説明

水処理装置および水処理方法

【課題】処理水中に含まれる混入物(例えば、有機物など)を効果的に除去し得る水処理装置および水処理方法を提供する。
【解決手段】液体中にナノバブルまたはマイクロナノバブルを発生させる第1バブル発生部42と、ナノバブルまたはマイクロナノバブルが発生した後の液体が導入されるとともに、当該液体中に微生物を含有させる第1処理槽70と、第1処理槽70内に設けられるとともに、第1処理槽70内の液体を濾過して前処理水を作製するフィルター45と、前処理水中にナノバブルまたはマイクロナノバブルを発生させる第2バブル発生部43と、ナノバブルまたはマイクロナノバブルが発生した後の前処理水を導入する第2処理槽15と、第2処理槽15内に導入される前処理水と接触可能に設けられる、ポリビニルアルコールからなる担体16と、を備え、担体16は細孔を有するとともに、担体16上には微生物が固定化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体から有機物等の混入物を除去することができる水処理装置および水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体から有機物などの物質を除去する技術が、様々な分野で用いられている。例えば、廃液処理においては、廃水中の様々な物質を除去するために、微生物の物質分解能力を利用した技術が用いられている。
【0003】
例えば、従来から、微生物固定化ゲル担体を用いる廃水処理装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。当該廃水処理装置は、浸漬膜濾過方式を採用した汚泥分離設備と、沈殿槽方式を採用した汚泥分離設備とを併用している。なお、当該廃水処理装置では、上記微生物固定化ゲル担体として、例えばポリビニルアルコール系含水ゲルが用いられている。
【0004】
また、従来から、異なる機能を有する複数の槽を用いる廃水処理方法が用いられている(例えば、特許文献2参照)。当該廃水処理方法では、担体が流動している曝気槽、第1の活性汚泥槽、第2の活性汚泥槽、沈殿槽の順番で、廃水が様々な処理を受けている。なお、当該廃水処理方法では、上記担体として、例えばポリビニルアルコール架橋ゲル担体が用いられている。
【0005】
また、従来から、微生物が固定化された担体が投入された廃水処理槽、および当該廃水処理槽から流出する処理水を濾過する膜モジュールを用いる廃水処理装置が用いられている(例えば、特許文献3参照)。なお、当該廃水処理装置では、上記担体としてポリビニルアルコール系含水ゲルが用いられている。
【0006】
一方、従来から、小さな直径を有する気泡(バブル)には様々な作用があることが知られており、現在、このような気泡を様々な分野に利用する試みがなされている。
【0007】
上記気泡は、その直径に応じて、マイクロバブル、マイクロナノバブルおよびナノバブルに分類することができる。具体的には、マイクロバブルは、その発生時において10μm〜数十μmの直径を有する気泡であり、マイクロナノバブルは、その発生時において数百nm〜10μmの直径を有する気泡であり、ナノバブルは、その発生時において数百nm以下の直径を有する気泡である。なお、マイクロバブルは、発生後の収縮運動によって、その一部がマイクロナノバブルに変化することがある。また、マイクロバブルの一部は水中にて収縮して、最後には消滅してしまうマイクロバブルもある。一方、ナノバブルは、長期に渡って液体中に存在することができるという性質を有している。
【0008】
例えば、従来から、様々なナノバブルの利用方法、およびナノバブルを利用した各種装置が知られている(例えば、特許文献4参照)。より具体的には、特許文献4には、ナノバブルが、浮力の減少、表面積の増加、表面活性の増大、局所高圧場の生成、または静電分極の実現によって、界面活性作用および殺菌作用を示すことが記載されている。更に、特許文献4には、ナノバブルが有する界面活性作用および殺菌作用を用いて、各種対象を洗浄する技術および汚濁水を浄化する技術が記載されている。更に、特許文献4には、ナノバブルを用いて生体の疲労を回復する方法が記載されている。なお、特許文献4では、水を電気分解するとともに、当該水に超音波振動を加えることによって、ナノバブルを作製している。
【0009】
また、従来から、液体を原料としてナノバブルを作製する方法が知られている(例えば、特許文献5参照)。上記作製方法は、液体中において、1)上記液体の一部を分解ガス化する工程、2)上記液体に超音波を印加する工程、または3)上記液体の一部を分解ガス化する工程および上記液体に超音波を印加する工程、からなるものである。なお、液体の一部を分解ガス化する工程として、電気分解法または光分解法を用いることができることが記載されている。
【0010】
また、従来から、オゾンガスからなるマイクロバブル(オゾンマイクロバブル)を利用する廃液処理装置が用いられている(例えば、特許文献6参照)。上記廃液処理装置では、オゾン発生装置によって作製されたオゾンガスと廃液とを、加圧ポンプを用いて混合することによって、オゾンガスからなるマイクロバブルを作製している。そして、当該マイクロバブルが廃液中の有機物と反応することによって、廃液中の有機物が酸化分解される。なお、マイクロバブルを利用した洗浄装置も従来から用いられており、当該装置は、機械油等が付着した金属の洗浄、牡蠣の洗浄、または入浴時における人体の洗浄等に利用されている。
【特許文献1】特開2007−185598号公報(平成19年7月26日公開)
【特許文献2】特開2001−145894号公報(平成13年5月29日公開)
【特許文献3】特開平11−42497号公報(平成11年2月16日公開)
【特許文献4】特開2004−121962号公報(平成16年4月22日公開)
【特許文献5】特開2003−334548号公報(平成15年11月25日公開)
【特許文献6】特開2004−321959号公報(平成16年11月18日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の水処理装置および水処理方法は、処理水内に含まれる混入物(例えば、有機物など)を効果的に除去することができないという問題点を有している。
【0012】
例えば、廃水を処理することを目的とした従来の微生物を用いた水処理装置および水処理方法では、微生物が固定化された担体に対して空気を供給する場合には、例えば粒子径の大きなバブルとして空気が供給されている。その結果、微生物に対して十分量の空気を供給することができないので、上記担体表面に十分量の微生物(例えば、好気性微生物)が繁殖することができない。なお、上記担体に細孔が設けられている場合には当該問題は更に深刻である。つまり、バブルの粒子径が大きいために当該バブルが細孔の内部に入ることができず、その結果、細孔の内部に微生物が繁殖することができない。その結果、従来の水処理方法および水処理方法は、担体の表面に固定化できる微生物の量が少ないので、処理水内に含まれる混入物を効果的に除去することができないという問題点を有している。
【0013】
また、上述したように、従来の微生物を用いた水処理装置および水処理方法では、担体上に固定化された微生物に対して十分量の空気を供給することができなかったので、当該微生物(例えば、好気性微生物)が有する物質分解能力を十分に発揮させることができない。なお、上記担体に細孔が設けられている場合には当該問題は更に深刻であることは、当業者であれば容易に理解できるであろう。その結果、従来の水処理方法および水処理方法は、担体の表面に固定化されている微生物を十分には活性化できないので、処理水内に含まれる混入物を効果的に除去することができないという問題点を有している。
【0014】
また、上記従来の微生物を用いた水処理装置および水処理方法は、基本的に微生物の物質分解能力のみに依存したものであるので、有機物などを十分に酸化するためには、大容量の微生物槽が必要である。その結果、従来の水処理装置および水処理方法は、装置が大型化するとともに莫大なコストを必要とするという問題点を有している。
【0015】
また、上記従来の微生物を用いた水処理装置および水処理方法では、担体が槽内で沈殿することを防止するために、様々な攪拌装置を用いている。しかしながら、例えば槽内の担体量を増加させればこれらの攪拌装置では、担体を十分に攪拌することができない。つまり、従来の水処理装置および水処理方法は、特に担体の量が多くなればなるほど、十分には担体を攪拌することができないという問題点を有している。
【0016】
また、上述したように、従来の微生物、またはバブルを用いた水処理装置および水処理方法は、処理水中の混入物を除去する能力が十分ではない。したがって、従来の水処理装置および水処理方法は、パーフルオロオクタスルホン酸(PFOS)またはパーフルオロオクタン酸(PFOA)などの有機フッ素化合物に代表される難分解性物質を効果的に除去することができないという問題点を有している。
【0017】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、処理水中に含まれる混入物を効果的に除去し得る水処理装置および水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、以下の1)〜6)を見出し、本願発明を完成させるに至った。つまり、
1)処理水にナノバブルを含有させた後に、当該処理水を微生物によって処理する。その後、当該処理水に更にナノバブルを含有させた後、当該処理水を、ポリビニルアルコールからなる担体が充填された水槽内に導入する。ナノバブルは、ポリビニルアルコールからなる担体であって細孔を有する担体の表面上(細孔内の表面上も含む)に付着して、その結果、上記担体の表面上に固定化された微生物が活性化し、それによって、処理水中に含有される混入物(例えば、有機物など)の処理効率が向上すること、
2)ナノバブルによって発生するフリーラジカルによって、混入物の処理効率が向上すること、
3)処理水にナノバブルを含有させた後に、当該処理水を微生物によって処理する。このとき、処理条件を、好気的条件と嫌気的条件とに繰り返して変化させる。次いで、当該処理水をポリビニルアルコールからなる担体であって細孔を有する担体が充填された水槽内に導入する。なお、当該担体の表面上には微生物が固定化されている。そして、上記水槽内を好気的条件と嫌気的条件とに交互に変化させる。これによって、好気性微生物が上記担体の表面に繁殖し、嫌気性微生物が上記担体の細孔内に繁殖する。その結果、処理水を好気性微生物および嫌気性微生物の両方によって処理することができるので、処理水中に含有される混入物の処理性能が向上すること、
4)有機フッ素系化合物(例えば、PFOS、PFOA)を合理的に処理する方法として、従来から活性炭吸着法が存在する。しかしながら、処理水中には有機フッ素化合物のみならず他の有機物が存在するので、当該方法では活性炭が短期間で破過し、その結果、活性炭を短期間で取替える必要があるという問題点を有している。そこで、有機フッ素化合物含有水中にナノバブルを含有させた後、当該有機フッ素化合物含有水を、液中膜が設けられた微生物槽にて処理する。その後、当該有機フッ素化合物含有水を細孔を有するポリビニルアルコールからなる担体が充填された槽内に導入する。これによって、処理水中の有機フッ素化合物以外の有機物が処理(例えば、分解)され、その結果、主として有機フッ素化合物を吸着するための活性炭の寿命を延ばすことができること、
5)ポリビニルアルコールからなる担体は、比重が約1.025(粒子径は、例えば4mmなどに設定可能)である。また、ナノバブルは当該担体の表面に付着し易い。そして、上記担体の表面にバブルが付着すれば、担体とバブルとの複合体の比重が1に近くなり、その結果、当該複合体が容易に処理水中を浮遊することが可能になる。換言すれば、上記複合体は水槽の底部に沈殿し難いとともに、処理水の表面に浮上し難い。その結果、小さな撹拌エネルギーによって、槽内の担体を流動させることが可能になること、
6)液中膜(中空糸タイプ)をナノバブル含有水にて洗浄すれば、上記液中膜の高い洗浄効果が得られること。
【0019】
本発明の水処理装置は、上記課題を解決するために、液体中にナノバブルまたはマイクロナノバブルを発生させる第1バブル発生手段と、前記ナノバブルまたはマイクロナノバブルが発生した後の前記液体が導入されるとともに、当該液体中に微生物を含有させる第1処理槽と、前記第1処理槽内に設けられるとともに、前記第1処理槽内の液体を濾過して前処理水を作製するフィルターと、前記前処理水中にナノバブルまたはマイクロナノバブルを発生させる第2バブル発生手段と、前記ナノバブルまたはマイクロナノバブルが発生した後の前記前処理水を導入する第2処理槽と、前記第2処理槽内に導入される前記前処理水と接触可能に設けられる、ポリビニルアルコールからなる担体と、を備え、前記担体は細孔を有するとともに、前記担体上には微生物が固定化されていることを特徴としている。
【0020】
上記構成によれば、第1処理槽内では、ナノバブルまたはマイクロナノバブルを含有する液体と微生物とが混合される。その結果、液体中に含有される混入物(例えば、有機物など)を微生物によって分解除去することができる。また、上記第1処理槽内の液体はフィルターによって濾過されたて前処理水となる。その結果、当該前処理水から、不要な微生物などを除去することができる。
【0021】
また、上記構成によれば、上記前処理水中にマイクロナノバブルまたはナノバブルが発生した後、当該前処理水が、上記第2処理槽内にて上記担体と接触する。このとき、上記担体には細孔が設けられているので、担体の表面積を増加させることができる。換言すれば、微生物が生育するための足場を増加させることができる。また、上記担体は、ポリビニルアルコールからなるものである。ポリビニルアルコールは微生物との接着性が良いので、上記構成によれば、担体の表面上に多くの微生物を固定化することができる。つまり、上記構成によれば、担体表面に、より多くの微生物を、より確実に固定化することができる。
【0022】
また、上記構成によれば、上記第2処理槽内の前処理水中にはマイクロナノバブルまたはナノバブルが含有されている。当該バブルはサイズが小さいので、上記細孔内に容易に拡散することができる。また、マイクロナノバブルおよびナノバブルは、ポリビニルアルコールからなる担体に吸着しやすい性質を有している。したがって、上記構成によれば、担体表面に吸着したバブルによって、微生物に対して十分な気体(例えば、酸素など)を供給することができる。したがって、上記構成によれば、微生物の増殖活性および物質分解活性を上昇させることができる。
【0023】
また、上述したように、マイクロナノバブルおよびナノバブルは、ポリビニルアルコールからなる担体に吸着し易い性質を有している。ポリビニルアルコールの比重は約1.025であるので、当該担体に気体が付着することによって、当該担体と気体との複合体の比重は、1に近くなる。つまり、上記複合体は、上記第2処理槽の底部に沈降し難い性質を示す。したがって、上記構成によれば、担体を容易に攪拌することができるので、当該担体の表面上に固定化された微生物に対して、良好に気体を供給することができるとともに、処理槽内に導入された処理水を嫌気性にした場合には、微生物の生育環境を容易に嫌気性条件に変更することができる。
【0024】
また、上記構成によれば、処理対象である液体中に絶えずマイクロナノバブルまたはナノバブルが存在している。マイクロナノバブルおよびナノバブルはフリーラジカルを発生することができるので、上記構成によれば、フリーラジカルによって、液体中に含有される混入物を酸化分解することができる。
【0025】
以上のことから、上記構成によれば、液体中に含まれる混入物を効果的に除去することができる。
【0026】
本発明の水処理装置では、前記細孔の孔径は、略20μmであることが好ましい。
【0027】
上記構成によれば、上記担体に設けられる細孔の孔径が小さい。したがって、上記構成によれば、担体の表面積を増加させることができるので、当該担体の表面に固定化することができる微生物の量を増加させることができる。その結果、上記構成によれば、液体中に含まれる混入物を効果的に除去することができる。
【0028】
本発明の水処理装置では、前記第1処理槽内には、当該第1処理槽内に導入された前記液体に対して気体を吐出する第1散気手段と、当該第1処理槽内に導入された前記液体を攪拌して水流を発生させる第1攪拌手段とが備えられていることが好ましい。
【0029】
上記構成によれば、第1散気手段から吐出された気体、および第1攪拌手段によって生じた水流によって、上記第1処理槽内を容易に攪拌することができる。つまり、上記第1処理槽内を好気的条件にする場合には、上記第1散気手段から気体を吐出することによって、上記液体に対して気体(例えば、酸素)を供給することができると共に、上記第1処理槽内の液体および微生物を攪拌することができる。一方、上記第1処理槽内を嫌気的条件にする場合には、上記第1攪拌手段によって、上記第1処理槽内の液体および微生物を攪拌することができる。なお、上記第1処理槽内を嫌気的条件に設定する場合には、例えば、当該第1処理槽内への給気を停止すればよい。第1処理槽内の酸素は微生物によって消費されるので、その結果、第1処理槽内は徐々に嫌気的条件に変化する。また、好気的条件にて被処理水と微生物とを最大限に効率よく接触させる場合には、上記第1散気手段および上記第1攪拌手段の両方を稼動させればよい。以上のように、上記構成によれば、第1処理槽内の液体が好気的条件であっても嫌気的条件であっても、第1処理槽内の液体および微生物を容易に攪拌することができる。これによって、上記第1処理槽内の処理効果を増加させることができるとともに、余剰の活性汚泥は発生することを防止することができる。
【0030】
本発明の水処理装置では、前記第2処理槽内には、当該第2処理槽内に導入された前記前処理水に対して気体を吐出する第2散気手段と、当該第2処理槽内に導入された前記前処理水を攪拌して水流を発生させるための第2攪拌手段とが備えられていることが好ましい。
【0031】
上記構成によれば、第2散気手段から吐出された気体、および第2攪拌手段によって生じた水流によって、上記第2処理槽内の担体を容易に攪拌することができる。つまり、上記第2処理槽内を好気的条件にする場合には、上記第2散気手段から気体を吐出することによって、上記第2処理槽内の前処理水に対して気体(例えば、酸素)を供給することができると共に、上記第2処理槽内の担体を攪拌することができる。一方、上記第2処理槽内を嫌気的条件にする場合には、上記第2攪拌手段によって、上記第2処理槽内の担体を攪拌することができる。なお、上記第2処理槽内を嫌気的条件に設定する場合には、例えば、当該第2処理槽内への給気を停止すればよい。第2処理槽内の酸素は微生物によって消費されるので、その結果、第2処理槽内は徐々に嫌気的条件に変化する。また、好気的条件にて被処理水と微生物とを最大限に効率よく接触させる場合には、上記第2散気手段および上記第2攪拌手段の両方を稼動させればよい。以上のように、上記構成によれば、第2処理槽内が好気的条件であっても嫌気的条件であっても、第2処理槽内の担体を容易に攪拌することができる。しかも、上記担体は、ポリビニルアルコールによって形成されている。ポリビニルアルコールの表面には、好気性微生物および嫌気性微生物の両方を、固定化および増殖させることが可能である。したがって、上記構成によれば、上記担体の表面上に固定化された微生物の物質分解能力を最大限に引き出すことができるとともに、液体中に含まれる混入物を効果的に除去することができる。なお、ナノバブルおよびマイクロナノバブルは、好気性微生物のみならず嫌気性微生物をも活性化することができる。
【0032】
本発明の水処理装置では、前記第2散気手段および前記第2攪拌手段は共に、円筒形状のドラフト内に設けられており、前記ドラフトの2つの開口は、それぞれ、前記第2処理槽の底面、または当該第2処理槽内に導入された前記前処理水の水面に対向するように配置されていることが好ましい。
【0033】
上記構成によれば、第2散気手段および第2攪拌手段によって発生される水流の方向を規定することができる。その結果、第2処理槽内の担体を、より効果的に攪拌することができる。
【0034】
本発明の水処理装置では、前記ドラフト内にて、前記第2攪拌手段は、前記第2散気手段よりも前記第2処理槽の底面側に配置されていることが好ましい。
【0035】
上記構成によれば、第2散気手段によって、上記ドラフト内に上向きの水流を発生させることができる。そしてこのとき、上記第2攪拌手段は上記第2散気手段よりも下側に配置されているので、上記第2散気手段によって発生した水流が、上記第2攪拌手段によって妨げられることがない。また、上記第2攪拌手段によって上向きの水流を発生させれば、上記第2散気手段によって生じる水流を増強することができる。一方、上記第2攪拌手段によって下向きの水流を発生させれば、上記第2散気手段によって生じる水流とは逆向きの水流を発生させることができる。したがって、上記構成によれば、上記第2処理槽内に効率よく水流を発生させることができる。
【0036】
本発明の水処理装置では、前記第2攪拌手段は、前記第2処理槽の底面側に向かって水流を発生させるものであることが好ましい。
【0037】
上記構成によれば、上記第2散気手段によって生じる水流とは逆向きの水流を発生させることができる。したがって、上記構成によれば、上記第2処理槽内(特に、処理槽の底部側)に効率よく水流を発生させることができる。
【0038】
本発明の水処理装置では、前記第2攪拌手段は、水中エアレータであることが好ましい。
【0039】
上記構成によれば、第2処理槽内に導入された前処理水、および担体を、水流による攪拌および空気曝気による攪拌の両方によって攪拌することができる。その結果、攪拌効果を増すことができるとともに、上記前処理水中に気体を供給することができる。
【0040】
本発明の水処理装置では、前記第1処理槽内に導入された前記液体の酸化還元電位を測定するための第1酸化還元電位計、および前記第2処理槽内に導入された前記前処理水の酸化還元電位を測定するための第2酸化還元電位計の少なくとも一方と、前記第1酸化還元電位計の測定結果に基づいて、前記第1散気手段によって吐出される気体量、および前記第1攪拌手段によって発生される水流量を調節するとともに、前記第2酸化還元電位計の測定結果に基づいて、前記第2散気手段によって吐出される気体量、および前記第2攪拌手段によって発生される水流量を調節するためのシーケンサーと、を備えることが好ましい。
【0041】
上記構成によれば、第1酸化還元電位計、第2酸化還元電位計によって、それぞれ、上記第1処理槽内に導入された液体の酸化還元電位、上記第2処理槽内に導入された前処理水の酸化還元電位が測定される。その結果、第1処理槽内および第2処理槽内が好気性条件または嫌気性条件の何れの状態であるか知ることができる。そして、当該測定結果に基づいて、上記シーケンサーを介して上記第1散気手段、第1攪拌手段、第2散気手段および第2攪拌手段の動作を制御すれば、上記第1処理槽内および上記第2処理槽内を好気性条件または嫌気性条件の何れかに設定することができる。例えば、上記第1処理槽内および上記第2処理槽内を好気的条件に設定する場合には、上記第1散気手段および上記第2散気手段によって気体(例えば、酸素など)を吐出すればよい。一方、上記第1処理槽内および上記第2処理槽内を嫌気的条件に設定する場合には、例えば、上記第1散気手段および上記第2散気手段の動作を停止するとともに、上記第1攪拌手段および上記第2攪拌手段によって水流を発生させればよい。
【0042】
本発明の水処理装置では、前記第2処理槽には蓋が備えられていることが好ましい。
【0043】
上記構成によれば、上記第2処理槽内を外部環境から隔離することができる。したがって、上記第2処理槽内を嫌気的条件に設定する場合には、第2処理槽内の嫌気的条件を、より厳密に制御することができる。
【0044】
本発明の水処理装置では、前記担体は、前記第2処理槽内を流動可能に備えられていることが好ましい。
【0045】
上記構成によれば、上記担体と上記第2処理槽内に導入された前処理水とが偏りなく接触する。また、上記構成によれば、上記担体の表面上にマイクロナノバブルまたはナノバブルが付着し易い。つまり、上記構成によれば、上記担体の表面を、より確実に好気的条件にすることができるので、上記担体の表面上に、より多くの好気性微生物を繁殖させることができる。なお、主として好気性微生物を用いて処理水を処理する場合、処理水の流入負荷(例えば、BOD負荷またはCOD負荷など)を高く設定することができる。その結果、上記構成によれば、より効果的に処理水を処理することができる。
【0046】
本発明の水処理装置では、前記担体の一部は、前記第2処理槽内を流動可能に備えられ、前記担体の残りは、前記第2処理槽内に固定化されて備えられていることが好ましい。
【0047】
上記構成によれば、流動可能である担体は上記第2処理槽内の前処理水と偏りなく接触し、固定化されている担体は、前処理水との接触において偏りを生じる。つまり、流動可能である担体は、より多くの酸素と接触するので、当該担体の表面上には、主として好気性微生物が繁殖する。一方、固定化されている担体は、酸素との接触が少なくなるので、当該担体の表面(特に、細孔内の担体表面)上には、主として嫌気性微生物が増殖する。つまり、上記構成によれば、より効果的に上記液体を好気性微生物および嫌気性微生物の両方にて処理することができる。つまり、上記構成によれば、嫌気性微生物を、より多く繁殖させることができる。
【0048】
本発明の水処理装置では、前記第2処理槽内に導入される前記前処理水は、前記第2処理槽の底面上に設けられた複数の吐出口を有する吐出手段によって前記第2処理槽内に吐出されることが好ましい。
【0049】
上記構成によれば、第2処理槽の底部に存在する前処理水および担体に対して、より多くのナノバブルまたはマイクロナノバブルを供給しながら、当該前処理水および担体を攪拌することができる。したがって、上記構成によれば、より多くの好気性微生物によって、液体中に含まれる混入物を処理することができる。
【0050】
本発明の水処理装置では、前記第1バブル発生手段および前記第2バブル発生手段が、水中ポンプ型バブル発生機であることが好ましい。
【0051】
水中ポンプ型バブル発生機は、そのバブル発生機構故に、例えば最もサイズの大きいマイクロナノバブルを発生させることができる。また、水中ポンプ型バブル発生機は、必要とする空気量が最も多いので、多量のバブルを発生させることができる。したがって、上記構成によれば、多量のマイクロナノバブルまたはナノバブルを発生させることができるので、液体中に含まれる混入物をより好気的条件下にて処理することができる。
【0052】
本発明の水処理装置では、前記第2処理槽内の前記前処理水が導入される急速ろ過塔、活性炭吸着塔、イオン交換樹脂塔、またはキレート樹脂塔が備えられていることが好ましい。
【0053】
上記構成によれば、液体中に含有される混入物を、より確実に除去することができる。例えば、急速ろ過塔の後に活性炭吸着塔を連結することが好ましい。この場合、活性炭吸着塔に液体が導入される前に、当該液体中の浮遊物質を予め除去することができる。つまり、活性炭表面に付着する浮遊物質を少なくすることができる。そして、これによって、活性炭吸着塔の寿命を延ばすことができる。また、有機フッ素化合物などの難分解性物質は、活性炭吸着塔に吸着されるので、液体中に含有された混入物を、より効果的に除去することができる。
【0054】
本発明の水処理装置では、前記第2処理槽の横断面の形状が、長さがa(m)である第1辺、および、長さがb(m)である第2辺を有する四角形にて規定されるとともに、前記処理槽の縦方向の深さが、c(m)にて規定され、c:aおよびc:bにて示される比が、共に1:1.0〜1.3であることが好ましい。
【0055】
上記構成によれば、上記第2処理槽内に導入された前処理水および担体を効果的に流動させることができるので、上記担体が沈殿することを防止することができる。その結果、より効果的に、液体中に含有される混入物を処理することができる。
【0056】
本発明の水処理装置では、前記第2処理槽には、当該第2処理槽内に導入された前処理水を排出するための開口が設けられ、前記開口は、フィルターによって前記担体から隔離されていることが好ましい。
【0057】
上記構成によれば、上記第2処理槽内の担体が、上記開口を介して処理槽外へ流出することを防止することができる。
【0058】
本発明の水処理装置では、前記第2処理槽の内側面には、当該第2処理槽の横断面の中央に向かって突出した凸部が設けられ、前記開口は、前記凸部よりも上側に設けられていることが好ましい。
【0059】
上記構成によれば、上記凸部によって、上記第2処理槽内に導入された前処理水および担体の流動を妨げることができる。換言すれば、上記凸部を境界として、上記第2処理槽内の環境を好気的条件または嫌気的条件に分けることができる。例えば、上記凸部よりも上側の第2処理槽内の環境を好気的条件に設定することができるとともに、上記凸部よりも下側の第2処理槽内の環境を嫌気的条件に設定することができる。その結果、上記第2処理槽の上側に好気性微生物を増殖させることができるとともに、上記処理槽の下側に嫌気性微生物を増殖させることができる。そして、好気性微生物および嫌気性微生物の両方を繁殖させることにより、本発明の水処理装置によって処理することができる混入物の種類が多くなるとともに、嫌気性微生物を繁殖させることによって微生物汚泥の消化が起こり、その結果、余剰汚泥の発生を少なくすることができる。また、上記構成によれば、第2処理槽に導入された前処理水および担体の流動方向を変化させることができるので、第2処理槽に設けられた開口から上記担体が流出することを防止することができる。
【0060】
本発明の水処理装置では、前記凸部の縦断面の形状は、三角形であることが好ましい。
【0061】
上記構成によれば、上記凸部によって、上記第2処理槽内導入された前処理水および担体の流動を妨げることができる。
【0062】
本発明の水処理装置では、前記第1処理槽内には、活性炭からなる吸着手段が設けられていることが好ましい。
【0063】
上記構成によれば、上記吸着手段に吸着させることよって、第1処理槽内の液体から混入物を除去することができる。また、活性炭には多くの細孔が存在するので、当該細孔内に好気性微生物および嫌気性微生物を繁殖さることができる。その結果、液体中に含まれる混入物を微生物によって効果的に除去することができる。
【0064】
本発明の水処理装置では、前記吸着手段は粒子状であって、前記第1処理槽内を流動可能に設けられていることが好ましい。
【0065】
上記構成によれば、上記第1処理槽内の液体および吸着手段を小さな力で攪拌することができる。その結果、液体中に含まれる混入物を、効率よく上記吸着手段に吸着させることができる。
【0066】
本発明の水処理装置では、前記フィルターは、中空糸タイプのフィルターであることが好ましい。
【0067】
中空糸タイプのフィルターは、濾過精度が高い。したがって、上記構成によれば、液体中に含まれる混入物の処理に有効であるサイズの小さい好気性微生物および嫌気性微生物をも、第1処理槽内に保持することができる。その結果、第1処理槽における処理効果を上げることができる。
【0068】
本発明の水処理装置では、前記フィルターに対して、第3散気手段によって気体が吐出されていることが好ましい。
【0069】
上記構成によれば、上記フィルターを吐出される気体によって形成される水流によって常時洗浄することができる。また、第1処理槽内に導入された液体は、ナノバブルまたはマイクロナノバブルを含有するので、当該バブルによって発生するフリーラジカルの酸化効果によっても、上記フィルターを常時洗浄することができる。その結果、上記構成によれば、上記フィルターの性能が低下することを防止することができる。
【0070】
本発明の水処理方法は、上記課題を解決するために、液体中にナノバブルまたはマイクロナノバブルを発生させる第1バブル発生工程と、前記ナノバブルまたはマイクロナノバブルが発生した後の前記液体を第1処理槽内に導入するとともに、当該液体に微生物を含有させる微生物処理工程と、前記第1処理槽内に設けられたフィルターによって、前記第1処理槽内の液体を濾過して前処理水を作製する濾過工程と、前記前処理水中にナノバブルまたはマイクロナノバブルを発生させる第2バブル発生工程と、前記ナノバブルまたはマイクロナノバブルが発生した後の前記前処理水を第2処理槽内に導入する導入工程と、前記第2処理槽内に導入される前記前処理水とポリビニルアルコールからなる担体とを接触させる接触工程と、を有し、前記担体は細孔を有するとともに、前記担体上には微生物が固定化されていることを特徴としている。
【0071】
上記構成によれば、第1処理槽内では、ナノバブルまたはマイクロナノバブルを含有する液体と微生物とが混合される。その結果、液体中に含有される混入物(例えば、有機物など)を微生物によって分解除去することができる。また、上記第1処理槽内の液体はフィルターによって濾過されたて前処理水となる。その結果、当該前処理水から、不要な微生物などを除去することができる。
【0072】
また、上記構成によれば、上記前処理水中にマイクロナノバブルまたはナノバブルが発生した後、当該前処理水が、上記第2処理槽内にて上記担体と接触する。このとき、上記担体には細孔が設けられているので、担体の表面積を増加させることができる。換言すれば、微生物が生育するための足場を増加させることができる。また、上記担体は、ポリビニルアルコールからなるものである。ポリビニルアルコールは微生物との接着性が良いので、上記構成によれば、担体の表面上に多くの微生物を固定化することができる。つまり、上記構成によれば、担体表面に、より多くの微生物を、より確実に固定化することができる。
【0073】
また、上記構成によれば、上記第2処理槽内の前処理水中にはマイクロナノバブルまたはナノバブルが含有されている。当該バブルはサイズが小さいので、上記細孔内に容易に拡散することができる。また、マイクロナノバブルおよびナノバブルは、ポリビニルアルコールからなる担体に吸着しやすい性質を有している。したがって、上記構成によれば、担体表面に吸着したバブルによって、微生物に対して十分な気体(例えば、酸素など)を供給することができる。したがって、上記構成によれば、微生物の増殖活性および物質分解活性を上昇させることができる。
【0074】
また、上述したように、マイクロナノバブルおよびナノバブルは、ポリビニルアルコールからなる担体に吸着し易い性質を有している。ポリビニルアルコールの比重は約1.025であるので、当該担体に気体が付着することによって、当該担体と気体との複合体の比重は、1に近くなる。つまり、上記複合体は、上記第2処理槽の底部に沈降し難い性質を示す。したがって、上記構成によれば、担体を容易に攪拌することができるので、当該担体の表面上に固定化された微生物に対して、良好に気体を供給することができるとともに、処理槽内に導入された処理水を嫌気性にした場合には、微生物の生育環境を容易に嫌気性条件に変更することができる。
【0075】
また、上記構成によれば、処理対象である液体中に絶えずマイクロナノバブルまたはナノバブルが存在している。マイクロナノバブルおよびナノバブルはフリーラジカルを発生することができるので、上記構成によれば、フリーラジカルによって、液体中に含有される混入物を酸化分解することができる。
【0076】
以上のことから、上記構成によれば、液体中に含まれる混入物を効果的に除去することができる。
【0077】
本発明の水処理方法では、前記細孔の孔径は、略20μmであることが好ましい。
【0078】
上記構成によれば、上記担体に設けられる細孔の孔径が小さい。したがって、上記構成によれば、担体の表面積を増加させることができるので、当該担体の表面に固定化することができる微生物の量を増加させることができる。その結果、上記構成によれば、液体中に含まれる混入物を効果的に除去することができる。
【0079】
本発明の水処理方法は、前記第1処理槽内に導入された前記液体に対して気体を吐出する第1気体吐出工程と、前記第1処理槽内に導入された前記液体を攪拌する第1攪拌工程と、前記第2処理槽内に導入された前記前処理水に対して気体を吐出する第2気体吐出工程と、前記第2処理槽内に導入された前記前処理水を攪拌する第2攪拌工程と、を有することが好ましい。
【0080】
上記構成によれば、上記第1処理槽内および上記第2処理槽内を、好気的条件または嫌気的条件に設定することができる。したがって、上記構成によれば、液体中の混入物を様々な微生物によって処理することができるので、上記液体中に含まれる混入物の処理効果(除去効果)を高めることができる。また、上記構成によれば、嫌気性微生物を多く繁殖させることができるので、上記第1処理槽内で過剰量の活性汚泥が発生することを防止することができる。
【0081】
本発明の水処理方法では、前記第1気体吐出工程および前記第2気体吐出工程は、それぞれ、気体を吐出する吐出工程と気体を吐出しない不吐出工程とを交互に繰り返すことが好ましい。
【0082】
上記構成によれば、好気性微生物と嫌気性微生物との両方を好適に培養繁殖させることができる。その結果、上記液体中に含まれる混入物の処理効果(除去効果)を高めることができる。例えば、記構成によれば、上記担体がポリビニルアルコールによって形成されているとともに、当該担体には細孔が設けられている。ポリビニルアルコールの表面には、好気性微生物および嫌気性微生物の両方が固定化できるとともに、固定化された両微生物は、当該担体上で増殖することができる。また、上記構成によれば、サイズの小さなバブルを用いるので、当該バブルは上記細孔内に容易に拡散することができる。従来技術では、担体に細孔を設けたとしても当該細孔内では主として嫌気性微生物が繁殖していた。一方、本願発明では、上記細孔内にまで、好気性微生物を繁殖させることができる。したがって、上記構成によれば、担体の表面上に固定化される微生物の量を増加させることができるので、処理水中に含まれる混入物をより効果的に処理することができる。また、好気性微生物と嫌気性微生物との両方を処理槽内に高濃度に繁殖させることができるので、様々な種類の混入物を処理することができる。また、嫌気性微生物を繁殖させることができるので、微生物汚泥の消化が起こり、これによって余剰汚泥の発生を少なくすることができる。
【0083】
本発明の水処理方法は、前記接触工程の後に、第2処理槽内の前記前処理水を、急速ろ過塔、活性炭吸着塔、イオン交換樹脂塔、またはキレート樹脂塔によって処理する工程を有することが好ましい。
【0084】
上記構成によれば、液体中に含有される混入物を、より確実に除去することができる。
【0085】
本発明の水処理方法は、前記液体は、有機フッ素化合物含有水、有機フッ素化合物含有廃水、工場廃水、再利用水、河川水、下水、生活廃水であることが好ましい。
【0086】
上記構成によれば、液体中に含有される混入物を効果的に除去することができる。
【発明の効果】
【0087】
本発明の水処理装置は、以上のように、液体中にナノバブルまたはマイクロナノバブルを発生させる第1バブル発生手段と、前記ナノバブルまたはマイクロナノバブルが発生した後の前記液体が導入されるとともに、当該液体中に微生物を含有させる第1処理槽と、前記第1処理槽内に設けられるとともに、前記第1処理槽内の前記液体を濾過して前処理水を作製するフィルターと、前記前処理水中にナノバブルまたはマイクロナノバブルを発生させる第2バブル発生手段と、前記ナノバブルまたはマイクロナノバブルが発生した後の前記前処理水を導入する第2処理槽と、前記第2処理槽内に導入される前記前処理水と接触可能に設けられる、ポリビニルアルコールからなる担体と、を備え、前記担体は細孔を有するとともに、前記担体上には微生物が固定化されているものである。
【0088】
また、本発明の水処理方法は、以上のように、液体中にナノバブルまたはマイクロナノバブルを発生させる第1バブル発生工程と、前記ナノバブルまたはマイクロナノバブルが発生した後の前記液体を第1処理槽内に導入するとともに、当該液体に微生物を含有させる微生物処理工程と、前記第1処理槽内に設けられたフィルターによって、前記第1処理槽内の液体を濾過して前処理水を作製する濾過工程と、前記前処理水中にナノバブルまたはマイクロナノバブルを発生させる第2バブル発生工程と、前記ナノバブルまたはマイクロナノバブルが発生した後の前記前処理水を第2処理槽内に導入する導入工程と、前記第2処理槽内に導入される前記前処理水とポリビニルアルコールからなる担体とを接触させる接触工程と、を有し、前記担体は細孔を有するとともに、前記担体上には微生物が固定化されている方法である。
【0089】
それゆえ、第1処理槽内で予め、液体中に含有される混入物質の少なくとも一部を微生物によって分解除去することができるとともに、フィルターによって、液体から、不要な微生物や浮遊物等を除去することができるという効果を奏する。また、上記担体は流動性に優れているので、小さな攪拌力にて上記担体を攪拌することができるという効果を奏する。また、上記担体は高含水性であるとともに酸素透過性に優れており、しかも当該担体には細孔が設けられているので、担体上に多くの微生物を固定化することができる。しかも、上記第2処理槽内に導入される処理水中にはマイクロナノバブルまたはナノバブルなどのサイズの小さいバブルが含有されているので、当該バブルは上記細孔内に容易に侵入・拡散することができる。その結果、上記担体の表面上に固定化された微生物の量を多くすることができる、換言すれば、担体上に固定化された微生物の増殖を活発にすることができるとともに、マイクロバブルやナノバブルの微生物活性化作用も含めて、当該微生物の物質分解能力を最大限に引き出すことができるという効果を奏する。また、本願発明は、好気性微生物と嫌気性微生物との両方を利用することができるので、廃水などの処理工程にて発生する余剰汚泥の量を少なくすることができるという効果を奏する。また、上記担体は化学的に架橋された構造によって不溶化しているので、担体自体が生分解を受け難いという効果を奏する。そして、本願発明は上述したような優れた効果を奏するので、廃水などの処理能力を、従来の活性汚泥法の処理能力の2〜3倍にまで高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0090】
〔実施の形態1〕
図1に、本実施の形態の水処理装置を示す。
【0091】
本実施の形態の水処理装置では、まず処理対象である液体が前槽55に導入される。
【0092】
上記液体としては特に限定されず、適宜処理したい液体を用いることができる。例えば、上記液体としては、有機フッ素化合物含有水、有機フッ素化合物含有廃水、工場廃水、再利用水、河川水、下水、または生活廃水などを挙げることができるが、これらに限定されない。また、上記工場廃水、再利用水、河川水、下水、または生活廃水などの中には、有機フッ素化合物を含有したものもある。なお、本実施の形態の水処理装置では、上記液体の一例として、有機フッ素化合物含有水を用いている。
【0093】
有機フッ素化合物含有水は、前槽55に貯蔵された後、ポンプ56によって第1バブル発生槽57に導入される。
【0094】
上記第1バブル発生槽57には第1バブル発生部42(第1バブル発生手段)が設けられており、当該第1バブル発生手段42によって、ナノバブルまたはマイクロバブルが作製される。なお、本実施の形態の水処理装置に用いている第1バブル発生部42は、主としてナノバブルを発生させるための構成である。
【0095】
第1バブル発生部42は、第1気体せん断部62を有する気液混合循環ポンプ61、第2気体せん断部63、第3気体せん断部59、電動ニードルバルブ66、空気配管65、および各種管から構成されている。
【0096】
以下に第1バブル発生部42について説明する。
【0097】
まず、空気配管65を介して気体(例えば、空気または酸素など)が第1気体せん断部62中に供給されるとともに、管60を介して液体が第1気体せん断部62中に供給される。第1気体せん断部62中の気体と液体とは、気液混合循環ポンプ61によって混合・せん断され、その結果、上記気体からなるマイクロバブルが形成される。
【0098】
上記気液混合循環ポンプ61は高揚程のポンプであればよく、適宜公知のポンプを用いることができる。具体的には、上記気液混合循環ポンプ61は、揚程40m以上の高揚程のポンプ、換言すれば4kg/cm以上の圧力で気液混合物を押し出すことができるポンプであることが好ましい。上記構成によれば、多量のマイクロバブルを作製することができる。さらに、気液混合循環ポンプ61は、2ポールを有するポンプであることが好ましい。ポンプには、2ポールを有するポンプと4ポールを有するポンプとが存在し、2ポールを有するポンプの方が、4ポールを有するポンプと比較してトルクが安定している。したがって、より安定に多量のマイクロバブルを作製することができる。
【0099】
第1気体せん断部62の形状は特に限定されないが、当該第1気体せん断部62中にて回転せん断流を効率よく発生させるためにも、円筒形の流路を有するものであることが好ましい。なお、当該流路中を、バブル含有水が通過する。
【0100】
第1気体せん断部62中の気体および液体には気液混合循環ポンプ61によって圧力がかけられ、その結果、第1気体せん断部62中に、液体および気体の混相旋回流が発生する。更に詳細には、気液混合循環ポンプ61にはインペラと呼ばれる羽根が備えられており、当該羽根を高速回転させることによって、混相旋回流が形成される。上記第1気体せん断部62の中心部には、上記混相旋回流が高速にて旋回する結果生じる気体空洞部が形成される。そして、気液混合循環ポンプ61によって更に気体空洞部に圧力を加えることによって、気体空洞部は竜巻状の細長い形状になる。その結果、より高速で旋回する回転せん断流を発生させることができる。なお、上記気体空洞部内は負圧となるので、当該負圧を利用すれば、外部から当該気体空洞部に対して気体を自給することが可能になる。
【0101】
上記空気配管65を介して、上記気体空洞部に気体を自給させながら混相旋回流を高速旋回させることによって、上記混相旋回流を切断・粉砕することができる。なお、切断・粉砕は、第1気体せん断部62の出口近傍における、第1気体せん断部62の内外の気液混合物の旋回速度の差によって生じる。
【0102】
上記回転せん断流の回転速度は特に限定されないが、500〜600回転/秒であることが好ましい。なお、上記回転せん断流の回転速度は、上記羽根(インペラ)の回転速度を調節することによって設定することができる。上記構成によれば、上記第1気体せん断部62によって、多量のマイクロバブルを作製することができる。
【0103】
すなわち、第1気体せん断部62において、流体力学的に気液混合物の圧力を制御することによって負圧形成部に対して気体(例えば、酸素など)を吸入し、気液混合循環ポンプ61によって上記気液混合物を高速流体運動させることによって更に負圧部を形成し、これによって、マイクロバブルを発生させることができる。換言すれば、気液混合循環ポンプ61によって処理水と気体とを効果的に自給混合溶解し、気液混合物を圧送することによって、マイクロバブル白濁水を製造することができる。そして、第1気体せん断部62にて作製されたマイクロバブルは、管を介して第2気体せん断部63に圧送される。つまり、上記マイクロバブル白濁水に圧力をかけた状態にて、当該マイクロバブル白濁水を第2気体せん断部63内に送り込む。このとき気液混合循環ポンプ61は高揚程のポンプであるので、揚程が40m以上であれば、4kg/cm以上の圧力をかけた状態にて、マイクロバブル白濁水を第2気体せん断部63内に送り込むことができる。
【0104】
第2気体せん断部63の形は特に限定されないが、当該第2気体せん断部63中にて回転せん断流を更に細くするためにも、円筒形の流路を有するものであることが好ましい。また、上記流路の形は、上記第1気体せん断部62の流路よりも上面および下面の直径が短い円筒形であることが好ましい。
【0105】
上記構成によれば、第1気体せん断部62にて形成された回転せん断流を第2気体せん断部63に圧送することによって、第2気体せん断部63中にて、上記第1気体せん断部62にて形成された回転せん断流をより細くすることができるとともに、回転せん断流の回転速度を上昇させることができる。その結果、第1気体せん断部62にて形成されたマイクロバブルを用いてナノバブルおよびマイクロナノバブルを作製することができるとともに、超高温の極限反応場を形成することができる。
【0106】
極限反応場では、局所的に高温高圧状態となる。そして、当該極限反応場では、フリーラジカルが発生する。フリーラジカルは安定化するために他の原子から電子を奪う性質があり、それ故に、強力な酸化作用を示すとともに、熱を発生する。したがって、本実施の形態の水処理装置は、フリーラジカルに由来する酸化作用によっても、処理水中に含まれる混入物を酸化分解することができる。なお、ナノバブルは水中に長時間存在することができる。具体的には、ナノバブルは2ヶ月以上、水中に存在し続けることができる。したがって、上記酸化作用および後段における微生物活性化作用は、長時間維持することができる。
【0107】
上記第2気体せん断部63にて形成されたバブル含有水は、管64を介して第3気体せん断部59に供給される。上記第2気体せん断部63にて作製されたバブルは、当該第3気体せん断部59にて更にせん断されて、バブルサイズが更に小さくなる。なお、第3気体せん断部59としては、上記第2気体せん断部63と同じ構成を用いることが可能である。なお、第2気体せん断部63については既に説明したので、ここでは第3気体せん断部59の説明を省略する。
【0108】
なお、本実施の形態の水処理装置における第1バブル発生部42としては、市販されているものを用いることができる。具体的には、株式会社 協和機設製のバビダスHYK型などを用いて主としてナノバブルを作製することができるが、これに限定されない。また、上記第1バブル発生部42として、ナノプラネット研究所製のM2−LM型を用いることが可能である。当該第1バブル発生部42を用いれば、主としてマイクロナノバブルを作製することができる。
【0109】
上記第3気体せん断部59によって、マイクロナノバブルまたはナノバブルを含有する処理水が第1バブル発生槽57内に、水流58として吐出される。
【0110】
なお、本実施の形態の水処理装置では、信号線11を介して、シーケンサー14によって、電動ニードルバル66の開閉動作および気液混合循環ポンプ61の動作が制御されることが好ましい。これによって、第3気体せん断部59から吐出されるナノバブルおよびマイクロナノバブルの量を調節することができる。
【0111】
上記第1バブル発生槽57内に吐出されたバブル含有水は、管67を介して第1処理槽70内に導入される。更に具体的には、上記バブル含有水は、上記第1処理槽70の底部に設けられた第1攪拌部82(第1攪拌手段)に導入された後、当該第1攪拌部82によって、水流36として第1処理槽70内に吐出されることが好ましい。なお、上記第1処理槽70内には、各種微生物が繁殖しており、当該微生物によってバブル含有水中の混入物が除去される。当該微生物としては特に限定されないが、好気性微生物と嫌気性微生物との両方であることが好ましい。また、当該微生物は、本実施の形態の水処理装置にて処理する液体中に、元々混入している微生物であってもよい。
【0112】
上記第1攪拌部82は第1処理槽70内の液体に対して嫌気的に水流を生じさせることができるものであればよく、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、上記第1攪拌部82としては、新明和工業株式会社製の水中エアレータSJP型を用いることができるが、これに限定されない。上記第1攪拌部82を用いれば、嫌気的に水流を発生させることができるので、第1処理槽70内の嫌気性微生物の活性を高めることができる。第1処理槽70にはバブル含有水が導入されるが、当該バブルの空気量は、1分間当り1リットル以下である。その結果、当該バブルによって第1処理槽70内の溶存酸素濃度が上昇することはない。上記第1処理槽70に対して別途酸素を供給しない限り、その微量のバブルは微生物に消費されて、その結果、第1処理槽70内は嫌気的条件となる。しかしながら、当該バブルは、微生物の活性化、および被処理水中の有機物等の酸化分解には有効な量である。
【0113】
また、上記第1攪拌部82は、第1処理槽70内において、上向きに水流を発生させるものであってもよく、下向きに水流を発生させるものであってもよい。上記第1攪拌部82が下向きに水流を発生させるものであれば、嫌気的条件となりやすい第1処理槽の底部を嫌気的に攪拌することができるので、第1処理槽における嫌気的微生物の混入物質除去効果を高めることができる。
【0114】
また、上記第1処理槽70には、当該第1処理槽内のバブル含有水に対して気体を吐出する第1散気部81(第1散気手段)が設けられていることが好ましい。第1散気部81から気泡35を吐出することによって、第1処理槽70内に上向きの水流37を発生させることができる。これによって、第1処理槽70内の好気性微生物の活性を高めることができる。なお、第1散気部81は第1処理槽70内に気体を吐出できるものであればよく、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、本実施の形態の水処理装置では、管68を介して、ブロワー69によって第1散気部81に対して空気を供給する構成を用いているが、これに限定されない。なお、このとき、第1散気部81に対して供給される空気の量は、バルブ84によって調節することが可能である。
【0115】
また、上記第1処理槽70には、当該第1処理槽70内で処理された後のバブル含有水を濾過するためのフィルター45が設けられていることが好ましい。フィルター45としては特に限定されず、適宜公知のフィルターを用いることができる。例えば、上記フィルター45は、液中膜であることが好ましい。更に、上記フィルター45は、中空糸タイプのフィルターであることが好ましい。以下に、フィルター45として液中膜を用いた例について説明する。
【0116】
微生物と液体とを固液分離するための液中膜であるフィルター45は、数多くの中空糸73、液中膜架台72、配管を接続するためのフランジ75およびフランジ76、中空糸73を常時空気洗浄するための、洗浄用散気管52(第3散気手段)から構成されていることが好ましい。
【0117】
上記中空糸73の小孔サイズは特に限定されないが、略0.2μmであることが好ましい。上記構成によれば、液体中の微生物等の浮遊物質を完全に物理的に固液分離することができる。
【0118】
また、上記中空糸73は、次亜塩素酸ナトリウム等の薬品によって薬品洗浄することも可能であるが、この場合、洗浄するためにフィルター45を取り外す等の作業が必要となる。そこで、フィルター45に対して、上記第1バブル発生槽57にて作製されたバブル含有水、または後述する第2バブル発生槽1内のバブル含有水を直接吐出することが好ましい。上記構成によれば、フィルター45を取り外すことなく、常時、中空糸73の内部を洗浄することができる。
【0119】
また、本実施の形態の水処理装置では、洗浄用散気管52からフィルター45に対して気体を吐出することが好ましい。上記構成によれば、フィルター45を取り外すことなく、常時、中空糸73の外部を洗浄することができる。
【0120】
また、本実施の形態の水処理装置では、信号線11を介して、シーケンサー14によって、バルブ84、バルブ83、バルブ46、および第1攪拌部82の動作が制御され得る。例えば、バルブ46を開いて1日の大部分の時間、洗浄用散気管52から気体を吐出すれば、常時中空糸73の外部を洗浄することができるので、フィルターの濾過能力が低下することを防止することができる。また1日のうち20分〜30分、シーケンサー14からの信号によってポンプ79を運転して、管77を介してフィルター45に対して第2バブル発生槽1内のバブル含有水を吐出すれば、常時中空糸73の内部を洗浄することができる。これによって、フィルターの濾過能力が低下することを防止することができる。
【0121】
フィルター45によって濾過されたバブル含有水(前処理水)は、次いで、ポンプ78によって、管23および管74を介して第2バブル発生槽1に導入され、その後、第2バブル発生部43(第2バブル発生手段)によって、更にナノバブルまたはマイクロナノバブルが作製される。
【0122】
第2バブル発生部43は、第1気体せん断部3を有する気液混合循環ポンプ2、第2気体せん断部4、第3気体せん断部6、電動ニードルバルブ9、空気配管8、および各種管から構成されている。そして、上記第3気体せん断部6からは第2バブル発生槽1に対してバブルを含有する水流26が吐出されている。上記第2バブル発生部43の各構成は、上述した第1バブル発生部42の各構成と同じものを用いることができるので、ここでは、その説明を省略する。
【0123】
上記第2バブル発生部43によって更にバブル量が増加されたバブル含有水は、管10を介して第2処理槽15内に導入される。
【0124】
第2処理槽15内に導入されたバブル含有水は、当該第2処理槽15内において、担体16と接触することができる。当該担体16には細孔が設けられているとともに、当該担体16の表面上には多くの微生物が固定化されている。そして、当該微生物によって上記バブル含有水に含有される様々な混入物(例えば、有機物など)が分解処理される。以下に、上記第2処理槽15内にて行われる微生物を用いた分解処理に関して説明する。
【0125】
上述したように、第2処理槽15は、処理水中に含有される混入物を主として微生物によって分解処理するための処理槽として機能する。なお、処理水中には、ナノバブルまたはマイクロナノバブルが存在しているので、第2処理槽15内においても当該バブルによってフリーラジカルが発生し、当該フリーラジカルによる混入物の酸化分解が続いている。
【0126】
上記第2処理槽15としては特に限定されず、適宜公知の槽を用いることができる。上記第2処理槽15の形状としては特に限定されないが、例えば、上記第2処理槽15におけるバブル含有水の収容部の形状は、立方体または直方体であることが好ましい。このとき、上記第2処理槽15の横断面の形状(上記収容部の横断面の形状)が、長さがa(m)である第1辺、および、長さがb(m)である第2辺を有する四角形にて規定されるとともに、前記第2処理槽15の縦方向の深さ(上記収容部の縦方向の深さ)が、c(m)にて規定され、c:aおよびc:bにて示される比が、共に1:1.0〜1.3であることが更に好ましい。
【0127】
上記第2処理槽15には、蓋が設けられていることが好ましい。上記蓋は、上記第2処理槽15の内部を密閉構造にすることができるものであればよく、具体的な構成は特に限定されない。また、当該蓋には、空気抜きに用いられる管49が設けられていることが好ましい。
【0128】
上記構成によれば、上記第2処理槽15内のバブル含有水を外部環境から隔離することができるので、第2処理槽15の内部を好気的条件または嫌気的条件に厳密に設定することができる。例えば、上記第2処理槽15内を嫌気的条件に設定する場合には、第2処理槽15内のバブル含有水を外気から隔離することができるので、嫌気的条件をより厳密に制御することができる。また、上記第2処理槽15内を好気的条件に設定する場合には、上記管49によって過剰な気体(例えば、酸素など)を取り除くことができるので、好気的条件をより厳密に制御することができる。
【0129】
また、上記第2処理槽15には、当該第2処理槽15内のバブル含有水の酸化還元電位を測定するための酸化還元電位計47が設けられていることが好ましい。酸化還元電位計47としては特に限定されず、適宜公知の酸化還元電位計を用いることができる。なお、当該酸化還元電位計47の機能については、後述する。
【0130】
上記第2処理槽15の内部、換言すれば、上記収容部には、ポリビニルアルコールからなる担体16が設けられており、当該担体16には細孔が設けられている。
【0131】
上記担体16の具体的な構成としては、ポリビニルアルコールによって形成されているとともに、当該担体16に対して細孔が形成されているものであればよく、特に限定されない。例えば、上記担体16としては、ポバール樹脂を用いることが好ましい。更に具体的には、上記担体16としては、株式会社クラレ製のクラゲール(登録商標)を用いることが好ましい。例えば、上記クラゲールは、直径約4mm、比重1.025の粒子であって、1粒子あたり約10億個の微生物を固定化することができる。したがって、上記構成によれば、担体16の表面上に固定化される微生物の量を多くすることができる。
【0132】
上記細孔の孔径としては特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができる。例えば、上記孔径は、19μm〜21μmであることが好ましい。更に好ましくは、略20μmである。上記構成によれば、上記担体16の表面積を増すことができるとともに、当該細孔中に容易にマイクロナノバブルおよびナノバブルを拡散させることができる。また、ポリビニルアルコールの表面には、ナノバブルおよびマイクロナノバブルが付着しやすい。その結果、担体16の表面に固定化された微生物を、より活性化させることができる。
【0133】
また、上記担体16の表面には、微生物が固定化されている。上記微生物としては特に限定されないが、好気性微生物または嫌気性微生物であることが好ましい。更に具体的には、上記微生物としては超微小の糸ミミズ類、原生動物、またはバクテリア等であることが好ましいが、これらに限定されない。
【0134】
上記担体16の形状としては特に限定されず、適宜目的にあった形状であり得る。例えば、上記担体16の形状は、粒子状であることが好ましい。上記構成によれば、担体16は第2処理槽15内を流動し易いので、弱い力によって上記担体16を攪拌することができる。また、上記構成によれば、担体16の表面積を増加させることができるので、担体16の表面上により多くの微生物を固定化させることができる。
【0135】
また、上記担体16は、上記第2処理槽15内を流動可能に備えられ得る。換言すれば、上記担体16は第2処理槽15の表面に固定されることなく、第2処理槽15内のバブル含有水中を浮遊するように設けられ得る。また、上記担体16は、その一部が上記第2処理槽15内を流動可能に備えられ、上記担体16の残りが上記第2処理槽15内に固定化されて備えられていてもよい。なお、担体16の一部を流動可能とし、残りを固定化する場合には、全担体16の量に対する固定化される担体16の量の比率は特に限定されず、適宜設定することができる。このとき、固定化する担体16の量が多いほど嫌気性微生物の量を増やすことができるので、所望とする好気性微生物と嫌気性微生物との量比を考慮して、全担体16の量に対する固定化される担体16の量の比率を決定すればよい。
【0136】
上記第2処理槽15内には、第2処理槽15内に気体を吐出する第2散気部19(第2散気手段)が設けられていることが好ましい。上記第2散気部19によって第2処理槽15内のバブル含有水に対して気体(気泡18)を吐出することによって、第2処理槽15の内部を好気的条件に設定することができる。また上記気体は処理水中を水面に向かって上昇するので、上昇水流を発生させることができる。そして、これによって、第2処理槽15内の処理水および担体16を攪拌することができる。
【0137】
上記第2散気部19には、管13を介してブロワー12から気体が供給されており、当該気体が、第2散気部19から第2処理槽15内に吐出されている。なお、上記管13には、バルブ85が設けられているとともに、当該バルブ85の開閉動作が、シーケンサー14によって制御されていることが好ましい。上記第2散気部19およびブロワー12の具体的な構成としては特に限定されず、適宜公知の構成を用いることができる。また、ブロワー12から第2散気部19に対して供給される気体としても特に限定されない。例えば、空気または酸素などを用いることが可能であるが、これらに限定されない。
【0138】
また、上記第2処理槽15内には、第2処理槽15内のバブル含有水および担体16を攪拌するために水流を発生させる第2攪拌部53(第2攪拌手段)が設けられていることが好ましい。第2攪拌部53の具体的な構成としては特に限定されず、適宜公知の構成を用いることができる。例えば、上記第2攪拌部53としては、処理水に対して気体を吐出しないものであることが好ましい。上記構成によれば、第2処理槽15の内部を嫌気的条件に設定したままで、バブル含有水および担体16を攪拌することができる。更に具体的には、上記第2攪拌部53としては、水中エアレータであることが好ましいが、これに限定されない。なお、上記第2攪拌部53として水中エアレータなどを用いる場合には、上記第2攪拌部53には、管13を介してブロワー12から気体が供給されることが好ましい。なお、当該管13にはバルブ86が設けられ、これによって、第2攪拌部53に供給される気体の量が調節されることが好ましい。
【0139】
上記第2散気部19および第2攪拌部53は、上記第2槽15内に設けられた水流発生管17内(ドラフト)に設けられることが好ましい。
【0140】
上記水流発生管17が設けられる位置は特に限定されないが、上記第2処理槽15の中心部であることが好ましい。上記構成によれば、第2処理槽15内のバブル含有水および担体16を均等に攪拌することができる。
【0141】
上記水流発生管17の形状としては特に限定されないが、例えば、円筒形状であることが好ましい。そして、このとき、上記水流発生管17の2つの開口は、それぞれ、第2処理槽15の底面、または当該第2槽15内に導入されたバブル含有水の水面に対向するように配置されていることが好ましい。
【0142】
また、上記水流発生管17の内部には、上記第2攪拌部53の下部に当該第2攪拌部53を固定支持するため支持板21が設けられていることが好ましい。更に、上記支持板21には、担体16が通過し得るサイズを有する複数の開口が設けられていることが好ましい。例えば、上記担体16の形状が直径4mmの略球形である場合には、上記開口の直径は6mmであることが好ましい。上記構成によれば、上記開口を介して自由に担体16が流動することができるので、第2処理槽15内の処理水および担体16を効果的に流動させることができる。
【0143】
上記第2攪拌部53および第2散気部19の第2処理槽15内の配置は特に限定されないが、両構成共に、上記水流発生管17の内部に設けられることが好ましい。上記構成によれば、第2処理槽15内の水流の方向を容易に制御することができる。
【0144】
また、このとき水流発生管17内における第2攪拌部53の位置は、上記第2散気部19よりも第2処理槽15の底面側であることが好ましい。上記構成によれば、第2散気部19によって形成される水流を、第2攪拌部53によって妨げることを防止することができる。このとき、第2攪拌部53によって形成される水流の方向は、上向き(バブル含有水の水面に向かう方向)であってもよいし、下向き(第2処理槽15の底面に向かう方向)であってもよい。第2攪拌部53によって形成される水流の方向が上向きである場合、第2槽15内の上側に存在するバブル含有水および担体16をより効果的に攪拌することができる。また、第2散気部19と第2攪拌部53とを同時に用いることにより、より強い水流を発生させることができる。一方、第2攪拌部53によって形成される水流の方向が下向きである場合、第2処理槽15内の上側に存在するバブル含有水および担体16をより効果的に攪拌することができる。
【0145】
上述した気液混合循環ポンプ2、電動ニードルバルブ9、ブロワー12、第2散気部19、第2攪拌部53および酸化還元電位計47は、信号線11を介してシーケンサー14に接続されている。上記酸化還元電位計47によって第2処理槽15内のバブル含有水の酸化還元電位が測定され、当該測定値は、酸化還元電位調節計48に送られる。上記酸化還元電位調節計48では、上記測定値に基づいて、第2処理槽15内のバブル含有水が好気的条件にあるのか嫌気的条件にあるのか判断する。なお、上記酸化還元電位調節計48には、予め第2処理槽15内のバブル含有水の所望の状態(嫌気的または好気的)を記憶させておくことも可能である。なお、上記バブル含有水の所望の状態は、経時的に変化するものであってもよい。例えば、好気的条件と嫌気的条件とを繰り返すものであってもよい。そして、上記酸化還元調節計48から、各種情報がシーケンサー14に伝達される。
【0146】
上記シーケンサー14は、上記酸化還元電位調節計48の判断に基づいて、気液混合循環ポンプ2、電動ニードルバルブ9、ブロワー12、第2散気部19および第2攪拌部53などの動作を制御することができる。これによって、第2処理槽15内の状態を好気的条件または嫌気的条件に設定することができるので、担体16の表面上に固定化される微生物の種類(好気性微生物または嫌気性微生物)を制御することができる。つまり、本実施の形態の水処理装置では、好気性微生物と嫌気性微生物の両方を同時に繁殖させて、両方の微生物によって混入物を処理(分解除去)することができる。すなわち、従来技術では1つの槽にて好気性微生物と嫌気性微生物との両方を充分に繁殖させることができなかったが、本実施の形態の水処理装置では、1つの槽にて好気性微生物と嫌気性微生物との両方を充分に繁殖させることができる。
【0147】
酸化還元電位計47の値がプラスである場合には、第2処理槽15の内部は好気的条件であり、逆にマイナスである場合には、第2処理槽15の内部は嫌気的条件である。そして、本実施の形態の水処理装置では、第2処理槽15の内部条件を適切に制御することによって、好気性微生物と嫌気性微生物との両方が、適切に共存できる環境を生み出している。
【0148】
シーケンサー14による気液混合循環ポンプ2、電動ニードルバルブ9、ブロワー12、第2散気部19、および第2攪拌部53の動作の制御方法は特に限定されない。上記制御方法は、例えば、各構成の運転時間、および/または、運転する構成の組み合わせを適切に制御する方法であり得る。例えば、第2処理槽15の内部を好気的条件に設定する場合には、ブロワー12および第2散気部19を駆動させればよい。一方、第2槽15の内部を嫌気的条件に設定する場合には、ブロワー12および第2散気部19を停止させるとともに、第2攪拌部53を駆動させればよい。また、上記第2処理槽15の内部を、好気的条件と嫌気的条件とに連続的に変化させることも可能である。
【0149】
以上のようにして第2処理槽15内にて処理されたバブル含有水は、処理水として管22を介して第2処理槽15の外へ排出される。当該排出された処理水は、処理済の液体として所望の用途に用いられ得る。また、上記処理水に対して、さらなる浄化処理を施すことも可能である。このことについては、別の実施の形態にて説明する。
【0150】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について、図2に基づいて説明する。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0151】
本実施の形態の水処理装置では、処理対象の液体として工場廃水を用いるとともに、第2処理槽15の底面上にバブル含有水流入部25が設けられている。そして、上記バブル含有水流入部25から、第2バブル発生槽1内のバブル含有水が吐出されている。
【0152】
上記バブル含有水流入部25は、第2バブル発生槽1内のバブル含有水を吐出できるものであればよく、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、上記バブル含有水流入部25は、バブル含有水を吐出する吐出口を複数有するものであることが好ましい。
【0153】
上記構成によれば、工場廃水中の有機物を、ナノバブルおよびマイクロナノバブルに由来する強力なフリーラジカルによって酸化分解することができる。また、ナノバブルおよびマイクロナノバブルは、担体16の表面に固定化された微生物を活性化することができるので、従来の水処理方法や水処理装置と比較して、液体中の混入物を効果的に除去することができる。また、上記構成によれば、第2処理槽15内の担体16の密度が高い場合にも、当該担体16を効果的に攪拌することができる。
【0154】
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施の形態について、図3に基づいて説明する。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0155】
本実施の形態の水処理装置では、処理対象の液体として再利用水を用いるとともに、第1処理槽70内にも担体38が設けられている。なお、上記担体38は、上述した担体16と同じ構成である。
【0156】
本実施の形態の水処理装置は、例えば工場廃水処理後の再利用や、工場からの廃水であって再利用可能な比較的汚染度の低い水を処理する場合に適している。
【0157】
上記構成によれば、第1処理槽70内の微生物濃度が低い場合であっても、その少ない微生物を担体38の表面に固定化することができるので、第1処理槽70の処理性能を高めることができる。
【0158】
〔実施の形態4〕
本発明の他の実施の形態について、図4に基づいて説明する。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0159】
本実施の形態の水処理装置では、処理対象の液体として河川水を用いている。また、本実施の形態の水処理装置では、第2処理槽15から蓋を削除している。
【0160】
上記構成によれば、河川水中の微量の有機物を、ナノバブルおよびマイクロナノバブル由来の強力なフリーラジカルによって酸化分解することができる。これによって、被処理水の化学的酸素要求量および全有機炭素の値を低くすることができる。その結果、半導体工場や液晶工場での超純水製造装置の原水に適する水質を有する水を作製することが可能であるとともに、超純水製造設備のイニシャルコストおよびランニングコストを低減することができる。
【0161】
また、第2処理槽15が開放型となっているので、第2処理槽15内を主として好気的条件に設定することが可能である。なお、好気的条件にて長く運転する方が、効果的に処理できる対象も存在する。
【0162】
〔実施の形態5〕
本発明の他の実施の形態について、図5に基づいて説明する。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0163】
本実施の形態の水処理装置では、処理対象の液体として下水を用いている。また、本実施の形態の水処理装置では、第2処理槽15の側面に設けられた処理済の液体を排出するための開口に、傾斜面を有するスクリーン容器51が設けられている。
【0164】
上記スクリーン容器51は、第2処理槽15から担体16が流出することを防止することができるものであればよく、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、上記スクリーン容器51は、各種フィルターであり得る。更に具体的には、上記スクリーン容器51は、例えば、3.5mm×3.5mmの複数の開口を有するとともに、空気によって洗浄可能な傾斜面を有するフィルターであり得る。なお、上記傾斜面に対しては、散気管(図示せず)から気体を吐出することによって、常時、スクリーン容器51を洗浄することが好ましい。
【0165】
上記構成によれば、液体中に含まれる混入物を効果的に除去することができる。
【0166】
〔実施の形態6〕
本発明の他の実施の形態について、図6に基づいて説明する。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0167】
本実施の形態の水処理装置では、処理対象の液体として生活廃水を用いている。また、本実施の形態の水処理装置では、第1処理槽70に酸化還元電位計33が設けられるとともに、処理槽外部に酸化還元電位調節計34が設けられている。
【0168】
上記酸化還元電位計33および酸化還元電位調節計34としては特に限定されず、適宜公知の構成を用いることができる。
【0169】
上記構成によれば、第1処理槽70内のバブル含有水の酸化還元電位を正確に測定できる。そして、酸化還元電位計33によって測定された酸化還元電位は、酸化還元電位調節計34に送られ、次いで、信号線11を介してシーケンサー14に入力される。そして、当該測定結果がシーケンサー14によって判断された後、第1処理槽70内の条件が所定の条件になるように、様々な構成(例えば、バルブ83・84・46、ブロワー69および第1攪拌部82など)の動作が制御される。
【0170】
すなわち、上記構成によれば、処理対処の液体の性質に応じて第1処理槽内の状態を設定することができる。例えば、生活廃水中にアンモニア性窒素が多く含まれていれば、アンモニア性窒素を硝化するために、好気的条件にて長時間処理すればよい。また、生活廃水中に硝酸性窒素が多く含まれていれば、硝酸性窒素を脱窒するために、嫌気的条件にて長時間処理すればよい。
【0171】
〔実施の形態7〕
本発明の他の実施の形態について、図7に基づいて説明する。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0172】
本実施の形態の水処理装置では、処理対象の液体として有機フッ素化合物含有廃水を用いている。また、本実施の形態の水処理装置では、管22の後段に、さらに追加設備として急速ろ過塔39、活性炭吸着塔40が設けられているとともに、そして活性炭吸着塔40における使用済みの活性炭が、セメント工場44に導入されている。
【0173】
上記急速ろ過塔39、および活性炭吸着塔40の具体的な構成としては特に限定されず、適宜公知の構成を用いることができる。
【0174】
上記急速ろ過塔39では、浮遊物質を除去することができる。また、上記活性炭吸着塔40では、各種物質を吸着除去することができる。
【0175】
活性炭吸着塔40は、処理水中に有機物などが残存していると吸着効果が低下する。しかしながら、上記構成によれば、液体中の有機物等を除去することができるので、活性炭吸着塔40の機能を最大限発揮させることができるとともに、難分解性である有機フッ素化合物をも完全に除去することができる。
【0176】
また、上記活性炭吸着塔40内の活性炭は、使用後、セメント工場44に搬入されて、燃料の一部として利用される。その結果、活性炭に吸着されている有機フッ素化合物が、セメント工場44にて完全に分解処理(例えば、燃焼温度1400℃)されることになる。有機フッ素化合物は、1250℃以上で分解するので、セメント工場44に吸着後の使用済活性炭を持ち込んで処分すれば、確実に処理することができる。
【0177】
〔実施の形態8〕
本発明の他の実施の形態について、図8に基づいて説明する。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0178】
本実施の形態の水処理装置では、処理対象の液体として有機フッ素化合物含有廃水を用いている。また、本実施の形態の水処理装置では、管22の後段に、さらに追加設備として急速ろ過塔39、イオン交換樹脂塔41が設けられているとともに、そしてイオン交換樹脂塔41における使用済みのイオン交換樹脂が、セメント工場44に導入されている。
【0179】
上記急速ろ過塔39、およびイオン交換樹脂塔41の具体的な構成としては特に限定されず、適宜公知の構成を用いることができる。なお、イオン交換樹脂塔41は、有機フッ素化合物の末端がスルホン酸塩やカルボン酸塩に対して有効にイオン交換して、イオン交換樹脂に吸着するものであることが好ましい。
【0180】
上記急速ろ過塔39では、浮遊物質を除去することができる。また、上記イオン交換樹脂塔41では、各種物質を吸着除去することができる。
【0181】
イオン交換樹脂塔41は、処理水中に有機物などが残存していると吸着効果(イオン交換効果)が低下する。しかしながら、上記構成によれば、液体中の有機物等を除去することができるので、イオン交換樹脂塔41の機能を最大限発揮させることができるとともに、難分解性である有機フッ素化合物をも完全に除去することができる。
【0182】
また、上記イオン交換樹脂塔41内のイオン交換樹脂は、使用後、セメント工場44に搬入されて、燃料の一部として利用される。その結果、イオン交換樹脂に吸着されている有機フッ素化合物が、セメント工場44にて完全に分解処理(例えば、燃焼温度1400℃)されることになる。有機フッ素化合物は、1250℃以上で分解するので、セメント工場44に吸着後の使用済イオン交換樹脂を持ち込んで処分すれば、確実に処理することができる。
【0183】
〔実施の形態9〕
本発明の他の実施の形態について、図9に基づいて説明する。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0184】
本実施の形態の水処理装置では、処理対象の液体として有機フッ素化合物含有廃水を用いている。また、本実施の形態の水処理装置では、管22の後段に、さらに追加設備として急速ろ過塔39、キレート樹脂塔90が設けられているとともに、そしてキレート樹脂塔90における使用済みのキレート樹脂が、セメント工場44に導入されている。
【0185】
上記急速ろ過塔39、およびキレート樹脂塔90の具体的な構成としては特に限定されず、適宜公知の構成を用いることができる。なお、キレート樹脂塔90は、有機フッ素化合物の末端がスルホン酸塩やカルボン酸塩に対して有効に交換して、キレート樹脂に吸着するものであることが好ましい。
【0186】
上記急速ろ過塔39では、浮遊物質を除去することができる。また、上記活性炭吸着塔40では、各種物質を吸着除去することができる。
【0187】
キレート樹脂塔90は、処理水中に有機物などが残存していると吸着効果が低下する。しかしながら、上記構成によれば、液体中の有機物等を除去することができるので、活性炭吸着塔40の機能を最大限発揮させることができるとともに、難分解性である有機フッ素化合物をも完全に除去することができる。
【0188】
また、上記キレート樹脂塔90内のキレート樹脂は、使用後、セメント工場44に搬入されて、燃料の一部として利用される。その結果、キレート樹脂に吸着されている有機フッ素化合物が、セメント工場44にて完全に分解処理(例えば、燃焼温度1400℃)されることになる。有機フッ素化合物は、1250℃以上で分解するので、セメント工場44に吸着後の使用済キレート樹脂を持ち込んで処分すれば、確実に処理することができる。
【実施例】
【0189】
〔実施例1〕
図1に基づいて、水処理装置を作製した。当該水処理装置では、前槽55の容量を0.1m、第1バブル発生槽57の容量を0.1m、第1処理槽70の容量を5m、第2バブル発生槽1の容量を0.1m、第2処理槽15の容量を5mとした。また、上記第2処理槽15内には、ポバール樹脂(株式会社クラレ製のクラゲール(登録商標))を約1m(第2槽15の容量の約20%)加えた。また、ナノバブル発生機である第1バブル発生部42および第2バブル発生部43としては、株式会社協和機設社製のバビタスHYK−32を用いた。なお、上記バビタスHYK−32が備える気液混合循環ポンプ2の動力は、3.7kwであった。
【0190】
また、第1攪拌部81および第2攪拌部53としては、新明和工業株式会社製の水中エアレータSU15を用いた。なお、当該水中エアレータSU15は、吐出水量が9m/分、出力が1.5kw、本体重量が175kgである水中エアレータである。
【0191】
上記水処理装置に有機物を含有した工場廃水を導入して、当該廃水を1ヶ月間処理した。なお、上記廃水としては、半導体工場から排出される有機物含有廃水を用い、当該有機物含有廃水の処理前のTOC値(全有機炭素)は、112ppmであった。
【0192】
一方、1ヶ月間の処理を行った後の有機物含有廃水(処理水45)のTOC値は、12ppmであった。
【0193】
〔実施例2〕
図7に基づいて、水処理装置を作製した。なお、当該水処理装置は図1に示す水処理装置とほぼ同じであるが、急速ろ過塔39の容量を0.05m、活性炭吸着塔40の容量を0.2mとして、約1ヶ月の運転を行った。
【0194】
有機フッ素化合物含有廃水として、PFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)を準備して、前槽55に添加し、通常運転後、活性炭吸着塔40出口の処理水のPFOSを側定して除去率をもとめたところ、99%であった。なお、PFOSの測定は、公知の方法に基づいて行った。
【0195】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明によれば、処理水中に含まれる混入物(例えば、有機物)を効果的に除去することができる。そのため、本発明は、廃水処理装置および水浄化装置に代表される各種水処理装置やその部品を製造する分野に利用することができるだけでなく、さらには、混入物が除去された純度の高い液体を用いる必要がある分野に、広く応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】本発明における水処理装置の実施の一形態を示す模式図である。
【図2】本発明における水処理装置の他の実施の形態を示す模式図である。
【図3】本発明における水処理装置のさらに他の実施の形態を示す模式図である。
【図4】本発明における水処理装置のさらに他の実施の形態を示す模式図である。
【図5】本発明における水処理装置のさらに他の実施の形態を示す模式図である。
【図6】本発明における水処理装置のさらに他の実施の形態を示す模式図である。
【図7】本発明における水処理装置のさらに他の実施の形態を示す模式図である。
【図8】本発明における水処理装置のさらに他の実施の形態を示す模式図である。
【図9】本発明における水処理装置のさらに他の実施の形態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0198】
2・61 気液混合循環ポンプ
3・62 第1気体せん断部
4・63 第2気体せん断部
6・59 第3気体せん断部
8・65 空気配管
9・66 電動ニードルバルブ
10・13・22・23・49・60・64・67・68・74・77 管
11 信号線
12・69 ブロワー
14 シーケンサー
16 担体
17 水流発生管(ドラフト)
19 第2散気部(第2散気手段)
21 支持板
25 バブル含有水流入部
26・36・37・58 水流
33・47 酸化還元電位計
34・48 酸化還元電位調節計
39 急速ろ過塔
40 活性炭吸着塔
41 イオン交換樹脂塔
42 第1バブル発生部(第1バブル発生手段)
43 第2バブル発生部(第2バブル発生手段)
44 セメント工場
45 フィルター
52 洗浄用散気管(第3散気手段)
53 第2攪拌部(第2攪拌手段)
55 前槽
56・78・79 ポンプ
57 第1バブル発生槽
69 ブロワー
70 第1処理槽
72 液中膜架台
73 中空糸
75・76 フランジ
81 第1散気部(第1散気手段)
82 第1攪拌部(第1攪拌手段)
85 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中にナノバブルまたはマイクロナノバブルを発生させる第1バブル発生手段と、
前記ナノバブルまたはマイクロナノバブルが発生した後の前記液体が導入されるとともに、当該液体中に微生物を含有させる第1処理槽と、
前記第1処理槽内に設けられるとともに、前記第1処理槽内の前記液体を濾過して前処理水を作製するフィルターと、
前記前処理水中にナノバブルまたはマイクロナノバブルを発生させる第2バブル発生手段と、
前記ナノバブルまたはマイクロナノバブルが発生した後の前記前処理水を導入する第2処理槽と、
前記第2処理槽内に導入される前記前処理水と接触可能に設けられる、ポリビニルアルコールからなる担体と、を備え、
前記担体は細孔を有するとともに、前記担体上には微生物が固定化されていることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記細孔の孔径は、略20μmであることを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記第1処理槽内には、当該第1処理槽内に導入された前記液体に対して気体を吐出する第1散気手段と、当該第1処理槽内に導入された前記液体を攪拌して水流を発生させる第1攪拌手段とが備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記第2処理槽内には、当該第2処理槽内に導入された前記前処理水に対して気体を吐出する第2散気手段と、当該第2処理槽内に導入された前記前処理水を攪拌して水流を発生させるための第2攪拌手段とが備えられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記第2散気手段および前記第2攪拌手段は共に、円筒形状のドラフト内に設けられており、
前記ドラフトの2つの開口は、それぞれ、前記第2処理槽の底面、または当該第2処理槽内に導入された前記前処理水の水面に対向するように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記ドラフト内にて、前記第2攪拌手段は、前記第2散気手段よりも前記第2処理槽の底面側に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記第2攪拌手段は、前記第2処理槽の底面側に向かって水流を発生させるものであることを特徴とする請求項6に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記第2攪拌手段は、水中エアレータであることを特徴とする請求項4〜7の何れか1項に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記第1処理槽内に導入された前記液体の酸化還元電位を測定するための第1酸化還元電位計、および前記第2処理槽内に導入された前記前処理水の酸化還元電位を測定するための第2酸化還元電位計の少なくとも一方と、
前記第1酸化還元電位計の測定結果に基づいて、前記第1散気手段によって吐出される気体量、および前記第1攪拌手段によって発生される水流量を調節するとともに、前記第2酸化還元電位計の測定結果に基づいて、前記第2散気手段によって吐出される気体量、および前記第2攪拌手段によって発生される水流量を調節するためのシーケンサーと、を備えることを特徴とする請求項3〜8の何れか1項に記載の水処理装置。
【請求項10】
前記第2処理槽には蓋が備えられていることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の水処理装置。
【請求項11】
前記担体は、前記第2処理槽内を流動可能に備えられていることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の水処理装置。
【請求項12】
前記担体の一部は、前記第2処理槽内を流動可能に備えられ、前記担体の残りは、前記第2処理槽内に固定化されて備えられていることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の水処理装置。
【請求項13】
前記第2処理槽内に導入される前記前処理水は、前記第2処理槽の底面上に設けられた複数の吐出口を有する吐出手段によって前記第2処理槽内に吐出されることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の水処理装置。
【請求項14】
前記第1バブル発生手段および前記第2バブル発生手段が、水中ポンプ型バブル発生機であることを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載の水処理装置。
【請求項15】
前記第2処理槽内の前記前処理水が導入される急速ろ過塔、活性炭吸着塔、イオン交換樹脂塔、またはキレート樹脂塔が備えられていることを特徴とする請求項1〜14の何れか1項に記載の水処理装置。
【請求項16】
前記第2処理槽の横断面の形状が、長さがa(m)である第1辺、および、長さがb(m)である第2辺を有する四角形にて規定されるとともに、前記処理槽の縦方向の深さが、c(m)にて規定され、
c:aおよびc:bにて示される比が、共に1:1.0〜1.3であることを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載の水処理装置。
【請求項17】
前記第2処理槽には、当該第2処理槽内に導入された前処理水を排出するための開口が設けられ、
前記開口は、フィルターによって前記担体から隔離されていることを特徴とする請求項1〜16の何れか1項に記載の水処理装置。
【請求項18】
前記第2処理槽の内側面には、当該第2処理槽の横断面の中央に向かって突出した凸部が設けられ、
前記開口は、前記凸部よりも上側に設けられていることを特徴とする請求項17に記載の水処理装置。
【請求項19】
前記凸部の縦断面の形状は、三角形であることを特徴とする請求項18に記載の水処理装置。
【請求項20】
前記第1処理槽内には、活性炭からなる吸着手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜19の何れか1項に記載の水処理装置。
【請求項21】
前記吸着手段は粒子状であって、前記第1処理槽内を流動可能に設けられていることを特徴とする請求項20に記載の水処理装置。
【請求項22】
前記フィルターは、中空糸タイプのフィルターであることを特徴とする請求項17に記載の水処理装置。
【請求項23】
前記フィルターに対して、第3散気手段によって気体が吐出されていることを特徴とする請求項17に記載の水処理装置。
【請求項24】
液体中にナノバブルまたはマイクロナノバブルを発生させる第1バブル発生工程と、
前記ナノバブルまたはマイクロナノバブルが発生した後の前記液体を第1処理槽内に導入するとともに、当該液体に微生物を含有させる微生物処理工程と、
前記第1処理槽内に設けられたフィルターによって、前記第1処理槽内の液体を濾過して前処理水を作製する濾過工程と、
前記前処理水中にナノバブルまたはマイクロナノバブルを発生させる第2バブル発生工程と、
前記ナノバブルまたはマイクロナノバブルが発生した後の前記前処理水を第2処理槽内に導入する導入工程と、
前記第2処理槽内に導入される前記前処理水とポリビニルアルコールからなる担体とを接触させる接触工程と、を有し、
前記担体は細孔を有するとともに、前記担体上には微生物が固定化されていることを特徴とする水処理方法。
【請求項25】
前記細孔の孔径は、略20μmであることを特徴とする請求項24に記載の水処理方法。
【請求項26】
前記第1処理槽内に導入された前記液体に対して気体を吐出する第1気体吐出工程と、
前記第1処理槽内に導入された前記液体を攪拌する第1攪拌工程と、
前記第2処理槽内に導入された前記前処理水に対して気体を吐出する第2気体吐出工程と、
前記第2処理槽内に導入された前記前処理水を攪拌する第2攪拌工程と、を有することを特徴とする請求項24または25に記載の水処理方法。
【請求項27】
前記第1気体吐出工程および前記第2気体吐出工程は、それぞれ、気体を吐出する吐出工程と気体を吐出しない不吐出工程とを交互に繰り返すことを特徴とする請求項26に記載の水処理方法。
【請求項28】
前記接触工程の後に、第2処理槽内の前記前処理水を、急速ろ過塔、活性炭吸着塔、イオン交換樹脂塔、またはキレート樹脂塔によって処理する工程を有することを特徴とする請求項24〜27の何れか1項に記載の水処理方法。
【請求項29】
前記液体は、有機フッ素化合物含有水、有機フッ素化合物含有廃水、工場廃水、再利用水、河川水、下水、生活廃水であることを特徴とする請求項24〜28の何れか1項に記載の水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−195888(P2009−195888A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43605(P2008−43605)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(000245531)野村マイクロ・サイエンス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】