説明

歯周病の診断,治療,およびモニタリングのためのPorphyromonasgingivalis毒性ポリヌクレオチドの同定

本発明は,Porphyromonas gingivalisおよびを検出するための,およびP. gingivalisにより引き起こされる疾病および感染を治療および予防するための組成物および方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は米国仮出願第60/495,589号(2003年8月15日出願)の利益を主張するものである。
【0002】
政府の権利
本発明は国立衛生研究所(National Institutes of Health)により授与された補助金番号RO1 DE10994-01A2の下に,政府の援助によって行われたものである。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
発明の技術分野
本発明はPorphyromonas gingivalis(Pg)に起因する疾病および感染の診断,治療,予防,および改善のための方法および組成物を提供する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
Porphyromonas gingivalisは重要な歯周病の原因菌である。米国内で49,000,000人を超える人が何らかの型の歯周病を有すると推定される(Cutlerら, Trends Microbiol. 3:45 (1995))。歯周病は真性糖尿病,AIDS,白血病,好中球減少症,クローン病,およびダウン症候群のような全身性疾患を有する患者において高頻度に発生する(Nevilleら, Oral and Maxillofacial Pathology. Philadelphia: Saunders, 1995)。現在,Pgの標準的な微生物試験によって歯垢中のPgの存在だけは検出されるが,疾病の活性を特異的に同定することはできない。この理由から,これらの試験は明確な予測を行うための価値が低い。Pgは通常,健常個体の歯垢中にも観察されるので,これらの試験の適用は,疾病のある種の臨床兆候を示す患者にその有用性が限定される。これらの患者には以下がある:1)25歳未満の進行性付着喪失および骨喪失を有する患者;2)(通常25-35歳の)相対的に短期間での付着および骨の迅速な破壊が見られる患者(急性進行性歯周炎);3)ストリンジェントな治療にも関わらず付着を喪失し続ける患者(抗療性歯周炎);および4)緩慢な付着喪失を伴う35歳以上の患者。
【0005】
他の型の患者に関する診断試験が当該分野で必要とされており,それらには例えば以下がある:1)母親に歯周炎の既往歴があり,疾病(例えばパピヨン・ルフェーブル症候群(PLS),低ホスファターゼ血症,好中球減少症,白血球接着障害(leukocyte adhesion deficiency;LAD),チェディアック・東症候群,ダウン症候群,白血病,組織球増殖症X,若年発症I型糖尿病,および先端疼痛症)の後天的な素因があるかどうかを確認するための試験が必要とされる青年期前の小児;2)傾向がより低い他の青年期前小児も,他の予測物質または既知のリスク因子がないため,それらの試験が有益でありうる;3)既に診断された,または未だ診断されていない成人には,疾病を発生させるPgを有するかどうかの知見は有益である。
【0006】
米国の国民調査により,限局性若年性歯周炎の罹患率は0.53%,汎発性若年性歯周炎の罹患率は0.13%であることが明らかになった。LoeおよびBrown, J. Periodontol. 62:608-616 (1991)。多くの研究で得られた知見から,若年発症型疾患は他の産業国において同様であり,発展途上国ではより高頻度であることが裏付けられている。LoeおよびBrown, J. Periodontol. 62:608-616 (1991)。更に,成人人口の半数以上が罹患している非常に一般的な型の成人性歯周炎はPgによって起こると考えられる。つまり,歯周病を誘発するPgの良好な診断は世界中の歯科医師にとって標準的な処置法となりうる。留意すべきことに,Pgは口腔以外の疾患,例えば心内膜炎,甲状腺膿瘍,尿路感染症,脳膿瘍,および椎骨骨髄炎も誘発しうる。
【0007】
Pg誘発型歯周炎の治療には抗生物質,外科的,および機械的療法があるが,予防方法はない。テトラサイクリンは若年発症型歯周病の治療に広く使用されてきた。しかしながら,テトラサイクリン耐性株の問題,および歯肉下での他の病原性微生物の過剰増殖の可能性が残されている。これらの疾患の発病率を仮定すれば,Pgの安全なワクチンが必要とされる。ワクチンは例えば多価ワクチンであってもよい。全身性疾患(例えば冠性心疾患)のリスク因子としての歯周感染の考え得る役割に関する最近の注目を考慮すれば,歯周病の制御は非常に重要である。
【0008】
歯周病の診断,治療,または予防は,抗生物質療法が採用されたため,過去三十年間,有意な進歩は見られていない。歯垢中のPgの存在を確認するためにDNAプローブ技術および免疫アッセイ技術が開発されたが,これらの技術では正常に歯垢群中の一部として存在するPgと実際の疾病過程に関与するPgを識別することはできない。従って,これらの技術を使用する歯科医に認識されるように,これらによっては疾病活性を診断するための“ゴールデンスタンダード”は提供されない。
【0009】
歯周炎の早期診断は強く所望される。現在,診断は一般に疾病の発症後長時間が経過した後,そして支持骨および組織へのかなりの損傷が起こった後にX線分析によって行われる。歯の喪失は破壊性の歯周病の最終的な有害効果である。ほとんどの人はその歯垢の正常な一部としてPgを有するが,通常,これは疾病を誘発しない。Pgが疾病を誘発するとヒト宿主は強い応答を開始するが,必ず無益に終わり,これはおそらく誤ったPg抗原が標的とされるためである。
【0010】
予防は医学的に非常に好ましい処置である。現在,若年発症型歯周病の罹患率および重篤度は機械的な歯垢除去,並びに病原菌の選択的な除去または阻害を目的とする種々の全身および局所適用される抗菌物質を組み合わせることによって対処されている。Pgに対する効果的なワクチンにより,抗生物質の使用を効果的に低減して若年発症型歯周病の破壊的な観点を制御することができうる。
【0011】
種々の感染性疾患の数に比べて,信頼度の高い診断試験およびワクチンは相対的に少ない。これは主に,疾病過程に必須である遺伝子の発現を病原体が調節するためである:実験室で培養する場合,一般に感染の際に細菌がビルレンス遺伝子を作動させる原因となる重要な環境シグナルは発見されていない。従って,診断およびワクチン法のための最も優れた標的の多くは未知のままである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明のある態様は,配列番号167-226,228-261,および263-354から成る群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも約5個の連続するアミノ酸を含む単離された免疫原性ポリペプチドを提供する。免疫原性ポリペプチドは単離されたポリペプチドの一部であってもよく,異種ポリペプチドも含む。
【0013】
本発明の別の態様では,配列番号167-226,228-261,および263-354から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを提供する。
【0014】
本発明の更に別の態様では,配列番号167-226,228-261,および263-354から成る群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも約5個の連続するアミノ酸を含む単離された免疫原性ポリペプチドをコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0015】
本発明の別の態様では,配列番号1-166,227,および262から成る群から選択される配列の少なくとも約15個の連続する核酸を含む単離されたポリヌクレオチドおよびその変性変異体を提供する。
【0016】
本発明の別の態様では,配列番号1-166,227,および262のポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドおよびその変性変異体を提供する。ポリヌクレオチドは発現制御配列に機能的に結合してもよい。ポリヌクレオチドは異種ポリヌクレオチドの一部であってもよい。ポリヌクレオチドは発現ベクター中に存在してもよく,発現ベクターは宿主細胞中に存在してもよい。
【0017】
本発明の更に別の態様では,配列番号167-226,228-261,および263-354から成る群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも約5個の連続するアミノ酸を含む単離された免疫原性ポリペプチドに特異的に結合する抗体,抗体フラグメント,または一本鎖抗体を提供する。抗体フラグメントはFab,F(ab')2,Fab',およびFab'-SHから成る群から選択することができる。抗体はモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であってもよい。抗体,抗体フラグメント,または一本鎖抗体は医薬的に許容される担体を含む組成物中に存在してもよい。
【0018】
本発明の更に別の態様では,Porphyromonas gingivalisに起因する疾病または感染の治療法または予防法を提供し,方法は本発明の抗体,抗体フラグメント,または一本鎖抗体を動物に投与することを含み,それによってPorphyromonas gingivalisに起因する疾病または感染が治療または予防される。疾病は限局性思春期前歯周炎,汎発性思春期前歯周炎,限局性若年性歯周炎,汎発性若年性歯周炎,急速進行性成人歯周炎,抗療性成人歯周炎,心内膜炎,甲状腺膿瘍,尿路感染症,脳膿瘍,および椎骨骨髄炎でありうる。
【0019】
本発明の更に別の態様は,配列番号167-226,228-261,および263-354から成る群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも約5個の連続するアミノ酸を含む単離された免疫原性ポリペプチドおよび医薬的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0020】
本発明の別の態様では動物において免疫応答を誘発する方法を提供し,方法は配列番号167-226,228-261,および263-354から成る群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも約5個の連続するアミノ酸を含む単離された免疫原性ポリペプチドを動物に投与して免疫応答を誘発することを含む。
【0021】
本発明の更に別の態様では,Porphyromonas gingivalisに起因する疾病または感染の治療法または予防法を提供し,方法は配列番号167-226,228-261,および263-354から成る群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも約5個の連続するアミノ酸を含む単離された免疫原性ポリペプチドを動物に投与し,疾病を治療または予防することを含む。
【0022】
本発明の更に別の態様では,配列番号167-226,228-261,および263-354から成る群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも約5個の連続するアミノ酸を含む単離された免疫原性ポリペプチドをコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチドおよび医薬的に許容される担体を含む組成物を提供する。ポリヌクレオチドはプラスミド中に存在してもよい。
【0023】
本発明の別の態様では,動物において免疫応答を誘発する方法を提供し,方法は配列番号167-226,228-261,および263-354から成る群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも約5個の連続するアミノ酸を含む単離された免疫原性ポリペプチドをコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチドを動物に投与し,免疫応答を誘発することを含む。
【0024】
本発明の別の態様では,Porphyromonas gingivalisに起因する疾病または感染の治療法または予防法を提供し,方法は配列番号167-226,228-261,および263-354から成る群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも約5個の連続するアミノ酸を含む単離された免疫原性ポリペプチドをコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチドを動物に投与して疾病または感染を治療または予防することを含む。
【0025】
本発明の更に別の態様では,試験サンプル中の第1のPorphyromonas gingivalisポリヌクレオチドの存在を検出する方法を提供する。方法はハイブリダイゼーション条件下で第1のポリヌクレオチドを含有する疑いのある試験サンプルを第2のポリヌクレオチドと接触させることを含み,ここで第2のポリヌクレオチドは配列番号167-226,228-261,および263-354から成る群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも約5個の連続するアミノ酸を含む単離された免疫原性ポリペプチドをコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチドである。ハイブリダイズした第1および第2のポリヌクレオチドの複合体を検出する。ハイブリダイズした第1および第2のポリヌクレオチドの複合体の存在は試験サンプル中の第1のポリヌクレオチドの存在を示す。
【0026】
本発明の更に別の態様では,試験サンプル中のPorphyromonas gingivalis抗体の存在を検出する方法を提供する。方法は配列番号167-226,228-261,および263-354から成る群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも約5個の連続するアミノ酸を含む単離された免疫原性ポリペプチドと試験サンプルとを接触させることを含み,ここでポリペプチドは抗体とポリペプチドとの間での免疫複合体の形成が可能な条件下でPorphyromonas gingivalis抗体に特異的に結合する。
【0027】
本発明の別の態様では,試験サンプル中のPorphyromonas gingivalisまたはPorphyromonas gingivalisポリペプチドの存在を検出する方法を提供する。方法は,抗体とPorphyromonas gingivalisまたはPorphyromonas gingivalisポリペプチドとの間での免疫複合体の形成が可能な条件下でPorphyromonas gingivalisまたはPorphyromonas gingivalisポリペプチドに特異的に結合する本発明の抗体,抗体フラグメント,または一本鎖抗体を試験サンプルと接触させることを含む。免疫複合体を検出する。免疫複合体の検出は試験サンプル中のPorphyromonas gingivalisまたはPorphyromonas gingivalisポリペプチドの存在を示す。Porphyromonas gingivalisポリペプチドは動物の感染の際にインビボで発現されうる。
【0028】
本発明の別の態様では,被験者におけるPorphyromonas gingivalis感染を検出する方法を提供する。方法は被験者から生体サンプルを採取し,ポリペプチドと生体サンプル中に存在するPorphyromonas gingivalis抗体との間での免疫複合体の形成が可能な条件下で配列番号167-226,228-261,および263-354から成る群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも約5個の連続するアミノ酸を含む単離された免疫原性ポリペプチドと生体サンプルとを接触させることを含む。形成された免疫複合体の量を検出する。検出された免疫複合体の量を対照サンプルと比較する。生体サンプル中の免疫複合体の量が対照サンプルより高ければ,これは被験者におけるPorphyromonas gingivalis感染を示す。
【0029】
本発明の更に別の態様では,被験者においてPorphyromonas gingivalisを検出する方法を提供する。方法は被験者から生体サンプルを採取し,抗体,抗体フラグメント,または一本鎖抗体と生体サンプル中に存在するPorphyromonas gingivalisポリペプチドとの間での免疫複合体の形成が可能な条件下で,本発明の抗体,抗体フラグメント,または一本鎖抗体を生体サンプルと接触させることを含む。形成された免疫複合体の量を検出し,検出された免疫複合体の量を対照サンプルと比較する。生体サンプル中の免疫複合体の量が対照サンプル中の量より多ければ,これは被験者におけるPorphyromonas gingivalis感染を示す。
【0030】
本発明の更に別の態様では,被験者におけるPorphyromonas gingivalisを検出する方法を提供する。方法は,被験者から生体サンプルを採取し,ポリヌクレオチドと生体サンプル中に存在するPorphyromonas gingivalisポリヌクレオチドとの間でのハイブリダイズ複合体の形成が可能な条件下で,配列番号167-226,228-261,および263-354から成る群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも約5個の連続するアミノ酸を含む単離された免疫原性ポリペプチドをコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチドと生体サンプルとを接触させることを含む。形成されたハイブリダイズ複合体の量を検出する。検出されたハイブリダイズ複合体の量を対照サンプルと比較する。生体サンプル中のハイブリダイズ複合体の量が対照サンプル中の量より多ければ,これは被験者におけるPorphyromonas gingivalis感染を示す。
【0031】
従って,本発明はPorphyromonas gingivalisの検出並びにP. gingivalisに起因する疾病および感染の予防および治療のための組成物および方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
発明の詳細な説明
ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの同定法
微生物が疾病を誘発する能力に重要なヌクレオチド配列を同定する方法が,歯周病(例えば限局性思春期前歯周炎,汎発性思春期前歯周炎,限局性若年性歯周炎,汎発性若年性歯周炎を含む若年発症型歯周炎,急速進行性成人歯周炎,および抗療性成人歯周炎)の主な病因物質であるPgに適用されてきた。Pgは心内膜炎,甲状腺膿瘍,尿路感染症,脳膿瘍,および椎骨骨髄炎も誘発しうる。
【0033】
本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列の同定に使用する方法は,インビボ誘導型抗原法(in vivo induced antigen technology;IVIAT)(Handfieldら, Trends Microbiol. 336:336-339 (2000);国際特許公開WO 01/11081参照)およびインビボ発現法(In Vivo Expression Technology;IVET)(Mahanら,Proc Natl Acad Sci USA 92: 669-673(1995年1月);Handfieldら,Infect Immun 68: 2359-2362(2000年4月);RaineyおよびPreston,Curr Opin Biotechnol 11: 440-444(2000年)参照)と呼ばれる。
【0034】
簡潔に記載すると,IVIATはインビボおよびインビトロでPgが発現するPg抗原に対する抗体のサンプルを得,インビトロで増殖させたPgの細胞または細胞抽出物で抗体を吸着させることを含む。使用できる抗体サンプルの例はPgに感染したことがある,または感染している患者由来の血清である。未吸着の抗体を単離し,これを使用してPg DNAの発現ライブラリーをプローブする。反応性クローンを単離し,クローニングしたフラグメントの配列を決定する。
【0035】
IVIATを使用して,Pgが動物,特にヒトにおいて実際に疾病の誘発を行う時にのみ発現されるPgのポリヌクレオチドを同定した。実験室で細菌を増殖させる場合,通常,感染の際にPgがビルレンス遺伝子を作動させる原因となる重要な環境シグナルは発見されていない。従って診断およびワクチン法の最良の標的の多くは未知であった。IVIAT法を使用して,慣例的な実験室での増殖ではなく,ヒト宿主においてPgが増殖する際に特異的に作動されるポリヌクレオチドを同定した。これらのポリヌクレオチドおよび相当するポリペプチドおよび抗体は,例えば感染の初期段階にある被験者を同定し,治療に対する反応をモニタリングするためのPgの診断試験の開発,並びに感染しやすい動物におけるPgに起因する疾病の予防または治療のためのワクチンまたは治療の開発に有用である。
【0036】
インビボ発現法(IVET)では動物感染モデルの感染の際に誘導される細菌遺伝子の同定および研究のための有力な遺伝学的手段が提供される。IVETは,ランダムなゲノムフラグメントをプロモーターを含まないレポーター遺伝子(つまり抗生物質耐性である)の前にライゲートさせるプロモーター・トラップ法として設計される。その後レポーター活性を融合遺伝子の転写活性の指標として使用してもよい。1993年,IVETはまず,哺乳動物の病原体におけるインビボ誘導型(ivi)遺伝子の同定のために使用された(Mahanら, Infect Agents Dis. 2:263-8,1993)。本明細書で使用するIVET法は,Pgが皮下接種後に,抗生物質処理マウスの継代を通して生存できないという事実に基づいたものであった。この方法により,常態でマウスにおける感染の際に作動される遺伝子のプロモーターを含み,Pgに抗生物質耐性を与えるPgゲノムフラグメントを特異的に選択することが可能となる。感染の際に活性である融合体だけが抗生物質耐性マーカーの発現を起こし,これによって動物における株の生存および増殖が可能となる。それらの株のほとんどはインビトロでの増殖の際にも活性である融合体であった。すなわち,これらの株は本質的に活性な遺伝子融合体を有した。しかしながら,IVI遺伝子融合体を含む株のサブセットは生成されるコロニーの抗生物質スクリーニングによって容易に同定された。得られた抗生物質感受性を有する株は,宿主環境内では特異的に活性であるがPgの実験室での増殖の際には活性でない遺伝子プロモーターを含むと言われている。Pgを用いるIVET法の限界は,インビボ発現の基準として,認識された感染動物モデルに依存するということである。この制限はIVIATで直接対処される。
【0037】
IVIATおよびIVETによって同定されたPg抗原は,Pgに起因する疾病(例えば歯周病)に関して予測的価値が高い。Pgの診断試験は,例えば母親に歯周炎の既往歴がある小児が同疾病の素因を獲得しているどうかを確認するためのスクリーニングのような適用に有用でありうる。思春期前の歯周炎に関係することが知られている疾病にはパピヨン・ルフェーブル症候群(PLS),低ホスファターゼ血症,好中球減少症,白血球接着障害(leukocyte adhesion deficiency;LAD),チェディアック・東症候群,ダウン症候群,白血病,組織球増殖症X,若年発症I型糖尿病,および先端疼痛症がある。これらの疾病を有する小児はPg試験の候補者である。更に,歯周炎の傾向が低い他の青年期前の小児には,他の予知物質または既知のリスク因子がないため,Pg診断試験が有益である。
【0038】
本発明の単離されたポリペプチドは完全長のポリペプチドまたはポリペプチドのフラグメントのいずれであってもよい。例えば,本発明のポリペプチドのフラグメントは本発明のポリペプチドの少なくとも約5,10,25,50,100,150,200,300,400,500,600,700,800,900,1,000,1,500,または2,000個の連続するアミノ酸を含んでもよい。本発明のポリペプチドは配列番号167-226,228-261,および263-354で示すものを含む,または本質的にそれらから成る。これらのポリペプチドは“ポリペプチド配列番号”で表される。本発明のポリペプチドはIVIATまたはIVET法を用いて発見された。ポリペプチドを表2に記載する。ポリペプチドが生体中の既知のオープンリーディングフレームとホモロジーを示す場合,そのオープンリーディングフレームの名称とそのオープンリーディングフレームの機能を採用する。本質的に配列番号167-226,228-261,および263-354から成る本発明のポリペプチドの基本的および新規の特性は,それらが配列番号167-226,228-261,および263-354で示す配列を含む,または本質的にそれらから成ること,および本発明のPg特異的抗体,抗体フラグメント,一本鎖抗体,またはアプタマーに特異的に結合することである。
【0039】
本発明のある態様では,本発明のポリペプチドは免疫原性である。すなわち,ポリペプチドは動物に投与されると免疫応答を誘引しうる。
【0040】
本発明のある態様では,ポリペプチドまたはそのフラグメントは単離されたものである。単離された,とは,本発明のポリペプチドが実質的に他の生体分子を含まないことを意味する。実質的に単離されたポリペプチドは乾燥重量で少なくとも約75%,80%,90%,95%,97%,99%,または100%の純度を有する。純度の測定はカラムクロマトグラフィー,ポリアクリルアミドゲル電気泳動,またはHPLC分析のような方法で行うことができる。
【0041】
本発明は,配列番号167-226,228-261,および263-354で示すポリペプチドの機能的に活性な変異体も含む。ある態様では,ポリペプチドは配列番号167-226,228-261,および263-354で示す配列またはそのフラグメントと少なくとも約75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。ポリペプチドは配列番号167-226,228-261,および263-354と少なくとも約75%,80%,85%,90%,95%,98%,99%,またはそれ以上の同一性を有してもよく,本発明のPg特異的抗体,抗体フラグメント,一本鎖抗体,またはアプタマーに特異的に結合する。
【0042】
特異的結合とは,ポリペプチドが他の非特異的分子より高い親和性で本発明の抗体を認識し,結合することを意味する。例えば,非特異的蛋白質に対するよりも高い効率で結合する抗原(例えばポリペプチド)に対して産生させた抗体は,その抗原に特異的に結合すると記述することができる。特異的結合は,例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA),ラジオイムノアッセイ(RIA),またはウェスタンブロットアッセイにより,既知の方法を用いて試験することができる。
【0043】
ポリペプチドがアッセイ(例えば免疫組織化学アッセイ,ELISA,RIA,またはウェスタンブロットアッセイ)において配列番号167-226,228-261,および263-354で示すポリペプチドまたはその免疫原性フラグメントと同じものと実質的に反応する,例えば元のポリペプチドの90-110%の特異的結合活性を有する場合,そのポリペプチドは機能的に活性な変異体である。ある態様ではアッセイは競合アッセイであり,機能的に活性な変異体ポリペプチドは配列番号167-226,228-261,および263-354で示すポリペプチドの相当する抗体,抗体フラグメント,一本鎖抗体,またはアプタマーへの結合を約80,95,99,または100%低下させる能力がある。
【0044】
機能的に活性な変異体は本発明の“ポリペプチドフラグメント”を含んでもよい。ポリペプチドフラグメントは配列番号167-226,228-261,および263-354の少なくとも約5,10,25,50,75,100,150,200,300,400,500,600,700,800,900,1,000,1,500,または2,000個のアミノ酸を含むか,または本質的にそれらから成る。
【0045】
本明細書における使用では,2つのアミノ酸配列(または2つの核酸配列)の同一性%はKarlinおよびAltschulの演算(PNAS USA 87:2264-2268, 1990)をKarlinおよびAltschul(PNAS USA 90:5873-5877, 1993)のように改変したものを用いて測定する。それらの演算をAltschulら(J. Mol. Biol. 215:403-410, 1990)のNBLASTおよびXBLASTプログラムに導入する。BLASTヌクレオチド検索はNBLASTプログラム,スコア=100,ワード長=12で行う。BLAST蛋白質検索はXBLASTプログラム,スコア=50,ワード長=3を用いて行う。比較の目的でギャップのあるアラインメントを得るために,Altschulら(Nucleic Acids Res. 25:3389-3402, 1997)に記載されるようにGappedBLASTを利用する。BLASTおよびGappedBLASTプログラムを利用する場合,各プログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターを使用して本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得る。
【0046】
同一性または同一の,とはアミノ酸配列の類似性を意味し,当該分野で認知される意味を有する。同一性を有する配列は同一の,または類似のアミノ酸を共有する。従って,参照配列と85%のアミノ酸配列同一性を有する候補配列は,候補配列と参照配列とのアラインメント後,候補配列中の85%のアミノ酸が参照配列中の相当するアミノ酸と同一である,そして/または保存的なアミノ酸変化から構成されることが必要とされる。
【0047】
配列番号167-226,228-261,および263-354の機能的に活性な変異体は実質的に元のポリペプチドまたはフラグメントと同じ機能活性を保持する。天然に存在する機能的に活性な変異体(例えば対立変異体(allelic variants)および種変異体(species variants))および天然に存在しない機能的に活性な変異体は本発明の含まれ,例えば突然変異誘発法または直接合成によって生成できる。
【0048】
機能的に活性な変異体は配列番号167-226,228-261,および263-354で示すポリペプチドまたはそのフラグメントと,例えば約1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,20,50,または100個のアミノ酸残基が異なる。この比較がアラインメントを必要とする場合,最大のホモロジーとなるように配列のアラインメントを行う。変異部位はポリペプチドの任意の位置で起こってもよいが,配列番号167-226,228-261,および263-354で示すポリペプチドと実質的に同様の活性が機能的に活性な変異体内で保持されなければならない。
【0049】
フェノタイプ的にサイレントであるアミノ酸置換の生成法に関する手引きはBowieら, Science, 247:1306-1310 (1990)で提供されており,ここにはアミノ酸配列の変更に対する許容性の研究には2つの主な戦略があることが記載されている。
【0050】
第1の戦略では,進化過程における自然淘汰によるアミノ酸置換の許容性を利用する。異なる種におけるアミノ酸配列の比較により,種間で保存されているアミノ酸の位置を同定できる。これらの保存されたアミノ酸は蛋白質機能に重要であると考えられる。これに対して,自然淘汰で置換が許容されてきたアミノ酸位置は,蛋白質機能に重要な位置ではないと考えられる。従って,アミノ酸置換が許容される位置は,ポリペプチドの特異的結合活性を保持しつつ改変することができる。
【0051】
第2の戦略は,遺伝子操作を用いてクローニングした遺伝子の特定の位置のアミノ酸を変化させ,蛋白質機能に重要な領域を同定する。例えば,部位特異的変異誘発またはアラニンスキャン変異誘発(分子中の全ての残基に1個のアラニン変異を導入)を使用することができる(Cunninghamら, Science, 244:1081-1085 (1989))。次いで,得られた変異分子を本発明の抗体への特異的結合に関して試験することができる。
【0052】
Bowieらによれば,これら2つの戦略によって蛋白質がアミノ酸置換に対して驚くほどの許容性を有することが明かとなった。著者は更に,蛋白質中のある一定のアミノ酸位置でいずれのアミノ酸変化が許容されると考えられるかについても示している。例えば(蛋白質の3次構造内で)最も包埋された,または内部にあるアミノ酸残基は非極性側鎖を必要とするが,表面または外部の側鎖の特徴は一般にほとんど保存されていない。
【0053】
蛋白質のアミノ酸に変異を導入する方法は当業界で周知である。例えば,Ausubel(編), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Inc. (1994);T. Maniatis, E. F. FritschおよびJ. Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)を参照されたい。突然変異の導入は市販のキット,例えば“QuikChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit”(Stratagene)を利用して行うこともできる。当業者は,ポリペプチドの機能に影響を与えないアミノ酸置換によってポリペプチドの機能的に活性な変異体を生成することができる。
【0054】
本発明のポリペプチドは標準的な蛋白質精製法を用いて細胞原料から単離できる。本発明のポリペプチドは化学的に合成するか,または組換えDNA法によって生成することもできる。例えば慣例的なペプチド合成装置を使用して本発明のポリペプチドを合成できる。更に,当該分野で周知の方法を用いて本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現ベクターに導入し,これを好適な発現系で発現させることもできる。種々の細菌,酵母,植物,哺乳動物,および昆虫発現系が当該分野で利用でき,それらの発現系のいずれを使用してもよい。必要により,本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを,無細胞翻訳系で翻訳することができる。
【0055】
ハイブリダイゼーション法を用いて機能的に活性な変異体ポリペプチドを単離することもできる。簡潔に記載すると,配列番号167-226,228-261,および263-354をコードする核酸配列の全部または一部と高度のホモロジーを有するDNAを使用して機能的に活性なポリペプチドを生成する。従って,本発明のポリペプチドは配列番号167-226,228-261,および263-354と機能的に同等で,配列番号167-226,228-261,および263-354またはその相補体をコードする核酸とハイブリダイズする核酸分子にコードされるポリペプチドを含む。当業者は容易に入手できるコドン表を用いて本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を容易に確認できる。従って本明細書にはそれらの核酸配列を記載しない。
【0056】
機能的に活性な変異体であるポリペプチドをコードする核酸のハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは,例えば10%ホルムアミド,5x SSPE,1x デンハルト液,および1x サケ精子DNA(低ストリンジェントな条件)である。より好ましい条件は,25%ホルムアミド,5x SSPE,1x デンハルト液,および1x サケ精子DNA(中度にストリンジェントな条件),更に好ましい条件は50%ホルムアミド,5x SSPE,1x デンハルト液,および1x サケ精子DNA(高ストリンジェントな条件)である。しかしながら,上記のホルムアミド濃度以外にいくつかの因子がハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を与え,当業者はこれらの因子を好適に選択して同様のストリンジェンシーを得ることができる。
【0057】
機能的に活性な変異体ポリペプチドをコードする核酸分子の単離は遺伝子増幅法,例えばPCRによって,配列番号167-226,228-261,および263-354で示すポリペプチドをコードする核酸分子DNAの一部をプローブとして用いて行ってもよい。
【0058】
本発明の機能的に活性な変異体ポリペプチドには,複数の遺伝子の存在,別の転写事象,別のRNAスプライシング事象,並びに別の翻訳および翻訳前事象の結果として生じるものも含めることができる。ポリペプチドの発現は,例えばポリペプチドが天然の細胞で発現された場合に見られるのと実質的に同じ翻訳後修飾となる培養細胞のような系,または天然の細胞で発現された場合に見られる翻訳後修飾(例えばグリコシル化または開裂)の変更もしくは脱落が起こる系で行うことができる。
【0059】
本発明のポリペプチドは他の非Pgまたは非Pg誘導型アミノ酸配列(すなわち非相同ポリペプチド),例えばアミノ酸リンカーまたはシグナル配列,並びに蛋白質精製に有用なリガンド(例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ,ヒスチジンタグ,およびブドウ球菌プロテインA)を含む融合蛋白質として生成することができる。1つ以上の本発明のポリペプチドが融合蛋白質中に存在してもよい。非相同ポリペプチドを,例えばポリペプチドのN末端またはC末端に融合させてもよい。本発明のポリペプチドは相同なアミノ酸配列,すなわち他のPgまたはPg誘導型配列を含んでもよい。
【0060】
本発明のある態様では,機能的に活性な変異体は配列番号167-226,228-261,および263-354で示すポリペプチドと保存的アミノ酸置換によってのみ異なり,そのためポリペプチドの抗原性は実質的に元のポリペプチドと同じである。これらの変異体の同定は一般に,本発明のポリペプチド配列の1つを改変し,例えば免疫組織化学アッセイ,酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA),ラジオイムノアッセイ(RIA),またはウェスタンブロットアッセイを用いて改変されたポリペプチドの抗原性を評価することによって行うことができる。それらの変異体は少なくとも約1,5,10,25,50,または100個の保存的アミノ酸置換を含んでいてもよい。
【0061】
保存的アミノ酸置換は,アミノ酸が同様の特性を有する別のアミノ酸で置換されたものであり,そのためペプチド化学業界の技術者にはポリペプチドの2次構造およびハイドロパシー性が実質的に変化しないことが予測される。一般に,以下の群のアミノ酸は保存的変化を表す:(1)ala,pro,gly,glu,asp,gln,asn,ser,thr;(2)cys,ser,tyr,thr;(3)val,ile,leu,met,ala,phe;(4)lys,arg,his;および(5)phe,tyr,trp,his。
【0062】
更に詳細には,“保存的アミノ酸置換”は,その位置のアミノ酸残基の極性または電荷にほとんど,または全く影響がないような,非天然残基による天然のアミノ酸残基の置換を含んでもよい。更に,“アラニンスキャン突然変異誘発”に関して既に記載したように,ポリペプチド中の天然の残基をアラニンで置換してもよい。保存的アミノ酸置換は天然に存在しないアミノ酸残基も含み,これは一般に生物系における合成ではなく化学的ペプチド合成によって導入される。これらにはペプチド様物質,および他の逆型または反転型のアミノ酸部分が含まれる。
【0063】
天然に存在する残基を共通する側鎖の特性に基づいていくつかの種類に分類することができる:
1)疎水性:ノルロイシン,Met,Ala,Val,Leu,Ile;
2)中性親水性:Cys,Ser,Thr;
3)酸性:Asp,Glu;
4)塩基性:Asn,Gln,His,Lys,Arg;
5)鎖の配向性に影響を与える残基:Gly,Pro;および
6)芳香族:Trp,Tyr,Phe
例えば非保存的置換はこれらの1つのクラスのメンバーを別のクラスのメンバーで置換することを含みうる。
【0064】
そのような変更を行う際には,アミノ酸のハイドロパシー指数を考慮することができる。各アミノ酸にはその疎水性および帯電性に基づいてハイドロパシー指数が与えられている。ハイドロパシー指数は以下の通りである:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタメート(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパルテート(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);およびアルギニン(-4.5)。
【0065】
蛋白質への相互作用生体機能の付与におけるハイドロパシーアミノ酸指数の重要性は当該分野で一般に理解されている(Kyteら, 1982, J. Mol. Biol. 157:105-31)。ある種のアミノ酸は同様のハイドロパシー指数またはスコアを有する他のアミノ酸で置換しても同様の生体活性を保持することが知られている。ハイドロパシー指数に基づいて変更を行う場合,ハイドロパシー指数が±2以内であるアミノ酸での置換が好ましく,特に好ましいのは±1以内,更に好ましくは±0.5以内である。
【0066】
当該分野で理解されるように,特に本明細書の場合のようにそれによって創製される生体機能的に同等の蛋白質またはペプチドを免疫学的態様で使用することが企図される場合,類似のアミノ酸での置換は親水性に基づいて効果的に行うことができる。蛋白質の最も高い局所的平均親水性は,その隣接するアミノ酸の親水性によって決定され,その免疫原性および抗原性,すなわち蛋白質の生体特性と相関関係を有する。
【0067】
以下の親水性の数値がそれらのアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパルテート(+3.0 ± 1);グルタメート(+3.0 ± 1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(-0.4);プロリン(-0.5 ± 1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);およびトリプトファン(-3.4)。類似する親水性の値に基づいて変更を行う場合,親水性の値が±2以内であるアミノ酸での置換が好ましく,特に好ましいのは±1以内,更に好ましくは±0.5以内である。親水性に基づいて一次アミノ酸配列からエピトープを同定してもよい。これらの領域は“エピトープコア領域”とも呼ばれる。
【0068】
当業者は所望されるアミノ酸置換(保存的置換か非保存的置換か)をそれらの置換が所望される際に決定できる。代表的なアミノ酸置換を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
本発明のポリペプチドはPgに対して反応性のある抗体で認識される抗原であってもよい。抗原は1つ以上のエピトープ(または抗原決定基)を含んでもよい。エピトープは直線状エピトープ,配列エピトープ,またはコンフォメーションエピトープであってもよい。本発明のポリペプチド内のエピトープはいくつかの方法によって同定できる。例えば米国特許第4,554,101号;JamesonおよびWolf, CABIOS 4:181-186 (1988)参照。例えば,本発明のポリペプチドを単離およびスクリーニングしてもよい。合わせるとポリペプチド配列全体を網羅するような一連の短鎖ペプチドをタンパク分解による開裂によって調製できる。例えば100量体のポリペプチドフラグメントで開始し,ELISAで認識されるエピトープの存在について各フラグメントを試験することができる。例えばELISAアッセイで,Pgポリペプチド(例えば100量体ポリペプチドフラグメント)を固相(例えばプラスチック製マルチウェルプレートのウェル)に結合させる。抗体群を標識し,固相に付加し,非特異的吸着が阻止されるような条件下で未標識の抗原に結合させ,未結合の抗体および他の蛋白質を洗浄除去する。抗体結合を,例えば無色の基質が有色の反応産物に変換されるような反応によって検出する。次いで漸進的に小さくした重複するフラグメントを同定された100量体から試験して,興味のエピトープのマッピングを行うことができる。
【0071】
ポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドは全ゲノムより小さいものを含み,RNA,一本鎖DNA,もしくは2本鎖DNA,またはそれらを組み合わせたもの,もしくは修飾したものであってもよい。ポリヌクレオチドは他の成分(例えば蛋白質および脂質)を含まないように単離することができる。単離されたポリヌクレオチドは他のポリヌクレオチドおよび生体分子から実質的に精製されている。好ましくはポリヌクレオチドは他のポリヌクレオチドおよび/または生体分子から60%,70%,80%,90%,95%,98%,99%,99.5%,またはそれ以上精製されている。本発明のポリヌクレオチドは上記のポリペプチド並びにそのフラグメントをコードする。本発明のポリヌクレオチドは配列番号1-166,227,および262で示すものおよびそのフラグメントも含む。これらのポリヌクレオチドを“ポリヌクレオチド配列番号”で表す。
【0072】
当業者は開示されている本発明のポリペプチド配列およびコドン表を用いて本発明のポリヌクレオチド配列を得ることができる。ポリヌクレオチドは天然に存在する配列またはポリヌクレオチドのものとは異なる天然に存在するポリヌクレオチドまたは配列を含んでもよい。本発明のポリヌクレオチドは天然に存在する核酸と異なるが,遺伝コードの縮重によって天然に存在するアミノ酸をコードするものであってもよい。それらのポリヌクレオチドは縮重変異体であり,当業者は配列番号167-226,228-261,および263-354をコードする全ての縮重変異ポリヌクレオチドの配列を決定できる。従って本明細書にはこれらの配列を記載しない。本発明のポリヌクレオチドは他の非相同ヌクレオチド配列(すなわち非相同ポリヌクレオチド),例えばリンカーをコードする配列,シグナル配列,非相同シグナル配列,TMR停止転移配列(stop transfer sequences),膜貫通ドメイン,または蛋白質精製に有用なリガンド(例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ,ヒスチジンタグ,および連鎖球菌プロテインA)を含んでもよい。本発明のポリヌクレオチドは他の相同ヌクレオチド配列(すなわち他のPgまたはPg由来配列)を含んでもよい。
【0073】
単離されたポリヌクレオチドは,天然に存在するゲノム中に存在する時は通常隣接している5'および3'隣接配列と直接隣接しない核酸分子である。従って単離されたポリヌクレオチドは,例えばベクター(例えばプラスミドまたはウィルスベクター)中に導入されたポリヌクレオチド,異種細胞のゲノムに(または同種細胞のゲノムであるが天然に存在する場合とは異なる位置で)導入されたポリヌクレオチド,および独立した分子として存在するポリヌクレオチド(例えばPCR増幅,化学合成,制限酵素消化,またはインビトロでの転写によって生成されるポリヌクレオチド)であってもよい。単離されたポリヌクレオチドは核酸分子,例えば融合蛋白質の生成等に使用できる更なるポリペプチド配列をコードするハイブリッドポリヌクレオチドの一部を構成する組換え核酸分子である。
【0074】
本発明のポリペプチドをコードする変性ヌクレオチド配列,並びにポリヌクレオチド配列番号で示すヌクレオチド配列と少なくとも約75,または約90,96,98,もしくは99%の同一性を有する相同変異ヌクレオチド配列およびその相補体も本発明に含まれる。配列の同一性%は“ポリペプチド”の項に記載するように算出できる。変性ヌクレオチド配列はポリペプチド配列番号で示すポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチドであるが,遺伝コードの縮重によって,ポリヌクレオチド配列番号で示される配列または天然に存在する核酸配列と核酸配列が異なる。生物学的に機能的なPgポリペプチドをコードするPgポリヌクレオチドの相補DNA(cDNA)分子もPgポリヌクレオチドである。本発明のポリヌクレオチドはポリヌクレオチド配列番号で示す核酸配列の少なくとも約5,10,15,50,100,200,250,300,400,500,または600個の連続するヌクレオチドを含んでもよい。
【0075】
本発明のポリヌクレオチドは感染した個体由来の生体サンプル(例えば歯垢,唾液,歯肉溝滲出液,痰,血液,血清,血漿,尿,糞便,脳脊髄液,羊水,創傷滲出液,または組織)中に存在する核酸配列から単離できる。ポリヌクレオチドは,例えば自動合成装置を用いて,実験室で合成することもできる。PCRのような増幅法を使用してポリペプチドをコードするゲノムDNAまたはcDNAのいずれかからポリヌクレオチドを増幅することができる。
【0076】
ポリヌクレオチドは1つ以上の発現制御配列(例えばプロモーター,複製起点,またはエンハンサー)を含んでもよい。本発明のポリヌクレオチドはベクター(例えば発現ベクター)中に存在してもよい。必要により,例えば複製起点,プロモーター,エンハンサー,または他の発現制御配列を含む発現ベクターにポリヌクレオチドをクローニングし,宿主細胞において本発明のポリヌクレオチドを発現させてもよい。ポリヌクレオチドを発現制御配列に機能的に結合させてもよい。これは発現制御配列がポリヌクレオチドを発現をさせるように結合される。発現ベクターは,例えばプラスミド(例えばpBR322,pUC,またはColE1)またはアデノウィルスベクター(例えばアデノウィルス2型ベクターまたは5型ベクター)であってもよい。必要により他のベクターを使用してもよく,それらには,限定されるわけではないがシンドビスウィルス,シミアンウィルス40,アルファウィルスベクター,ポックスウィルスベクター,並びにサイトメガロウィルスおよびレトロウィルスベクター,例えばマウス肉腫ウィルス,マウス乳腺癌ウィルス,マウス・モロニー白血病ウィルス,およびラウス肉腫ウィルスがある。本発明における使用に適したベクターには,例えば細菌ベクター,哺乳動物ベクター,ウィルスベクター(例えばレトロウィルス,アデノウィルス,アデノ関連ウィルス,ヘルペスウィルス,シミアンウィルス40(SV40),およびウシ乳頭腫ウィルスベクター),および昆虫細胞での使用にはバキュロウィルス由来ベクターがある。ミニクロモソーム,例えばMCおよびMC1,バクテリオファージ,ファージミド,酵母人工染色体,細菌人工染色体,ウィルス粒子,ウィルス様粒子,コスミド(ファージラムダcos部位を挿入したプラスミド),およびレプリコン(細胞中でそれ自体の制御下で複製が可能な遺伝要素)を使用することもできる。それらのベクター中のポリヌクレオチドをプロモーター(例えば発現が所望される細胞の型に基づいて選択される)に機能的に結合させることができる。発現制御配列に機能的に結合したポリヌクレオチドの調製および宿主細胞におけるそれらの発現の方法は当該分野で周知である。例えば米国特許第4,366,246号参照。
【0077】
本発明のポリヌクレオチドを含むベクター(例えば発現ベクター)を導入できる宿主細胞には,例えば原核細胞(例えば細菌細胞)および真核細胞(例えば酵母細胞;昆虫細胞;および哺乳動物細胞)がある。それらの宿主細胞は当業者に周知の多くの異なる起源,例えばthe American Type Culture Collection (ATCC), Rockville, Mdから得ることができる。本発明のポリヌクレオチドを導入した宿主細胞並びにその子孫は,たとえ突然変異のために親細胞と同一でなくても,本発明に含まれる。
【0078】
本発明のポリヌクレオチド(例えばポリヌクレオチドを含むベクターまたは裸のポリヌクレオチド)を細胞(例えば細菌,酵母,昆虫,または哺乳動物細胞)に,一時的または安定して導入する方法は当該分野で周知である。例えば標準的なCaCl2,MgCl2,またはRbCl法を用いる形質転換法,プロトプラスト融合法またはリン酸カルシウム沈殿を用いる裸の,もしくはカプセル封入した核酸のトランスフェクション,細胞融合,マイクロインジェクション,ウィルス感染,およびエレクトロポレーション。
【0079】
上記の系で生成したポリペプチドの単離および精製は,特定の系に適した慣例的な方法で行うことができる。例えば分離用クロマトグラフィーおよび抗体(例えばモノクローナルまたはポリクローナル抗体)を用いる免疫学的分離を使用することができる。
【0080】
ポリヌクレオチドは,例えば自動合成装置を用いて実験室で合成することができる。PCRのような増幅法を使用して,ポリペプチドをコードするゲノムDNAまたはcDNAのいずれかからポリヌクレオチドを増幅することができる。
【0081】
抗体
本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体,例えばモノクローナルおよびポリクローナル抗体,抗体フラグメント,および一本鎖抗体は本発明の一部である。抗体および抗原(例えば本発明のポリペプチドまたはポリペプチドフラグメント)が他の非特異的分子に対するよりも高い親和性で互いに結合する場合,それらは互いに特異的に結合する。例えば非特異蛋白質に対するよりも効率的に結合する抗原に対して産生させた抗体は,抗原に特異的に結合すると記述できる。
【0082】
抗体が分子と特異的に反応し,分子に特異的に結合する能力を有するとき,この抗体はこの分子“に対する”と記載する。エピトープとは抗体が結合できる任意の分子のある部分をいい,これもまた同抗体によって認識される。エピトープまたは“抗原決定基”は通常,分子の化学的に活性な表面基群(例えばアミノ酸または糖側鎖)から成り,特定の3次構造特性および特定の帯電性を有する。
【0083】
本発明のポリペプチドは少なくとも1つのエピトープを含む。エピトープはポリペプチドの抗原決定基である。本発明のポリペプチド内のエピトープはいくつかの方法によって同定できる。例えば米国特許第4,554,101号;JamesonおよびWolf, CABIOS 4:181-186 (1988)および上記の“ポリペプチド”の項を参照されたい。
【0084】
抗体は本発明のポリペプチド(例えば配列番号167-226,228-261,および263-354,並びに/またはそのフラグメント)に特異的に結合する無傷の免疫グロブリン分子,免疫グロブリン分子のフラグメント,または一本鎖抗体であってもよい。本発明の抗体は任意のクラスの抗体であってもよく,それらには例えばIgG,IgM,IgA,IgD,およびIgEがある。
【0085】
本発明の抗体はキメラ(例えば米国特許第5,482,856号参照),ヒト化(例えばJonesら, Nature 321:522 (1986);Reichmannら, Nature 332:323 (1988);Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593 (1992)参照),またはヒト抗体であってもよい。ヒト抗体の生成は,例えば直接的不死化,ファージディスプレー,トランスジェニックマウス,またはTrimera法で行うことができる(例えばReisenerら, Trends Biotechnol. 16:242-246 (1998)参照)。
【0086】
本発明の抗体フラグメントは,それらが誘導された由来の抗原(例えば本発明のポリペプチド)に選択的に結合する能力を保持しており,当該分野で周知の方法で調製できる。本発明のある態様では,抗体,抗体フラグメント,または一本鎖抗体は,本発明のポリペプチド(例えば配列番号167-226,228-261,および263-354,並びに/またはそのフラグメント)に特異的に結合する全ての抗体を含む。抗体のフラグメントは無傷抗体の抗原結合部位または可変領域を含む無傷抗体の一部分であり,同部分は無傷抗体のFc領域の定常重鎖ドメインを含まない。抗体フラグメントの例にはFab,Fab',Fab'-SH,およびF(ab')2フラグメントがある。
【0087】
本発明の抗体を生成するのに使用できる抗原には,本発明のポリペプチドおよびポリペプチドフラグメントがある。本発明の抗体の生成は,例えば標準的な抗体生成法で,免疫原として配列番号167-226,228-261,および263-354で示すポリペプチド中に存在するエピトープを含むポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントを使用することによって行うことができる(例えばKohlerら, Nature, 256:495, 1975;Ausubelら, (1992) Current Protocols in Molecular Biology, John Wylie and Sons, Inc. New York, N.Y.;HarlowおよびLane編, (1988) Current Edition, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, N.Y参照)。動物の免疫化に使用するポリペプチドは標準的な組換え,化学合成,または精製法によって得ることができる。当該分野で知られるように,免疫原性を向上するために抗原をキャリアー蛋白質にコンジュゲートさせることができる。一般に使用されるキャリアーにはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH),サイログロブリン,ウシ血清アルブミン(BSA),および破傷風トキソイドがある。次いでカップリングしたペプチドを使用して動物(例えばマウス,ラット,またはウサギ)を免疫化する。それらのキャリアーに加えて,周知のアジュバントを抗原と共に投与し,強い免疫応答の誘導を促進できる。
【0088】
抗体は好適な実験動物においてインビボで,または組換えDNA技術を用いてインビトロで生成することができる。抗体の調製およびキャラクタライズの方法は当該分野で周知である。例えばDean, Methods Mol. Biol. 80:23-37 (1998);Dean, Methods Mol. Biol. 32:361-79 (1994);Baileg, Methods Mol. Biol. 32:381-88 (1994);Gullick, Methods Mol. Biol. 32:389-99 (1994);Drenckhahnら, Methods Cell. Biol. 37:7-56 (1993);Morrison, Ann. Rev. Immunol. 10:239-65 (1992);Wrightら, Crit. Rev. Immunol. 12:125-68(1992)参照。例えばポリクローナル抗体は,本発明のポリペプチドを動物(例えばヒトもしくは他の霊長類,マウス,ラット,ウサギ,モルモット,ヤギ,ブタ,ウシ,ヒツジ,ロバ,またはウマ)に投与することによって生成できる。免疫化した動物由来の血清を回収し,例えば硫酸アンモニウム沈殿,次いでクロマトグラフィー(例えばアフィニティークロマトグラフィー)によって抗体を血漿から精製する。ポリクローナル抗体の生成および加工のための技術は当該分野で周知である。
【0089】
本発明のポリペプチド上に存在するエピトープに対するモノクローナル抗体も容易に生成できる。例えば本発明のポリペプチドで免疫化した哺乳動物(例えばマウス)由来の正常なB細胞を,例えばHAT感受性マウス骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを生成することができる。Pg特異的抗体を生成するハイブリドーマはRIAまたはELISAを用いて同定し,半固体寒天でのクローニングまたは限外希釈によって単離することができる。Pg特異的抗体を生成するクローンは別のラウンドのスクリーニングによって単離する。モノクローナル抗体の特異性についてのスクリーニングは,標準的な方法を用い,例えば本発明のポリペプチドをマイクロタイタープレートに結合させ,ELISAアッセイでモノクローナル抗体の結合を測定することによって行うことができる。モノクローナル抗体の生成および加工法は当該分野で周知である。例えばKohlerおよびMilstein, Nature, 256:495 (1975)参照。モノクローナル抗体の特定のアイソタイプは,最初の融合体からの選択によって直接調製するか,またはシブ(sib)セレクション法を用いてクラススイッチ変異体を単離することによって異なるアイソタイプのモノクローナル抗体を分泌する親ハイブリドーマから二次的に調製することができる。例えばSteplewskiら, P.N.A.S. U.S.A. 82:8653 1985;Spriaら, J. Immunolog. Meth. 74:307, 1984参照。本発明のモノクローナル抗体は組換えモノクローナル抗体であってもよい。例えば米国特許第4,474,893号;米国特許第4,816,567号参照。本発明の抗体は化学的に構築することもできる。例えば米国特許第4,676,980号参照。
【0090】
ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の精製は,例えば抗体を産生させた本発明のポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントを含むマトリクスへの結合およびそれからの溶出によって行うことができる。更なる抗体の精製および濃縮方法は当該分野で周知であり,本発明の抗体を用いて実施できる。本発明のポリペプチドに対応する抗イディオタイプ抗体も本発明に含まれ,標準的な方法を使用して生成できる。
【0091】
更に本発明の抗体,抗体フラグメント,および一本鎖抗体を用いて,免疫アフィニティーカラムによってPg生物体またはPg抗原を単離することができる。抗体は,その免疫選択的活性を保持するように,例えば吸着または共有結合によって固相支持体に固定できる。必要により,抗体の抗原結合部位を利用可能なままにするようにスペーサー基を含ませることができる。次いで固定した抗体を使用してサンプル,例えば生体サンプル(例えば唾液,歯垢,歯肉溝滲出液,痰,血液,尿,糞便,脳脊髄液,羊水,創傷滲出液,または組織)からPg生物体またはPg抗原を結合させることができる。結合したPg生物体またはPg抗原を,例えばpHの変更によってカラムマトリクスから回収する。
【0092】
本発明の抗体を免疫位置決定の研究に使用し,種々の細胞事象または生理学的条件での本発明のポリペプチドの存在および分布を分析することもできる。抗体を使用して受動免疫に関与する分子の同定および非蛋白質抗原の生合成に関与する分子の同定を行うこともできる。そのような分子の同定はワクチンの開発に有用でありうる。本発明の抗体(例えばモノクローナル抗体および一本鎖抗体)を使用してPgに起因する疾病の回復過程のモニタリングを行うこともできる。動物由来の試験サンプル中のPg蛋白質に対するPg抗体の増加または減少を測定することによって,障害の改善を目的とする特定の治療計画が有効であるかどうかを確認できる。抗体は,例えば直接的な結合アッセイ(例えばRIA,ELISA,またはウェスタンブロットアッセイ)を用いて検出および/または定量できる。
【0093】
本発明のアプタマー
アプタマーは特定の標的分子(例えば蛋白質またはポリペプチド)に高い親和性および特異性で結合できる核酸分子(例えばDNAもしくはRNA,またはそれらの類似体)である。例えばTuerkおよびGold, Science 249:505 (1990);EllingtonおよびSzostak, Nature, 346:818 (1990)参照。
【0094】
アプタマーは蛋白質標的に結合し,蛋白質標的と他の蛋白質との相互作用を阻害し,そして/または蛋白質標的による触媒作用を阻害する。例えばBlindら, Proc. Natl. Acad. Sci., 96:3606-3610 (1999);米国特許第5,756,291号;米国特許第5,840,867号;Osborneら, Curr. Opin. Chem. Biol. 1:5-9 (1997)参照。
【0095】
本発明のアプタマーは,他の非特異的物質がアプタマーと複合体を形成しない条件下において,配列番号167-226, 228-261,および263-354に示すポリペプチド並びに/またはそのフラグメントと複合体を形成する特異的結合領域を有する。本発明のアプタマーはまた,他の非特異的物質がアプタマーと複合体を形成しない条件下において,配列番号167-226, 228-261,および263-354並びに/またはそのフラグメントを含む蛋白質と複合体を形成できる。結合の特異性は,そのリガンド(この場合は配列番号167-226, 228-261,および263-354,並びに/またはそのフラグメント)に関するアプタマーの解離定数(Kd)が,他の非特異的物質に関するアプタマーの解離定数と比較して有意な場合であると定義される。一般にアプタマーのそのリガンドに関するKdは,同アプタマーの非特異的物質に関するKdの約10倍低い。他の態様では,Kdはアプタマーの非特異的物質に関するKdより約50倍,100倍,または200倍低い。アプタマーは例えば10,20,50,100,150,200,300,400,または500ヌクレオチド長であってもよい。
【0096】
アプタマーは,例えば指数関数的濃縮(SELEX)法によるリガンドの選択的強化を用いて,特定のポリペプチドまたは蛋白質標的に関して同定することができる。例えばWilsonおよびSzoztak, Ann. Rev. Biochem. 68:611-647 (1999);Sun, Curr. Opin. Mol. Ther. 2:100-5 (2000);米国特許第5,861,254号;米国特許第5,475,096号;米国特許第5,595,877号;米国特許第5,660,985号参照;また,米国特許第6,180,348号;Bockら, Nature, 355:564-566 (1990);Conradら, Methods in Enzymol., 267:336-367 (1996)も参照されたい。
【0097】
Pg感染の診断およびPg検出の方法
本発明の抗体,抗体フラグメント,一本鎖抗体,ポリペプチド,およびポリヌクレオチドを使用して試験サンプル(例えば生体サンプル)中のPg生物体,Pgポリヌクレオチド,Pgポリペプチド,およびPg特異的抗体を検出できる。
【0098】
生体サンプルは,例えば歯垢,唾液,歯肉溝滲出液,痰,血液,血清,血漿,尿,糞便,脳脊髄液,羊水,創傷滲出液,または組織であってもよい。
【0099】
本発明の抗体,抗体フラグメント,または一本鎖抗体を使用してPg感染,Pgポリペプチドもしくはそのフラグメントおよび/またはPg生物体の存在を検出でき,これは抗体-抗原複合体(すなわち免疫複合体)の形成が可能である条件下で,Pgポリペプチド,そのフラグメント,またはPg生物体(すなわち抗原)を含む疑いのある試験サンプルを本発明の抗体と接触させることによって行う。抗体-抗原複合体の量は当該分野で周知の方法で測定できる。対照サンプル中で形成されるより高いレベルであれば,これは試験サンプル中のPg感染,並びに/またはPgポリペプチド,そのフラグメント,および/もしくはPg生物体の存在を示す。
【0100】
抗体,抗体フラグメント,または一本鎖抗体を使用して試験サンプル中の抗原を検出する方法は当該分野で周知であり,それらの方法のいずれでも使用できる。本発明の抗体をインビトロまたはインビボで免疫学的診断に使用できる。抗体は,例えばそれらが液相中に存在するか固相キャリアーに結合しているような免疫アッセイにおいて使用するのに好適である。本発明の抗体,そのフラグメント,および/または一本鎖抗体を支持体に結合させ,PgまたはPg抗原の存在の検出に使用することができる。支持体には,例えばガラス,ポリスチレン,ポリプロピレン,ポリエチレン,デキストラン,ナイロン,アミラーゼ,天然型および修飾型セルロース,ポリアクリルアミド,アガロース,およびマグネタイトがある。
【0101】
当該分野で周知の任意の標準的な方法を用いて,それらの免疫アッセイに使用される抗体に検出可能な標識(例えば酵素,放射性元素,蛍光化合物,コロイド金属,化学発光化合物,リン光性化合物,または生物発光化合物)を施与することができる。あるいはまた,抗体は未標識であってもよい。本発明の抗体を使用できる免疫アッセイの例には,例えば直接または間接的フォーマットを使用して実施する競合および非競合免疫アッセイがある。それらの免疫アッセイの例にはラジオイムノアッセイ(RIA)およびサンドイッチアッセイ(例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))がある。本発明の抗体を用いるPgポリペプチドの検出は免疫アッセイを使用して行うことができ,これは順向き,逆向き,または同時式で行われ,それらには生理学的サンプルに対する免疫組織化学アッセイがある。他の免疫アッセイフォーマットは当該分野で知られており,本発明に使用できる。
【0102】
免疫アッセイは1つの抗体またはいくつかの抗体を使用できる。免疫アッセイを,例えばPgエピトープに対するモノクローナル抗体,1つのPgポリペプチドのエピトープに対するるモノクローナル抗体の組み合わせ,異なるPgポリペプチドのエピトープに対するモノクローナル抗体,同じPg抗原に対するポリクローナル抗体,異なるPg抗原に対するポリクローナル抗体,またはモノクローナル抗体とポリクローナル抗体の組み合わせを使用できる。
【0103】
本発明の抗体は,Pg感染した疑いのある動物から試験サンプルを採取することによるPg感染の診断法に使用することができる。抗体-抗原複合体(すなわち免疫複合体)の形成が可能な条件下で試験サンプルを本発明の抗体と接触させる。抗体-抗原複合体の存在および/または量は当該分野で周知の方法で測定できる。複合体の存在および/または対照サンプルで形成されるより高い複合体のレベルはPg感染を示す。
【0104】
本発明のある態様は試験サンプル中のPgまたはPgポリペプチドの存在の検出法を提供する。方法は,抗体,抗体フラグメント,または一本鎖抗体とPgまたはPgポリペプチドとの間での免疫複合体の形成が可能な条件下で,試験サンプルをPgまたはPgポリペプチドに特異的に結合する本発明の抗体,抗体フラグメント,または一本鎖抗体と接触させることを含む。免疫複合体の検出は試験サンプル中のPgまたはPgポリペプチドの存在を示す。検出されたPgポリペプチドは動物の感染の際,インビボで発現されうる。
【0105】
本発明の別の態様では,被験者におけるPg感染の検出法を提供する。この方法は,被験者由来の生体サンプルを取得し,生体サンプル中に存在するポリペプチドとPg抗体との間での免疫複合体の形成が可能な条件下で配列番号167-226,228-261,および263-354から成る群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも約5個の連続するアミノ酸を含む免疫原性ポリペプチドと生体サンプルとを接触させることを含む。免疫複合体を検出する。免疫複合体の検出は被験者におけるPg感染を示す。その代わりに,またはそれに加えて,免疫複合体の量を検出し,形成された複合体の量を対照サンプルと比較する。生体サンプル中の免疫複合体の量が対照サンプルより高ければ,これは被験者におけるPg感染を示している。更に,免疫複合体中に存在する抗体のアイソタイプ(単数または複数),または対照と比較した免疫複合体中に存在するアイソタイプの比率を用いてPg感染を示すことができる。
【0106】
本発明の別の態様では,被験者におけるPgの検出法を提供する。方法は,被験者由来の生体サンプルを得,抗体,抗体フラグメント,または一本鎖抗体と生体サンプル中に存在するPgポリペプチドとの間での免疫複合体の形成が可能な条件下で本発明の抗体,抗体フラグメント,または一本鎖抗体と生体サンプルとを接触させることを含む。免疫複合体を検出する。免疫複合体の検出は被験者におけるPg感染を示す。その代わりに,またはそれに加えて,免疫複合体の量を検出する。形成された複合体の量を対照サンプルと比較する。生体サンプル中の免疫複合体の量が対照サンプル中の量より多ければ,これは被験者におけるPg感染を示している。
【0107】
本発明の別の態様では,本発明のポリペプチドまたはそのフラグメントをPg感染またはPgに特異的な抗体もしくは抗体フラグメントの存在を検出する方法に使用することができ,これは抗体-抗原複合体(すなわち免疫複合体)の形成が可能な条件下でPg抗体または抗体フラグメントを含有する疑いのある試験サンプルを本発明のポリペプチドまたはそのフラグメント(すなわち抗原)と接触させることによって行う。ポリペプチドまたはフラグメントは標識してもしなくてもよい。抗体-抗原複合体の存在は当該分野で周知の方法で測定できる。免疫複合体の検出は試験サンプル中のPg抗体またはPg抗体フラグメントの存在を示す。対照反応を完了させることもでき,試験サンプル中の免疫複合体のレベルが対照サンプル中で形成されるより高ければ,これは試験サンプルにおけるPg感染またはPgに特異的な抗体の存在を示している。ポリペプチド検出に関して既に記載した方法および技術と同じものをPg抗体の検出に使用できる。
【0108】
本発明のポリヌクレオチドまたはそのフラグメントを,例えばプローブまたはプライマー(例えばPCRプライマー)として使用し,試験サンプル(例えば生体サンプル)中のPgポリヌクレオチドの存在を検出できる。それらのプローブおよびプライマーがPgポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズする能力により,所定のサンプル中の相補的配列の存在の検出に使用することが可能となる。サンプル由来のポリヌクレオチドを,例えばゲル電気泳動もしくは他のサイズ分離法に施与するか,またはサイズ分離を行わずに固定化することができる。ポリヌクレオチドプローブまたはプライマーは標識してもしなくてもよい。好適な標識,並びにプローブおよびプライマーの標識方法は当該分野で周知であり,それらには例えばニックトランスレーションまたはキナーゼによって導入した放射性標識,ビオチン標識,蛍光標識,化学発光標識,生物発光標識,金属キレート標識,および酵素標識がある。サンプル由来のポリヌクレオチドを好適なストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下でプローブまたはプライマーと接触させる。
【0109】
本発明のある態様では,試験サンプル中の第1のPgポリヌクレオチドの存在の検出法を提供する。方法はハイブリダイゼーション条件下で第1のポリヌクレオチドを含有する疑いのある試験サンプルを第2のポリヌクレオチドと接触させることを含む。第2のポリヌクレオチドは,配列番号167-226,228-261,および263-354から成る群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも約5個の連続するアミノ酸を含む単離された免疫原性ポリペプチドをコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチドである。ハイブリダイズした第1および第2のポリヌクレオチド複合体を検出する。第1および第2のポリヌクレオチド複合体の存在は試験サンプル中の第1のポリヌクレオチドの存在を示す。
【0110】
本発明のある態様では,被験者におけるPgの検出法を提供する。方法は被験者から生体サンプルを採取し,本発明のポリヌクレオチドと生体サンプル中に存在するPgポリヌクレオチドとの間でのハイブリダイズ複合体の形成が可能である条件下で生体サンプルを本発明のポリヌクレオチドと接触させることを含む。ハイブリダイズした複合体の量を検出し,必要により対照サンプルと比較する。ハイブリダイズした複合体が存在するか,または生体サンプル中のハイブリダイズ複合体の量が対照サンプル中のものより多ければ,これは被験者におけるPg感染を示す。
【0111】
適用によって,種々のハイブリダイゼーション条件を使用してプローブまたはプライマーの標的配列への選択性の度合いを変化させることができる。高度の選択性が必要とされる適用では,相対的にストリンジェントな条件を使用でき,これは例えば低塩濃度および/または高温条件で,例えば約0.02Mから約0.15Mの塩濃度,約50℃から約70℃の温度で行うことができる。より低い選択性が必要とされる適用では,より低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を使用できる。例えば約0.14Mから約0.9Mの塩濃度,約20℃から約55℃の温度である。プローブまたはプライマーおよび試験サンプルからの相補的ポリヌクレオチドを含むハイブリダイズ複合体の存在は,サンプル中のPgまたはPgポリヌクレオチド配列の存在を示す。
【0112】
本発明の検出法に使用される物質はキットの形態であってもよい。キットは方法に使用される1つ以上の要素を含んでもよい。例えばキットは1つ以上の本発明の抗体,抗体フラグメント,一本鎖抗体,ポリペプチド,またはポリヌクレオチドを1つ以上の容器内に含んでもよい。キットおよび容器(単数または複数)にその内容物を表示し,キットは容器内にそれらの要素の使用説明書を含んでもよい。キットの構成物は,例えば液体または凍結乾燥状態であってもよい。
【0113】
治療および予防の方法
被験者中でPgにより引き起こされる疾病および症状を,例えば,本発明のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドおよび/またはアプタマーを被験者に投与するか,またはこれを用いて被験者を免疫することにより,被験者において治療および/または予防することができる。
【0114】
Pgにより引き起こされる疾病としては,例えば,早期発症型歯周炎,例えば,限局性および汎発性思春期前歯周炎,限局性および汎発性若年性歯周炎,および急速進行性または抗療性の成人歯周炎,心内膜炎,甲状腺膿瘍,尿路感染症,脳膿瘍,椎骨骨髄炎,および心血管疾病が挙げられる。
【0115】
本発明のポリペプチド,ポリヌクレオチド,抗体,抗体フラグメント,または一本鎖抗体は,被験者,例えば哺乳動物,例えば,マウス,ウサギ,モルモット,マカクザル,ヒヒ,チンパンジー,ヒト,ウシ,ヒツジ,ブタ,ウマ,イヌ,ネコに,またはニワトリまたはアヒル等の動物に投与することができる。
【0116】
本発明の1つの態様は,抗体,抗体フラグメント,一本鎖抗体,ポリヌクレオチドまたはそのフラグメント,ポリペプチドまたはそのフラグメントおよび薬学的に許容しうる担体を含む組成物を提供する。
【0117】
本発明の1つの態様は,被験者における歯周病およびその症状の治療または予防において用いるための組成物を提供する。この組成物は,ある量,例えば免疫学的に有効な量の本発明のポリペプチド(例えば,配列番号167−226,228−261,および263−354),本発明のポリヌクレオチド,または抗体,抗体フラグメント,または一本鎖抗体またはこれらのフラグメント,および1またはそれ以上の薬学的に許容しうる担体を含む。治療とは,1またはそれ以上の歯周病症状の軽減,改善または排除である。
【0118】
免疫学的に有効な量とは,免疫系を直接的にまたは間接的に刺激するのに十分な量である。この免疫系の刺激は,Pg媒介性疾病,例えば歯周病,またはその症状に対する免疫を付与することができる。有効量は,疾病の重篤度,患者の年齢,性別および体重,ならびに患者の一般的健康状態,および担当医師に知られる他の検討事項により決定される。
【0119】
本発明の組成物を用いて,歯周病および症状に対する免疫を誘発することができる。本発明の抗体,抗体フラグメント,一本鎖抗体またはアプタマーを被験者に投与すると,体液性免疫を得ることができる。この受動免疫は,実質的に即時的な防御を提供する。能動免疫は,本発明のポリペプチド,ポリヌクレオチドおよび/またはそのフラグメントを被験者に投与することにより達成することができる。
【0120】
本発明はまた,治療上有効量の本発明の抗体,抗体フラグメント,または一本鎖抗体,本発明のポリヌクレオチド,ポリペプチド,またはアプタマーを,任意に1またはそれ以上の薬学的に許容しうる担体とともに含む,1またはそれ以上の歯周病症状を治療または予防に使用するための組成物を提供する。そのような組成物は,1またはそれ以上の歯周病症状の治療または予防のために被験者に投与することができる。治療上有効量とは,Pgにより引き起こされる疾病の症状を予防または軽減するのに,または被験者におけるPg生物の量を低減させるのに有効な量である。
【0121】
本発明はまた,免疫学的に有効な量の,配列番号167−226,228−261,および263−354に示されるポリペプチドまたはそれらのフラグメント,および任意に1またはそれ以上の薬学的に許容しうる担体を含む,被験者において歯周病症状の治療または予防に用いるための組成物を提供する。任意に,アジュバントが組成物中に存在していてもよく,または,これを組成物の前または後に投与してもよい。そのような組成物を,1またはそれ以上の歯周病症状の治療または予防のために被験者に投与することができる。
【0122】
本発明の1またはそれ以上のポリペプチドを投与すると,抗Pg抗体が産生され,歯周病およびその症状を軽減および/または予防することができる。
【0123】
本発明のポリペプチドを改変して,その免疫原性を高めることができる。例えば,ポリペプチドを担体,例えば,コレラトキシンB鎖またはモノクローナル抗体とコンジュゲートするかまたはカップリングさせることができる。ポリペプチドは,アルミニウム塩で沈殿させるか,またはホルムアルデヒドまたは他のアルデヒドを用いて架橋することができる。ポリペプチドは,生理学的に許容しうる希釈剤,例えば,水,リン酸緩衝化食塩水,または食塩水と混合することができる。本発明の組成物はさらにアジュバントを含んでいてもよい。
【0124】
本発明はさらに,免疫学的に有効な量の,配列番号1−166,227,および262に示される1またはそれ以上のポリヌクレオチド,配列番号167−226,228−261,および263−354に示される1またはそれ以上のポリペプチドまたはそのフラグメントをコードする1またはそれ以上のポリヌクレオチド,および任意に1またはそれ以上の薬学的に許容しうる担体を含む,1またはそれ以上の歯周病症状の治療または予防において用いるための組成物を提供する。そのような組成物は,1またはそれ以上の歯周病症状の治療または予防のために被験者に投与することができる。
【0125】
本発明の1つの態様においては,本発明のポリヌクレオチドおよび本発明のアプタマーを含む種々のポリヌクレオチドコンストラクトを,本発明のポリヌクレオチドを被験者にデリバリーする遺伝子治療プロトコルの一部として用いることができる。例えば,ポリペプチドのインビボでのトランスフェクションおよび発現に発現ベクターを用いることができる。
【0126】
ポリヌクレオチドを被験者に注射することは,構築および修飾が単純であるという実用的な利点を有する。さらに,ポリヌクレオチドの注射により宿主においてポリペプチドが合成される。すなわち,ポリペプチドは,天然の翻訳後修飾,構造,およびコンフォメーションをもって宿主免疫系に提示される。ポリヌクレオチドは,“裸のDNA”として被験者にデリバリーすることができる。
【0127】
本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドならびにそれらのフラグメントを用いて,宿主において免疫応答を誘発させることができる。免疫原性ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは,動物において免疫応答を誘導しうる本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドである。本発明の免疫原性ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは,1つの結果としてPg感染の影響を軽減または予防する免疫応答が生ずるように,動物の免疫系を感作するのに特に有用である。動物モデルにおける免疫応答の誘発は,例えば,最適投与量または投与経路を決定するのに有用でありうる。免疫応答の誘発はまた,Pgにより引き起こされる疾病または感染の治療,予防または軽減のために用いることができる。免疫応答には,体液性免疫応答または細胞媒介性免疫応答,またはこれらの組み合わせが含まれる。免疫応答はまた,例えば,デフェンシンの産生を促進することにより,全身性宿主応答を促進することを含むことができる。
【0128】
動物によるPgに対する抗体タイターの生成は,感染からの防御および感染のクリアランスに重要でありうる。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドをデリバリーした後の抗体タイターの検出および/または定量を用いて,抗体タイターを誘発するのに特に有効なエピトープを同定することができる。Pgに対する強い抗体応答を引き起こすエピトープは,異なる長さのPgポリペプチドに対して抗体を誘発させることにより同定することができる。次に,特定のポリペプチドエピトープにより誘発された抗体を,例えば,ELISAアッセイを用いて試験して,いずれのポリペプチドが強い応答を生成するのに最も有効なエピトープを含むかを決定することができる。次に,これらのエピトープを含むポリペプチドまたは融合蛋白質,またはエピトープをコードするポリヌクレオチドを構築し,これを用いて強い抗体応答を誘発することができる。
【0129】
薬学的に許容しうる組成物または処方は,細胞または被験者に投与するのに適した形態である。適当な形態は,部分的には,用途および導入の経路に依存する。そのような形態は,組成物または処方が標的細胞または臓器に到達することを妨げるものであってはならない。例えば,血流中に注入される薬理学的組成物は可溶性でなければならない。他の因子は当該技術分野において知られており,毒性および形態などの,組成物または処方がその効果を発揮することを妨げることを考慮することを含む。本発明はまた,所望の化合物を薬学的に許容しうる担体,希釈剤,添加物,賦形剤またはアジュバント中に含む,保存または投与用に調製される薬学的に許容しうる組成物を含む。"薬学的に許容しうる担体,希釈剤,添加物,賦形剤およびアジュバント"との用語は,活性成分の効率的なデリバリーを助けることができる,不活性な,毒性のない任意の物質を意味する。
【0130】
治療用途に用いるための許容しうる担体または希釈剤は,医薬の技術分野においてよく知られており,例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro edit.1985)(本明細書の一部としてここに引用する)に記載されている。例えば,保存剤,安定剤,染料,および風味剤を用いることができる。これらには,安息香酸ナトリウム,ソルビン酸,およびp−ヒドロキシ安息香酸のエステルが含まれる。さらに,抗酸化剤および懸濁剤を用いてもよい。
【0131】
担体それ自体は宿主に有害な抗体の生成を誘導すべきではない。それらの担体には,限定されるわけではないが,大型で代謝が遅い巨大分子(例えば蛋白質,多糖,例えばラテックス機能性化セファロース,アガロース,セルロース,セルロースビーズなど),ポリ乳酸,ポリグリコール酸,重合アミノ酸(例えばポリグルタミン酸,ポリリジンなど),アミノ酸コポリマー,ペプトイド,リピトイド,および不活性無毒性ウィルス粒子または細菌細胞等が含まれる。リポソーム,ヒドロゲル,シクロデキストリン,生分解性ナノカプセル,および生物接着性剤も本発明の組成物の担体として使用できる。
【0132】
薬学的に許容しうる塩も本発明の組成物に使用することができ,それらは例えば,無機塩(例えば塩酸塩,臭化水素酸塩,リン酸塩,または硫酸塩),ならびに有機酸の塩(例えば酢酸塩,プロピオン酸塩,マロン酸塩,または安息香酸塩)である。特に有用な蛋白質基質は,血清アルブミン,キーホールリンペットヘモシアニン,免疫グロブリン分子,サイログロブリン,オボアルブミン,破傷風トキソイド,および当業者に周知の他の蛋白質である。本発明の組成物は液体または賦形剤,例えば水,食塩水,リン酸バッファー食塩水,リンガー液,ハンクス液,グルコース,グリセロール,デキストロース,マロデキストリン,エタノールなど(単独で,または組み合わせて),並びに,例えば湿潤剤,乳化剤,浸透圧調整剤,界面活性剤,またはpH調整剤などの物質を含有することもできる。更なる活性剤,例えば殺菌剤を使用することもできる。本発明のポリペプチド,ポリヌクレオチド,抗体,一本鎖 抗体 およびこれらのフラグメントおよびアプタマーは,多数のデリバリー経路によりデリバリーすることができる。
【0133】
薬学的に許容しうる処方は,例えば,直接注入により,または注入ポンプを用いることにより局所的にデリバリーすることができる。直接注入, 例えば皮下,筋肉内,または皮膚内への注入は,標準的な針とシリンジの方法論を用いて,または例えばConry et al.,1999,Cliva.Cancer Res.,5,2330−2337およびBarry et al.,国際公開WO99/31262に記載される無針手法により,行うことができる。
【0134】
ポリヌクレオチドは,例えば注入により被験者に直接投与し,蛋白質として発現させることができる。DNAまたはRNAは,デリバリー用ベヒクル(例えば,ウイルス,細菌,リポソームおよび金ビーズ)を伴うものでもよく,または裸であってもよい(トランスフェクション促進蛋白質,ウイルス粒子,リポソーム処方,荷電した脂質およびリン酸カルシウム沈殿を伴わない)。ポリヌクレオチドは,任意に,プロモーター,例えばウイルスプロモーターを含むことができる。被験者においてポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドが産生され,その結果,免疫応答が生ずる。ポリヌクレオチドを宿主細胞にデリバリーする方法は以下に記載されている:Akhtar et al.,1992,Trends Cell Bio.,2,139;Delivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics,ed.Akhtar,1995,Maurer et al.,1999,Mol.Membr.Biol.,16,129−140;Hofland and Huang,1999,Handb.Exp.Pharmacol.,137,165−192;およびLee et al.,2000,ACS Symp.Ser.,752,184−192。ポリヌクレオチドは,当業者に知られる種々の方法により,例えば,限定されないが,リポソーム中に封入することにより,イオノトホレシスにより,または,他のデリバリー用ベヒクル,例えばハイドロゲル,シクロデキストリン,生物分解性ナノカプセル,および生物接着性マイクロスフェア等に取り込ませることにより,または蛋白質性ベクター(O’Hare and Normand,国際公開WO00/53722)により,細胞に投与することができる。あるいは,ポリヌクレオチド/ベヒクルの組み合わせを直接注入により,または注入ポンプを用いることにより局所的にデリバリーする。
【0135】
本発明のポリヌクレオチド分子の直接注入は,標準的な針とシリンジの方法論を用いて,または例えばConry et al.,1999,Cliva.Cancer Res.,5,2330−2337およびBarry et al.,国際公開WO99/31262に記載される無針手法により,皮下,筋肉内,または皮膚内に行うことができる。本発明の分子は医薬品として用いることができる。浸透圧ポンプ(Chun et al.,1998,Neuroscience Letters,257,135−138,D’Aldin et al.,1998,Mol.Brain Research,55,151−164,Dryden et al.,1998,J.Endocrinol.,157,169−175,Ghirnikar et al.,1998,Neuroscience Letters,247,21−24を参照),または直接注入(Broaddus et al.,1997,Neurosurg.Focus,3,article 4)手法を用いてもよい。他のデリバリー経路には,限定されないが,経口(錠剤または丸薬の形)および/または鞘内デリバリー(Gold,1997,Neuroscience,76,1153−1158)が含まれる。
【0136】
弱毒化ウイルスまたは細菌は,本発明のポリペプチドを発現するよう弱毒化ウイルスまたは細菌を一般的に改変することにより,本発明において用いることができる。次にこの改変されたベクターを被験者にデリバリーすると,被験者において免疫応答が生ずるように,ポリヌクレオチドがインビボで産生される。ポリヌクレオチド分子は当該技術分野において知られる標準的な方法により微生物中に導入することができる。例えば,米国特許5,866,136および6,025,164を参照。
【0137】
本発明のポリヌクレオチドはまた,本発明のポリペプチドを植物に製造させるために,植物のゲノム中に含ませてもよい。次に遺伝的に改変した植物を被験者が消費することにより,本発明のポリペプチドを摂取し,免疫応答が生成する。可食植物ワクチンは,例えば,WO99/54452に記載されている。可食ワクチンは,例えば遺伝的に改変された植物を消費することにより,経口で投与する。遺伝的に改変された植物は,植物の一部,抽出物,ジュース,液体,粉体,または錠剤の形態でありうる。可食ワクチンはまた,経鼻経路により投与してもよい。
【0138】
本発明の組成物は,全身投与により被験者にデリバリーしてもよい。全身投与とは,インビボでの全身吸収,または血流中への薬剤の蓄積の後の全身分配である。全身吸収につながる投与経路としては,限定されないが,静脈内,皮下,腹膜内,吸入,経皮,経口,肺内および筋肉内が挙げられる。
【0139】
本発明の組成物およびその処方は,1回投与単位処方で,経口で,局所的に,非経口で,粘膜に,吸入またはスプレーにより,または直腸に(座薬として)投与することができる。本明細書において用いる場合,非経口との用語には,経皮,皮下,血管内(例えば静脈内),皮膚内,筋肉内,肺内,腹膜内,または鞘内注射または注入手法等が含まれる。本発明の薬学的に許容しうる処方は,リポソームデリバリーメカニズムにより被験者にデリバリーしてもよい。リポソームを形成する標準的なプロトコルにしたがうことができる。投与方法の組み合わせを使用してもよい。
【0140】
ポリペプチド,ポリヌクレオチド,または抗体,またはこれらの組み合わせは,Pgに感染していない動物に投与してもよく,Pgに感染した動物に投与してもよい。
【0141】
必要により,リンパ球に対する免疫原提示を改良する共刺激分子(例えばB7−1またはB7−2),またはサイトカイン(MIP1α,GM−CSF,IL−2,およびIL−12)を本発明の組成物に含有させることができる。必要により,アジュバントを組成物に含有させることもできる。アジュバントは特異的免疫応答を非特異的に増加させるために使用できる物質である。一般に,アジュバントおよび本発明のポリペプチドは混合した後に免疫系に提示するか,または別々に,しかし動物の同じ部位に提示する。アジュバントは,例えば以下を含有することができる:オイルアジュバント(例えばフロイントの完全および不完全アジュバント)金属塩(例えばAlK(SO42;AlNa(SO42,AlNH4(SO4),シリカ,アラム,Al(OH)3,およびCa3(PO42),ポリヌクレオチド(すなわちPolyicおよびポリAU酸),およびある種の天然物質(例えば結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のワックスD,並びにコリネバクテリウム・パルヴム(Corynebacterium parvum),百日咳菌(Bordetella pertussis),およびブルセラ菌属のメンバーに見られる物質)。使用できるアジュバントには,限定される訳ではないが以下がある:MF59−0,水酸化アルミニウム,N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP),N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP11637,ノル−MDPとも呼ばれる),N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP19835A,MTP−PEと呼ばれる),およびRIBIで,細菌から抽出された3つの成分,モノホスホリルリピッドA,トレハロースジミコレート,および細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を2%スクアレン/TWEEN80エマルジョンに混合して含有するもの。抗原性蛋白質−アジュバントの組み合わせについてのさらなる説明は,WO99/54452およびWO99/49890に記載されている。
【0142】
免疫学的に有効な量の本発明のポリペプチド,ポリヌクレオチド,抗体,または抗体フラグメント,または一本鎖抗体とは,被験者に1回投与量でまたは一連の投与の一部としてデリバリーされて,免疫系を直接的にまたは間接的に刺激するのに有効な量である。この量は,治療すべき個体の健康状態および物理学的状態,治療すべき個体の分類学的グループ,個体の免疫系が抗体を合成する能力,望まれる防御の程度,ワクチンの処方,医学的状況の評価,および他の関連する因子によって様々である。この量は比較的広い範囲内に入ることが予測され,これは日常的な試験により決定することができる。
【0143】
医薬組成物は口腔で使用するのに適した形態であることができ,例えば,錠剤,トローチ剤,菱形剤,水性または油性の懸濁液,分散可能な粉体または顆粒,エマルジョン,硬または軟カプセル,シロップ,デントリファイス(dentrifice),うがい薬,ゲルまたはエリキシルの形でありうる。経口で使用することが意図される組成物は,医薬組成物の製造について当該技術分野において知られる任意の方法にしたがって製造することができ,そのような組成物は,薬学的に洗練された口に合う製品を提供するために,1またはそれ以上のそのような甘味剤,芳香剤,着色剤または保存剤を含んでいてもよい。錠剤は,錠剤の製造に適した無毒性の薬学的に許容しうる賦形剤との混合物として活性成分を含む。これらの賦形剤は,例えば,不活性希釈剤,例えば,炭酸カルシウム,炭酸ナトリウム,ラクトース,リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;顆粒化剤および崩壊剤,例えば,コーンスターチ,またはアルギン酸;結合剤,例えば,デンプン,ゼラチンまたはアラビアゴム,および潤滑剤,例えば,ステアリン酸マグネシウム,ステアリン酸またはタルクでありうる。錠剤は被覆しなくてもよく,既知の手法により被覆してもよい。場合によっては,既知の手法によりそのような被覆を調製して,胃腸管における崩壊および吸収を遅延させ,このことによりより長い期間の持続的な作用を与えることができる。例えば,遅延用材料,例えばグリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレートを用いることができる。
【0144】
経口使用のための処方は,活性成分が不活性固体希釈剤,例えば,炭酸カルシウム,リン酸カルシウムまたはカオリンと混合されている硬ゼラチンカプセル,または活性成分が水または油状媒体,例えば,ピーナッツ油,液体パラフィンまたはオリーブ油と混合されている軟ゼラチンカプセルであってもよい。
【0145】
水性懸濁液は,水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合物中に活性物質を含む。そのような賦形剤は,懸濁剤,例えば,カルボキシメチルセルロースナトリウム,メチルセルロース,ヒドロプロピル−メチルセルロース,アルギン酸ナトリウム,ポリビニルピロリドン,トララガントガムおよびアラビアゴムである。分散剤または湿潤剤は,天然に生ずるホフファチド,例えば,レシチン,またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物,例えば,ステアリン酸ポリオキシエチレン,またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物,例えば,ヘプタデカエチレンオキシセタノール,またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物,例えば,ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート,またはエチレンオキシドと脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物,例えば,ポリエチレンソルビタンモノオレエートであってもよい。水性懸濁液はまた,1またはそれ以上の保存剤,例えば,エチル−,またはn−プロピル−p−ヒドロキシベンゾエート,1またはそれ以上の着色剤,1またはそれ以上の芳香剤,および1またはそれ以上の甘味剤,例えばショ糖またはサッカリンを含んでいてもよい。
【0146】
油性懸濁液は,活性成分を植物油,例えば,アラキス油,オリーブ油,ゴマ油またはココナッツ油,または無機油,例えば液体パラフィン中に懸濁させることにより処方することができる。油性懸濁液は,増粘剤,例えば,密ロウ,硬パラフィンまたはセチルアルコールを含むことができる。甘味剤および芳香剤を加えて,口に合う経口製品を得ることができる。これらの組成物は,抗酸化剤,例えばアスコルビン酸を加えることにより保存することができる。
【0147】
水を加えることにより水性懸濁液を製造するのに適した分散可能な粉体および顆粒は,活性成分を,分散剤または湿潤剤,懸濁剤および1またはそれ以上の保存剤との混合物中で与える。適当な分散剤または湿潤剤または懸濁剤は,上で例示したとおりである。さらに別の賦形剤,例えば,甘味剤,芳香剤および着色剤が存在していてもよい。
【0148】
本発明の医薬組成物はまた,水中油エマルジョンの形であってもよい。油相は,植物油またはミネラルオイルまたはこれらの混合物であってもよい。適当な乳化剤としては,天然に生ずるガム,例えば,アラビアゴムまたはトラガガントゴム,天然に生ずるホスファチド類,例えば,大豆,レクチン,および脂肪酸とヘキシトールから誘導されるエステルまたは部分エステル,無水物,例えば,ソルビタンモノオレエート,および前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物,例えば,ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートが挙げられる。エマルジョンは,甘味料および芳香剤を含んでいてもよい。
【0149】
シロップおよびエリキシルは,甘味剤,例えば,グリセロール,プロピレングリコール,ソルビトール,グルコースまたはショ糖を用いて処方することができる。このような処方はまた,粘滑剤,保存剤および甘味料および着色料を含んでいてもよい。薬学的に許容しうる組成物は,滅菌した注射可能な水性または油性の懸濁液の形であってもよい。この懸濁液は,上述した適当な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて,当該技術分野において知られるように処方することができる。滅菌した注射可能な製品はまた,無毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の滅菌した注射可能な溶液または懸濁液,例えば,1,3−ブタンジオール中の溶液であってもよい。用いることのできる許容可能なベヒクルおよび溶媒の例は,水,リンゲル溶液および等張塩化ナトリウム溶液である。さらに,滅菌し固定した油を溶媒または懸濁媒体として便利に用いることができる。この目的のためには,任意の非刺激性の固定した油,例えば,合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを用いることができる。さらに,脂肪酸,例えば,オレイン酸を注射可能な薬剤の製造において用いることができる。
【0150】
本発明の組成物はまた,例えば,薬剤の直腸投与用に,座剤の形で投与することができる。これらの組成物は,薬剤を,通常の温度では固体であるが直腸温度では液体であり,したがって直腸中で溶融して薬剤を放出する適当な非刺激性賦形剤と混合することにより製造することができる。そのような材料としては,カカオバターおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0151】
組成物は,滅菌媒体中で非経口的に投与することができる。薬剤は,使用するベヒクルおよび濃度に応じて,ベヒクル中に懸濁されていてもよく,溶解されていてもよい。アジュバント,例えば局所麻酔剤,保存剤および緩衝剤をベヒクル中に溶解することも有利である。
【0152】
ヒト以外の動物に投与するためには,組成物を動物飼料または飲料水に加えてもよい。動物が治療上適当な量の組成物を飼料とともに接種できるよう,動物飼料および飲用水組成物を処方することが便利であろう。飼料または飲料水に加えるように組成物をプレミックスとして製造することも便利であろう。
【0153】
薬学的に有効な用量とは,被験者において1またはそれ以上のPg誘導性疾病の症状を治療または予防するのに必要な用量である。薬学的に有効な用量は,疾病,用いられる組成物,投与の経路,治療している被験者の種類,考慮している特定の被験者の物理学的特徴,年齢,性別,被験者の一般的健康状態,食事,同時に投与される医薬品,および医学の分野の熟練者が認識するであろう他の因子により様々である。本発明の組成物の有効量は,単なる日常的な実験によって容易に決定することができる。
【0154】
本発明の組成物は,用いられる特定の組成物に適合した様式で,例えばELISAにより決定して,免疫応答を誘発するのに有効な量で投与する。抗体およびポリペプチドは,1日に約0.05mg/kgから約100mg/kgの用量で投与することができる。本発明の1つの態様においては,抗体およびポリペプチドは,1日に約20から約100mg/kgの用量で投与することができる。別の態様においては,抗体およびポリペプチドは,例えば,約0.05mg/kgから約5mg/kgの用量で被験者に投与することができる。本発明のポリペプチドは,例えば,0.01,0.05,0.5,0.75,1.0,1.5,2.0,2.5,5または10mg/kgの用量で投与することができる。
【0155】
本発明の組成物の投与によって動物における免疫応答を誘発することができ,これは少なくとも1週間,1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月,1年,またはそれ以上の間持続する。必要により,初期注射後1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月,1年,またはそれ以上の時点で本発明の組成物を1回以上ブースター投与し,動物における免疫応答を保持することができる。必要により,共刺激分子またはアジュバントを組成物の前または後に,または一緒に与えてもよい。
【0156】
本明細書において引用されるすべての特許,特許出願および他の科学技術論文は,その全体を本明細書の一部として引用する。本明細書に例示的に記載されている発明は,本明細書に特定的に開示されていない任意の要素または限定なしでも適切に実施することができる。すなわち,例えば,本明細書における各例において,"・・・を含む","・・・から本質的になる"および"・・・からなる"との用語は,他の2つのいずれかと置き換えることができる。本明細書において用いた用語および表現は,説明の用語として用いるものであり,限定ではなく,そのような用語および表現の使用においては,示されかつ記載されている特徴またはその一部の同等物を排除することを意図するものではなく,特許請求の範囲に記載される本発明の範囲中で種々の変更が可能であることが理解される。すなわち,好ましい態様および任意の特徴により本発明を特定的に開示してきたが,当業者には本明細書に記載される概念の変更および変種が可能であり,そのような変更および変種も特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
【0157】
さらに,発明の特徴または観点がマーカッシュグループの用語または他の代替物のグループの用語で記載されている場合,当業者は,本発明が,マーカッシュグループまたは他のグループのすべての個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関してもまた記載されていることを認識するであろう。
【0158】
表2
【表2】

【0159】
【表3】

【0160】
【表4】

【0161】
【表5】

【0162】
【表6】

【0163】
【表7】

【0164】
【表8】

【0165】
【表9】

【0166】
【表10】

【0167】
【表11】

【0168】
85%またはそれより高いホモロジーを有する配列を選択した。すべての場合において,相同配列は,各クローンについて,ホモロジーの程度の高い順にリストされている。配列決定のためには,T7プロモーターおよびターミネータープライマーを用いた。両方のプライマーから生じた配列は,TIGRP. gingivalisデータベースに対してblast検索を行った。両方のプライマーから誘導された配列から特定のホモロジーが示された場合には,プロモータープライマーからのもののみを本明細書に記載した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号167−226,228−261,および263−354からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも約5個の連続するアミノ酸を含む,単離された免疫原性ポリペプチド。
【請求項2】
請求項1記載の免疫原性ポリペプチドおよび異種ポリペプチドを含む単離されたポリペプチド。
【請求項3】
配列番号167−226,228−261,および263−354からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド。
【請求項4】
請求項1記載のポリペプチドをコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項5】
配列番号1−166,227,および262からなる群より選択される配列の少なくとも約15個の連続する核酸を含む単離されたポリヌクレオチドおよびその縮重変異体。
【請求項6】
配列番号1−166,227,および262に示される配列を含む単離されたポリヌクレオチドおよびその縮重変異体。
【請求項7】
請求項4記載のポリヌクレオチドに動作可能なように連結された発現制御配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項4記載のポリヌクレオチドおよび異種ポリヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項4記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項10】
請求項9記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項11】
請求項1記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体,抗体フラグメント,または一本鎖抗体。
【請求項12】
フラグメントが,Fab,F(ab’)2,Fab’およびFab’−SHからなる群より選択される,請求項11記載の抗体。
【請求項13】
抗体がモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である,請求項11記載の抗体。
【請求項14】
請求項11記載の抗体,抗体フラグメント,または一本鎖抗体および薬学的に許容しうる担体を含む組成物。
【請求項15】
Porphyromonas gingivalisにより引き起こされる疾病または感染を治療または予防する方法であって,動物に,請求項11記載の抗体,抗体フラグメント,または一本鎖抗体を投与し,このことによりPorphyromonas gingivalisにより引き起こされる疾病が治療または予防される,上記方法。
【請求項16】
疾病が,限局性思春期前歯周炎,汎発性思春期前歯周炎,限局性若年性歯周炎,汎発性若年性歯周炎,急速進行性成人歯周炎,抗療性成人歯周炎,心内膜炎,甲状腺膿瘍,尿路感染症,脳膿瘍および椎骨骨髄炎からなる群より選択される,請求項15記載の方法。
【請求項17】
請求項1記載の単離された免疫原性ポリペプチドおよび薬学的に許容しうる担体を含む組成物。
【請求項18】
動物において免疫応答を誘起する方法であって,請求項1記載の単離された免疫原性ポリペプチドを動物に投与することを含み,ここで免疫応答が誘起される,上記方法。
【請求項19】
Porphyromonas gingivalisにより引き起こされる疾病または感染を治療または予防する方法であって,請求項1記載の単離された免疫原性ポリペプチドを動物に投与することを含み,ここで疾病が治療または予防される,上記方法。
【請求項20】
疾病が,限局性思春期前歯周炎,汎発性思春期前歯周炎,限局性若年性歯周炎,汎発性若年性歯周炎,急速進行性成人歯周炎,抗療性成人歯周炎,心内膜炎,甲状腺膿瘍,尿路感染症,脳膿瘍および椎骨骨髄炎からなる群より選択される,請求項19記載の方法。
【請求項21】
請求項4記載のポリヌクレオチドおよび薬学的に許容しうる担体を含む組成物。
【請求項22】
ポリヌクレオチドがプラスミド中にある,請求項21記載の組成物。
【請求項23】
動物において免疫応答を誘起する方法であって,請求項4記載の精製されたポリヌクレオチドを動物に投与することを含み,ここで免疫応答が誘起される,上記方法。
【請求項24】
Porphyromonas gingivalisにより引き起こされる疾病または感染を治療または予防する方法であって,請求項4記載の精製されたポリヌクレオチドを動物に投与することを含み,ここで疾病または感染が治療または予防される,上記方法。
【請求項25】
疾病が,限局性思春期前歯周炎,汎発性思春期前歯周炎,限局性若年性歯周炎,汎発性若年性歯周炎,急速進行性成人歯周炎,抗療性成人歯周炎,心内膜炎,甲状腺膿瘍,尿路感染症,脳膿瘍および椎骨骨髄炎からなる群より選択される,請求項24記載の方法。
【請求項26】
試験サンプル中の第1のPorphyromonas gingivalisポリヌクレオチドの存在を検出する方法であって,
第1のポリヌクレオチドを含むと疑われる試験サンプルを,ハイブリダイゼーション条件下で,第2のポリヌクレオチドと接触させ,ここで,第2のポリヌクレオチドは,請求項4記載のポリヌクレオチドであり;そして
ハイブリダイズした第1のおよび第2のポリヌクレオチド複合体を検出し,ここで,ハイブリダイズした第1のおよび第2のポリヌクレオチド複合体が存在することは,試験サンプル中に第1のポリヌクレオチドが存在することを示す,
ことを含む方法。
【請求項27】
試験サンプル中のPorphyromonas gingivalis抗体の存在を検出する方法であって,
試験サンプルを,抗体とポリペプチドとの間に免疫複合体が形成されうる条件下で,請求項1記載の単離された免疫原性ポリペプチドと接触させ,ここで,ポリペプチドは,Porphyromonas gingivalis抗体に特異的に結合し;そして
免疫複合体を検出し,ここで,免疫複合体が検出されることは,試験サンプル中にPorphyromonas gingivalis抗体が存在することを示す,
ことを含む方法。
【請求項28】
試験サンプル中のPorphyromonas gingivalisまたはPorphyromonas gingivalisポリペプチドの存在を検出する方法であって,試験サンプルを,抗体とPorphyromonas gingivalisまたはPorphyromonas gingivalisポリペプチドとの間に免疫複合体が形成されうる条件下で,Porphyromonas gingivalisまたはPorphyromonas gingivalisポリペプチドに特異的に結合する請求項11記載の抗体と接触させ;そして
免疫複合体を検出し,ここで,免疫複合体が検出されることは,試験サンプル中にPorphyromonas gingivalisまたはPorphyromonas gingivalisポリペプチドが存在することを示す,
ことを含む方法。
【請求項29】
動物の感染の間にPorphyromonas gingivalisポリペプチドがインビボで発現される,請求項28記載の方法。
【請求項30】
被験者におけるPorphyromonas gingivalis感染を検出する方法であって,
(a) 被験者から生物学的サンプルを取得し;
(b) 生物学的サンプルを,ポリペプチドと生物学的サンプル中に存在するPorphyromonas gingivalis抗体との間に免疫複合体が形成されうる条件下で,請求項1記載の免疫原性ポリペプチドと接触させ;
(c) 工程(b)において形成された免疫複合体の量を検出し;そして
(d) 工程(c)において検出された免疫複合体の量を対照サンプルと比較し,ここで,生物学的サンプル中の免疫複合体の量が対照サンプルより多いことは,被験者におけるPorphyromonas gingivalis感染を示す;
ことを含む方法。
【請求項31】
被験者においてPorphyromonas gingivalisを検出する方法であって,
(a) 被験者から生物学的サンプルを取得し;
(b) 生物学的サンプルを,抗体,抗体フラグメント,または一本鎖抗体と生物学的サンプル中に存在するPorphyromonas gingivalisポリペプチドとの間に免疫複合体が形成されうる条件下で,請求項11記載の抗体,抗体フラグメントまたは一本鎖抗体と接触させ;
(c) 工程(b)において形成された免疫複合体の量を検出し;そして
(d) 工程(c)において検出された免疫複合体の量を対照サンプルと比較し,ここで,生物学的サンプルにおける免疫複合体の量が対照サンプルより多いことは被験者におけるPorphyromonas gingivalis感染を示す;
ことを含む方法。
【請求項32】
被験者においてPorphyromonas gingivalisを検出する方法であって,
(a) 被験者から生物学的サンプルを取得し;
(b) 生物学的サンプルを,請求項4記載のポリヌクレオチドと生物学的サンプル中に存在するPorphyromonas gingivalisポリヌクレオチドとの間にハイブリダイズした複合体が形成されうる条件下で,請求項4記載のポリヌクレオチドと接触させ;
(c) 工程(b)において形成されたハイブリダイズした複合体の量を検出し;そして
(d) 工程(c)において検出されたハイブリダイズした複合体の量を対照サンプルと比較し,ここで,生物学的サンプル中のハイブリダイズした複合体の量が対照サンプルにおけるより多いことは,被験者におけるPorphyromonas gingivalis感染を示す,
ことを含む方法。

【公表番号】特表2007−529195(P2007−529195A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523285(P2006−523285)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/025778
【国際公開番号】WO2005/019249
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(504433168)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファウンデーション,インク. (10)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF FLORIDA RESEATCH FOUNDATION,INC.
【Fターム(参考)】