説明

歩行型農業作業車

【課題】差動装置を備えた歩行型農業作業車のミッションケースを小型化する。
【解決手段】差動装置20は、2つの遊星歯車機構21と、回転自在に設けられたピニオンギア22と、を有する。2つの遊星歯車機構21がそれぞれ有するサンギア23同士は、その回転軸が同一軸線上に配置される。2つの遊星歯車機構21がそれぞれ有するインターナルギア部材27は、ピニオンギア22に噛み合う。2つの遊星歯車機構21がそれぞれ有するサンギア23は、車輪用モータ19の出力軸29に固定される。そして、2つの遊星歯車機構21がそれぞれ有するプラネタリキャリア24から、それぞれ駆動力が取り出される。この構成により、車輪用モータ19の出力軸29と、差動装置20からの出力の取り出し軸(車軸9)と、を同軸に配置することができるので、車輪用モータ19から差動装置20まで駆動を伝達するための部材(チェーン等)が不要となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型農業作業車が備える差動装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、作業者がハンドルを握って歩きながら作業を行うように構成された歩行型農業作業車が知られている。この種の作業車として、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されている歩行型管理機がある。
【0003】
このような歩行型農業作業車において、作業機と、左右一対の車輪と、を設けた構成が知られている。例えば特許文献1及び特許文献2に記載の歩行型管理機は、ロータリ耕耘装置と、左右一対の車輪と、を備えている。そして、上記特許文献1及び2に記載の歩行型管理機は、左右の車輪に駆動力を分配するとともに、左右の回転数差を吸収するための差動装置(デフ)を備えている。特許文献1に記載されている差動装置は、従来からよく知られている構成である。即ち、この差動装置は、回転するデフケースと、デフケースと一体回転するベベルギアと、前記ベベルギアに噛み合うとともに左右車軸それぞれに対応して設けられたベベルギアと、を備えており、デフケースに駆動力を入力して左右のベベルギアから駆動を取り出すように構成されている。
【0004】
ところで、歩行型管理機などの小型の農業作業車においては、軽量化、コンパクト化が強く要求されている。このため、前記差動装置や、この差動装置を収容するミッションケースの小型化が技術課題の1つとなっている。
【0005】
この点、特許文献2は、左右の車軸と一体回転するベベルギアにボス部を設け、このボス部でデフケースを支持する構成とすることで、デフケースをコンパクトに構成できるとしている。
【0006】
一方で近年では、歩行型農業作業車の動力源として電動モータを採用する構成が検討されている。電動モータはエンジンに比べて小型であり、配置の自由度も高い。従って、電動モータを駆動源として採用することにより、歩行型農業作業車の小型化・軽量化が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−66881号公報
【特許文献2】実開平4−68602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1及び特許文献2が開示する従来の歩行型管理機は、エンジンが出力する駆動力を、チェーン等を介してデフケースに伝達する構成である。このようにミッションケース内にチェーンなどの駆動伝達部材を設けなければならないため、特許文献1及び特許文献2の構成ではミッションケースを十分に小型化することができないという問題があった。
【0009】
また、特許文献1又は2の構成において、エンジンの代わりに電動モータを駆動源として採用することで、小型化・軽量化を図ることも考えられる。この場合、電動モータの出力軸から出力される駆動力は、チェーン等を介してデフケースまで伝達される。しかしこの構成の場合、電動モータの出力軸には、チェーンをかけることによるラジアル荷重がかかるので、モータ軸受をラジアル軸受にしなければならず、当該軸受が大型化、高コスト化するという課題がある。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、差動装置を備えた歩行型農業作業車のミッションケースを小型化することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0012】
本発明の観点によれば、以下の構成の歩行型農業作業車が提供される。即ち、この歩行型農業作業車は、2つの遊星歯車機構と、回転自在に設けられたピニオンギアと、を有する差動装置と、駆動源と、を備える。前記遊星歯車機構は、サンギアと、前記サンギアに噛み合うプラネタリギアと、前記プラネタリギアを回転自在に支持するプラネタリキャリアと、前記プラネタリギアに噛み合うインターナルギアが形成されたインターナルギア部材と、を有する。前記2つの遊星歯車機構がそれぞれ有する前記サンギア同士は、その回転軸が同一軸線上に配置される。前記2つの遊星歯車機構がそれぞれ有する前記サンギア、前記プラネタリキャリア及び前記インターナルギア部材の何れか同士は、それぞれが前記ピニオンギアに噛み合うことにより連動して回転する。前記2つの遊星歯車機構がそれぞれ有する前記サンギア、前記プラネタリキャリア、及び前記インターナルギア部材のうち前記ピニオンギアに噛み合っていない部材の何れか一方同士は、前記駆動源の駆動出力軸に固定される。そして、前記2つの遊星歯車機構がそれぞれ有する前記サンギア、前記プラネタリキャリア、及び前記インターナルギア部材の残りの部材から、それぞれ駆動力が取り出される。
【0013】
この構成により、駆動源の出力軸と、差動装置からの出力の取り出し軸と、を同軸に配置することができるので、駆動源から差動装置まで駆動を伝達するための部材(チェーン等)が不要となる。従って、この差動装置を収容するミッションケースを小型化することができる。また、駆動源の出力軸にチェーン等をかけて駆動を伝達する必要がなくなる結果、当該出力軸にかかるラジアル方向の荷重は小さくなるので、当該出力軸の軸受を簡素化することができる。
【0014】
上記の歩行型農業作業車は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記2つの遊星歯車機構がそれぞれ有する前記インターナルギア部材の外周にはベベルギアが形成され、当該ベベルギアに前記ピニオンギアが噛み合っている。前記2つの遊星歯車機構がそれぞれ有する前記サンギアは、前記駆動源の駆動出力軸に固定される。そして、前記2つの遊星歯車機構がそれぞれ有する前記プラネタリキャリアから駆動力が取り出される。
【0015】
これにより、2つの遊星歯車機構で差動装置としての機能を実現することができる。
【0016】
上記の歩行型農業作業車において、前記駆動源は電動モータであることが好ましい。
【0017】
即ち、電動モータはエンジンに比べて小型なので、これを駆動源として採用することにより、歩行型農業作業車をコンパクトに構成することができる。また、電動モータは配置の自由度が比較的高いので、当該電動モータの出力軸と、差動装置からの出力と、を同軸に配置することが容易になる。
【0018】
上記の歩行型農業作業車において、前記電動モータは両軸タイプであり、2つの遊星歯車機構の間に配置されることが好ましい。
【0019】
このように、差動装置の内側に電動モータを配置することにより、歩行型農業作業車をよりコンパクトに構成することができる。
【0020】
上記の歩行型農業作業車は、以下のように構成することもできる。即ち、この歩行型農業作業車は、前記サンギアと同軸で回転するピニオン保持部材と、前記ピニオン保持部材を回転駆動するピニオン駆動源と、を更に備える。そして、前記ピニオンギアは、前記ピニオン保持部材に対して回転自在に支持される。
【0021】
このようにピニオンギアを駆動することにより、差動装置に入力される駆動力を増減速して出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る管理機の全体的な構成を示す側面図。
【図2】第1実施形態に係る差動装置の一部断面図。
【図3】変形例に係る差動装置の一部断面図。
【図4】第2実施形態に係る差動装置の一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1に示すのは、本発明の第1実施形態に係る歩行型農業作業車としての管理機1である。
【0024】
管理機1は、機体フレーム2と、ロータリ耕耘装置3と、左右一対の車輪4と、操縦ハンドル6と、を備えている。
【0025】
機体フレーム2の下方には、ミッションケース7が配置されている。ミッションケース7には、爪軸8及び車軸9を駆動するための駆動機構が収容されている。爪軸8及び車軸9は、ミッションケース7の左右から突出して設けられている。
【0026】
ロータリ耕耘装置3は、爪軸8から放射状に設けられた複数の耕耘爪10を有している。そして、この爪軸8を回転駆動することにより、耕耘爪10が回転して地面を耕耘するように構成されている。また前記左右の車輪4は、左右の車軸9に取り付けられている。車軸9を回転駆動することにより、車輪4が回転して管理機1の機体を走行させる構成である。
【0027】
なお、図1に示すように、本実施形態の管理機1は、車輪4の前方にロータリ耕耘装置3を配置したレイアウト(いわゆるフロントロータリ)として構成されている。ただし、これに限定されるわけではなく、例えば、車輪4の後方にロータリ耕耘装置3を配置したレイアウト(いわゆるリアロータリ)であっても良い。
【0028】
操縦ハンドル6は、機体フレーム2から後方斜め上方に延びるように設けられている。この管理機1によって耕耘作業を行う作業者は、操縦ハンドル6を握って歩きながら機体を走行させつつ、ロータリ耕耘装置3による耕耘作業を行う。即ち、本実施形態の管理機1は、いわゆる歩行型管理機として構成されている。
【0029】
本実施形態の管理機1は、駆動源として電動モータを採用した電動式の管理機として構成されている。具体的には、ミッションケース7の内部に、前記爪軸8を駆動するための耕耘装置用モータ(図略)と、車軸9を駆動するための車輪用モータ19(図2)と、がそれぞれ配置されている。また、機体フレーム2には、前記耕耘装置用モータ及び車輪用モータ19に電力を供給するためのバッテリー5が搭載されている。
【0030】
本実施形態の管理機1は、1つの車輪用モータ19によって、左右の車輪4を駆動するように構成されている。ミッションケース7の内部には、車輪用モータ19の駆動力を左右の車軸9に分配するとともに、左右の車輪4の回転数差を吸収するための差動装置20が配置されている。
【0031】
次に、本発明の特徴的構成である差動装置20の構成について説明する。
【0032】
図2に示すように、この差動装置20は、2つの遊星歯車機構21と、ピニオンギア22と、を備えた構成である。
【0033】
2つの遊星歯車機構21は、左右の車軸9に対応して設けられている。左右の遊星歯車機構21を前記ピニオンギア22で接続することにより、差動装置としての機能を実現する構成である。以下、詳しく説明する。
【0034】
左右の遊星歯車機構21は、サンギア23と、サンギア23に噛み合う複数のプラネタリギア25と、プラネタリギア25を回転自在に支持するプラネタリキャリア24と、プラネタリギア25に噛み合うインターナルギア26と、からなる公知の構成である。左右の遊星歯車機構21は、サンギア23の回転軸が機体左右方向と平行になるように配置されている。また、左右のサンギア23の回転軸は同一軸線となるように配置されている。
【0035】
前記インターナルギア26は、リング状のインターナルギア部材27の内周に形成されている。このリング状のインターナルギア部材27は、その中心軸線を、サンギア23の回転軸と一致させて配置されており、当該軸線を中心として回転可能に配置されている。このインターナルギア部材27の外周には、ベベルギア28が形成されている。
【0036】
プラネタリキャリア24は、サンギア23と同軸で回転可能である。また、左右の遊星歯車機構21のプラネタリキャリア24には、それぞれ、車軸9が固定されている。即ち、本実施形態の差動装置20においては、左右のプラネタリキャリア24から駆動力が出力される。
【0037】
左右の遊星歯車機構21のサンギア23は、それぞれ、車輪用モータ19の出力軸29に固定されている。即ち、車輪用モータ19が出力軸29から出力する駆動力は、サンギア23に入力される。従って、この差動装置20は、当該差動装置20への駆動力の入力軸(車輪用モータ19の出力軸29)と、当該差動装置20からの出力軸(車軸9)と、が同一軸線上に配置された構成となっている。このように、差動装置20への入力と出力を同一軸上に配置することにより、差動装置20をコンパクトに構成することができる。
【0038】
また、車輪用モータ19の出力軸29をサンギア23に直接固定する構成であるので、出力軸29から差動装置20まで駆動力を伝達するための駆動伝達部材(例えばチェーンなど)が不要となる。これにより、ミッションケース7を小型化することができる。更に、車輪用モータ19の出力軸29にチェーンなどをかける必要がないので、当該出力軸29にかかるラジアル荷重が小さくなる。従って、当該出力軸29のモータ軸受(図略)を簡素化でき、この意味でも小型化が可能となる。
【0039】
また、本実施形態の管理機1において、車輪4の駆動源である車輪用モータ(電動モータ)19は、両軸式のモータとして構成されており、その出力軸29が車体の左右方向に向けて突出すように配置されている。左右の出力軸29のそれぞれには、左右の遊星歯車機構21のサンギア23が固定されている。以上により、本実施形態では、差動装置20の内側(左右の遊星歯車機構21の間)に車輪用モータ19が配置された構成となっている。
【0040】
このように、差動装置20の内側に車輪用モータ19を配置した構成とすることにより、車輪4を駆動するための機構を全体的に小型化可能となり、ミッションケース7をコンパクトに構成することができる。
【0041】
前記ピニオンギア22は、ミッションケース7に固定されたピニオン支持軸30に対して回転自在に支持されている。このピニオン支持軸30は、その軸線が、サンギア23の回転軸に直交するように設けられている。また、このピニオン支持軸30の軸線は、左右の遊星歯車機構21の間に配置されている。そして、このピニオンギア22には、左右のインターナルギア部材27に形成されたベベルギア28が噛み合っている。
【0042】
このように、左右それぞれのインターナルギア部材27が、それぞれピニオンギア22に噛み合うことにより、当該左右のインターナルギア部材27は連動して回転する。即ち、ピニオンギア22を介して左右のインターナルギア部材27が連結されているので、ピニオンギア22が回転することにより、左右のインターナルギア部材27は互いに逆方向で同じ速度で回転する。
【0043】
以上のように構成された差動装置20によって左右の車輪4の回転数差を吸収する仕組みについて説明すると、以下のとおりである。
【0044】
車輪用モータ19の出力軸29から出力される回転駆動力は、まず左右のサンギア23に伝達される。サンギア23の回転は、これに噛み合うプラネタリギア25に伝えられる。これにより、プラネタリギア25がサンギア23の周囲を周回するので、当該プラネタリギア25を軸支しているプラネタリキャリア24が回転する。
【0045】
ここで、例えば管理機1を直進させている場合などは、左右の車輪4に回転数差が生じない。この場合、ピニオンギア22は回転せず、左右のインターナルギア部材27は回転しない。従ってこの場合は、左右のプラネタリキャリア24は同じ速度で同一方向に回転するので、左右の車軸9が同じ速度で同一方向に駆動される。
【0046】
一方、管理機1を旋回させる場合など、左右の車輪4に回転数差が生じた場合、ピニオンギア22が回転する。この場合、左右のインターナルギア部材27は、互いに逆方向に同じ速度で回転する。これにより、左右一方のプラネタリキャリア24は減速作用を受け、他方のプラネタリキャリア24では増速作用を受ける。即ち、左右一方の車軸9は減速され、他方の車軸9は増速されて回転駆動される。これにより、旋回方向内側の車輪4は減速し、外側の車輪4は増速することができるので、旋回時に発生する左右の車輪4の回転数差を吸収し、差動装置としての機能を発揮することができる。
【0047】
以上で説明したように、本実施形態の管理機1は、2つの遊星歯車機構21と、回転自在に設けられたピニオンギア22と、を有する差動装置20と、車輪用モータ19と、を備える。遊星歯車機構21は、サンギア23と、サンギア23に噛み合うプラネタリギア25と、プラネタリギア25を回転自在に支持するプラネタリキャリア24と、プラネタリギア25に噛み合うインターナルギア26が形成されたインターナルギア部材27と、を有する。2つの遊星歯車機構21がそれぞれ有するサンギア23同士は、その回転軸が同一軸線上に配置される。2つの遊星歯車機構21がそれぞれ有するインターナルギア部材27同士は、それぞれがピニオンギア22に噛み合うことにより、連動して回転する。2つの遊星歯車機構21がそれぞれ有するサンギア23は、車輪用モータ19の出力軸29に固定される。そして、2つの遊星歯車機構21がそれぞれ有するプラネタリキャリア24から、それぞれ駆動力が取り出される。
【0048】
この構成により、車輪用モータ19の出力軸29と、差動装置20からの出力の取り出し軸(車軸9)と、を同軸に配置することができるので、車輪用モータ19から差動装置20まで駆動を伝達するための部材(チェーン等)が不要となる。従って、この差動装置20を収容するミッションケース7を小型化することができる。また、車輪用モータ19の出力軸29にチェーン等をかけて駆動を伝達する必要がなくなる結果、当該出力軸29にかかるラジアル方向の荷重は小さくなるので、当該出力軸の軸受を簡素化することができる。
【0049】
また、本実施形態の管理機1において、2つの遊星歯車機構21がそれぞれ有するインターナルギア部材27の外周にはベベルギア28が形成され、当該ベベルギア28にピニオンギア22が噛み合っている。
【0050】
これにより、2つの遊星歯車機構21で差動を実現することができる。
【0051】
また本実施形態において、車輪4の駆動源は電動モータ(車輪用モータ19)である。
【0052】
即ち、電動モータはエンジンに比べて小型なので、これを駆動源として採用することにより、管理機1をコンパクトに構成することができる。また、電動モータは配置の自由度が比較的高いので、当該電動モータ(車輪用モータ19)の出力軸29と、差動装置20からの出力軸(車軸9)と、を同軸に配置することが容易になる。
【0053】
また本実施形態において、車輪用モータ19は両軸タイプであり、2つの遊星歯車機構21の間に配置されている。
【0054】
このように、差動装置20の内側に車輪用モータ19を配置することにより、管理機1をよりコンパクトに構成することができる。
【0055】
次に、上記実施形態の変形例について、図3を参照して説明する。なお、以下の説明において、上記実施形態と同一又は類似の構成については、要素名及び図面に同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
この変形例に係る差動装置200において、インターナル部材271は、インターナルギア26が形成された部分を起点として、車輪用モータ19の出力軸29と平行な方向で差動装置200の内側に向けて延伸された延伸部271aを有している。これにより、インターナル部材271は略筒状に形成されている。このようにインターナル部材271を筒状に形成することにより、図3に示すように、車輪用モータ19の一部(又は全部)を、インターナル部材271の内側に配置することができる。
【0057】
また本変形例において、延伸部271aの先端にはフランジ部271bが形成されている。そして、フランジ部271bの先端に、ピニオンギア22と噛み合うベベルギア28が形成されている。
【0058】
即ち、上記第1実施形態の差動装置20においては、左右のベベルギア28同士が離れていたので、このベベルギア28に噛み合うためのピニオンギア22が大型化していた。この点、本変形例のように、インターナル部材271を差動装置200の内側に向けて延伸し、その先端にベベルギア28を形成することで、左右のベベルギア28同士を近付けることができる。これにより、ベベルギア28に噛み合うピニオンギア22を小さくすることができる。
【0059】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上記実施形態と同一又は類似の構成については、要素名及び図面に同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
図4に示すように、この第2実施形態に係る管理機は、車輪用モータ191を差動装置202の外側に配置したものである。このように、駆動源を差動装置の外側に配置した構成とすることもできる。
【0061】
この場合、車輪用モータ191は通常の片軸タイプの電動モータを利用することができる。本実施形態では、この片軸の出力軸29に、左右の遊星歯車機構21のサンギア231を固定する構成である。図4に示すように、本実施形態では、1つのサンギア231を左右の遊星歯車機構21で共有する構成となっている。
【0062】
即ち、本発明の差動装置において、駆動源からの駆動力が入力される部材(この実施形態の場合はサンギア)は、左右の遊星歯車機構で同じ速度で回転するので、必ずしも左右で別部材にする必要はない。従って上記のように、駆動源からの駆動力が入力される部材(この実施形態の場合はサンギア231)を、左右の遊星歯車機構21で一体的に形成した構成とすることもできる。
【0063】
また、本実施形態の差動装置202は、ピニオン保持部材32と、ピニオン駆動モータ(ピニオン駆動源)33と、を備えている。
【0064】
ピニオン保持部材32は、リング状に形成された部材であり、サンギア231の回転軸と同軸で配置されている。このピニオン保持部材32の外周には、ギア34が形成されている。一方、ピニオン駆動モータ33の出力軸には、前記ギア34と噛み合う駆動ギア35が固定されている。そして、ピニオン駆動モータ33を駆動することにより、ピニオン保持部材32を、サンギア231の回転軸を中心として回転駆動することができるように構成されている。また、ピニオン駆動モータ33は、回転方向及び回転速度を任意に制御することができるように構成されている。
【0065】
ピニオン保持部材32の内周側には、サンギア231の回転軸と直交する方向に突出するピニオン支持軸36が形成されている。本実施形態の差動装置202においては、このピニオン支持軸36に、ピニオンギア22が回転自在に支持されている。
【0066】
以上の構成で、ピニオン駆動モータ33によってピニオン保持部材32を回転駆動することにより、ピニオンギア22を、サンギア231の軸線を中心にして回転駆動することができるようになっている。これにより、当該ピニオンギア22に噛み合っている部材(本実施形態の場合は左右のインターナルギア部材27)を積極的に回転駆動することができる。
【0067】
次に、サンギア231の軸線を中心にしてピニオンギア22を回転駆動することの作用について説明する。
【0068】
ピニオン駆動モータ33を停止状態としている場合(即ち、ピニオン保持部材32をサンギア231の軸線を中心として回転させない場合)は、上記第1実施形態と同様に、ピニオン支持軸36がミッションケースに対して静止している。従ってこの場合は、第1実施形態と同様に、車輪用モータ191の出力が左右の車軸9に分配されて出力される。
【0069】
ピニオン駆動モータ33を駆動し、ピニオン保持部材32を回転駆動した場合、ピニオン支持軸36に支持されたピニオンギア22がサンギア231と同軸で回転し、当該ピニオンギア22に噛み合っているインターナルギア部材27に対して、回転駆動力が与えられる。インターナルギア部材27の回転は、プラネタリギア25においてサンギア231の回転と合成されて、プラネタリキャリア24を回転させる。以上のように、ピニオン駆動モータ33によるピニオン保持部材32の回転と、車輪用モータ191によるサンギア231の回転と、を合成して出力することができる。
【0070】
従って、ピニオン保持部材32を、サンギア231と同じ方向に回転駆動すれば、車輪用モータ191の回転を増速して出力することができる。逆に、ピニオン保持部材32を、サンギア231とは逆方向に回転駆動すれば、車輪用モータ191の回転を減速して出力することができる。このように、本実施形態の構成によれば、車輪用モータ191の出力を、別のモータ(ピニオン駆動モータ33)によって任意に増減速して、車軸9を駆動することができる。
【0071】
以上で説明したように、第2実施形態に係る管理機は、サンギア231と同軸で回転するピニオン保持部材32と、ピニオン保持部材32を回転駆動するピニオン駆動モータ33と、を更に備える。そして、ピニオンギア22は、ピニオン保持部材32に対して回転自在に支持されている。
【0072】
このようにピニオンギア22を駆動することにより、差動装置202に入力される駆動力を増減速して出力することができる。
【0073】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0074】
インターナルギア部材27の外周にベベルギア28を形成する構成に代えて、平ギアを形成する構成であっても良い。
【0075】
上記実施形態では、サンギアに駆動力を入力し、インターナルギア部材同士をピニオンギアで連結し、プラネタリキャリアから出力する構成としたが、これに限らない。即ち、遊星歯車機構が備えるサンギア、インターナルギア部材、及びプラネタリキャリアの何れに駆動力を入力しても良く、何れから駆動力を出力しても良い。例えば、サンギアに駆動力を入力する場合において、インターナルギア部材から駆動力を出力する構成とすることができる。この場合、プラネタリキャリア同士をピニオンギアで連結すれば良い。
【0076】
本発明は、管理機に限らず、差動装置を備えた歩行型農業作業機に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 管理機(歩行型農業作業車)
9 車軸
19 車輪用モータ(駆動源)
20 差動装置
21 遊星歯車機構
22 ピニオンギア
23 サンギア
24 プラネタリキャリア
25 プラネタリギア
26 インターナルギア
27 インターナルギア部材
28 ベベルギア
29 出力軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの遊星歯車機構と、回転自在に設けられたピニオンギアと、を有する差動装置と、
駆動源と、
を備え、
前記遊星歯車機構は、
サンギアと、
前記サンギアに噛み合うプラネタリギアと、
前記プラネタリギアを回転自在に支持するプラネタリキャリアと、
前記プラネタリギアに噛み合うインターナルギアが形成されたインターナルギア部材と、
を有し、
前記2つの遊星歯車機構がそれぞれ有する前記サンギア同士は、その回転軸が同一軸線上に配置され、
前記2つの遊星歯車機構がそれぞれ有する前記サンギア、前記プラネタリキャリア及び前記インターナルギア部材の何れか同士は、それぞれが前記ピニオンギアに噛み合うことにより連動して回転し、
前記2つの遊星歯車機構がそれぞれ有する前記サンギア、前記プラネタリキャリア、及び前記インターナルギア部材のうち前記ピニオンギアに噛み合っていない部材の何れか一方同士は、前記駆動源の駆動出力軸に固定され、
前記2つの遊星歯車機構がそれぞれ有する前記サンギア、前記プラネタリキャリア、及び前記インターナルギア部材の残りの部材から、それぞれ駆動力が取り出されることを特徴とする歩行型農業作業車。
【請求項2】
請求項1に記載の歩行型農業作業車であって、
前記2つの遊星歯車機構がそれぞれ有する前記インターナルギア部材の外周にはベベルギアが形成され、
当該ベベルギアに前記ピニオンギアが噛み合っており、
前記2つの遊星歯車機構がそれぞれ有する前記サンギアは、前記駆動源の駆動出力軸に固定され、
前記2つの遊星歯車機構がそれぞれ有する前記プラネタリキャリアから駆動力が取り出されることを特徴とする歩行型農業作業車。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の歩行型農業作業車であって、
前記駆動源は電動モータであることを特徴とする歩行型農業作業車。
【請求項4】
請求項3に記載の歩行型農業作業車であって、
前記電動モータは両軸タイプであり、2つの遊星歯車機構の間に配置されることを特徴とする歩行型農業作業車。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の歩行型農業作業車であって、
前記サンギアと同軸で回転するピニオン保持部材と、
前記ピニオン保持部材を回転駆動するピニオン駆動源と、
を更に備え、
前記ピニオンギアは、前記ピニオン保持部材に対して回転自在に支持されることを特徴とする歩行型農業作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−225418(P2012−225418A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93306(P2011−93306)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】