説明

水中に存在する原子炉用の部品上の渦電流の測定に関するシステムおよび使用

【課題】原子炉用の部品(10)が水中(12)に存在する場合に、これらの部品(10)上の渦電流測定を行うのに適したシステムに関する。
【解決手段】システムは、制御ユニット(14)、制御ユニット(14)と測定プローブ(16)との間に少なくとも接続の部分を構成するために適した測定プローブ(16)および第1ケーブル(21)を備える。同様に、水中(12)に配置され、第1ケーブル(21)によって接続されるために配置され、測定プローブ(16)によって接続されるために適する切替ユニット(25)を備える。切替ユニット(25)は、少なくとも第1状態および第2状態をとる切替機構(27)を有する。第1状態において、第1ケーブル(21)は、測定プローブ(16)によって接続される。第2状態において、第1ケーブル(21)は、測定プローブ(16)によって接続されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉用の部品が水中に存在する場合に、これらの部品上の渦電流測定を行うのに適したシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
このシステムは、少なくとも1つの交流電磁界を発生させることによって、これが対象の部品に侵入し、同様に、発生させた交流電磁界に逆に作用する渦電流が発生することで、これらの部品の少なくとも1つの特性(部品にある少なくとも1つの層の厚さなど)を測定するのに適している。
このシステムは、発生させた交流電磁界に対する反応を測定して、対象の特性の計算を行うことによって、対象の特性の測定を行うように構成されている。
上記システムは、水の外に配置されるようになっており、測定を制御するように配置された制御ユニットと、水中において部品のすぐ近くに移動するのに適した測定プローブであって、好ましくは少なくとも1つのコイル手段を有し、このコイル手段による支援により、対象の上記部品に侵入する交流電磁界が生成される測定プローブと、上記制御ユニットと上記測定プローブ間の接続の少なくとも一部を形成するのに適した第1ケーブルと、を有し、上記ケーブルは、少なくとも部分的に水中に配置されるのに適している。
【0003】
この発明は、また、そのような電気的測定コンポーネントの使用法に関する。
【0004】
米国特許第5,889,401号明細書および米国特許第6,541,964号明細書には、原子力反応炉内の部品(燃料棒など)の渦電流測定のための方法および装置が記載されている。
これらの文献に記載されているように、例えば、このような部品に存在する層の厚さの測定の実施が可能であることが重要である。この層は、例えば酸化物層などである。
また、原子炉用の燃料棒は、別の種類の層(例えば、いわゆるクラッド層)を有することもある。
クラッド層は、通常、酸化物層の外に存在する。クラッド層は帯磁している場合があるため、酸化物層の厚さの測定が一層困難となる。しかし、クラッド層が帯磁している場合であっても、上記引用した文献に記載されているような適切な計算モデルを用いることによって、酸化物層の厚さ、クラッド層の厚さを測定することが可能である。
測定は、例えば部品中の水素化物の含有量に関してなど、層厚以外の特性に関して実行されてもよい。
測定は、測定対象のすぐ近くに配置された測定プローブによって行われる。測定プローブは、少なくとも1本のケーブルを介して測定装置に接続されている。ケーブルは一定の伝達関数を有するため、ケーブルの特性が測定結果に影響することがある。このため、正しい測定結果を取得するには、測定と共に、なかでもケーブルが測定結果に与える影響に関して較正を行う必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、測定装置の較正を可能にする、上記に記載したようなシステムを提供することにある。
目的は、これにより、ケーブルが測定結果に与える影響を考慮に入れた較正を可能にすることにある。
別の目的は、この較正を比較的容易に行うことができるようにすることにある。
更に別の目的は、実際の測定が行われる水中に、測定プローブと前述のケーブルがある場合に、較正を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的は、上記に記載したようなシステムによって実現することができ、上記システムは、水中に配置されるのに適し、上記第1ケーブルと、測定プローブとに接続されるように配置された切替ユニットを更に有し、上記切替ユニットは、少なくとも第1状態および第2状態をとる(assume)ことができる切替装置とを有し、上記第1状態において上記第1ケーブルが上記測定プローブに接続され、上記第2状態において上記第1ケーブルが上記測定プローブに接続されないことを特徴とする。
【0007】
システムがこのような切替ユニットを有するため、測定プローブと上記第1ケーブルが、測定が行われる水中に配置されている場合にも、測定装置の較正が可能となる。
このため、切替ユニットは、水中に配置されるのに適している。
このため、切替ユニットは、前述の第1ケーブルを、測定プローブとの間で接続および接続解除するために使用することができる。
第1ケーブルを測定プローブから接続解除することができるため、較正を行うことができる。
前述のように、第1ケーブルは一定の伝達関数を有するため、このケーブルが測定結果に影響することがある。
ケーブルの伝達関数は、必ずしも一定とは限らず、例えば、ケーブルの配置の仕方によって変わる。
このため、伝達関数は、測定を行うたびに変化する。このため、較正では、ケーブルの伝達関数の決定が行われる。これにより、ケーブルが測定に与える影響を除去することができる。
通常、測定中に測定プローブのインピーダンスが測定される。
ケーブルの影響を除去することができるため、測定プローブの実際のインピーダンスを取得することができる。
換言すれば、測定プローブのインピーダンスを分離することが可能である。システムが上述した切替ユニットを有することにより、このような較正が可能となる。較正自体がどのように行われるかについては、下記により詳細に説明する。
【0008】
上記制御ユニットは、好ましくは、切替装置の遠隔制御を可能にするための手段を有する。
このため、オペレータが、切替ユニットから離れた場所にいて、切替ユニットの一部を構成している切替装置を遠隔制御することができる。
【0009】
本明細書中、「ケーブル」という場合、このケーブルは好ましくは数個の導体を含んでもよいという点に留意されたい。
このため、本明細書および特許請求の範囲において、「あるケーブルがある方法で接続されている」という場合、好ましくは、ケーブルの2つの導体が記載した方法で接続されていることを適切に意味する。
【0010】
上記第1ケーブルは、制御ユニットから比較的遠距離での測定を可能にするために、好ましくは比較的長い。
第1ケーブルは、8mより適切に長く、例えば10m〜30mである。
【0011】
また、「交流電磁界が対象の部品に侵入する」という場合、交流電磁界がその部品全体に侵入することを必ずしも意味するわけではなく、交流電磁界が対象の部品の一部に侵入することを指すこともある点にも留意されたい。
【0012】
また、交流電磁界を発生させるために、測定プローブ内に適切に設けられたコイルを使用して、部品内で生成された渦電流と、発生させた交流電磁界に対する渦電流の反作用(rectroaction)を検出することもできる点にも留意されたい。
【0013】
上記システムの一実施形態によれば、上記切替ユニットは、少なくとも第1既知の負荷を有し、上記第2状態において上記第1ケーブルが上記第1既知の負荷に接続されるように構成されている。
切替ユニットがこのような第1既知の負荷を有するため、既知の負荷に較正測定を行うことができる。
この較正測定中に、第1ケーブルが既知の負荷に接続されるため、較正測定中にこのケーブルの影響が考慮される。
【0014】
第1既知の負荷は、好ましくは既知の有限のインピーダンス値を有する。この既知の有限のインピーダンス値は、例えば5Ω〜1000Ωなどであり、例えば50Ωである。上記第1既知の負荷は、好ましくは、測定を行う周波数範囲の全体にわたって定インピーダンスを有するという点に留意されたい。
【0015】
上記システムの別の実施形態によれば、上記切替ユニットは、第2既知の負荷を有し、上記切替装置は、第3状態をとる(assume)ことができ、上記第3状態において上記第1ケーブルが上記第2既知の負荷に接続される。切替ユニットが第2既知の負荷を有するため、上記第1ケーブルが第2既知の負荷に接続されることができるので、較正を改善することができる。
【0016】
第2既知の負荷は、ほぼ0Ωのインピーダンス値を有する。このため、第2既知の「負荷」は、短絡を構成する。
【0017】
上記システムの別の実施形態によれば、上記切替ユニットは、第3既知の負荷を有し、上記切替装置は、第4の状態をとる(assume)ことができ、上記第4の状態において上記第1ケーブルが上記第3既知の負荷に接続される。更に別の既知の負荷を使用することによって、較正能力が更に改善される。
【0018】
第3既知の負荷は、ほぼ無限大のインピーダンス値を有する。このため、第3既知の負荷は、開放(open contact)を構成する。
このような3つの負荷(すなわち、短絡、開放、および既知の有限のインピーダンス値)を有することにより、較正を正確に行うことができる。
また、好ましくは、上記第2「負荷」と第3負荷は、測定が行われる周波数範囲の全体にわたって定インピーダンスを有する。
【0019】
上記システムの別の実施形態によれば、上記システムは所定の長さLの第2ケーブルを有し、上記第2ケーブルの一端は上記切替ユニットに接続され、上記第2ケーブルの他端は上記測定プローブに接続されており、上記第1状態において上記第1ケーブルが上記第2ケーブルを介して上記測定プローブに接続される。
切替ユニットから測定プローブまで延びる第2ケーブルは、好ましくは比較的短い。長さLは、例えば0.3m〜3mであり、例えば0.4m〜2m、例えば約0.8mである。
【0020】
上記システムの別の実施形態によれば、上記切替ユニットは、上記第2ケーブルと同じ、あるいは少なくともほぼ同じ特性を有する第3ケーブルを有し、上記切替ユニットは、上記第1ケーブルが上記第2ケーブルの代わりに上記第3ケーブルに接続可能なように構成されている。
第3ケーブルは上記第2ケーブルと同様の特性を有するため、較正中に第3ケーブルを使用することができる。
【0021】
上記システムの別の実施形態によれば、第3ケーブルの長さはちょうどL、あるいは少なくともほぼLである。第3ケーブルは第2ケーブルとちょうど(またはほぼ)同じ長さを有するため、較正中に、第3ケーブルが測定に与える影響が、実際の測定中に、第2ケーブルが部品に与える影響に相当するようになる。
このため、第3ケーブルを使用することによって、較正は、測定プローブ自体に対して常に「先行させる(be moved forward)」ことができる。
これにより、測定中に、測定プローブのインピーダンス自体を、測定プローブに延びるケーブルが測定に与える影響から分離することが可能である。
【0022】
上記システムの別の実施形態によれば、上記切替ユニットは、上記第2状態、上記第3状態および上記第4の状態の少なくとも1つにおいて、上記第1ケーブルが、上記第3ケーブルを介して上記既知の負荷に接続されるように構成されている。対象の負荷が第3ケーブルを介して第1ケーブルに接続されるため、既知の負荷による較正測定中に、第2ケーブルの特性を考慮した結果が得られる(この結果が、その後、部品の実際の測定中に使用される)。
このため、上記した第2状態、第3状態および第4の状態において、測定プローブは、好ましくは第1ケーブルに接続されない。
【0023】
上記システムの別の実施形態によれば、上記切替ユニットは、水を侵入させないように作製されたケースを有し、これにより、上記切替ユニットが水中で使用される場合に、上記ケース内に配置された部品が乾いている(濡れることがなくなる)。ケース内には、少なくとも切替装置、負荷、および前述の第3ケーブルが適切に配置される。このため、これらの部品がケースによって保護される。
【0024】
上記システムの別の実施形態によれば、上記システムは、上記システムの使用中で、かつ上記切替ユニットが水中にあるときに、水が上記ケース内部に侵入するのを防ぐよう、ケース内を過圧にするために、上記ケース内に気体、好ましくは空気を導入するための手段を有して構成されている。ケース内に空気を導入することによって、ケース内の部品が濡れないことが更に保証される。
【0025】
上記システムの別の実施形態によれば、上記システムは、上記測定プローブを、測定対象の上記部品との間で近づけたり離したりして移動できるように構成された測定プローブホルダを有する。このため、測定プローブホルダ、すなわち測定キャリッジは、測定プローブを移動させるために適切に使用される。
【0026】
上記システムの別の実施形態によれば、上記システムは、上記測定プローブホルダの近くに配置され、既知の特性を有する1つ以上の較正目標を有し、上記測定プローブホルダは、較正測定を可能にするために、上記測定プローブを上記1つ以上の較正目標に移動可能なように構成されている。更に正確な較正のために、部品の測定が行われる水中において、測定プローブホルダの近くに、既知の特性を有する較正目標があれば有利である。
測定を燃料棒に対して行う場合には、較正目標は、既知の厚さの既知の層を有する短い燃料棒(または燃料棒の用のクラッドチューブ)を構成する。例えば、燃料棒中の水素化物の含有量に関して測定を行う場合には、較正目標も、同様に水素化物を既知の含有量に含む。
【0027】
上記システムの別の実施形態によれば、上記システムは、上記測定プローブホルダの上記移動の遠隔制御を可能にするように構成された遠隔制御手段を有する。このため、測定プローブから離れた場所にいるオペレータが、測定プローブホルダのモーメントを遠隔操作し、これにより測定プローブの移動を遠隔制御することができる。
【0028】
上記システムの別の実施形態によれば、上記システムは、上記切替ユニットまたは上記測定プローブに隣接して、あるいはその近くに置かれるように構成(適合)され、上記制御ユニットと通信している温度センサを有する。このため、温度センサは、測定の精度を改善するための温度の基準となる。
【0029】
上記システムの別の実施形態によれば、上記システムは、水の外に置かれるようになっており、直流抵抗の測定を行うように構成(適合)された抵抗計を有し、上記抵抗計は、上記第1ケーブルの一端に、上記第1ケーブルの上記他端が上記切替ユニットに接続されるのと同時に、接続されるように構成(適合)されている。このような抵抗計は、例えば、測定プローブでの温度を間接的に測定するために使用することができる(この方法については下記に記載する)。
このため、このような抵抗計は、上述した温度センサの代わりに用いるか、あるいはその補助として使用することができる。
【0030】
上記システムの別の実施形態によれば、上記切替ユニットおよびその一部を構成している部品は、原子炉用の部品の水中での測定中など、放射性環境で機能するように構成(適合)されている。
例えば、切替装置は、測定を行う環境における強度の放射線の影響を受けないリレーから構成される。
切替ユニットは、特性を測定する部品(例えば燃料棒)から、(上述した第2ケーブルにより)ある程度離間して配置することができるという点に留意されたい。更に、ケースが、放射線から保護する材料から形成されてもよい。
ケースは、例えば、このような保護をある程度与えるアルミニウムから形成される。
リレーは、好ましくは、インピーダンスに大きく影響することはないような高品質のものである。
【0031】
上記システムの別の実施形態によれば、上記システムは、上記の測定プローブが上記切替ユニットに接続されるのと同時に、上記切替ユニットに接続されように構成(適合)された別の測定プローブを有する。
別の測定プローブを有することによって、例えば、上記の測定プローブが、特性を測定する部品自体に配置されるのと同時に、この別の測定プローブを較正目標に配置することが可能となる。
これにより、対象の部品の特性を決定するための比較測定を行うことが可能となる。
【0032】
また、本発明は、上述した実施形態のいずれか1つに記載のシステムの使用に関する。
これにより、上記システムは、測定が行われる上記部品が原子炉用の燃料棒であるときに使用される。
このため、本発明によるシステムは、燃料棒の形の部品の測定に使用され、有利である。
燃料棒は、核燃料を格納しているクラッドチューブを有するという点に留意されたい。
本明細書中、「測定が燃料棒に対して行われる」という場合、好ましくは、測定が、核燃料を取り囲むクラッドチューブに対して行われることを意味する。
【0033】
上記システムの1つの使用によれば、燃料棒にある少なくとも1つの層の厚さの測定が行われる。
このため、システムの適切な使用は、層厚、例えば燃料棒(核燃料を取り囲むクラッドチューブ)にある酸化物層の厚さの測定である。
【0034】
上記システムの別の使用によれば、上記燃料棒中の水素化物の含有量の測定が行われる。
前述のように、システムは、燃料棒(核燃料を取り囲むクラッドチューブ)中の水素化物の含有量を測定するために使用することもできる。
【0035】
上記システムの別の使用によれば、上記燃料棒が水プール内に存在するときに上記測定が行われる。核燃料プラントは、通常、燃料棒を含む燃料集合体が貯蔵されている水プールを有する。システムは、このような水プールでの測定に、適切に使用される。測定は、5mを超える水深で適切に実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
このように、本発明によるシステムの一実施形態は、図1および図2からその概略が明らかである。これらの図面は、原子炉用の部品10が水中12に存在するときに、これらの部品10に渦電流測定を行うのに適したシステムを示す。
部品10は、例えば、原子力反応炉用の燃料棒である。水12は、この燃料棒10が貯蔵されている水プールを構成する。図1では、水面13が破線で示されている。
水プールは、かなりの深さを有する。測定は、5mを超える水深で適切に実行される。
【0037】
このシステム全体は、この部品10の誘導渦電流の測定法の支援により、測定を行うように適切に構成されている。
例えば、この部品10に存在する可能性のある酸化物層の厚さ、クラッド層の厚さが、本発明によるシステムの支援によって測定される。また、例えば燃料棒10中の水素化物の含有量を測定するためなど、ほかの測定のためにシステムを使用することも可能である。
測定プローブ16を部品10のすぐ近くに移動させることによって、測定が行われる。測定プローブ16は、少なくとも1つのコイル18を適切に有し、このコイル18による支援により、交流電磁界が生成される。この交流電磁界は部品10に侵入する。
これにより、部品10内で渦電流が発生し、これが発生させた交流電磁界に逆に作用する。
システムは、測定プローブ16の支援により、発生させた交流電磁界への、渦電流によって引き起こされた反応を測定するように構成されている。
システムは、これによって、部品10で測定しようとしている対象の特性の計算を行うように構成されている。
測定手順自体は、例えば、上に挙げた米国特許に記載された方法で実行することができる。好ましくは、測定中に、異なる周波数の交流電磁界が生成される。計算モデルには、上記に挙げた文献に記載されているのと同様の反復過程が含まれる。
しかし、本発明は、これらの文献に記載された計算過程に限定されることはない。
【0038】
測定プローブ16は、なかでも第1ケーブル21の支援により、制御ユニット14に接続されている。第1ケーブル21の長さは、例えば15mでありる。
【0039】
測定プローブ内16に配置されるコイル18は、例えば、上に挙げた文献の米国特許第6,541,964号明細書に記載されたようなものであってよい。
【0040】
システムは、測定プローブ16から所定の距離を置いて水12の外の空間に置かれた制御ユニット14を備える。
制御ユニット14によって測定が制御される。制御ユニット14は、コンピュータ51、温度測定ユニット53、リレー駆動ユニット55およびインピーダンス解析器57を有する。ユニット53,55,57は、コンピュータ51に適切に接続されている。
【0041】
インピーダンス解析器57は、例えば、HP 4294Aなどである。インピーダンス解析器57は、インピーダンスプローブ59を介して第1ケーブル21に接続される。インピーダンスプローブ59は、例えば、HP 42941Aなどである。
【0042】
第1ケーブル21は、適切には同軸ケーブルである。第1ケーブル21は、切替ユニット25に接続されている。切替ユニット25は、第2ケーブル22の第1端22aとも接続されている。
第2ケーブル22の第2端22bは、測定プローブ16に接続されている。測定プローブ16は、測定プローブホルダ39内に配置されている。測定プローブホルダ39は、遠隔制御手段43から遠隔制御することができ、この遠隔制御手段43は制御ユニット14と関連するように構成される。
遠隔制御手段43は、コンピュータ51に接続されることも可能である。
このため、測定プローブ16は、測定プローブホルダ39の支援により、測定対象の部品10に近か付けたり、これから離れて移動することができる。移動は、カメラ(図示なし)の支援により適切に監視される。
【0043】
また、システムは、1つ以上の較正目標41を備える。これらの較正目標41は、燃料棒用のクラッドチューブの短い部分を構成する。較正目標41は、既知の特性を有し、これらは、例えば、較正目標に設けた既知の層厚、既知の水素化物の含有量などである。較正目標41は、測定プローブホルダ39の近くに配置されている。
このため、測定プローブ16を、較正目標41の1つ以上に移動させるために、測定プローブホルダ39が、遠隔制御手段43から遠隔制御される。当然、測定プローブ16は、この後に、部品10に戻される。
【0044】
第2ケーブル22の長さは、例えば、0.8mである。第2ケーブル22は、放射性環境(この場合、燃料棒10の近く)において使用することができるように適切に作製されている。
【0045】
システムは、実際の測定が行われる場所の近くに置かれた温度センサ45を備える。
温度センサ45は温度測定ユニット53に接続されている。このため、温度センサ45は制御ユニット14と通信している。
【0046】
切替ユニット25は、ケース35を有してもよく、ケース35はその内部に水を侵入させないように作製されている。ケース35は、例えば、ケース内部の部品を放射線からも保護するような、アルミニウムまたは他の適切な材料から形成される。システムは、ケース35内部を過圧にするため、ケース35内に空気を導入するための手段37も備える(例えば、空気ポンプを備える)。
これにより、水がケース35内部に侵入するのが阻止される。このため、ケース35内の部品が濡れることがなくなる。
【0047】
ケース35内には、切替装置27が含まれる。切替装置27は、リレーを有する。切替装置27は、異なる切替状態をとることができる。とりうる各種の切替状態が、図2に破線で概略的に示されている。切替装置27は、リレー駆動ユニット55から遠隔制御される。切替装置27は、例えば、ケーブル56を介してリレー駆動ユニット55に接続されている。このため、ケーブル56は、切替装置27に送る制御電流用のケーブルである。
【0048】
切替装置27は、第1切替状態では、第1ケーブル21が、切替ユニット25を介して第2ケーブル22に接続され、これによって測定プローブ16に接続されるように構成されている。
第2切替状態では、第1ケーブル21は、第2ケーブル22に接続されず、代わりに、第3ケーブル23に接続され、この第3ケーブル23を介して第1既知の負荷31に接続される。
この既知の負荷31は、50Ωのインピーダンス値を有する。ケーブル21,22,23は、少なくとも2つの導体を適切に含む点に留意されたい。
このため、第2状態では、この2つの導体が第1負荷31を介して相互に接続される。
【0049】
切替装置27は、第3状態では、第1ケーブル21が第3ケーブル23を介して第2既知の負荷32に接続されるように構成されている。第2既知の「負荷」32は、例えば短絡を構成しており、このためインピーダンス値0Ωを有する。
【0050】
切替装置27は、第4の状態では、第1ケーブル21が第3ケーブル23を介して第3既知の負荷33に接続されるように構成されている。第3既知の負荷33は無限大のインピーダンス値を適切に有する。すなわち、ケーブルの2つの導体が相互に接続されない(開放状態)。
【0051】
第3ケーブル23は、第2ケーブル22と同じ特性と、同じ長さLを適切に有する。既知の負荷31,32,33を用いることにより、その後行われる実際の測定中に使用される第2ケーブル22の特性が、較正測定中に考慮される。
【0052】
このため、切替ユニット25の支援により、較正を既知の負荷31,32,33の支援によって行うことができる。この較正は、切替ユニット25を、その後行われる部品10の実際の測定での位置と同じ位置に配置して行われる。
また、これは、長い第1ケーブル21が、較正測定中に、その後行われる部品10の測定で配置されるのと同じように配置されるということでもある。
このため、較正測定中に、第1ケーブル21が測定に与える影響が考慮される。
更に、第3ケーブル23が第2ケーブル22と同じ特性を有することにより、第2ケーブル22の特性も考慮される。
このため、本発明により、較正を極めて正確に実行することができる。
その後行われる部品10の測定が複数の周波数で行われる場合、較正も、これに対応して、複数の周波数で適切に行われる。
このため、較正によって、第1ケーブルおよび(第3ケーブルの支援により)第2ケーブルが測定結果に与える影響を除去することが可能である。
換言すれば、測定プローブのインピーダンスを分離することが可能である。
【0053】
既知の負荷31,32,33の支援により実行される較正のほかに、較正目標41の較正測定を行うこともできる。
遠隔制御手段43とリレー駆動ユニット55により、この較正手順の全体を、遠隔制御することができる。
例えば、インピーダンスプローブ59、およびコイル18自体の特性に関して、更に別の較正を行うことができる点に留意されたい。
しかし、これらの較正については本明細書に記載しない。
【0054】
システムは、上記した温度センサ45の補助として、あるいはこの代替物として抵抗計63を備えてもよく、これは水12の外に置かれる。
抵抗計63は、直流抵抗の測定を行うように構成(適合)されている。抵抗計63は、上記第1ケーブル21の一端に、第1ケーブル21の他端が切替ユニット25に接続されるのと同時に接続されるように構成(適合)されている。
あるいは、システムが、例えば、第1ケーブル21のこの一端が、抵抗計63かインピーダンスプローブ59に代替的に接続できるように構成してもよい。この切替は、リレーユニット65の支援により行われる。
リレーユニット65による切替は、例えば、リレー駆動ユニット55の支援により制御される。また、抵抗計63は、制御ユニット14にも接続される。
【0055】
抵抗計63は、コイル18を含む測定プローブ16での温度を間接的に測定するために使用することができる。
測定プローブ16(特にコイル18)の抵抗は温度依存を示し、このため、測定プローブ16の抵抗を測定することによって、温度を測定することが可能である。抵抗計63の支援により、測定プローブ16の直流抵抗を測定することによって、そのインダクタンスおよびキャパシタンスからの影響が除去される。
【0056】
測定プローブ16の抵抗は、総抵抗から、第1ケーブル21と第2ケーブル22の抵抗を減算することによって分離することができ、総抵抗は、第1ケーブル21と第2ケーブル22を介して抵抗計63に接続した測定プローブ16で抵抗を測定することで取得される。
【0057】
(測定プローブ16を接続しないときの)第1ケーブル21と第2ケーブル22からの合成抵抗は、切替装置27が上記第3状態をとるときに抵抗計63の支援により測定することができる。
この状態では、第1ケーブル21は、第3ケーブル23を介して(第2ケーブル22に対応する)、第2既知の「負荷」32(すなわち短絡)に接続されている。
【0058】
このため、抵抗計の支援により、(この場合は測定プローブ16での)温度を間接測定するための方法が得られる。
渦電流測定中に正確な測定結果を取得するためには、温度を知ることが重要となる。
【0059】
また、図2には、第2ケーブル22と同じ特性を有し、同じ長さのケーブル61を介して切替ユニット25に接続された別の測定プローブ47がシステムに備えられてもよいことが示されている。
この別の測定プローブ47は、上で記載した測定プローブ16が切替ユニット25に接続されるのと同時に、切替ユニット25に接続される。
切替装置27により、測定プローブ16と測定プローブ47との間での切替を制御することが可能となる。
測定プローブ47は、例えば、測定プローブ16が部品10自体に配置されるのと同時に、較正目標41に配置される。
システムが測定ブリッジ(図示せず)を備えてもよく、これにより、プローブ16が部品10を測定するのと同時に、別の測定プローブ47が較正目標41を測定する直接比較測定を行うことができるよう、測定プローブ16と別の測定プローブ47が測定ブリッジを介して同時に接続されることが考えられる。
【0060】
切替ユニット25と、その内部に備えられた部品23,27,31,32,33は、放射性環境(この場合は、燃料棒10の測定が行われる場所)において機能するように作製されている。更に、切替装置27内に備えられた部品は、インピーダンスに大きく影響することのないような適切なものである。
【0061】
図2では、第2ケーブル22の第1端22aが、ケース35において切替ユニット25に接続されているように示されている点に留意されたい。
第2ケーブル22の第1端22aが、ケース35内に置かれた切替装置(リレー)27に直結されるよう、ケース35が、第2ケーブル22をケース35内に通すリードスルーを有することも当然可能である。
これと対応して、第1ケーブル21とケーブル61が、ケース35内に延び、切替装置(リレー)27に直結されてもよい。
また、第3ケーブル23も、当然、切替装置(リレー)27に直結されてもよい。
当然、第3ケーブル23は、その特性が第2ケーブル22の特性(およびケーブル61の特性)に対応するように接続される必要がある。
【0062】
本発明によれば、このシステムは、例えば原子炉用の燃料棒にある層の厚さの測定に使用することができる。
例えば、酸化物層の厚さ、クラッド層の厚さを、本発明によるシステムの支援により測定することができる。
また、例えばこのような燃料棒中の水素化物の含有量を測定することも可能である。
燃料棒が水プール内にある場合、上で述べたように測定が適切に行われる。
【0063】
本発明は、図示する実行例に限定されず、上記請求項の範囲内で変えおよび修正してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明によるシステムの概略的な実施例を示す図である。
【図2】図1に従うシステムの一部の詳細な図である。より詳細には、図2は、本発明によるシステムの一部を構成している切替ユニットの一部を形成する部分を概略的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉用の部品(10)が水(12)中に存在する場合に、部品(10)上の渦電流測定を行うのに適したシステムであって、
前記部品にある少なくとも1つの層の厚さのような、部品(10)の少なくとも一つの特性を測定するために構成され、
対象となる前記部品(10)に侵入する少なくとも1つの交流電磁界を発生させることによって、同様に前記発生された交流電磁界に逆に作用する渦電流が発生され、
発生させた交流電磁界に対する反応を測定して、対象の特性の計算を行うことによって、対象の特性の測定を行うように構成され、
前記水(12)の外側に設置されることを目的として配置され、前記測定を制御する制御ユニット(14)と、
前記水(12)中において前記部品(10)のごく近くに移動するのに適した測定プローブ(16)とを有し、
前記測定プローブ(16)は、少なくとも1つのコイル手段(18)を含み、このコイル手段(18)による支援により対象の前記部品(10)に侵入する前記交流電磁界が生成され、
前記制御ユニット(14)と前記測定プローブ(16)との間に少なくとも接続の部分を構成するために適した第1ケーブル(21)と、
第1ケーブル(21)は、少なくとも部分的に前記水(12)中に配置されるのに適し、
水(12)中に配置されるのに適し、前記第1ケーブル(21)と前記測定プローブ(16)とに接続されるように配置された切替ユニット(25)と、
前記切替ユニット(25)は、少なくとも第1状態および第2状態をとる切替装置(27)を有し、
前記第1ケーブル(21)は、前記第1状態において前記測定プローブ(16)によって接続され、
前記第1ケーブル(21)は、前記第2状態において前記測定プローブ(16)によって接続されない、ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記切替ユニット(25)は、少なくとも第1既知負荷(31)を有し、前記第2状態において前記第1ケーブル(21)が前記第1既知負荷(31)に接続されるように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1既知負荷(31)は、既知の有限インピーダンス値を有する、ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記既知の有限のインピーダンス値は、5Ωから1000Ωの間である、ことを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記切替ユニット(25)は、第2既知負荷(32)を有し、
前記切替装置(27)は、第3状態をとり、前記第3状態において前記第1ケーブル(21)が前記第2既知負荷(32)に接続される、ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項6】
前記第2既知負荷(32)は、ほぼ0Ωのインピーダンス値を有する、ことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記切替ユニット(25)は、第3既知負荷(33)を有し、
前記切替装置(27)は、第4状態をとり、前記第4状態において前記第1ケーブル(21)が前記第3既知負荷(33)に接続される、ことを特徴とする請求項5または6に記載のシステム。
【請求項8】
第3既知負荷は、ほぼ無限大のインピーダンス値を有する、ことを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
所定の長さIの第2ケーブルを有し、
前記第2ケーブル(22)の一端(22a)は、前記切替ユニット(25)に接続され、前記第2ケーブル(22)の他端(22b)は前記測定プローブ(16)に接続され、
前記第1状態において前記第1ケーブル(21)が前記第2ケーブル(22)を介して前記測定プローブ(16)に接続される、ことを特徴とする請求項1乃至8に記載のシステム。
【請求項10】
前記切替ユニット(25)は、前記第2ケーブル(22)と同じ、あるいは少なくともほぼ同じ特性を有する第3ケーブル(23)を有し、
前記切替ユニット(27)は、前記第1ケーブル(21)が前記第2ケーブル(22)の代わりに前記第3ケーブル(23)に接続可能なように構成されている、ことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記第3ケーブル(23)は、正確または少なくともほぼ前記長さIを有する、ことを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記切替ユニット(25)は、第2状態、第3状態および第4状態の少なくとも1つにおいて、
前記第1ケーブル(21)が、前記第3ケーブル(23)を介して既知負荷(31,32,33)に接続されるように構成される、ことを特徴とする請求項10または11に記載のシステム。
【請求項13】
前記切替ユニット(25)は、水を侵入させないように作製されたケース(35)を有し、これにより、前記切替ユニット(25)が水中で使用される場合に、前記ケース(35)内に配置された部品が乾いている、ことを特徴とする請求項1乃至12に記載のシステム。
【請求項14】
前記システムが使用中かつ前記切替ユニット(25)が水(12)中にある場合に、水が前記ケース(35)内部に侵入するのを防ぐようにケース(35)内を過圧にするために、前記ケース(35)内に気体、好ましくは空気を導入するための手段(37)を有して構成されている、ことを特徴とする請求項13記載のシステム。
【請求項15】
前記測定プローブ(16)を、測定対象の前記部品(10)との間で近づけたり離したりして移動できるように構成された測定プローブホルダ(39)を有し、ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項16】
前記測定プローブホルダ(39)の近くに配置され、既知の特性を有する1つ以上の較正目標(41)を有し、
前記測定プローブホルダ(39)は、較正測定を可能にするために、前記測定プローブ(16)を前記1つ以上の較正目標(41)に移動可能なように構成される、ことを特徴とする請求項15記載のシステム。
【請求項17】
前記測定プローブホルダ(39)の前記移動の遠隔制御を可能にするように構成された遠隔制御手段(43)を有し、ことを特徴とする請求項15または16に記載のシステム。
【請求項18】
前記切替ユニット(25)または前記測定プローブ(16)に隣接またはその近くに置かれるように構成され、前記制御ユニット(14)と通信する温度センサを有し、ことを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項19】
前記水(12)の外に設置され、直流抵抗の測定を行うために構成される抵抗計(63)を有し、
前記抵抗計は、前記第1ケーブル(21)の一端に、前記第1ケーブル(21)の他端が前記切替ユニット(25)に接続されるのと同時に、接続されるように構成されている、ことを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項20】
前記切替ユニット(25)およびその一部を構成している部品は、原子炉用の部品(10)の水中での測定中の場合を含む放射性環境で機能するように適合されている、ことを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項21】
前記測定プローブ(16)が前記切替ユニット(25)に接続されると同時に、前記切替ユニット(25)に接続されるように適合された別の測定プローブ(47)を有する、ことを特徴とする請求項1乃至20のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項22】
前記部品(10)が原子炉用の燃料棒であるときに測定が行われる、ことを特徴とする請求項1乃至21のいずれか1つに記載のシステムの使用。
【請求項23】
燃料棒(10)にある少なくとも1つの層の厚さの測定が行われる、ことを特徴とする請求項22に記載の使用。
【請求項24】
燃料棒(10)の中の水素化物の含有量の測定が行われる、ことを特徴とする請求項22乃至23のいずれか1つに記載の使用。
【請求項25】
燃料棒が水プール内に位置する場合、前記測定が行われる、ことを特徴とする請求項22乃至24のいずれか1つに記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−506318(P2009−506318A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527877(P2008−527877)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【国際出願番号】PCT/SE2006/050202
【国際公開番号】WO2007/053100
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(504446548)ウェスティングハウス エレクトリック スウェーデン アーベー (26)
【Fターム(参考)】