説明

機能性膜の製造方法

【課題】均一で微細な先端を持つ高アスペクト比構造を有し、欠陥の少ないアレイ状に形成された高アスペクト比構造を有する機能性膜の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】微細な凹部アレイが形成されたスタンパー13に、ポリマー樹脂の溶解液16を塗布する塗布工程と、ポリマー樹脂の溶解液16の表面に基材20を重ね合わせて接着する接着工程と、ポリマー樹脂の溶解液16を乾燥する乾燥工程と、乾燥工程により乾燥し固化した樹脂ポリマーを、基材20と一緒にスタンパー13より剥離する剥離工程と、を有する、機能製膜を製造する方法において、接着工程は、基材20のポリマー樹脂の溶解液16との接着面側にゲル化材料23を塗布し、ポリマー樹脂の溶解液16と該ゲル化材料23とで混合層24を形成させることを特徴とする機能性膜の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高アスペクト比構造を有する機能性膜の製造方法に関し、特に、皮膚表層または皮膚角質層において、簡便に、かつ効率的に薬品などを注入するマイクロニードルシートと称される機能性膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体表面、即ち皮膚や粘膜などより、薬品などを投与する方法としては、主に液状物質または粉状物質を付着させる方法が殆どであった。しかしながら、これらの物質の付着領域は、皮膚の表面に限られていたため、発汗や異物の接触などによって、付着している薬品などが除去される場合があり、適量を投与することは困難であった。また、薬品を皮膚の奥深くに浸透させるためには、このような薬品の拡散による浸透を利用した方法では、浸透深さを確実に制御することは困難であるため、充分な薬効を得ることは困難であった。
【0003】
そのため、高アスペクト比構造を有する機能性膜を用い、その先端を皮膚内に挿入することにより、薬品を注入する方法が行われている。このような、高アスペクト比構造を有する機能性膜を形成する方法として、例えば、特許文献1、2には、鋳型を作製してその中に素材を注入し、射出成形により、ニードル構造を形成する方法が記載されている。また、特許文献3には、針状の材料の先を、基板上の流動状態の素材に付着・延伸させることで、ニードル構造を形成する方法が記載されている。
【特許文献1】特開2003−238347号公報
【特許文献2】特開2006−051361号公報
【特許文献3】特開2006−345983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1または2記載の方法は、アレイ状の凹金型に対して微細形状の凹部先端まで素材を注入することが難しく、欠陥不良が生じるという問題があった。例えば、凹金先端に空気が溜まり、素材の注入時に溜まった空気の気泡などによる注入欠陥が生じていた。また、微細形状である先端部まで均一に中空にならず、溶解液を充填させるのが困難であり、生産性が劣るという問題があった。これにより、形成された凸部アレイの凸部先端がシャープに形成されないという問題がある。さらに、特許文献3に記載の方法は、張力により素材を延伸させるため、先端形状、高さなどの針形状の均一・高精度な成形が困難であった。特に、先端部は微細であるため、変形が生じ易く、延伸後すぐに硬化する材料でなければ、成形することが難しいという問題があった。また、延伸などの方法は量産化に適した方法ではなく、生産性に乏しく、高コストになってしまうといった問題点があった。
【0005】
また、マルトースを始めとする硬い(ヤング率が高い)がもろい(一部に応力が集中すると破断しやすい)素材は、成形後剥離する際に破断してしまい、均一でシャープな先端を持つ高アスペクト比構造の機能性膜を安定的に量産することが難しいという問題もあった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、溶融・溶解したポリマー材料を用いて、均一でシャープな先端を持つ高アスペクト比構造を有し、欠陥の少ないアレイ状に形成された高アスペクト比構造を有する機能性膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1は、前記目的を達成するために、微細な凹部アレイが形成されたスタンパーに、機能性膜を形成するためのポリマー樹脂の溶解液を塗布するポリマー樹脂塗布工程と、シート状の基材の表面に該基材との接着性を有するゲル化材料を塗布するゲル化材料塗布工程と、前記溶解液の面と前記ゲル化材料の面とが合わさるように、前記スタンパーの上に前記基材を載置し、該溶解液の表層部分に該ゲル化材料を混合することにより、該溶解液と該基材を接着する接着層を形成する接着工程と、前記接着層が形成された溶解液を乾燥して固化させたポリマー樹脂の固化物を形成する乾燥工程と、前記スタンパーから前記固化物を前記基材と一緒に剥離する剥離工程と、を備えたことを特徴とする機能性膜の製造方法を提供する。
【0008】
従来の剥離工程では、乾燥して固化させた固化物をスタンパーから剥離する際に、上方へ応力をかけて剥離する必要がある。その際に、固化物に基材を接着させて剥離を行うが、通常のアクリル系、ゴム系、シリコーン系などの医療用接着材を使用しても界面の接合が充分できず接着不良を起こしてしまう。
【0009】
請求項1によれば、基材のポリマー樹脂の溶解液との接着面に、ゲル化材料を塗布し、ポリマー樹脂の溶解液とゲル化材料が混合することにより、接着層を形成する。そして、その後、乾燥工程により、冷却固化させることで、強固な接着層を形成させることができ、接着不良を低減することができる。
【0010】
また、剥離工程においては、ポリマー樹脂のスタンパーへの密着性が高いと、ある一部に応力が集中し(基材部や微細な凸部など)、微細な凸部が破断してしまう危険性がある。請求項1によれば、基材とポリマー樹脂とを、強固に接着することができるため、均一に凸部に応力をかけることができ、応力の集中に弱い素材でも剥離不良を防止することができる。これにより、スタンパーの凹部アレイが転写された凸部アレイを有する高アスペクト比構造の機能性膜を製造することができる。
【0011】
なお、本発明において、凹部アレイとは凹部が縦・横に複数配列された状態を言い、凸部アレイとは凸部が縦・横に複数配列された状態を言う。
【0012】
請求項2は請求項1において、前記接着工程は、前記基材を前記スタンパー側に加圧することを特徴とする。
【0013】
請求項2によれば、接着工程において、基材をスタンパー側に加圧することにより、より強固なポリマー樹脂とゲル化材料とで、より強固な接着層を形成することができる。
【0014】
請求項3は請求項1または2において、前記機能性膜に形成される微細な凸部アレイの形状は、一辺又は直径が0.1〜1000μmの底面を有し、高さが0.3〜3000μmの角錐型又は円錐型であり、先端の曲率半径Rが300μm以下であることを特徴とする。
【0015】
請求項3は、機能性膜に形成される凸部アレイの好ましいサイズを規定したものである。本発明の製造方法によれば、基材とポリマー樹脂の密着性を向上させることができるので、ポリマー樹脂に対して、均一に応力をかけることができる。したがって、凸部の先端がシャープな形状の機能性膜に対しても剥離不良を防止することができるため、上記サイズのような微細な凹部アレイを有する機能性膜に対して、特に、効果的に製造することができる。
【0016】
請求項4は請求項1から3いずれかにおいて、前記ポリマー樹脂は糖類であることを特徴とする。
【0017】
請求項4によれば、ポリマー樹脂として、糖類を用いることにより、基材とポリマー樹脂の接着性を高めることができるため、機能性膜に対して、均一に応力をかけることができる。したがって、良好な剥離性を得ることができ、微細な凹部アレイを有する機能性膜に対して、特に、効果的に製造することができる。
【0018】
請求項5は請求項2から4いずれかにおいて、前記接着工程において、加圧により前記接着層を形成すると同時に、前記溶解液を前記凹部アレイの凹部先端まで注入することを特徴とする。
【0019】
請求項5によれば、スタンパーに塗布したポリマー樹脂の溶解液をスタンパー側に加圧することにより、接着層を形成すると同時に、ポリマー樹脂の溶解液をスタンパーの凹部先端まで注入することができる。また、加圧することにより、凹部に存在する空気を追い出すことができ、気泡などの混入の少ない機能性膜を製造することができる。さらに、スタンパーとポリマー樹脂が密着している場合においても、剥離する際に、基材とポリマー樹脂が強固に接着しているため、ポリマー樹脂に均一に応力をかけることができ、良好な形状の機能性膜を製造することができる。
【0020】
請求項6は請求項2から5いずれかにおいて、前記溶解液を加圧している加圧時間は10秒以上であることを特徴とする。
【0021】
請求項6によれば、10秒以上加圧を行い、スタンパーの凹部に溶解液を注入しているため、スタンパー凹部に存在する空気を追い出すことができる。したがって、スタンパー凹部への溶解液の注入を容易に行うことができるので、空気の混入の少ない機能性膜を形成することができる。
【0022】
請求項7は請求項2から6いずれかにおいて、前記溶解液を加圧する加圧力は、0.05〜30MPaの範囲であることを特徴とする。
【0023】
請求項7によれば、加圧力を0.05〜30MPaの範囲とすることにより、基材とポリマー樹脂の密着性を向上させることができるとともに、スタンパー凹部に存在する空気を効率よく追い出すことができる。
【0024】
請求項8は請求項1から7いずれかにおいて、前記接着工程における前記溶解駅の温度が、20℃以上100℃以下であることを特徴とする。
【0025】
請求項8によれば、接着工程の溶解液の温度を上記範囲とすることにより、ポリマー樹脂の溶解液の流動性を維持し、かつ、ゲル化材料のゲル化を行うことができるので、基材とポリマー樹脂の密着性を向上させることができる。
【0026】
請求項9は請求項1から8いずれかにおいて、前記ゲル化材料の量は、前記基材の単位面積あたり0.01g/cm以上1g/cm以下であることを特徴とする。
【0027】
請求項9によれば、ゲル化材料の量を上記範囲とすることにより、ポリマー樹脂と基材の密着性を向上させることができるので、均一な応力で、剥離することができ、均一でシャープな先端を持つ高アスペクト比構造を有し、欠陥の少ないアレイ状に形成された機能性膜を製造することができる。
【0028】
請求項10は請求項1から9いずれかにおいて、前記ゲル化材料は、たんぱく質、糖類の中から選ばれることを特徴とする。
【0029】
請求項10によれば、タンパク質、糖類の中から選ばれるゲル化材料を用いている。たんぱく質、糖類は多くの基材との接着性を持ち、ゾル−ゲル化する材料として強固なゲル強度を持つためゲル化材料として好適に用いることができる。
【0030】
請求項11は請求項1から10いずれかにおいて、前記ポリマー樹脂の固化物と前記ゲル化材料との間に、該ポリマー樹脂の固化物と該ゲル化材料が混合した混合層を有することを特徴とする。
【0031】
請求項11によれば、乾燥工程後において、ポリマー樹脂の固化物とゲル化材料との間に、ポリマー樹脂の固化物とゲル化材料が混合した混合層を有しているため、基材と固化物とが、固化物全体に均一で強固に接着させることができるため、剥離不良を防止することができる。
【0032】
請求項12は請求項1から11いずれかにおいて、前記スタンパーの素材は、気体透過性が1×10−12(mL/(s・m・Pa))より大きい素材で構成されていることを特徴とする。
【0033】
請求項12によれば、スタンパーの素材に気体透過性が1×10−12(mL/(s・m・Pa))より大きい素材を用いているため、気体が通過しやすく、スタンパー凹部に存在する空気をスタンパー側から追い出すことができる。したがって、スタンパー凹部に溶解液の注入を容易に行うことができるので、空気の混入の少ない機能性膜を製造することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、均一でシャープな先端を持つ高アスペクト比構造を有し、欠陥の少ないアレイ状に形成された高アスペクト比構造を有する機能性膜を製造することができる。特に、剥離する際、基材とポリマー樹脂の密着性を向上させることができ、基材に均一に応力をかけることが可能で、ポリマー樹脂とスタンパーの剥離性の良好な機能性膜の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態における高アスペクト比構造を有する機能性膜の一例としてマイクロニードルシートの製造方法について説明する。なお、以下、マイクロニードルシートについて記載するが、マイクロニードルシート以外の高アスペクト比構造を有する機能性膜についても本発明を適用することができる。
【0036】
図1に本発明の製造方法および製造装置により製造されるマイクロニードルシートの角錐状の斜視図(a)および断面図(b)を示す。
【0037】
マイクロニードルシートシートに形成される微小針(微細な凸部)22の形状は、微小針22を皮膚表面に数100μmの深さで刺すために、(1)先端が充分に尖っていて、皮膚内に入る針の径も充分に細い(長さ/径のアスペクト比が高い)こと、(2)充分な強度がある(針が折れ曲がったりしない)こと、が必要である。
【0038】
そのため、(1)の用件を満たすためには、細くて尖った形状が必要であるが、これは(2)に相反し、細すぎると先端や根元で折れ曲がってしまい、太すぎると刺さらないため、図1(a)に示すように、微小針22の稜線22Aは、微小針内側に湾曲した形状とすることが好ましい。このような形状とすることにより、先端を充分に尖らせる一方で、根元を広げることにより、折れにくくすることができる。また、角錐状の微小針の稜線22A、22Aが該稜線同士の間の角錐面22Cよりも張り出していることが好ましい。
【0039】
微小針22の形状は底面の一辺Xが0.1μm以上1000μm以下の範囲であり、高さが0.3μm以上3000μm以下であることが好ましい。より好ましくは、一辺Xが50μm以上300μm以下の範囲であり、高さが10μm以上400μm以下である。
【0040】
そして、稜線22Aの湾曲の最大深さZは、稜線の始点と終点を結ぶ線分の長さをLとしたとき、0.04×L以上0.2×L以下であることが好ましい。また、微小針の鋭利性を示す微小針先端22Bの曲率半径Rが200μm以下であることが好まし、より好ましくは10μm以下である。
【0041】
なお図1は、四角錐状の微小針22について示しているが、図2に示す円錐状や他の角錐状の微小針も同様の大きさであることが好ましい。なお、円錐状の場合においては、底面の直径Xが0.1μm以上1000μm以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは50μm以上300μm以下の範囲である。また、円錐面の湾曲の最大深さZ’は、円錐面の母線の始点と終点とを結ぶ線分の長さをL’としてとき、0.04×L’以上0.2×L’以下であることが好ましい。
【0042】
上記のように、マイクロニードルアレイは微小な凸部アレイであり、皮膚表面に刺さりやすくするため、凸部22先端を充分に尖らせ、凸部22先端の曲率半径Rを10μm以下とすることが好ましい。曲率半径Rが10μm以下の先端を有する凸部22を形成するためには、スタンパーに形成される凸アレイの反転型である凹アレイの凹部先端までポリマー樹脂の溶解液を注入して精密に転写できるかが重要なポイントになってくる。また、凸部の曲率半径Rが小さく、先端が尖っているため、剥離する際、一部に応力が集中し、凸部が破断することがある。したがって、ポリマー樹脂を剥離する際の剥離不良を低減できるかについても重要なポイントである。
【0043】
次に、マイクロニードルシートの製造方法について説明する。図3にスタンパーの製造方法の工程図、図4にポリマー樹脂塗布工程の工程図、図5に接着工程と接着工程の工程図、図6に剥離工程の工程図を示す。
【0044】
最初に原版作製を行う。具体的には、図3(a)に示すように、マイクロニードルシートの製造のためのスタンパーを作製するための原版を作製するものである。
【0045】
この原版11の作製方法は2種類あり、1番目の方法は、Si基板上にフォトレジストを塗布した後、露光、現像を行い、RIE(リアクティブイオンエッチング)等によるエッチングを行うことにより、原版11の表面に円錐の形状部(凸部)12のアレイを作製する。尚、RIE等のエッチングを行う際には、Si基板を回転させながら斜め方向からのエッチングを行うことにより、円錐の形状を形成することが可能である。
【0046】
2番目の方法は、Ni等の金属基板に、ダイヤモンドバイト等の切削工具を用いた加工により、原版11の表面に四角錘などの形状部12のアレイを形成する方法がある。
【0047】
次に、スタンパーの作製を行う。具体的には、図3(b)に示すように、原版11よりスタンパー13を作製する。通常のスタンパー13の作製には、Ni電鋳などによる方法が用いられるが、原版11は、先端が鋭角な円錐形又は角錐形の形状を有しているため、スタンパー13に形状が正確に転写され剥離することができるように、安価に製造することが可能な4つの方法が考えられる。
【0048】
1番目の方法は、原版11にPDMS(ポリジメチルシロキサン、例えば、ダウコーニング社製のシルガード184)に硬化剤を添加したシリコーン樹脂を流し込み、100℃で加熱処理し硬化した後に、原版11より剥離する方法である。2番目の方法は、紫外線を照射することにより硬化するUV硬化樹脂を原版11に流し込み、窒素雰囲気中で紫外線を照射した後に、原版11より剥離する方法である。3番目の方法は、ポリスチレンやPMMA(ポリメチルメタクリレート)等のプラスチック樹脂を有機溶剤に溶解させたものを剥離剤の塗布された原版11に流し込み、乾燥させることにより有機溶剤を揮発させて硬化させた後に、原版11より剥離する方法である。4番目の方法は、Ni電鋳により反転品を作成する方法である。
【0049】
このようにして作製されたスタンパー13を図3(c)に示す。尚、上記3つのいずれの方法においてもスタンパー13は、何度でも容易に作製することが可能である。
【0050】
スタンパーに用いる材料としては、弾性のある素材、金属製の素材を用いることができるが、弾性のある素材であることが好ましく、気体透過性の高い樹脂であることが更に好ましい。気体透過性は、1×10−12(mL/s・m・Pa)より大きいことが好ましく、さらに好ましくは、1×10−10(mL/s・m・Pa)である。気体透過性を上記範囲とすることにより、スタンパー13の凹部に存在する空気をスタンパー側から追い出すことができるの、欠陥の少ないマイクロアレイニードルを製造することができる。このような材料として、具体的には、シリコーン樹脂(例えば、シルガード184、1310ST)、UV硬化樹脂、プラスチック樹脂(例えば、ポリスチレン、PMMA(ポリメチルメタクリレート))を溶融、または溶剤に溶解させたものなどを挙げることができる。これらの中でもシリコーンゴム系の素材は繰り返し加圧による転写に耐久性があり、且つ、素材との剥離性がよいため、好適に用いることができる。また、金属製の素材としては、Ni、Cu、Cr、Mo、W、Ir、Tr、Fe、Co、MgO、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、α−酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ステンレス(スタバックス材)などやその合金を挙げることができる。
【0051】
次に、スタンパーにポリマー樹脂の溶解液(以下、「ポリマー溶解液」ともいう。)を塗布するポリマー樹脂塗布工程について説明する。図4は、ポリマー樹脂塗布工程を示す工程図である。
【0052】
ポリマー樹脂塗布工程は、具体的には、図4(b)に示すように、作製したスタンパー13の微小針に対応した凹凸パターンの形成された面に、ポリマー樹脂を溶解したポリマー溶解液16を塗布する。この中には、投薬する薬品を適量混入させることができる。
【0053】
ポリマー溶解液に用いられるポリマー樹脂の素材としては、生体適合性のある樹脂を用いることが好ましい。このような樹脂としては、例えば、ゼラチン、アガロース、ペクチン、ジェランガム、カラギナン、キサンタンガム、アルギン酸、デンプン、セルロース、トリアセチルセルロース、プルラン、ポリ乳酸、デキストリン、などの粉体を温水で溶解する素材、または、マルトースなどの加熱により溶融する樹脂を挙げることができる。これらの中でも糖類であるマルトース、デンプン、セルロース、トリアセチルセルロース、プルラン、デキストリンを好ましく用いることができ、更に、マルトースは基材とポリマー樹脂の接着性を高めることができ、機能性膜に対して、均一に応力をかけることができるため好適に利用することができる。濃度は材料によっても異なるが、10〜30%が好ましい。なお、溶解に用いる溶媒は、温水以外であっても揮発性を有するものであればよく、例えば、アルコールなどを用いることも可能である。
【0054】
ポリマー溶解液の調整方法としては、水溶性の高分子(ゼラチンなど)を用いる場合は、水溶性粉体を水に溶解し、溶解後に薬品を添加することで製造することができる。水に溶解しにくい場合、加温して溶解してもよい。温度は高分子材料の種類により、適宜選択可能であるが、約60℃の温度で加温することが好ましい。また、熱で溶融する高分子(マルトースなど)を用いる場合は、原料と薬品を熱して溶融することで、製造することができる。加熱温度としては、原料が溶融する温度で行うことが好ましく、具体的には、約150℃である。また、医療用途で使用されているポリマー、例えば、アクリル系やポリスチレン系のポリマーを溶媒で溶解して用いることもできる。溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロピルアルコール(IPA)、エタノール、アセトン、トリクロロエチレンなどの溶媒を用いることができる。
【0055】
このようなポリマー樹脂の溶解液をスタンパー13上に塗布する具体的な方法は、スピンコーターを用いた塗布が挙げられる。また、大面積のスタンパーの場合には、溶解液の注入は、ディスペンサにより、スタンパーの微小針を形成するために凹部にのみに溶解液を滴下することが考えられる。
【0056】
次にゲル化材料塗布工程について説明する。ゲル化材料塗布工程は、基材の表面に基材との接着性を有するゲル化材料を塗布する工程である。なお、本発明において、ゲル化材料とは、天然の高分子の中で液体をゼリー状に固める(ゲル化する)作用をもつ物質のことをいう。
【0057】
基材20としては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリスチレン、ポリエチレン、不織布、石英、Siなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0058】
また、ゲル化材料としては、生体適合性のある材料が好ましく、ゼラチン、アガロース、ペクチン、ジェランガム、カラギナン、キサンタンガム、グルコマンナン、アルギン酸などを挙げることができる。これらの中でも、たんぱく質であるゼラチン、糖類であるアガロース、ペクチン、ジェランガム、カラギナンを好ましく用いることができ、特にゼラチン系の素材は多くの基材との密着性をもち、ゾル−ゲル変化する材料としても強固なゲル強度を持つため、好適に利用することができる。ゲル化材料の濃度は材料によっても異なるが、10〜30%が好ましい。また、溶解に用いる溶媒としては、例えば、水、エタノールなどを用いることが可能である。また、塗布量は、ゲル化材料の量で、基材の単位体積当たり0.01g/cm以上1g/cm以下であることが好ましく、さらに好ましくは、0.01g/cm以上0.1g/cm以下である。ゲル化材料を上記範囲とすることにより、次の接着工程において、基材とポリマー溶解液とで、充分な強度の接着層を形成することができる。
【0059】
基材にゲル化材料を塗布する方法としては、特に限定されず行うことができ、例えば、スピンコーターを用いた塗布を挙げることができる。
【0060】
次に、基材の接着工程について説明する。図5は、ポリマー溶解液の注入、基材の接着工程を説明する工程図である。まず、図5(a)に示すように、ポリマー溶解液16との接着面側にゲル化材料23が塗布された基材20を、ポリマー溶解液16上に載置して付着させる。
【0061】
次に、図5(b)に示すように、プレス機のプレス板17を用いて、ポリマー溶解液16を加圧する。これにより、図5(c)に示すように、スタンパー13に塗布されたポリマー溶解液16がスタンパー側に加圧され、スタンパー13の凹部15先端まで注入される。また、加圧して注入することにより、凹部15の内部気泡を追い出すことができるため、スタンパー13に形成された凹部アレイの反転型である凸部アレイがポリマー溶解液に高精度に転写することができる。これにより、気泡などの混入のないマイクロアレイニードルシートを製造することができる。
【0062】
加圧する際のプレス機のプレス板17による加圧力は0.05〜30MPaであることが好ましく、より好ましくは0.1〜10MPa、さらに好ましくは0.5〜1.5MPaである。上記範囲とすることにより、凹部15先端の気泡を追い出し、先端がシャープで精密なマイクロニードルシートを形成することができる。加圧力は0.1MPa未満であると、圧力が小さいため、気泡の追い出しが充分でない。また、30MPaを超える加圧力でプレスしても効果が変わらない。
【0063】
また、プレスによりポリマー溶解液16を加圧する時間は、10秒以上であることが好ましい。より好ましくは30秒以上であり、さらに好ましくは2分以上である。圧力状態の変化時間を上記範囲とすることにより、スタンパー13の凹部15先端の気泡を追い出すことができる。
【0064】
また、接着工程において、スタンパーの温度を、ポリマー樹脂のガラス転移点(Tg)+20℃の温度に加熱することが好ましい。上記温度で行うことにより、ポリマー樹脂の溶解液の流動性を維持した状態で注入を行うことができるので、容易にスタンパー13の凹部15に注入することができる。
【0065】
次に、図5(d)に示すように、基材20とポリマー溶解液16との間に、ポリマー溶解液16とゲル化材料23が混合することにより、接着層24が形成され、ポリマー溶解液16と基材20が接着する。この接着層24を後述する乾燥工程において、冷却固化することにより、強固の混合層25を形成することができる。
【0066】
また、接着工程時において、ポリマー溶解液16の温度は、20℃以上100℃以下であることが好ましく、より好ましくは30℃以上80℃以下であり、さらに好ましくは40℃以上60℃以下である。上記範囲を維持することにより、ゲル化材料が熱によりゾル化するため、溶媒である水がポリマー溶解液と混合し、ポリマー溶解液との界面で混合し、接着層24を形成することができる。温度が上記範囲以下であると、ポリマー溶解液がゲル化し、流動性がなくなるため、接合層24の形成が困難となる。また、ゲル化材料がゾル化し難く、水が生じず接着層24を形成し難くなる。また、温度が上記範囲以上であると、薬品によっては加熱により分解するため、薬品の効果が変化するため好ましくない。なお、温度調節は、スタンパー13の下部に設けられている加熱手段18により行うことができる。
【0067】
また、接着工程と溶解液を凹部アレイの凹部先端まで注入する工程は同時に行われることが好ましい。加圧しながら行うことにより、ポリマー溶解液16とゲル化材料23を充分混合させることができ、強固な接着層24を形成することができる。
【0068】
続いて、ポリマー溶解液16の乾燥工程を行う。具体的には、塗布されたポリマー溶解液に温風を吹付けることにより乾燥を行う。
【0069】
乾燥方法としては、まず、10〜15℃の冷風を吹きつけ、表面をゲル化させた後、10〜20m/sの温風を吹き付ける。この温風は、除湿した温風が好ましく、例えば、40℃、相対湿度15%以下、より好ましくは10%以下であることが好ましい。
【0070】
また、塗布されたポリマー溶解液16をゲル化させることにより、形状を縮小させ、スタンパー13からの剥離性を高めることができる。この場合は、低温度の冷風を流すことによりポリマー溶解液をゲル化させることができる。この時、完全にゲル化させるために、10〜15℃の冷風を上記の場合よりも長時間吹付け、この後、上記と同様に温風を吹き付ける。次に、乾燥させるために、高温の温風を流す際には、温風の温度が高すぎると、ポリマー樹脂を溶解した溶液のゲル化が戻ってしまったり、薬品によっては加熱により分解等により、効能が変化したりするため、吹きつける温風の温度には注意する必要がある。このように塗布されたポリマー溶解液を乾燥、あるいは、ポリマー溶解液をゲル化させた後乾燥させることにより、図6(a)に示すように固化し、ポリマー樹脂の固化物19となる。ポリマー樹脂が固化物19となることにより、ポリマー溶解液16を塗布した際の状態よりも縮小し、特に、ゲル化を行う場合は、顕著に縮小する。これにより、スタンパー13から固化物19の剥離が容易となる。また、この乾燥工程において、固化物19の水分量が低くなりすぎると剥離しにくくなるため、弾力性を維持している状態の水分量を残存させておくことが好ましい。具体的には、固化物19を構成する材料にも依存するが、10〜20%の水分量となったところで、乾燥を停止するか、若しくは、25℃、相対湿度40%程度の風を吹付けることが好ましい。
【0071】
次に剥離工程を行う。具体的には、図6(a)に示すように、乾燥工程において、乾燥・固化することにより形成された混合層25を有する基材20を、端部よりめくることにより剥離を行う。混合層25は、接着層24を乾燥・固化することにより形成される。このようにして、図6(b)に示すように、マイクロニードルシート(ポリマー樹脂の固化物19)を製造することができる。
【0072】
固化物19をスタンパー13から剥離する剥離工程は、重要な工程である。通常、アスペクト比の高い微小針の構造のものをスタンパー13から剥離する場合では、接触面積が大きいことから、強い応力がかかり、微小針が破壊され、スタンパー13から剥離されることなくスタンパー13の凹部15内に残存し、作製されるマイクロニードルシートは致命的な欠陥を有するものとなってしまう。この点を踏まえ、本発明においては、固化物19と基材20とで、密着性の良好な接着層24を形成している。したがって、均一にニードル部に応力をかけることができるため、応力の集中に弱い素材であっても剥離不良を防止することができる。
【0073】
さらに、スタンパー13を構成する材料を、剥離が非常にしやすい材料により構成することが好ましい。また、スタンパー13を構成する材料を弾性が高く柔らかい材料とすることにより、剥離する際における微小針にかかる応力を緩和することができる。
【0074】
尚、ポリマー樹脂の表面の微小針に残存している水分を蒸発させるために、剥離後に、再度乾燥した風を吹付ける場合もある。具体的には、梱包する直前において、固化物19内の水分量を10%以下、望ましくは5%以下とした後に梱包することが望ましい。
【0075】
また、スタンパーは複数回利用することが可能であるから、剥離工程後のスタンパーを用いて、ポリマー溶液塗布工程、ポリマー溶液乾燥工程を繰り返すことにより、複数のマイクロニードルシートを短時間に複数作製することができる。尚、スタンパーは永久的に使用することができるものではないため、使用することができなくなった場合は、スタンパー作製工程を行うことにより作製可能である。
【0076】
実際のマイクロニードルシートの製造には、スタンパーを複数用意しておき、同時に製造を行うことにより、高い生産性で製造を行うことができる。
【0077】
図7に接着工程の別の実施形態を示す。本実施形態においては、スタンパー13の側面周囲にスタンパー13の厚みよりも高くなるようにスタンパー枠14を設ける、なお、スタンパー13とスタンパー枠14とは一体成形することも可能である。スタンパー枠14の材質としては、スタンパー13の材質と同様の材質のものを用いることができるが、スタンパー枠14をプレスすることにより、スタンパー枠14内の圧力を加圧状態にするため、スタンパー枠14は弾性体であることが好ましい。
【0078】
そして、図7(a)に示すように、スタンパー枠14が設けられたスタンパー13上に、ポリマー溶解液16を塗布し、その後、ゲル化材料23が塗布された基材20を、ポリマー溶解液16上に載置し付着させる。
【0079】
次に、図7(b)に示すように、スタンパー枠14をプレス機のプレス板17でプレスすることにより、スタンパー枠14内の圧力を加圧状態にすることができ、ポリマー溶解液16がスタンパー15に形成された凹部15に注入され、凹部15の内部気泡を追い出すことができる。これにより、スタンパー13に形成された凹部アレイの反転型である凸部アレイがポリマー溶解液に高精度に転写され、気泡などの混入の少ないマイクロニードルシートを製造することができる。また、ポリマー溶解液16とゲル化材料23が混合することにより、接着層24を形成させることができる。
【0080】
本実施形態においては、スタンパー枠14をプレス板17でプレスすることにより、間接的にポリマー溶解液16を加圧した場合においても、ポリマー溶解液16を直接加圧した場合と同様の効果を得ることができる。
【0081】
なお、加圧力、加圧時間などの条件については、同様の条件にて行うことができる。
【実施例】
【0082】
以下に、実施例により本発明の実質的な効果を説明する。
【0083】
≪試験例1:接着層による剥離の影響≫
[実施例1]
Niからなる金属板に、ダイヤモンドバイトによる切削加工を行い、図3(a)における四角錘の形状部12が底面400μm、高さ1200μm、ピッチ1000μm、先端R10μmである四角錘アレイの形成された原版11を作成した。この原版11にシリコーン樹脂を流し込み硬化させた、図3(c)に示す原版11とは反対形状のスタンパー13を作成した。
【0084】
次に、マルトースと薬品を150℃に熱して溶解させポリマー樹脂を溶解した溶液を作成した。この溶液をスピンコーターによりスタンパー13の凹凸の形成されている面に塗布した。その上からゲル化材料(ゼラチン20%溶液)を0.1g/cm塗布した基材(PET)を載せ、シリコーンゴムのスタンパー13ごとプレス機のプレス板17で、1MPa、120℃、5minの条件でポリマー溶解液16を加圧した。
【0085】
そして、5℃の冷風を10分間供給しポリマー溶解液を硬化させた。最後に、微小針22の先端部に力をかけないように固化物19を垂直に剥離することにより、マイクロニードルシートを製造し、このときの剥離状況を確認した。なお、このときの剥離温度は10℃で行った。
【0086】
[比較例1]
ゲル化材料をアクリル系の樹脂とした以外は実施例1と同様の方法により製造した。
【0087】
[比較例2]
ゲル化材料をゴム系の樹脂とした以外は実施例1と同様の方法により製造した。
【0088】
結果を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
ゲル化材料としてゼラチンを用いた実施例1については、基材と固化物が充分に接着しており、固化物をスタンパーから良好に剥離することができた。また、アクリル系の樹脂を用いた比較例1、ゴム系の樹脂を用いた比較例2については、基材と固化物が接着せず、混合層が形成されなかった。
【0091】
≪試験例2:ポリマー樹脂注入条件と成形結果≫
[実施例2−8、比較例3]
実施例1と同様の方法により、マイクロニードルシートを製造した。スタンパーへのポリマー溶解液の注入条件(加圧力、プレス温度)および基材へのゼラチンの塗布量(0.1cm当たり)を表2に示す条件で行った。また、加圧時間は5minで行った。その後、実施例1と同様に、冷風を供給し、ポリマー溶解液を固化し、スタンパーから剥離することにより、マイクロニードルシートを製造し、この特の成形結果を確認した。結果を表2に示す。なお、成形結果については、以下の基準により評価した。
◎・・・シャープな凸形状が先端まで成形されており、極めて良好である。
○・・・一部で転写不良が発生しているが、製品として許容できる範囲である。
×・・・転写不良が発生しており、製品として許容できない。
【0092】
【表2】

【0093】
表2より、実施例2においては、良好に微細形状が形成されていた。加圧力の低い実施例3、4、および、プレス温度の低い実施例7においては、ポリマー溶解液がスタンパーの凹部に一部注入されなかったが、製品として許容できる範囲であった。加圧力の高い実施例5についてはスタンパーの破断が見られたが、製品自体は問題なく製造できた。ゼラチンを塗布量しなかった比較例3は、接着層が形成されず、転写不良が発生していた。塗布量の多い実施例6については接着層の影響で破断がみられたが、製品として許容できる範囲で製造することができた。以上より、所定の条件でスタンパーへのポリマー溶液の注入を行うことが好ましいことが確認できた。
【0094】
≪試験例3:スタンパー形状と成形結果≫
[実施例9−14]
スタンパーの形状を表3に示す形状とした以外は実施例1と同様の方法により成形した。結果を表3に示す。なお、成形結果の評価については、試験例2と同様の基準で評価を行った。
【0095】
【表3】

【0096】
表3に示すように実施例9から14に示すスタンパーの形状については、いずれの形状においても良好な成形を行うことができた。
【0097】
≪試験例4:ポリマー樹脂とゲル化材料の組み合わせによる影響≫
[実施例15−18、比較例9−12]
ポリマー樹脂およびゲル化材を表4に示す材料とした以外は、実施例1と同様の方法により製造した。結果を表4に示す。なお、成形結果の評価については、試験例2と同様の基準で評価を行った。
【0098】
【表4】

【0099】
表4に示すように、ゲル化材料として20%ゼラチン溶液、30%ゼラチン溶液を用いた実施例15〜18については良好な成形を行うことができた。しかし、ゲル化材料にアクリル系接着剤、ゴム系接着剤を用いた比較例9〜12については、転写不良が発生していた。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】マイクロニードルシートの角錐状の微小針の斜視図(a)および断面図(b)である。
【図2】マイクロニードルシートの円錐状の微小針の斜視図(a)および断面図(b)である。
【図3】スタンパーの製造方法の工程図である。
【図4】ポリマー溶液塗布工程の工程図である。
【図5】基材接着工程の工程図である。
【図6】マイクロニードルシートの剥離工程の工程図である。
【図7】注入工程・接着工程の別の実施形態の工程図である。
【符号の説明】
【0101】
11…原版、12…円錐または角錐の形状部、13…スタンパー、14…スタンパー枠、15…凹部、16…ポリマー溶解液、17…プレス板、18…加熱手段、19…ポリマー樹脂の固化物、20…基材、22…凸部(微小針)、23・・・ゲル化材料、24・・・接着層、25…混合層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細な凹部アレイが形成されたスタンパーに、機能性膜を形成するためのポリマー樹脂の溶解液を塗布するポリマー樹脂塗布工程と、
シート状の基材の表面に該基材との接着性を有するゲル化材料を塗布するゲル化材料塗布工程と、
前記溶解液の面と前記ゲル化材料の面とが合わさるように、前記スタンパーの上に前記基材を載置し、該溶解液の表層部分に該ゲル化材料を混合することにより、該溶解液と該基材を接着する接着層を形成する接着工程と、
前記接着層が形成された溶解液を乾燥して固化させたポリマー樹脂の固化物を形成する乾燥工程と、
前記スタンパーから前記固化物を前記基材と一緒に剥離する剥離工程と、を備えたことを特徴とする機能性膜の製造方法。
【請求項2】
前記接着工程は、前記基材を前記スタンパー側に加圧することを特徴とする請求項1に記載の機能性膜の製造方法。
【請求項3】
前記機能性膜に形成される微細な凸部アレイの形状は、一辺又は直径が0.1〜1000μmの底面を有し、高さが0.3〜3000μmの角錐型又は円錐型であり、先端の曲率半径Rが300μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の機能性膜の製造方法。
【請求項4】
前記ポリマー樹脂は糖類であることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の機能性膜の製造方法。
【請求項5】
前記接着工程において、加圧により前記接着層を形成すると同時に、前記溶解液を前記凹部アレイの凹部先端まで注入することを特徴とする請求項2から4いずれかに記載の機能性膜の製造方法。
【請求項6】
前記溶解液を加圧している加圧時間は10秒以上であることを特徴とする請求項2から5いずれかに記載の機能性膜の製造方法。
【請求項7】
前記溶解液を加圧する加圧力は、0.05〜30MPaの範囲であることを特徴とする請求項2から6いずれかに記載の機能性膜の製造方法。
【請求項8】
前記接着工程における前記溶解液の温度が、20℃以上100℃以下であることを特徴とする請求項1から7いずれかに記載の機能性膜の製造方法。
【請求項9】
前記ゲル化材料の量は、前記基材の単位面積あたり0.01g/cm以上1g/cm以下であることを特徴とする請求項1から8いずれかに記載の機能性膜の製造方法。
【請求項10】
前記ゲル化材料は、たんぱく質、糖類の中から選ばれることを特徴とする請求項1から9いずれかに記載の機能性膜の製造方法。
【請求項11】
前記ポリマー樹脂の固化物と前記ゲル化材料との間に、該ポリマー樹脂の固化物と該ゲル化材料が混合した混合層を有することを特徴とする請求項1から10いずれかに記載の機能性膜の製造方法。
【請求項12】
前記スタンパーの素材は、気体透過性が1×10−12(mL/(s・m・Pa))より大きい素材で構成されていることを特徴とする請求項1から11いずれかに記載の機能性膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−82206(P2009−82206A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252240(P2007−252240)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】