製シートPとの接触においてローラーの曲率が大きすぎてもまた、小さすぎても熱可塑性樹脂製シートPがローラーへ巻き付く不具合の原因となる。
【0031】
図5および図6に示すように、回転駆動ローラー30Aには、ローラー回転駆動手段94およびローラー移動手段96が付設され、ローラー回転駆動手段94により、回転駆動ローラー30Aは、その軸線方向を中心に回転可能とされ、一方ローラー移動手段96により、回転駆動ローラー30Aは、一対のローラー30を包含する平面内で被回転駆動ローラー30Bとの平行な位置関係を保持しつつ、被回転駆動ローラー30Bに向かって近づき、あるいは被回転駆動ローラー30Bから離れるように移動されるようにしている。
【0032】
より詳細には、ローラー回転駆動手段94は、回転駆動ローラー30Aに連結した回転駆動モータ98であり、回転駆動モータ98の回転トルクをたとえば歯車減速機構(図示せず)を介して回転駆動ローラー30Aに伝達するようにしている。回転駆動モータ98は、従来既知のものであり、その回転数を調整可能なように回転数調整装置111が付設されている。この回転数調整装置111は、たとえば電動モーターに対する電流値を調整するものでよく、後に説明するように、熱可塑性樹脂製シートPが押出スリット34から押し出される押出速度と、一対のローラー30の回転により熱可塑性樹脂製シートPが下方に送り出される送り出し速度との相対速度差を、熱可塑性樹脂製シートPの押出速度に応じて、調整するようにしている。熱可塑性樹脂製シートPのローラーによる送り出し速度は、例えば直径100ミリの一対のローラーを用いて、送り出し方向に長さ2000ミリの熱可塑性樹脂製シートPを15秒間で送り出す場合、1ショット15秒間で約6.4回転することとなり、ローラーの回転速度は約25.5rpmと算出することができる。ローラーの回転速度を上げ下げすることで熱可塑性樹脂製シートPであるパリソンPの送り出し速度を容易に調整することができる。
【0033】
図6に示すように、被回転駆動ローラー30Bが回転駆動ローラー30Aと同調して回転駆動するように、被回転駆動ローラー30Bは、その端周面102に亘ってローラーの回転軸を中心に回転可能な第1歯車104を有し、一方回転駆動ローラー30Aは、その端周面106に亘ってローラーの回転軸を中心に回転可能な、第1歯車104と噛み合う第2歯車108を有する。
【0034】
図5に示すように、ローラー移動手段96は、ピストンーシリンダ機構からなり、ピストンロッド109の先端が、回転駆動ローラー30Aをその軸線方向に回転可能に支持するカバー121に連結され、たとえば空気圧を調整することにより、ピストン113をシリンダー115に対して摺動させ、それにより回転駆動ローラー30Aを水平方向に移動するようにし、以て一対のローラー30同士の間隔を調整可能としている。この場合、後に説明するように、熱可塑性樹脂製シートPの最下部が一対のローラー30の間に供給される前に、一対のローラー30同士の間隔を供給される熱可塑性樹脂製シートPの厚みより広げて(図5(A)の間隔D1を構成する開位置)、熱可塑性樹脂製シートPが円滑に一対のローラー30の間に供給されるようにし、その後に一対のローラー30同士の間隔を狭めて、一対のローラー30により熱可塑性樹脂製シートPを挟み込み(図5(A)の間隔D2を構成する閉位置)、ローラーの回転により熱可塑性樹脂製シートPを下方に送り出すようにしている。ピストン113のストロークは、開位置と閉位置との距離となるように設定すればよい。また、空気圧を調整することにより、熱可塑性樹脂製シートPが一対のローラー30の間を通過する際、ローラーから熱可塑性樹脂製シートPに作用する押圧力を調整することも可能である。押圧力の範囲は、一対のローラー30が回転することにより、一対のローラー30の表面と熱可塑性樹脂製シートPの表面との間に滑りが生じない一方で、一対のローラー30により熱可塑性樹脂製シートPが引きちぎられることのないようにして熱可塑性樹脂製シートPが確実に下方に送り出されるように定められ、樹脂の種類に依存するが、たとえば0.05MPAないし6MPAである。
【0035】
図4に示すように、Tダイ28に設けられる押出スリット34は、鉛直下向きに配置され、押出スリット34から押し出された熱可塑性樹脂製シートPは、そのまま押出スリット34から垂下する形態で、鉛直下向きに送られるようにしている。押出スリット34は、その間隔を可変とすることにより、熱可塑性樹脂製シートPの厚みを変更することが可能である。
一方、型締装置14も、押出装置12と同様に、従来既知のタイプであり、その詳しい説明は省略するが、2つの分割形式の金型32A,Bと、金型32A,Bを溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPの供給方向に対して略直交する方向に、開位置と閉位置との間で移動させる金型駆動装置とを有する。
【0036】
図4に示すように、2つの分割形式の金型32A,Bは、キャビティ116を対向させた状態で配置され、それぞれキャビティ116が略鉛直方向沿うように配置される。それぞれのキャビティ116の表面には、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPに基づいて成形される成形品の外形、および表面形状に応じて凹凸部が設けられる。
より詳細には、熱可塑性樹脂製シートP1を成形する一方の金型32Aのキャビティ116Aの表面には、熱可塑性樹脂製シートP1の外表面121に内部流路202の一部を構成する蛇行凹溝205を形成するように、蛇行凹溝205と相補形状の凹部119が設けられている。
凹部119はキャビティ116Aの表面において、図1の内部流路202の向きと同じに設けられ(図1の上下方向が、熱可塑性樹脂製シートPの押し出し方向に相当する)、後に説明するように、キャビティ116Aの水平方向の縁部には、型枠33が設置されることから、凹部119の各端部は、対応するキャビティ116Aの上下方向の縁部を抜けるように設けられる。
また、凹部119の縁に沿って、対向するキャビティ116Bに向かって突出する突出部(図示せず)を設け、それにより、一対の分割金型32を型締することにより、熱可塑性樹脂製シートP1と熱可塑性樹脂製シートP2とを溶着する際、突出部に相当する熱可塑性樹脂製シートP1の部分に対して、他の部分に比べ高い押圧力が付加され、上述のように、切り込み207が形成され、蛇行凹溝205の縁に沿って熱可塑性樹脂製シートP2の外表面との溶着性を高めるようにしてある。
【0037】
また、金型32Aのキャビティ116Aの表面には、内部流路202と相補形状の凹部119とは連通しない第2凹部(図示せず)が設けられ、後に説明するように、一対の分割金型32A,Bの型締めにより、熱可塑性樹脂製シートP1の蛇行凹溝205以外の平面部と熱可塑性樹脂製シートP2の外表面とを面溶着させる際、内部流路202と連通しない密閉中空部を形成するようにしている。これにより、熱可塑性樹脂製シートP1の蛇行凹溝205以外の平面部と、熱可塑性樹脂製シートP2の外表面とを面溶着させる際、第1に、広い面積に亘って溶着強度を均等に精度よく維持することが困難である点、第2に、面溶着部分で押し潰された溶融状態の樹脂が内部流路202内へあふれ出すことがある、以上の問題点を回避することが可能である。
より詳細には、密閉中空部を設けることにより、面溶着面積を小さくし、面溶着部分で押し潰された溶融状態の樹脂の逃げ場を形成している。
この点において、金型32Aのキャビティ116Aの表面でなく、金型32Bのキャビティ116Bの表面に第2凹部を設けてもよいし、あるいは金型32Bのキャビティ116Bの表面の第2凹部に対応する位置にも第3凹部を設け、第2凹部と第3凹部とが協働して密閉中空部を形成してもよい。
一方、金型32Bのキャビティ116Bの表面の、キャビティ116Aの凹部119の各端部に対応する位置には、凹部(図示せず)が形成され、分割形式の金型32A,Bを型締めした際、凹部119と凹部とが協働して、図2に示すような、円形断面の流入開口210あるいは流出開口212が賦形され、それにより、外部管路と接続可能にしている。
【0038】
2つの分割形式の金型32A,Bそれぞれにおいて、キャビティ116のまわりには、ピンチオフ部118が形成され、このピンチオフ部118は、キャビティ116のまわりに環状に形成され、対向する金型32A,Bに向かって突出する。これにより、2つの分割形式の金型32A,Bを型締する際、それぞれのピンチオフ部118の先端部が当接し、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートP1、P2は、その周縁にパーティングラインPLが形成されるように溶着される。
ピンチオフ部118の先端部同士が当接した際の対向するキャビティ116A,Bの表面同士の間隔は、熱可塑性樹脂製シートP1の厚みおよび熱可塑性樹脂製シートP2の厚みの合計より少なくとも小さくなるように設定され、それにより、分割形式の金型32A,Bを型締する際、熱可塑性樹脂製シートP1と熱可塑性樹脂製シートP2とが面溶着可能なようにしている。なお、ピンチオフ部118は、いずれか一方の金型32A,Bに設けてもよい。
【0039】
金型32Aの外周部には、型枠33Aが密封状態で摺動可能に外嵌し、図示しない型枠移動装置により、型枠33Aが、金型32Aに対して相対的に移動可能としている。より詳細には、型枠33Aは、金型32Aに対して金型32Bに向かって突出することにより、金型32A,B間に配置された熱可塑性樹脂製シートP1の側面に当接可能である。なお、図面上は省略しているが、同様に、金型32Bの外周部にも、型枠33Bを設け、型枠33Bが、金型32Bに対して金型32Aに向かって突出することにより、金型32A,B間に配置された熱可塑性樹脂製シートP2の側面に当接可能としている。
【0040】
金型駆動装置については、従来と同様のものであり、その説明は省略するが、2つの分割形式の金型32A,Bはそれぞれ、金型駆動装置により駆動され、開位置において、2つの分割金型32A,Bの間に、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPが配置可能なようにされ、一方閉位置において、2つの分割金型32A,Bのピンチオフ部118が当接し、環状のピンチオフ部118が互いに当接する。開位置から閉位置への各金型32A,Bの移動について、閉位置、すなわち、ピンチオフ部118同士が互いに当接する位置は、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートP1、P2間で、両熱可塑性樹脂製シートP1、P2から等距離の位置とし、各金型32A,Bが金型駆動装置により駆動されてその位置に向かって移動するようにしている。
なお、熱可塑性樹脂製シートP1用の押出装置および一対のローラーと、熱可塑性樹脂製シートP2用の押出装置および一対のローラーとは、この閉位置に関して対称に配置されている。
【0041】
図8に示すように、分割金型32Aの内部には、真空吸引室80が設けられ、真空吸引室80は吸引穴82を介してキャビティ116Aに連通し、真空吸引室80から吸引穴82を介して吸引することにより、キャビティ116Aに向かって熱可塑性樹脂製シートP1を吸着させて、キャビティ116Aの外表面に沿った形状に賦形するようにしている。より詳細には、キャビティ116Aの外表面に設けた凹部119により、熱可塑性樹脂製シートP1の外表面121に蛇行凹溝205を形成するようにしている。図示は省略しているが、分割金型32Bについても同様に、キャビティ116Bに吸引穴を介して連通する真空吸引室が設けられている。
一方、分割金型32Bには、金型32A、Bを型締したときに両金型により形成される密閉空間内から吹き込み圧をかけることが可能なように、従来既知のブローピン(図示せず)が設置されている。
【0042】
熱可塑性樹脂製シートP1、P2は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、または非晶性樹脂などから形成されたシートからなる。より詳細には、熱可塑性樹脂製シートP1、P2は、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生することを防止する観点から溶融張力の高い樹脂材料を用いることが好ましく、一方で金型への転写性、追従性を良好とするため流動性の高い樹脂材料を用いることが好ましい。
【0043】
より具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体あるいは共重合体であるポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン)であって、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0g/10分以下、さらに好ましくは0.3〜1.5g/10分のもの、またはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン(HIPS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等の非晶性樹脂であって、200℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度200℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0〜60g/10分、さらに好ましくは30〜50g/10分でかつ、230℃におけるメルトテンション(株式会社東洋精機製作所製メルトテンションテスターを用い、余熱温度230℃、押出速度5.7ミリ/分で、直径2.095ミリ、長さ8ミリのオリフィスからストランドを押し出し、このストランドを直径50ミリのローラに巻き取り速度100rpmで巻き取ったときの張力を示す)が50mN以上、好ましくは120mN以上のものを用いて形成される。
【0044】
また、熱可塑性樹脂製シートP1、P2には衝撃により割れが生じることを防止するため、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーが30wt%未満、好ましくは15wt%未満の範囲で添加されていることが好ましい。具体的には水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしてスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体、水添スチレン−ブタジエンゴムおよびその混合物が好適であり、スチレン含有量が30wt%未満、好ましくは20wt%未満であり、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)は1.0〜10g/10分、好ましくは5.0g/10分以下で、かつ1.0g/10分以上あるものがよい。
さらに、熱可塑性樹脂製シートP1、P2には、添加剤が含まれていてもよく、その添加剤としては、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機フィラー、可塑剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。具体的にはシリカ、マイカ、ガラス繊維等を成形樹脂に対して50wt%以下、好ましくは30〜40wt%添加する。
以上の構成を有する樹脂製床暖房パネルユニット200の成形装置10を利用した樹脂製床暖房パネルユニット200の製造方法について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0045】
まず、図4において、溶融混練した熱可塑性樹脂をアキュムレータ22内に所定量貯留し、Tダイ28に設けられた所定間隔の押出スリット34から、貯留された熱可塑性樹脂を単位時間当たり所定押出量で間欠的に押し出すことにより、熱可塑性樹脂はスウェルし、溶融状態のシート状に下方に垂下するように所定の厚みにて所定押出速度で押し出される。
【0046】
次いで、一対のローラー30を開位置に移動し、押出スリット34の下方に配置された一対のローラー30同士の間隔を熱可塑性樹脂製シートPの厚みより広げることにより、下方に押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPの最下部が一対のローラー30間に円滑に供給されるようにする。なお、ローラー30同士の間隔を熱可塑性樹脂製シートPの厚みより広げるタイミングは、押し出し開始後でなく、ワンショットごとに二次成形が終了時点で行ってもよい。
次いで、一対のローラー30同士を互いに近接させて閉位置に移動し、一対のローラー30同士の間隔を狭めて熱可塑性樹脂製シートPを挟み込み、ローラーの回転により熱可塑性樹脂製シートPを下方に送り出す。
すなわち、ピストンーシリンダー機構96を駆動することにより、図5(B)に示すように、一対のローラー30同士を互いに近接させて閉位置に移動し、一対のローラー30同士の間隔を狭めて熱可塑性樹脂製シートPを挟み込み、ローラーの回転により熱可塑性樹脂製シートPを下方に送り出す。その際、ローラー30の回転によりスウェルした状態の熱可塑性樹脂製シートPが一対のローラー30に送られている間、一対のローラー30による熱可塑性樹脂製シートPの下方への送り出し速度が、熱可塑性樹脂製シートPの押出速度以上となるようにローラーの回転速度を調整する。
【0047】
より詳細には、スウェルした状態の熱可塑性樹脂製シートPが一対のローラー30に下方に送り出されるにつれて、鉛直方向に垂下する熱可塑性樹脂製シートPの長さが長くなり、それに起因して垂下する熱可塑性樹脂製シートPの上部ほど熱可塑性樹脂製シートPの自重により薄肉化されるところ(ドローダウンあるいはネックイン)、その一方で一対のローラー30による送り出し速度を押出速度以上となるようにローラーの回転速度を調整することにより、熱可塑性樹脂製シートPは一対のローラー30により下方に引っ張られ、熱可塑性樹脂製シートPは延伸薄肉化される。
このとき、時間経過とともにローラーの回転速度を低下させて、送り出し速度を熱可塑性樹脂製シートPの押出速度に近づけるように調整する。
【0048】
たとえば、熱可塑性樹脂製シートPの押出速度を一定にする一方、ローラーの回転速度を時間経過とともに段階的に減少させてもよいし、ローラーの回転速度を一定にする一方、熱可塑性樹脂製シートPの押出速度を時間経過とともに段階的に減少させてもよいし、ローラーの回転速度の方が大きい範囲内でローラーの回転速度および熱可塑性樹脂製シートPの押出速度ともに時間経過とともに段階的に変動させてもよい。
いずれの場合であっても、時間経過とともに、一対のローラー30の回転による熱可塑性樹脂製シートPの下方への送り出し速度と、熱可塑性樹脂製シートPの押出速度との相対速度差が縮まることから、熱可塑性樹脂製シートPの上部ほど一対のローラー30による下方への引っ張り力が低下し、相対的にこのような引っ張り力に伴う延伸薄肉化が低減され、ドローダウンあるいはネックインに伴う薄肉化を相殺し、ドローダウンあるいはネックインを有効に防止し、以て押出方向に一様な厚みを形成することが可能である。
このように一対のローラー30を用いて、熱可塑性樹脂製シートPの厚みを調整する際、熱可塑性樹脂製シートP1は、内部流路202の一部を構成する凹溝を成形することに起因してブロー比が高いことから、賦形後の最小肉厚部が所定肉厚以上となるように厚みを決定し、一方、熱可塑性樹脂製シートP2は、床仕上げ材との面接触を確保するために、円形断面の流出開口212あるいは流入開口210を成形するための凹部が形成される以外は平面状であり、熱可塑性樹脂製シートP1と比較して、ブロー比が低いことから、賦形後の最大肉厚部が所定肉厚以下となるように厚みを決定するのがよい。特に、熱可塑性樹脂製シートP1の厚みは、熱可塑性樹脂製シートP2の厚みより厚く設定するのがよい。このようなそれぞれの熱可塑性樹脂製シートP1およびP2の厚みに応じて、対向する一対のローラーを用いて厚みを調整すればよい。
【0049】
次いで、図4に示すように、押出方向に一様な厚みを形成した熱可塑性樹脂製シートPを一対のローラー30の下方に配置された分割金型32A,B間に配置する。これにより、熱可塑性樹脂製シートPは、ピンチオフ部118のまわりにはみ出す形態で位置決めされる。
以上の工程を、2枚の熱可塑性樹脂製シートP1、P2それぞれについて行い、熱可塑性樹脂製シートP2と熱可塑性樹脂製シートP1とを互いに間隔を隔てた状態で、分割金型32A,B間に配置する。
この場合、上述のように、2枚の熱可塑性樹脂製シートP1、P2はそれぞれ、互いに独立に、押し出しスリット34の間隔、あるいは一対のローラ30の回転速度を調整することにより、分割金型32A,B間に配置される際の厚みを調整可能である。
次いで、図7に示すように、型枠33Aを金型32Aに対して、熱可塑性樹脂製シートP1に向かって、金型32Aに対向する熱可塑性樹脂製シートP1の外表面117に当たるまで移動させる。
【0050】
次いで、図7および図8に示すように、金型32Aのキャビティ116A、型枠33Aの内周面102、および金型32Aに対向する熱可塑性樹脂製シートP1の外表面117により構成された第1密閉空間84を通じて、真空吸引室80から吸引穴82を介して吸引することにより、熱可塑性樹脂製シートP1をキャビティ116Aに対して押し付けて、キャビティ116Aの凹凸表面に沿った形状に熱可塑性樹脂製シートP1を賦形する。これにより、熱可塑性樹脂製シートP1には、蛇行凹溝205が外表面117側に突出するように賦形され、内部流路202の一部が形成される。
蛇行凹溝205の形成段階と併行して、同様に、熱可塑性樹脂製シートP2と一対の金型32の対応する金型32Bとの間に密閉空間を形成して、密閉空間から空気を減圧することにより、熱可塑性樹脂製シートP2を吸引して、流入開口210および流出開口212に関連して、キャビティ116Aの凹部119と協働して相補形状をなす凹部(図示せず)を設けたキャビティ116Bに沿って賦形して、キャビティ116Bに対向する内表面側に突出する凹溝209を形成する。
なお、このような熱可塑性樹脂製シートP1およびP2の対応するキャビティ116への吸引賦形により、後に説明する金型の型締めの際、熱可塑性樹脂製シートP1およびP2同士がくっつき合って成形不良となる事態を防止することが可能である。
【0051】
次いで、図9に示すように、熱可塑性樹脂製シートP1の外表面117に当接する型枠33Aをそのままの位置に保持した状態で熱可塑性樹脂製シートP1を吸引保持するとともに、可塑性樹脂製シートP2の外表面117に当接する型枠33Bをそのままの位置に保持した状態で熱可塑性樹脂製シートP2を同様に吸引保持しつつ、それぞれの環状のピンチオフ部118A,B同士が当接するまで両金型32A,Bを互いに近づく向きに移動させ、型締する。この場合、ピンチオフ部118A,B同士の型締方向の当接位置は、互いに離間する2枚の熱可塑性樹脂製シートP1,P2の間となるところ、図6に示すように、ピンチオフ部118A,B同士が当接することにより、熱可塑性樹脂製シートP1の外表面121のうち、蛇行凹溝205以外の平面部と、熱可塑性樹脂製シートP2の外表面とを面溶着させて、蛇行凹溝205を閉鎖することにより内部流路202が形成され、熱可塑性樹脂製シートP1の蛇行凹溝205と、熱可塑性樹脂製シートP2の凹溝209とを突き合わせることにより、流入開口210および流出開口212を形成する。
【0052】
この場合、金型32Aのキャビティ116Aの表面に、凹部119とは連通しない第2凹部が設けられているので、一対の分割金型32の型締めにより、熱可塑性樹脂製シートP1の蛇行凹溝205以外の平面部と熱可塑性樹脂製シートP2の外表面とを面溶着させる際、内部流路202と連通しない密閉中空部が形成され、これにより面溶着面積が減少することで、広い面積に亘って溶着強度を均等に高精度に維持する困難性を回避するとともに、面溶着部分で押し潰された溶融状態の樹脂の逃げ場を形成することが可能である。
また、熱可塑性樹脂製シートP1に対応するキャビティ116Aの凹部119の縁に沿って、対向するキャビティ116Bに向かって突出する突出部(図示せず)を設けているので、一対の分割金型32の型締の際、他の部分に比べて高い押圧力が付加されることで、蛇行凹溝205の縁に沿って熱可塑性樹脂製シートP2の外表面との溶着性が高められ、同様に、面溶着部分で押し潰された溶融状態が内部流路202内にあふれ出すのを有効に防止することが可能である。
次いで、図10に示すように、分割金型32A,Bを型開きして、成形された樹脂製床暖房パネルユニット200を取り出し、ピンチオフ部118A,Bの外側のバリ部分Bを切断し、これで成形が完了する。
次いで、流入開口210および流出開口212それぞれに対して外部管路を接続する。これで、樹脂製床暖房パネルユニット200が完成する。
【0053】
以上のように、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPを間欠的に押し出すたびに、以上のような工程を繰り返すことにより、パネル状の樹脂製床暖房パネルユニット200を次々に成形することが可能であり、押出成形により熱可塑性樹脂を間欠的に溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPとして押し出し、真空成形または圧空成形により押し出された熱可塑性樹脂製シートPを金型を用いて所定の形状に賦形することが可能である。
【0054】
成形手順として、上述のように、分割金型32を型締する前にキャビティ116と樹脂材料との間に密閉空間を形成し、キャビティ116側から樹脂材料を吸引することにより、樹脂材料を賦形するだけでなく、さらに、分割金型32を型締することにより、分割金型32内に密閉空間を形成し、この密閉空間からブロー圧をかけることにより、樹脂材料を賦形してもよい。この方法によれば、吸引による賦形と、ブロー圧による賦形とを行うことにより、たとえば内部流路202の湾曲がきつい等複雑な形状の成形であっても良好な成形性を確保することができる。さらに、分割金型32を型締する際、キャビティ116側から樹脂材料を吸引しつつ密閉空間からブロー圧をかけることにより、樹脂材料を賦形するのでもよい。この方法によれば、吸引によりキャビティ116の凹部に溜まった空気を除去しつつブロー圧をかけることにより、同様に良好な成形性を確保することが可能である。
【0055】
以上の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法によれば、一方の熱可塑性樹脂製シートPについて、内部流路202の一部を構成する第1凹溝を形成するように賦形する一方、他方の熱可塑性樹脂製シートPについて、このような賦形を回避することで、賦形に伴う成形誤差を小さくしつつ、賦形された第1凹溝を単に閉鎖することで蛇行状に延びる内部流路202を精度よく形成可能である。
さらに、両方の熱可塑性樹脂製シートPに凹溝を形成したうえで、両方の熱可塑性樹脂製シートPを溶着することにより内部流路202を形成するとすれば、溶着の際の位置ずれに伴って、形成される内部流路202の断面形状が変わる可能性が高いところ、このようなリスクを回避することも可能であり、溶着の際、従来のように、高周波溶着方法を用いずに、分割金型32の型締めを利用して、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートP同士を溶着することにより、高周波溶着方法に起因する樹脂の粉体の発生、あるいは樹脂の染み出し等の不都合を未然に防止することが可能である。
加えて、本樹脂製熱伝達ユニットの製造方法によれば、熱伝導面を形成するいずれかの熱可塑性樹脂製シートPの外表面を平面状とすることにより、たとえば、熱を伝達すべき床面に対して密着して突き合わせることが可能であり、効率的な熱交換が可能であるとともに、従来のように、熱媒体の流通用配管を別途製造することなしに、樹脂製熱伝達ユニットの内部に内部流路202を一体で形成することにより、効率的な製造が可能である。
【0056】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば種々の修正あるいは変更が可能である。
【0057】
たとえば、本実施形態においては、樹脂製熱伝達ユニットとして、内部流路を流れる流体を放熱用として用いる床暖房パネルユニットを例に説明したが、それに限定されることなく、内部流路を流れる流体を受熱用として用いる場合にも適用可能である。
また、本実施形態においては、押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPを利用して、樹脂製床暖房パネルユニット200としてダイレクトに賦形・成形するものとして説明したが、それに限定されることなく、賦形・成形するのに必要な溶融状態を実現する限り、いったん押出成形し、冷却した熱可塑性樹脂製シートPを再度加熱して溶融状態とした材料を利用して賦形・成形を行ってもよい。
さらにまた、本実施形態においては、Tダイよりシート状に押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPを利用したが、それに限定されることなく、溶融状態の筒状パリソンを押し潰してシート状に形成するものでもよい。
加えて、本実施形態においては、樹脂製床暖房パネルユニット200を成形する際、内部流路内への溶融樹脂の流れ込み、あるいは良好な面溶着を確保するために、内部流路と連通しない密閉中空部を形成するとともに、内部流路の一部を形成する熱可塑性樹脂製シートP1の凹溝の縁部と熱可塑性樹脂製シートP2との溶着性を高めたが、それに限定されることなく、面溶着の広さ、面溶着の強さ等に応じて、いずれか一方とするのでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る床暖房パネルユニット200の概略平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る床暖房パネルユニット200の内部流路の端部まわりを示す概略斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る床暖房パネルユニット200の部分断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る成形装置とともに、溶融樹脂シートが分割金型の間に配置された状態を示す側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る成形装置の一対のローラーまわりを示す概略側面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る成形装置の一対のローラーまわりを示す概略平面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る成形装置において、分割金型の外枠を溶融樹脂シートの側面に当接させている状態を示す概略側面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る成形装置において、溶融樹脂シートを賦形している状況を示す概略部分断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る成形装置において、分割金型を型締めした状態を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る成形装置において、分割金型を型開きした状態を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
P 熱可塑性樹脂製シート
10 成形装置
12 押出装置
14 型締装置
16 ホッパー
18 シリンダー
22 油圧モーター
24 アキュムレータ
26 プランジャー
28 Tダイ
30 ローラー
32 分割金型
33 型枠
34 押出スリット
94 ローラー回転駆動手段
96 ローラー移動手段
98 回転駆動モータ
102 端周面
104 第1歯車
106 端周面
108 第2歯車
110 ピストンーシリンダ機構
111 回転数調整装置
112 浅溝
116 キャビティ
118 ピンチオフ部
200 樹脂製熱伝達ユニット
202 内部流路
204 曲管部
205 凹溝
206 直管部
207 切り込み
208 上下方向縁部
209 凹溝
210 流入開口
212 流出開口
214 接続管路
216 第1樹脂製シート
218 第2樹脂製シート
220 外表面
222 外表面
224 内表面
226 内表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱用あるいは受熱用流体の内部流路を有する平板状の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法であって、
互いのキャビティを対向させて配置され、型締め位置と開放位置との間で相対移動可能な一対の分割金型を準備する段階と、
表面に内部流路の一部を形成すべき溶融状態の一方の熱可塑性樹脂製シートと、伝熱板を構成する他方の熱可塑性樹脂製シートとを互いに間隔を隔てて、それぞれキャビティからはみ出す形態で、開放位置の一対の分割金型の間に配置する段階と、
一方の熱可塑性樹脂製シートと一対の金型の対応する金型との間に密閉空間を形成して、該密閉空間から空気を減圧することにより、一方の熱可塑性樹脂製シートを吸引して、内部流路と相補形状の凹部を表面に設けた対応するキャビティに沿って賦形して、キャビティに対向する内表面側に突出する第1凹溝を形成する段階と、
前記一対の分割金型を型締め位置まで移動させることにより、一方の熱可塑性樹脂製シートの外表面のうち、該第1凹溝以外の平面部と、他方の熱可塑性樹脂製シートの外表面とを面溶着させて、該第1凹溝を閉鎖することにより内部流路を形成する段階と、
を有することを特徴とする樹脂製熱伝達ユニットの製造方法。
【請求項2】
前記内部流路は、樹脂製熱伝達ユニットの縁部に設けられ、外部流路に接続される流入開口から、樹脂製熱伝達ユニットの縁部に設けられ、外部流路に接続される流出開口まで蛇行状に延び、
前記第1凹溝形成段階と併行して、他方の熱可塑性樹脂製シートと一対の金型の対応する金型との間に密閉空間を形成して、該密閉空間から空気を減圧することにより、他方の熱可塑性樹脂製シートを吸引して、前記流入開口および前記流出開口に対して前記第1凹溝と協働して相補形状をなす凹部を表面に設けた対応するキャビティに沿って賦形して、キャビティに対向する内表面側に突出する第2凹溝を形成する段階をさらに有し、
前記型締め段階により、一方の熱可塑性樹脂製シートの第1凹溝と、他方の熱可塑性樹脂製シートの第2凹溝とを突き合わせることにより、前記流入開口および前記流出開口がそれぞれ形成され、
さらに、前記内部流路形成後に、前記流入開口および前記流出開口それぞれに対して外部管路を接続する段階を有する、請求項1に記載の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法。
【請求項3】
前記一方および/または前記他方の熱可塑性樹脂製シートは、予め予備成形され、再加熱して溶融状態とされる、請求項1に記載の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法。
【請求項4】
前記型締め段階後に、前記型締めにより形成される前記一対の金型間の密閉空間内にブロー圧をかけて、さらに前記一方および前記他方の熱可塑性樹脂製シートそれぞれを賦形する段階を有する、請求項1または請求項2に記載の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法。
【請求項5】
前記型締め段階後に、前記型締めにより形成される前記一対の金型間の密閉空間内にブロー圧をかけつつ、前記一方および/または前記他方の熱可塑性樹脂製シートを対応するキャビティから真空引きすることにより、さらに前記一方および前記他方の熱可塑性樹脂製シートそれぞれを賦形する段階を有する、請求項1または請求項2に記載の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法。
【請求項6】
前記一方の熱可塑性樹脂製シートは、賦形後の最小肉厚部が所定肉厚以上となるように厚みを決定し、前記他方の熱可塑性樹脂製シートは、賦形後の最大肉厚部が所定肉厚以下となるように厚みを決定する、請求項1に記載の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法。
【請求項7】
前記一方および前記他方の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを下方に垂下する形態で、前記一対の分割金型の間に向かって押し出す段階を有する、請求項1に記載の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法。
【請求項8】
前記押し出される熱可塑性樹脂製シートは、溶融状態のパリソンを押し潰してシート状に形成される、請求項7に記載の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法。
【請求項9】
内部流路と相補形状の、前記キャビティの前記凹部の端部は、対応するキャビティの上下方向の縁部を抜けるように設けられる、請求項7または請求項8に記載の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法。
【請求項10】
熱可塑性樹脂を溶融混練する段階と、
溶融混練した熱可塑性樹脂を所定量貯留する段階と、
Tダイに設けられた所定間隔の押出スリットから溶融状態のシート状に下方に垂下するように、貯留された熱可塑性樹脂を単位時間当たり所定押出量で間欠的に押し出す段階と、を有し、
それにより、押出スリットから熱可塑性樹脂製シートが所定の厚みにて所定押出速度で下方に押し出され、
下方に押し出された熱可塑性樹脂製シートの最下部が、押出スリットの下方に配置され、かつ間隔が熱可塑性樹脂製シートの前記所定の厚みより広げられた一対のローラー間を通過した後に、一対のローラー同士を相対的に近接させることにより、一対のローラーで熱可塑性樹脂製シートを挟み込み、ローラーの回転駆動により前記所定押出速度以上の速度で下方へ送り出す段階とを有する、請求項7ないし請求項9のいずれか1項に記載の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法。
【請求項11】
前記ローラーによる送り出し段階において、熱可塑性樹脂製シートの前記所定押出速度に応じて、一対のローラーによる送り出し速度が前記所定押出速度以上となる範囲で前記ローラーの回転速度を変動させる段階を有し、
それにより、押出スリットから押し出された際の厚み以下の範囲で前記一対のローラーを通過後の熱可塑性樹脂製シートの厚みを延伸薄肉化し、金型の側方に配置された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートの厚みを押し出し方向に略一様に形成する、請求項10に記載の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法。
【請求項12】
熱可塑性樹脂を溶融混練する段階と、
溶融混練した熱可塑性樹脂を所定量貯留する段階と、
Tダイに設けられた所定間隔の押出スリットから溶融状態のシート状に下方に垂下するように、貯留された熱可塑性樹脂を単位時間当たり所定押出量で間欠的に押し出す段階と、を有し、
それにより、押出スリットから熱可塑性樹脂製シートが所定の厚みにて所定押出速度で下方に押し出され、
前記一対の分割金型の間への配置する段階前に、熱可塑性樹脂製シートの下部を下方にけん引することにより、シートの肉厚を調整する段階を有する、請求項7ないし請求項9のいずれか1項に記載の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法。
【請求項13】
前記減圧段階は、前記一対の分割金型それぞれの周縁に対して型締め方向に移動自在に外嵌する外枠を対応する熱可塑性樹脂製シートの外表面に向かって移動させる段階を有し、前記対応する熱可塑性樹脂製シートの外表面、前記外枠の内周面および前記一対の分割金型のそれぞれのキャビティにより密閉空間を構成する、請求項1または請求項2に記載の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法。
【請求項14】
前記一方の熱可塑性樹脂製シートの厚みは、前記他方の熱可塑性樹脂製シートの厚みより厚く設定する、請求項6に記載の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法。
【請求項15】
前記一対の金型の少なくとも一方の金型のキャビティの表面に、内部流路と相補形状の前記凹部とは連通しない第2凹部を設け、
前記一対の分割金型の型締めにより、一方の熱可塑性樹脂製シートの前記第1凹溝以外の平面部と他方の熱可塑性樹脂製シートの外表面とを面溶着させる際、前記内部流路と連通しない密閉中空部を形成する、請求項1に記載の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法。
【請求項16】
前記一対の分割金型の型締の際、対向するキャビティの表面同士の間隔が、一方の熱可塑性樹脂製シートの厚みおよび他方の熱可塑性樹脂製シートの厚みの合計より少なくとも小さくなるように設定され、
前記一方の熱可塑性樹脂製シートに対応するキャビティの前記凹部の縁に沿って、対向するキャビティに向かって突出する突出部を設け、
それにより、前記前記一対の分割金型の型締の際、前記第1凹溝の縁に沿って前記他方の熱可塑性樹脂製シートの外表面との溶着性を高める段階を有する、請求項1に記載の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法。
【請求項17】
前記一対の分割金型の少なくとも一方に、キャビティを取り囲むようにピンチオフ部を設け、
該ピンチオフ部の高さは、前記一対の分割金型の型締の際、対向するキャビティの表面同士の間隔が、一方の熱可塑性樹脂製シートの厚みおよび他方の熱可塑性樹脂製シートの厚みの合計より少なくとも小さくなるように設定される、請求項1に記載の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−49186(P2013−49186A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188257(P2011−188257)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】