説明

機器管理システムおよびゲートウェイ装置

【課題】簡易な構成で多くの機器を管理・制御可能な機器管理システムおよびゲートウェイ装置得ること。
【解決手段】上位ネットワーク回線6と複数の下位ネットワーク回線7A〜7Dとを接続するゲートウェイ装置20と、各下位ネットワーク回線7A〜7D上の機器1A〜1Dと、上位ネットワーク回線6上で各機器1A〜1Dの管理を行う中央監視装置5と、を有する機器管理システムにおいて、ゲートウェイ装置20は、上位ネットワーク回線6の第1の通信プロトコルと下位ネットワーク回線7A〜7Dの第2の通信プロトコルを相互変換するプロトコル変換部22と、各下位ネットワーク7A〜7Dと接続する複数の通信接続部21A〜21Dと、中央監視装置5が各機器1A〜1Dに送信する情報内の各機器の識別情報に基づいて複数の通信接続部21A〜21Dのうちの1つを用いて機器と通信を行う接続切替部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる通信プロトコルを有するネットワークを接続する機器管理システムおよびゲートウェイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ビル内等に設置されている空調機器等の設備機器を所定の監視装置で管理、制御するビル管理システムの開発が進められている。従来のビル管理システムは、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等の上位ネットワークに接続された監視装置がゲートウェイ装置を介して、下位ネットワークによって接続された複数の設備機器を管理(監視)・制御している。ゲートウェイ装置は、監視装置が接続された上位ネットワークと設備機器が接続された下位ネットワークに配置されており、監視装置から送信されるデータ(パケット)を設備機器で処理可能なデータに変換するとともに、設備機器から送信されるデータを監視装置で処理可能なデータに変換する。すなわち、ゲートウェイ装置は監視装置で処理する上位ネットワーク側のプロトコルと設備機器で処理する下位ネットワーク側のプロトコルの相互変換を行っている。これにより、監視装置はゲートウェイ装置を介して設備機器に制御情報等を送信し、ゲートウェイ装置を介して設備機器から管理情報等を受信している。
【0003】
しかしながら、複数の設備機器を接続する下位ネットワークにおいては、ネットワーク仕様等によって接続可能な設備機器の数が制限される。例えば下位ネットワークがLonWorks(登録商標)等の場合、1つのサブネットを構成する設備機器の数が制限されることとなる。このため、ビル管理システムにおいて所定数より多くの設備機器を管理する際には、複数のゲートウェイ装置が必要となる。
【0004】
特許文献1のゲートウェイは、中央監視装置からの指令の通信プロトコルをLonWorksの通信プロトコルに変換し且つ機器から得た情報の通信プロトコルを上位ネットワークの通信プロトコルに変換するプロトコル変換手段と、中央監視装置からの指令を蓄積し且つプロトコル変換手段を介して各機器へ送信するコントロール手段とを備えている。そして、複数のLonWorks回線のそれぞれに対してプロトコル変換手段を設けている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−369265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術では、複数のLonWorks回線のそれぞれに対してプロトコル変換手段を設ける必要があり、ゲートウェイが複雑な構成になるといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で多くの機器を管理・制御可能な機器管理システムおよびゲートウェイ装置得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1の発明に係る機器管理システムは、第1の通信プロトコルで情報の送受信を行う上位通信ネットワークと、第2の通信プロトコルで情報の送受信を行う複数の下位通信ネットワークとの間に配置されて前記上位ネットワークと前記下位ネットワークを接続するゲートウェイ装置と、前記各下位ネットワーク上に接続される1〜複数の管理対象の機器と、前記上位ネットワーク上で前記各機器の管理を行う機器管理装置と、を有する機器管理システムにおいて、前記ゲートウェイ装置は、前記第1の通信プロトコルを前記第2の通信プロトコルに変換するとともに、前記第2の通信プロトコルを前記第1の通信プロトコルに変換するプロトコル変換部と、前記下位通信ネットワーク毎に前記各下位通信ネットワークと接続して、前記下位通信ネットワーク上の各機器と情報の送受信を行う複数の通信接続部と、前記機器管理装置が前記各機器に送信する情報に含まれる前記各機器を識別する識別情報に基づいて、前記複数の通信接続部のうちの1つを有効とし、有効とした通信接続部を用いて下位通信ネットワークの機器と通信を行う接続切替部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明に係る機器管理システムは、請求項1の発明において、前記通信接続部は、USBポートであることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明に係る機器管理システムは、請求項1または2の発明において、前記識別情報は、前記各機器毎に設定される機器のアドレスであることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明に係るゲートウェイ装置は、第1の通信プロトコルで情報の送受信を行う上位通信ネットワークと、第2の通信プロトコルで情報の送受信を行う複数の下位通信ネットワークとの間に配置されて、前記各下位ネットワーク上に接続される1〜複数の管理対象の機器と、前記上位ネットワーク上で前記各機器の管理を行う機器管理装置とを前記上位ネットワークおよび前記下位ネットワークを介して接続するゲートウェイ装置において、前記第1の通信プロトコルを前記第2の通信プロトコルに変換するとともに、前記第2の通信プロトコルを前記第1の通信プロトコルに変換するプロトコル変換部と、前記下位通信ネットワーク毎に前記各下位通信ネットワークと接続して、前記下位通信ネットワーク上の各機器と情報の送受信を行う複数の通信接続部と、前記機器管理装置が前記各機器に送信する情報に含まれる前記各機器を識別する識別情報に基づいて、前記複数の通信接続部のうちの1つを有効とし、有効とした通信接続部を用いて下位通信ネットワークの機器と通信を行う接続切替部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る機器管理システムは、ゲートウェイ装置が第1の通信プロトコルと第2の通信プロトコルの間でプロトコル変換を行うとともに、複数の通信接続部のうちの1つを有効とし、有効とした通信接続部を用いて下位通信ネットワークの機器と通信を行うので、機器管理装置は上位通信ネットワークにおける第1の通信プロトコルと、下位通信ネットワークにおける第2の通信プロトコルを意識することなく機器の管理・制御を行うことができるとともに、ゲートウェイ装置は簡易な構成で多くの機器と接続することが可能になるという効果を奏する。機器管理システムは多くの機器と接続するので、機器管理システムは少ないトラフィックで機器の管理・制御を行うことが可能になるという効果を奏する。
【0013】
本発明の請求項4に係るゲートウェイ装置は、第1の通信プロトコルと第2の通信プロトコルの間でプロトコル変換を行うとともに、複数の通信接続部のうちの1つを有効とし、有効とした通信接続部を用いて下位通信ネットワークの機器と通信を行うので、ゲートウェイ装置は簡易な構成で多くの機器と接続することが可能になるという効果を奏する。機器管理システムは多くの機器と接続するので、少ないトラフィックで機器と通信を行うことが可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る機器管理システムおよびゲートウェイ装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の実施例に係るゲートウェイ装置が適用される機器管理システムの構成を示す図である。機器管理システムは、上位ネットワーク回線6に接続された中央監視装置(機器管理装置)5、下位ネットワーク回線7Aに接続された1〜複数の機器1A、下位ネットワーク回線7Bに接続された1〜複数の機器1B、下位ネットワーク回線7Cに接続された1〜複数の機器1C、下位ネットワーク回線7Dに接続された1〜複数の機器1D、上位ネットワーク回線6および下位ネットワーク回線7A〜7Dに接続されたゲートウェイ装置20を備えている。
【0016】
機器管理システムは、例えばビル内に配置される空調機器を管理・制御するシステムであり、機器1A〜1Dは例えば室外機や室内機などの管理対象の機器であり、中央監視装置5は例えば室外機や室内機を管理・制御する管理サーバである。中央監視装置5は、ゲートウェイ装置20を介して機器1A〜1Dの管理・制御を行う。
【0017】
下位ネットワーク回線7Aに接続された1〜複数の機器1Aはサブネット(サブネットワーク)システム(上位通信ネットワーク)10Aを構成し、下位ネットワーク回線7Bに接続された1〜複数の機器1Bはサブネットシステム(下位通信ネットワーク)10Bを構成し、下位ネットワーク回線7Cに接続された1〜複数の機器1Cはサブネットシステム10Cを構成し、下位ネットワーク回線7Dに接続された1〜複数の機器1Dはサブネットシステム10Dを構成している。
【0018】
中央監視装置5とゲートウェイ装置20は、例えばBACnet(Building Automation and Control Network)等などの上位ネットワーク回線6によって接続されている。また、ゲートウェイ装置20と機器1A〜1Dは、例えばLonWorks(登録商標)等の下位ネットワーク回線7A〜7Dによって接続されている。
【0019】
ゲートウェイ装置20は、下位ネットワーク回線7A〜7Dと接続する通信接続部21A〜21Dを備えており、中央監視装置5からの制御情報等を通信接続部21A〜21Dを介して機器1A〜1Dに送信するとともに、機器1A〜1Dからの管理情報等を通信接続部21A〜21Dを介して受信し中央監視装置5に送信する。
【0020】
図2は、実施例に係るゲートウェイ装置の構成を示すブロック図である。ゲートウェイ装置20は、複数の通信接続部21A〜21D、プロトコル変換部22、接続判別部(接続切替部)23、通信接続部25、制御部29を備えている。
【0021】
通信接続部21Aは、下位ネットワーク回線7Aを介してサブネットシステム10A内の1〜複数の機器1Aと通信を行うUSB(Universal Serial Bus)ポート等の通信インタフェースである。通信接続部21Bは、下位ネットワーク回線7Bを介してサブネットシステム10B内の1〜複数の機器1Bと通信を行うUSBポート等の通信インタフェースである。通信接続部21Cは、下位ネットワーク回線7Cを介してサブネットシステム10C内の1〜複数の機器1Cと通信を行うUSBポート等の通信インタフェースである。通信接続部21Dは、下位ネットワーク回線7Dを介してサブネットシステム10D内の1〜複数の機器1Dと通信を行うUSBポート等の通信インタフェースである。
【0022】
通信接続部25は、上位ネットワーク回線6を介して中央監視装置5と通信を行う通信インタフェースである。通信接続部25は、中央監視装置5と後述の上位データフレーム41によって通信を行う。
【0023】
プロトコル変換部22は、中央監視装置5から送信されるデータ(パケット)を機器1A〜1Dで処理可能なデータに変換するとともに、機器1A〜1Dから送信されるデータを中央監視装置5で処理可能なデータに変換する。すなわち、ゲートウェイ装置20のプロトコル変換部22は、中央監視装置5で処理する上位ネットワーク回線6側のプロトコル(第1の通信プロトコル)を機器1A〜1Dで処理する下位ネットワーク回線7A〜7D側のプロトコル(第2の通信プロトコル)に変換し、機器1A〜1Dで処理する下位ネットワーク回線7A〜7D側のプロトコルを中央監視装置5で処理する上位ネットワーク回線6側のプロトコルに変換する。プロトコル変換部22は、後述するオブジェクト識別子情報50、オブジェクト情報55、データ変換テーブル(ルーティングテーブル)60を記憶しており、このオブジェクト識別子情報50、オブジェクト情報55、データ変換テーブル60に基づいてデータ変換を行う。
【0024】
接続判別部23は、中央監視装置5から機器1A〜1Dへのデータを受信した際に、受信したデータをいずれの通信接続部21A〜21Dから送信するかを判断(選択)する。接続判別部23は、中央監視装置5から受信したデータに含まれる各機器1A〜1Dのアドレスに基づいて通信接続部21A〜21Dを選択する。換言すると、接続判別部23は
中央監視装置5から機器1A〜1Dへのデータに含まれる各機器1A〜1Dのアドレスに基づいて、複数の通信接続部21A〜21Dのうちの1つを有効とし、有効とした通信接続部を用いて下位ネットワーク回線上の機器と通信を行う。
【0025】
制御部29は、通信接続部21A〜21D、プロトコル変換部22、接続判別部23、通信接続部25を制御する。制御部29は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を含んで構成されている。CPUが、ROMに格納されるゲートウェイ装置20用の各種制御プログラムやアプリケーションプログラムなどを読み出してRAM内のプログラム格納領域に展開して各種処理を実行し、この処理に際して生じる各種データをRAM内に形成されるデータ格納領域に一時的に記憶して、ゲートウェイ装置20の各処理部を制御する機能を有する。
【0026】
なお、接続判別部23は、中央監視装置5から受信したデータに含まれる各機器1A〜1Dのアドレスに基づいて通信接続部21A〜21Dを選択する場合に限られず、各機器1A〜1Dを識別することが可能な情報(識別子)であればこの識別子に基づいて通信接続部21A〜21Dを選択してもよい。
【0027】
つぎに、ゲートウェイ装置によるデータの送受信の手順を説明する。図3は、ゲートウェイ装置のデータの送受信の手順を示すフローチャートである。中央監視装置5は、機器を管理・制御するための指示情報(指令)を上位ネットワーク回線6に送信する(ステップS100)。ここでの、指示情報は上位データフレーム41によって構成されている。
【0028】
ここで、中央監視装置5が上位ネットワーク回線6上で送受信する上位データフレーム41の構成を説明する。図4は、上位データフレームの構成の一例を示す図である。上位データフレーム41は、例えば一般的なイーサネット(登録商標)のデータフレームであり、MAC(Media Access Control)ヘッダ、BACnetIP(Internet Protocol)、BVLCI(BACnet Virtual Link Control Information)、NPCI(Network Protocol Control Information)、APDU(Application Protocol Data Unit)で構成される。
【0029】
MACヘッダには、宛先MACアドレス、送信元MACアドレス、およびデータ長が設定される。BACnetIPは、IPヘッダおよびUDP(User Datagram Protocol)ヘッダで構成され、IPヘッダには、バージョン、ヘッダ長、サービスタイプ、トータル長、識別子、フラグ、フラグメントオフセット、生存時間、プロトコルタイプ、ヘッダ・チェックサム、送信元アドレス、および宛先アドレスが設定され、UDPヘッダには、送信元ポート番号、宛先ポート番号、データ長、およびチェックサムが設定される。
【0030】
BVLCIには、上位ネットワーク回線6の仮想リンク制御情報が設定され、NPCIには上位ネットワーク回線6のプロトコル制御情報が設定される。APDUにはアプリケーションデータが設定される。ここでのAPDUには、後述するオブジェクト識別子およびオブジェクトのデータが設定される。オブジェクト識別子は、オブジェクトタイプとインスタンスナンバを含んで構成されている。
【0031】
中央監視装置5から上位ネットワーク回線6に指示情報(上位データフレーム41)を送信すると、ゲートウェイ装置20の通信接続部25が上位データフレーム41を受信する(ステップS110)。
【0032】
ゲートウェイ装置20のプロトコル変換部22は、中央監視装置5から受信した上位データフレーム41を機器1A〜1Dで処理可能なデータに変換(プロトコル変換)する。すなわち、プロトコル変換部22は、中央監視装置5で処理する上位ネットワーク回線6側のプロトコルを機器1A〜1Dで処理する下位ネットワーク回線7A〜7D側のプロトコルに変換する。プロトコル変換部22は、オブジェクト識別子情報50、オブジェクト情報55、データ変換テーブル60に基づいてプロトコル変換を行う。
【0033】
オブジェクト識別子情報50は、下位ネットワーク回線7A〜7D上のオブジェクト(オブジェクト識別コード)や機器1A〜1Dのアドレスと、上位ネットワーク回線6上でのオブジェクト識別子のインスタンスナンバの対応関係を定義する情報である。すなわち、オブジェクト識別子は、下位ネットワーク回線7A〜7D内のどの機器1A〜1Dに対して、どのような指令を行なうかの情報を含んでいる。中央監視装置5は、初期設定時にオブジェクト識別子情報50に基づいて各機器1A〜1Dにオブジェクト識別子(インスタンスナンバ)を割り付ける。オブジェクト識別子情報50は、新たな初期設定を行うまでゲートウェイ装置20のプロトコル変換部22によって記憶しておく。
【0034】
データ変換テーブル60には、下位データフレーム42のコマンドコードと当該コマンドコードのデータ値とに対応付けて、上位データフレーム41のオブジェクトコードと当該オブジェクトコードのデータ値とが登録されている。
【0035】
ここで、オブジェクト識別子情報50、オブジェクト情報55、データ変換テーブル60の構成について説明する。図5は、オブジェクト識別子情報の構成の一例を示す図である。オブジェクト識別子は、オブジェクト識別コード、サブネットシステム系統、ユニットアドレスで構成される。
【0036】
サブネットシステム系統は、機器1A〜1Dが接続されているサブネットシステムを示す。例えば、サブネットシステム系統が「1」の場合はサブネットシステム10Aを構成する機器1Aを示し、サブネットシステム系統が「2」の場合はサブネットシステム10Bを構成する機器1Bを示し、サブネットシステム系統が「3」の場合はサブネットシステム10Cを構成する機器1Cを示し、サブネットシステム系統が「4」の場合はサブネットシステム10Dを構成する機器1Dを示す。
【0037】
ユニットアドレスは、機器1A〜1Dのユニットアドレスを示す。例えば、機器1A〜1Dが空調機器である場合ユニットアドレスは冷媒系統アドレス、ノードアドレスによって構成される。
【0038】
オブジェクト識別コードには、中央監視装置5が処理可能なオブジェクト(コマンド)を識別するオブジェクトの識別コードが設定される。オブジェクト識別コードは、オブジェクト情報55に基づいて設定される。オブジェクト情報55は、機器1A〜1Dに対するオブジェクト、このオブジェクトの内容、オブジェクト識別コードの対応関係を示す情報である。
【0039】
図6は、オブジェクト情報の構成の一例を示す図である。オブジェクト情報55のオブジェクトタイプとしては例えば「Analog Input」、「Analog Output」、「Binary Input」、「Binary Output」がある。
【0040】
「Analog Input」、「Binary Input」は、機器1A〜1D側から中央監視装置5へ機器1A〜1Dの設定状態等の情報を送信する際のオブジェクトである。したがって、「Analog Input」、「Binary Input」は、機器1A〜1Dからの上位データフレーム41によってゲートウェイ装置20に入力される。
【0041】
「Analog Input」には、機器1A〜1Dの温度設定の状態を示す「温度設定状態」と機器1A〜1Dが設置される室内の温度を示す「室内温度状態」がある。ここでは、「Analog Input」の「温度設定状態」のオブジェクト識別コードが「10」であり、「Analog Input」の「室内温度状態」のオブジェクト識別コードが「11」である場合を示している。「Binary Input」には、機器1A〜1Dが運転状態か停止状態かを示す「運転/停止状態」があり、オブジェクト識別コードが「10」で示される。
【0042】
「Analog Output」、「Binary Output」は、中央監視装置5が機器1A〜1Dの設定や制御を行う際のオブジェクト(指示情報)である。したがって、「Analog Output」、「Binary Output」は、中央監視装置5からの上位データフレーム41によってゲートウェイ装置20に入力される。
【0043】
「Analog Output」には、機器1A〜1Dの温度設定を行うための「温度設定」がある。ここでは、「Analog Output」の「温度設定」のオブジェクト識別コードが「10」である場合を示している。「Binary Output」には、機器1A〜1Dを運転状態か停止状態に設定するための「運転/停止設定」があり、オブジェクト識別コード「10」で示される。
【0044】
このように、オブジェクト識別子に含まれるオブジェクトタイプおよびオブジェクト識別コードによって機器の状態や機器への設定を指定することが可能となる。なお、図6に示したオブジェクト、オブジェクト識別コードは一例であり、これに限られるものではない。
【0045】
例えば、機器1A〜1Dへのオブジェクトのオブジェクト識別コードが「II」、機器1A〜1Dのサブネットシステム系統が「J」、機器1A〜1Dのユニットアドレスが「KKLL」の場合、上位ネットワーク回線6側ではこれらの情報をインスタンスナンバ「IIJKKLL」のオブジェクト識別子として扱う。
【0046】
一方、上位ネットワーク回線6側でのインスタンスナンバが「IIJKKLL」の場合、下位ネットワーク回線7A〜7D側では機器1A〜1Dへのオブジェクトのオブジェクト識別コードを「II」、機器1A〜1Dのサブネットシステム系統を「J」、機器1A〜1Dのユニットアドレスを「KKLL」として扱う。
【0047】
図7は、データ変換テーブルの構成の一例を示す図である。上位データフレームで運転/停止の状態設定を示すオブジェクト「Binary Output」のオブジェクトコード「10」と、下位データフレームで運転/停止の状態設定を示すコマンドコード「1」が対応付けられている。また、上位データフレームでの運転/停止の状態設定のデータ値「1」と下位データフレームでの運転/停止の状態設定のデータ値「1」が対応付けられ、上位データフレームでの運転/停止の状態設定のデータ値「0」と下位データフレームでの運転/停止の状態設定のデータ値「0」が対応付けられている。
【0048】
上位データフレームにおいてデータ値「0」が運転/停止の状態設定のうち停止の状態設定を示す場合、下位データフレームにおいてデータ値「0」が運転/停止の状態設定のうち停止の状態設定を示す。同様に、上位データフレームにおいてデータ値「1」が運転/停止の状態設定のうち運転の状態設定を示す場合、下位データフレームにおいてデータ値「1」が運転/停止の状態設定のうち運転の状態設定を示す。
【0049】
したがって、プロトコル変換部22は中央監視装置5からオブジェクト「Binary Output」(オブジェクトコード「10」、データ値「1」)の上位データフレームを受信すると、運転/停止の状態設定コマンド(コマンドコード「1」、データ値「1」)の下位データフレームに変換する。
【0050】
また、下位データフレームで運転/停止の状態出力を示すコマンドコード「1」と、上位データフレームで運転/停止の状態設定を示すオブジェクト「Binary Input」のオブジェクトコード「10」が対応付けられている。下位データフレームでの運転/停止の状態出力のデータ値「1」と上位データフレームでの運転/停止の状態出力のデータ値「1」が対応付けられ、上位データフレームでの運転/停止の状態出力のデータ値「0」と下位データフレームでの運転/停止の状態出力のデータ値「0」が対応付けられている。
【0051】
したがって、プロトコル変換部22は機器1A〜1Dから運転/停止の状態出力コマンド(コマンドコード「1」、データ値「1」)の下位データフレームを受信すると、オブジェクト「Binary Input」(オブジェクトコード「10」、データ値「1」)の上位データフレームの下位データフレームに変換する。
【0052】
このように、データ変換テーブル60には、下位データフレームの全てのコマンドと当該コマンドのデータ値に対応付けて、上位データフレームのオブジェクトコードと当該オブジェクトコードのデータ値とが登録される。
【0053】
ゲートウェイ装置20のプロトコル変換部22は、オブジェクト識別子情報50、オブジェクト情報55、データ変換テーブル60に基づいて、中央監視装置5から受信したデータ(上位データフレーム)を機器1A〜1Dで処理可能なデータ(下位データフレーム)に変換する(ステップS120)。
【0054】
具体的には、プロトコル変換部22は、上位データフレーム41内のAPDUに含まれるオブジェクト識別子を抽出する。プロトコル変換部22は、オブジェクト識別子情報50に基づいて、抽出したオブジェクト識別子のインスタンスナンバに対応するオブジェクト識別コードを抽出するとともに、当該オブジェクト識別コードのデータ値を抽出する。プロトコル変換部22は、データ変換テーブル60に基づいて、抽出したオブジェクト識別コードおよびデータ値に対応する下位データフレームのコマンドおよびデータ値を取得する。
【0055】
例えば、中央監視装置5からゲートウェイ装置20へ送信された上位データフレームのオブジェクトタイプが「Binary Output」であり、インスタンスナンバが「1000000」であり、データ値が「1」である場合、プロトコル変換部22は下位データフレームのコマンド「1」(運転/停止の状態設定)、運転の設定を示すデータ値「1」を取得する。
【0056】
図8は、下位データフレームの構成の一例を示す図である。下位データフレーム42は、送信元アドレスおよび送信先アドレスが設定されるフレームヘッダ、コマンドが設定されるコマンド種別、機器1A〜1Dを識別するためのユニットアドレス、コマンドに付加されるデータ値(たとえば、機器1A〜1Dの設定コマンドであれば運転/停止、運転モード、設定温度などを示すデータ)が設定されるデータ部、およびデータフレームのデータ誤りを検出するためのコードが設定されるチェックサムで構成される。
【0057】
プロトコル変換部22は、抽出したオブジェクト識別コードおよびデータ値に対応する下位データフレーム42のコマンドおよびデータ値を取得すると、取得したコマンドを下位データフレームのコマンド種別に設定し、取得したデータ値をデータ部の所定の位置に設定する。プロトコル変換部22は、オブジェクト識別子のユニットアドレスを下位データフレーム42のユニットアドレスとして設定し、予め定められた演算によって算出したコードをチェックサムに設定する。例えば、機器の運転/停止状態を設定する場合、プロトコル変換部22は機器の運転/停止状態を設定するための所定のビットを「1」にする。
【0058】
ゲートウェイ装置20の接続判別部23は、プロトコル変換部22で変換されたデータ(下位データフレーム)を、どの通信接続部21A〜21Dを介して機器1A〜1Dに送信するかを判断していずれかの通信接続部21A〜21Dを選択する(ステップS130)。具体的には、接続判別部23は、上位データフレーム41内のAPDUに含まれるオブジェクト識別子を抽出する。接続判別部23は、オブジェクト識別子情報50に基づいて、抽出したオブジェクト識別子に対応するサブネットシステム系統を抽出する。
【0059】
例えば、サブネットシステム系統が「1」の場合、接続判別部23はプロトコル変換部22で変換されたデータ(下位データフレーム42)を通信接続部21Aを介して機器1Aに送信すると判断(通信接続部21Aの選択)する。また、サブネットシステム系統が「2」の場合、接続判別部23はプロトコル変換部22で変換されたデータを通信接続部21Bを介して機器1Bに送信すると判断する。また、サブネットシステム系統が「3」の場合、接続判別部23はプロトコル変換部22で変換されたデータを通信接続部21Cを介して機器1Cに送信すると判断する。また、サブネットシステム系統が「4」の場合、接続判別部23はプロトコル変換部22で変換されたデータを通信接続部21Dを介して機器1Dに送信すると判断する。
【0060】
ゲートウェイ装置20は、接続判別部23が選択した通信接続部21A〜21Dを介して下位データフレーム42によって構成される指示情報を機器1A〜1Dに送信する(ステップS140)。例えば、接続判別部23が通信接続部21Aを選択した場合、指示情報を通信接続部21Aを介して下位ネットワーク回線7Aに送信する。下位ネットワーク回線7Aに送信された指示情報はサブネットシステム10A内の機器1Aによって受信される。指示情報を受信した機器1Aのうち、下位データフレーム42のユニットアドレスで指定された機器1Aのみが指示情報に対応した処理を行う。
【0061】
機器1A〜1Dは所定のタイミングで中央監視装置5に状態情報(下位データフレーム42)を送信する。例えば、機器1Bから中央監視装置5に状態情報(温度設定状態など)を送信する場合、下位ネットワーク回線7Bを介してゲートウェイ装置20に状態情報が送信される。ゲートウェイ装置20は機器1Bからの状態情報を通信接続部21Bによって受信する。通信接続部21Bによって受信した状態情報はプロトコル変換部22によってプロトコル変換される。
【0062】
下位データフレーム42を上位データフレーム41に変換する場合、下位データフレーム42のコマンドコードおよび当該コマンドコードのデータ値を抽出し、抽出したコマンドコードおよびデータ値を検索キーとしてデータ変換テーブル60を検索して上位データフレーム41のオブジェクトコードおよびデータ値を取得する。そして、取得したオブジェクトコードをオブジェクト識別子のオブジェクトコードに設定し、下位データフレーム42を送信したサブネットシステム10A〜10D(下位ネットワーク回線7A〜7B)を識別する識別子をオブジェクト識別子のサブネットシステム系統に設定する。プロトコル変換部22は、下位データフレーム42のユニットアドレスをオブジェクト識別子のインスタンスナンバのユニットアドレスに設定する。プロトコル変換部22は、オブジェクト識別子とデータ変換テーブル60から取得したデータ値とを上位データフレーム41のAPDUに設定する。ゲートウェイ装置20は、プロトコル変換部22が変換した下位データフレーム42によって構成される状態情報を通信接続部25を介して中央監視装置5に送信する。
【0063】
なお、本実施例においては、プロトコル変換部22が上位ネットワーク回線6からのデータをプロトコル変換した後、接続判別部23がどの通信接続部21A〜21Dから下位ネットワーク回線7A〜7Dにデータを送信するかを判断したが、接続判別部23がどの通信接続部21A〜21Dから下位ネットワーク回線7A〜7Dにデータを送信するかを判断した後、プロトコル変換部22が上位ネットワーク回線6からのデータをプロトコル変換してもよい。
【0064】
なお、本実施例においては、下位ネットワーク回線が下位ネットワーク回線7A〜7Dである場合について説明したが、下位ネットワーク回線は4つに限られず、2つ、3つまたは5つ以上であってもよい。この場合、ゲートウェイ装置20は下位ネットワーク回線の数と同数の通信接続部を備えればよい。すなわち、ゲートウェイ装置20の通信接続部は4つに限られず、2つ、3つまたは5つ以上であってもよい。
【0065】
なお、機器管理システムのゲートウェイ装置20をパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータシステムによって構成してもよい。例えばパーソナルコンピュータによってゲートウェイ装置20の機能を達成する場合、パーソナルコンピュータのマルチポートが複数の通信接続部21A〜21Dに対応する。
【0066】
なお、本実施例においては、通信接続部21A〜21DがUSBポートである場合について説明したが、通信接続部21A〜21DはUSBポートに限定されるものではなく、シリアルポート、パラレルポート、LAN(Local Area Network)ポート、MS−TPポート等、ポートを増設することによって通信接続部21A〜21Dを構成してもよい。
【0067】
このように実施例によれば、ゲートウェイ装置20が上位ネットワーク回線6の通信プロトコルと下位ネットワーク回線7A〜7Dの通信プロトコルのプロトコル変換を行うとともに、複数の通信接続部21A〜21Dのうちの1つを有効とし、有効とした通信接続部を用いて下位通信ネットワーク回線上の機器と通信を行うので、中央監視装置5は上位ネットワーク回線6における通信プロトコルと、下位ネットワーク回線における通信プロトコルを意識することなく機器1A〜1Dの管理・制御を行うことができるとともに、ゲートウェイ装置は簡易な構成で多くの機器1A〜1Dと接続することが可能となる。機器管理システムは多くの機器1A〜1Dと接続するので、機器管理システムは少ないトラフィックで機器1A〜1Dの管理・制御を行うことが可能となる。また、パーソナルコンピュータには複数ポートが搭載されていることが通常であり、ポートの増設がハブによって容易に行えるため、通信接続部21A〜21DをUSBポートで構成することによって簡易な構成でゲートウェイ装置20の通信接続部21A〜21Dの機能を達成することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のように、本発明にかかる機器管理システムおよびゲートウェイ装置は、機器の管理・制御に適している。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例に係るゲートウェイ装置が適用される機器管理システムの構成を示す図である。
【図2】実施例に係るゲートウェイ装置の構成を示すブロック図である。
【図3】ゲートウェイ装置のデータの送受信の手順を示すフローチャートである。
【図4】上位データフレームの構成の一例を示す図である。
【図5】オブジェクト識別子情報の構成の一例を示す図である。
【図6】オブジェクト情報の構成の一例を示す図である。
【図7】データ変換テーブルの構成の一例を示す図である。
【図8】下位データフレームの構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1A〜1D 機器
5 中央監視装置
6 上位ネットワーク回線
7A〜7D 下位ネットワーク回線
10A〜10D サブネットシステム
20 ゲートウェイ装置
21A〜21D,25 通信接続部
22 プロトコル変換部
23 接続判別部
29 制御部
41 上位データフレーム
42 下位データフレーム
50 オブジェクト識別子情報
55 オブジェクト情報
60 データ変換テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信プロトコルで情報の送受信を行う上位通信ネットワークと、第2の通信プロトコルで情報の送受信を行う複数の下位通信ネットワークとの間に配置されて前記上位ネットワークと前記下位ネットワークを接続するゲートウェイ装置と、
前記各下位ネットワーク上に接続される1〜複数の管理対象の機器と、
前記上位ネットワーク上で前記各機器の管理を行う機器管理装置と、を有する機器管理システムにおいて、
前記ゲートウェイ装置は、
前記第1の通信プロトコルを前記第2の通信プロトコルに変換するとともに、前記第2の通信プロトコルを前記第1の通信プロトコルに変換するプロトコル変換部と、
前記下位通信ネットワーク毎に前記各下位通信ネットワークと接続して、前記下位通信ネットワーク上の各機器と情報の送受信を行う複数の通信接続部と、
前記機器管理装置が前記各機器に送信する情報に含まれる前記各機器を識別する識別情報に基づいて、前記複数の通信接続部のうちの1つを有効とし、有効とした通信接続部を用いて下位通信ネットワークの機器と通信を行う接続切替部と、
を備えることを特徴とする機器管理システム。
【請求項2】
前記通信接続部は、USBポートであることを特徴とする請求項1に記載の機器管理システム。
【請求項3】
前記識別情報は、前記各機器毎に設定される機器のアドレスであることを特徴とする請求項1または2に記載の機器管理システム。
【請求項4】
第1の通信プロトコルで情報の送受信を行う上位通信ネットワークと、第2の通信プロトコルで情報の送受信を行う複数の下位通信ネットワークとの間に配置されて、前記各下位ネットワーク上に接続される1〜複数の管理対象の機器と、前記上位ネットワーク上で前記各機器の管理を行う機器管理装置とを前記上位ネットワークおよび前記下位ネットワークを介して接続するゲートウェイ装置において、
前記第1の通信プロトコルを前記第2の通信プロトコルに変換するとともに、前記第2の通信プロトコルを前記第1の通信プロトコルに変換するプロトコル変換部と、
前記下位通信ネットワーク毎に前記各下位通信ネットワークと接続して、前記下位通信ネットワーク上の各機器と情報の送受信を行う複数の通信接続部と、
前記機器管理装置が前記各機器に送信する情報に含まれる前記各機器を識別する識別情報に基づいて、前記複数の通信接続部のうちの1つを有効とし、有効とした通信接続部を用いて下位通信ネットワークの機器と通信を行う接続切替部と、
を備えることを特徴とするゲートウェイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−129283(P2006−129283A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316998(P2004−316998)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】