説明

水性ポリマー分散液の製造方法

第一の反応段階における水性媒体中で、アミノカルボン酸化合物を、加水分解酵素および分散剤ならびに場合によりエチレン性不飽和モノマーおよび/または水中でわずかに可溶性の有機溶剤の存在下に、ポリアミドへと反応させ、かつこれに引き続き該ポリアミドの存在下に第二の反応段階において、エチレン性不飽和モノマーをラジカル重合することを特徴とする、水性ポリマー分散液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、第一の反応段階において水性媒体中で、
a)アミノカルボン酸化合物A
を、
b)加水分解酵素Bおよび
c)分散剤C
ならびに場合により
d)エチレン性不飽和モノマーDおよび/または
e)水中でわずかに可溶性の有機溶剤E
の存在下に、ポリアミドへと反応させ、かつこれに引き続き該ポリアミドの存在下に第二の反応段階において、
f)エチレン性不飽和モノマーDをラジカル重合する
ことを特徴とする、水性ポリマー分散液の製造方法である。
【0002】
本発明の対象は、本発明による方法により得られた水性ポリマー分散液、該分散液から得られるポリマー粉末ならびにその使用でもある。
【0003】
水性ポリマー分散液を製造する方法は一般に公知である。この場合、製造は通常、有機アミノカルボン酸化合物を、ポリアミド化合物へと反応させるように構成して行う。次いでこのポリアミド化合物をその後の工程で通常まずポリアミド溶融液とし、該溶融液を次いで有機溶剤および/または分散剤を用いて種々の方法により水性媒体中に分散させて、いわゆる二次分散液を形成する。溶剤を使用する場合、溶剤は分散工程に引き続き、ふたたび留去しなくてはならない(これに関してはたとえばDE−A1028328、US−A2,951,054、US−A3,130,181、US−A4,886,844、US−A5,236,996、US−B6,777,488、WO97/47686またはWO98/44062を参照のこと)。出願人によりドイツ特許商標庁に出願番号DE102004058073.1で提出された特許出願によれば、アミノカルボン酸化合物から出発して水性ポリマー分散液を直接、加水分解酵素による触媒反応によって製造することが開示されている。
【0004】
公知の方法により得られる水性ポリアミド分散液もしくはそのポリアミド自体は、多くの適用において有利な特性を有しているが、しかしその際、しばしばさらに最適化する必要が生じる。
【0005】
本発明の根底には、ポリアミド化合物をベースとする新規の水性ポリマー分散液の製造方法を提供するという課題が存在していた。
【0006】
意外なことに、上記課題は、冒頭に定義した方法によって解決された。
【0007】
アミノカルボン酸化合物Aとして、アミノ基およびカルボキシ基を遊離の、または誘導体の形で有する全ての有機化合物が考えられるが、しかし特に、C2〜C30−アミノカルボン酸、前記のアミノカルボン酸のC1〜C5−アルキルエステル、相応するC3〜C15−ラクタム化合物、C2〜C30−アミノカルボン酸アミドまたはC2〜C30−アミノカルボン酸ニトリルが考えられる。たとえば遊離のC2〜C30−アミノカルボン酸に関しては、天然由来のアミノカルボン酸、たとえばバリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、プロリン、セリン、チロシン、アスパラギンまたはグルタミンならびに3−アミノプロピオン酸、4−アミノ酪酸、5−アミノ吉草酸、6−アミノカプロン酸、7−アミノエナント酸、8−アミノカプリル酸、9−アミノペラルゴン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノラウリン酸、13−アミノトリデカン酸、14−アミノテトラデカン酸または15−アミノペンタデカン酸が例として挙げられる。前記のアミノカルボン酸のC1〜C5−アルキルエステルに関して、3−アミノプロピオン酸、4−アミノ酪酸、5−アミノ吉草酸、6−アミノカプロン酸、7−アミノエナント酸、8−アミノカプリル酸、9−アミノペラルゴン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノラウリン酸、13−アミノトリデカン酸、14−アミノテトラデカン酸または15−アミノペンタデカン酸のメチルエステルならびにエチルエステルが例として挙げられる。C3〜C15−ラクタム化合物に関して、β−プロピオラクタム、γ−ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、7−エナント酸ラクタム、8−カプリロラクタム、9−ペラルゴラクタム、10−カプリンラクタム、11−ウンデカン酸ラクタム、ω−ラウリンラクタム、13−トリデカン酸ラクタム、14−テトラデカン酸ラクタムまたは15−ペンタデカン酸ラクタムが例として挙げられる。アミノカルボン酸アミドのための例として、3−アミノプロピオン酸、4−アミノ酪酸、5−アミノ吉草酸、6−アミノカプロン酸、7−アミノエナント酸、8−アミノカプリル酸、9−アミノペラルゴン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノラウリン酸、13−アミノトリデカン酸、14−アミノテトラデカン酸または15−アミノペンタデカン酸のアミドが、アミノカルボン酸ニトリルのための例として、3−アミノプロピオン酸、4−アミノ酪酸、5−アミノ吉草酸、6−アミノカプロン酸、7−アミノエナント酸、8−アミノカプリル酸、9−アミノペラルゴン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノラウリン酸、13−アミノトリデカン酸、14−アミノテトラデカン酸または15−アミノペンタデカンニトリルが挙げられる。しかし有利であるのはC3〜C15−ラクタム化合物であり、中でも特にε−カプロラクタムならびにω−ラウリンラクタムである。特に有利であるのはε−カプロラクタムである。当然のことながら、前記のアミノカルボン酸化合物Aの混合物も使用することができる。
【0008】
方法にとって重要なことは、アミノカルボン酸化合物Aの反応を水性媒体中で、加水分解酵素Bの存在下に行うことである。加水分解酵素Bは、当業者に周知の酵素群である。使用されるアミノカルボン酸化合物Aの種類に依存して、加水分解酵素Bは、遊離の、もしくは誘導体の形のアミノ基およびカルボキシ基の重縮合反応が、たとえば水(遊離のアミノカルボン酸)、アルコール(アミノカルボン酸のエステル)またはハロゲン化水素(アミノカルボン酸のハロゲン化物)の分離下に、および/またはたとえば前記のC3〜C15−ラクタム化合物の開環およびその後の重縮合下に触媒されることが可能であるように選択する。
【0009】
加水分解酵素B[EC3.x.x.x]として、たとえばエステラーゼ[EC3.1.x.x]、プロテアーゼ[EC3.4.x.x]および/またはペプチド結合であるその他のC−N−結合と反応する加水分解酵素が特に適切である。本発明によれば有利には特にカルボキシルエステラーゼ[EC3.1.1.1]および/またはリパーゼ[EC3.1.1.3]を使用する。このための例は、アクロモバクターsp.、アスペルギルスsp.、カンディダsp.、カンディダ・アンタクティカ、ムコールsp.、ペニシリウムsp.、ゲオトリクムsp.、リゾプスsp.、バークホルデリアsp.、シュードモナスsp.、シュードモナス・セパシア、テルモミセスsp.、ブタ膵臓またはコムギ胚芽からのリパーゼ、ならびにバシルスsp.、シュードモナスsp.、バークホルデリアsp.、ムコールsp.、サッカロミセスsp.、リゾプスsp.、テルモアナエロビウムsp.、ブタ肝臓またはウマ肝臓からのカルボキシルエステラーゼである。当然のことながら、個々のヒドロラーゼBまたは種々のヒドロラーゼBの混合物を使用することも可能である。ヒドロラーゼBを遊離の、および/または固定した形で使用することも可能である。
【0010】
有利にはシュードモナス・セパシア、バークホルデリア・プラタリまたはカンディダ・アンタクティカからのリパーゼを、遊離の、および/または固定した形で使用する(たとえばNovozymes A/S(デンマーク)のNovozym(登録商標)435)。
【0011】
使用される加水分解酵素Bの全量は通常、そのつどアミノカルボン酸化合物Aの全量に対して、0.001〜40質量%、しばしば0.1〜15質量%および有利には0.5〜8質量%である。
【0012】
本発明による方法により使用される分散剤Cは、原則として乳化剤および/または保護コロイドであってよい。その際、当然のことながら、乳化剤および/または保護コロイドは、これらが特に使用される加水分解酵素Bと相容性であり、かつ酵素が失活しないように選択する。どの乳化剤および/または保護コロイドを特定の加水分解酵素Bにおいて使用することができるかは、当業者に周知であるか、または当業者が簡単な前試験を行って確認することができる。
【0013】
適切な保護コロイドはたとえば、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸のアルカリ金属塩、ゼラチン誘導体またはアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および/または4−スチレンスルホン酸を含有するコポリマーおよびこれらのアルカリ金属塩あるいはまたN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アミノ基を有するアクリレート、メタクリレート、アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミドを含有するホモポリマーおよびコポリマーである。その他の適切な保護コロイドの詳細な説明は、Houben−Weyl、Methoden der organischen Chemie、第XIV/1巻、Makromolekulare Stoffe、Georg−Thieme−Verlag、Stuttgart、1961年、第411〜420頁に記載されている。
【0014】
当然のことながら、保護コロイドおよび/または乳化剤からなる混合物を使用することもできる。分散剤としてしばしばもっぱら、その相対的な分子量が保護コロイドと異なって通常1000より小さい乳化剤を使用する。分散剤はアニオン性、カチオン性もしくは非イオン性であってよい。当然のことながら界面活性物質の混合物を使用する場合には、個々の成分が相互に相容性でなくてはならず、これは疑わしい場合にはいくつかの前試験に基づいて確認することができる。一般にアニオン性乳化剤は相互に、および非イオン性乳化剤と相容性である。同じことがカチオン性乳化剤に関しても該当し、他方、アニオン性およびカチオン性乳化剤は多くの場合、相互に相容性ではない。適切な乳化剤の概要は、Houben−Weyl、Methoden der organischen Chemie、第XIV/1巻、Makromolekulare Stoffe、Georg−Thieme−Verlag、Stuttgart、1961、第192〜208頁に記載されている。
【0015】
しかし本発明によれば、分散剤Cとして特に乳化剤を使用する。
【0016】
通常の非イオン性乳化剤はたとえばエトキシ化されたモノアルキルフェノール、ジアルキルフェノールおよびトリアルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)ならびにエトキシ化された脂肪アルコール(EO度:3〜80、アルキル基:C8〜C36)である。このための例は、BASF AG社のLutensol(登録商標)A−商標(C1214脂肪アルコールエトキシレート、EO度:3〜8)、Lutensol(登録商標)AO−商標(C1315−オキソアルコールエトキシレート、EO度:3〜30)、Lutensol(登録商標)AT−商標(C1618−脂肪アルコールエトキシレート、EO度:11〜80)、Lutensol(登録商標)ON−商標(C10−オキソアルコールエトキシレート、EO度:3〜11)およびLutensol(登録商標)TO−商標(C13−オキソアルコールエトキシレート、EO度:3〜20)である。
【0017】
通常のアニオン性乳化剤はたとえばアルキルスルフェート(アルキル基:C8〜C12)、エトキシ化されたアルカノール(EO度:4〜30、アルキル基:C12〜C18)およびエトキシ化されたアルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)の硫酸半エステル、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)およびアルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9〜C18)のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩である。
【0018】
その他のアニオン性乳化剤として、さらに一般式(I)
【化1】

[式中、R1およびR2は、H原子またはC4〜C24−アルキルを表し、かつ同時にH原子であることはなく、かつM1およびM2は、アルカリ金属イオンおよび/またはアンモニウムイオンであってよい]の化合物が有利であることは判明した。一般式(I)中で、R1およびR2は、有利には6〜18個の炭素原子を有する、特に6個、12個および16個の炭素原子を有する線状もしくは分枝鎖状のアルキル基であるか、または水素であり、その際、R1およびR2は両方が同時にH原子であることはない。M1およびM2は、有利にはナトリウム、カリウムまたはアンモニウムであり、その際、ナトリウムは特に有利である。特に有利であるのは、式中でM1およびM2がナトリウムであり、R1が12個の炭素原子を有する分枝鎖状のアルキル基であり、かつR2がH原子であるか、またはR1である化合物(I)である。しばしばモノアルキル化された生成物50〜90質量%の割合を有する工業用混合物、たとえばDowfax(登録商標)2A1(Dow Chemical Companyの商標)を使用する。化合物(I)はたとえばUS−A4,269,749から一般に公知であり、かつ市販されている。
【0019】
適切なカチオン活性乳化剤は通常、C6〜C18−アルキル基、C6〜C18−アルキルアリール基または複素環式の基を有する第一級、第二級、第三級または第四級アンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、ピリミジニウム塩、イミダゾリニウム塩、オキサゾリニウム塩、モルホリニウム塩、チアゾリニウム塩ならびにアミンオキシドの塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、トロピリウム塩、スルホニウム塩およびホスホニウム塩である。たとえばドデシルアンモニウム酢酸塩または相応する硫酸塩、種々の2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルパラフィン酸エステルの硫酸塩または酢酸塩、N−セチルピリジニウムスルフェート、N−ラウリルピリジニウムスルフェートならびにN−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムスルフェート、N−ドデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウムスルフェート、N−オクチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムスルフェート、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムスルフェートならびにジェミニ界面活性剤N,N′−(ラウリルジメチル)エチレンジアミンジスルフェート、エトキシ化獣脂アルキル−N−メチルアンモニウムスルフェートおよびエトキシ化オレイルアミン(たとえばBASF AG社のUniperol(登録商標)AC、約12のエチレンオキシド単位)である。多数のその他の例は、H.Stache、Tensid−Taschenbuch、Carl−Hanser−Verlag、Muenchen、Wien、1981年およびMcCutcheon’s、Emulsifiers & Detergents、MC Publishing Company、Glen Rock、1989年に記載されている。アニオン性対イオン基ができる限り求核性である場合に有利であり、たとえば過塩素酸、硫酸、リン酸、硝酸およびカルボン酸、たとえば酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸、安息香酸、ならびに有機スルホン酸の共役アニオン、たとえばメチルスルホン酸、トリフルオロメチルスルホン酸およびパラ−トルエンスルホン酸、さらにテトラフルオロホウ酸、テトラフェニルホウ酸、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸、テトラキス[ビス(3,5−トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロヒ酸またはヘキサフルオロアンチモン酸のイオンが有利である。
【0020】
分散剤Cとして有利に使用される乳化剤は、第一の反応段階で有利にそのつどアミノカルボン酸化合物Aの全量に対して、0.005〜20質量%、有利には0.01〜15質量%、特に0.1〜10質量%の全量で使用する。
【0021】
分散剤Cとしてさらに、または乳化剤の代わりに使用される保護コロイドの全量は、そのつどアミノカルボン酸化合物Aの全量に対して、第一の反応段階でしばしば0.1〜10質量%であり、かつ有利には0.2〜7質量%である。
【0022】
しかし有利には非イオン性乳化剤を分散剤Cとして使用する。
【0023】
本発明によれば、第一の反応段階で場合によりさらにエチレン性不飽和モノマーDおよび/または水中でわずかに可溶性の有機溶剤Eを使用することができる。
【0024】
エチレン性不飽和モノマーDとして、原則として全てのラジカル重合可能なエチレン性不飽和化合物が考えられる。モノマーDとして、特に容易な方法でラジカル重合可能なエチレン性不飽和モノマーが考えられ、たとえばエチレン、ビニル芳香族モノマー、たとえばスチレン、α−メチルスチレン、o−クロロスチレンまたはビニルトルエン、ビニルアルコールと1〜18個の炭素原子を有するモノカルボン酸とからなるエステル、たとえばビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニル−n−ブチレート、ビニルラウレートおよびビニルステアレート、有利に3〜6個の炭素原子を有するα,β−モノエチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸、たとえば特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸と、一般に1〜12個、有利に1〜8個および特に1〜4個の炭素原子を有するアルカノールとからなるエステル、たとえば特にアクリル酸およびメタクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステルおよび2−エチルヘキシルエステル、マレイン酸ジメチルエステルまたはマレイン酸−ジ−n−ブチルエステル、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸のニトリル、たとえばアクリルニトリル、ならびにC4〜C8−共役ジエン、たとえば1,3−ブタジエンおよびイソプレンである。当然のことながら前記のモノマーDの混合物を使用することもできる。前記のモノマーDは、通常、主モノマーを形成し、これは本発明による方法により重合されるモノマーDの全量に対して、合計して通常50質量%以上、有利には80質量%以上、または好ましくは90質量%の割合である。通常、これらのモノマーは水中で標準条件下[20℃、1気圧(絶対)]に中程度〜わずかな溶解度を有するのみである。
【0025】
通常、エチレン性不飽和モノマーDの重合により得られるポリマーの内部強度を高める別のモノマーDは通常、少なくとも1つのエポキシ基、ヒドロキシ基、N−メチロール基またはカルボニル基を有するか、または少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を有する。このための例は、2つのビニル基を有するモノマー、2つのビニリデン基を有するモノマー、ならびに2つのアルケニル基を有するモノマーである。特に有利であるのはこの場合、2価のアルコールと、α,β−モノエチレン性不飽和モノカルボン酸のジエステルであり、なかでもアクリル酸およびメタクリル酸のジエステルが有利である。このような2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーのための例は、アルキレングリコールジアクリレートおよびアルキレングリコールジメタクリレート、たとえばエチレングリコールジアクリレート、1,2−プロピレングリコールジアクリレート、1,3−プロピレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレートおよびエチレングリコールジメタクリレート、1,2−プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレートならびにジビニルベンゼン、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、メチレンビスアクリルアミド、シクロペンタジエニルアクリレート、トリアリルシアヌレートまたはトリアリルイソシアヌレートである。この関連で特に重要であるのは、メタクリル酸およびアクリル酸のC1〜C8−ヒドロキシアルキルエステル、たとえばn−ヒドロキシエチル−、n−ヒドロキシプロピル−またはn−ヒドロキシブチルアクリレートおよび−メタクリレートならびに、ジアセトンアクリルアミドおよびアセチルアセトキシエチルアクリレートもしくは−メタクリレートのような化合物である。本発明によれば、前記のモノマーを、エチレン性不飽和モノマーDの全量に対して、5質量%までの量で、しばしば0.1〜3質量%および有利には0.5〜2質量%の量で使用する。
【0026】
モノマーDとして、シロキサン基を有するエチレン性不飽和モノマー、たとえばビニルトリアルコキシシラン、たとえばビニルトリメトキシシラン、アルキルビニルジアルコキシシラン、アクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、またはメタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、たとえばアクリルオキシエチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、アクリルオキシプロピルトリメトキシシランまたはメタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを使用することができる。これらのモノマーは、そのつどモノマーDの全量に対して、5質量%までの全量で、しばしば0.01〜3質量%および有利には0.05〜1質量%の量で使用する。
【0027】
さらに、モノマーDとして付加的に、少なくとも1つの酸基を有するか、および/または相応するそのアニオンを有するエチレン性不飽和モノマーDS、または少なくとも1つのアミノ基、アミド基、ウレイド基またはN−ヘテロ環式基および/または窒素でプロトン化されているか、もしくはアルキル化されているこれらのアンモニウム誘導体を含有するエチレン性不飽和モノマーDAを使用することができる。重合すべきモノマーDの全量に対して、モノマーDSもしくはモノマーDAの量は、10質量%まで、しばしば0.1〜7質量%までおよびしばしば0.2〜5質量%までの量である。
【0028】
モノマーDSとして、少なくとも1つの酸基を有するエチレン性不飽和モノマーを使用する。その際、酸基はたとえばカルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基および/またはホスホン酸基であってよい。このようなモノマーDSのための例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸およびビニルホスホン酸ならびにn−ヒドロキシアルキルアクリレートおよびn−ヒドロキシアルキルメタクリレートのリン酸モノエステル、たとえばヒドロキシエチルアクリレート、n−ヒドロキシプロピルアクリレート、n−ヒドロキシブチルアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレート、n−ヒドロキシプロピルメタクリレートまたはn−ヒドロキシブチルメタクリレートのリン酸モノエステルである。本発明によれば、あるいはまた、前記の少なくとも1つの酸基を有するエチレン性不飽和モノマーのアンモニウム塩およびアルカリ金属塩を使用することができる。アルカリ金属として、特に有利であるのはナトリウムおよびカリウムである。このための例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸およびビニルホスホン酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩、ならびにヒドロキシエチルアクリレート、n−ヒドロキシプロピルアクリレート、n−ヒドロキシブチルアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレート、n−ヒドロキシプロピルメタクリレートまたはn−ヒドロキシブチルメタクリレートのリン酸モノエステルのモノ−およびジ−アンモニウム塩、−ナトリウム塩および−カリウム塩である。
【0029】
有利にはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシスルホン酸、ビニルスルホン酸およびビニルホスホン酸をモノマーDSとして使用する。
【0030】
モノマーDAとして、少なくとも1つのアミノ基、アミド基、ウレイド基またはN−ヘテロ環式基および/または窒素でプロトン化されているか、もしくはアルキル化されているこれらのアンモニウム誘導体を含有するエチレン性不飽和モノマーを使用する。
【0031】
少なくとも1つのアミノ基を有するモノマーDAのための例は、2−アミノエチルアクリレート、2−アミノエチルメタクリレート、3−アミノプロピルアクリレート、3−アミノプロピルメタクリレート、4−アミノ−n−ブチルアクリレート、4−アミノ−n−ブチルメタクリレート、2−(N−メチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−メチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−エチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−エチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−n−プロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−n−プロピルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−イソ−プロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−イソ−プロピルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−t−ブチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−t−ブチルアミノ)エチルメタクリレート(たとえばElf Atochem社から市販されているNorsocryl(登録商標)TBAEMA)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート(たとえばElf Atochem社から市販されているNorsocryl(登録商標)A−DAME)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(たとえばElf Atochem社から市販されているNorsocryl(登録商標)MADAME)、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N,N−ジ−イソ−プロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジ−イソ−プロピルアミノ)エチルメタクリレート、3−(N−メチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−メチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−エチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−エチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−n−プロピルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−n−プロピルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−イソ−プロピルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−イソ−プロピルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−t−ブチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−t−ブチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジ−イソプロピルアミノ)プロピルアクリレートおよび3−(N,N−ジ−イソ−プロピルアミノ)プロピルメタクリレートである。
【0032】
少なくとも1つのアミド基を有するモノマーDAのための例は、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソ−プロピルアクリルアミド、N−イソ−プロピルメタクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルメタクリルアミド、N,N−ジ−イソ−プロピルアクリルアミド、N,N−ジ−イソ−プロピルメタクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルアクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルメタクリルアミド、N−(3−N′,N′−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N′−メチレンビスアクリルアミド、N−(ジフェニルメチル)アクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、あるいはまたN−ビニルピロリドンおよびN−ビニルカプロラクタムである。
【0033】
少なくとも1つのウレイド基を有するモノマーDAのための例は、N,N′−ジビニルエチレン尿素および2−(1−イミダゾリン−2−オンイル)エチルメタクリレート(たとえばElf Atochem社からNorsocry(登録商標)100として市販されている)。
【0034】
少なくとも1つのN−ヘテロ環式基を有するモノマーDAのための例は、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾールおよびN−ビニルカルバゾールである。
【0035】
有利にはモノマーDAとして、以下の化合物を使用する:2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルイミダゾール、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−t−ブチルアミノ)エチルメタクリレート、N−(3−N′,N′−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミドおよび2−(1−イミダゾリン−2−オンイル)エチルメタクリレート。
【0036】
水性の反応媒体のpH値に依存して、前記の窒素含有モノマーDAの一部または全量が、窒素でプロトン化された第4級アンモニウムの形で存在していてもよい。
【0037】
窒素で第4級アルキルアンモニウム構造を有するモノマーDAとして、たとえば2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド(たとえばElf Atochem社のNorsocryl(登録商標)ADAMQUAT MC80として市販されているもの)、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド(たとえばElf Atochem社のNorsocryl(登録商標)MADQUAT MC75として市販されているもの)、2−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルメタクリレート、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド(たとえばElf Atochem社からNorsocryl(登録商標)ADAMQUAT BZ80として市販されているもの)、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド(たとえばElf Atochem社からNorsocryl(登録商標)MADQUAT BZ75として市販されているもの)2−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド、3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリド、3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリドおよび3−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリドが挙げられる。当然のことながら、前記の塩化物の代わりに相応する臭化物および硫酸塩も使用することができる。
【0038】
有利には、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリドおよび2−(ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリドを使用する。
【0039】
当然のことながら、前記のエチレン性不飽和モノマーDSもしくはDAの混合物を使用することもできる。
【0040】
本発明によれば有利にはエチレン性不飽和モノマーDとして、
アクリル酸および/またはメタクリル酸と、1〜12個の炭素原子を有するアルカノールおよび/またはスチレンとのエステル 50〜99.9質量%、または
スチレンおよびブタジエン 50〜99.9質量%、または
塩化ビニルおよび/または塩化ビニリデン 50〜99.9質量%、または
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、吉草酸のビニルエステル、長鎖脂肪酸のビニルエステルおよび/またはエチレン 40〜99.9質量%
を含有するモノマー混合物を使用する。
【0041】
本発明によれば、わずかな水溶性を有するエチレン性不飽和モノマーDまたはモノマーDの混合物が有利である。わずかな水溶性とはこの出願の範囲内では、モノマーD、モノマーDからなる混合物または溶剤Eが、脱塩水中20℃および1気圧(絶対)で、50g/l以下、有利には10g/l以下および好ましくは5g/l以下の溶解度を有すると理解すべきである。
【0042】
第一の反応段階で場合により使用されるエチレン性不飽和モノマーDの量は、そのつどモノマーDの全量に対して、0〜100質量%、しばしば30〜90質量%および有利には40〜70質量%である。
【0043】
本発明による方法のために適切な、水中でわずかに可溶性の溶剤Eは、5〜30個の炭素原子を有する液状の脂肪族および芳香族炭化水素、たとえばn−ペンタンおよび異性体、シクロペンタン、n−ヘキサンおよび異性体、シクロヘキサン、n−ヘプタンおよび異性体、n−オクタンおよび異性体、n−ノナンおよび異性体、n−デカンおよび異性体、n−ドデカンおよび異性体、n−テトラデカンおよび異性体、n−ヘキサデカンおよび異性体、n−オクタデカンおよび異性体、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クメン、o−、m−もしくはp−キシレン、メシチレン、ならびに一般に30〜250℃の沸点範囲を有する炭化水素混合物である。同様にヒドロキシ化合物、たとえば10〜28個の炭素原子を有する飽和および不飽和の脂肪アルコール、たとえばn−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノールおよびこれらの異性体またはセチルアルコール、エステル、たとえば酸部分に10〜28個の炭素原子を有し、かつアルコール部分に1〜10個の炭素原子を有する脂肪酸エステル、またはカルボン酸部分に1〜10個の炭素原子を有し、かつアルコール部分に10〜28個の炭素原子を有するカルボン酸と脂肪アルコールとからなるエステルが使用可能である。当然のことながら、前記の溶剤Eの混合物を使用することも可能である。
【0044】
場合により使用される溶剤Eの全量は、そのつど第一の反応段階における水の全量に対して、60質量%まで、しばしば0.1〜40質量%および有利には0.5〜10質量%である。
【0045】
エチレン性不飽和モノマーDおよび/または溶剤Eおよび第一の反応段階におけるこれらの量は、水性媒体中、第一の反応段階の反応条件下でのエチレン性不飽和モノマーDおよび/または溶剤Eの溶解度が、そのつど第一の反応段階で場合により使用されるモノマーDおよび/または溶剤Eの全量に対して50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下または10質量%以下であり、ひいては、水性媒体中で別々の相として存在しているように選択すると有利である。有利には第一の反応段階をモノマーDおよび/または溶剤Eの存在下で、しかし特に有利にはモノマーDの存在下および溶剤Eの不存在下で行う。
【0046】
モノマーDおよび/または溶剤Eは、第一の反応段階で特に、アミノカルボン酸化合物Aが水性媒体中、第一の反応段階の反応条件下に良好な溶解度を有する、つまりその溶解度が50g/lより大もしくは100g/l以上である場合に使用する。
【0047】
本発明による方法は、第一の反応段階で、アミノカルボン酸化合物Aならびに場合によりエチレン性不飽和モノマーDおよび/または場合により溶剤Eの一部の量が、水性媒体中に、平均液滴直径1000nm以下を有する分散相(いわゆる水中油型ミニエマルションまたは略してミニエマルション)として存在している場合に有利に進行する。
【0048】
特に有利には本発明による方法を、第一の反応段階で、まずアミノカルボン酸化合物A、分散剤Cならびに場合によりエチレン性不飽和モノマーDおよび/または溶剤Eの少なくとも一部の量を、水の少なくとも一部の量に導入し、その後、適切な処置によりアミノカルボン酸化合物A、ならびに場合によりエチレン性不飽和モノマーDおよび/または場合により溶剤Eを含有する、1000nm以下の平均液滴直径を有する分散相(ミニエマルション)が形成され、かつこれに引き続き、水性媒体に反応温度で、加水分解酵素Bの全量ならびに場合により残りのアミノカルボン酸化合物Aおよび溶剤Eの残留量を添加するように構成して行う。しばしば、アミノカルボン酸化合物A、分散剤Cならびに場合によりエチレン性不飽和モノマーDおよび/または溶剤Eの50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上または全量を、水の50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上または全量に導入し、引き続き1000nmの液滴直径を有する分散相を製造し、かつこれに引き続き、水性媒体に反応温度で加水分解酵素Bの全量ならびに場合により残りのアミノカルボン酸化合物Aおよび場合により溶剤Eの残留量を添加する。その際、加水分解酵素Bの全量ならびに場合により残りの溶剤Eの残留量を、水性反応媒体に別々に、または一緒に、一度に不連続的に、数回に分けて不連続的に、ならびに同一もしくは異なった量流で連続的に添加することができる。
【0049】
しばしば第一の反応段階で、アミノカルボン酸化合物Aおよび場合により溶剤Eの全量ならびに分散剤Cの少なくとも一部の量を、水の少なくとも一部の量に導入し、かつ反応温度でミニエマルションが形成された後に、加水分解酵素Bの全量を、該水性反応媒体に添加する。
【0050】
本発明により有利に使用される水性ミニエマルションの分散相の液滴の平均的な大きさは、準弾性動的光散乱法の原理により測定することができる(自動補正機能のモノモード分析のいわゆる数平均液滴直径dz)。この出願の実施例ではこれに関して、Coulter Scientific Instruments社のCoulter N4 Plus Particle Analyserを使用した(1バール、25℃)。測定は希釈した水性ミニエマルションを用いて実施し、その非水性成分の含有率は、0.01質量%であった。その際、希釈は水を用いて実施し、これは予め水性ミニエマルション中に含有されているアミノカルボン酸化合物Aおよび/または水中でわずかに可溶性の有機溶剤Eにより飽和されていた。後者の措置は、希釈によって液滴直径の変化が起こることを防止するためである。
【0051】
本発明によれば、前記のミニエマルションに関してこのようにして確認したdzについての値は通常700nm以下、しばしば500nm以下である。本発明により有利にはdz範囲は100nm〜400nmもしくは100nm〜300nmである。通常、本発明により使用すべき水性ミニエマルションのdzは40nm以下である。
【0052】
水性マクロエマルションからの水性ミニエマルションの一般的な製造は、当業者に公知である(P.L.Tang、E.D.Sudol、C.A.SilebiおよびM.S.El−Aasserの、Journal of Applied Polymer Science、第43巻、第1059〜1066頁(1991)を参照のこと)。
【0053】
この目的のためにたとえば高圧ホモジナイザーを適用することができる。成分の微細な分散は、この装置中では、高い局所的なエネルギー入力により達成される。2つの変法がこれに関して特に有利であることが判明している。
【0054】
第一の変法では、水性マクロエマルションをフラスコポンプにより1000バールに圧縮し、かつ引き続き狭いスリットから放圧する。この作用はここで高い剪断力および圧力勾配とスリット中の空隙との相互作用に基づいている。この原理により機能する高圧ホモジナイザーのための1例は、Niro−Soavi高圧ホモジナイザーNS1001L Panda型である。
【0055】
第二の変法では、圧縮した水性マクロエマルションを、2つの向かい合ったノズルを介して混合室中に放圧する。微分散作用はここで特に混合室中の流体力学的な比率に依存する。このタイプのホモジナイザーの1例は、Microfluidics Corp.社のマイクロ流動化装置M120E型である。この高圧ホモジナイザー中で、水性マクロエマルションは、空気圧により運転されるフラスコポンプにより、1200気圧の圧力まで圧縮され、かついわゆる「相互作用チャンバ(interaction chamber)」を介して放圧される。この「相互作用チャンバ」中で、エマルション流はマイクロチャネルシステムにより2つの流に分割され、これらは180℃の角度で重なって案内される。この均質化方法により運転されるホモジナイザーのもう1つの例は、Nanojet Engineering GmbH社のNanojet Type Expoである。しかしNanojetの場合、固定されたチャネルシステムの代わりに、2つの均質化バルブが取り付けられており、これらは機械的にその位置を調節することができる。
【0056】
前記の原理以外に、均質化はまたたとえば超音波(たとえばBranson Sonifier II450)の適用によっても行うことができる。微分散は、この場合、キャビテーションメカニズムに基づいている。超音波を用いた均質化のためには基本的に、GB−A2250930およびUS−A5,108,654に記載されている装置が適切である。超音波領域で生じる水性ミニエマルションの品質はこの場合、導入される超音波の性能のみでなく、その他の要因、たとえば混合室中の超音波の強度の分布、乳化される物質の滞留時間、温度および物理的特性、たとえば靱性、界面張力および蒸気圧にも依存する。得られる液滴の大きさはこの場合、特に分散剤の濃度ならびに均質化の際に導入されるエネルギーに依存し、かつ従ってたとえば相応する均質化圧力の変更もしくは相応する超音波エネルギーにより適切に調整可能である。
【0057】
本発明により通常のマクロエマルションから超音波を用いて有利に使用される水性ミニエマルションを製造するために、先のドイツ国特許出願DE19756874に記載されている装置が特に有利であることが証明されている。これは、反応室または貫流反応路および反応室もしくは貫流反応路へ超音波を伝達するための少なくとも1の手段を有する装置であり、その際、超音波を伝達するための該手段は、全ての反応室もしくは貫流反応路が部分区間において超音波で均一に処理されうるように構成されている。この目的のために、超音波を伝達するための該手段の放射面は、実質的に反応室の表面積に相応するか、もしくは反応室が、貫流反応路の部分区間である場合には、実質的に該路の全ての幅にわたって拡張しており、放射面に対して実質的に垂直方向の反応室の深さは、超音波伝達手段の最大作用深さよりも小さいように構成されている。
【0058】
「反応室の深さ」という概念はここでは、実質的に超音波伝達手段の放射面と、反応室の床との間の間隔であると理解する。
【0059】
有利には反応室の深さは100mmまでである。有利には反応室の深さは、70mmを越えることなく、かつ特に有利には50mmを越えない。反応室は原則として、極めてわずかな深さを有していることができるが、しかしできる限りわずかな閉塞の危険および容易な洗浄性ならびに高い生成物処理量を鑑みて、実質的にたとえば高圧ホモジナイザーの場合、通常のギャップ高さよりも大きい反応室の深さが有利であり、かつ多くの場合は10mmである。反応室の深さは有利には、たとえば種々の深さでケーシング中に潜る超音波伝達手段によって、変更可能である。
【0060】
この装置の実施態様に応じて、超音波を伝達するための手段の放射面は実質的に反応室の表面積に相応する。この実施態様は、本発明により使用されるミニエマルションを回分式で製造するために役立つ。この装置を用いて超音波を全ての反応室に作用させることができる。反応室中には軸方向の音響放射圧によって、乱流が生じ、これは強力な横方向の混合をもたらす。
【0061】
第二の実施態様によれば、このような装置は、流通セルを有する。その際、該ケーシングは、供給部と排出部とを有する貫流反応路として構成されており、その際、反応室は貫流反応路の部分区間である。該路の幅は実質的に流れの方向に対して垂直に延びる路の長さである。この中で放射面は、流路の全幅を流れの方向に対して横向きに覆う。この幅に対して垂直方向の放射面の長さ、つまり流れの方向の放射面の長さは、超音波の作用範囲を規定する。この第一の実施態様の有利な変法によれば、貫流反応路は、実質的に方形の横断面を有する。方形の一辺において同様に相応する寸法を有する同様に方形の超音波伝達装置が組み込まれている場合、特に効果的で、均一な超音波処理が保証される。しかし超音波領域で支配的な乱流の流量に基づいて、たとえば円形の伝達手段を問題なく使用することもできる。さらに、単独の超音波伝達装置の代わりに、複数の別々の伝達手段を配置することもでき、これらは流れの方向で見ると、前後に接続されている。その際、放射面も、反応室の深さ、つまり放射面と、貫流路の底部との間の間隔は変化してもよい。
【0062】
特に有利であるのは、超音波伝達手段がソノトロード(Sonotrode)として構成されており、露出した放射面に対向するその端部は、超音波変換器と接続されている。超音波はたとえばリバース圧電効果の利用によって発生させることができる。その際、発生装置を用いて高周波の電気的な揺れ(通常10〜100kHz、有利には20〜40kHzの範囲)を発生させ、圧電変換器により同じ周波数の機械的な揺れに変換し、かつソノトロードを伝達部材として超音波処理すべき媒体に接続する。
【0063】
特に有利であるのは、ソノトロードが、軸方向に放射するλ/2(もしくはλ/2の倍数)の棒状の縦型発振器として構成されている。このようなソノトロードは、たとえばその揺れノットに備えられたフランジにより、ケーシングの開口部に固定することができる。これによりケーシング中へのソノトロードの導入は耐圧に構成することができるので、超音波処理は、反応室中で高めた圧力の下に実施することができる。有利にはソノトロードの揺れの振幅は制御可能である、つまりそのつど調節された揺れの振幅を、オンラインで検出し、かつ場合により自動的に後制御する。実際の揺れの振幅の検出は、たとえばソノトロードに設置された圧電変換器で、または後方に接続された評価電極による延性測定ストリップによって行うことができる。
【0064】
このような装置のもう1つの有利な実施態様によれば、反応室中に貫流および混合特性を改善するための構造部材が備えられている。このような構造部材はたとえば単独のそらせ板または種々の多孔質の物体であってよい。
【0065】
必要な場合には混合をさらに、付加的な攪拌装置によりさらに強力にすることができる。有利には反応室は温度調節が可能である。
【0066】
前記の実施態様から、第一の反応段階で本発明によれば、水性媒体中で反応条件下でのその溶解度は、記載した量で1000nm以下のモノマーおよび/または溶剤の液滴が別々の相として形成されるために十分に小さいエチレン性不飽和モノマーDおよび/または有機溶剤Eを使用することができることは明らかである。さらに、形成されたモノマーおよび/または溶剤の液滴の溶解能は、少なくとも部分量、しかし有利には主要量のアミノカルボン酸化合物Aが吸収されるために十分な大きさでなくてはならない。
【0067】
本発明による方法にとって、第一の反応段階でアミノカルボン酸化合物A以外に、ジアミン化合物F、ジカルボン酸化合物G、ジオール化合物H、ヒドロキシカルボン酸化合物I、アミノアルコール化合物Kおよび/または分子あたり少なくとも3のヒドロキシ基、第1級もしくは第2級アミノ基および/またはカルボキシ基を有する有機化合物Lを使用することができることが重要である。この場合に重要なことは、個々の化合物F、G、H、I、KおよびLの全量の合計が、そのつどアミノカルボン酸化合物Aの全量に対して、100質量%以下、有利には80質量%以下または60質量%以下、および特に有利には50質量%以下または40質量%以下もしくはしばしば0.1質量%以上もしくは1質量%以上およびしばしば5質量%以上であることである。
【0068】
ジアミン化合物Fとして、2つの第1級または第2級アミノ基を有する全ての有機ジアミン化合物が考えられ、その際、第1級アミノ基が有利である。この場合、2つのアミノ基を有する有機基本骨格は、C2〜C20−脂肪族、C3〜C20−環式脂肪族、芳香族または複素芳香族構造を有していてよい。2つの第1級アミノ基を有する化合物Fの例は、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、2−メチル−1,3−ジアミノプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン(ネオペンチルジアミン)、1,4−ジアミノブタン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1−メチル−1,4−ジアミノブタン、2−メチル−1,4−ジアミノブタン、2,2−ジメチル−1,4−ジアミノブタン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,2−ジアミノペンタン、1,3−ジアミノペンタン、1,4−ジアミノペンタン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、3−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2,2−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、2,3−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、2,4−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,2−ジアミノヘキサン、1,3−ジアミノヘキサン、1,4−ジアミノヘキサン、1,5−ジアミノヘキサン、2−メチル−1,5−ジアミノヘキサン、3−メチル−1,5−ジアミノヘキサン、2,2−ジメチル−1,5−ジアミノヘキサン、2,3−ジメチル−1,5−ジアミノヘキサン、3,3−ジメチル−1,5−ジアミノヘキサン、N,N′−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、3,3′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン(ジシアン)、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン(Laromin(登録商標))、イソホロンジアミン(3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン)、1,4−ジアジン(ピペラジン)、1,2−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、m−キシリレンジアミン[1,3−(ジアミノメチル)ベンゼン]ならびにp−キシリレンジアミン[1,4−(ジアミノメチル)ベンゼン]である。当然のことながら、前記の化合物の混合物も使用することができる。
【0069】
場合により有利には1,6−ジアミノヘキサン、1,12−ジアミノドデカン、2,2−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、3,3′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、m−キシリレンジアミンまたはp−キシリレンジアミンを、任意のジアミン化合物Fとして使用する。
【0070】
ジカルボン酸化合物Gとして原則として、2つのカルボン酸基(カルボキシ基;−COOH)またはこれらの誘導体を有する全てのC2〜C40−脂肪族、C3〜C20−環式脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族化合物を使用することができる。誘導体として、特に前記のジカルボン酸のC1〜C10−アルキル、有利にはメチル、エチル、n−プロピルまたはイソプロピルのモノエステルまたはジエステル、相応するジカルボン酸ハロゲン化物、特にジカルボン酸ジクロリドならびに相応するジカルボン酸無水物を使用する。このような化合物のための例は、エタン二酸(シュウ酸)、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、ヘプタン二酸(ピメリン酸)、オクタン二酸(コルク酸)、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸(ブラシル酸)、C32−二量体脂肪酸(Cognis Corp.USAの市販品)ベンゼン−1,2−ジカルボン酸(フタル酸)、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸(イソフタル酸)またはベンゼン−1,4−ジカルボン酸(テレフタル酸)、これらのメチルエステル、たとえばエタン二酸ジメチルエステル、プロパン二酸ジメチルエステル、ブタン二酸ジメチルエステル、ペンタン二酸ジメチルエステル、ヘキサン二酸ジメチルエステル、ヘプタン二酸ジメチルエステル、オクタン二酸ジメチルエステル、ノナン二酸ジメチルエステル、デカン二酸ジメチルエステル、ウンデカン二酸ジメチルエステル、ドデカン二酸ジメチルエステル、トリデカン二酸ジメチルエステル、C32−二量体脂肪酸ジメチルエステル、フタル酸ジメチルエステル、イソフタル酸ジメチルエステルまたはテレフタル酸ジメチルエステル、これらの二塩化物、たとえばエタン二酸ジクロリド、プロパン二酸ジクロリド、ブタン二酸ジクロリド、ペンタン二酸ジクロリド、ヘキサン二酸ジクロリド、ヘプタン二酸ジクロリド、オクタン二酸ジクロリド、ノナン二酸ジクロリド、デカン二酸ジクロリド、ウンデカン二酸ジクロリド、ドデカン二酸ジクロリド、トリデカン二酸ジクロリド、C32−二量体脂肪酸ジクロリド、フタル酸ジクロリド、イソフタル酸ジクロリドまたはテレフタル酸ジクロリドならびにこれらの無水物、たとえばブタンジカルボン酸無水物、ペンタンジカルボン酸無水物またはフタル酸無水物である。当然のことながら、前記のジカルボン酸化合物Gの混合物を使用することもできる。
【0071】
場合により有利には遊離のジカルボン酸、特にブタン二酸、ヘキサン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸またはイソフタル酸もしくはこれらの相応するジメチルエステルを使用する。
【0072】
任意のジオール化合物Hとして、本発明によれば2〜18個の炭素原子、有利には4〜14個の炭素原子を有する分枝鎖状もしくは線状のアルカンジオール、5〜20個の炭素原子を有するシクロアルカンジオールまたは芳香族ジオールを使用する。
【0073】
適切なアルカンジオールの例は、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオールまたは2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオールである。特に適切であるのは、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールおよび2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオールまたは1,12−ドデカンジオールである。
【0074】
シクロアルカンジオールの例は、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール(1,2−ジメチロールシクロヘキサン)、1,3−シクロヘキサンジメタノール(1,3−ジメチロールシクロヘキサン)、1,4−シクロヘキサンジメタノール、(1,4−ジメチロールシクロヘキサン)または2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタノールである。
【0075】
適切な芳香族ジオールの例は、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,2−ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン)、1,3−ジヒドロキシナフタリン、1,5−ジヒドロキシナフタリンまたは1,7−ジヒドロキシナフタリンである。
【0076】
しかしジオール化合物Hとして、ポリエーテルジオール、たとえばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(4以上のエチレンオキシド単位を有する)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(4以上のプロピレンオキシド単位を有する)およびポリテトラヒドロフラン(ポリ−THF)、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびポリエチレングリコール(4以上のエチレンオキシド単位を有する)を使用することもできる。ポリ−THF、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールとして、その数平均分子量(Mn)が通常は200〜10000、有利には600〜5000g/モルの範囲である化合物を使用する。
【0077】
当然のことながら、前記のジオール化合物Hの混合物を使用することもできる。
【0078】
任意のヒドロキシカルボン酸化合物Iとして、遊離のヒドロキシカルボン酸、そのC1〜C5−アルキルエステルおよび/またはそのラクトンを使用することができる。例として、グリコール酸、D−、L−、D,L−乳酸、6−ヒドロキシヘキサン酸(6−ヒドロキシカプロン酸)、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシカプロン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、これらの環式誘導体、たとえばグリコリド(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、D−、L−、D,L−ジラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、ε−カプロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ドデカノリド(オキサシクロトリデカン−2−オン)、ウンデカノリド(オキサシクロドデカン−2−オン)またはペンタデカノリド(オキサシクロヘキサデカン−2−オン)が挙げられる。当然のことながら、種々のヒドロキシカルボン酸化合物Iの混合物も使用することができる。
【0079】
任意のアミノアルコール化合物Kとして原則として、1のヒドロキシ基と、1の第1級もしくは第2級、しかし有利には1の第1級アミノ基を有する全ての、しかし有利にはC2〜C12−脂肪族、C5〜C10−環式脂肪族または芳香族の有機化合物を使用することができる。例として、2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール、4−アミノブタノール、5−アミノペンタノール、6−アミノヘキサノール、2−アミノシクロペンタノール、3−アミノシクロペンタノール、2−アミノシクロヘキサノール、3−アミノシクロヘキサノール、4−アミノシクロヘキサノールならびに4−アミノメチルシクロヘキサンメタノール(1−メチロール−4−アミノメチルシクロヘキサン)が挙げられる。当然のことながら、前記のアミノアルコール化合物Kの混合物も使用することができる。
【0080】
場合により本発明による方法の第1段階で使用することができる別の成分として、分子あたり少なくとも3つのヒドロキシ基、第1級もしくは第2級アミノ基および/またはカルボキシ基を有する有機化合物Lが挙げられる。たとえば、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリット、ポリエーテルトリオール、グリセリン、糖、たとえばグルコール、マンノール、フルクトース、ガラクトース、グルコサミン、サッカロース、ラクトース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ゲンチアノース、ケストース、マルトトリオース、ラフィノース、トリメシン酸(1,3,5−ベンゼントリカルボン酸ならびにこれらのエステルまたは無水物)、トリメリット酸(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸またはそのエステルまたは無水物)、ピロメリット酸(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ならびにこれらのエステルまたは無水物)、4−ヒドロキシイソフタル酸、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ビスヘキサメチレントリアミン、N,N′−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミンが挙げられる。前記の化合物Lは、分子あたり少なくとも3のヒドロキシ基、第1級もしくは第2級アミノ基および/またはカルボキシ基を有することによって同時に少なくとも2つのポリアミド鎖を構成することができ、従って化合物Lは、ポリアミド形成の際に分枝鎖もしくは架橋を生じる効果を有している。化合物Lの含有率が高いほど、もしくは分子あたりアミノ基、ヒドロキシ基および/またはカルボキシ基がより多く存在しているほど、ポリアミド形成の際に、分岐/架橋の度合いは高い。当然のことながらこの場合、化合物Lの混合物もまた使用することができる。
【0081】
本発明によれば、第一の反応段階で、ジアミン化合物F、ジカルボン酸化合物G、ジオール化合物H、ヒドロキシカルボン酸化合物I、アミノアルコール化合物Kおよび/または分子あたり少なくとも3のヒドロキシ基、第1級もしくは第2級アミノ基および/またはカルボキシ基を有する有機化合物Lの混合物もまた使用することができる。
【0082】
本発明により第一の反応段階で、アミノカルボン酸化合物A以外に、少なくとも1の前記の化合物F〜Lを使用する場合には、化合物AならびにF、G、H、I、Kおよび/またはLの量は、アミノ基および/またはヒドロキシ基および/またはこれらの誘導体(個々の化合物A、F、H、I、KおよびL)の合計に対するカルボキシ基および/またはその誘導体(個々の化合物A、G、IおよびLから)の当量比が、0.5〜1.5、通常は0.8〜1.3、しばしば0.9〜1.1および有利には0.95〜1.05となるように選択することに留意すべきである。当量比が1である場合、つまりアミノ基および/またはヒドロキシ基が、カルボキシ基もしくはカルボキシ基から誘導される基と同じ量で存在している場合に特に有利である。より良好な理解のために、アミノカルボン酸化合物Aは、カルボキシ基を1当量、ジカルボン酸化合物G(遊離酸、エステル、ハロゲン化物または無水物)は、カルボキシ基を2当量、ヒドロキシカルボン酸化合物Iは、カルボキシ基を1当量有し、かつ有機化合物Lは、分子あたりに含有されているカルボキシ基と同様の当量のカルボキシ基を有している。相応して、アミノカルボン酸化合物Aは、アミノ基1当量、ジアミン化合物fは、アミノ基2当量、ジオール化合物Hは、ヒドロキシ基2当量、ヒドロキシカルボン酸化合物Iは、ヒドロキシ基1当量、アミノアルコール化合物Kは、アミノ基およびヒドロキシ基1当量および有機化合物Lは、分子中に含有されているヒドロキシ基もしくはアミノ基と同様の当量のヒドロキシ基もしくはアミノ基を有する。
【0083】
その際、本発明による方法に関しては、加水分解酵素Bは、特に使用されるアミノカルボン酸化合物A、ジアミン化合物F、ジカルボン酸化合物G、ジオール化合物H、ヒドロキシカルボン酸化合物I、アミノアルコール化合物Kおよび/または分子あたり、少なくとも3のヒドロキシ基、第1級もしくは第2級アミノ基および/またはカルボキシ基を有する有機化合物Lと、もしくは分散剤Cならびに場合により使用されるエチレン性不飽和モノマーDおよび/または溶剤Eと相容性であり、かつこれらにより失活されることがないように選択されると理解すべきである。どのような化合物AならびにC〜Lを特定の加水分解の際に使用することができるかは、当業者には自明であるか、または当業者であれば自身で簡単な前試験により確認することができる。
【0084】
アミノカルボン酸化合物A以外に、前記の化合物F、G、H、I、Kおよび/またはLを使用する場合、本発明による方法の第一の反応段階は、まず少なくとも部分量のアミノカルボン酸化合物A、化合物F、G、H、I、Kおよび/またはL、分散剤Cおよび場合によりエチレン性不飽和モノマーDおよび/または溶剤Eを少なくとも部分量の水中に導入し、その後、適切な措置によりアミノカルボン酸化合物A、化合物F、G、H、I、Kおよび/またはLならびに場合によりエチレン性不飽和モノマーDおよび/または溶剤Eを含有し、平均液滴直径1000nm以下を有する分散相を生じさせ(ミニエマルション)、その後引き続き該水性媒体に室温で、加水分解酵素Bの全量ならびに場合により残りの残留量のアミノカルボン酸化合物A、化合物F、G、H、I、Kおよび/またはLおよび溶剤Eを添加して行うように構成する。アミノカルボン酸化合物A、化合物F、G、H、I、Kおよび/またはL、分散剤Cならびに場合によりエチレン性不飽和モノマーDおよび/または溶剤Eのしばしば50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、または全量を、水の50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、または全量に導入し、引き続き液滴直径1000nm以下を有する分散相を発生させ、かつその後引き続き該水性媒体に反応温度で、加水分解酵素Bの全量ならびに場合により残りの残留量のアミノカルボン酸化合物A、化合物F、G、H、I、Kおよび/またはLならびに溶剤Eを添加する。その際、加水分解酵素B、場合により残りの残留量のアミノカルボン酸化合物A、化合物F、G、H、I、Kおよび/またはLならびに溶剤Eを、水性反応媒体に別々に、または一緒に、不連続的に一度に、不連続的に数回に分けて、ならびに連続的に、一定の、または変化する流量で添加することができる。
【0085】
本発明による方法の第一の反応段階は通常、反応温度20〜90℃、しばしば35〜60℃、および有利には45〜55℃ならびに通常、圧力(絶対値)0.8〜10バール、有利には0.9〜2バール、および特に1.01バール(=1気圧=大気圧)で実施する。
【0086】
さらに、水性反応媒体は室温(20〜25℃)で、pH値2以上11以下、しばしば3以上9以下、および有利には6以上8以下を有することは有利である。特に水性の反応媒体は、加水分解酵素Bが、最適な作用を有するようなpH値(範囲)に調整する。どのようなpH値(範囲)であるかは、当業者に自明であるか、または当業者であれば自身でいくつかの前試験で確認することができる。pH値を調整するための相応する措置、つまり相応する量の酸、たとえば硫酸、塩基、たとえばアルカリ金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの水溶液、または緩衝物質、たとえばリン酸カリウム/リン酸水素二ナトリウム、酢酸/酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム/塩化アンモニウム、リン酸二水素カリウム/水酸化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム/塩酸、ホウ酸ナトリウム/水酸化ナトリウムまたはトリス(ヒドロキシメチル)アミンメタン/塩酸の添加は当業者に周知である。
【0087】
第一の反応段階で使用されるアミノカルボン酸化合物Aならびに場合により使用される化合物F〜Lは、有利には50質量%以上まで、60質量%以上、または70質量%以上がポリアミドへと反応するまで反応条件下に置く。特に有利には前記の化合物の反応率は80質量%以上、85質量%以上、または90質量%以上である。この場合、通常第一の反応段階で反応生成物として得られるポリアミドは安定した水性ポリアミド分散液の形で生じる。
【0088】
本発明による方法にとって通常は清澄で、かつしばしば飲料水の品質を有する水を使用する。しかし有利には本発明による方法のために脱イオン水および第一の反応段階では特に滅菌した脱イオン水を使用する。その際、水の量は第一の反応段階では、本発明により形成される水性ポリアミド分散液が、ポリアミド固体含有率70質量%以下、しばしば1以上50質量%以下、もしくは5以上35質量%以下、およびしばしば10以上30質量%以下に相応して、そのつど水性ポリアミド分散液に対して30質量%以上、しばしば50質量%以上99質量%以下、もしくは65以上95質量%以下および有利には70以上90質量%以下の含水率を有するように選択する。本発明による方法は、第一の反応段階でも第二の反応段階でも、有利には酸素を含有しない不活性ガス雰囲気下に、たとえば窒素雰囲気もしくはアルゴン雰囲気下に実施すると有利であることも言及しておく。
【0089】
本発明により有利には第一の反応段階の水性ポリマー分散液を酵素触媒反応によるポリアミド形成に引き続き、もしくはポリアミド形成終了後に、本発明により使用される加水分解酵素Bを失活させる(つまり加水分解酵素Bの触媒作用を破壊するか、または抑制する)ことができる助剤(失活剤)を添加する。失活剤として、そのつどの加水分解酵素Bを、失活させることができる全ての化合物を使用することができる。失活剤としてしばしば特に錯化合物、たとえばニトリロ三酢酸またはエチレンジアミン四酢酸もしくはこれらのアルカリ塩または特殊なアニオン性乳化剤、たとえばナトリウムドデシルスルフェートを使用することができる。その量は通常、そのつどの加水分解酵素Bを失活させるためにちょうど十分であるように秤量する。しばしば水性ポリアミド分散液を95℃以上、または100℃以上の温度に加熱することによりそのつどの加水分解酵素Bを失活させることも可能であり、その際、通常は、沸騰反応を抑制するために、不活性ガスを加圧下に送入する。当然のことながら、特定の加水分解酵素Bを、水性ポリアミド分散液のpH値を変更することにより失活させることも可能である。
【0090】
本発明による方法により第一の反応段階で得られたポリアミドは、−70〜+200℃のガラス転移温度を有する。使用目的に応じてしばしば、そのガラス転位温度が特定の範囲内に存在するポリアミドが必要とされる。本発明による方法で使用される化合物AならびにF〜Lの適切な選択により、当業者であれば、そのガラス転移温度が所望の範囲にあるポリアミドを適切に製造することは可能である。
【0091】
ガラス転移温度Tgとは、G.Kanig(Kolloid−Zeitschrift & Zeitschrift fuer Polymere、第190巻、第1頁、式1)により分子量の増大と共に高くなるガラス転移温度の限界値を意味する。ガラス転移温度はDSC法により確認する(示差走査熱分析、20K/分、中間点測定、DIN53765)。
【0092】
本発明による方法により得られる水性ポリアミド分散液のポリアミド粒子は、通常10〜1000nm、しばしば50〜700nmおよび有利には100〜500nmの平均粒径を有する(記載したのは累積数平均値であり、これは準弾性散乱により確認される(ISO標準13321))。
【0093】
本発明による方法により得られるポリアミドは通常、2000以上〜1000000g/モル以下、しばしば3000以下〜500000g/モル以下、および有利には5000以上300000g/モル以下の質量平均分子量を有する。質量平均分子量の測定は、ゲル透過クロマトグラフィーによりDIN55672−1に基づいて行う。
【0094】
方法にとって重要なことは、第二の反応段階で、エチレン性不飽和モノマーDが、第一の反応段階で形成されたポリアミドを含有する水性媒体中で、ラジカル重合することである。その際、この重合は有利にはラジカルにより開始される水性乳化重合の条件下で行う。この方法は種々記載されており、従って当業者には周知である(たとえばEncyclopedia of Polymer Science and Engineering、第8巻、第659〜677頁、John Wiley & Sons、Inc.、1987年;D.C.Blackley、Emulsion Polymerisation、第155〜465頁、Applied Science Publishers、Ltd.、Essex、1975年;D.C.Blackley、Polymer Latices、第2版、第1巻、第33〜415頁、Chapman & Hall、1997年;H.Warson、The Applications of Synthetic Resin Emulsions、第49〜244頁、Ernest Benn、Ltd.、London、1972年;D.Diederich、Chemie in unserer Zeit 1990、24、第135〜142頁、Verlag Chemie、Weinheim;J.Piirma、Emulsion Polymerisation、第1〜287頁、Academic Press、1982年;F.Hoelscher、Dispersionen synthetischer Hochpolymerer、第1〜160頁、Springer−Verlag、Berlin、1969年および特許文献DE−A4003422を参照のこと)。ラジカルにより開始される水性乳化重合は通常、エチレン性不飽和モノマーを、通常は分散剤を併用して水性媒体中に分散させ、かつ少なくとも1の水溶性ラジカル重合開始剤を用いて重合温度で重合させるように構成する。
【0095】
第二の反応段階でポリマー分散液の安定した水溶液を得るために、分散剤Cおよびその量は、第一の反応段階で形成されたポリアミド粒子も、第二の反応段階の重合のために使用されるエチレン性不飽和モノマーDも、モノマー液滴の形で、ならびにラジカル重合反応の際に形成されるポリマー粒子は水性媒体中で分散相として安定化することができるように秤量する。その際に、第二の反応段階の分散剤Cは、第一の反応段階の分散剤と同一であってもよい。しかしまた、第二の反応段階で別の分散剤Cを添加することも可能である。分散剤Cの全量を、第一の反応段階ですでに水性媒体に添加することも可能である。しかしまた、分散剤Cの部分量を第二の反応段階で、ラジカル重合前、ラジカル重合中またはラジカル重合後に水性媒体に添加することも可能である。これは特に、第一の反応段階でその他の、または少量の分散剤Cを使用する場合、または第二の反応段階でエチレン性不飽和モノマーDの部分量または全量を、水性モノマーエマルションの形で使用する場合に該当する。どのような分散剤Cを、およびどのような量で第二の反応段階で有利に付加的に使用するかは、当業者に自明であるか、または当業者であれば自身で簡単な前試験により確認することができる。しばしば添加される分散剤Cの量は、そのつど本発明による方法で使用される分散剤の全量に対して、第一の反応段階で1質量%以上100質量%以下、20質量%以上90質量%以下、または40質量%以上70質量%以下、および第二の反応段階では従って、0質量%以上99質量%以下、10質量%以上および80質量%以下、または30質量%以上60質量%以下である。
【0096】
分散剤Cとして有利に使用される乳化剤は有利にはそのつど、アミノカルボン酸化合物Aおよびエチレン性不飽和モノマーDの全量の合計に対して、有利には0.005〜20質量%、好ましくは0.01〜10質量%、特に0.1〜5質量%の全量で使用する。
【0097】
分散剤Cとして乳化剤に加えて、または乳化剤に変わって使用される保護コロイドの全量は、そのつど、アミノカルボン酸化合物Aおよびエチレン性不飽和モノマーDの全量の合計に対してしばしば0.1〜10質量%、および有利には0.2〜7質量%である。
【0098】
しかし有利には乳化剤を単独の分散剤Cとして使用する。
【0099】
本発明による方法で使用される全水量はすでに第一の反応段階で使用することができる。しかし、水の部分量を、第一および第二の反応段階で添加することも可能である。第二の反応段階での水の部分量の添加は特にエチレン性不飽和モノマーDの添加を、第二の反応段階で、水性モノマーエマルションの形で行い、かつラジカル開始剤の添加を、ラジカル開始剤の相応する水溶液または水性分散液の形で行う場合に行う。その際、全水量は通常、本発明により形成される水性ポリマー分散液が、ポリマーの固体含有率70質量%以下、しばしば1質量%以上60質量%以下、もしくは5質量%以上55質量%以下、およびしばしば10質量%以上50質量%以下に相応して、そのつど水性ポリマー分散液に対して、30質量%以上、しばしば40質量%以上99質量%以下、もしくは45質量%以上95質量%以下、およびしばしば50質量%以上90質量%以下の含水率を有するように選択する。しばしば添加される水の量は、そのつど本発明による方法により使用される全水量に対して、第一の反応段階では10質量%以上100質量%以下、40質量%以上90質量%以下、または60質量%以上80質量%以下であり、かつ第二の反応段階では従って0質量%以上90質量%以下、10質量%以上60質量%以下、または20質量%以上40質量%以下である。
【0100】
本発明による方法で使用されるモノマーDの全量は、第一の反応段階においても、第二の反応段階においても使用することができる。しかしモノマーDの部分量を第一の反応段階および第二の反応段階で添加することも可能である。第二の反応段階でのモノマーDの部分量もしくは全量の添加は、特に水性モノマーエマルションの形で行う。その際、モノマーDの全量は通常、本発明により形成される水性ポリマー分散液が、70質量%以下、しばしば1質量%以上60質量%以下、もしくは5質量%以上55質量%以下、およびしばしば10質量%以上および50質量%以下のポリマー(=第一の反応段階のポリアミドおよび第二の反応段階でのエチレン性不飽和モノマーDの重合により得られたポリマーの合計)の固体含有率を有するように選択する。しばしば、第一の反応段階で添加されるモノマーDの量は、そのつど、モノマーDの全量に対して、0質量%以上100質量%以下、20質量%以上90質量%以下、または40質量%以上70質量%以下であり、かつ第二の反応段階では従って、0質量%以上100質量%以下、10質量%以上80質量%以下、または30質量%以上60質量%以下である。
【0101】
本発明によれば、アミノカルボン酸化合物A対エチレン性不飽和モノマーDの量比は、通常1:99〜99:1、有利には1:9〜9:1および好ましくは1:5〜5:1である。
【0102】
有利には第一の反応段階でモノマーDの少なくとも部分量を、しかし有利には全量を使用する。このことは、第一の反応段階で形成されたポリアミド粒子中にモノマーDが溶解して含有されているか、またはこれにより膨潤しているか、もしくはポリアミドがモノマーDの液滴中に溶解してるか、または分散しているという利点を有する。両方が、第一の反応段階のポリアミドと、第二の反応段階のポリマーとから構成されているポリマー(ハイブリッド)粒子の形成に有利な影響を与える。
【0103】
本発明による方法により第二の反応段階でモノマーDから得られるポリマーは、−70℃〜+150℃のガラス転位温度を有していてよい。水性ポリマー分散液の計画した使用目的に依存して、そのガラス転移温度が特定の範囲内にあるポリマーがしばしば必要とされる。本発明による方法で使用されるモノマーDの適切な選択により、当業者であれば、そのガラス転移温度が所望の範囲にあるポリマーを適切に製造することが可能である。
【0104】
Fox(T.G.Fox、Bull.Am.Phys.Soc.1956(シリーズII)、第123頁およびUllmann’s Encyclopaedie der technischen Chemie、第19巻、第18頁、第4版、Verlag Chemie、Weinheim、1980年)によれば、最大でも弱く架橋したコポリマーのガラス転移温度に関して以下:
1/Tg=x1/Tg1+X2/T+…Xn/Tgn
の近似値が該当し、この場合、x1、x2、…xnは、モノマー1、2、…nの質量分率であり、かつTg1、Tg2、…Tgnは、そのつど1のモノマー1、2、…nのみから構成されるポリマーのガラス転移温度をケルビン温度で表している。多くのモノマーのホモポリマーに関するTg値は公知であり、かつたとえばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、第A21巻、第169頁、Verlag Chemie、Weinheim、1992に記載されている。ホモポリマーのガラス転移温度に関するその他の出典はたとえばJ.Brandrup、E.H.Immergut、Polymer Handbook、第1版、J.Wiley、New York、1966、第2版、J.Wiley、New York、1975年および第3版、J.Wiley、New York,1989年である。
【0105】
本発明による方法にとって特徴的なことは、第二の反応段階でラジカルにより誘導される重合を開始するために、いわゆる水溶性およびいわゆる油溶性のラジカル開始剤を使用することができることである。この場合、水溶性ラジカル開始剤として通常、ラジカル水性乳化重合で使用される全てのラジカル開始剤であると理解し、他方、油溶性のラジカル開始剤として、当業者が通常、ラジカル開始される溶液重合の際に使用する全てのラジカル開始剤であると理解する。この明細書中で、水溶性ラジカル開始剤として、20℃および大気圧で脱イオン水中、1質量%以上の溶解度を有する全ての開始剤であると理解され、他方、油溶性ラジカル開始剤は、前記の条件下に、1質量%未満の溶解度を有する全てのラジカル開始剤であると理解する。しばしば水溶性ラジカル開始剤は、前記の条件下に2質量%以上、5質量%以上、または10質量%以上の水溶性を有し、他方、油溶性ラジカル開始剤はしばしば0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下、0.2質量%以下または0.1質量%以下の水溶性を有する。
【0106】
水溶性のラジカル開始剤とはこの場合、たとえば過酸化物であっても、アゾ化合物であってもよい。当然のことながら、レドックス開始剤系もまた考慮される。過酸化物として原則的に無機過酸化物、たとえば過酸化水素またはペルオキソ二硫酸塩、たとえばペルオキソ二硫酸のモノ−もしくはジ−アルカリ金属塩またはアンモニウム塩、たとえばモノ−およびジ−ナトリウム塩、−カリウム塩もしくは−アンモニウム塩または有機過酸化物、たとえばアルキルヒドロペルオキシド、たとえばt−ブチル−、p−メンチル−もしくはクミルヒドロペルオキシドを使用することができる。アゾ化合物として実質的に2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)および2,2′−アゾビス(アミジノプロピル)ジヒドロクロリド(AlBA、Wako ChemicalsのV−50に相応)を使用する。レドックス開始剤系のための酸化剤として、実質的に上記の過酸化物が考えられる。相応する還元剤として、低い酸化数を有する硫黄化合物、たとえばアルカリ金属亜硫酸塩、たとえば亜硫酸カリウムおよび/または亜硫酸ナトリウム、アルカリ金属亜硫酸水素塩、たとえば亜硫酸水素カリウムおよび/または亜硫酸水素ナトリウム、アルカリ金属メタ重亜硫酸塩、たとえばメタ重亜硫酸カリウムおよび/またはメタ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシレート、たとえばカリウムおよび/またはナトリウムのホルムアルデヒドスルホキシレート、アルカリ金属塩、脂肪族のスルフィン酸のカリウム塩および/またはナトリウム塩およびアルカリ金属の硫化水素、たとえばカリウムおよび/またはナトリウムの硫化水素、多価の金属の塩、たとえば硫酸鉄(II)、硫酸アンモニウム鉄(II)、リン酸鉄(II)、エンジオール、たとえばジヒドロキシマレイン酸、ベンゾインおよび/またはアスコルビン酸、ならびに還元された糖類、たとえばソルボース、グルコース、フルクトースおよび/またはジヒドロキシアセトンを使用することができる。
【0107】
有利には水溶性のラジカル開始剤として、ペルオキソ二硫酸のモノ−またはジ−アルカリ金属塩またはアンモニウム塩、たとえばペルオキソ二硫酸二カリウム、ペルオキソ二硫酸二ナトリウムまたはペルオキソ二硫酸二アンモニウムを使用する。当然のことながら、前記の水溶性ラジカル開始剤の混合物を使用することも可能である。
【0108】
油溶性のラジカル開始剤として、たとえばジアルキル−もしくはジアリールペルオキシド、たとえばジ−t−アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、t−ブチルクメンペルオキシド、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキセン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタンまたはジ−t−ブチルペルオキシド、脂肪族および芳香族ペルオキシエステル、たとえばクミルペルオキシネオデカノエート、2,4,4−トリメチルペンチル−2−ペルオキシネオデカノエート、t−アミルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−アミルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシジエチルアセテート、1,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルペルオキシイソブタノエート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−アミルペルオキシベンゾエートまたはt−ブチルペルオキシペンゾエート、ジアルカノイルもしくはジベンゾイルペルオキシド、たとえばジイソブタノイルペルオキシド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルオペルオキシド、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンまたはジベンゾイルペルオキシド、ならびにペルオキシジカーボネート、たとえばビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ビス(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシジイソプロピルカーボネートまたはt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートが挙げられる。
【0109】
有利には油溶性ラジカル開始剤として、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(Trigonox(登録商標)21)、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシベンゾエート(Trigonox(登録商標)C)、t−アミルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(Trigonox(登録商標)42S)、t−ブチルペルオキシイソブタノエート、t−ブチルペルオキシエチルアセテート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート(Trigonox(登録商標)BPIC)およびt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(Trigonox(登録商標)117)を含む群から選択される化合物を使用する。当然のことながら、前記の油溶性ラジカル開始剤の混合物を使用することも可能である。
【0110】
特に有利には水溶性のラジカル開始剤を使用する。
【0111】
使用されるラジカル開始剤の全量は、そのつどモノマーDの全量に対して、0.01〜5質量%、しばしば0.5〜3質量%および有利には1〜2質量%である。
【0112】
第二の反応段階のラジカル重合反応のための反応温度として、特に使用されるラジカル開始剤に依存して、0〜170℃の全ての範囲が考えられる。その際、通常、50〜120℃、しばしば60〜110℃および有利に70℃以上100℃の温度が適用される。第二の反応段階のラジカル重合反応は、1気圧(絶対)よりも小さいか、同じであるか、またはより大きい圧力で実施することができ、その際、重合温度は100℃を超えて170℃までであってよい。有利には易揮発性モノマー、たとえばエチレン、ブタジエンまたは塩化ビニルを高めた圧力下に重合する。その際、圧力は、1.2、1.5、2、5、10、15バールまたはこれよりさらに高い値であってよい。乳化重合を減圧下で実施する場合、950ミリバール、しばしば900ミリバール、および有利に850ミリバール(絶対)の圧力を調整する。有利にはラジカル重合反応を、不活性化ガス雰囲気下に大気圧で実施する。
【0113】
その際、第二の反応段階のラジカル重合は通常、90質量%以上、有利には95質量%以上、および好ましくは98質量%以上のモノマーDの反応率まで行う。
【0114】
特に有利には本発明による方法は、第一の反応段階で、アミノカルボン酸化合物A、分散剤Cならびに場合によりエチレン性不飽和モノマーDおよび/または溶剤Eの少なくとも部分量を、水の少なくとも部分量に導入し、その後、適切な措置によりアミノカルボン酸化合物A、ならびに場合によりエチレン性不飽和モノマーDおよび/または場合により溶剤Eを含有し、1000nm以下の平均液滴直径を有する分散相(ミニエマルション)を生じさせ、その後引き続き、該水性媒体に、反応温度で加水分解酵素Bの全量ならびに場合により残りのアミノカルボン酸化合物Aおよび溶剤Eの残留量を添加し、かつポリアミド形成の終了後に、第二の反応段階で場合により残りの水、分散剤Cおよび/またはエチレン性不飽和モノマーDの残留量ならびにラジカル開始剤の全量を添加することができる。その際、場合により残りの水、分散剤Cおよび/またはエチレン性不飽和モノマーDの残留量ならびにラジカル開始剤の全量を、別々に、または一緒に、一度に、不連続的に数回に分けて、または連続的に、一定の、または変化する流量で行うことができる。
【0115】
本発明による方法により得られる水性ポリマー分散液は有利には接着剤、封止材料、人工しっくい、紙塗工材料、印刷インク、化粧品および塗料中の成分として、皮革およびテキスタイルの処理のために、繊維結合のために、ならびに鉱物質結合剤もしくはアスファルトの変性のために適切である。
【0116】
さらに、本発明により得られる水性ポリマー分散液は、乾燥することによって相応するポリマー粉末に変換することができることが重要である。相応する乾燥法、たとえば凍結乾燥または噴霧乾燥は当業者に公知である。
【0117】
本発明により得られるポリマー粉末は、有利には顔料、プラスチック組成物中での充填剤として、接着剤、封止材料、人工しっくい、紙塗工材料、印刷インク、化粧品、粉体塗料および塗料中での成分として、皮革およびテキスタイルの処理のために、繊維結合のために、ならびに鉱物質結合剤またはアスファルトの変性のために使用することができる。
【0118】
本発明による方法は、新規の水性ポリマー分散液を簡単に、かつ安価に得る方法を開き、これはポリアミドならびにポリマーの生成物特性を兼ね備えている。
【0119】
以下の非限定的な例は、本発明を詳細に説明するものである。
【0120】

第一の反応段階で、窒素雰囲気下に室温(20〜25℃)で、ε−カプロラクタム(Sigma−Aldrich Inc.)3.0g(27ミリモル)を撹拌下に、Lutensol(登録商標)AT50(非イオン性乳化剤、BASF AG社の市販品)0.25gおよび脱イオン水24.8gからなる均質な溶液に添加した。この溶液に、同様に窒素雰囲気下に、スチレン3.0gおよびヘキサデカン0.25gからなる溶液を供給した。引き続き得られた不均一な混合物を10分間、電磁攪拌機で毎分60回転(rpm)で攪拌し、その後、同様に窒素雰囲気下に80mlの円すい型肩付き容器(Steilbrustgefaess)に移し、ウルトラ・ツラックスT25装置(Janke & Kunkel GmbH&Co.KG社)を用いて20500rpmで30秒間攪拌した。その後、得られた液状の不均一な混合物を、平均液滴直径1000nm以下を有する液滴(ミニエマルション)に変換するために、超音波ゾンデ(70W、Bandelin electronic GmbH & Co.KG社のUW2070装置)を用いて3分間、超音波処理した。こうして得られたミニエマルションへ、窒素雰囲気下で一度に、カンディダ・アンタクティカB型のリパーゼ(Fluka AG社の市販品)0.12g、Lutensol(登録商標)AT50 0.12gおよび脱イオン水12.4gから製造した均質な酵素混合物を添加し、次いで得られた混合物を撹拌下に60℃で加熱し、かつ該混合物をこの温度で20時間、窒素雰囲気下で攪拌した。これに引き続き、撹拌下に酵素の失活のために、ドデシル硫酸ナトリウム0.05gを添加し、かつ水性のポリアミド分散液を60℃でさらに30分間攪拌した。引き続き得られた水性ポリアミド分散液に窒素雰囲気および攪拌下で、ペルオキソ二硫酸ナトリウム0.04gおよび脱イオン水0.36gからなる溶液を添加し、該重合混合物を80℃に加熱し、この温度で2時間攪拌し、かつ次いで得られた水性ポリマー分散液を室温に冷却した。
【0121】
固体含有率14.5質量%を有する水性ポリマー分散液約44gが得られた。平均粒径は220nmまで測定された。得られたポリマーは、約100℃のガラス転移温度および約210℃の融点を有していた。
【0122】
固体含有率は、定義された量の水性ポリマー分散液(約5g)を乾燥室中180℃で質量が一定になるまで乾燥させることによって測定した。そのつど2回の別々の測定を実施した。例に記載されている値は、両方の測定結果の平均値を表す。
【0123】
ポリマー粒子の平均粒径は、0.005〜0.01質量%の水性ポリマー分散液を用いて23℃でMalvern Instruments(英国)のAutosizer IICを用いて動的光散乱により測定した。測定された自動補正機能の累積評価(累積数平均)の平均直径を記載する(ISO標準13321)。
【0124】
ガラス転移温度もしくは融点の測定は、DIN53765により、Mettler−Toledo Intl. Inc.社のDSC820−装置、TA8000シリーズを使用して行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ポリマー分散液の製造方法において、第一の反応段階において水性媒体中で、
a)アミノカルボン酸化合物A
を、
b)加水分解酵素Bおよび
c)分散剤C
ならびに場合により
d)エチレン性不飽和モノマーDおよび/または
e)水中でわずかに可溶性の有機溶剤E
の存在下にポリアミドへと反応させ、かつこれに引き続き該ポリアミドの存在下に第二の反応段階において、
f)エチレン性不飽和モノマーDをラジカル重合する
ことを特徴とする、水性ポリマー分散液の製造方法。
【請求項2】
第一の反応段階において、アミノカルボン酸化合物A、場合によりエチレン性不飽和モノマーDおよび/または溶剤Eの少なくとも一部の量が、水性媒体中で平均液滴直径1000nm以下を有する分散相として存在していることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
最初にアミノカルボン酸化合物A、分散剤C、ならびに場合によりエチレン性不飽和モノマーDおよび/または溶剤Eの少なくとも一部の量を、水の少なくとも一部の量に導入し、その後、適切な措置によりアミノカルボン酸化合物A、ならびに場合によりエチレン性不飽和モノマーDおよび/または溶剤Eを含有し、平均液滴直径1000nm以下を有する分散相を製造し、かつこれに引き続き、該水性媒体に室温で加水分解酵素Bの全量ならびに場合により残りのアミノカルボン酸化合物Aおよび溶剤Eの残留量を添加することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ポリアミド形成のために、アミノカルボン酸化合物A以外に、ジアミン化合物F、ジカルボン酸化合物G、ジオール化合物H、ヒドロキシカルボン酸化合物I、アミノアルコール化合物Kおよび/または分子あたり少なくとも3つのヒドロキシ基、第1級もしくは第2級アミノ基および/またはカルボキシ基を有する有機化合物Lを使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
個々の化合物F、G、H、I、Kおよび/またはLの合計量が、アミノカルボン酸化合物Aの全量に対して、100質量%以下であることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
アミノ基および/またはヒドロキシ基および/またはこれらの誘導体(個々の化合物A、F、H、I、KおよびLからのもの)の合計に対する、カルボキシ基および/またはこれらの誘導体(個々の化合物A、G、IおよびLからのもの)の当量比が、0.5〜1.5となるように、化合物AならびにF、G、H、I、Kおよび/またはLの量を選択することを特徴とする、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
加水分解酵素Bとして、リパーゼおよび/またはカルボキシルエステラーゼを使用することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
分散剤Cとして、非イオン性の乳化剤を使用することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
水性媒体が3以上9以下のpH値を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
アミノカルボン酸化合物Aとして、ラクタムを使用することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
アミノカルボン酸化合物Aとして、ε−カプロラクタムおよび/またはω−ラウリンラクタムを使用することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
第一の反応段階で得られるポリアミドが、−70〜+200℃のガラス転移温度を有するように、アミノカルボン酸化合物A、ならびに場合により化合物F〜Lを選択することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
第一の反応段階において、エチレン性不飽和モノマーDおよび/または溶剤Eを使用することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
水中でわずかに可溶性の有機溶剤Eを、第一の反応段階において水の全量に対して、0.1〜40質量%の量で使用することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
第一の反応段階において、エチレン性不飽和モノマーDを使用するが、溶剤Eを使用しないことを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
エチレン性不飽和モノマーDが、わずかな水溶性を有することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
アミノカルボン酸化合物A対エチレン性不飽和モノマーDの量比が、1:99〜99:1であることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
エチレン性不飽和モノマーDとして、
アクリル酸および/またはメタクリル酸と、1〜12個の炭素原子を有するアルカノールおよび/またはスチレンとのエステル 50〜99.9質量%、または
スチレンおよびブタジエン 50〜99.9質量%、または
塩化ビニルおよび/または塩化ビニリデン 50〜99.9質量%、または
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、吉草酸のビニルエステル、長鎖脂肪酸のビニルエステルおよび/またはエチレン 40〜99.9質量%
を含有するモノマー混合物を使用することを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
第一の反応段階において、ポリアミドの形成が終了した後の水性媒体に、場合により残りの水、分散剤Cおよび/またはエチレン性不飽和モノマーDの残留量ならびにラジカル開始剤の全量を、第二の反応段階において添加することを特徴とする、請求項3から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
請求項1から19までのいずれか1項記載の方法により得られる水性ポリマー分散液。
【請求項21】
接着剤、シーラント、人工しっくい、紙の塗工材料、印刷インク、化粧品および塗料中の成分として、皮革およびテキスタイルの処理のため、繊維結合のため、ならびに鉱物質の結合剤またはアスファルトの変性のための、請求項20記載の水性ポリマー分散液の使用。
【請求項22】
請求項20記載の水性ポリマー分散液を乾燥することによるポリマー粉末の製造。
【請求項23】
顔料、プラスチック組成物中の充填剤として、接着剤、シーラント、人工しっくい、紙の塗工材料、印刷インク、化粧品、粉体塗料および塗料中の成分として、皮革およびテキスタイルの処理のため、繊維結合のため、ならびに鉱物質の結合剤またはアスファルトの変性のための、請求項22記載のポリマー粉末の使用。

【公表番号】特表2008−528784(P2008−528784A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553610(P2007−553610)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050653
【国際公開番号】WO2006/082234
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】