説明

欠陥検査装置及び欠陥検査方法

【課題】欠陥検査において、疑似欠陥の発生を抑制しつつ、微小欠陥の検出感度を向上する。
【解決手段】欠陥検査装置1は、検査画像と参照画像との間で、対応する画素同士のグレイレベル差を決定するグレイレベル差決定手段15と、検査対象画素とその隣接画素におけるそれぞれのグレイレベル差を特徴量とする識別関数の値に応じたクラス分けを行うパターン認識によって、検査対象画素が欠陥候補か否かを判定する欠陥判定手段16と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料表面に現れる反復パターン内の互いに同一であるべきパターンをそれぞれ撮像することにより得られた検査画像と参照画像とを比較して、相違部分を欠陥として検出する欠陥検査装置及び欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハや、フォトマスク用基板、並びに液晶表示パネル用基板などの半導体装置等の製造は多数の工数から成り立っており、最終及び途中の工程での欠陥の発生具合を検査して製造工程にフィードバックすることが歩留まり向上の上からも重要である。製造工程の途中で欠陥を検出するために、半導体ウエハ、フォトマスク用基板、液晶表示パネル用基板、液晶デバイス用基板などの試料の表面に形成されたパターンを撮像し、これにより得られた画像を検査することにより試料表面に存在する欠陥を検出するパターン欠陥検査が広く行われている(例えば、下記特許文献1)。
【0003】
以下の説明では、半導体ウエハ上に形成されたパターンの欠陥を検査する半導体ウエハ用欠陥検査装置を例として説明する。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、半導体デバイス用フォトマスク用基板や、液晶デバイス用基板、液晶表示パネル用基板などの半導体装置を検査する欠陥検査装置にも広く適用可能である。
【0004】
図1は、検査対象(試料)となる半導体ウエハ(以下、「ウエハ」と記す)上のダイ(チップ)の配列を示す図である。ウエハ2上には、複数のダイ3がX方向とY方向にそれぞれ繰返しマトリクス状に配列されている。各ダイには同じパターンが形成されるので、これらのダイを撮像した画像同士は本来同一となるはずであり、各ダイの撮像画像の対応する部分同士の画素値は本来同様の値となる。
【0005】
したがって、2つのダイを撮像して各画素の画素値(グレイレベル値)を取得し、2つのダイの撮像画像内の本来同一となるべき対応箇所同士の画素値の差分(グレイレベル差信号)を検出すると、両方のダイに欠陥がない場合に比べて一方のダイに欠陥がある場合にグレイレベル差信号が大きくなる。
【0006】
したがって2つのダイを撮像した一方の画像を検査画像とし他方の画像を参照画像として、これら画像間の対応する画素同士のグレイレベル差を検出し、このグレイレベル差を所定の検出閾値と比較して、この検出閾値を超えるグレイレベル差を検出することによりダイ上に存在する欠陥を検出できる(ダイトゥダイ比較)。
【0007】
また、1つのダイ内にメモリセルのような繰り返しパターンが形成されている場合には、この繰り返しパターン内の本来同一となるべき対応箇所を撮像した画像同士のグレイレベル差を検出しても欠陥を検出できる(セルトゥセル比較)。
【0008】
なお、ダイトゥダイ比較では、隣り合う2つのダイ同士を撮像した画像を比較するのが一般的である(シングルティテクション)。これではどちらのダイに欠陥があるか分からない。したがって、更に異なる側に隣接するダイとの比較を行い、再び同じ部分のグレイレベル差が所定の検出閾値より大きくなった場合にそのダイに欠陥があると判定する(ダブルディテクション)。セルトゥセル比較でも同様である。
【0009】
そして欠陥と判定された部分を更に詳細に調べて歩留まりに影響する真の欠陥であるか判定する欠陥分類処理を行う。欠陥分類処理は欠陥の部分を詳細に調べる必要があり、長い処理時間を必要とする。そのため、欠陥を判定する場合には、真の欠陥は漏らさず、且つ真の欠陥以外はできるだけ欠陥と判定しないことが要求される。
【0010】
そこで、閾値の設定が大きな問題になる。閾値を小さくすると欠陥と判定される画素(ピクセル)が増加し、真の欠陥でない部分、すなわち「疑似欠陥」まで欠陥と判定されることになり、欠陥分類処理に要する時間が長くなるという問題を生じる。逆に、閾値を大きくしすぎると真の欠陥まで欠陥でないと判定されることになり、検査が不充分であるという問題を生じる。
【0011】
図2の(A)〜図2の(C)は、下記特許文献1における検出閾値決定方法の説明図である。まず、基準画像と参照画像との間で対応し合う各画素同士のグレイレベル差をそれぞれ算出し、図2の(A)に示すようなグレイレベル差のヒストグラムを作成する。次に作成されたヒストグラムからグレイレベル差の累積頻度を算出する。さらに、グレイレベル差がある所定の分布に従っていると仮定した上でグレイレベル値に対して累積頻度が直線関係となるように累積頻度を変換する。グレイレベル値は、例えば、正規分布、ポアソン分布、又はχ二乗分布などに従うと仮定してよい。この変換累積頻度を図2の(B)に示す。
【0012】
変換した変換累積頻度に応じて、グレイレベル値と変換累積頻度との関係を示す近似直線(y=ax+b)を導出する。この近似直線を図2の(C)に示す。近似直線のパラメータa、b及び感度設定パラメータ(固定値)から検出閾値Thdを決定する。ここでは、グレイレベル値と変換累積頻度の近似直線において、固定の感度設定パラメータとしてVOPとHOを設定しておき、累積確率(p)に相当する累積頻度P1(pにサンプル数を乗じて求める。)になる直線上の点を求め、その点から縦軸方向にVOP、横軸方向にHO移動したグレイレベル値を検出閾値Thdとする。従って、検出閾値Thdは、所定の計算式
Thd=(P1−b+VOP)/a+HO
により算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−177397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
近年のデザインルールの微細化に伴って、歩留まりに影響する欠陥サイズが小さくなった。このため、検査画像と参照画像との間のグレイレベル差が小さい微小欠陥についても安定して欠陥を検出できることが、欠陥検査装置に求められている。グレイレベル差が小さい欠陥を検出するには小さな検出閾値Thdを使用する必要があるが、検出閾値Thdを小さくすると疑似欠陥を多量に検出してしまうという問題がある。この理由を図3を参照して説明する。
【0015】
図3は、検査画像及び参照画像の間の対応する画素同士のグレイレベル差のヒストグラムを示す図である。実線50は全画素のグレイレベル差のヒストグラムを示し、破線51は欠陥部分以外の画素のグレイレベル差のヒストグラムを示し、一点鎖線52は欠陥部分の画素のグレイレベル差のヒストグラムを示す。
【0016】
グレイレベル差を検出する検査画像及び参照画像は、試料を撮影する撮像素子の特性のバラツキや、試料を照明する照明のバラツキによってグレイレベル値のバラツキを有する。また、歩留まりに影響する欠陥サイズの微小化に伴い、真の欠陥を示す可能性があるグレイレベル差自体も小さくなっている。このため、図3に示すように、真の欠陥部分を示す画素においても疑似欠陥を示す画素においても、同一のグレイレベル差が検出される場合が生じる。従って、これまで行われてきた閾値の最適な決定というアプローチが、根本的な解決とならなくなる恐れがある。
【0017】
上記の問題点に鑑み、本発明は、疑似欠陥の発生を抑制しつつ、微小欠陥の検出感度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の実施例の一態様によれば、試料表面に現れる反復パターン内の互いに同一であるべきパターンをそれぞれ撮像することにより得られた検査画像と参照画像とを比較して、相違部分を欠陥として検出する欠陥検査装置が与えられる。この欠陥検査装置は、前記検査画像と前記参照画像との間で、対応する画素同士のグレイレベル差を決定するグレイレベル差決定手段と、検査対象画素とその隣接画素におけるそれぞれの前記グレイレベル差を特徴量とする識別関数の値に応じたクラス分けを行うパターン認識によって、前記検査対象画素が欠陥候補か否かを判定する欠陥判定手段と、を備える。
【0019】
発明の実施例の他の態様によれば、試料表面に現れる反復パターン内の互いに同一であるべきパターンをそれぞれ撮像することにより得られた検査画像と参照画像とを比較して、相違部分を欠陥として検出する欠陥検査方法が与えられる。この欠陥検査方法では、前記検査画像と前記参照画像との間で、対応する画素同士のグレイレベル差を決定し、検査対象画素とその隣接画素におけるそれぞれの前記グレイレベル差を特徴量とする識別関数の値に応じたクラス分けを行うパターン認識によって、前記検査対象画素が欠陥候補か否かを判定する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、検査対象画素だけでなくその隣接画素におけるグレイレベル差も考慮に入れたパターン認識を行うので、微小欠陥の検出をより高精度に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】半導体ウエア上のダイの配列を示す図である。
【図2】(A)〜(C)は検出閾値決定方法の説明図である。
【図3】グレイレベル差のヒストグラムを示す図である。
【図4】サブピクセルサイズの欠陥と画素の位置関係の説明図である。
【図5】本発明の実施例による欠陥検査装置の概略構成図である。
【図6】本発明の実施例による欠陥検査方法を示すフローチャートである。
【図7】検査対象画素の各隣接画素について定義される順序番号を示す図である。
【図8】図6に示す欠陥検出処理を示すフローチャートである。
【図9】図8に示す欠陥検出処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
検査画像上の大きさが1画素よりも小さい微小欠陥(以下、「サブピクセルサイズの欠陥」と示す)は、サブピクセルサイズの微小欠陥と画素の位置関係によって、検査画像と参照画像との間のグレイレベル差が変わることがある。図4は、サブピクセルサイズの欠陥と画素の位置関係の説明図である。
【0023】
図4において、格子内の各マス目は検査画像上の各画素を示している。参照符号60〜62は、サブピクセルサイズの欠陥を示す。図示するとおり、欠陥60は画素70内のみに存在し、欠陥61は画素71及び72の上に跨って存在し、欠陥62は画素73〜76の上に跨って存在する。したがって、欠陥61や欠陥62と周囲との明度差を示す信号は、複数の画素に分散されるため、1つの画素70内のみに存在する欠陥60により生じる信号よりも小さくなる。これが、微小欠陥について検査画像と参照画像との間のグレイレベル差が小さくなる理由の1つと考えられる。
【0024】
したがって、本発明では、検査の対象となる検査対象画素1つずつに注目するのではなく、検査対象画素とこれに隣接した隣接画素におけるグレイレベル差も考慮に入れてパターン認識を行う。以下、添付する図面を参照して本発明の実施例を説明する。図5は、本発明の実施例による欠陥検査装置の概略構成図である。
【0025】
欠陥検査装置1には、3次元方向に移動可能なステージ11が設けられており、ステージ11の上面には試料台(チャックステージ)12が設けられている。この試料台12の上に検査対象となる試料であるウエハ2を載置して固定する。
【0026】
試料台12の上方には、ウエハ2の表面の光学像を撮像するための撮像部13が設けられる。撮像部13としては、1次元又は2次元のCCDカメラ(好適にはTDIカメラ)といったイメージセンサが使用される。撮像部13は、その受光面に結像されたウエハ2の表面の光学像を電気信号に変換する。本実施例では撮像部13として1次元センサであるTDIカメラを使用する。ステージ11の移動により撮像部13とウエハ2とを相対的に移動させることによって、ウエハ2に対して撮像部13をX方向及びY方向に走査させて、ウエハ2の表面の2次元画像を得る。なお、撮像部13によるウエハ2の表面の画像の撮像には、明視野光学系及び暗視野光学系のどちらを使用してもよい。撮像部13から出力される画像信号は、多値のディジタル信号(グレイレベル信号)に変換された後に、画像記憶部14に格納される。
【0027】
差分検出部15は、画像記憶部14に格納された撮像画像内の2つのダイを撮像した一方の画像を検査画像とし他方の画像を参照画像として、これら画像間の対応する画素同士のグレイレベル差を検出して、欠陥検出部16に出力する。欠陥検出部16は、検査画像と参照画像間で検出されたグレイレベル差に基づいて欠陥候補を検出し、さらにダブルディテクションによって各欠陥候補が、いずれのダイに存在する欠陥であるかを決定する。欠陥検出部16は、検出した欠陥の位置等を示す欠陥情報を生成して出力する。
【0028】
図6は、本発明の実施例による欠陥検査方法を示すフローチャートである。ステップS1において撮像部13は、ウエハ2の表面を撮像する。撮像部13から出力される画像信号は、グレイレベル信号に変換された後に画像記憶部14に格納される。ステップS2において差分検出部15は、画像記憶部14に格納された撮像画像内の対応する部分、すなわち2つのダイを撮像した部分の一方を検査画像とし他方を参照画像として、これら画像間の対応する画素同士のグレイレベル差を検出する。
【0029】
ステップS3において欠陥検出部16は、ステップS2にて検出したグレイレベル差に基づいて欠陥候補を検出する。以下に説明するように、欠陥検出部16は、欠陥画素であるか否かを検査する対象となる画素(以下、「検査対象画素」と示す)におけるグレイレベル差X1と、所定の検出閾値Thdとの差の絶対値|X1−Thd|が所定のマージンσ1未満の検査対象画素については、検査対象画素とその隣接画素におけるそれぞれのグレイレベル差を特徴量とするパターン認識を行い、欠陥候補か否かを判定する。
【0030】
欠陥検出部16によるパターン認識を説明するために、検査対象画素及び隣接画素について使用する記数法を以下に示す。図7は、検査対象画素の各隣接画素について定義される順序番号を示す図である。マス目80は検査対象画素を、マス目81〜88はその隣接画素を示している。各隣接画素81〜88にはそれぞれ2〜9までの順序番号が与えられる。例えば第2隣接画素は画素81であり、第5隣接画素は画素84である。
【0031】
また、検査対象画素について、前記検査画像と前記参照画像との間で検出されたグレイレベル差を第1グレイレベル差X1と示す。第2隣接画素81〜第9隣接画素88について、それぞれ前記検査画像と前記参照画像との間で検出されたグレイレベル差を第2グレイレベル差X2〜第9グレイレベル差X9と示す。ここで第iグレイレベル差(iは1〜9の整数)をXiと示す。
【0032】
図8は、図6に示す欠陥検出処理を示すフローチャートである。ステップS10において欠陥検出部16は、第1グレイレベル差X1と所定の検出閾値Thdとの差の絶対値|X1−Thd|が所定のマージンσ1未満であるか否かを判定する。|X1−Thd|<σ1であるとき(ステップS10:Y)、欠陥検出部16は、処理をステップS14へ移す。|X1−Thd|<σ1でないとき(ステップS10:N)、欠陥検出部16は、処理をステップS11へ移す。
【0033】
ステップS11において欠陥検出部16は、第1グレイレベル差X1が次の条件式(1)を満足するか否かを判定する。
X1−Thd−σ1>0 …(1)
【0034】
第1グレイレベル差X1が条件式(1)を満足するとき(ステップS11:Y)、ステップS12において欠陥検出部16は検査対象画素を欠陥候補と判定する。第1グレイレベル差X1が条件式(1)を満足しないとき(ステップS11:N)、ステップS13において欠陥検出部16は、欠陥検出部16は検査対象画素を欠陥候補ではないと判定する。その後、欠陥検出部16は、この検査対象画素に対する欠陥判定処理を終了する。
【0035】
図9は、図8に示す欠陥検出処理の説明図である。図の上部のヒストグラムにおいて、第1グレイレベル差X1と所定の検出閾値Thdとの差の絶対値|X1−Thd|が所定のマージンσ1未満となる部分を、ハッチングした領域53で示す。この範囲には、破線51にて示される欠陥でない画素と、一点鎖線52にて示される欠陥画素との両方が含まれている。したがって欠陥検出部16は、ステップS11〜S13ではこの領域53以外の部分の画素について、欠陥候補か否かの判定を行うこととし、領域53部分の画素については、ステップS14以下で行うパターン認識処理によって欠陥候補か否かの判定を行う。
【0036】
ステップS14において欠陥検出部16は、隣接画素の順序番号を参照するインデックス変数iの値を2に初期化する。インデックス変数iは2〜Nまでの整数値を持つ。Nは、ステップS14以下で行うパターン認識処理において参照される隣接画素の順序番号の設定値であり、2以上9以下の任意の値であってよい。
【0037】
ステップS15において欠陥検出部16は、次の積和演算値(2)が所定のマージンσi未満であるか否かを判定する。ここに変数jは1から変数iまでの整数値を有するインデックス変数であり、aij及びbiは予め定められた係数である。また、マージンσiは、所望の検出感度に応じてオペレータによって予め定められる。
【0038】
【数1】

【0039】
積和演算値(2)が所定のマージンσi未満であるとき(ステップS15:Y)、欠陥検出部16は処理をステップS19へ移す。積和演算値(2)が所定のマージンσi未満でないとき(ステップS15:N)、欠陥検出部16は処理をステップS16へ移す。ステップS16において欠陥検出部16は、次の識別関数(3)が0より大きいか否かを判定する。識別関数とは、パターン同士を識別するために、各パターンを代表する特徴量を入力として、それぞれのパターンがどのクラスに属するかの指標を与える関数である。次式に示すとおり識別関数(3)は、検査対象画素及びその隣接画素におけるグレイレベル差Xiを特徴量とする識別関数である。
【0040】
【数2】

【0041】
識別関数(3)が0より大きいとき(ステップS16:Y)、ステップS17において欠陥検出部16は、検査対象画素を欠陥候補と判定する。識別関数(3)が0以下のとき(ステップS16:N)、ステップS18において欠陥検出部16は検査対象画素を欠陥候補ではないと判定する。その後、欠陥検出部16は、この検査対象画素に対する欠陥判定処理を終了する。すなわちステップS16〜ステップS18において欠陥検出部16は、識別関数(3)の値に応じたクラス分けを行うことによって、前検査対象画素が欠陥候補か否かを判定する。
【0042】
図9の下部は、第1グレイレベル差X1の値によって横座標を定め、第2グレイレベル差の値によって縦座標を定める識別平面(特徴空間)に、サンプルである各検査対象画素を配置した場合の、サンプルの分布を模式的に示す。実線90で示す範囲には欠陥ではない画素が分布し、破線91て示す範囲には欠陥である画素が分布している。
【0043】
例えば、いまインデックス変数iの値が2であるとき、識別関数(3)が次式(4)で与えられる。
a21×X1+a22×X2+b2−σ2 …(4)
このとき、ステップS15〜S18において欠陥検出部16は、超平面92(a21×X1+a22×X2+b2+σ2=0)よりも第1グレイレベル差X1が大きい検査対象画素を欠陥候補と判定し、超平面93(a21×X1+a22×X2+b2−σ2=0)よりも第1グレイレベル差X1が小さい検査対象画素を欠陥候補でないと判定する。
【0044】
したがって、インデックス変数iの値が2であるときのステップS15〜S18において欠陥検出部16は、ステップS10〜S13の判定において欠陥候補か否かの判定を行わなかった領域53の部分の画素について、新たに領域94の部分の画素を欠陥候補と判定し、領域95の部分の画素を欠陥候補でないと判定する。
【0045】
ステップS19において欠陥検出部16は、インデックス変数iの値を1つ増加させる。ステップS20において欠陥検出部16は、インデックス変数iの値が(N−1)より大きくなったか否かを判定する。インデックス変数iの値が(N−1)以下であるとき(ステップS20:N)、欠陥検出部16は処理をステップS15に戻す。このため欠陥検出部16は、ステップS15の判定において積和演算値(2)がマージンσi以上となるか、インデックス変数iの値がNに至るまで、積和演算値(2)及び識別関数(3)にて考慮する隣接画素の数を増加させながらステップS15〜S20を反復する。
【0046】
インデックス変数iの値が(N−1)より大きくなったとき(ステップS20:Y)、ステップS21において欠陥検出部16は、次の識別関数(5)が0より大きいか否かを判定する。
【数3】

【0047】
識別関数(5)が0より大きいとき(ステップS21:Y)、ステップS22において欠陥検出部16は、欠陥検出部16は検査対象画素を欠陥候補と判定する。識別関数(5)が0以下のとき(ステップS21:N)、ステップS23において欠陥検出部16は検査対象画素を欠陥候補ではないと判定する。その後、欠陥検出部16は、この検査対象画素に対する欠陥判定処理を終了する。
【0048】
図6を参照する。ステップS4において欠陥検出部16は、ダブルディテクションによって各欠陥候補が、いずれのダイに存在する欠陥であるかを決定する。欠陥検出部16は、検出した欠陥の位置等を示す欠陥情報を生成して出力する。
【0049】
従来の欠陥検査装置においては、図2を参照して説明したように、検査画像と参照画像のグレイレベル差を計算した後、検出閾値Thdを算出した後、グレイレベル差のヒストグラムを算出し、およびその他の統計量を算出する計算処理を行っていた。一方で、本実施例によれば、検出閾値Thdとして予め実験的に求めた所定の値を使用することにより、検出閾値Thdを検査画像ごとに算出する必要がなく、検出閾値Thdの計算に使用していた計算時間を節約することができる。
【0050】
本実施例では、識別関数の値を計算する計算処理が追加されるが、検出閾値Thd及びマージンσ1の値を適切に設定することにより、ステップS14以降のパターン認識処理を行う検査対象画素の数を調整することにより、従来の外観検査装置で行われていた検出閾値Thdの計算量に比べて、識別関数の計算量を少なくすることができる。
【0051】
パターン認識処理に使用される上述の係数aij及びbiは、既知の学習用サンプルを使用して、サポートベクターマシンや、ニューラルネット及び決定木を使用して決定することができる。本実施例では、ステップS14以降のパターン認識処理を行う前に、ステップS10〜S13の処理によって、|X1−Thd|>σ1となる検査対象画素については判定を終了し、パターン認識を行う対象サンプルから除くことができる。このためパターン認識の対象となるサンプルの数を減らすことができることが期待できるため、係数aij及びbiをより容易に決定することができる。
【0052】
なお、本実施例ではステップS15の判定式、及び識別関数において、第iグレイレベル差(i=1〜N)の積和演算値を用いた。これに代えて、ステップS15の判定式、及び識別関数において、第iグレイレベル差の多項式や、ガウス関数などの非線形関数を使用してもよい。非線形関数を使用することにより、サンプルである検査対象画素が線形分離できない場合であっても高い精度で欠陥候補か否かを判定することができるようになる。
【0053】
ステップS15の判定式、及び識別関数は、第iグレイレベル差(i=1〜N)に加えて、検査対象画素又は隣接画素における、検査画像又は参照画像のグレイレベルを特徴量として有していてもよい。検査画像又は参照画像においてグレイレベル値そのものが大きい箇所はグレイレベル差も大きく、グレイレベル値そのものが小さい箇所はグレイレベル差も小さくなる。したがって検査画像又は参照画像のグレイレベルも特徴量に加えることにより、より精度が高いパターン認識を実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、試料表面を撮像することにより得られた検査画像に基づいて欠陥を検出する欠陥検査装置及び欠陥検査方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 欠陥検査装置
2 ウエハ
11 ステージ
12 試料台
13 撮像部
14 画像記憶部
15 差分検出部
16 欠陥検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料表面に現れる反復パターン内の互いに同一であるべきパターンをそれぞれ撮像することにより得られた検査画像と参照画像とを比較して、相違部分を欠陥として検出する欠陥検査装置において、
前記検査画像と前記参照画像との間で、対応する画素同士のグレイレベル差を決定するグレイレベル差決定手段と、
検査対象画素とその隣接画素におけるそれぞれの前記グレイレベル差を特徴量とする識別関数の値に応じたクラス分けを行うパターン認識によって、前記検査対象画素が欠陥候補か否かを判定する欠陥判定手段と、
を備える欠陥検査装置。
【請求項2】
前記欠陥判定手段は、前記グレイレベル差が所定の範囲内にある検査対象画素のみについて、前記パターン認識を行う請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記所定の範囲は、第1閾値未満かつ第2閾値より大きい範囲であり、
前記欠陥判定手段は、前記グレイレベル差が前記第1閾値以上のとき、前記検査対象画素が欠陥候補と判定する請求項2に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記識別関数は、特徴量として、前記検査対象画素又は前記隣接画素における、前記検査画像又は前記参照画像のグレイレベルをさらに用いる請求項1〜3のいずれか一項に記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
試料表面に現れる反復パターン内の互いに同一であるべきパターンをそれぞれ撮像することにより得られた検査画像と参照画像とを比較して、相違部分を欠陥として検出する欠陥検査方法において、
前記検査画像と前記参照画像との間で、対応する画素同士のグレイレベル差を決定し、
検査対象画素とその隣接画素におけるそれぞれの前記グレイレベル差を特徴量とする識別関数の値に応じたクラス分けを行うパターン認識によって、前記検査対象画素が欠陥候補か否かを判定する、欠陥検査方法。
【請求項6】
前記グレイレベル差が所定の範囲内にある検査対象画素のみについて、前記パターン認識を行う請求項5に記載の欠陥検査方法。
【請求項7】
前記所定の範囲は、第1閾値未満かつ第2閾値より大きい範囲であり、
前記グレイレベル差が前記第1閾値以上のとき、前記検査対象画素が欠陥候補と判定する請求項6に記載の欠陥検査方法。
【請求項8】
前記識別関数は、特徴量として、前記検査対象画素又は前記隣接画素における、前記検査画像又は前記参照画像のグレイレベルをさらに用いる請求項5〜7のいずれか一項に記載の欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−164487(P2010−164487A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8161(P2009−8161)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】