説明

気密封止型電子部品

【課題】 気密封止型電子部品の外部表面の無鉛化に対応するとともに、キャップにベースを圧入する際の挿入性と嵌合特性、および外部端子との接続性を低下させることなく、安価に耐熱性に優れた気密封止を行う電子部品を提供する。
【解決手段】 ガラスを介してリード端子が貫通固定されたベース1と、当該ベースに搭載される電子素子2と、前記ベースに圧入されることにより前記電子素子を気密封止するキャップ3とからなる電子部品であって、前記キャップの内部に格納されるリード端子表面と、圧入によりキャップがベースに密接するベース表面には高温半田膜が形成され、前記キャップから外部に露出したリード端子表面には金属ろう材の接合性を向上する無鉛金属膜が形成されてなるとともに、前記高温半田膜は、キャップ内部のみに形成されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水晶振動子等の電子部品に関するものであり、特に、キャップにベースが圧入されることにより気密封止され、耐熱性を有する気密封止型の電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属製のシェルに絶縁ガラスが充填され、当該絶縁ガラスに金属製のリード端子が貫通固定されたベースを用い、当該ベースに円筒状の金属製のキャップを圧入する気密封止構成は、例えばシリンダー型の容器に収納された音叉型水晶振動子等で慣用されている。当該気密封止はベース、キャップのいずれか一方あるいは両者の接合部分に軟質金属を形成し、相対的に若干大きな径の略円柱状のベースに円筒状のキャップを圧入することにより、軟質金属の塑性変形によりシールが行われるものである。
【0003】
従来の構成は、例えばベースの金属製のシェルの基材はコバールからなり、当該シェルとリード端子の表面に錫と鉛を主成分として含有する半田めっき層を形成した構成である。また、キャップは洋白等の銅ニッケル系合金から構成されていた。以上の金属膜構成により、ベース側の半田層が軟質で、延性に優れているため、両金属が強く密着した状態で圧入されることにより塑性変形し、圧入を容易にしていた。
【0004】
ところで近年においては、リフローソルダリング環境に対応させる必要がでてきた。すなわち、リフローソルダリングにおいては、240〜270℃等の高温環境により実装基板への搭載を行うため、この圧入部分および水晶振動片などの電子素子を搭載するインナーリード部分の金属膜構成も耐熱性が要求されるようになっている。
【0005】
このような要求に対応するために半田組成を例えば鉛9:錫1と鉛含有量を増加させ融点を上げた半田が用いられてきた。しかしながら、鉛は人体に対して有害な物質であるため世界的にその使用を抑制あるいは禁止する傾向にあり、上記半田組成はこのような無鉛化の動向に反するものであり、代替品が求められていた。
【0006】
このような無鉛化を考慮した構成が特開2001−9587号(特許文献1)に開示されている。特許文献1においては、リード端子を含むベースとキャップの表面には、錫銅合金などの鉛フリー半田めっき層が施されており、当該鉛フリー半田めっき層がシール材料として用いられている。銅の溶融温度は高いため、めっき後のベース、キャップは高温で処理することができ、いわゆる耐熱仕様品に適用することができ、上述のリフローソルダリング環境に対応させることができる。
【0007】
しかしながら、鉛を含まない鉛フリー高温半田めっき層では、鉛を含む高温半田めっき層に比べて、キャップにベースを圧入する際のすべりが悪く、ひっかかりが生じやすくなり、挿入性と嵌合特性が低下していた。結果として、ベースのガラス部分にクラックが発生したり、気密不良が発生するという問題があり、量産化に不向きな状態にあった。また、鉛フリー高温半田めっき層では、鉛を含有する半田めっき層に比べて、外部端子とのろう付け性が低下するおそれがあった。なお、金錫めっき層を用いたものでは鉛フリーを実現しながら上記挿入性と嵌合特性が低下させることもないが、コストが高く経済性に難があるといった問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開平2001−9587号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、気密封止型電子部品の外部表面の無鉛化に対応するとともに、キャップにベースを圧入する際の挿入性と嵌合特性、および外部端子との接続性を低下させることなく、安価に耐熱性に優れた気密封止を行う電子部品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明では、特許請求項1に示すように、金属製のシェルに絶縁ガラスが充填され、当該絶縁ガラスに金属製のリード端子が貫通固定されたベースと、当該ベースに搭載される電子素子と、前記ベースに圧入されることにより前記電子素子を気密封止する金属製のキャップとからなる電子部品であって、前記キャップの表面、または前記ベースの表面のうち、前記電子部品として外部表面に露出する金属部分には高温半田膜が形成されておらず、少なくともキャップとベースが圧入により密接する金属部分には前記高温半田膜が形成され、前記電子部品のうち外部表面に露出したリード端子表面には金属ろう材の接合性を向上する無鉛の第2の金属膜が形成されてなることを特徴とする。
【0011】
本発明の特許請求項1により、前記キャップの表面、または前記ベースの表面のうち、前記電子部品として外部表面に露出する金属部分には高温半田膜が形成されておらず、少なくともキャップとベースが圧入により密接する金属部分には前記高温半田膜が形成され、前記電子部品のうち外部表面に露出したリード端子表面には金属ろう材の接合性を向上する無鉛の第2の金属膜が形成されているので、気密封止に関連するキャップとベースが圧入により密接する金属部分に耐熱性を得ながら、当該高温半田膜を外部に露出することによる悪影響を一切なくすことができる。また、高温半田膜の代わりに無鉛金属膜を外部側のリード端子に形成することで、リード端子の金属ろう材の接合性を向上することができる。このため、気密封止型電子部品を外部回路基板に搭載する際、半田ぬれ性が向上して接合強度が高まり、外部回路基板の端子接続部とのより信頼性の高い接合が行える。高温半田膜の代わりに無鉛金属膜を外部側のリード端子に形成することで、気密封止型電子部品の外部表面の無鉛化を実現することができる。
【0012】
より具体的な構成として、特許請求項2に示すように、上述の構成に加えて、前記高温半田膜は、前記ベースのうち、キャップの内部に格納されるリード端子表面と、圧入によりキャップがベースに密接するベース表面とのキャップ内部のみに形成されていることを特徴とする。このため、電子素子の搭載に関連する内部側のリード端子と、気密封止に関連するベース表面の一部に対して同時に耐熱性を得ながら、当該高温半田膜を外部に露出することによる悪影響を一切なくすことができる。
【0013】
また、他の具体的な構成として、特許請求項3に示すように、上述の構成に加えて、前記高温半田膜は、前記キャップのうち、内部表面全体に形成されていることを特徴とする。このため、気密封止に関連するキャップ内部表面全体に耐熱性を得ながら、当該高温半田膜を外部に露出することによる悪影響を一切なくすことができる。また、この高温半田膜はリフローソルダリング環境に耐え得る耐熱性を有しているので、キャップ内部で溶融してガスが発生することもない。この高温半田膜の形成領域はキャップ内部の全体に形成しているので、形成領域を特定することによる製造の困難性がなく、より容易に作成できる。
【0014】
また、特許請求項4に示すように、前記高温半田膜が鉛を主成分として含有する高温半田めっき層であることを特徴とする。
【0015】
本発明の特許請求項4により、上述の作用効果に加え、鉛を主成分として含有する高温半田めっき層は、延性に優れ、ベースとキャップの両金属が強く密着した状態で塑性変形するだけでなく、すべりがよく、ひっかかりが生じにくい状態で圧入することができる。つまり、圧入に必要な挿入性と嵌合特性を具備した高温半田めっき層であるので、キャップにベースを圧入する際の圧入作業を容易にし、結果としてベースのガラス部分にクラックが発生したり、気密不良が発生するといった問題がなくなる。より安価な高温半田膜で信頼性の高い気密封止が行える。また、鉛を主成分として含有する高温半田めっき層はキャップ内部のみに形成されるので、外部に露出することによる悪影響を一切なくすことができる。つまり、気密封止型電子部品の外部表面の無鉛化を実現することができる。
【0016】
また、特許請求項5に示すように、前記第2の金属膜が気密封止型電子部品の外部表面の金属部分全面に形成されてなることを特徴とする。
【0017】
本発明の特許請求項5により、上述の作用効果に加え、前記第2の金属膜が気密封止型電子部品の外部表面の金属部分全面に形成されてなるので、リード端子のみならずキャップでの金属ろう材の接合性も向上する。この際、キャップをアース端子として、外部回路基板、あるいはリードフレームと接合する構成にも対応できる。
【0018】
また、特許請求項6に示すように、前記第2の金属膜が錫めっき層であることを特徴とする。
【0019】
本発明の特許請求項6により、上述の作用効果に加え、前記第2の金属膜が錫めっき層であるので、気密封止型電子部品の外部表面の無鉛化を実現するとともに、金属ろう材の接合性を高める安価な金属膜が得られる。
【0020】
また、特許請求項7に示すように、前記鉛を主成分として含有する高温半田めっき層、および前記錫めっき層は、銅層、あるいはニッケル層の下地めっき層のうち、少なくともいずれか一方を介在させて形成してなることを特徴とする。
【0021】
本発明の特許請求項7により、上述の作用効果に加え、上記鉛を主成分として含有する高温半田めっき層のベースや内部側のリード端子への付着性、および上記錫めっき層の外部側のリード端子やキャップへの付着性を高め、よりめっき層の強度が安定したものとできる。
【0022】
また、特許請求項8に示すように、金属製のシェルに絶縁ガラスが充填され、当該絶縁ガラスに金属製のリード端子が貫通固定されたベースと、当該ベースに搭載される電子素子と、前記ベースに圧入されることにより前記電子素子を気密封止する金属製のキャップとからなる電子部品の製造方法において、前記シェルおよびリード端子に鉛を主成分として含有する高温半田めっき層を形成する工程と、前記リード端子に電子素子を搭載し、前記ベースにキャップを被せて気密封止する工程と、前記気密封止された電子部品の外部表面に形成された前記鉛を主成分として含有する高温半田めっき層を剥離除去する工程と、
前記鉛を主成分として含有する高温半田が剥離除去された電子部品の外部表面の金属部分全面に錫めっき層を形成する工程とからなることを特徴とする。
【0023】
本発明の特許請求項8により、圧入に必要な挿入性と嵌合特性を具備し、かつ耐熱性を有した鉛を主成分として含有する高温半田めっき層をキャップ内部にある電子素子の搭載に関連する内部側のリード端子と、気密封止に関連するベース表面の一部にのみに形成し、金属ろう材の接合性を向上できる錫めっき層を気密封止型電子部品の外部に露出したリード端子に形成することができる。その結果、気密封止型電子部品の外部表面の無鉛化を実現するとともに、キャップにベースを圧入する際の挿入性と嵌合特性、およびリード端子と外部端子との接続性を低下させることなく、電子素子の搭載部分と気密封止部分の耐熱性に優れた気密封止型電子部品の製造方法を提供することができる。
【0024】
また、特許請求項9に示すように、金属製のシェルに絶縁ガラスが充填され、当該絶縁ガラスに金属製のリード端子が貫通固定されたベースと、当該ベースに搭載される電子素子と、前記ベースに圧入されることにより前記電子素子を気密封止する金属製のキャップとからなる電子部品の製造方法において、前記キャップの表面全体に鉛を主成分として含有する高温半田めっき層を形成する工程と、前記リード端子に電子素子を搭載し、前記ベースにキャップを被せて気密封止する工程と、前記気密封止された電子部品の外部表面に形成された前記鉛を含有する高温半田めっき層を剥離除去する工程と、前記鉛を含有する高温半田が剥離除去された電子部品の外部表面の金属部分全面に錫めっき層を形成する工程とからなることを特徴とする。
【0025】
本発明の特許請求項9により、圧入に必要な挿入性と嵌合特性を具備し、かつ耐熱性を有した鉛を主成分として含有する高温半田めっき層を気密封止に関連するキャップ内部のみに形成し、金属ろう材の接合性を向上できる錫めっき層を気密封止型電子部品の外部に露出したリード端子に形成することができる。その結果、気密封止型電子部品の外部表面の無鉛化を実現するとともに、キャップにベースを圧入する際の挿入性と嵌合特性、およびリード端子と外部端子との接続性を低下させることなく、電子素子の搭載部分と気密封止部分の耐熱性に優れた気密封止型電子部品の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明による気密封止型電子部品によれば、気密封止に関連するキャップとベースが圧入により密接する金属部分に耐熱性を得ながら、当該高温半田膜を外部に露出することによる悪影響を一切なくし、高温半田膜の代わりに無鉛金属膜を外部側のリード端子に形成することで、リード端子の金属ろう材の接合性を向上することができる。例えば、高温半田膜として鉛を主成分として含有する高温半田めっき層を使用した場合、気密封止型電子部品の外部表面の無鉛化を実現するとともに、キャップにベースを圧入する際の挿入性と嵌合特性、およびリード端子と外部端子、金属キャップと外部端子との接続性を低下させることなく、電子素子の搭載部分と気密封止部分に対してリフローソルダリング時の加熱に十分対応させたより安価な気密封止型電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明による好ましい実施の形態について、圧入封止される気密封止型電子部品として音叉型水晶振動子を例にし、図面を参照して説明する。図1は音叉型水晶振動子の分解した内部構造を示す図であり、図2は本発明の実施形態を示すベース部分の部分拡大図である。なお、図2については、一方のリード端子部分のみを図示している。
【0028】
ベース1は、金属製のシェル10と、当該シェル内に充填された絶縁ガラス13と、当該絶縁ガラス13に貫通固定された金属製のリード端子11,12とからなる。シェル10は例えばコバール等を基体としており、上下に貫通した円筒形状を有している。リード端子11,12は例えばコバールを基体とし線状に加工され、かつ前記シェル10に所定の間隔をもって貫通配置されている。絶縁ガラス13は例えばホウケイ酸ガラスからなり、前記シェル10とリード端子11,12とを各々電気的に独立した状態でシェル内に充填されている。これらシェル10、リード端子11,12、絶縁ガラス13はガラス焼成技術により一体的に成形される。なお、シェル10あるいはリード端子11,12の金属材料は上記材料に限定されるものではなく、例えばシェルに42アロイ等の鉄ニッケル系合金を用いてもよい。
【0029】
この一体成形されたベース1を脱脂、酸洗浄等により金属表面の洗浄や浸炭部分の除去を行い、その後次の金属膜が形成される。ベース表面すなわちシェル10およびリード端子11,12のコバール表面には、例えば厚さ1〜7μm程度の銅層からなる下地めっき層101が電解めっきにより形成される。なお、この下地めっき層101は銅層に限らず厚さ1.5〜4μm程度のニッケル層としてもよい。
【0030】
次に前記下地めっき層101の上層には鉛を主成分として含有する高温半田めっき層102を形成する。本発明では鉛を主成分として含有する高温半田めっき層として、半田組成を例えば鉛9:錫1と鉛含有量を増加させ融点を上げた半田を使用し、厚さ5〜20μm程度に形成している。この高温半田めっき層の形成はバレルめっきを用いるとよい。バレルめっきは被膜形成対象物を投入したバレルをめっき浴に浸漬し、バレルを回転させることにより電解めっきを効率的に行うことができ、またバッチ処理が可能であることから、量産性にも優れている。なお、この鉛を主成分とする高温半田めっき層102として、上記に限らず、鉛錫銀半田めっき層等であってもよい。
【0031】
前記高温半田めっき層102の形成により、リード端子のインナー側11a,12aにおいては水晶振動片等の電子素子をろう材により接合する際のぬれ性および接合性向上に寄与する。以上のめっき処理により、ベース1のシェル10およびリード端子11,12表面に上記各金属層が形成される。
【0032】
次に、リード端子のインナー側11a,12aには電子素子である音叉型水晶振動子片2を搭載し、高温半田あるいは無鉛高温半田等のろう材により接合する。より詳しくは音叉型水晶振動子片の主面および側面には図示していないが1対の励振電極が形成されており、それぞれの電極が音叉型水晶振動片下方の基部21に引き出されている。音叉型水晶振動片の基部21をベースのリード端子インナー側11a,12aに直立した状態で、かつリード端子に接触した状態で搭載し、リード端子に予め供給された前記ろう材(図示せず)により、基部の電極とリード端子とを電気的機械的に接続する。インナー側11a,12aにはその表面に高温半田めっき層102が形成されているためにろう材との接合性が向上する。なお、リード端子のインナー側にろう材を供給することなく、インナー側の高温半田めっき層102を溶融して接合材として使用してもよい。
【0033】
キャップ3は例えば洋白(Cu−Ni−Zn系合金)等の金属材からなり、有底の円筒状を有している。キャップ3の外周および内周面にはニッケル層31がめっき等の手段により形成されている。当該ニッケル層31は、例えばワット浴やスルファミン酸浴等によるニッケルめっき浴を用い、厚さ1〜10μmのニッケル膜厚を得る。
【0034】
なお、当該キャップに形成する金属層は、ニッケルに代えて銀または金を用いてもよいし、ニッケル、銅、銀、金を適宜組み合わせた多層構造であってもよい。また母材(洋白)のまま用いることも可能である。キャップの内径は前記ベースのシェル部分の外径よりも若干小さく設計されており、例えば2〜5%小さな内径寸法に設定されている。このようなキャップにより真空雰囲気中で前記電子素子である音叉型水晶振動子片を被覆し、キャップ開口部をベースに圧入する。圧入により、ベースとキャップが強く密着することにより気密封止され、キャップ内部が真空状態に保たれる。このとき、鉛を主成分として含有する高温半田めっき層102をベースの封止部分にめっきしているので、延性に優れ、ベースとキャップの両金属が強く密着した状態で塑性変形するだけでなく、すべりがよく、ひっかかりが生じにくい状態で圧入することができる。つまり、圧入に必要な挿入性と嵌合特性を具備した高温半田めっき層であるので、キャップにベースを圧入する際の圧入作業を容易にし、結果としてベースのガラス部分にクラックが発生したり、気密不良が発生するといった問題がなくなる。
【0035】
以上により、図3(a)に示すように、リード端子のインナー側(図示せず)、アウター側ともその表面は銅層101、高温半田めっき層102の順で形成され、キャップ部の表面はニッケル層31が形成された電子部品を得ることができる。
【0036】
次に、上記気密封止された電子部品の外部表面に形成された前記高温半田めっき層102を剥離除去する。この剥離除去作業は酸、アルカリ等の剥離除去液が満たされた浴槽に上記電子部品を浸漬し、上記電子部品の外部表面に露出している高温半田めっき層102皮膜を溶解する。この作業により、図3(b)に示すように、上記電子部品の外部表面に露出していないリード端子のインナー側とベースの封止部分の高温半田めっき層102はそのまま残存した状態となり(図示せず)、電子部品のリード端子のアウター側に形成された前記高温半田めっき層102は剥離除去され、下地めっき層101が露出した状態となる。
【0037】
上記外部表面の高温半田めっき層102が剥離除去された電子部品は、外部表面の金属部分の全面である、リード端子のアウター側と、キャップ等に錫めっき層103が形成される。本発明ではバレルめっきにより、厚さ3〜10μm程度の錫めっき層103を形成している。
【0038】
以上により、図2および図3(c)に示すように、本発明の実施形態による電子部品の完成となる。すなわち、ベースの封止部とリード端子のインナー側11a,12aは、その表面は銅層101、高温半田めっき層102の順で形成され、リード端子のアウター側11b,12bの表面は、銅層101、錫めっき層103の順で形成される。キャップ部の内部表面であるキャップ内部とベースとの封止部分には、ニッケル層31のみが形成され、キャップ部の外部表面は、ニッケル層31、錫めっき層103の順で形成される。このため、圧入に必要な挿入性と嵌合特性を具備し、かつ耐熱性を有した鉛を主成分として含有する高温半田めっき層102を、キャップ内部のリード端子のインナー側11a,12aと、気密封止に関連するベース1の表面の封止部分のみに形成し、金属ろう材の接合性を向上できる錫めっき層103を気密封止型電子部品の外部に露出したリード端子のアウター側11b,12bと、キャップ3の外表面に形成することができる。その結果、気密封止型電子部品の外部表面の無鉛化を実現するとともに、キャップ3にベース1を圧入する際の挿入性と嵌合特性、およびリード端子と外部端子との接続性を低下させることなく、電子素子の搭載部分と気密封止部分の耐熱性に優れた安価な気密封止型電子部品を提供することができる。
【0039】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例をあげることができる。例えば上記構成において、上記錫めっき層103を形成する前に、例えば厚さ1〜5μm程度の銅層やニッケル層等からなる下地めっき層101を形成してもよい。この構成によれば、錫めっき層103による金属ろう材の接合性能をさらに向上させることができ、気密封止型電子部品の外部回路基板等へのスムーズな実装を行うことができる。また、上記実施形態では、外部表面の金属部分全面である、リード端子のアウター側11b,12bと、キャップ3等に錫めっき層103を形成したが、キャップをアース端子として、外部回路基板、あるいはリードフレームと接合する必要がない構成であれば、図4に示すように、少なくとも前記キャップから外部に露出したリード端子表面であるアウター側11b,12bのみに錫めっき層103を形成してもよい。
【0040】
次に、本発明による他の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、基本構成は上記実施形態と同様であり、相違点を中心に説明する。同様の部分については同番号を付して説明の一部を省略している。図5は本発明の他の実施形態を示すベース部分の部分拡大図である。
【0041】
ベース1は、金属製のシェル10と、当該シェル内に充填された絶縁ガラス13と、当該絶縁ガラス13に貫通固定された金属製のリード端子11,12とからなる。この一体成形されたベース1を脱脂、酸洗浄等により金属表面の洗浄や浸炭部分の除去を行い、その後次の金属膜が形成される。ベース表面すなわちシェル10およびリード端子11,12のコバール表面には、例えば厚さ1〜7μm程度の銅層からなる下地めっき層101が電解めっきにより形成される。なお、この下地めっき層101は銅層に限らず厚さ1.5〜4μm程度のニッケル層としてもよい。
【0042】
次に前記下地めっき層101の上層には金めっき層104を形成する。本発明では、厚さ0.03〜0.10μm程度に形成している。この金めっき層の形成はバレルめっきを用いるとよい。なお、この金めっきに限らず、銀めっき層等であってもよい。
【0043】
前記金めっき層104の形成により、リード端子のインナー側11a,12aにおいては水晶振動片等の電子素子をろう材により接合する際のぬれ性および接合性向上に寄与する。以上のめっき処理により、ベース1のシェル10およびリード端子11,12表面に上記各金属層が形成される。
【0044】
次に、リード端子のインナー側11a,12aには電子素子である音叉型水晶振動子片2を搭載し、高温半田あるいは無鉛高温半田等のろう材により接合する。より詳しくは音叉型水晶振動子片の主面および側面には図示していないが1対の励振電極が形成されており、それぞれの電極が音叉型水晶振動片下方の基部21に引き出されている。音叉型水晶振動片の基部21をベースのリード端子インナー側11a,12aに直立した状態で、かつリード端子に接触した状態で搭載し、リード端子に予め供給された前記ろう材(図示せず)により、基部の電極とリード端子とを電気的機械的に接続する。インナー側11a,12aにはその表面に金めっき層104が形成されているためにろう材との接合性が向上する。
【0045】
キャップ3は例えば洋白(Cu−Ni−Zn系合金)等の金属材からなり、有底の円筒状を有している。キャップ3の外周および内周面には、めっき等の手段により例えば厚さ1〜10μm程度のニッケル層からなる下地めっき層31が形成されている。当該ニッケル層は、例えばワット浴やスルファミン酸浴等によるニッケルめっき浴を用い、厚さ1〜10μmのニッケル膜厚を得る。なお、この下地めっき層31はニッケル層に限らず厚さ1〜7μm程度の銅層としてもよい。
【0046】
次に前記キャップの下地めっき層31の上面には、鉛を主成分として含有する高温半田めっき層102を形成する。本発明では鉛を主成分として含有する高温半田めっき層として、半田組成を例えば鉛9:錫1と鉛含有量を増加させ融点を上げた半田を使用し、厚さ5〜20μm程度に形成している。この高温半田めっき層の形成はバレルめっきを用いるとよい。バレルめっきは被膜形成対象物を投入したバレルをめっき浴に浸漬し、バレルを回転させることにより電解めっきを効率的に行うことができ、またバッチ処理が可能であることから、量産性にも優れている。なお、この鉛を主成分とする高温半田めっき層102として、上記に限らず、鉛錫銀半田めっき層等であってもよい。
【0047】
前記キャップの内径は前記ベースのシェル部分の外径よりも若干小さく設計されており、例えば2〜5%小さな内径寸法に設定されている。このようなキャップにより真空雰囲気中で前記電子素子である音叉型水晶振動子片を被覆し、キャップ開口部をベースに圧入する。圧入により、ベースとキャップが強く密着することにより気密封止され、キャップ内部が真空状態に保たれる。このとき、鉛を主成分として含有する高温半田めっき層102をキャップの表面にめっきしているので、延性に優れ、ベースとキャップの両金属が強く密着した状態で塑性変形するだけでなく、すべりがよく、ひっかかりが生じにくい状態で圧入することができる。つまり、圧入に必要な挿入性と嵌合特性を具備した高温半田めっき層であるので、キャップにベースを圧入する際の圧入作業を容易にし、結果としてベースのガラス部分にクラックが発生したり、気密不良が発生するといった問題がなくなる。
【0048】
以上により、図6(a)に示すように、リード端子のインナー側(図示せず)、アウター側ともその表面は銅層101、金めっき層104の順で形成され、キャップ部の表面はニッケル層31、高温半田めっき層102の順が形成された電子部品を得ることができる。
【0049】
次に、上記気密封止された電子部品の外部表面に形成された前記高温半田めっき層102を剥離除去する。この剥離除去作業は酸、アルカリ等の剥離除去液が満たされた浴槽に上記電子部品を浸漬し、上記電子部品の外部表面に露出している高温半田めっき層102皮膜を溶解する。この作業により、図6(b)に示すように、上記電子部品の外部表面に露出していないキャップ内部とベースとの封止部分の高温半田めっき層102はそのまま残存した状態となり(図示せず)、キャップの外部表面に形成された前記高温半田めっき層102は剥離除去され、下地めっき層31が露出した状態となる。
【0050】
上記外部表面の高温半田めっき層102が剥離除去された電子部品は、外部表面の金属部分の全面である、リード端子のアウター側と、キャップ等に錫めっき層103が形成される。本発明ではバレルめっきにより、厚さ3〜10μm程度の錫めっき層103を形成している。
【0051】
以上により、図5および図6(c)に示すように、本発明の他の実施形態による電子部品の完成となる。すなわち、ベースの封止部とリード端子のインナー側11a,12aは、その表面は銅層101、金めっき層104の順で形成され、リード端子のアウター側11b,12bの表面は、銅層101、金めっき層104、錫めっき層103の順で形成される。キャップ部の内部表面であるキャップ内部とベースとの封止部分には、ニッケル層31、高温半田めっき層102の順で形成され、キャップ部の外部表面は、ニッケル層31、錫めっき層103の順で形成される。このため、圧入に必要な挿入性と嵌合特性を具備し、かつ耐熱性を有した鉛を主成分として含有する高温半田めっき層102を、キャップ内部表面のみに形成し、金属ろう材の接合性を向上できる錫めっき層103を気密封止型電子部品の外部に露出したリード端子のアウター側11b,12bと、キャップ3の外表面に形成することができる。その結果、気密封止型電子部品の外部表面の無鉛化を実現するとともに、キャップ3にベース1を圧入する際の挿入性と嵌合特性、およびリード端子と外部端子との接続性を低下させることなく、電子素子の搭載部分と気密封止部分の耐熱性に優れた安価な気密封止型電子部品を提供することができる。
【0052】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例をあげることができる。例えば上記構成(本発明の他の実施の形態)において、外部表面の金属部分全面である、リード端子のアウター側11b,12bと、キャップ3等に錫めっき層103を形成したが、キャップを、外部回路基板、あるいはリードフレームと接合する必要がない構成であれば、図4に示すように、少なくとも前記キャップから外部に露出したリード端子表面であるアウター側11b,12bのみに錫めっき層103を形成してもよい。また、上記構成(本発明の他の実施の形態)のキャップと、上記実施形態におけるベースを組み合わせて実施することもできる。
【0053】
なお、上記各実施例においては、無鉛金属膜が錫めっき層を例にしており、金属ろう材の接合性を高める安価な金属膜として好ましいが、これらに限らず亜鉛膜、インジウム膜、ビスマス膜、銅膜、銀膜、金膜、あるいは錫を含めたこれら1つ以上の組み合わせからなる金属膜であってもよい。また、真空封止を行う音叉型水晶振動子を例示したが、不活性ガス雰囲気で他の振動モードの水晶振動子に適用することも可能であるし、他の電子素子の気密封止に適用することも可能である。
【0054】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形
で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎ
ず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであ
って、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属す
る変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】音叉型水晶振動子の分解した内部構造を示す図。
【図2】本発明の実施形態を示すベース部分の部分拡大図。
【図3】本発明の実施形態の一部の工程を示す図。
【図4】変形例を示す図。
【図5】本発明の他の実施形態を示すベース部分の部分拡大図。
【図6】本発明の他の実施形態の一部の工程を示す図。
【符号の説明】
【0056】
1 ベース
10 シェル
11,12 リード端子
13 絶縁ガラス
101 下地めっき層
102 高温半田めっき層
103 錫めっき層
104 金めっき層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のシェルに絶縁ガラスが充填され、
当該絶縁ガラスに金属製のリード端子が貫通固定されたベースと、
当該ベースに搭載される電子素子と、
前記ベースに圧入されることにより前記電子素子を気密封止する金属製のキャップとからなる電子部品であって、
前記キャップの表面、または前記ベースの表面のうち、前記電子部品として外部表面に露出する金属部分には高温半田膜が形成されておらず、少なくともキャップとベースが圧入により密接する金属部分には前記高温半田膜が形成され、
前記電子部品のうち外部表面に露出したリード端子表面には金属ろう材の接合性を向上する無鉛の第2の金属膜が形成されてなることを特徴とする気密封止型電子部品。
【請求項2】
前記高温半田膜は、前記ベースのうち、キャップの内部に格納されるリード端子表面と、圧入によりキャップがベースに密接するベース表面とのキャップ内部のみに形成されていることを特徴とする特許請求項1記載の気密封止型電子部品。
【請求項3】
前記高温半田膜は、前記キャップのうち、内部表面全体に形成されていることを特徴とする特許請求項1、または特許請求項2記載の気密封止型電子部品。
【請求項4】
前記高温半田膜が鉛を主成分として含有する高温半田めっき層であることを特徴とする特許請求項1乃至3記載の気密封止型電子部品。
【請求項5】
前記第2の金属膜が気密封止型電子部品の外部表面の金属部分全面に形成されてなることを特徴とする特許請求項1乃至4記載の気密封止型電子部品。
【請求項6】
前記第2の金属膜が錫めっき層であることを特徴とする特許請求項1乃至5記載の気密封止型電子部品。
【請求項7】
前記鉛を主成分として含有する高温半田めっき層、および前記錫めっき層は、銅層、あるいはニッケル層の下地めっき層のうち、少なくともいずれか一方を介在させて形成してなることを特徴とする特許請求項1乃至6記載の気密封止型電子部品。
【請求項8】
金属製のシェルに絶縁ガラスが充填され、当該絶縁ガラスに金属製のリード端子が貫通固定されたベースと、当該ベースに搭載される電子素子と、前記ベースに圧入されることにより前記電子素子を気密封止する金属製のキャップとからなる電子部品の製造方法において、
前記シェルおよびリード端子に鉛を主成分として含有する高温半田めっき層を形成する工程と、
前記リード端子に電子素子を搭載し、前記ベースにキャップを被せて気密封止する工程と、
前記気密封止された電子部品の外部表面に形成された前記鉛を主成分として含有する高温半田めっき層を剥離除去する工程と、
前記鉛を主成分として含有する高温半田が剥離除去された電子部品の外部表面の金属部分全面に錫めっき層を形成する工程とからなることを特徴とする気密封止型電子部品の製造方法。
【請求項9】
金属製のシェルに絶縁ガラスが充填され、当該絶縁ガラスに金属製のリード端子が貫通固定されたベースと、当該ベースに搭載される電子素子と、前記ベースに圧入されることにより前記電子素子を気密封止する金属製のキャップとからなる電子部品の製造方法において、
前記キャップの表面全体に鉛を主成分として含有する高温半田めっき層を形成する工程と、
前記リード端子に電子素子を搭載し、前記ベースにキャップを被せて気密封止する工程と、
前記気密封止された電子部品の外部表面に形成された前記鉛を主成分として含有する高温半田めっき層を剥離除去する工程と、
前記鉛を主成分として含有する高温半田が剥離除去された電子部品の外部表面の金属部分全面に錫めっき層を形成する工程とからなることを特徴とする気密封止型電子部品の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−150235(P2007−150235A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160128(P2006−160128)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】