説明

水性エマルジョンの製造方法

重量平均分子量2万以上のポリオレフィンのエマルジョンの製造方法において、スチレン−無水マレイン酸共重合体又は/及びスチレン−マレイン酸共重合体のエステルを高分子分散剤として使用することを特徴とする水性エマルジョンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は水性エマルジョン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
従来から、ガラス繊維強化プラスチック(以下「FRTP」ともいう)は、強度及び耐熱性等の物理特性に優れているため、自動車用部品(例えばエンジンのエアダクト等)又は電気製品の部品等の広範囲の用途に使用されている。上記FRTPは、通常、ポリプロピレンやポリアミド等のマトリックス樹脂とガラス繊維のチョップドストランドから製造される。そして、上記チョップドストランドは、一般に、ガラス繊維紡糸工程で製造されるガラスフィラメントを、水性エマルジョン集束剤を用いて束ね、これを細かく切断することにより製造される。
上記集束剤の集束性は水性エマルジョンの形成する乾燥溶融皮膜の強度に左右される。従来のポリオレフィン系水性エマルジョンに用いられるポリオレフィンの分子量は低く、形成する乾燥溶融皮膜の強度が低いため、集束性は満足すべきものではなかった。
高分子量ポリオレフィンの水性エマルジョンの製造方法として、例えば、高分子量ポリオレフィンを水不溶性の溶剤に溶解した後、乳化剤及び水を加え、エマルジョン化した後で溶剤を揮発させる方法、又は例えばアルコール等の水溶性溶剤を使用する方法などが知られているが、いずれも高コストと溶剤を使用する作業環境との両面から望ましい方法ではない。
溶剤を用いない低分子量ポリオレフィンの水性エマルジョンの製造方法としては、例えば、ポリオレフィン、乳化剤及び水を混合したものを、圧力容器を用いて水を液体状態のままポリオレフィンの融点以上に加熱し、攪拌して乳化する方法等が挙げられるが、この方法では、高分子量ポリオレフィンを乳化することができない。
また、高分子量ポリオレフィンの水性エマルジョンを製造するために、高分子量ポリプロピレンと乳化剤とを溶融状態で混練し、その混練物に塩基及び水を加えて所望によりさらに乳化剤を加え、高温高圧下で攪拌する二段階の方法(特許文献1)、高分子量結晶性変性ポリプロピレンを非晶性変性ポリプロピレンと混合して製造する方法(特許文献2)も検討されているが、上記方法ではエマルジョン塗膜の強度などの性能が低下する。
さらに、高分子量ポリプロピレンを、脂肪酸、ヒドロキシルアミン塩基、界面活性剤及び水と圧力容器の中で混合して固形分比率50〜90質量%の混合物とし、それを攪拌しながら固形分の融点以上の温度に加熱し、その後固形分比率5〜50質量%になるまで熱水を加えて攪拌し、エマルジョンを得る製造方法(特許文献3)も検討されているが、製造プロセスが長く複雑なものとなる。さらに、この方法については、実際に重量平均分子量8万以上のポリオレフィンの水性エマルジョンを得たとの記載もなく、特に重量平均分子量8万以上の高分子量ポリオレフィンを満足に分散することが極めて困難であり、たとえ、乳化しても、乳化力不全により、多くが繊維状又は扁平状の残渣として残り、生産が困難となる。また、高分子量ポリプロピレンをポバールと混合し、乳化させて水性エマルジョンを製造する方法(特許文献4)も検討されているが、エマルジョンの乾燥皮膜の耐水性が大幅に低下する等の理由により好ましくない。そのため、高分子量ポリオレフィンの水性エマルジョンを複雑な製造プロセスでなくて、エマルジョンの乾燥皮膜の耐水性が大幅に低下しない工業的有利に製造できる高分子量ポリオレフィンの製造方法が待ち望まれていた。
【特許文献1】 米国特許第5,242,969号
【特許文献2】 米国特許第4,240,944号
【特許文献3】 米国特許第6,166,118号
【特許文献4】 特開昭54−20057号公報
【発明の開示】
本発明は、集束性及び密着性に優れた高分子量ポリオレフィンの水性エマルジョン及びその水性エマルジョンを工業的有利に製造できる製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、高分子量ポリオレフィンの乳化について鋭意検討した結果、高分子量酸例えばモンタン酸または低分子量酸変性ポリプロピレン等を乳化に用いることが脂肪酸等と比較して分子量の大きさ、カルボキシル基の数量及び添加量において有利でないものの、特に低分子量酸変性ポリプロピレンの少量の添加が極めて有効であることを知見した。
本発明者らは、脂肪酸換算の酸価について着目し、例えば高分子量酸変性ポリプロピレン(酸価約9mgKOH/g)に対して、従来法により乳化されてきた比較的低分子量のポリオレフィン程度の脂肪酸換算の酸価を与えるべきか否かを検討し、多数の試験の結果、高分子量ポリプロピレンの酸価約15〜25mgKOH/gに相当する脂肪酸、非イオン界面活性剤及び塩基の組み合わせによって、均一な液状乳化物を得ることができなかった。さらに、本発明者らは、これら多数の試験結果から最も乳化したものが繊維状物を多く含む部分乳化物であることを知見し、いずれもペレット状の高分子量ポリプロピレンの一部が乳化し、粒状から楕円板状又は繊維状物からなるペーストへの変化に留まり、均一な乳化物を得ることができないことを見出した。
また、本発明者らは、粒状の高分子量ポリプロピレンを融点以上で攪拌すると乳化力の低い場合、高分子量ポリプロピレンが楕円板状になってしまい、例えば乳化剤を添加するなど公知の方法で乳化力を高めていくと、楕円板状から繊維状、更には細い繊維状へと変化することを知見した上で、前記細い繊維状となる組成下で攪拌力を大幅に強くする試験を実施した結果、細い繊維体は細分化されることなく、糸まり状となるにとどまることを知見した。また、本発明者らは、高分子量ポリプロピレンに脂肪酸及び非イオン界面活性剤を配合すると、細い繊維状への変化の度合いが大きくなることを見出したが、この変化の度合いが大きくなっても、脂肪酸及び非イオン界面活性剤を用いた試験で得られるものが微細粒子化前の段階の不完全乳化であり、乳化の失敗が攪拌力等のメカニックの不十分さだけによるものではなかったことを知見した。さらに、本発明者らは、上記高分子分散剤としてポリアクリル酸−スチレンアクリル共重合体又はエチレン−アクリル共重合体等を使用することについても検討したが、高分子分散剤としての有効性において樹脂の分散が良好でなかった。
さらに、本発明者らは、高分子量ポリオレフィンに対する添加量(質量%)が少なく、融点降下又は溶融粘度低下を起こさずに多くの酸量を供給できる多数の高分子量酸(例えばポリカルボン酸等)を検討し、その中で、スチレン−無水マレイン酸共重合体及びスチレン−マレイン酸共重合体のエステルが際立って有効であることを見出した。
本発明者らは、高分子量ポリオレフィンの水性エマルジョンについて、さらに検討を重ね、種々の実験を繰り返し行った結果、重量平均分子量2万以上のポリオレフィンのエマルジョンの製造方法において、スチレン−無水マレイン酸共重合体又は/及びスチレン−マレイン酸共重合体のエステルを高分子分散剤として使用することで、満足することができる水性エマルジョンを製造できることを見出した。さらに、上記水性エマルジョンが、繊維の集束性及び種々の基材に対する密着性に優れていること、及び工業的有利に製造できること等を知見し、本発明が上記問題点を一挙に解決できるものであることを見出した。また、本発明者らは、上記水性エマルジョンをガラス繊維の集束剤の原料として用いることによって、FRTPのマトリックス樹脂と相溶性の低い集束剤の原料を使用せずに済むことや、或いはその使用量を削減できることを知見した。
さらに、本発明者らは、かかる種々の知見を得た後、さらに検討を重ね、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
(1) 重量平均分子量2万以上のポリオレフィンのエマルジョンの製造方法において、スチレン−無水マレイン酸共重合体又は/及びスチレン−マレイン酸共重合体のエステルを高分子分散剤として使用することを特徴とする水性エマルジョンの製造方法、
(2) 重量平均分子量2万以上のポリオレフィン、スチレン−無水マレイン酸共重合体又は/及びスチレン−マレイン酸共重合体のエステル、乳化剤、塩基並びに水を重量平均分子量2万以上のポリオレフィンの融点以上に加熱し、混合することを特徴とする水性エマルジョンの製造方法、
(3) 重量平均分子量2万以上のポリオレフィン、スチレン−無水マレイン酸共重合体又は/及びスチレン−マレイン酸共重合体のエステル、乳化剤、塩基並びに水とともに重量平均分子量1000〜20000の低分子量酸変性ポリプロピレンを重量平均分子量2万以上のポリオレフィンの融点以上に加熱し、混合することを特徴とする上記(2)記載の水性エマルジョンの製造方法、
(4) 加熱及び混合を密封系で行うことを特徴とする上記(2)又は(3)に記載の水性エマルジョンの製造方法、
(5) 重量平均分子量2万以上のポリオレフィン、スチレン−無水マレイン酸共重合体又は/及びスチレン−マレイン酸共重合体のエステル並びに水を含有することを特徴とする水性エマルジョン、
(6) さらに重量平均分子量1000〜20000の低分子量酸変性ポリプロピレンを含有することを特徴とする上記(5)記載の水性エマルジョン、
(7) 上記(5)又は(6)に記載の水性エマルジョンからなるコーティング液、及び
(8) ガラス繊維用集束剤であることを特徴とする上記(7)記載のコーティング液
に関する。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の製造方法に好適に用いられる攪拌機及びヒーターを具備する圧力容器の模式図である。図中の符号1は圧力容器を示し、符号2は攪拌機を示し、符号2aは羽根を示し、符号2bは撹拌モーターを示し、符号3はヒーターを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明は、重量平均分子量2万以上のポリオレフィンのエマルジョンの製造方法において、スチレン−無水マレイン酸共重合体又は/及びスチレン−マレイン酸共重合体のエステルを高分子分散剤として使用することを特徴とする水性エマルジョンの製造方法である。また、本発明は、重量平均分子量2万以上のポリオレフィン、スチレン−無水マレイン酸共重合体又は/及びスチレン−マレイン酸共重合体のエステル並びに水を、或いはさらに重量平均分子量1000〜20000の低分子量酸変性ポリプロピレンを含有することを特徴とする水性エマルジョンである。かかる水性エマルジョンは、重量平均分子量2万以上のポリオレフィンが水媒体中に分散していればどのようなものであってもよい。さらに、乳化剤又は/及び塩を含有していてもよい。上記水性エマルジョンの粘度又は透明度等は特に限定されないが、低粘度であることが好ましく、本発明によればそのような水性エマルジョンが工業的有利に製造され得る。
本発明で用いられる重量平均分子量2万以上のポリオレフィンは、重量平均分子量2万以上であって、オレフィン類の重合体であればどのようなものでもよい。本発明で用いられるポリオレフィンの重量平均分子量の下限値は通常約2万であるが、約5万であるのが好ましい。ポリオレフィンの重量平均分子量の上限値は臨界的ではないが、通常200万程度であり、好ましくは約15万である。なお、本発明においては、重量平均分子量2万以上のポリオレフィンに重量平均分子量2万以下のポリオレフィンが含まれていてもよい。
重量平均分子量2万以上のポリオレフィンの種類としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、アイオノマー、それらの共重合体及びそれらの変性体から選ばれる1種又は2種以上等が挙げられる。上記共重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、交互共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。上記変性体は、酸変性であってもよいし、ゴム変性であってもよい。上記ポリオレフィンは市販品として広く流通しており、本発明では、これら市販品を上記ポリオレフィンとして好適に用いることができる。本発明においては、上記ポリオレフィンの配合割合が、水性エマルジョンに対して、約10〜60質量%であることが好ましく、約15〜50質量%であることがより好ましく、約20〜40質量%であることが最も好ましい。
また、本発明においては、上記ポリオレフィンが、ポリプロピレン又は変性ポリプロピレンであることが好ましい。上記ポリプロピレンは、プロピレン基を少なくとも1個有する重合体であればどのようなものでもよい。上記変性ポリプロピレンは、変性された上記ポリプロピレンであればどのようなものでもよい。公知の変性ポリプロピレンであってもよい。酸変性ポリプロピレンであってもよく、ゴム変性ポリプロピレンであってもよい。カルボン酸、その無水物又はその誘導体で変性されたポリプロピレン(例えばマレイン酸変性ポリプロピレン等)であってもよい。本発明においては、上記重量平均分子量2万以上のポリオレフィンが、自己分散性による乳化の易化のため、酸価の高いもの(例えば10mgKOH/g以上)であることが好ましい。従って、本発明で使用される重量平均分子量2万以上のポリオレフィンは例えば酸変性などの変性ポリオレフィンであってもよいし、未変性ポリオレフィンであってもよい。又、これらのポリオレフィンは結晶状であっても非晶状であってもよい。
上記ポリプロピレンは市販品として広く流通しており、本発明では、これら市販品を上記ポリプロピレンとして好適に用いることができる。かかる市販品としては、例えば、アメリカ合衆国テネシー州にあるイーストマン ケミカル カンパニーから入手可能な製品名G3003、又はアメリカ合衆国コネチカット州Uniroyal Chemicalから入手可能なPolybond3200等が挙げられる。
本発明で用いられるスチレン−無水マレイン酸共重合体は、スチレンと無水マレイン酸との比率において、スチレン/無水マレイン酸=1/1、2/1、3/1などと相対的にスチレンモル数の多い重合体や同数の重合体であればどのようなものでもよい。スチレン−無水マレイン酸共重合体と称される公知のものであってよい。本発明においては、上記スチレン−無水マレイン酸共重合体のスチレン/無水マレイン酸比が、上記水性エマルジョン又は上記ポリオレフィン等の種々の条件によって適宜に設定される比であってよい。また、本発明においては、上記スチレン−無水マレイン酸の配合割合が、水性エマルジョンに対して、約0.1〜15質量%であることが好ましく、約0.3〜10質量%であることがより好ましく、約1.0〜5質量%であることが最も好ましい。
一方、本発明に用いられるスチレン−マレイン酸共重合体のエステルは、ハーフエステルなどの部分エステルであってもよい。本発明においては、上記スチレン−マレイン酸のエステルの配合割合が、水性エマルジョンに対して、約0.2〜20質量%であることが好ましく、約0.5〜15質量%であることがより好ましく、約0.75〜10質量%であることが最も好ましい。
また、本発明においては、上記スチレン−マレイン酸共重合体のエステルが、乳化力の強いものであることが好ましく、上記スチレン−無水マレイン酸共重合体よりもポリオレフィンに対し強い親和性又は溶媒作用があるものであることがより好ましく、高級アルコール(例えば炭素数6以上のアルコール等)又はEO(エチレンオキサイド)付加モル数の少ない高級アルコール系非イオン界面活性剤(エチレンオキサイド付加モル数は例えば約5〜15)とスチレン−マレイン酸共重合体とのエステルであることが最も好ましい。
上記高級アルコールは、公知のものであってよく、例えば、ヘキサノール(例えば1−ヘキサノール、2−エチル−1−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、イソヘキシルアルコール、メチル−1−ペンタノール又はs−ヘキサノール等)、ヘプタノール(例えば1−ヘプタノール、イソヘプチルアルコール又は2,3−ジメチル−1−ペンタノール等)、オクタノール(例えば1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、イソオクチルアルコール、2−オクタノール又は3−オクタノール等)、ノナノール(例えば1−ノナノール、イソノニルアルコール又は3,5,5−トリメチルヘキサノール等)、デカノール(例えば1−デカノール、イソデシルアルコール又は3,7−ジメチル−1−オクタノール等)、ドデカノール(例えば1−ドデカノール又はイソドデシルアルコール)、トリデカノール(例えばイソトリデシルアルコール等)、C16アルコール、C18アルコール、芳香族アルコール(例えばベンジルアルコール、2−フェニルエタノール、1−フェニルエタノール、2−フェニル−1−プロパノール又はp−トリルアルコール等)、脂環式アルコール(例えばシクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、フルフリルアルコール又はテトラヒドロ−2−フランメタノール等)、不飽和アルコール(例えばアリルアルコール又はヘキシノール等)、又はハロゲン化アルコール(例えば2−クロロヘキサノール又はクロロヘプタノール等)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、糖類、セルロース、又はポリビニルアルコールなどが挙げられる。本発明においては、上記高級アルコールが、常温液状又は半固形状であるもの、二重結合を有するもの、環状構造を有するもの、親水性の弱い若しくは親油性のアルコール、直鎖状のアルコール、又は高沸点のアルコールであることが好ましい。
本発明では、上記スチレン−無水マレイン酸共重合体と上記スチレン−マレイン酸共重合体のエステルとを併用する場合、それぞれ独立して用いてもよいし、それぞれを混合したものを用いてもよい。かかる配合割合は、上記水性エマルジョン又は上記ポリオレフィン等の種々の条件によって適宜に設定されるものであってよい。
本発明において、上記スチレン−無水マレイン酸共重合体又は/及び上記スチレン−マレイン酸共重合体のエステルは、通常、高分子分散剤として上記重量平均分子量2万以上のポリオレフィンを分散する目的で用いられる。
本発明で用いられる乳化剤は、上記ポリオレフィンを乳化させるもの又は上記ポリオレフィンの乳化を促進できるものであればどのようなものでもよい。例えば、脂肪酸、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤及びカチオン界面活性剤等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。より具体的には、脂肪酸塩、アルファスルホ脂肪酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル硫酸トリエタノールアミン、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルピリジニウムクロリド及びアルキルカルボキシベタイン等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
上記乳化剤は市販品として広く流通しており、本発明ではこれら市販品を上記乳化剤として好適に用いることができる。かかる市販品としては、例えば、ミヨシ油脂株式会社から入手可能な製品名ペレテックス、又は日本油脂株式会社から入手可能である製品名S−215、S−220、NAA−34若しくはNAA−222Sなどが挙げられる。また、本発明においては、上記乳化剤の配合割合が、水性エマルジョン全量に対して約1.0〜20質量%であることが好ましく、約1.5〜15質量%であることがより好ましく、約2.0〜10質量%であることが最も好ましい。本発明においては、上記乳化剤が、脂肪酸であることが好ましい。特に優れたエマルジョンを得るためには、非イオン界面活性剤が存在しなければならない。本発明において、上記乳化剤の中で脂肪酸の役割が重要である。このように乳化剤として用いられる脂肪酸は、分子量も低く、添加量も少なくてすみ、たとえ、上記ポリオレフィンの酸価が少なくても、優れた相溶性及び溶媒的作用を発揮し得る。上記脂肪酸が、樹脂界面への積極的なカルボキシル基の補給、又は樹脂の持つ高い溶融粘性を低下せしめるために、ポリオレフィンを分散させる作用の強い脂肪酸が好ましい。そのような脂肪酸として常温固形状の炭素数20以上の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸が好ましい。本発明では、上記脂肪酸の添加量が、上記ポリオレフィンに対する脂肪酸換算の酸価約15以上となる添加量であることが好ましく、約15〜25となる添加量であることがより好ましい。本発明では、脂肪酸の代りに脂肪酸の塩(例えばナトリウム塩又はカリウム塩等)を用いることができ、この場合には塩基を加えることは必ずしも必要ない。そのような場合も、本発明の範囲に属する。また、本発明では、上記乳化剤が、非イオン界面活性剤又は/及びアニオン界面活性剤であることが好ましい。
本発明において使用される低分子量酸変性ポリプロピレンは乳化する高分子量酸変性ポリプロピレンの分子量や分子量分布或いは酸変性量などの性状によって任意組成分として適宜配合されるものであり、特に限定されないが、重量平均分子量1000〜20000の低分子量酸変性ポリプロピレンであるのが好ましく、酸変性量が1〜8質量%であるのが好ましい。前記ポリプロピレンの変性に用いられる酸は、特に限定されず、例えばカルボン酸が挙げられる。カルボン酸としては、例えば不飽和カルボン酸、その誘導体等が挙げられ、前記不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸などが挙げられる。前記不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば前記不飽和カルボン酸の酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩などが挙げられ、より具体的に例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、マレイン酸モノエチルエステル、アクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。本発明においては、前記ポリプロピレンの変性に、上記不飽和カルボン酸、その誘導体を、1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。変性方法は、特に限定されず、公知の方法を用いてよく、例えばポリプロピレンを適当な有機溶媒に溶解し、溶液に不飽和カルボン酸やその誘導体とラジカル発生剤とを添加して攪拌、加熱する方法、あるいは前記各成分を押出機に供給してグラフト共重合を行う方法などが挙げられる。低分子量酸変性ポリプロピレンは、脂肪酸等の界面活性剤や無水マレイン酸の作用促進や配合割合の削減に効果的に作用する。本発明における低分子量酸変性ポリプロピレンの高分子量酸変性ポリプロピレンに対する質量割合は好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは2〜8質量%である。
本発明で用いられる塩基は、水の存在下に電離すると水酸化物イオンを生じるものであればどのようなものでもよい。塩基としては、例えば、アンモニア、有機アミン(例えばモルホリン、モノエチルアミン、トリエチルアミン又はトリエタノールアミン等)、及び無機アルカリ(例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等)などから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。本発明においては、上記塩基の配合割合が、酸の総酸価に対して、当量比で、通常、約0.4〜2であり、好ましくは約0.5〜1.5であり、より好ましくは約0.6〜1.3である。
上記水性エマルジョンには、その他添加剤が配合されていてもよい。上記その他添加剤は、上記乳化剤及び上記塩基以外の添加剤であればどのようなものでもよい。適宜用いられる公知の添加剤であってよい。例えば、防腐剤、消泡剤、高分子安定化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、無機又は有機フィラー、熱安定剤、難燃剤、洗浄剤、消毒剤、滑剤、ワックス類、着色剤及び結晶化促進剤等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。本発明においては、上記添加剤が、防腐剤、消泡剤及び高分子安定化剤から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
上記防腐剤は、防腐作用を有するものであればどのようなものでもよい。防腐剤としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、はっ酵乳、乳酸菌飲料、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム及びプロピオン酸カルシウム等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。防腐剤はこれらの例示に制限されない。
上記消泡剤は、泡の発生を抑制できるものであればどのようなものでもよい。消泡剤としては、例えば、シリコン系消泡剤、エステル系消泡剤及びエーテル系消泡剤等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。本発明においては、上記消泡剤の配合割合が、水性エマルジョン全量に対して、約0.01〜1.0質量%であることが好ましく、約0.05〜0.5質量%であることがより好ましく、約0.1〜0.3質量%であることが最も好ましい。
上記高分子安定化剤としては、例えば、水溶性高分子安定化剤、油溶性高分子安定化剤及び両親媒性高分子安定化剤等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。上記水溶性高分子安定化剤は、水に混和性の液体に溶解する反応物又は安定剤であればどのようなものでもよく、油溶性高分子安定化剤は、水に非混和性の液体に溶解する反応物又は安定剤であればどのようなものでもよく、両親媒性高分子安定化剤は、水及び油に混和性の液体に溶解する反応物又は安定剤であればどのようなものでもよく、これらは公知のものであってよい。
また、本発明では、上記スチレン−無水マレイン酸共重合体又は/及び上記スチレン−マレイン酸共重合体のエステルを高分子分散剤として使用することにより、上記水性エマルジョンを製造することができる。かかる製造方法としては、例えば、上記重量平均分子量2万以上のポリオレフィン、上記スチレン−無水マレイン酸共重合体又は/及び上記スチレン−マレイン酸共重合体のエステル、上記乳化剤、上記塩基及び上記水を加熱し、混合して上記水性エマルジョンを製造する方法などが挙げられる。加熱と混合を同時に行ってもよい。
上記加熱に用いられる加熱手段は、上記水性エマルジョンが製造できさえすればどのような手段であってもよい。例えば、オーブン又はヒーター等であってよい。かかる加熱温度は、最終的に上記水性エマルジョンが製造できさえすれば特に限定されない。本発明においては、上記加熱温度が、上記重量平均分子量2万以上のポリオレフィンの融点以上であることが好ましく、前記融点より約5〜30℃高い温度であることがより好ましい。また、本発明においては、上記加熱を密封系で行うことが好ましく、かかる密封系で上記加熱を行うために圧力容器を用いることが好ましい。
上記混合に用いられる混合手段は、上記水性エマルジョンが製造できさえすればどのような手段であってもよい。例えば、攪拌、容器回転又は混流等の混合手段であってよい。上記攪拌は、機械による攪拌であってもよいし、手動による攪拌であってもよいが、機械による撹拌であるのが好ましい。本発明においては、上記混合が、上記攪拌であることが好ましく、上記重量平均分子量2万以上のポリオレフィン、上記スチレン−無水マレイン酸共重合体又は上記スチレン−マレイン酸共重合体のエステル、上記乳化剤、上記塩基、上記水及び所望により上記その他の添加剤を均一に分散できるものであることがより好ましい。また、本発明においては、上記混合を密封系で行うことが好ましく、密封系で上記混合を行うために圧力容器を用いることが好ましい。本発明においては、圧力容器を用いる場合、上記加熱及び混合を圧力容器内で同時に行うことができる。
以下、図面を用いて本発明の好ましい製造方法を説明する。
第1図は、本発明の製造方法に好適に用いられる攪拌機及びヒーターを具備する圧力容器を示している。第1図では、圧力容器1に上記重量平均分子量2万以上のポリオレフィン、上記スチレン−無水マレイン酸共重合体又は/及びスチレン−マレイン酸共重合体のエステル、上記乳化剤、上記塩基及び上記水を入れ、密封して上記ポリオレフィンの融点以上までヒーター3を用いて加熱する。その後、その加熱温度を維持しながら攪拌機2を用いて攪拌する。攪拌後、圧力容器1を冷却することにより水性エマルジョンを製造し得る。加熱については、上記マレイン酸変性ポリプロピレンの融点より約5〜20℃高い温度までヒーター3を用いて加熱するのが好ましい。その後、その加熱温度を維持しながら攪拌機2を用いて攪拌する。攪拌後、圧力容器1を室温程度(約40℃以下)にまで水冷することにより水性エマルジョンを工業的有利に製造し得る。
本発明においては、上記スチレン−無水マレイン酸共重合体、上記乳化剤、上記塩基及び上記水に上記スチレン−マレイン酸共重合体のエステルを付加することによって、重量平均分子量約5万〜15万の上記ポリオレフィンを乳化し、水性エマルジョンを得ることができる。
上記製造方法で製造された水性エマルジョンは、集束性及び密着性に優れていることから様々な用途に用いられる。例えばコーティング液等が挙げられ、より具体的には、ガラス繊維用集束剤、床又は車等のワックス、金属塗装、潤滑剤、金属離型剤、トナーバインダー、又はガラス繊維とオレフィン樹脂とのヒートシール等が挙げられる。上記ガラス繊維用集束剤の用途に用いる場合、上記水性エマルジョンをシランカップリング剤等と混合して用いることが好ましい。
【実施例1】
容積3.5リットル攪拌機付き圧力容器に高分子量無水マレイン酸変性ポリプロピレン(Dupont社製ランダムポリプロピレン MD−353D、重量平均分子量6万)、低分子量酸変性ポリプロピレン(Eastman社製 E−43、重量平均分子量0.9万)、スチレン−無水マレイン酸共重合物(Atofina社製、SMA #1000A及びSMA#3000A)、乳化剤としてNAA−34(商品名、日本油脂株式会社製の精製オレイン酸)、NAA−222S(商品名、日本油脂株式会社製の精製ベヘニン酸)、ペレテックス2920H(商品名、ミヨシ油脂株式会社製のオレイルアルコール5モルEO付加物)、S−220(商品名、日本油脂株式会社製のステアリルアルコール20モルEO付加物)、エパンU−108(第一工業製薬株式会社製、高分子EOPO共重合物)、塩基として水酸化カリウム(試薬レベル)及びモルホリン(試薬レベル)、並びに水を、第1表の配合割合でもって一括して加えた。圧力容器を密封して樹脂融点よりも10〜25℃高い温度まで加熱した。加熱した後、その温度を維持しながら2000rpmの回転速度でもって20分間攪拌した。攪拌後、低速攪拌に切り替え、40℃以下まで水冷して水性エマルジョンを製造した。
【実施例2】
さらに、高分子量無水マレイン酸変性ポリプロピレンとしてExxon Mobil Chemical社製ランダムポリプロピレンpo−1015(重量平均分子量12万)、スチレン−マレイン酸共重合体のエステルとしてスチレン−マレイン酸共重合体高級アルコールエステル(Atofina社製の上記SMAと試薬レベルのベヘニルアルコールとの生成物)、乳化剤としてS−215(商品名、日本油脂株式会社製のステアリルアルコール15モルEO付加物)、水酸化カリウム(試薬レベル)を加え、MD−353D、S−220、U−108を用いなかったこと、及び配合割合を第1表に示す割合としたこと以外、実施例1と同様にして水性エマルジョンを製造した。
【実施例3】
さらに、高分子量無水マレイン酸変性ポリプロピレンとしてEastman Chemical社製ホモポリプロピレンG3003(重量平均分子量5万)、乳化剤としてペレテックス2937J(商品名、ミヨシ油脂株式会社製のオレイルアルコール22モルEO付加物)、水酸化カリウム(試薬レベル)を加え、MD−353D、S−220、U−108を用いなかったこと、及び配合割合を第1表に示す割合としたこと以外、実施例1と同様にして水性エマルジョンを製造した。
【実施例4】
さらに、高分子量無水マレイン酸変性ポリプロピレンとしてUniroyal社製ホモポリプロピレン3200(重量平均分子量9万)、スチレン−マレイン酸共重合体のエステルとしてスチレン−マレイン酸共重合体高級アルコールエステル(Atofina社製の上記SMAと試薬レベルのベヘニルアルコールとの生成物)、乳化剤としてエルカ酸(日本油脂株式会社製脂肪酸)、S−215(商品名、日本油脂株式会社製のステアリルアルコール15モルEO付加物)、水酸化カリウム(試薬レベル)を加え、MD−353D、NAA−34、S−220、U−108を用いなかったこと、及び配合割合を第1表に示す割合としたこと以外、実施例1と同様にして水性エマルジョンを製造した。

上記実施例1〜4で製造された水性エマルジョンを観察し、評価した。観察結果を第2表に示す。上記実施例1〜4で得られた水性エマルジョンは、いずれも扁平状ペレットや繊維状等の残留物がなく、安定であった。しかしながら、比較例1〜8はいずれも乳化といえる段階ではなかった。

比較例1
容積3.5リットル攪拌機付き圧力容器にポリオレフィンとしてG3003(商品名、Eastman chemical社製の無水マレイン酸変性高分子量ホモポリマー)、乳化剤としてペレテックス2920H(商品名、ミヨシ油脂株式会社製のオレイルアルコール5モルEO付加物)、ペレテックス2925H(商品名、ミヨシ油脂株式会社製のオレイルアルコール10モルEO付加物)、S−215(商品名、日本油脂株式会社製のステアリルアルコール15モルEO付加物)、及びNAA−34(商品名、日本油脂株式会社製の精製オレイン酸)、塩基として水酸化カリウム(試薬レベル)及びモルホリン(試薬レベル)、及び水を、第3表の配合割合でもって一括して加えた。圧力容器を密封して樹脂融点よりも10℃以上高い170℃まで加熱した。170℃まで加熱した後、温度170℃を維持しながら2000rpmの回転速度でもって20分間高速攪拌した。攪拌後、低速攪拌に切り替え、40℃まで水冷して水性エマルジョンを製造した。
比較例2
配合割合を第3表に示す割合にしたこと以外、比較例1と同様にして水性エマルジョンを製造した。
比較例3
さらに、乳化剤としてNAA−222S(商品名、日本油脂株式会社製の精製ベヘニン酸)を加えたこと、及び配合割合を第3表に示す割合としたこと以外、比較例1と同様にして水性エマルジョンを製造した。
比較例4
さらに、乳化剤としてS−220(商品名、日本油脂株式会社製のステアリルアルコール20モルEO付加物)を加え、S215を用いなかったこと、及び配合割合を第3表に示す割合としたこと以外、比較例3と同様にして水性エマルジョンを製造した。
比較例5
さらに、E−43(商品名、Eastman chemical社製の無水マレイン酸変性低分子量ホモポリプロピレン)を加えたこと、及び配合割合を第3表に示す割合としたこと以外、比較例4と同様にして水性エマルジョンを製造した。

比較例6
容積3.5リットル攪拌機付き圧力容器にポリオレフィンとして無水マレイン酸変性高分子量ポリプロピレン(商品名MD−353D、Dupont社製)、乳化剤としてペレテックス2920H(商品名、ミヨシ油脂株式会社製のオレイルアルコール5モルEO付加物)、ペレテックス2925H(商品名、ミヨシ油脂株式会社製のオレイルアルコール10モルEO付加物)、S−220(商品名、日本油脂株式会社製のステアリルアルコール20モルEO付加物)、NAA−34(商品名、日本油脂株式会社製の精製オレイン酸)、及びNAA−222S(商品名、日本油脂株式会社製の精製ベヘニン酸)、塩基として水酸化カリウム(試薬レベル)及びモルホリン(試薬レベル)、及び水を、第4表の配合割合でもって一括して加えた。圧力容器を密封して樹脂融点よりも10℃以上高い170℃まで加熱した。170℃まで加熱した後、温度170℃を維持しながら2000rpmの回転速度でもって20分間高速攪拌した。攪拌後、低速攪拌に切り替え、40℃まで水冷して水性エマルジョンを製造した。
比較例7
さらに、無水マレイン酸変性低分子量ポリプロピレン(商品名E−43、Eastman社製)を加え、ペレテックス2920H及びペレテックス2925Hを用いなかったこと、及び配合割合を第4表に示す割合としたこと以外、比較例6と同様にして水性エマルジョンを製造した。
比較例8
さらに、ペレテックス2937J(商品名、ミヨシ油脂株式会社製のオレイルアルコール22モルEO付加物)を加え、S220を用いなかったこと、及び配合割合を第4表に示す割合としたこと以外、比較例7と同様にして水性エマルジョンを製造した。

上記比較例で製造された水性エマルジョンを観察し、評価した。観察結果を第5表に示す。比較例5、8については、製造過程において、ポリオレフィンの熱変形物(例えば扁平状ペレット又は繊維状物等)の生成、脂肪酸の増加、長鎖脂肪酸の付加によって乳白度が増加して、乳化が部分的に生じていた。比較例1〜4、6、7については、いずれも扁平状ペレット又は糸状体からなるペースト又は高粘度液であった。しかしながら、比較例1〜8はいずれも乳化といえる段階ではなかった。

【産業上の利用可能性】
本発明により、集束性及び密着性に優れた高分子量ポリオレフィンの水性エマルジョン及びその水性エマルジョンを工業的有利に製造できる製造方法を提供できる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量2万以上のポリオレフィンのエマルジョンの製造方法において、スチレン−無水マレイン酸共重合体又は/及びスチレン−マレイン酸共重合体のエステルを高分子分散剤として使用することを特徴とする水性エマルジョンの製造方法。
【請求項2】
重量平均分子量2万以上のポリオレフィン、スチレン−無水マレイン酸共重合体又は/及びスチレン−マレイン酸共重合体のエステル、乳化剤、塩基並びに水を重量平均分子量2万以上のポリオレフィンの融点以上に加熱し、混合することを特徴とする水性エマルジョンの製造方法。
【請求項3】
重量平均分子量2万以上のポリオレフィン、スチレン−無水マレイン酸共重合体又は/及びスチレン−マレイン酸共重合体のエステル、乳化剤、塩基並びに水とともに重量平均分子量1000〜20000の低分子量酸変性ポリプロピレンを重量平均分子量2万以上のポリオレフィンの融点以上に加熱し、混合することを特徴とする請求の範囲第2項に記載の水性エマルジョンの製造方法。
【請求項4】
加熱及び混合を密封系で行うことを特徴とする請求の範囲第2項又は第3項に記載の水性エマルジョンの製造方法。
【請求項5】
重量平均分子量2万以上のポリオレフィン、スチレン−無水マレイン酸共重合体又は/及びスチレン−マレイン酸共重合体のエステル並びに水を含有することを特徴とする水性エマルジョン。
【請求項6】
さらに重量平均分子量1000〜20000の低分子量酸変性ポリプロピレンを含有することを特徴とする請求の範囲第5項に記載の水性エマルジョン。
【請求項7】
請求の範囲第5項又は第6項に記載の水性エマルジョンからなるコーティング液。
【請求項8】
ガラス繊維用集束剤であることを特徴とする請求の範囲第7項に記載のコーティング液。

【国際公開番号】WO2004/074353
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【発行日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502772(P2005−502772)
【国際出願番号】PCT/JP2004/001943
【国際出願日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【出願人】(503071048)丸芳化成品株式会社 (1)
【Fターム(参考)】