説明

歯科装置洗浄剤

【課題】適用が容易で、長時間の洗浄時間を必要としない一方で、持続した爽やかな息を維持する義歯洗浄剤を提供すること。
【解決手段】約50〜99%w/wの水相、約1〜50%w/wの水非混和性油相を含む準安定なエマルジョンである歯科装置洗浄剤であって、油相が1つまたは複数の非混和性油および1つまたは複数のフレーバー油の組合せを有する歯科装置洗浄剤が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、約50〜99%w/wの水相、約1〜50%w/wの水非混和性油相を含む準安定なエマルジョンである歯科装置洗浄剤であって、油相が1つまたは複数の非混和性油および1つまたは複数のフレーバー油の組合せを有する歯科装置洗浄剤に関する。歯科装置洗浄剤は、着用者の口腔外にて、通気泡沫(aerated foam)の形態で歯科装置に適用される。
【背景技術】
【0002】
総義歯または部分義歯は口腔内で着用されることを意図とし、欠損歯の代替となるものである。歯と同様、義歯は、良好な口腔衛生を維持するために定期的に洗浄すべきである。歯と同様、義歯は、美容上の理由から、たとえば爽やかな息を維持するためにも、定期的に洗浄すべきである。
【0003】
歯とは異なり、義歯は洗浄のために取り外すことができる。また、義歯は、比較的厳しい洗浄条件に耐えることができるアクリルポリマーなどの耐久性のある材料から作製されている。その結果、義歯は厳しい洗浄条件に曝すことができ、曝されることも多い。義歯は、典型的には2つの方法、すなわち、義歯を一定時間の間洗浄浴に浸すか、または義歯を歯磨剤もしくは特別に処方された洗浄クリームでブラッシングする方法の一方で洗浄される。
【0004】
クリームでブラッシングすることには、洗浄処方を機械的作用で補うという利点がある。残念ながら、歯と同様、ブラッシングの工程中に義歯上の一部をブラッシングし損なうまたは見落とす可能性がある。その結果、義歯材料が時間と共に分解する可能性があり、使用者の残りの歯および歯肉が疾患因子および望ましくない美容上の結果に曝され得る。
【0005】
洗浄浴に浸すことは、義歯のすべての部分が洗浄されるという利点をもたらす。義歯を浴に完全に浸すことにより、クリームを用いた通常のブラッシングによっては達することができない領域に洗浄組成物が達することが可能になる。洗浄浴、それ自体は、通常販売されていない。典型的には、活性成分が、固体形態にて義歯洗浄剤の粉末もしくは錠剤として、または濃縮液状形態にて販売されている。その場合、活性成分を水浴に溶かして洗浄浴を形成する。
【0006】
残念ながら、浸すことは、クリームおよび歯磨剤で見られる機械的なこすり洗いの利点を放棄している。この機械的洗浄の損失を補うために、義歯洗浄錠剤および粉末は通常、発泡システムおよび強力な化学洗浄剤を含む。しかし、漂白剤などの強力な化学洗浄剤は、浸した義歯に不快な味覚または臭いを与える可能性がある。したがって、義歯洗浄剤の製造者は、有効性と、美容と官能的配慮との間の妥協点を捜索することに直面している。
【0007】
噴霧可能な義歯洗浄剤が第3,808,686号および第3,822,212号に記載されている。1985年4月16日公開のShahの米国特許第4,511,486号は、界面活性物質、湿潤剤、水および相当な量のエタノールまたはイソプロパノールを含む発泡性液状義歯洗浄剤を開示している。アルコールは、様々な賦形剤の可溶化剤として、洗浄した義歯に爽やかな味覚の感触を与え、抗菌効果をもたらす成分として用いる。
【0008】
これらの方法はどれも、特に義歯の着用者にとって持続した息の爽やかさをもたらさない。義歯の着用者は、自分の義歯が、しばしば「義歯口臭」と呼ばれる不快な臭いを放つという不満を持っている。現在市場にある製品は、浸すことなどで長時間の洗浄時間を必要とし、爽やかな口腔内味覚および爽やかな息などの持続した利点が得られない。多くの場合、義歯の着用者は義歯/息を爽やかに保つために自分の義歯を通常の練り歯磨きでブラッシングするしかなく、これは、練り歯磨きの研磨性により義歯の表面にひっかき傷をもたらす。さらに、これらの方法では持続した爽やかな息が得られないので、義歯の着用者はしばしば義歯を1日に複数回洗浄するしかなく、これは不便かつ不名誉である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
容易に適用され、長時間の洗浄時間を必要としない一方で、持続した爽やかな息を維持する義歯洗浄剤を見つけることは、継続中の課題である。許容される薬剤は、無毒性、非着色性、非研磨性かつ水分散性でなければならない。さらに、洗浄剤は、分配および義歯への適用が容易であり、可能な限り少ない工程で清浄な義歯をもたらすべきである。義歯を1日に複数回洗浄することなく持続した爽やかな息の効果を維持することが、非常に望ましい。そのような洗浄剤は、他の歯科装置の着用者にも有用となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、本発明は、抗微生物剤を実質的に含まず通気泡沫の形態で分配される歯科装置洗浄処方物であって、約50〜97%w/wの水相、約2〜50%w/wの水非混和性油相を含む準安定なエマルジョンであり、油相が1つまたは複数の非混和性油および1つまたは複数のフレーバー油の組合せを有する歯科装置洗浄処方物に関する。
【0011】
別の態様では、本発明は、歯科装置を口腔外で洗浄する方法であって、歯科装置を、抗微生物剤を実質的に含まない通気泡沫組成物と、歯科装置の洗浄に有効な時間接触させることを含み、前記通気泡沫組成物は約50〜99%w/wの水相、約1〜50%w/wの水非混和性油相を含み、油相は1つまたは複数の非混和性油および1つまたは複数のフレーバー油の組合せを有し、歯科装置を洗浄するのに十分な時間の間、ならびに歯科装置を水ですすぐことを含む方法に関する。
【0012】
さらに別の態様では、本発明は、抗微生物剤およびまたはアルコールを実質的に含まず通気泡沫の形態で分配される歯科装置洗浄処方物であって、約50〜99%w/wの水相、約1〜50%w/wの水非混和性油相、ならびに、約0.5〜6%w/wの、陰イオン界面活性物質、双性イオン界面活性物質および非イオン界面活性物質、またはそれらの組合せから選択される界面活性物質を含む準安定なエマルジョンであり、油相が1つまたは複数の非混和性油および1つまたは複数のフレーバー油の組合せを有する歯科装置洗浄処方物に関する。
【0013】
さらに別の態様では、本発明は、抗微生物剤を実質的に含まず通気泡沫の形態で分配される歯科装置洗浄処方物をデリバリーするキットであって、歯科装置洗浄処方物は約50〜99%w/wの水相、約1〜50%w/wの水非混和性油相を含む準安定なエマルジョンであり、油相は1つまたは複数の非混和性油および1つまたは複数のフレーバー油の組合せを有し、泡沫を分配することができるディスペンサーおよび個別に梱包された容量の歯科装置洗浄処方物を含むキットに関する。
【0014】
さらに別の態様では、本発明は、抗微生物剤を実質的に含まず通気泡沫の形態で分配される歯科装置洗浄処方物で歯科装置を洗浄することによって歯科装置の着用者の口腔において持続した爽やかな息を維持する方法であって、歯科装置洗浄処方物は約50〜99%w/wの水相、約1〜50%w/wの水非混和性油相を含む準安定なエマルジョンであり、油相は1つまたは複数の非混和性油および1つまたは複数のフレーバー油の組合せを有し、前記洗浄は歯科装置を歯科装置洗浄処方物と、持続した爽やかな息を維持するのに十分な時間接触させること、歯科装置を水ですすぐこと、および歯科装置を着用者の口腔内に入れることを含む方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
「洗浄する」、「洗浄すること(cleansing)」または「洗浄すること(cleaning)」なる語は、本明細書中で互換性があるように用いられ、ブラッシングの機械的作用によって食品粒子、着色および他の口内の残骸を除去すること、ならびに本発明の処方物の息を爽やかにする機能をいう。
【0016】
本明細書中で使用する「歯科装置」なる語は、義歯もしくは部分義歯、人工歯、取り外し可能な歯科矯正ブリッジおよび義歯プレート(上部用、下部用の両方)、歯科矯正リテイナーおよび装置、保護用マウスガード、歯ぎしりおよび/または顎関節症(TMJ)などを予防するためのナイトガードをいう。
【0017】
本明細書中で使用する「義歯洗浄剤」なる語は、歯科装置を洗浄するために口腔外で使用する処方物をいう。
【0018】
本明細書中で使用する「発泡性処方物」なる語は、噴霧剤を用いたディスペンサーまたは噴霧剤を用いないディスペンサーから泡沫の形態でデリバリーすることができる準安定な液状エマルジョンをいう。
【0019】
本明細書中で使用する「HLB」なる語は、界面活性物質の分子の相対的な親水性/親油性の指標である親水性/新油性バランスをいう。
【0020】
本明細書中で使用する「非混和性油」なる語は、均一に混合もしくは混和することができない、同じ相または物質状態にある物質をいう。本明細書中で使用する「準安定なエマルジョン」なる語は、静置すると5分未満に分離し始める短命の水中油型分散液をいう。
【0021】
本明細書中で使用する「持続した爽やかな息」なる語は、2時間以上持続可能な口腔の感触、義歯臭の制御および口臭の制御の組合せをいう。
【0022】
優れた洗浄に加えて、この処方物が提供する他の主要な利点は、口臭の改善および爽やかな口腔内味覚であり、これは、義歯の着用者の試験において5時間まで持続することが示されている。したがって、本発明は、5時間まで義歯を洗浄し、細菌を死滅させ、爽やかな味覚を与え、息を爽やかにするように設計された発泡性義歯洗浄剤を記載する。
【0023】
歯科装置洗浄処方物は準安定な油/水エマルジョンを利用し、油相の大部分が香料ならびに植物油および/または鉱油を含めた非混和性油からなり、水相は主に洗剤、乳化剤、着色除去剤、静菌剤、香料担体、甘味料、および緩衝剤からなる。エマルジョンを過渡的に形成することができ、容器を穏やかに振盪することによって適用前に生成物を均一にする。
【0024】
処方物は、噴霧剤を用いてまたは噴霧剤を用いずに発泡アプリケーターの頭部で泡沫へと活性化される、容器中の液体である。処方物は歯科装置に直接適用するように設計されており、歯ブラシまたは義歯ブラシで、少なくとも約30〜60秒間である歯科装置の洗浄に有効な時間の間ブラッシングを行うことが推奨される。一実施形態では、歯科装置の洗浄に有効な時間は少なくとも約60秒間である。洗浄後、処方物を水で歯科装置からすすぎ流し、口腔内に入れる。
【0025】
泡沫中の界面活性物質および着色除去剤は、特にブラッシングしている間に歯科装置を洗浄してそれに浸透する。少なくとも約30〜60秒後、およびその後にすすいだのち、油の液滴が合体して油相が不安定になる。いかなる特定の理論にも縛られずに、香料も含む処方物が歯科装置の表面上に堆積されると推測される。ここで、香料は歯科装置の表面と密接するため、より良好に歯科装置構造上に吸着される。この現象は、すすいだ後も、注目に値する快適な口腔内味覚および持続した爽やかな息を生じる。持続した爽やかな息は、歯科装置を洗浄処方物と少なくとも約30〜60秒間接触させた場合に得られる。一実施形態では、持続した爽やかな息を維持するために、歯科装置を洗浄処方物と少なくとも約60秒間接触させる。
【0026】
本発明の特に有利な一態様は、歯科装置洗浄エマルジョン処方物が約2〜50%重量/重量(「w/w」)の油相を含むが、それでも通気泡沫として分配することができることである。実際、当業者は、このように高い油含有率を有する準安定なエマルジョンが通気泡沫として分配されることを予測しないであろう。
【0027】
本発明で用いるための適切な非混和性油には、それだけには限定されないが、ゴマ油、ダイズ油、カノーラ油、ヤシ油、分留ヤシ油、魚油または鉱油が含まれる。本発明の一実施形態は、ゴマ油を含む。非混和性油は約0.5〜20%w/wの量で処方物に含まれる。本発明の一実施形態は、非混和性油を約1〜8%w/wの量で含む。本発明の別の実施形態は、ゴマ油を約3〜6%w/wの量で含む。
【0028】
非混和性油に加えて、義歯洗浄処方物は、フレーバー油を約0.5〜15%w/wの量で含む。本発明で用いるための適切なフレーバー油には、それだけには限定されないが、スペアミント、ウィンターグリーン、リモニン、メントール、ペパーミント、リノロール、柑橘油、アネトール、フェネルスイート、ユーカリプトール、カモミール油、バジル油、ショウガ、ローズマリー油、l−メントール、サリチル酸メチル、チョウジ芽油、タラゴン、ティーツリー油、チモール、ショウズク油、シトラール、オリガヌムダマスコンF、デカノール、ノナノール、デカナール、イオノンα、バニリン、アニス実、ケイ皮アルデヒド、ライムまたはそれらの混合物などの精油が含まれる。本発明の一実施形態は、フレーバー油を約2〜6%w/wの量で含む。
【0029】
準安定なエマルジョンの水相は、処方物中に約50〜99%w/wの量で存在する。本発明の一実施形態は、水を約50〜80%w/wの量で含む。本発明の第2の実施形態は、水を約75〜90%w/wの量で含む。
【0030】
有意な発泡を得るために、界面活性物質を義歯洗浄処方物に加え、これは泡沫生成剤として作用し、処方物が有効に洗浄を行う能力を補助する。
【0031】
本発明で用いるための適切な界面活性物質には、それだけには限定されないが、陰イオン界面活性物質、双性イオン界面活性物質および非イオン界面活性物質、またはそれらの組合せが含まれる。適切な陰イオン界面活性物質には、それだけには限定されないが、ラウリル硫酸ナトリウムおよび他のアルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、αオレフィンスルホン酸塩、アシルN−メチルタウリン酸塩およびラウロイルサルコシン酸ナトリウムが含まれる。本発明の一実施形態は、ラウリル硫酸ナトリウムを0.5〜4%w/wの量で含む。
【0032】
適切な非イオン界面活性物質には、それだけには限定されないが、ポリオキシル水素化ヒマシ油、エトキシ化ソルビタンアルカノエート、脂肪酸エトキシレート、脂肪アルコールエトキシレート、脂肪アミンエトキシレート、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックポリマー(プルロニック)およびスクロースエステルが含まれる。本発明の一実施形態は、ポリオキシル40水素化ヒマシ油を0.5〜6%w/wの量で含む。
【0033】
適切な双性イオン界面活性物質には、それだけには限定されないが、コカミドプロピルベタインおよびアルキルアミドプロピルベタインが含まれる。本発明の一実施形態は、コカミドプロピルベタインを0.5〜4%w/wの量で含む。本発明の一実施形態は、0.5〜4%w/wのラウリル硫酸ナトリウム、0.5〜6%w/wのポリオキシル40水素化ヒマシ油、および0.5〜4%w/wのコカミドプロピルベタインの界面活性物質の混合物を含む。
【0034】
本発明で用いるための界面活性物質の混合物を含めた適切な界面活性物質は、約10を超えるHLBを有する。一実施形態では、界面活性物質またはそれらの混合物のHLBは約16を超える。
【0035】
湿潤剤の存在は水分の保持を補助する。適切な水溶性の製薬上許容される湿潤剤には、それだけには限定されないが、グリセリン、ソルビトール(一般に70%溶液として用いる)、キシリトール、マンニトール、およびガラクチトールが含まれる。本発明の一実施形態は、湿潤剤を約1〜20%w/wの量で含む。本発明の別の実施形態は、湿潤剤を約5〜15%w/wの量で含む。
【0036】
賦形剤も本義歯洗浄処方物に添加してよく、それらは、保存料、たとえば、安息香酸ナトリウム、安息香酸、メチルパラベン、プロピルパラベンなど;金属イオン封鎖剤、たとえば、エデト酸二ナトリウム、クエン酸塩、酒石酸塩、メタケイ酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、トリポリピロリン酸塩、トリポリピロリン酸ナトリウム;抗酸化剤、たとえば、BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)、BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)およびtertブチルヒドロキノン;緩衝剤;着色除去剤、たとえば、ポリエチレングリコール;着色料;粘度調整剤;ならびにそれらの混合物などの賦形剤である。
【0037】
本発明による組成物は、適切な相対量の成分を都合のよい任意の順番で混合することによって調製し得る(以下の実施例1参照)。
【0038】
歯科装置洗浄泡沫は、当分野で知られている容易に入手可能な泡沫生成装置から容易に分配される。噴霧剤を用いないディスペンサーまたは噴霧剤を用いるディスペンサーのどちらかが、本発明の処方物での使用に適している。その例は、Airspray(フロリダ州Pompano Beach)によって製造されるF2 Finger Pump FoamerもしくはM3 Mini−finger Pump FoamerまたはEmsar(オランダ、Alkmaar)によって製造される37MS Portable Anti−clog Pumpである。
【0039】
歯科装置洗浄処方物は、歯科装置を洗浄するのに十分な時間の間、歯科装置上に置く。泡沫を適用したのち、必要ではないが、歯科装置の着用者が歯科装置を歯ブラシまたは義歯ブラシでブラッシングすることが推奨される。最低でも60秒後に、義歯を水ですすいで口腔内に入れることができる。
【0040】
この処方物の別の態様は、処方物中に特異的な抗微生物剤を有することなしに義歯臭に関連する細菌および他の微生物を死滅させる、その有効性である。微生物運動死滅実験法を用いて、90秒間の細菌との接触時間における、このような液体−泡沫の義歯洗浄剤プロトタイプの抗微生物性の有効性を評価した。
【0041】
この研究では、フソバクテリウム・ヌクレアタム、クレブシエラ・ニューモニエ、ストレプトコッカス・サングイス、アクチノミセス・ビスコーサスおよびベイヨネラ属の種などの口臭を引き起こす細菌に対する、本明細書中に記載の義歯洗浄処方物の有効性に注目した。表1は、90秒間の希釈した生成物との接触時間において懸濁液中で死滅した細菌の割合としての結果を示し、この生成物は本発明の範囲内にある処方物である。死滅運動実験により、生成物を、無菌都市水道水、無菌人工唾液およびウシ血清アルブミンなどの他の妨害物質の懸濁溶液中に1:1の希釈率で評価した。この実験は、残留唾液、水、および義歯基部上の他の物質と混合するにつれてその希釈係数に近づく。この実験は、生成物が義歯上で遭遇し得る可能性が高い条件を表す。
【0042】
試験プロトコル:試験した生物の培養は、通性生物(たとえばクレブシエラ・ニューモニエおよびエス・サングイス)ではTryptic Soy Broth中で、嫌気性生物(たとえばフソバクテリウム・ヌクレアタムおよびベイヨネラ属の種)では2%のOxyrase for Brothを含むFluid Thioglycollate Medium中で開始した。通性生物は最低48時間、嫌気性生物は最低72時間、30℃〜35℃でインキュベーションを行った。T3〜T5の培養の使用が推奨される。
【0043】
2.4mLの無菌流入都市水道水(「SICW(Sterile Incoming City Water)」)、2.2mLの人工唾液(「AS(Artificial Saliva)」)、および0.2mLのウシ血清アルブミン(「BSA」)を含む対照チューブに0.2mLの試験生物を接種した。それぞれの試験生物についてこの工程を個別に繰り返した。1mLアリコートをそれぞれの対照チューブから取り出し、Dey/Engley Neutralizing Broth中の10倍段階希釈液を作製した。段階希釈液から、2×1mLアリコートを希釈液4〜6から採取した。20〜25mLのTryptic Soy Agarを通性生物の希釈アリコートに加えた。10%のOxyrase for Agarを含む20〜25mLのSchaedler Agarを嫌気性生物の希釈アリコートに加えた。寒天が固化したのち、Schaedler Agarの約5mLの重層を、嫌気性生物を含むプレートに加えた。
【0044】
第2のチューブの組に0.2mLの試験生物を接種し、第2のチューブの組は1.1mLのSICW、1.0mLのASおよび0.2mLのBSAを含む。以下の実施例2に記載の本発明の処方物2.5mLを第2のチューブのそれぞれに加えた(「試験溶液」)。90秒および120秒後(各時点において±5秒間)、それぞれの試験溶液の1.0mLアリコートをそれぞれの試験溶液チューブから取り出し、Dey/Engley Neutralizing Broth中の10倍段階希釈液を作製した。サンプリング点の間に、ボルテックス攪拌による軽いかき混ぜを行った。段階希釈は、10−4の希釈係数まで行った。それぞれの希釈液からの2つ組の1.0mLアリコートを150mmのペトリ皿に播種した。通性生物は最低48時間、嫌気性生物は最低72時間、30℃〜35℃でインキュベーションを行った。インキュベーション後、コロニー形成単位(「CFU」)を決定し、平均をとり、平均を希釈係数に乗じた。この値のlog10をとった(小数点以下2桁)。すべての生物の試験は2つ組で実施した。
【0045】
90秒時点における%減少を以下のように計算した:CFU数が10〜100CFUであった希釈液を用いて、それぞれの生物の90秒時点における対数値を決定した。以下の表1に報告する結果は、式(a−b)/a×100[式中、変数「a」は、対照溶液中に接種された生物の数の真数であり、変数「b」は、試験溶液中に生存している生物の数の真数である]によって計算した%減少として記録した。変数「a」および「b」は、すべての試験反復実行での90秒時点におけるそれぞれの生物の平均対数値である。
【0046】
【表1】

【0047】
表1で用いる「RT」なる語は室温をいい、「2mo@40/75」なる語は40℃および75%の相対湿度における2カ月間の予測加速安定条件をいう。
【0048】
本歯科装置洗浄処方物の別の独特な態様は、歯科用アクリル上に形成するその低い界面張力および特に非常に低い接触角である。液体/表面接触角および表面張力は、処方物がいかに良好に表面上に拡大し、それを湿らし、最終的には浸透するかの指標であり、より低い接触角および表面張力が、より良好に湿らすこと/拡大および浸透することを示す。より低い接触角および表面張力を有する処方物は、より良好に細孔内に浸透して細孔構造内から汚れを除去することを補助することができる。現在の液状歯科装置洗浄剤は25°を超えるアクリル接触角を有する。本明細書中に記載の処方物は24°未満のアクリル接触角を有し、そのほとんどが5°〜18°である。この非常に低いアクリル接触角は、界面活性物質系、安息香酸、pHおよび油の存在の組合せによって達成されると考えられている。
【0049】
ここでも、いかなる特定の理論にも縛られずに、これらの処方物のpHが、有機酸(たとえば、安息香酸、ソルビン酸、リンゴ酸、クエン酸、サリチル酸およびプロピオン酸(プロパン酸としても知られる))の存在と共に歯科用アクリル上の接触角をさらに低くすると考えられており、処方物のpHは2.5〜5.5である。歯科装置洗浄処方物のpHは、適切には約4.0〜5.5である。本発明の処方物の一実施形態はpH4.8を有する。また、より低いpHは、保存料の活性を最適化し、活性のある抗微生物性の有効性を向上させ、香料の保持を(処方物の接触角を低くすることによって)支援することで爽やかな息の強化を支援すると考えられている。
【0050】
安息香酸/安息香酸塩および油相を含むまたは含まない処方物を使用した歯科用アクリル上の接触角のデータを、以下の表2に示す。以下に示す処方物1〜4のpHを、pH4.8〜5.0に調整した。処方物5は、3Nの水酸化ナトリウム溶液でpH7.5に調整した処方物「1」(「完全な処方物」)である。
【0051】
【表2】

【0052】
表2のデータは、低いアクリル接触角は、pH4.8〜5.0安息香酸を含み油相が存在する処方物で得られることを示している。これらの要素すべてが合わさって、所望の低い接触角、処方物「1」の場合は8.5°の接触角に寄与すると考えられている。処方物「1」のpHを4.9から7.5へと上昇させた場合は(処方物「5」)、アクリル上の接触角は8.5°から26.4°へと上昇した。
【0053】
本発明の範囲内にある歯科装置洗浄処方物を、以下の非限定的な例を併せてより具体的に例示する。
【実施例1】
【0054】
3.000キログラムの生成物を作成する
プロペラ型のミキサーを備えた適切な容器に、2,101.2gの精製水、USPを加え、その後、210.0gのグリセリン、99.7%、USPを加えた。内容物を「中」速度で混合した。この混合物の混合を続けながら、次の成分を加える前にそれぞれの成分が完全に分散/溶解したことを確認しながら、以下の成分を加えた:120.0gのソルビトール、70%溶液、USP;15.00gのポリエチレングリコール400、NF;30.00gの安息香酸ナトリウム、NF;15.00gのコカミドプロピルベタイン;45.00gのラウリル硫酸ナトリウム、NF;1.500gのエデト酸二ナトリウム、USP;60.00gのポリオキシル40水素化ヒマシ油、USP;90.00gのGantrez酸S97BF(13%溶液);12.00gのサッカリンナトリウム、USP;150.0gのゴマ油、NF;135.0gの香料、0.300gのブチル化ヒドロキシトルエン、NF;および15.00gの安息香酸、NF。
【0055】
最後の成分を溶かしたのち、ミキサーを「高」にし、プロペラミキサーが分散液に渦を生じていることを確認した。蓋をして混合を40〜50分間続けた。最終的な脱気した分散液の比重は1.032であった。
【実施例2】
【0056】
以下の表に、本発明の範囲内にある適切な処方物の成分を記載する。
【0057】
【表3】

【0058】
上記説明は、その好ましい実施形態を含めた本発明を完全に開示している。本明細書中に具体的に開示した実施形態の改変および改良は、添付の特許請求の範囲の範囲内にある。さらに詳述することなしに、当業者は、前述の説明を考慮して本発明を最大限に利用できると考えられる。したがって、すべての例は単に例示的なものであり、いかなる様式でも本発明の範囲を限定するものではないと解釈される。独占的な財産または独占権を特許請求する本発明の実施形態を、添付のように定義する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に抗微生物剤を含まず、かつ通気泡沫の形態で分配される歯科装置洗浄処方物であって、約50〜99%w/wの水相、約1〜50%w/wの水非混和性油相を含む準安定なエマルジョンであり、油相が1つまたは複数の非混和性油および1つまたは複数のフレーバー油の組合せを有する歯科装置洗浄処方物。
【請求項2】
非混和性油がゴマ油、ダイズ油、カノーラ油、ヤシ油、分留ヤシ油、魚油、鉱油から選択される、請求項1記載の処方物。
【請求項3】
陰イオン界面活性物質、双性イオン界面活性物質および非イオン界面活性物質、またはそれらの組合せから選択される界面活性物質をさらに含む、請求項1記載の処方物。
【請求項4】
処方物のpHが4.0と5.5の間にある、請求項1記載の処方物。
【請求項5】
安息香酸、ソルビン酸、リンゴ酸、クエン酸およびサリチル酸からなる群から選択される有機酸をさらに含む、請求項4記載の処方物。
【請求項6】
24°未満のアクリル接触角を有する、請求項1記載の処方物。
【請求項7】
アクリル接触角が5°と18°の間にある、請求項6記載の処方物。
【請求項8】
歯科装置を、実質的に抗微生物剤を含まない通気泡沫組成物と、歯科装置の洗浄に有効な時間接触させることを含む、口腔外で歯科装置を洗浄する方法であって、該通気泡沫組成物が約50−99%w/wの水相、約1−50%w/wの水非混和性油相を含み、該油相が非混和性油と1つまたは複数のフレーバー油の組合せを含むところの、方法。
【請求項9】
歯科装置を水ですすぐ工程をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
実質的に抗微生物剤を含まず、通気泡沫の形態で分配され、約50−99%w/wの水相と、約1−50%w/wの水非混和性油相とを含む準安定なエマルジョンであり、油相が非混和性油および1つまたは複数のフレーバー油の組合せを有する歯科装置洗浄処方物をデリバリーするキットであって、ディスペンサーおよび個別に梱包された容量の歯科装置洗浄処方物を含むキット。
【請求項11】
実質的に抗微生物剤および/またはアルコールを含まず、通気泡沫の形態で分配される歯科装置洗浄処方物であって、約50−99%w/wの水相、約1−50%w/wの水非混和性油相、および約0.5−6%w/wの陰イオン界面活性物質、双性イオン界面活性物質および非イオン界面活性物質またはそれらの組合せから選択される界面活性物質を含む準安定なエマルジョンであり、その油相が非混和性油および1つまたは複数のフレーバー油の組合せを有する歯科装置洗浄処方物。
【請求項12】
実質的に抗微生物剤を含まず、通気泡沫の形態で分配されるアルコール不含の歯科装置洗浄処方物であって、約50−99%w/wの水相、約1−50%w/wの水非混和性油相を含む準安定なエマルジョンであり、該油相が1つまたは複数の非混和性油および1つまたは複数のフレーバー油の組合せを有する歯科装置洗浄処方物。
【請求項13】
請求項1に記載の有効量の処方物を、それを必要としているヒトにて処理することを含む、義歯口臭の予防方法。
【請求項14】
請求項1に記載の有効量の処方物を、それを必要としているヒトにて処理することを含む、歯科装置を着用する者の口腔において爽やかな息を維持する方法。

【公開番号】特開2007−254471(P2007−254471A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74761(P2007−74761)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(591002957)スミスクライン・ビーチャム・コーポレイション (341)
【氏名又は名称原語表記】SMITHKLINE BEECHAM CORPORATION
【Fターム(参考)】