説明

水中ポンプ

【課題】ポンプ部を直接、降ろすことができない水底に沈殿したスライム等を効率よく排出することが可能な水中ポンプを提供する。
【解決手段】水底に沈殿したスライム等の沈殿物63を吸い上げるためのスライムポンプ1である。
そして、スライム等を吸い込むポンプ部2と、スライム等を撹拌する撹拌棒3と、ポンプ部2の周囲を囲うスカート部4とを備え、ポンプ部2の下方に位置するポンプ側歯車26に並列して噛み合って回転する減速機5が設けられ、その減速機5の減速歯車51の回転に伴って回転する取付け部55に撹拌棒3が取り付けられるとともに、スカート部4は撹拌棒3の回転範囲及びポンプ部2の吸込み口21を覆う形状に成形される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭や連続地中壁などを構築する際に水中掘削された孔などの底部において、沈殿しているスライムや土砂を吸い上げて孔外に排出するための水中ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水底に沈殿したスライム又は土砂を吸い上げる水中ポンプが知られている(特許文献1,2など参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されたスライム処理方法は、水中ポンプの下部に装着されたスクレーパーによって水底のスライムを掻き寄せ、水中ポンプで吸い上げる構成となっている。
【0004】
また、特許文献2に開示された水中ポンプは、沈殿した土砂などを撹拌する撹乱手段として、上下方向に間隔を置いた複数段の螺旋羽根を設けている。
【特許文献1】特許第2640841号公報
【特許文献2】特開2003−74487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した特許文献1の水中ポンプでは、スクレーパーで直接、堆積した土砂を掻き寄せるので、回転抵抗が大きく、スクレーパーを回転させる駆動手段が大型になる。また、特許文献2の水中ポンプも、螺旋羽根を複数段に設けるので、機械高さが高くなり、水中ポンプが大型化する要因になる。
【0006】
さらに、特許文献1,2に開示された水中ポンプでは、スクレーパーや撹乱手段によって舞い上がったスライム又は土砂の上昇を抑える手段がないので、水中ポンプで吸引し損なって舞い上がったスライム等が再び水底に沈殿することになる。
【0007】
そこで、本発明は、ポンプ部を直接、降ろすことができない水底に沈殿したスライム等を効率よく排出することが可能な水中ポンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の水中ポンプは、水底に沈殿したスライム又は土砂を吸い上げるための水中ポンプであって、前記スライム又は土砂を吸い込むポンプ部と、前記スライム又は土砂を撹拌する撹拌部と、前記ポンプ部の周囲を囲うスカート部とを備え、前記ポンプ部の下方に位置する回転機構に並列して噛み合って回転する伝達機構が設けられ、その伝達機構の回転に伴って回転する取付け部に前記撹拌部が取り付けられるとともに、前記スカート部は前記撹拌部の回転範囲及び前記ポンプ部の吸込み口を覆う形状に成形されることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記伝達機構の回転軸は、平面視で前記ポンプ部の外側に配置されるように構成することができる。
【0010】
また、本発明の水中ポンプは、水底に沈殿したスライム又は土砂を吸い上げるための水中ポンプであって、前記スライム又は土砂を吸い込むポンプ部と、前記スライム又は土砂を撹拌する撹拌部と、前記ポンプ部の周囲を囲うスカート部とを備え、前記ポンプ部に隣接する位置に回転駆動機構が設けられ、その回転駆動機構の回転に伴って回転する取付け部に前記撹拌部が取り付けられるとともに、前記スカート部は前記撹拌部の回転範囲及び前記ポンプ部の吸込み口を覆う形状に成形されることを特徴とする。
【0011】
また、前記スカート部は偏心した截頭円錐形状であって、截頭部に前記ポンプ部が配置されるように構成することができる。
【0012】
さらに、前記撹拌部は円柱状部材によって形成することができる。
【0013】
また、前記スカート部と前記ポンプ部との間には、スカート部の内外を連通させる隙間が形成されていてもよい。
【0014】
さらに、前記撹拌部の底面は前記スカート部の底面より上方に位置するとともに、前記スカート部の底面開口には保護部材が架け渡されているように構成することもできる。
【発明の効果】
【0015】
このように構成された本発明の水中ポンプは、ポンプ部の下方に位置する回転機構に並列する伝達機構を備え、その伝達機構の回転に伴って撹拌部が回転する。また、この撹拌部とポンプ部の吸込み口とは、スカート部によって覆われている。
【0016】
すなわち、撹拌部の回転中心は回転機構の回転中心より横にずれることになるので、ポンプ部を直接、降ろすことができない水底に沈殿したスライム等を撹拌部によって撹拌することができる。また、撹拌部で撹拌されたスライム等が舞い上がっても、スカート部によって上昇が妨げられるので、効率よくスライム等を吸引させて排出することができる。
【0017】
特に、伝達機構の回転軸が、平面視でポンプ部の外側に配置されていれば、ポンプ部から離れた位置の水底に沈殿したスライム等であっても、容易に撹拌して除去することができる。
【0018】
さらに、上述したような効果は、ポンプ部に隣接する位置に回転駆動機構を設け、その回転駆動機構の回転に伴って撹拌部が回転するように構成することによっても得ることができる。
【0019】
また、スカート部を偏心した截頭円錐形状にすることで、撹拌部の回転に支障とならない剛性の高いスカート部を、簡単な構成で成形することができる。
【0020】
さらに、撹拌部を円柱状部材とすることで、撹拌時にスライム等から受ける抵抗を小さくすることができるうえに、長さ調節が容易になる。
【0021】
また、スカート部とポンプ部との間に、スカート部の内外を連通させる隙間を形成することで、容易にスカート部を備えた水中ポンプを水中に沈めることができる。
【0022】
さらに、撹拌部の底面をスカート部の底面より上方に位置させることで、撹拌部を水底から離間させて回転抵抗を小さくできるうえに、スカート部の底面開口に保護部材を掛け渡すことで、土砂等によって撹拌部に下方から作用する外力を低減して撹拌部の損傷を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1及び図2は、本実施の形態の水中ポンプとしてのスライムポンプ1の構成を説明する図である。
【0025】
まず、構成から説明すると、このスライムポンプ1は、スライム又は土砂(以下、「スライム等」という。)を吸い込むポンプ部2と、水底に沈殿したスライム等を撹拌する撹拌部としての撹拌棒3と、ポンプ部2の周囲を囲うスカート部4とを備えている。
【0026】
このポンプ部2は、底部に吸込み口21が形成され、上部に排水ホース23に接続する接続口22が設けられ、電力ケーブル24によって供給される電力によってモータ(図示せず)を駆動させてスライム等を吸い込み、排出するポンプである。また、このポンプ部2には、水中に吊り下げられるように吊り穴221,221が設けられている(図2参照)。
【0027】
このポンプ部2の吸込み口21は、図3に詳細を示すように、側面に設けられた複数の側面穴21a,・・・と、底面の中央に設けられた中央穴21bと、その周囲に複数設けられた底面穴21c,・・・とを備えており、それらの穴からスライム等を吸い込む。
【0028】
また、このポンプ部2の中央穴21bの中心には、羽根車を回転させるためのインペラ回転軸26aが設けられているが、本実施の形態では羽根車の代わりに回転機構としてのポンプ側歯車26を取り付ける。
【0029】
そして、このポンプ側歯車26には、伝達機構としての減速機5が接続される。この減速機5は、円盤状の減速歯車51と、その減速歯車51の回転軸52と、その回転軸52を支持させる筒部53と、撹拌棒3を取り付ける取付け部55とを備えている。
【0030】
この減速歯車51は、ポンプ側歯車26の直径より大きな歯車で、ポンプ側歯車26に並列して配置され、互いに噛み合っている。また、この減速歯車51の回転軸52は、ポンプ部2の外周に沿って立設されているので、平面視で見ると回転軸52はポンプ部2の外側に位置することになる。
【0031】
また、この回転軸52は、筒部53に挿通されて、筒部53から突出した上端は、取付け具251を介してポンプ部2に固定された軸受部25に支持される。また、筒部53の上部は支持材531を介してポンプ部2に支持され、下端はポンプ部2の底面に取り付けられる底面板54から延出されたフランジ部54aに固定される。
【0032】
一方、減速歯車51は、このフランジ部54aによって上方への移動が規制されるとともに、下面側の中央には撹拌棒3を取り付けるための取付け部55が設けられる。
【0033】
この取付け部55は、図3に示すように、減速歯車51と同心円の2体の円盤によって形成されている。また、減速歯車51には、上下方向に貫通する複数の穴部51a,・・・が設けられており、水中に沈める際の抵抗や浮力が低減される。
【0034】
そして、この取付け部55の下面には、撹拌棒3が取り付けられる。この撹拌棒3は、図3に詳細を示すように、取付け部55に固定する取付け管31と、その両端に挿し込まれる挿込み棒32,32とによって主に構成される。
【0035】
この撹拌棒3は、円柱状部材であって、回転時にスライム等から受ける抵抗が少ないので、インペラ回転軸26aの駆動力が大きくなくても容易に撹拌棒3を回転させることができる。なお、この撹拌棒3の形状は、円柱状に限定されるものではなく、三角柱状など抵抗の少ない形状を任意に選択することができる。
【0036】
また、取付け管31に挿し込む挿込み棒32,32の長さを調節することで、撹拌棒3の長さを変えて回転範囲を任意に調整することができる。
【0037】
そして、この撹拌棒3の回転範囲とポンプ部2の吸込み口21を覆うスカート部4は、図1に示すように、偏心した截頭円錐形状に形成される。すなわち、底面開口4bの中心と、上面の截頭部4aの中心がずれており、図1の断面図で見ると、ポンプ部2はスカート部4の一方の端に配置され、スカート部4はポンプ部2とは反対方向に広がる形状となっている。
【0038】
このスカート部4は、図2に示すように、底部の骨組みとなる2段のリング材431,431と、その上縁からポンプ部2の外周に向けて斜め上方に架け渡される骨格材43,・・・と、そのリング材431,431及び骨格材43,・・・の外周を覆う外殻部44とから主に構成される。このリング材431、骨格材43、外殻部44は、鉄骨や鋼板などの鋼材によって成形することができる。
【0039】
また、このスカート部4の底面開口4bには、図1,2に示すように、下段のリング材431の内周に架け渡される横架材42aと、その横架材42aと直交してリング材431の内周に取り付けられる固定材42b,42bとによって、柵状に形成された保護部材42が設けられる。
【0040】
ここで、撹拌棒3は、図1に示すように、その底面がこの保護部材42の上面より離隔した位置に配置されており、保護部材42が撹拌棒3の回転の支障となることはない。また、撹拌棒3の両端は、保護部材42によって保護されることになるので、スライムや土砂が下方から撹拌棒3に衝突する前に保護部材42で阻止され、撹拌棒3の端部が反り上がるなどして変形してしまうことがない。
【0041】
また、スカート部4の截頭部4aにおいて、ポンプ部2の外周と外殻部44の上縁との間には隙間41が設けられており、スカート部4の内外に自由に水が移動できるようになっている。
【0042】
次に、本実施の形態のスライムポンプ1の使用方法の一例について、図4を参照しながら説明する。
【0043】
この図4は、拡底杭を構築する工程を説明する図である。まず、拡底杭を構築するには、掘削孔にベントナイト泥水などの孔壁安定用の流体を満たしながら、円柱状の軸部60と、その軸部60の直径を下方に向けて徐々に広げた截頭円錐形状の拡幅部61とを備えた杭孔6を掘削する。
【0044】
この杭孔6の孔底62には、掘削によって発生した土砂やスライムなどが時間の経過とともに沈降して沈殿物63となっている。そして、このような沈殿物63を堆積させたままコンクリートを打設すると、コンクリートが孔底62まで充填できなかったり、コンクリートの品質が劣化したりして、所望する強度及び品質の拡底杭を構築できなくなるおそれがある。
【0045】
そこで、孔底62の沈殿物63を除去することになるが、沈殿物63の量が多い最初のうちは、底浚いバケットなどを杭孔6に投入して効率よく沈殿物63を除去することができる。
【0046】
しかし、図4に二点鎖線で示すように、鉄筋籠7を杭孔6に投入した後は、鉄筋籠7が支障になるので底浚いバケットを投入することができない。他方、通常の水中ポンプを投入したのでは、軸部60の真下の孔底62の沈殿物63は除去できても、拡幅部61の孔底62の沈殿物63を除去することはできない。
【0047】
そこで、本実施の形態のスライムポンプ1を使用することになる。すなわち、図4に示すように、杭孔6の鉄筋籠7の内側にスライムポンプ1を投入して、鉄筋籠7の端までスライムポンプ1を寄せると、ポンプ部2は鉄筋籠7の端の真下に配置されるが、そこからスカート部4が拡幅部61に向けて広がることになる。
【0048】
このため、軸部60の真上からは見えない拡幅部61の隠れた箇所にも、スライムポンプ1のスカート部4の広がっている部分を差し込むことができる。そして、スカート部4の内側で撹拌棒3を回転させると、沈殿物63が舞い上がってスカート部4の内部にスライム等が充満し、効率よくポンプ部2の吸込み口21からスライム等を吸い込ませて、排水ホース23の内部を搬送して杭孔6の外部に排出することができる。
【0049】
このスライムポンプ1によるスライム等の排出は、鉄筋籠7の有無に関わらずいつでもおこなうことができるので、コンクリートを打設する直前までスライムポンプ1を稼働させることで、高品質の拡底杭を構築することができる。
【0050】
次に、本実施の形態のスライムポンプ1の作用について説明する。
【0051】
このように構成された本実施の形態のスライムポンプ1は、ポンプ部2の下方に位置するポンプ側歯車26に並列する減速機5を備え、その減速機5の回転に伴って撹拌棒3が回転する。すなわち、撹拌棒3の回転中心はポンプ側歯車26の回転中心より横にずれることになるので、ポンプ部2を直接、降ろすことができない杭孔6の拡幅部61の孔底62に沈殿した沈殿物63を、撹拌棒3によって撹拌することができる。
【0052】
特に、減速機5の回転軸52が、平面視でポンプ部2の外側に配置されていれば、ポンプ部2から離れた位置の水底に沈殿したスライム等であっても、容易に撹拌して排出することができる。
【0053】
また、減速歯車51のように一枚の歯車で伝達機構を構成すれば、スカート部4やスライムポンプ1全体の高さを低く抑えることができるので、取り扱いが容易な簡素な構成のポンプで広い範囲の沈殿物63を除去することができる。
【0054】
さらに、減速歯車51の直径を大きくすることで、撹拌棒3の回転中心をポンプ部2からより離れた位置にできるので、拡幅部61が広くなっても対応させることが可能である。また、伝達機構は複数の歯車を組み合わせた構成とすることで、撹拌棒3の回転中心の位置を調整したり、回転速度や回転負荷の調整をしたりすることが容易にできる。
【0055】
また、この撹拌棒3とポンプ部2の吸込み口21は、スカート部4によって覆われている。このため、撹拌棒3で沈殿物63が撹拌されてスライム等が舞い上がっても、スカート部4によって上昇が妨げられるので、効率よくスライム等を吸引させて排出することができる。
【0056】
また、スカート部4を偏心した截頭円錐形状にすることで、撹拌棒3の回転に支障とならない剛性の高いスカート部4を、簡単な構成で成形することができる。
【0057】
さらに、スカート部4とポンプ部2との間に、スカート部4の内外を連通させる隙間41を形成することで、スカート部4を備えたスライムポンプ1を容易に水中に沈めることができる。すなわち、スカート部4の外殻部44の上部開口縁がポンプ部2に密着して隙間がなければ、スカート部4の内部に空気が溜まって水中に沈めることが難しくなるが、隙間41を形成しておくことで空気が溜まらなくなるので、スライムポンプ1を容易に水中に沈めることができる。また、隙間41がポンプ部2の周囲に設けられるだけであれば、撹拌棒3で撹拌されて上昇するスライム等は、スカート部4の内側で漂っている間に大半がポンプ部2に吸い込まれることになる。
【0058】
さらに、撹拌棒3を円柱状部材とすることで、撹拌時にスライム等から受ける抵抗を小さくすることができるうえに、長さ調節が容易になる。すなわち、撹拌棒3が受ける抵抗が大きくなると、それを回転させるためにインペラ回転軸26aのトルクを上げたり、伝達機構を複数の歯車を組み合わせた複雑な構成にしたりしなければならなくなるが、スクレーパーのように沈殿物63を掻き寄せることを目的にするのではなく、沈殿物63の撹拌を目的にするのであれば、撹拌棒3を抵抗の少ない形状にして回転機構や伝達機構の構成を簡素な構成にすることできる。
【0059】
さらに、撹拌棒3の底面をスカート部4の底面より上方に位置させることで、撹拌棒3を水底から離隔させて回転抵抗を小さくできるうえに、スカート部4の底面開口4bに保護部材42を掛け渡すことで、土砂等によって撹拌棒3に下方から作用する外力を低減して撹拌棒3の損傷を防ぐことができる。すなわち、スライムポンプ1を孔底62に着底させた際に、スカート部4の外縁底面及び保護部材42が先に沈殿物63に衝突するので、その後に沈殿物63が撹拌棒3に接触しても、撹拌棒3が変形したり、損傷したりすることがほとんど起きない。
【実施例】
【0060】
以下、この実施例では、前記実施の形態で説明した形態とは別の水中ポンプについて、図5を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0061】
この実施例で説明する水中ポンプとしてのスライムポンプ1Aは、前記実施の形態で説明したスライムポンプ1の減速機5に代えて、回転駆動機構8を備えている。
【0062】
すなわち、このスライムポンプ1Aは、スライム等を吸い込むポンプ部2と、水底に沈殿したスライム等を撹拌する撹拌部としての撹拌棒3Aと、その撹拌棒3Aを回転させる回転駆動機構8と、ポンプ部2の周囲を囲うスカート部4とを備えている。
【0063】
このポンプ部2は、底部に吸込み口21が形成され、上部に排水ホース23に接続する接続口22が設けられ、電力ケーブル24によって供給される電力によってモータ(図示せず)を駆動させてスライム等を吸い込み、排出するポンプである。
【0064】
また、前記実施の形態では、ポンプ部2の下端の底面板54からフランジ部54aが延出されていたが、この実施例の底面板27はフランジ部を備えておらず、円板状に成形されている。
【0065】
また、回転駆動機構8は、駆動原となる水中モータ81と、その水中モータ81の駆動によって回転するモータ回転軸82と、水中モータ81を駆動させる電力を供給する電力ケーブル84とを備えている。
【0066】
この水中モータ81は、ポンプ部2に隣接する位置に並設され、ポンプ部2に取り付けられた支持材83,83によってポンプ部2に支持される。
【0067】
また、この水中モータ81のモータ回転軸82が取付け部となって、このモータ回転軸82の下端に撹拌棒3Aが取り付けられる。
【0068】
この撹拌棒3Aは、モータ回転軸82を中心に両側に同じ長さだけ延伸されるとともに、スカート部4の内面に接触することのない範囲で、スカート部4の広がった内部空間を可能な限り広範囲に撹拌可能な長さに形成される。
【0069】
このように構成された実施例のスライムポンプ1Aは、ポンプ部2に隣接する位置に回転駆動機構8が設けられており、その回転駆動機構8によって撹拌棒3Aが回転する。すなわち、撹拌棒3Aの回転中心はポンプ部2の中心より横にずれることになるので、ポンプ部2を直接、降ろすことができない杭孔6の拡幅部61の孔底62に沈殿した沈殿物63を、撹拌棒3Aによって撹拌することができる。
【0070】
また、水中モータ81をポンプ部2に並設させれば、スカート部4やスライムポンプ1A全体の高さを低く抑えることができるので、取り扱いが容易な簡素な構成のポンプで広い範囲の沈殿物63を除去することができる。
【0071】
さらに、ポンプ部2とは別個の水中モータ81を使用するため、汎用のポンプ部2を利用してスライムポンプ1Aを製作することができる。また、駆動原が別になるので、撹拌棒3Aを回転させる負荷によってポンプ部2の吸込み力が低減したりすることがない。さらに、撹拌棒3Aの回転速度や回転負荷の調整も、水中モータ81の規格や出力を調整することによって回転駆動機構8独自におこなうことができる。
【0072】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【0073】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態又は実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0074】
例えば、本実施の形態では、通常のポンプ部2に備えられている土砂送り用の羽根車のインペラ回転軸26aを回転機構の駆動源に使用する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、別途、回転駆動装置を設けて回転機構を形成してもよい。
【0075】
また、前記実施の形態及び実施例では截頭円錐形状のスカート部4について説明したが、これに限定されるものではなく、截頭四角錐や截頭六角錐など、撹拌棒3(3A)の回転の支障にならない形状であれば任意の形状を選択することができる。
【0076】
さらに、前記実施の形態及び実施例では、保護部材42として柵状部材を使用したが、これに限定されるものではなく、帯状や網状など、スカート部4内部への沈殿物63の侵入を妨げるものでなければ任意の形態にすることができる。
【0077】
また、前記実施例では、取付け部としてのモータ回転軸82の下端に直接、撹拌棒3Aを取り付けたが、これに限定されるものではなく、モータ回転軸82に歯車(図示せず、図1のポンプ側歯車26参照)を取り付け、その歯車に並列させた減速歯車(図示せず、図1の減速歯車51参照)を噛み合わせて、その減速歯車の回転軸(図示せず)の下端を取付け部とすることもできる。
【0078】
また、前記実施の形態及び実施例では、スライムポンプ1(1A)で拡底杭の孔底62に沈殿した沈殿物63を除去する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、流体の底部に沈殿したスライムや土砂を排出するあらゆる場面で本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の最良の実施の形態のスライムポンプの構成を説明する断面図である。
【図2】本発明の最良の実施の形態のスライムポンプの構成を外殻部の一部を破断して説明する斜視図である。
【図3】ポンプ部と減速機と撹拌棒との取り付け関係を説明する斜視図である。
【図4】スライムポンプの使用形態を説明する説明図である。
【図5】実施例のスライムポンプの構成を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1,1A スライムポンプ(水中ポンプ)
2 ポンプ部
21 吸込み口
26 ポンプ側歯車(回転機構)
26a インペラ回転軸(回転機構)
3,3A 撹拌棒(撹拌部)
4 スカート部
4a 截頭部
4b 底面開口
41 隙間
42 保護部材
5 減速機(伝達機構)
52 回転軸
55 取付け部
63 沈殿物(スライム又は土砂)
8 回転駆動機構
82 モータ回転軸(取付け部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底に沈殿したスライム又は土砂を吸い上げるための水中ポンプであって、
前記スライム又は土砂を吸い込むポンプ部と、
前記スライム又は土砂を撹拌する撹拌部と、
前記ポンプ部の周囲を囲うスカート部とを備え、
前記ポンプ部の下方に位置する回転機構に並列して噛み合って回転する伝達機構が設けられ、その伝達機構の回転に伴って回転する取付け部に前記撹拌部が取り付けられるとともに、前記スカート部は前記撹拌部の回転範囲及び前記ポンプ部の吸込み口を覆う形状に成形されることを特徴とする水中ポンプ。
【請求項2】
前記伝達機構の回転軸は、平面視で前記ポンプ部の外側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の水中ポンプ。
【請求項3】
水底に沈殿したスライム又は土砂を吸い上げるための水中ポンプであって、
前記スライム又は土砂を吸い込むポンプ部と、
前記スライム又は土砂を撹拌する撹拌部と、
前記ポンプ部の周囲を囲うスカート部とを備え、
前記ポンプ部に隣接する位置に回転駆動機構が設けられ、その回転駆動機構の回転に伴って回転する取付け部に前記撹拌部が取り付けられるとともに、前記スカート部は前記撹拌部の回転範囲及び前記ポンプ部の吸込み口を覆う形状に成形されることを特徴とする水中ポンプ。
【請求項4】
前記スカート部は偏心した截頭円錐形状であって、截頭部に前記ポンプ部が配置されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の水中ポンプ。
【請求項5】
前記撹拌部は円柱状部材であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の水中ポンプ。
【請求項6】
前記スカート部と前記ポンプ部との間には、スカート部の内外を連通させる隙間が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の水中ポンプ。
【請求項7】
前記撹拌部の底面は前記スカート部の底面より上方に位置するとともに、前記スカート部の底面開口には保護部材が架け渡されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の水中ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−150377(P2009−150377A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137418(P2008−137418)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(595067442)システム計測株式会社 (27)
【Fターム(参考)】