水中探査装置
【課題】超音波探査機能と水中可聴音聴取機能とを備える簡易・安価な超音波探査装置を提供する。
【解決手段】水中探査装置は、水中に超音波信号を送波する超音波送波器14を備えた超音波送信部11,12,13,30と、水中の物体からの反射信号を受波する単一または複数の送受共用もしくは専用の超音波受波器14を有する超音波受信部30,13,15,16と、この超音波受信部が受信した反射超音波信号を処理して水中の反射物体として表示する表示部17,18,19とを含む超音波探査部とに加えて、超音波受波器14が受波した可聴音信号を分析する音響分析手段と、この分析結果をする反射物体の表示位置に対応する異なる位置に表示する表示手段と、水中可聴音信号を魚群の検出時に音響出力する水中可聴音聴取部31a,32,33a,34,35とを備えている。
【解決手段】水中探査装置は、水中に超音波信号を送波する超音波送波器14を備えた超音波送信部11,12,13,30と、水中の物体からの反射信号を受波する単一または複数の送受共用もしくは専用の超音波受波器14を有する超音波受信部30,13,15,16と、この超音波受信部が受信した反射超音波信号を処理して水中の反射物体として表示する表示部17,18,19とを含む超音波探査部とに加えて、超音波受波器14が受波した可聴音信号を分析する音響分析手段と、この分析結果をする反射物体の表示位置に対応する異なる位置に表示する表示手段と、水中可聴音信号を魚群の検出時に音響出力する水中可聴音聴取部31a,32,33a,34,35とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波により水中を探知する装置において、その送受波器を非共振周波数帯域の受波器として兼用して使用し、水中音を聴音する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中の魚群の探知や、水深の計測などを目的とする魚群探知機が知られている。この種の魚群探知機は、送信部で繰り返し発生させた電気パルス信号を超音波送受波器に入力し、超音波パルスを水中に送信する。送信された超音波は水底や水中の魚群で反射されて送受波器に帰ってくる。送受波器では再び微弱な電気信号に変換され、受信部で増幅・検波された信号を送信時点から、ある一定時間間隔でサンプルし記憶することで、1回の送信に対する水中の反射信号が時系列で得られることになる。
【0003】
この時系列信号を送信毎に並べてLCD表示器やCRT表示器または記録紙上に表示することで、Bスコ−プ表示と言われる、水中の状況を示す断面図が表示される。現在の主流は、カラ−のLCD表示器やCRT表示器に色彩で表示するカラ−魚群探知機が知られており、価格も安価となり、プロの漁船ばかりでなく、レジャ−ボ−トにも普及している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
魚の中には、独特の声や捕食音を発するものがある。従って、魚群探知機と水中聴音装置の双方を併用することにより、今まで経験と熟練者のカンに頼っていた魚種判別が可能となる。また、最近では観光としてホエ−ル・ウオッチングが盛んであるが、ただ単に鯨を眺めるだけでなく、鯨の声やイルカの会話などを聞かせることも面白い趣向となる。
【0005】
水中音を聴取する目的で、水中マイクロフォンとアンプとスピ−カで構成される水中聴音装置が知られている。これは、水中の可聴音を水中マイクロフォンで受信し、その出力信号を増幅してスピ−カから音声出力させて聞くための装置である。このように、魚群探知機と水中聴音装置とを併用することは、魚群を探知すると同時に、その魚群の魚種が判別できる可能性があり、漁業の発展につながる。また、水中の魚の声を聞くことができれば、更に観光産業の発展につながることになる。
【0006】
しかしながら、上記水中聴音装置を構成する水中マイクロフォンは、防水性と耐圧性を要求されることや、さらに需要が少ないこととあいまって高価である。このため、この種の水中マイクロフォンは、従来、海洋生物の研究用や潜水艦探知のための軍用という特殊な目的に限られてしまい、漁船やレジャ−ボ−トなどの民生用としては利用されていない。このように、水中聴音装置は高価であるだけでなく、レジャーボートなどの小型船舶の装備スペ−スも狭いので2台の装置となると、なかなか普及しない。従って、本発明の第1の目的は、小型・安価な構成のもとで水中聴音機能を兼ね備える水中探査装置を実現することにある。
【0007】
また、船舶は推進のための大きなエンジン音やスクリュー音や波きり音などの騒音が発生する。このような大きな騒音環境のもとで、魚の鳴き声や捕食音のようなかすかな音を聞き取るのは至難の技である。従って、本発明の第2の目的は、大きな騒音環境のもとでも自然の微弱な可聴音を聴取可能な水中可聴音聴取機能を実現することにある。
【0008】
さらに、鯨やイルカの発する声は人間の可聴音よりも高い周波数で、しかもパルス音が多い。従って、本発明の他の目的は、このような音をも聴取可能な機能を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の課題を解決する本発明の水中探査装置は、水中に超音波を送波する超音波送波器を有する超音波送信部と、物体からの反射信号を受波する単一または複数の送受共用もしくは専用の超音波受波器を有する超音波受信部と、この超音波受信部が受信した反射超音波信号を処理して水中の反射物体として表示する表示部とを含む超音波探査部に加えて、超音波受波器が受波した可聴音信号を増幅する可聴音増幅器と、この増幅された可聴音信号を音響出力する水中可聴音出力手段とを含む可聴音聴取部を備えている。
【0010】
さらに、本発明の水中探査装置は、水中可聴音聴取部が受信した水中可聴音を分析する音響分析手段とこの分析結果を表示部に表示する分析結果表示手段とを備えたことと、この分析結果表示手段が水中可聴音の分析結果を水中の反射物体の表示位置に対応する位置に表示する手段を備えたことと、超音波探査部の表示部が魚群の出現を検出して水中可聴音聴取部の動作を有効化する水中可聴音聴取部・有効化手段を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水中探査装置は、魚群探知機に最小限の構成を付加して水中聴音機能を実現する構成であるから、簡易で安価な小型の水中聴音装置を実現できる。この結果、漁船員やレジャーボートの釣り人が魚種を判定したり、ホエ−ル・ウオッチングなどの観光客に鯨やイルカの声を楽しむことができる。
【0012】
さらに、本発明の水中探査装置によれば、水中可聴音聴取部が、受信した水中可聴音を分析する音響分析手段と、この分析結果を表示部に表示する分析結果表示手段を備えると共に、分析結果表示手段が、水中可聴音の分析結果を水中の反射物体の表示位置に対応する位置に表示する手段を備える構成であるから、超音波レーダで得た魚影と、可聴音とにより、漁船の船員やレジャーボートの釣り人による魚種の判定が、一層容易かつ正確になる。
【0013】
さらに、本発明の水中探査装置によれば、魚群が出現したときだけ、聴取部の機能を有効化する水中可聴音聴取部・有効化手段を備え手段を備えているので、ユーザーにとっては、意味のない雑音を常時聴かせられたり、魚群が発する水中可聴音を聞き漏らさないようにと常時緊張を強いられたりすることから開放され、ユーザの疲労を軽減され、利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一つの好適な実施の形態によれば、受信した水中可聴音をフーリエ変換して周波数スペクトルを作成する構成であるから、魚種によって上下する周波数帯を一目瞭然に認識することができ、魚種の判別が容易・確実になる。
【0015】
また、本発明の更に好適な実施の形態によれば、超音波受波器を、超音波探査部と水中可聴音聴取部とに選択的に接続する選択接続手段を備えることにより、スイッチやリレ−などの簡易・安価な部品で実現可能な選択接続手段を利用して超音波による魚群探知機能と水中可聴音聴取機能とを分離できるように構成されている。このため、従来の魚群探知装置に高価な水中マイクロフォンを追加することなく水中可聴音聴取機能を実現するために、本来の魚群探知用として設置される超音波受波器が水中可聴音聴取のための水中マイクロフォンとして兼用される。
【0016】
一般に、魚群探知機で使用されている超音波受波器は、圧電セラミック素子で構成されている。この種の圧電素子は、応力を加えて歪みを与えると電圧を発生する効果と、逆に、電圧を印加すると歪や応力を発生する機能がある。この機能が、超音波の周波数帯の送波器や受波器として利用される。複数の送受波器を持つ多周波型魚群探知機やソナ−に、この方法を用いて水中聴音機能を付加することにより、水中の魚群位置を立体的に計測することが可能となる。また、水中音を高度に処理することができ、水中生物の研究用途にも役立つことも可能となる。
【0017】
さらに、圧電セラミック素子の機械的共振周波数を、魚群探知用に送受波する超音波の周波数帯域に合わせることで高い変換効率を得ている。しかしながら、共振周波数以外でも圧電効果の機能は発揮される。超音波の共振周波数以外の水中可聴音の周波数領域で受波器として使用する場合でも、変換効率こそ劣るが、これを補う増幅器を設置することで十分に対応できる。さらに、超音波帯域の共振周波数以外では変換効率の周波数依存性が小さいため、平坦な周波数特性をもつ受波器となる。この結果、広い周波数範囲にわたる水中の可聴音を受信するのにかえって好都合になる。
【0018】
本発明の他の好適な実施の形態によれば、超音波受波器で受波した反射超音波信号と可聴音信号とを両者の周波数の違いを利用して互いに分離し、それぞれを超音波探査部と水中可聴音聴取部とに供給する信号分離手段を備えることにより、超音波による魚群探知機能と水中可聴音聴取機能とを同時に実現することができる。
【0019】
本発明のさらに他の好適な実施の形態によれば、可聴音増幅器は、船舶の推進に伴って超音波受波器に受波される各種の水中可聴音を除去する水中可聴音濾波手段を備えることにより、船舶の推進に伴う機関音や推進器音などの人工的な水中可聴音を除去し、自然の水中可聴音だけを聴取可能にするように構成されている。
【0020】
本発明のさらに他の好適な実施の形態によれば、、ディジタル信号処理によって信号の時間軸を伸長し、周波数を低下させる手段を付加することにより、イルカなどが発する人間の可聴範囲よりも高周波数のパルス音を聴取可能にするように構成されている。
【実施例】
【0021】
図1は、本発明の第1の実施例に係わる水中探査装置の構成を示す機能ブロック図である。この第1の実施例の水中探査装置は、1周波型魚群探知機に最小限の構成を付加して水中聴音機能を付加したものである。この装置は、魚群探知機能を実現する超音波探査部の構成要素として、タイミング制御回路10、バ−スト信号発生回路11、送信増幅回路12、単行回路13、送受波器14、受信増幅回路15、A/D変換器16、Bスコ−プ映像化処理回路17、ビデオ変換器18およびLCD表示器19を備えている。また、この装置は、水中可聴音聴取部の構成要素として、切換回路30、プリアンプ31a、フィルタ32、メインアンプ33a、スピ−カ34およびフィルタ制御回路35を備えている。
【0022】
超音波探査部のタイミング制御回路10は発振器から構成され、魚群の探知範囲で定まる周期の送信開始信号10aを発生する。この魚群の探知範囲として、例えば0 〜100 m(メートル)を想定すると、水中の音速から133msec 以上の繰り返し周期が必要となる。タイミング制御回路10は、これに後処理時間を加算して、200msec 程度の周期で1msec の時間幅の送信開始信号10aを繰り返し発生する。バ−スト信号発生回路11は、魚群探知のための周波数(例えば、50kHz )の矩形波の信号を発生する発振器と振幅変調器とから成り、50kHz の信号を被変調信号、送信開始信号10aを変調信号とする振幅変調が行われ、1msec の時間幅の50kHz のト−ンバ−スト信号を発生する。
【0023】
送信増幅回路12は電力増幅器から成り、バースト信号発生回路11から供給されるト−ンバ−スト信号を増幅し、通常1000Vp−p程度の50kHz の高電圧ト−ンバ−スト信号を発生させ出力する。単行回路13はダイオ−ド等で構成されており、送信増幅回路12からの高電圧ト−ンバ−スト信号を切換回路30を介して送受波器14に伝達すると共に、この高電圧ト−ンバ−スト信号が受信増幅回路15に伝達されるのを阻止する。高電圧ト−ンバ−スト信号が存在しない時間帯は、送受波器14で受けた1V以下の微弱受信信号が、単行回路13を通して受信増幅回路15だけに伝達される。この単行回路13の機能により、受信信号が送信増幅回路12へ伝達されて損失となることがなく効率良く受信増幅回路15に伝達される。切換回路30は、スイッチやリレ−で構成される。
【0024】
この装置を魚群探知のための超音波探査に使用するときは切替回路30内の切換操作によって送受波器14と単行回路13とが接続される。また、この装置を水中可聴音聴取に使用するときは、切替回路30内の切換操作によって送受波器14とプリアンプ31aとが接続される。送受波器14はチタン酸バリウムなどの圧電セラミック素子からなり、切換回路30で単行回路13と接続されると、送信増幅回路12から供給される50kHz の高電圧ト−ンバ−スト信号で駆動される。送受波器14の共振周波数が予め50kHz の近傍に設定されているため、大きな励振効率が実現され、水中に強力な超音波のト−ンバ−スト波が送信される。送信された超音波のト−ンバ−スト波の一部は、水中の魚群などの反射物体で反射されて再び送受波器14に戻り、電気信号に変換され、切換回路30と単行回路13を経て受信増幅回路15に供給される。
【0025】
このように送受波器14では、共振周波数での効率的な励振が行われ、水中に強力なト−ンバ−スト信号が送信されると共に、水中の魚群などの反射物体からの反射波の効率的な受信が行われる。同時に、この送受波器14は、水中の微弱な可聴音を受信しており、切換回路30を通してプリアンプ31aと接続されている状態では、この水中の可聴音信号がプリアンプ31aに伝達される。
【0026】
受信増幅回路15は中心周波数50kHz の狭帯域の増幅器であり、送受波器14で受信した水中の魚群などの反射物体からの反射信号を増幅する。通常、100〜120dBの範囲の増幅度を持つが、通常よく行われるように、必要に応じて水中の反射物体の反射率に対して増幅度が可変される。A/D変換器16は、受信増幅回路15から出力するアナログ信号の振幅値を、例えば8段階に分類し3ビットのデジタル信号として、Bスコ−プ映像化処理回路17に伝達する。
【0027】
Bスコ−プ映像化処理回路17は、二次元アドレス構成のメモリと、このメモリのアドレスをアクセスして読み書きを行うための制御回路で構成される。この二次元アドレス構成のメモリは、図2に示すように、探知回数アドレスと、深度アドレスによってアクセスされるメモリ素子から構成される。このメモリのアドレスは、LCD表示器19の表示画素数に対応しており、例えば縦×横が640×480の表示画素数に対応して、1〜640番地の探知回数アドレスと1〜480番地の深度アドレスを持つ。また、LCD表示器19の表示色数、例えば8色に対応して各メモリ素子のデ−タ長は3ビットである。
【0028】
この二次元アドレス構成メモリへの書き込みは次のように行われる。まず、探知回数アドレスの最も古い探知信号の記憶位置のメモリ列に、タイミング制御回路10から供給される送信開始信号10aを開始時点として、深度アドレスの1番地から、所定の繰り返し周期で、深度アドレスが1番地づつ増加され、A/D変換器16から供給される3ビット構成のデジタル受信信号がデ−タとしてメモリ素子に書き込まれる。このアドレス増加の周期は、例えば、魚群探知機の探知範囲を0〜100m、LCD表示器の深度方向へのピクセル数を480と想定すると、100mは水中の音速から133m秒の時間となるので、133÷480=約0.277msec となる。この受信信号の書き込みは、480番地まで行われると停止される。
【0029】
この書き込みが停止した時点で、このメモリ列のデ−タは最新の探知デ−タを記憶したことになるので、探知回数アドレスの最新の探知信号の記憶位置と最古の探知信号の記憶位置は、図2において左に1列ずれることになる。次に、上記と同様の書き込みを、送信開始信号10aの周期に応じて連続的に行うことで、この二次元アドレス構成のメモリには、常に現時点から一定時間(送信周期×640)だけ逆上った、水面から水中100mの深度範囲の受信反射信号が探知信号として8段階の強弱分類で記憶されることになる。
【0030】
LCD表示器19の表示画像の一例を図3に示す。この表示画像の例は魚群探知機の最も一般的なBスコ−プ表示であり、表示画面は640×480個の画素で構成されている。縦方向の画素列は、1回の送信で得られた0〜100mの深度範囲の探知信号を、各探知信号の強弱を1画素の色彩や濃淡などの属性に置き換えて表示したものであり、右端の画素列は最新の探知信号を表示しており、左端の画素列は最古の探知信号を表示している。1回の送信毎に左へスクロ−ルして行くので、現時点から一定時間分過去(送信周期×640)の、水面から水中100mの深度範囲の探知状況が表示される。
【0031】
この表示画像では、画像の上端に送信時の単行回路13からの漏れ込みと水面付近に存在する気泡などからの反射信号が表示されている。これは、通常、発振線と呼ばれる。また、表示画像の下側には水底からの反射信号が、その水深を変化させながら表示されている。また、水中には魚群からの反射信号が、二度にわたって表示されている。各反射信号は、A/D変換器16において8段階の振幅値に分類される。一例として、反射信号の強さに応じた8色の色彩が付されて表示される。
【0032】
図2と図3の対比から解るように、Bスコ−プ映像化処理回路17内の二次元アドレス構成のメモリに記憶した内容とLCD表示器19で表示されている画像内容は一致している。ただ、異なるところは二次元構成のメモリでは、最新の探知信号の記憶位置と最古の探知信号の記憶位置が送信開始信号10aによって、1列づつ移動するのであるが、LCD表示器19の表示画像では常に最新の探知信号が右端に、最古の探知信号が左端に、それぞれ固定して表示されていることである。
【0033】
従って、Bスコ−プ映像化処理回路17内の二次元アドレス構成のメモリを読み出す際に次のような工夫が必要となる。すなわち、二次元アドレス構成のメモリの読み出しは、LCD表示器19の水平、垂直同期信号19aに同期して読み出すわけであるが、常に水平同期信号の最初に読み出す探知回数アドレスを最古の探知信号の記憶位置のアドレスから開始し、順に、図2の左方向へ読み出すようにアドレス制御を行うことで、LCD表示器19の表示画面では水平同期信号ごとに左から右方向に走査され表示されるので、左端が最古の探知信号となって表示されることになる。
【0034】
また、深度アドレスは垂直同期信号の最初の水平同期信号時は1番地に固定しておいて、次の水平同期信号で順次、番地を増加していくようにアドレス制御を行うことで、LCD表示器19の表示画面では上端が深度0mとなり、下端に向けて深度が増加し、下端が深度100mとなって表示される。
【0035】
このように、LCD表示器19の水平・垂直同期信号19aに同期して二次元アドレス構成のメモリは常に読み出され、表示画面全体に探知信号を表示している。一方、送信開始信号10aごとに二次元アドレス構成のメモリは最古の探知信号を最新の探知信号に書き換えられているので、表示画面の左端の最古の探知信号は消えて最古の探知信号より1回の送信ぶん新しい探知信号が左端に表示され、同時に表示画面全体も同様の表示更新が起こるので、映像全体が右から左方向にスクロ−ルして見えることになる。
【0036】
ビデオ変換器18はLCD表示器19のRGBアナログ入力に対応した3つのD/A変換器からなる。Bスコ−プ映像化処理回路17内の2次元アドレス構成メモリの記憶内容が8段階の振幅値毎に分類されているので、その8段階を8色の色彩画像に相当するRGB配分、または8段階の濃淡画像に相当するRGB配分のアナログ信号に変換してLCD表示器19に伝達する事で、任意の色彩表示や濃淡表示に対応する。
【0037】
次に、この第1の実施例の水中探査装置の水中聴音機能に関する部分の動作を説明する。プリアンプ31aは20Hz〜20kHz の可聴音帯域を増幅する高入力インピ−ダンスの低雑音増幅器で構成される。このプリアンプ31aは、送受波器14で受信した水中の可聴音周波数帯域の信号を切換回路30を通して受信し、増幅する。フィルタ回路32は、複数のハイパス・フィルタと、複数のロ−パス・フィルタと、複数のノッチ・フィルタ回路で構成される。そして、これら各フィルタの中心周波数、遮断周波数、減衰量等のフィルタ性能諸元は、フィルタ制御回路35を介して手動操作で変更され、あるいは、フィルタ制御回路35に入力するエンジン回転数信号の周波数などに応じて自動的に変更される。
【0038】
このような各種のフィルタは、この実施例の水中探査装置で水中音を聴音するときに、目的とする水中音以外の騒音を除去する為に使用される。ここでは、この実施例の装置を船舶に実際に装備して水中聴音装置として使用したときに受音される水中騒音について説明する。
【0039】
この第1の実施例の水中探査装置が搭載された船舶は水上に浮かんでいるので波やうねりによって常に揺れており、その船舶の上下動や左右の揺れに対して船底に設置した送受波器に加わる水圧が変動する。この結果、その変動周期に応じた極めて低い周波数の大きな騒音に相当する受信信号が送受波器に発生する。
【0040】
また、船舶は走行のための機関とスクリューなどの推進器を持っている。機関は推進器軸を動かす主機と発電器等の補機からなり、主機は、通常、内燃機関である。この内燃機関は、燃焼周期に応じた特定周波数の騒音を発生するが補機や減速装置の騒音と相まって周波数帯域が比較的広い騒音となる。これら広帯域の騒音は船体を通じて水中に放射され、それが船底に設置した送受波器で受波される。また、推進器は、それ自体が送波器のような物であり、その回転数と翼数に応じた特定周波数の騒音を発生し水中に放射し、それが送受波器で受信される。
【0041】
このような騒音のスペクトラム分布の典型的な一例は図4に示すようなものとなる。極めて低い周波数領域に幅をもつスペクトラム分布は、船舶の動揺により発生する騒音である。また、中間の周波数領域に幅をもつスペクトラム分布は、船舶の機関から発生する騒音である。さらに、特定の周波数に線スペクトラム状に存在するのが船舶の推進器から発生する騒音であり、数次の高調波を持っている。
【0042】
このような特徴のスペクトラム分布をもつ騒音を、フィルタで除去または軽減する。各雑音の中心周波数と周波数の広がりに応じて、フィルタ特性を調整することにより、これらの雑音を除去できる。例えば、船舶の動揺によって発生し受信される騒音成分については、フィルタ回路32のハイパス・フィルタのフィルタ性能諸元を、フィルタ制御回路35を介して手動操作で調整することにより、除去または軽減することができる。
【0043】
また、船舶の機関から発生する騒音に対しては、フィルタ回路32のハイパス・フィルタとロ−パス・フィルタのフィルタ性能諸元を、フィルタ制御回路35を介して手動操作で調整することにより、除去し、軽減することができる。さらに、船舶の推進器から発生する騒音については、線スペクトラム状の周波数帯域でしかも高調波を持っているので、複数のノッチフィルタ回路のフィルタ性能諸元を、フィルタ制御回路35を介して手動操作で調整することにより、除去または軽減することができる。
【0044】
さらに、推進器から発生する騒音に関しては推進器の回転数と翼数に応じた特定周波数の騒音であるので、推進器の回転数の元になるエンジン回転数を示す信号をフィルタ制御回路35に入力し、そのエンジン回転数に比例して複数のノッチフィルタ回路のフィルタ性能諸元を自動設定することによっても、種々の回転数に応じて自動除去することもできる。
【0045】
図1のメインアンプ33aは、可聴音周波数帯域を電力増幅する増幅器であり、そこで水中の可聴音信号を増幅し、スピ−カ34を鳴らす。もちろん、スピ−カの代わりにレシ−バでも構わない。
【0046】
以上が、1周波型魚群探知機に最小限の構成を付加して水中聴音機能を付加した本発明の第1の実施例に係わる水中探査装置の構成と動作の説明である。この実施例の装置では、送受波器を切り換えて使用するため、魚群探知機能と水中聴音機能とを同時に実現することができない。そこで、両機能を同時に実現できるようにした水中探査装置を本発明の第2の実施例として以下に説明する。
【0047】
図5は、上記本発明の第2の実施例の水中探査装置の構成を示す機能ブロック図である。魚群探知機能を実現するための超音波探査部の構成要素として、図1と同様のタイミング制御回路10、バ−スト信号発生回路11、送信増幅回路12、単行回路13、送受波器14、受信増幅回路15、A/D変換器16、Bスコ−プ映像化処理回路17、ビデオ変換器18およびLCD表示器19を備えている。さらに、図1に示した第1の実施例の装置にはない魚群検出回路20が新たに追加されている。
【0048】
また、水中可聴音聴取部の構成要素として、図1と同様の構成のフィルタ32、スピ−カ34およびフィルタ制御回路35と、図1のものとは異なる構成のプリアンプ31bおよびメインアンプ33bと、図1のものにはない新たに追加された分離回路36とを備えている。なお、この第2の実施例の水中探査装置中、図1と同一の参照符号を付した構成要素は図1の対応の参照符号を有する構成要素と同一であるから、これらについては重複する説明を省略する。
【0049】
この第2の実施例の水中探査装置では、魚群探知機能と水中可聴音聴取機能とを同時に実現するために、図1の装置に設置された切換回路30が除去され、送受波器14と単行回路13とが常時接続される構成となっている。送受波器14が受信した水中の魚群などからの反射信号に水中の可聴音信号が重畳された信号が、単行回路13を経て、新たに追加された分離回路36に供給される。分離回路36は中心周波数50kHz のバンドパス・フィルタと、遮断周波数20kHz のロ−パス・フィルタとからなり、水中の魚群などからの反射超音波信号はバンド・パスフィルタを通過して受信増幅回路15に伝達される。また、水中の可聴音信号はロ−パス・フィルタを通過してプリアンプ31bに伝達される。
【0050】
プリアンプ31bは、20Hz〜20kHz の可聴音帯域を増幅する高入力インピ−ダンスの低雑音増幅器で構成され、送受波器14が受信した水中の可聴音周波数帯域の信号を分離回路36を通して受信し、これを増幅する。この増幅対象の可聴音周波数帯域の信号には、魚群探知機の送信信号に周期して送信増幅回路12が発生した高電圧ト−ンバ−スト信号に起因する大振幅の低調波成分が含まれている。この不要成分は、分離回路36による分離が不十分なためプリアンプ31bに漏れ込んでくる。この不要漏れ成分を含む信号をそのまま増幅すると、周期的なパルス騒音が発生する。
【0051】
この不要漏れ成分を除去するために、プリアンプ31bの低雑音増幅器の入力部分には図6に示すようなアナログスイッチSWが設置される。このアナログスイッチSWに、タイミング制御回路10で周期的に発生される1msec 時間幅の送信開始信号10aが切換信号として入力される。送信増幅回路12で高電圧ト−ンバ−スト信号が発生されるときは、アナログスイッチSWの入力側が切換信号によって接地側に切換えられ、出力信号として低調波成分が伝達されない。もちろん、アナログスイッチSWの代わりに、プリアンプ31bの初段増幅器の動作点を決めているバイアス電圧を瞬間的に制御し、増幅器の増幅率を制御することにより不要漏れ信号を除去することも可能である。
【0052】
プリアンプ31bからの可聴音周波数帯域の信号はフィルタ回路32を介してメインアンプ33bに伝達される。ここで、フィルタ回路32とフィルタ制御回路35は、図1の装置と全く同じ機能を果たすので、重複する説明は省略する。メインアンプ33bは、可聴音周波数帯域を電力増幅する増幅器であり、そこで水中の可聴音信号が増幅され、スピ−カ34に供給される。
【0053】
メインアンプ33bの内部にはスイッチが付加されている。このスイッチに対する切換信号は、後述する魚群検出回路20からの魚群検出信号20aであり、魚群探知機能で魚群を探知している時間内はオンとなる信号である。この信号がオンの期間内だけ増幅した可聴音信号がスピ−カへ供給される。この魚群検出信号20aがオフの期間内は、増幅された可聴音信号がスピ−カへ供給されないようにスイッチが切換えられる。この結果、魚群が探知されると自動的に魚の声を含む水中音がスピーカから出力される。このようにすると、水中音を聞くために長時間にわたって神経を集中させ、疲労を招くことなく、必要なときだけ判断に集中できる。
【0054】
魚群検出回路20は、Bスコ−プ映像化処理回路17内の二次元アドレス構成のメモリ内の最新の探知信号の記憶位置のメモリ列に記憶されている探知信号の振幅値を使用する。このメモリ列には、最新の探知信号が時系列で深度アドレスに沿って探知信号の振幅値として記憶されており、手動操作で設定された深度範囲に該当する深度アドレス内の探知信号の振幅値と、やはり手動設定で設定された魚群の振幅値を比較して、探知信号の振幅値の方が大きければ、その探知信号を魚群と判断して魚群検出信号20aをオン状態とする。
【0055】
以上、魚群探知機能と水中聴音機能を同時に実現するために、1周波型魚群探知機に最小限の構成を付加して水中聴音機能を実現した本発明の第1,第2の実施例に係わる水中探査装置の構成と動作とを説明した。上記本発明の第1,第2の実施例に係わる水中探査装置は、いずれも1周波型魚群探知機を用いた構成であった。次に、2周波型魚群探知機に最小限の構成を加えて水中聴音装置を実現した本発明の第3の実施例に係わる水中探査装置を説明する。
【0056】
図7は、本発明の第3の実施例に係わる水中探査装置の構成を示す機能ブロック図である。魚群探知機能を実現するための構成要素として2周波・送受信処理部40と、第1の周波数送受波器41、第2の周波数送受波器42、ビデオ変換器18、LCD表示器19が設置されている。また、水中聴音機能を実現するための構成要素として、第1の可聴音処理部43、第1のスピ−カ44、第2の可聴音処理部45および第2のスピ−カ46が設置されている。
【0057】
2周波・送受信処理部40は、第1,第2の実施例の水中探査装置に関して説明したものと同一のバ−スト信号発生回路11、送信増幅回路12、単行回路13、受信増幅回路15およびA/D変換器16から構成される送受信系を2つと、Bスコ−プ映像化処理回路17とを備えている。この2周波・送受信処理部40は、2周波、例えば50kHz と200kHz の二つの周波数での送信が、タイミング制御回路10で発生する送信開始信号10aに同期して同時に行う機能を備える。
【0058】
そして、各周波数の超音波の送受信によって探知した水中の魚群や水底などの探知信号は、それぞれの受信系統を経て、送信毎にBスコ−プ映像化処理回路17内の2次元アドレス構成メモリに書き込まれ、LCD表示器の水平・垂直同期信号19aに同期して読み出され、ビデオ変換器18を介してLCD表示器19に表示される。この時、2次元アドレス構成メモリは、探知回数アドレスが二つの周波数に対応した領域に分割使用される。
【0059】
2周波型魚群探知機能による表示画面の一例を図8に示す。表示画面の左側半分が50kHz 、右半分が200kHz の周波数系統の表示画像である。表示画面では、各画像の上端には、発振線といわれる送信時の単行回路13からの漏れ込みと水面付近の気泡等の反射信号が表示されている。また、表示画像の下側には水底の反射信号が、その水深を変化させながら表示されている。また、水中には魚群の反射信号が表示されている。
【0060】
これら反射信号は図1のA/D変換器16に対応するA/D変換器で、8段階の振幅値毎に分類され、振幅の大小に応じた8色の色彩映像で表示される。しかし、表示画像の左側と右側半分では表示が異なっている。例えば、発振線や水底の反射信号は右側の200kHz 系の方が短く表示されている。また、魚群(f1〜f3)においては左側に表示されて右側に表示されない魚群(f2)や、その反対の魚群(f1)、左右共に表示される魚群(f3)がある。これら魚群表示の周波数による違いは、魚の体長による超音波の反射率が周波数によって異なることから生ずる。この表示画面上での差を利用すると、魚の体長を推定することが可能となり、2周波型魚群探知機を使用する利点となっている。
【0061】
第1の送受波器41は200kHz の共振周波数を、第2の送受波器42は50kHz の共振周波数を持つ圧電セラミックス素子からなる送受波器である。送受波器41、42は、各周波数での水中への超音波の送信と受信とを行うが、同時に水中の可聴音も受信する。送受波器41,42からの可聴音信号は、2周波・送受信処理部40内にある、第1,第2の実施例の装置に関して説明した切換回路30や分離回路36に該当する回路を通して、第1の可聴音処理部43と第2の可聴音処理部45に伝達される。
【0062】
第1の可聴音処理部43と第2の可聴音処理部45は、第1,第2の実施例の装置で説明したプリアンプ31、フィルタ32、メインアンプ33およびフィルタ制御回路35などから構成される。そして、第1の可聴音処理部43では、第1の送受波器41が受信した水中の可聴音信号に対して、周波数領域でのフィルタリングと増幅とが行われ、第1のスピ−カ44を鳴動せしめられる。同様に、第2の可聴音処理部45では、第2の送受波器42で受信した水中の可聴音信号に対して、周波数領域でのフィルタリングと増幅が行われ、第2スピ−カ46が鳴動せしめられる。
【0063】
これら第1のスピ−カ44と第2のスピ−カ46からの可聴音を左右の耳で聴音することで、ただ単に水中の可聴音を聞くだけでなく、第1の送受波器41と第2の送受波器42の設置位置を工夫することで、ステレオ効果により水中の音源の方向も推定できることになる。
【0064】
以上が2周波型魚群探知機に最小限の構成を加えて水中聴音機能を実現した第3の実施例に係わる水中探査装置の構成と動作である。さらに、この第3の実施例に係わる水中探査装置を応用して、多周波型魚群探知機やソナ−等が有する多数の送受波器を利用して水中聴音を行い、水中の音源位置を3次元計測することも可能となる。
【0065】
上記第3の実施例では、異なる超音波周波数の2種類の超音波を送受信する2周波型魚群探知機の場合を例示した。しかしながら、同一周波数の超音波を送受信して、複数の受信素子の配置と各受信素子の受信信号の位相差とから反射物体の方位角を検出するために、複数の受信素子が設置される位相差検出方式の超音波探査装置に本実施例を適用することも勿論可能である。
【0066】
これまでの実施例は、魚群探知機能の実現に必要な構成に対して最小限の構成要素を付加することにより水中可聴音聴取機能を実現する例である。次に、水中可聴音聴取機能を高度化した第4の実施例に係わる水中探査装置の構成と動作を説明する。
【0067】
図9は、本発明の第4の実施例に係わる水中探査装置の構成を示す機能ブロック図である。魚群探知機能を実現する超音波探査部の構成要素として、送受信処理部50、送受波器51、ビデオ変換器18およびLCD表示器19が設置されている。また、水中可聴音聴取部の構成要素として、可聴音処理部53およびスピ−カ54が設置されている。さらに、この水中可聴音聴取部の機能の高度化を実現するための構成要素として、パソコン60、A/D変換器61、D/A変換器62、ス−パ−インポ−ズ回路63および表示領域発生回路64が設置されている。
【0068】
送受信処理部50は、第1,第2の実施例で説明したタイミング制御回路10、バ−スト信号発生回路11、送信増幅回路12、単行回路13、受信増幅回路15、A/D変換器16およびBスコ−プ映像化処理回路17を内蔵している。タイミング制御回路10で発生する送信開始信号10aに同期して超音波信号を送信し、水中の魚群や水底などからの反射超音波信号が探知信号として受信され、送信のたびにBスコ−プ映像化処理回路17内の二次元アドレス構成のメモリに書き込まれる。このメモリに書き込まれた探知信号は、LCD表示器の水平・垂直同期信号19aに同期して読み出され、ビデオ変換器18を介してス−パ−インポ−ズ回路63を経てLCD表示器19に表示される。
【0069】
送受波器51は、50kHz の共振周波数を持つ圧電セラミックス素子から構成され、この共振点付近の周波数の超音波信号を水中に送信して、水中からの反射波を受信する。この送受波器51は、同時に水中の可聴音も受信している。この送受波器51が受信した可聴音信号は、送受信処理部50内にある、第1,第2の実施例で説明した切換回路30や分離回路36を通して可聴音処理部53に伝達される。可聴音処理部53は、第1,第2の実施例で説明したプリアンプ31、フィルタ32、メインアンプ33およびフィルタ制御回路35などから構成されている。そして、可聴音処理部53では、送受波器51で受信した水中の可聴音信号に対して、周波数領域での濾波と増幅とが行われ、スピ−カ54を鳴動させる。
【0070】
以上、本発明の第4の実施例に係わる水中探査装置において魚群探知機能の実現のための超音波探査部に、水中可聴音聴取機能を付加するため構成について説明した。次に、この第4の実施例における特徴的な水中可聴音聴取機能の高度化に関する部分について、詳細に説明する。
【0071】
パソコン60は、入力インターフェイスと出力インターフェイスにそれぞれA/D変換器61とD/A変換器62とを備えており、送受波器51で受信した水中可聴音信号を、送受信処理部50とA/D変換器61とを介して、デジタル信号で取り込む。パソコン60は、このディジタル信号に対してソフトウエアでの各種の信号処理を行い、その結果を、D/A変換器62で再びアナログ信号にしてスピ−カ54を鳴動させる。また、ソフトウエアでの各種のデジタル信号処理の結果を、文字・図形によるグラフィック表示画像とし、グラフィックビデオ信号60aとして出力する。
【0072】
ス−パ−インポ−ズ回路63は、ビデオ信号に対するスイッチで構成され、表示領域発生回路64で発生する表示領域信号64aの極性に応じて、ビデオ変換器18から供給される魚探ビデオ信号18aと、パソコン60から供給されるグラフィック・ビデオ信号60aのうちの一方を選択してLCD表示器19へ供給する。
【0073】
表示領域発生回路64は、同期信号19aを計数し、この計数回数に基づいてLCD表示器19の表示領域を決定する。例えば、LCD表示器の表示画素数を、縦480×横640とするならば、表示領域を上下均等分割するには水平同期信号を240回計数した時点が表示領域の切り換える時点となる。また、表示領域を左右均等分割するには毎回の水平同期信号において画素クロックを320回計数した時点が表示領域の切り換える時点となる。この例では、上下または左右半分の分割を揚げたが、計数回数を変えることで任意の表示領域に切り換えられることは言うまでもない。
【0074】
以上のような構成を用いて、送受波器51で受信した信号をデジタル信号として取り込み、パソコン60でソフトウエアによるディジタル信号処理を行った結果を文字・図形によるグラフィック表示画像としてLCD表示器19に表示した画像の一例を図10に示す。図10において、上半分の画像は50kHz での水中の魚群探知(超音波探査)映像であり、下半分は現時点の水中可聴音をディジタル処理のフ−リエ変換して周波数分析した結果をグラフで示している。このグラフ表示を見ながら、前述したフィルタ制御回路35を手動操作することができ、エンジン回転音などの不要な水中騒音を速やかに除去することができる。
【0075】
また、図11において、上半分の画像は50kHz での水中の魚群探知映像である。下半分は、可聴音を周波数分析し、その結果を、横軸を時間、縦軸を周波数、信号の強度を線の太さ、濃淡あるいは色彩で表示したものである。音声分析のソナグラフと同様の表現手法である。こうすることにより、上半分の魚群探知映像と同期して分析結果が移動し、上半分の魚群の画像と下半分の分析結果が対応した位置に表示され、魚種判別を容易になる。なお、信号処理のソフトウエアを変更することにより、魚群探知映像と合わせて表示する信号分析結果の表示を多種類にできることは言うまでもない。
【0076】
次に、送受波器51で受信した可聴音信号をデジタル信号として取り込み、パソコン60でソフトウエアによるディジタル信号処理を行い、その結果を再びアナログ信号にしてスピ−カ54を鳴らしたときの波形例を図12に示す。図12において、原音は1msec のパルス音であった。それをパソコン60内のメモリ列に書き込み、その後、書き込み周期の1000倍の周期で読み出すと言うソフトウエアによるディジタル信号処理を行って、1秒の時間幅の伸長音にしている。このような時間軸伸長処理を行うことにより、通常に聞いても判別できないパルス音の特徴を耳で把握できるようになる。
【0077】
なお、ディジタル信号処理のソフトウエアを変更することにより、水中の信号を可聴音領域に周波数変換して聴取することも可能にできる。
【0078】
以上、水中聴音機能の高度化を実現した第4の実施例の構成と動作を説明しこた。この実施例ではディジタル信号処理を汎用のパソコンで行っているが、専用のハ−ドウエア構成で実現してもよいことは勿論である。特に、現在の魚群探知機は探知信号を表示すると共に、探知範囲のスケ−ル表示、水深値の数値表示、グラフ表示などを探知信号に重畳して表示を行っており、これらの表示のために付加されたグラフィック表示機能と制御機能を使うことにより可能である。
【0079】
以上、送受共用の超音波トランスジューサを設置する構成を例示した。しかしながら、送信専用のトランスジューサと一つまたは複数の受信専用のトランスジューサとを個別に設置し、受信専用の超音波トランスジューサが受信した水中可聴音を処理して聴取する構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施例に係わる水中探査装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1のBスコ−プ映像化処理回路18内の二次元アドレス構成のメモリの構成と動作を説明するための概念図である。
【図3】図1のLCD表示器19に表示される1周波型魚群探知機の表示画像の一例を示す概念図である。
【図4】図1の送受波器14に受信される水中雑音の周波数分布の典型的な一例を示す周波数特性図である。
【図5】本発明の第2の実施例に係わる水中探査装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図6】図5中のプリアンプ31b内に設置される受信信号の切換スイッチSWの構成を示す機能ブロック図である。
【図7】本発明の第3の実施例に係わる水中探査装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図8】上記図7のLCD表示器19に表示される2周波型魚群探知機の表示画面の一例を示す概念図である。
【図9】本発明の第4の実施例に係わる水中探査装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図10】図9内のLCD表示器19に表示される重ね合わせ画像の一例を示す概念図である。
【図11】図9内のLCD表示器19に表示される重ね合わせ画像の他の一例を示す概念図である。
【図12】図9内のパソコン60によにディジタル信号処理によって時間軸が伸長されたパルス音の波形の一例を示す波形図である。
【符号の説明】
【0081】
10 タイミング制御回路
11 バ−スト信号発生回路
12 送信増幅回路
13 単行回路
14 送受波器
15 受信増幅回路
16 A/D変換器
17 Bスコ−プ映像化処理回路
18 ビデオ変換器
19 LCD表示器
20 魚群検出回路
30 切換回路
31a,31b プリアンプ
32 フィルタ
33a,33b メインアンプ
34 スピ−カ
35 フィルタ制御回路
36 分離回路
40 2周波送受信処理部
41,42 第1, 第2の送受波器
43,45 第1, 第2の可聴音処理部
44,46 第1, 第2のスピ−カ
50 送受信処理部
51 送受波器
53 可聴音処理部
54 スピ−カ
60 パソコン
61 A/D変換器
62 D/A変換器
63 スパ−インポ−ズ回路
64 表示領域発生回路
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波により水中を探知する装置において、その送受波器を非共振周波数帯域の受波器として兼用して使用し、水中音を聴音する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中の魚群の探知や、水深の計測などを目的とする魚群探知機が知られている。この種の魚群探知機は、送信部で繰り返し発生させた電気パルス信号を超音波送受波器に入力し、超音波パルスを水中に送信する。送信された超音波は水底や水中の魚群で反射されて送受波器に帰ってくる。送受波器では再び微弱な電気信号に変換され、受信部で増幅・検波された信号を送信時点から、ある一定時間間隔でサンプルし記憶することで、1回の送信に対する水中の反射信号が時系列で得られることになる。
【0003】
この時系列信号を送信毎に並べてLCD表示器やCRT表示器または記録紙上に表示することで、Bスコ−プ表示と言われる、水中の状況を示す断面図が表示される。現在の主流は、カラ−のLCD表示器やCRT表示器に色彩で表示するカラ−魚群探知機が知られており、価格も安価となり、プロの漁船ばかりでなく、レジャ−ボ−トにも普及している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
魚の中には、独特の声や捕食音を発するものがある。従って、魚群探知機と水中聴音装置の双方を併用することにより、今まで経験と熟練者のカンに頼っていた魚種判別が可能となる。また、最近では観光としてホエ−ル・ウオッチングが盛んであるが、ただ単に鯨を眺めるだけでなく、鯨の声やイルカの会話などを聞かせることも面白い趣向となる。
【0005】
水中音を聴取する目的で、水中マイクロフォンとアンプとスピ−カで構成される水中聴音装置が知られている。これは、水中の可聴音を水中マイクロフォンで受信し、その出力信号を増幅してスピ−カから音声出力させて聞くための装置である。このように、魚群探知機と水中聴音装置とを併用することは、魚群を探知すると同時に、その魚群の魚種が判別できる可能性があり、漁業の発展につながる。また、水中の魚の声を聞くことができれば、更に観光産業の発展につながることになる。
【0006】
しかしながら、上記水中聴音装置を構成する水中マイクロフォンは、防水性と耐圧性を要求されることや、さらに需要が少ないこととあいまって高価である。このため、この種の水中マイクロフォンは、従来、海洋生物の研究用や潜水艦探知のための軍用という特殊な目的に限られてしまい、漁船やレジャ−ボ−トなどの民生用としては利用されていない。このように、水中聴音装置は高価であるだけでなく、レジャーボートなどの小型船舶の装備スペ−スも狭いので2台の装置となると、なかなか普及しない。従って、本発明の第1の目的は、小型・安価な構成のもとで水中聴音機能を兼ね備える水中探査装置を実現することにある。
【0007】
また、船舶は推進のための大きなエンジン音やスクリュー音や波きり音などの騒音が発生する。このような大きな騒音環境のもとで、魚の鳴き声や捕食音のようなかすかな音を聞き取るのは至難の技である。従って、本発明の第2の目的は、大きな騒音環境のもとでも自然の微弱な可聴音を聴取可能な水中可聴音聴取機能を実現することにある。
【0008】
さらに、鯨やイルカの発する声は人間の可聴音よりも高い周波数で、しかもパルス音が多い。従って、本発明の他の目的は、このような音をも聴取可能な機能を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の課題を解決する本発明の水中探査装置は、水中に超音波を送波する超音波送波器を有する超音波送信部と、物体からの反射信号を受波する単一または複数の送受共用もしくは専用の超音波受波器を有する超音波受信部と、この超音波受信部が受信した反射超音波信号を処理して水中の反射物体として表示する表示部とを含む超音波探査部に加えて、超音波受波器が受波した可聴音信号を増幅する可聴音増幅器と、この増幅された可聴音信号を音響出力する水中可聴音出力手段とを含む可聴音聴取部を備えている。
【0010】
さらに、本発明の水中探査装置は、水中可聴音聴取部が受信した水中可聴音を分析する音響分析手段とこの分析結果を表示部に表示する分析結果表示手段とを備えたことと、この分析結果表示手段が水中可聴音の分析結果を水中の反射物体の表示位置に対応する位置に表示する手段を備えたことと、超音波探査部の表示部が魚群の出現を検出して水中可聴音聴取部の動作を有効化する水中可聴音聴取部・有効化手段を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水中探査装置は、魚群探知機に最小限の構成を付加して水中聴音機能を実現する構成であるから、簡易で安価な小型の水中聴音装置を実現できる。この結果、漁船員やレジャーボートの釣り人が魚種を判定したり、ホエ−ル・ウオッチングなどの観光客に鯨やイルカの声を楽しむことができる。
【0012】
さらに、本発明の水中探査装置によれば、水中可聴音聴取部が、受信した水中可聴音を分析する音響分析手段と、この分析結果を表示部に表示する分析結果表示手段を備えると共に、分析結果表示手段が、水中可聴音の分析結果を水中の反射物体の表示位置に対応する位置に表示する手段を備える構成であるから、超音波レーダで得た魚影と、可聴音とにより、漁船の船員やレジャーボートの釣り人による魚種の判定が、一層容易かつ正確になる。
【0013】
さらに、本発明の水中探査装置によれば、魚群が出現したときだけ、聴取部の機能を有効化する水中可聴音聴取部・有効化手段を備え手段を備えているので、ユーザーにとっては、意味のない雑音を常時聴かせられたり、魚群が発する水中可聴音を聞き漏らさないようにと常時緊張を強いられたりすることから開放され、ユーザの疲労を軽減され、利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一つの好適な実施の形態によれば、受信した水中可聴音をフーリエ変換して周波数スペクトルを作成する構成であるから、魚種によって上下する周波数帯を一目瞭然に認識することができ、魚種の判別が容易・確実になる。
【0015】
また、本発明の更に好適な実施の形態によれば、超音波受波器を、超音波探査部と水中可聴音聴取部とに選択的に接続する選択接続手段を備えることにより、スイッチやリレ−などの簡易・安価な部品で実現可能な選択接続手段を利用して超音波による魚群探知機能と水中可聴音聴取機能とを分離できるように構成されている。このため、従来の魚群探知装置に高価な水中マイクロフォンを追加することなく水中可聴音聴取機能を実現するために、本来の魚群探知用として設置される超音波受波器が水中可聴音聴取のための水中マイクロフォンとして兼用される。
【0016】
一般に、魚群探知機で使用されている超音波受波器は、圧電セラミック素子で構成されている。この種の圧電素子は、応力を加えて歪みを与えると電圧を発生する効果と、逆に、電圧を印加すると歪や応力を発生する機能がある。この機能が、超音波の周波数帯の送波器や受波器として利用される。複数の送受波器を持つ多周波型魚群探知機やソナ−に、この方法を用いて水中聴音機能を付加することにより、水中の魚群位置を立体的に計測することが可能となる。また、水中音を高度に処理することができ、水中生物の研究用途にも役立つことも可能となる。
【0017】
さらに、圧電セラミック素子の機械的共振周波数を、魚群探知用に送受波する超音波の周波数帯域に合わせることで高い変換効率を得ている。しかしながら、共振周波数以外でも圧電効果の機能は発揮される。超音波の共振周波数以外の水中可聴音の周波数領域で受波器として使用する場合でも、変換効率こそ劣るが、これを補う増幅器を設置することで十分に対応できる。さらに、超音波帯域の共振周波数以外では変換効率の周波数依存性が小さいため、平坦な周波数特性をもつ受波器となる。この結果、広い周波数範囲にわたる水中の可聴音を受信するのにかえって好都合になる。
【0018】
本発明の他の好適な実施の形態によれば、超音波受波器で受波した反射超音波信号と可聴音信号とを両者の周波数の違いを利用して互いに分離し、それぞれを超音波探査部と水中可聴音聴取部とに供給する信号分離手段を備えることにより、超音波による魚群探知機能と水中可聴音聴取機能とを同時に実現することができる。
【0019】
本発明のさらに他の好適な実施の形態によれば、可聴音増幅器は、船舶の推進に伴って超音波受波器に受波される各種の水中可聴音を除去する水中可聴音濾波手段を備えることにより、船舶の推進に伴う機関音や推進器音などの人工的な水中可聴音を除去し、自然の水中可聴音だけを聴取可能にするように構成されている。
【0020】
本発明のさらに他の好適な実施の形態によれば、、ディジタル信号処理によって信号の時間軸を伸長し、周波数を低下させる手段を付加することにより、イルカなどが発する人間の可聴範囲よりも高周波数のパルス音を聴取可能にするように構成されている。
【実施例】
【0021】
図1は、本発明の第1の実施例に係わる水中探査装置の構成を示す機能ブロック図である。この第1の実施例の水中探査装置は、1周波型魚群探知機に最小限の構成を付加して水中聴音機能を付加したものである。この装置は、魚群探知機能を実現する超音波探査部の構成要素として、タイミング制御回路10、バ−スト信号発生回路11、送信増幅回路12、単行回路13、送受波器14、受信増幅回路15、A/D変換器16、Bスコ−プ映像化処理回路17、ビデオ変換器18およびLCD表示器19を備えている。また、この装置は、水中可聴音聴取部の構成要素として、切換回路30、プリアンプ31a、フィルタ32、メインアンプ33a、スピ−カ34およびフィルタ制御回路35を備えている。
【0022】
超音波探査部のタイミング制御回路10は発振器から構成され、魚群の探知範囲で定まる周期の送信開始信号10aを発生する。この魚群の探知範囲として、例えば0 〜100 m(メートル)を想定すると、水中の音速から133msec 以上の繰り返し周期が必要となる。タイミング制御回路10は、これに後処理時間を加算して、200msec 程度の周期で1msec の時間幅の送信開始信号10aを繰り返し発生する。バ−スト信号発生回路11は、魚群探知のための周波数(例えば、50kHz )の矩形波の信号を発生する発振器と振幅変調器とから成り、50kHz の信号を被変調信号、送信開始信号10aを変調信号とする振幅変調が行われ、1msec の時間幅の50kHz のト−ンバ−スト信号を発生する。
【0023】
送信増幅回路12は電力増幅器から成り、バースト信号発生回路11から供給されるト−ンバ−スト信号を増幅し、通常1000Vp−p程度の50kHz の高電圧ト−ンバ−スト信号を発生させ出力する。単行回路13はダイオ−ド等で構成されており、送信増幅回路12からの高電圧ト−ンバ−スト信号を切換回路30を介して送受波器14に伝達すると共に、この高電圧ト−ンバ−スト信号が受信増幅回路15に伝達されるのを阻止する。高電圧ト−ンバ−スト信号が存在しない時間帯は、送受波器14で受けた1V以下の微弱受信信号が、単行回路13を通して受信増幅回路15だけに伝達される。この単行回路13の機能により、受信信号が送信増幅回路12へ伝達されて損失となることがなく効率良く受信増幅回路15に伝達される。切換回路30は、スイッチやリレ−で構成される。
【0024】
この装置を魚群探知のための超音波探査に使用するときは切替回路30内の切換操作によって送受波器14と単行回路13とが接続される。また、この装置を水中可聴音聴取に使用するときは、切替回路30内の切換操作によって送受波器14とプリアンプ31aとが接続される。送受波器14はチタン酸バリウムなどの圧電セラミック素子からなり、切換回路30で単行回路13と接続されると、送信増幅回路12から供給される50kHz の高電圧ト−ンバ−スト信号で駆動される。送受波器14の共振周波数が予め50kHz の近傍に設定されているため、大きな励振効率が実現され、水中に強力な超音波のト−ンバ−スト波が送信される。送信された超音波のト−ンバ−スト波の一部は、水中の魚群などの反射物体で反射されて再び送受波器14に戻り、電気信号に変換され、切換回路30と単行回路13を経て受信増幅回路15に供給される。
【0025】
このように送受波器14では、共振周波数での効率的な励振が行われ、水中に強力なト−ンバ−スト信号が送信されると共に、水中の魚群などの反射物体からの反射波の効率的な受信が行われる。同時に、この送受波器14は、水中の微弱な可聴音を受信しており、切換回路30を通してプリアンプ31aと接続されている状態では、この水中の可聴音信号がプリアンプ31aに伝達される。
【0026】
受信増幅回路15は中心周波数50kHz の狭帯域の増幅器であり、送受波器14で受信した水中の魚群などの反射物体からの反射信号を増幅する。通常、100〜120dBの範囲の増幅度を持つが、通常よく行われるように、必要に応じて水中の反射物体の反射率に対して増幅度が可変される。A/D変換器16は、受信増幅回路15から出力するアナログ信号の振幅値を、例えば8段階に分類し3ビットのデジタル信号として、Bスコ−プ映像化処理回路17に伝達する。
【0027】
Bスコ−プ映像化処理回路17は、二次元アドレス構成のメモリと、このメモリのアドレスをアクセスして読み書きを行うための制御回路で構成される。この二次元アドレス構成のメモリは、図2に示すように、探知回数アドレスと、深度アドレスによってアクセスされるメモリ素子から構成される。このメモリのアドレスは、LCD表示器19の表示画素数に対応しており、例えば縦×横が640×480の表示画素数に対応して、1〜640番地の探知回数アドレスと1〜480番地の深度アドレスを持つ。また、LCD表示器19の表示色数、例えば8色に対応して各メモリ素子のデ−タ長は3ビットである。
【0028】
この二次元アドレス構成メモリへの書き込みは次のように行われる。まず、探知回数アドレスの最も古い探知信号の記憶位置のメモリ列に、タイミング制御回路10から供給される送信開始信号10aを開始時点として、深度アドレスの1番地から、所定の繰り返し周期で、深度アドレスが1番地づつ増加され、A/D変換器16から供給される3ビット構成のデジタル受信信号がデ−タとしてメモリ素子に書き込まれる。このアドレス増加の周期は、例えば、魚群探知機の探知範囲を0〜100m、LCD表示器の深度方向へのピクセル数を480と想定すると、100mは水中の音速から133m秒の時間となるので、133÷480=約0.277msec となる。この受信信号の書き込みは、480番地まで行われると停止される。
【0029】
この書き込みが停止した時点で、このメモリ列のデ−タは最新の探知デ−タを記憶したことになるので、探知回数アドレスの最新の探知信号の記憶位置と最古の探知信号の記憶位置は、図2において左に1列ずれることになる。次に、上記と同様の書き込みを、送信開始信号10aの周期に応じて連続的に行うことで、この二次元アドレス構成のメモリには、常に現時点から一定時間(送信周期×640)だけ逆上った、水面から水中100mの深度範囲の受信反射信号が探知信号として8段階の強弱分類で記憶されることになる。
【0030】
LCD表示器19の表示画像の一例を図3に示す。この表示画像の例は魚群探知機の最も一般的なBスコ−プ表示であり、表示画面は640×480個の画素で構成されている。縦方向の画素列は、1回の送信で得られた0〜100mの深度範囲の探知信号を、各探知信号の強弱を1画素の色彩や濃淡などの属性に置き換えて表示したものであり、右端の画素列は最新の探知信号を表示しており、左端の画素列は最古の探知信号を表示している。1回の送信毎に左へスクロ−ルして行くので、現時点から一定時間分過去(送信周期×640)の、水面から水中100mの深度範囲の探知状況が表示される。
【0031】
この表示画像では、画像の上端に送信時の単行回路13からの漏れ込みと水面付近に存在する気泡などからの反射信号が表示されている。これは、通常、発振線と呼ばれる。また、表示画像の下側には水底からの反射信号が、その水深を変化させながら表示されている。また、水中には魚群からの反射信号が、二度にわたって表示されている。各反射信号は、A/D変換器16において8段階の振幅値に分類される。一例として、反射信号の強さに応じた8色の色彩が付されて表示される。
【0032】
図2と図3の対比から解るように、Bスコ−プ映像化処理回路17内の二次元アドレス構成のメモリに記憶した内容とLCD表示器19で表示されている画像内容は一致している。ただ、異なるところは二次元構成のメモリでは、最新の探知信号の記憶位置と最古の探知信号の記憶位置が送信開始信号10aによって、1列づつ移動するのであるが、LCD表示器19の表示画像では常に最新の探知信号が右端に、最古の探知信号が左端に、それぞれ固定して表示されていることである。
【0033】
従って、Bスコ−プ映像化処理回路17内の二次元アドレス構成のメモリを読み出す際に次のような工夫が必要となる。すなわち、二次元アドレス構成のメモリの読み出しは、LCD表示器19の水平、垂直同期信号19aに同期して読み出すわけであるが、常に水平同期信号の最初に読み出す探知回数アドレスを最古の探知信号の記憶位置のアドレスから開始し、順に、図2の左方向へ読み出すようにアドレス制御を行うことで、LCD表示器19の表示画面では水平同期信号ごとに左から右方向に走査され表示されるので、左端が最古の探知信号となって表示されることになる。
【0034】
また、深度アドレスは垂直同期信号の最初の水平同期信号時は1番地に固定しておいて、次の水平同期信号で順次、番地を増加していくようにアドレス制御を行うことで、LCD表示器19の表示画面では上端が深度0mとなり、下端に向けて深度が増加し、下端が深度100mとなって表示される。
【0035】
このように、LCD表示器19の水平・垂直同期信号19aに同期して二次元アドレス構成のメモリは常に読み出され、表示画面全体に探知信号を表示している。一方、送信開始信号10aごとに二次元アドレス構成のメモリは最古の探知信号を最新の探知信号に書き換えられているので、表示画面の左端の最古の探知信号は消えて最古の探知信号より1回の送信ぶん新しい探知信号が左端に表示され、同時に表示画面全体も同様の表示更新が起こるので、映像全体が右から左方向にスクロ−ルして見えることになる。
【0036】
ビデオ変換器18はLCD表示器19のRGBアナログ入力に対応した3つのD/A変換器からなる。Bスコ−プ映像化処理回路17内の2次元アドレス構成メモリの記憶内容が8段階の振幅値毎に分類されているので、その8段階を8色の色彩画像に相当するRGB配分、または8段階の濃淡画像に相当するRGB配分のアナログ信号に変換してLCD表示器19に伝達する事で、任意の色彩表示や濃淡表示に対応する。
【0037】
次に、この第1の実施例の水中探査装置の水中聴音機能に関する部分の動作を説明する。プリアンプ31aは20Hz〜20kHz の可聴音帯域を増幅する高入力インピ−ダンスの低雑音増幅器で構成される。このプリアンプ31aは、送受波器14で受信した水中の可聴音周波数帯域の信号を切換回路30を通して受信し、増幅する。フィルタ回路32は、複数のハイパス・フィルタと、複数のロ−パス・フィルタと、複数のノッチ・フィルタ回路で構成される。そして、これら各フィルタの中心周波数、遮断周波数、減衰量等のフィルタ性能諸元は、フィルタ制御回路35を介して手動操作で変更され、あるいは、フィルタ制御回路35に入力するエンジン回転数信号の周波数などに応じて自動的に変更される。
【0038】
このような各種のフィルタは、この実施例の水中探査装置で水中音を聴音するときに、目的とする水中音以外の騒音を除去する為に使用される。ここでは、この実施例の装置を船舶に実際に装備して水中聴音装置として使用したときに受音される水中騒音について説明する。
【0039】
この第1の実施例の水中探査装置が搭載された船舶は水上に浮かんでいるので波やうねりによって常に揺れており、その船舶の上下動や左右の揺れに対して船底に設置した送受波器に加わる水圧が変動する。この結果、その変動周期に応じた極めて低い周波数の大きな騒音に相当する受信信号が送受波器に発生する。
【0040】
また、船舶は走行のための機関とスクリューなどの推進器を持っている。機関は推進器軸を動かす主機と発電器等の補機からなり、主機は、通常、内燃機関である。この内燃機関は、燃焼周期に応じた特定周波数の騒音を発生するが補機や減速装置の騒音と相まって周波数帯域が比較的広い騒音となる。これら広帯域の騒音は船体を通じて水中に放射され、それが船底に設置した送受波器で受波される。また、推進器は、それ自体が送波器のような物であり、その回転数と翼数に応じた特定周波数の騒音を発生し水中に放射し、それが送受波器で受信される。
【0041】
このような騒音のスペクトラム分布の典型的な一例は図4に示すようなものとなる。極めて低い周波数領域に幅をもつスペクトラム分布は、船舶の動揺により発生する騒音である。また、中間の周波数領域に幅をもつスペクトラム分布は、船舶の機関から発生する騒音である。さらに、特定の周波数に線スペクトラム状に存在するのが船舶の推進器から発生する騒音であり、数次の高調波を持っている。
【0042】
このような特徴のスペクトラム分布をもつ騒音を、フィルタで除去または軽減する。各雑音の中心周波数と周波数の広がりに応じて、フィルタ特性を調整することにより、これらの雑音を除去できる。例えば、船舶の動揺によって発生し受信される騒音成分については、フィルタ回路32のハイパス・フィルタのフィルタ性能諸元を、フィルタ制御回路35を介して手動操作で調整することにより、除去または軽減することができる。
【0043】
また、船舶の機関から発生する騒音に対しては、フィルタ回路32のハイパス・フィルタとロ−パス・フィルタのフィルタ性能諸元を、フィルタ制御回路35を介して手動操作で調整することにより、除去し、軽減することができる。さらに、船舶の推進器から発生する騒音については、線スペクトラム状の周波数帯域でしかも高調波を持っているので、複数のノッチフィルタ回路のフィルタ性能諸元を、フィルタ制御回路35を介して手動操作で調整することにより、除去または軽減することができる。
【0044】
さらに、推進器から発生する騒音に関しては推進器の回転数と翼数に応じた特定周波数の騒音であるので、推進器の回転数の元になるエンジン回転数を示す信号をフィルタ制御回路35に入力し、そのエンジン回転数に比例して複数のノッチフィルタ回路のフィルタ性能諸元を自動設定することによっても、種々の回転数に応じて自動除去することもできる。
【0045】
図1のメインアンプ33aは、可聴音周波数帯域を電力増幅する増幅器であり、そこで水中の可聴音信号を増幅し、スピ−カ34を鳴らす。もちろん、スピ−カの代わりにレシ−バでも構わない。
【0046】
以上が、1周波型魚群探知機に最小限の構成を付加して水中聴音機能を付加した本発明の第1の実施例に係わる水中探査装置の構成と動作の説明である。この実施例の装置では、送受波器を切り換えて使用するため、魚群探知機能と水中聴音機能とを同時に実現することができない。そこで、両機能を同時に実現できるようにした水中探査装置を本発明の第2の実施例として以下に説明する。
【0047】
図5は、上記本発明の第2の実施例の水中探査装置の構成を示す機能ブロック図である。魚群探知機能を実現するための超音波探査部の構成要素として、図1と同様のタイミング制御回路10、バ−スト信号発生回路11、送信増幅回路12、単行回路13、送受波器14、受信増幅回路15、A/D変換器16、Bスコ−プ映像化処理回路17、ビデオ変換器18およびLCD表示器19を備えている。さらに、図1に示した第1の実施例の装置にはない魚群検出回路20が新たに追加されている。
【0048】
また、水中可聴音聴取部の構成要素として、図1と同様の構成のフィルタ32、スピ−カ34およびフィルタ制御回路35と、図1のものとは異なる構成のプリアンプ31bおよびメインアンプ33bと、図1のものにはない新たに追加された分離回路36とを備えている。なお、この第2の実施例の水中探査装置中、図1と同一の参照符号を付した構成要素は図1の対応の参照符号を有する構成要素と同一であるから、これらについては重複する説明を省略する。
【0049】
この第2の実施例の水中探査装置では、魚群探知機能と水中可聴音聴取機能とを同時に実現するために、図1の装置に設置された切換回路30が除去され、送受波器14と単行回路13とが常時接続される構成となっている。送受波器14が受信した水中の魚群などからの反射信号に水中の可聴音信号が重畳された信号が、単行回路13を経て、新たに追加された分離回路36に供給される。分離回路36は中心周波数50kHz のバンドパス・フィルタと、遮断周波数20kHz のロ−パス・フィルタとからなり、水中の魚群などからの反射超音波信号はバンド・パスフィルタを通過して受信増幅回路15に伝達される。また、水中の可聴音信号はロ−パス・フィルタを通過してプリアンプ31bに伝達される。
【0050】
プリアンプ31bは、20Hz〜20kHz の可聴音帯域を増幅する高入力インピ−ダンスの低雑音増幅器で構成され、送受波器14が受信した水中の可聴音周波数帯域の信号を分離回路36を通して受信し、これを増幅する。この増幅対象の可聴音周波数帯域の信号には、魚群探知機の送信信号に周期して送信増幅回路12が発生した高電圧ト−ンバ−スト信号に起因する大振幅の低調波成分が含まれている。この不要成分は、分離回路36による分離が不十分なためプリアンプ31bに漏れ込んでくる。この不要漏れ成分を含む信号をそのまま増幅すると、周期的なパルス騒音が発生する。
【0051】
この不要漏れ成分を除去するために、プリアンプ31bの低雑音増幅器の入力部分には図6に示すようなアナログスイッチSWが設置される。このアナログスイッチSWに、タイミング制御回路10で周期的に発生される1msec 時間幅の送信開始信号10aが切換信号として入力される。送信増幅回路12で高電圧ト−ンバ−スト信号が発生されるときは、アナログスイッチSWの入力側が切換信号によって接地側に切換えられ、出力信号として低調波成分が伝達されない。もちろん、アナログスイッチSWの代わりに、プリアンプ31bの初段増幅器の動作点を決めているバイアス電圧を瞬間的に制御し、増幅器の増幅率を制御することにより不要漏れ信号を除去することも可能である。
【0052】
プリアンプ31bからの可聴音周波数帯域の信号はフィルタ回路32を介してメインアンプ33bに伝達される。ここで、フィルタ回路32とフィルタ制御回路35は、図1の装置と全く同じ機能を果たすので、重複する説明は省略する。メインアンプ33bは、可聴音周波数帯域を電力増幅する増幅器であり、そこで水中の可聴音信号が増幅され、スピ−カ34に供給される。
【0053】
メインアンプ33bの内部にはスイッチが付加されている。このスイッチに対する切換信号は、後述する魚群検出回路20からの魚群検出信号20aであり、魚群探知機能で魚群を探知している時間内はオンとなる信号である。この信号がオンの期間内だけ増幅した可聴音信号がスピ−カへ供給される。この魚群検出信号20aがオフの期間内は、増幅された可聴音信号がスピ−カへ供給されないようにスイッチが切換えられる。この結果、魚群が探知されると自動的に魚の声を含む水中音がスピーカから出力される。このようにすると、水中音を聞くために長時間にわたって神経を集中させ、疲労を招くことなく、必要なときだけ判断に集中できる。
【0054】
魚群検出回路20は、Bスコ−プ映像化処理回路17内の二次元アドレス構成のメモリ内の最新の探知信号の記憶位置のメモリ列に記憶されている探知信号の振幅値を使用する。このメモリ列には、最新の探知信号が時系列で深度アドレスに沿って探知信号の振幅値として記憶されており、手動操作で設定された深度範囲に該当する深度アドレス内の探知信号の振幅値と、やはり手動設定で設定された魚群の振幅値を比較して、探知信号の振幅値の方が大きければ、その探知信号を魚群と判断して魚群検出信号20aをオン状態とする。
【0055】
以上、魚群探知機能と水中聴音機能を同時に実現するために、1周波型魚群探知機に最小限の構成を付加して水中聴音機能を実現した本発明の第1,第2の実施例に係わる水中探査装置の構成と動作とを説明した。上記本発明の第1,第2の実施例に係わる水中探査装置は、いずれも1周波型魚群探知機を用いた構成であった。次に、2周波型魚群探知機に最小限の構成を加えて水中聴音装置を実現した本発明の第3の実施例に係わる水中探査装置を説明する。
【0056】
図7は、本発明の第3の実施例に係わる水中探査装置の構成を示す機能ブロック図である。魚群探知機能を実現するための構成要素として2周波・送受信処理部40と、第1の周波数送受波器41、第2の周波数送受波器42、ビデオ変換器18、LCD表示器19が設置されている。また、水中聴音機能を実現するための構成要素として、第1の可聴音処理部43、第1のスピ−カ44、第2の可聴音処理部45および第2のスピ−カ46が設置されている。
【0057】
2周波・送受信処理部40は、第1,第2の実施例の水中探査装置に関して説明したものと同一のバ−スト信号発生回路11、送信増幅回路12、単行回路13、受信増幅回路15およびA/D変換器16から構成される送受信系を2つと、Bスコ−プ映像化処理回路17とを備えている。この2周波・送受信処理部40は、2周波、例えば50kHz と200kHz の二つの周波数での送信が、タイミング制御回路10で発生する送信開始信号10aに同期して同時に行う機能を備える。
【0058】
そして、各周波数の超音波の送受信によって探知した水中の魚群や水底などの探知信号は、それぞれの受信系統を経て、送信毎にBスコ−プ映像化処理回路17内の2次元アドレス構成メモリに書き込まれ、LCD表示器の水平・垂直同期信号19aに同期して読み出され、ビデオ変換器18を介してLCD表示器19に表示される。この時、2次元アドレス構成メモリは、探知回数アドレスが二つの周波数に対応した領域に分割使用される。
【0059】
2周波型魚群探知機能による表示画面の一例を図8に示す。表示画面の左側半分が50kHz 、右半分が200kHz の周波数系統の表示画像である。表示画面では、各画像の上端には、発振線といわれる送信時の単行回路13からの漏れ込みと水面付近の気泡等の反射信号が表示されている。また、表示画像の下側には水底の反射信号が、その水深を変化させながら表示されている。また、水中には魚群の反射信号が表示されている。
【0060】
これら反射信号は図1のA/D変換器16に対応するA/D変換器で、8段階の振幅値毎に分類され、振幅の大小に応じた8色の色彩映像で表示される。しかし、表示画像の左側と右側半分では表示が異なっている。例えば、発振線や水底の反射信号は右側の200kHz 系の方が短く表示されている。また、魚群(f1〜f3)においては左側に表示されて右側に表示されない魚群(f2)や、その反対の魚群(f1)、左右共に表示される魚群(f3)がある。これら魚群表示の周波数による違いは、魚の体長による超音波の反射率が周波数によって異なることから生ずる。この表示画面上での差を利用すると、魚の体長を推定することが可能となり、2周波型魚群探知機を使用する利点となっている。
【0061】
第1の送受波器41は200kHz の共振周波数を、第2の送受波器42は50kHz の共振周波数を持つ圧電セラミックス素子からなる送受波器である。送受波器41、42は、各周波数での水中への超音波の送信と受信とを行うが、同時に水中の可聴音も受信する。送受波器41,42からの可聴音信号は、2周波・送受信処理部40内にある、第1,第2の実施例の装置に関して説明した切換回路30や分離回路36に該当する回路を通して、第1の可聴音処理部43と第2の可聴音処理部45に伝達される。
【0062】
第1の可聴音処理部43と第2の可聴音処理部45は、第1,第2の実施例の装置で説明したプリアンプ31、フィルタ32、メインアンプ33およびフィルタ制御回路35などから構成される。そして、第1の可聴音処理部43では、第1の送受波器41が受信した水中の可聴音信号に対して、周波数領域でのフィルタリングと増幅とが行われ、第1のスピ−カ44を鳴動せしめられる。同様に、第2の可聴音処理部45では、第2の送受波器42で受信した水中の可聴音信号に対して、周波数領域でのフィルタリングと増幅が行われ、第2スピ−カ46が鳴動せしめられる。
【0063】
これら第1のスピ−カ44と第2のスピ−カ46からの可聴音を左右の耳で聴音することで、ただ単に水中の可聴音を聞くだけでなく、第1の送受波器41と第2の送受波器42の設置位置を工夫することで、ステレオ効果により水中の音源の方向も推定できることになる。
【0064】
以上が2周波型魚群探知機に最小限の構成を加えて水中聴音機能を実現した第3の実施例に係わる水中探査装置の構成と動作である。さらに、この第3の実施例に係わる水中探査装置を応用して、多周波型魚群探知機やソナ−等が有する多数の送受波器を利用して水中聴音を行い、水中の音源位置を3次元計測することも可能となる。
【0065】
上記第3の実施例では、異なる超音波周波数の2種類の超音波を送受信する2周波型魚群探知機の場合を例示した。しかしながら、同一周波数の超音波を送受信して、複数の受信素子の配置と各受信素子の受信信号の位相差とから反射物体の方位角を検出するために、複数の受信素子が設置される位相差検出方式の超音波探査装置に本実施例を適用することも勿論可能である。
【0066】
これまでの実施例は、魚群探知機能の実現に必要な構成に対して最小限の構成要素を付加することにより水中可聴音聴取機能を実現する例である。次に、水中可聴音聴取機能を高度化した第4の実施例に係わる水中探査装置の構成と動作を説明する。
【0067】
図9は、本発明の第4の実施例に係わる水中探査装置の構成を示す機能ブロック図である。魚群探知機能を実現する超音波探査部の構成要素として、送受信処理部50、送受波器51、ビデオ変換器18およびLCD表示器19が設置されている。また、水中可聴音聴取部の構成要素として、可聴音処理部53およびスピ−カ54が設置されている。さらに、この水中可聴音聴取部の機能の高度化を実現するための構成要素として、パソコン60、A/D変換器61、D/A変換器62、ス−パ−インポ−ズ回路63および表示領域発生回路64が設置されている。
【0068】
送受信処理部50は、第1,第2の実施例で説明したタイミング制御回路10、バ−スト信号発生回路11、送信増幅回路12、単行回路13、受信増幅回路15、A/D変換器16およびBスコ−プ映像化処理回路17を内蔵している。タイミング制御回路10で発生する送信開始信号10aに同期して超音波信号を送信し、水中の魚群や水底などからの反射超音波信号が探知信号として受信され、送信のたびにBスコ−プ映像化処理回路17内の二次元アドレス構成のメモリに書き込まれる。このメモリに書き込まれた探知信号は、LCD表示器の水平・垂直同期信号19aに同期して読み出され、ビデオ変換器18を介してス−パ−インポ−ズ回路63を経てLCD表示器19に表示される。
【0069】
送受波器51は、50kHz の共振周波数を持つ圧電セラミックス素子から構成され、この共振点付近の周波数の超音波信号を水中に送信して、水中からの反射波を受信する。この送受波器51は、同時に水中の可聴音も受信している。この送受波器51が受信した可聴音信号は、送受信処理部50内にある、第1,第2の実施例で説明した切換回路30や分離回路36を通して可聴音処理部53に伝達される。可聴音処理部53は、第1,第2の実施例で説明したプリアンプ31、フィルタ32、メインアンプ33およびフィルタ制御回路35などから構成されている。そして、可聴音処理部53では、送受波器51で受信した水中の可聴音信号に対して、周波数領域での濾波と増幅とが行われ、スピ−カ54を鳴動させる。
【0070】
以上、本発明の第4の実施例に係わる水中探査装置において魚群探知機能の実現のための超音波探査部に、水中可聴音聴取機能を付加するため構成について説明した。次に、この第4の実施例における特徴的な水中可聴音聴取機能の高度化に関する部分について、詳細に説明する。
【0071】
パソコン60は、入力インターフェイスと出力インターフェイスにそれぞれA/D変換器61とD/A変換器62とを備えており、送受波器51で受信した水中可聴音信号を、送受信処理部50とA/D変換器61とを介して、デジタル信号で取り込む。パソコン60は、このディジタル信号に対してソフトウエアでの各種の信号処理を行い、その結果を、D/A変換器62で再びアナログ信号にしてスピ−カ54を鳴動させる。また、ソフトウエアでの各種のデジタル信号処理の結果を、文字・図形によるグラフィック表示画像とし、グラフィックビデオ信号60aとして出力する。
【0072】
ス−パ−インポ−ズ回路63は、ビデオ信号に対するスイッチで構成され、表示領域発生回路64で発生する表示領域信号64aの極性に応じて、ビデオ変換器18から供給される魚探ビデオ信号18aと、パソコン60から供給されるグラフィック・ビデオ信号60aのうちの一方を選択してLCD表示器19へ供給する。
【0073】
表示領域発生回路64は、同期信号19aを計数し、この計数回数に基づいてLCD表示器19の表示領域を決定する。例えば、LCD表示器の表示画素数を、縦480×横640とするならば、表示領域を上下均等分割するには水平同期信号を240回計数した時点が表示領域の切り換える時点となる。また、表示領域を左右均等分割するには毎回の水平同期信号において画素クロックを320回計数した時点が表示領域の切り換える時点となる。この例では、上下または左右半分の分割を揚げたが、計数回数を変えることで任意の表示領域に切り換えられることは言うまでもない。
【0074】
以上のような構成を用いて、送受波器51で受信した信号をデジタル信号として取り込み、パソコン60でソフトウエアによるディジタル信号処理を行った結果を文字・図形によるグラフィック表示画像としてLCD表示器19に表示した画像の一例を図10に示す。図10において、上半分の画像は50kHz での水中の魚群探知(超音波探査)映像であり、下半分は現時点の水中可聴音をディジタル処理のフ−リエ変換して周波数分析した結果をグラフで示している。このグラフ表示を見ながら、前述したフィルタ制御回路35を手動操作することができ、エンジン回転音などの不要な水中騒音を速やかに除去することができる。
【0075】
また、図11において、上半分の画像は50kHz での水中の魚群探知映像である。下半分は、可聴音を周波数分析し、その結果を、横軸を時間、縦軸を周波数、信号の強度を線の太さ、濃淡あるいは色彩で表示したものである。音声分析のソナグラフと同様の表現手法である。こうすることにより、上半分の魚群探知映像と同期して分析結果が移動し、上半分の魚群の画像と下半分の分析結果が対応した位置に表示され、魚種判別を容易になる。なお、信号処理のソフトウエアを変更することにより、魚群探知映像と合わせて表示する信号分析結果の表示を多種類にできることは言うまでもない。
【0076】
次に、送受波器51で受信した可聴音信号をデジタル信号として取り込み、パソコン60でソフトウエアによるディジタル信号処理を行い、その結果を再びアナログ信号にしてスピ−カ54を鳴らしたときの波形例を図12に示す。図12において、原音は1msec のパルス音であった。それをパソコン60内のメモリ列に書き込み、その後、書き込み周期の1000倍の周期で読み出すと言うソフトウエアによるディジタル信号処理を行って、1秒の時間幅の伸長音にしている。このような時間軸伸長処理を行うことにより、通常に聞いても判別できないパルス音の特徴を耳で把握できるようになる。
【0077】
なお、ディジタル信号処理のソフトウエアを変更することにより、水中の信号を可聴音領域に周波数変換して聴取することも可能にできる。
【0078】
以上、水中聴音機能の高度化を実現した第4の実施例の構成と動作を説明しこた。この実施例ではディジタル信号処理を汎用のパソコンで行っているが、専用のハ−ドウエア構成で実現してもよいことは勿論である。特に、現在の魚群探知機は探知信号を表示すると共に、探知範囲のスケ−ル表示、水深値の数値表示、グラフ表示などを探知信号に重畳して表示を行っており、これらの表示のために付加されたグラフィック表示機能と制御機能を使うことにより可能である。
【0079】
以上、送受共用の超音波トランスジューサを設置する構成を例示した。しかしながら、送信専用のトランスジューサと一つまたは複数の受信専用のトランスジューサとを個別に設置し、受信専用の超音波トランスジューサが受信した水中可聴音を処理して聴取する構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施例に係わる水中探査装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1のBスコ−プ映像化処理回路18内の二次元アドレス構成のメモリの構成と動作を説明するための概念図である。
【図3】図1のLCD表示器19に表示される1周波型魚群探知機の表示画像の一例を示す概念図である。
【図4】図1の送受波器14に受信される水中雑音の周波数分布の典型的な一例を示す周波数特性図である。
【図5】本発明の第2の実施例に係わる水中探査装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図6】図5中のプリアンプ31b内に設置される受信信号の切換スイッチSWの構成を示す機能ブロック図である。
【図7】本発明の第3の実施例に係わる水中探査装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図8】上記図7のLCD表示器19に表示される2周波型魚群探知機の表示画面の一例を示す概念図である。
【図9】本発明の第4の実施例に係わる水中探査装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図10】図9内のLCD表示器19に表示される重ね合わせ画像の一例を示す概念図である。
【図11】図9内のLCD表示器19に表示される重ね合わせ画像の他の一例を示す概念図である。
【図12】図9内のパソコン60によにディジタル信号処理によって時間軸が伸長されたパルス音の波形の一例を示す波形図である。
【符号の説明】
【0081】
10 タイミング制御回路
11 バ−スト信号発生回路
12 送信増幅回路
13 単行回路
14 送受波器
15 受信増幅回路
16 A/D変換器
17 Bスコ−プ映像化処理回路
18 ビデオ変換器
19 LCD表示器
20 魚群検出回路
30 切換回路
31a,31b プリアンプ
32 フィルタ
33a,33b メインアンプ
34 スピ−カ
35 フィルタ制御回路
36 分離回路
40 2周波送受信処理部
41,42 第1, 第2の送受波器
43,45 第1, 第2の可聴音処理部
44,46 第1, 第2のスピ−カ
50 送受信処理部
51 送受波器
53 可聴音処理部
54 スピ−カ
60 パソコン
61 A/D変換器
62 D/A変換器
63 スパ−インポ−ズ回路
64 表示領域発生回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に超音波を送波する超音波送波器を有する超音波送信部と、物体からの反射信号を受波する送受共用または専用の単一もしくは複数の超音波受波器を有する超音波受信部と、この超音波受信部が受信した反射超音波信号を処理して水中の反射物体として表示する表示部とを含む超音波探査部と、
前記単一もしくは複数の超音波受波器が受波した可聴音信号を増幅する単一もしくは複数の可聴音増幅器と、この増幅された単一もしくは複数の可聴音信号を音響出力する単一もしくは複数の可聴音出力手段とを含む水中可聴音聴取部とを備えた水中探査装置において、
前記水中可聴音聴取部が、受信した水中可聴音を分析する音響分析手段と、この分析結果を表示部に表示する分析結果表示手段を備えたことと、
前記分析結果表示手段が、前記水中可聴音の分析結果を水中の反射物体の表示位置に対応する位置に表示する手段を備えたことと、 前記超音波探査部の表示部が、魚群の出現を検出して前記水中可聴音聴取部の動作を有効化する水中可聴音聴取部・有効化手段を備えたことと
を特徴とする水中探査装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記音響分析手段が、受信した水中可聴音をフーリエ変換して周波数スペクトルを作成する手段を備えたことを特徴とする水中探査装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一方において、
前記単一または複数の超音波受波器を、前記超音波探査部と前記水中可聴音聴取部とに選択的に接続する選択接続手段を備えたことを特徴とする水中探査装置。
【請求項4】
請求項1または2のいずれか一つにおいて、
前記単一または複数の超音波受波器で受波した反射超音波信号と可聴音信号とを両者の周波数の違いを利用して互いに分離し、それぞれを前記超音波探査部と前記水中可聴音聴取部とに供給する信号分離手段を備えたことを特徴とする水中探査装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記超音波送信部から供給される送信タイミング信号に同期して前記可聴音増幅器の機能を無効にする増幅機能・無効化手段を更に備えたことを特徴とする水中探査装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
前記可聴音増幅器は、船舶の推進に伴って前記超音波受波器に受波される各種の水中可聴音を除去する水中可聴音濾波手段を備えたことを特徴とする水中探査装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記水中可聴音濾波手段の濾波特性を手動操作に従って変更する手段を備えたことを特徴とする水中探査装置。
【請求項8】
請求項6または7のいずれか一つにおいて、
前記水中可聴音濾波手段の濾波特性を船舶のエンジン回転数に応じて自動的に変更する手段を備えたことを特徴とする水中探査装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一つにおいて、
前記水中可聴音聴取部が、ディジタル処理に基づく時間軸の伸長によって水中の非可聴音を可聴音化して前記可聴音出力手段から出力させる可聴音化手段を備えたことを特徴とする水中探査装置。
【請求項1】
水中に超音波を送波する超音波送波器を有する超音波送信部と、物体からの反射信号を受波する送受共用または専用の単一もしくは複数の超音波受波器を有する超音波受信部と、この超音波受信部が受信した反射超音波信号を処理して水中の反射物体として表示する表示部とを含む超音波探査部と、
前記単一もしくは複数の超音波受波器が受波した可聴音信号を増幅する単一もしくは複数の可聴音増幅器と、この増幅された単一もしくは複数の可聴音信号を音響出力する単一もしくは複数の可聴音出力手段とを含む水中可聴音聴取部とを備えた水中探査装置において、
前記水中可聴音聴取部が、受信した水中可聴音を分析する音響分析手段と、この分析結果を表示部に表示する分析結果表示手段を備えたことと、
前記分析結果表示手段が、前記水中可聴音の分析結果を水中の反射物体の表示位置に対応する位置に表示する手段を備えたことと、 前記超音波探査部の表示部が、魚群の出現を検出して前記水中可聴音聴取部の動作を有効化する水中可聴音聴取部・有効化手段を備えたことと
を特徴とする水中探査装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記音響分析手段が、受信した水中可聴音をフーリエ変換して周波数スペクトルを作成する手段を備えたことを特徴とする水中探査装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一方において、
前記単一または複数の超音波受波器を、前記超音波探査部と前記水中可聴音聴取部とに選択的に接続する選択接続手段を備えたことを特徴とする水中探査装置。
【請求項4】
請求項1または2のいずれか一つにおいて、
前記単一または複数の超音波受波器で受波した反射超音波信号と可聴音信号とを両者の周波数の違いを利用して互いに分離し、それぞれを前記超音波探査部と前記水中可聴音聴取部とに供給する信号分離手段を備えたことを特徴とする水中探査装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記超音波送信部から供給される送信タイミング信号に同期して前記可聴音増幅器の機能を無効にする増幅機能・無効化手段を更に備えたことを特徴とする水中探査装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
前記可聴音増幅器は、船舶の推進に伴って前記超音波受波器に受波される各種の水中可聴音を除去する水中可聴音濾波手段を備えたことを特徴とする水中探査装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記水中可聴音濾波手段の濾波特性を手動操作に従って変更する手段を備えたことを特徴とする水中探査装置。
【請求項8】
請求項6または7のいずれか一つにおいて、
前記水中可聴音濾波手段の濾波特性を船舶のエンジン回転数に応じて自動的に変更する手段を備えたことを特徴とする水中探査装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一つにおいて、
前記水中可聴音聴取部が、ディジタル処理に基づく時間軸の伸長によって水中の非可聴音を可聴音化して前記可聴音出力手段から出力させる可聴音化手段を備えたことを特徴とする水中探査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−261876(P2008−261876A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153654(P2008−153654)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【分割の表示】特願2002−129705(P2002−129705)の分割
【原出願日】平成14年5月1日(2002.5.1)
【出願人】(000001177)株式会社光電製作所 (32)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【分割の表示】特願2002−129705(P2002−129705)の分割
【原出願日】平成14年5月1日(2002.5.1)
【出願人】(000001177)株式会社光電製作所 (32)
【Fターム(参考)】
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