説明

水性ポリマー分散液の製造方法

水性媒体中で、第一反応段階において、ジアミン化合物及びジカルボン酸化合物を酵素及び分散剤並びに場合により水に微溶の有機溶剤及び/又はエチレン系不飽和モノマーの存在で反応させてポリアミドに変換し、それに引き続いてこのポリアミドの存在で第二反応段階においてエチレン系不飽和モノマーをラジカル重合させる、水性ポリマー分散液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、
水性媒体中で、第一反応段階において、
a)ジアミン化合物A及び
b)ジカルボン酸化合物Bを、
以下のもの:
c)ジアミン化合物A及びジカルボン酸化合物Bの重縮合反応を触媒する酵素C及び
d)分散剤D、
並びに場合により
e)水に微溶の有機溶剤E及び/又は
f)エチレン系不飽和モノマーF
の存在で、
反応させてポリアミドに変換し、それに引き続いてこのポリアミドの存在で、第二反応段階においてエチレン系不飽和モノマーFをラジカル重合させる
ことにより特徴付けられる、水性ポリマー分散液の製造方法である。
【0002】
本発明の対象は、本発明による方法により得ることができる水性ポリマー分散液、前記分散液から得ることができるポリマー粉末並びにそれらの使用でもある。
【0003】
水性ポリアミド分散液の製造方法は一般的に知られている。その場合に、製造は、通例、有機ジアミン及び有機ジカルボン酸がポリアミドに変換されるようにして行われる。ついで、このポリアミドは、その後の段階において、通例、まず最初にポリアミド溶融物へ変換され、ついでこれは有機溶剤及び/又は分散剤の助けをかりて、多様な方法により、水性媒体中でいわゆる二次分散液の形成下に分散される。溶剤が使用される場合には、この溶剤は、分散工程に引き続き、再び留去されなければならない(これについては例えば独国特許出願公告(DE-AS)第1028328号明細書、米国特許(US-A)第2,951,054号明細書、米国特許(US-A)第3,130,181号明細書、米国特許(US-A)第4,886,844号明細書、米国特許(US-A)第5,236,996号明細書、米国特許(US-B)第6,777,488号明細書、国際公開(WO)第97/47686号パンフレット又は国際公開(WO)第98/44062号パンフレット参照)。本出願人によりドイツ特許商標庁に提出された出願番号DE 10 2004 058 072.3を有する特許出願明細書によれば、ジアミン化合物及びジカルボン酸化合物から出発して、水性ポリアミド分散液の酵素により触媒された直接製造が開示されている。
【0004】
知られた方法により入手可能な水性ポリアミド分散液、もしくはそれらのポリアミド自体は、多数の用途において有利な性質を有するが、その場合に、それにもかかわらず、さらなる最適化の必要がしばしば存在する。
【0005】
本発明の基礎となるのは、ポリアミド化合物をベースとする新種の水性ポリマー分散液の製造方法を提供するという課題であった。
【0006】
意外なことに、前記課題は、冒頭に定義された方法によって解決された。
【0007】
ジアミン化合物Aとして、第一級又は第二級のアミノ基2個を有する全ての有機ジアミン化合物が考慮に値し、その場合に第一級アミノ基が好ましい。その場合に、アミノ基2個を有する有機基本骨格は、C2〜C20−脂肪族構造、C3〜C20−脂環式構造、芳香族構造又はヘテロ芳香族構造を有していてよい。第一級アミノ基2個を有する化合物の例は、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、2−メチル−1,3−ジアミノプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン(ネオペンチルジアミン)、1,4−ジアミノブタン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1−メチル−1,4−ジアミノブタン、2−メチル−1,4−ジアミノブタン、2,2−ジメチル−1,4−ジアミノブタン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,2−ジアミノペンタン、1,3−ジアミノペンタン、1,4−ジアミノペンタン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、3−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2,2−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、2,3−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、2,4−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,2−ジアミノヘキサン、1,3−ジアミノヘキサン、1,4−ジアミノヘキサン、1,5−ジアミノヘキサン、2−メチル−1,5−ジアミノヘキサン、3−メチル−1,5−ジアミノヘキサン、2,2−ジメチル−1,5−ジアミノヘキサン、2,3−ジメチル−1,5−ジアミノヘキサン、3,3−ジメチル−1,5−ジアミノヘキサン、N,N′−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、3,3′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン(ジシアン(Dicyan))、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン(Laromin(登録商標))、イソホロンジアミン(3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン)、1,4−ジアジン(ピペラジン)、1,2−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、m−キシリレンジアミン[1,3−(ジアミノメチル)ベンゼン]並びにp−キシリレンジアミン[1,4−(ジアミノメチル)ベンゼン]である。もちろん、前記の化合物の混合物も使用されることができる。
【0008】
好ましくは、1,6−ジアミノヘキサン、1,12−ジアミノドデカン、2,2−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、3,3′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミンが使用される。
【0009】
ジカルボン酸化合物Bとして、原則的に全ての、カルボン酸基(カルボキシル基)又はそれらの誘導体を2個有する、C2〜C40−脂肪族化合物、C3〜C20−脂環式化合物、芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物が使用されることができる。誘導体として、特に、前記のジカルボン酸のC1〜C10−アルキル−モノエステル又は−ジエステル、好ましくはメチル−、エチル−、n−プロピル−又はイソプロピル−モノエステル又は−ジエステル、相応するジカルボン酸ハロゲン化物、特にジカルボン酸ジクロリド並びに相応するジカルボン酸無水物が使用される。そのような化合物の例は、エタン二酸(シュウ酸)、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、ヘプタン二酸(ピメリン酸)、オクタン二酸(スベリン酸)、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸(ブラシル酸)、C32−ダイマー脂肪酸(Cognis Corp.社、USAの商品)、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸(フタル酸)、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸(イソフタル酸)又はベンゼン−1,4−ジカルボン酸(テレフタル酸)、それらのメチルエステル、例えばエタン二酸ジメチルエステル、プロパン二酸ジメチルエステル、ブタン二酸ジメチルエステル、ペンタン二酸ジメチルエステル、ヘキサン二酸ジメチルエステル、ヘプタン二酸ジメチルエステル、オクタン二酸ジメチルエステル、ノナン二酸ジメチルエステル、デカン二酸ジメチルエステル、ウンデカン二酸ジメチルエステル、ドデカン二酸ジメチルエステル、トリデカン二酸ジメチルエステル、C32−ダイマー脂肪酸ジメチルエステル、フタル酸ジメチルエステル、イソフタル酸ジメチルエステル又はテレフタル酸ジメチルエステル、それらのジクロリド、例えばエタン二酸ジクロリド、プロパン二酸ジクロリド、ブタン二酸ジクロリド、ペンタン二酸ジクロリド、ヘキサン二酸ジクロリド、ヘプタン二酸ジクロリド、オクタン二酸ジクロリド、ノナン二酸ジクロリド、デカン二酸ジクロリド、ウンデカン二酸ジクロリド、ドデカン二酸ジクロリド、トリデカン二酸ジクロリド、C32−ダイマー脂肪酸ジクロリド、フタル酸ジクロリド、イソフタル酸ジクロリド又はテレフタル酸ジクロリド並びにそれらの無水物、例えばブタンジカルボン酸無水物、ペンタンジカルボン酸無水物又はフタル酸無水物である。もちろん、前記の化合物Bの混合物も使用されることができる。
【0010】
好ましくは、ジカルボン酸、特にブタン二酸、ヘキサン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸もしくはそれらの相応するジメチルエステルが使用される。
【0011】
本発明によれば、ジアミン化合物A及びジカルボン酸化合物Bの量比は、ジカルボン酸化合物B対ジアミン化合物Aのモル比が、0.5〜1.5、通例0.8〜1.3、しばしば0.9〜1.1及び頻繁に0.95〜1.05であるように選択される。モル比が1である、すなわち、カルボキシル基もしくはそれから誘導された基(例えばエステル基[−CO2−アルキル]又はカルボン酸ハロゲン化物[−CO−Hal])と同じ数のアミノ基が存在している場合が特に好都合である。
【0012】
水性媒体中でのジアミン化合物Aとジカルボン酸化合物Bとの反応が、ジアミン化合物A及びジカルボン酸化合物Bの重縮合反応を触媒する酵素Cの存在で行われることが方法にとって本質的である。その場合に、重縮合反応は、ジアミン化合物Aからのアミノ基と、ジカルボン酸化合物Bからのカルボキシル基もしくはそれから誘導された基とが、水(ジカルボン酸もしくはジカルボン酸無水物)、アルコール(エステル)又はハロゲン化水素(カルボン酸ハロゲン化物)の脱離下に、ポリアミドを形成して反応することであると理解される。
【0013】
【化1】

【0014】
その場合に、酵素Cとして、水性媒体中でのジアミン化合物A及びジカルボン酸化合物Bの重縮合反応を触媒することのできる原則的に全ての酵素が使用されることができる。酵素Cとして特に適しているのは、加水分解酵素[EC 3.x.x.x]、例えばエステラーゼ[EC 3.1.x.x]、プロテアーゼ[EC 3.4.x.x]及び/又はペプチド結合以外のC−N−結合と反応する加水分解酵素である。本発明によれば、特に、カルボキシルエステラーゼ[EC 3.1.1.1]及び/又はリパーゼ[EC 3.1.1.3]が使用される。これらの例は、アクロモバクター(Achromobacter sp.)、アスペルギルス(Aspergillus sp.)、カンジダ(Candida sp.)、カンジダ アンタルクチカ(Candida antarctica)、ムコール(Mucor sp.)、ペニシリウム(Penicilium sp.)、ゲオトリクム(Geotricum sp.)、リゾープス(Rhizopus sp)、バークホルデリア(Burkholderia sp.)、シュードモナス(Pseudomonas sp.)、シュードモナス セパシア(Pseudomonas cepacia)、サーモミセス(Thermomyces sp.)、ブタ膵臓又はコムギ麦芽由来のリパーゼ並びにバチルス(Bacillus sp.)、シュードモナス(Pseudomonas sp.)、バークホルデリア(Burkholderia sp.)、ムコール(Mucor sp.)、サッカロミセス(Saccharomyces sp.)、リゾープス(Rhizopus sp.)、サーモアナエロビウム(Thermoanaerobium sp.)、ブタ肝臓又はウマ肝臓由来のカルボキシルエステラーゼである。もちろん、単独の酵素C又は異なる酵素Cの混合物を使用することが可能である。酵素Cを遊離した形及び/又は固定化した形で使用することも可能である。
【0015】
好ましくは、遊離した形及び/又は固定化した形の、シュードモナス セパシア(Pseudomonas cepacia)、バークホルデリア プラタリイ(Burkholderia platarii)又はカンジダ アンタルクチカ(Candida antarctica)由来のリパーゼ(例えば、Novozymes A/S社、デンマークのNovozym(登録商標) 435)が使用される。
【0016】
使用される酵素Cの全量は、ジアミン化合物A及びジカルボン酸化合物Bの全量の総和をその都度基準として、通例、0.001〜40質量%、しばしば0.1〜15質量%及び頻繁に0.5〜8質量%である。
【0017】
本発明による方法により使用される分散剤Dは、原則的に乳化剤及び/又は保護コロイドであってよい。その場合に、乳化剤及び/又は保護コロイドが、特に、使用される酵素Cと相溶性であり、かつこれらを失活させないように選択されることは自明である。どの乳化剤及び/又は保護コロイドが特定の酵素Cの場合に使用されることができるかは、当業者は知っているか又は当業者により単純な予備試験で決定されることができる。
【0018】
適した保護コロイドは、例えばポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリアクリル酸及びポリメタクリル酸のアルカリ金属塩、ゼラチン誘導体、あるいは以下のもの:アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び/又は4−スチレンスルホン酸を有するコポリマー及びそれらのアルカリ金属塩、しかしまた以下のもの:N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アミン基含有アクリラート、アミン基含有メタクリラート、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを有するホモポリマー及びコポリマーである。適した別の保護コロイドの詳細な記載は、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, XIV/1巻, Makromolekulare Stoffe, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart, 1961, p.411-420に見出される。
【0019】
もちろん、保護コロイド及び/又は乳化剤からなる混合物も使用されることができる。しばしば、分散剤として、相対分子量が、保護コロイドとは異なり、通常1000未満である乳化剤が専ら使用される。これらは、アニオン性、カチオン性又は非イオン性の性質であってよい。もちろん、界面活性物質の混合物の使用の場合に、個々の成分は互いに相溶性でなければならず、このことが疑わしい場合には少ない予備試験に基づいて調査されることができる。一般的に、アニオン性乳化剤は互いに相溶性であり、かつ非イオン性乳化剤と相溶性である。同じことがカチオン性乳化剤にもあてはまる一方で、アニオン性乳化剤及びカチオン性乳化剤は、たいてい互いに相溶性ではない。適した乳化剤の概観は、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, XIV/1巻, Makromolekulare Stoffe, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart, 1961, p.192-208に見出される。
【0020】
本発明によれば、分散剤Dとして特に乳化剤が使用される。
【0021】
一般に使われている非イオン性乳化剤は、例えば、エトキシル化モノアルキルフェノール、エトキシル化ジアルキルフェノール及びエトキシル化トリアルキルフェノール((EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)並びにエトキシル化脂肪アルコール(EO度:3〜80;アルキル基:C8〜C36)である。これらの例は、BASF AG社の、Lutensol(登録商標) A-銘柄(C1214−脂肪アルコールエトキシラート、EO度:3〜8)、Lutensol(登録商標) AO-銘柄(C1315−オキソアルコールエトキシラート、EO度:3〜30)、Lutensol(登録商標) AT-銘柄(C1618−脂肪アルコールエトキシラート、EO度:11〜80)、Lutensol(登録商標) ON-銘柄(C10−オキソアルコールエトキシラート、EO度:3〜11)及びLutensol(登録商標) TO-銘柄(C13−オキソアルコールエトキシラート、EO度:3〜20)である。
【0022】
常用のアニオン性乳化剤は、例えば、アルキル硫酸塩(アルキル基:C8〜C12)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、エトキシル化アルカノール(EO度:4〜30、アルキル基:C12〜C18)及びエトキシル化アルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)の硫酸半エステルのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩及びアルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9〜C18)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩である。
【0023】
別のアニオン性乳化剤として、さらに、一般式(I)
【化2】

[式中、R1及びR2は水素原子又はC4〜C24−アルキルを表し、かつ同時に水素原子ではなく、かつM1及びM2はアルカリ金属イオン及び/又はアンモニウムイオンであってよい]で示される化合物が有用であることが判明している。一般式(I)中で、R1及びR2は、炭素原子6〜18個を有し、特に炭素原子6、12及び16個を有する好ましくは線状又は分枝鎖状のアルキル基又は水素を表し、その場合にR1及びR2は双方とも同時に水素原子ではない。M1及びM2は、好ましくはナトリウム、カリウム又はアンモニウムであり、その場合にナトリウムが特に好ましい。M1及びM2がナトリウム、R1が炭素原子12個を有する分枝鎖状アルキル基及びR2が水素原子又はR1である化合物(I)が特に有利である。しばしば、モノアルキル化生成物50〜90質量%の割合を有する工業用混合物、例えばDowfax(登録商標) 2A1(Dow Chemical Companyの銘柄)が使用される。化合物(I)は一般的に、例えば米国特許(US-A)第4 269 749号明細書から、知られており、かつ商業的に入手可能である。
【0024】
適したカチオン活性乳化剤は、通例、C6〜C18−アルキル基、C6〜C18−アルキルアリール基又はヘテロ環式基を有する、第一級、第二級、第三級又は第四級のアンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、オキサゾリニウム塩、モルホリニウム塩、チアゾリニウム塩並びにアミンオキシドの塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、トロピリウム塩、スルホニウム塩及びホスホニウム塩である。例示的に、酢酸ドデシルアンモニウム又は相応する硫酸塩、多様な2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルパラフィン酸エステルの硫酸塩又は酢酸塩、硫酸N−セチルピリジニウム、硫酸N−ラウリルピリジニウム並びに硫酸N−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウム、硫酸N−ドデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウム、硫酸N−オクチル−N,N,N−トリメチルアンモニウム、硫酸N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウム並びにジェミニ型界面活性剤N,N′−(ラウリルジメチル)エチレンジアミン二硫酸塩、エトキシル化獣脂アルキル−N−メチルアンモニウム硫酸塩及びエトキシル化オレイルアミン(例えば、BASF AG社のUniperol(登録商標) AC、エチレンオキシド単位約12)を挙げることができる。さらに多数の例は、H.Stache, Tensid-Taschenbuch, Carl-Hanser-Verlag, Muenchen, Wien, 1981及びMcCutcheon's, Emulsifiers & Detergents, MC Publishing Company, Glen Rock, 1989に見出される。アニオン性対基(anionischen Gegengruppen)ができるだけ低い求核性であることが本質的であり、例えば過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩及びカルボン酸塩、例えば酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、並びに有機スルホン酸の共役アニオン、例えばメチルスルホン酸塩、トリフルオロメチルスルホン酸塩及びp−トルエンスルホン酸塩、さらにテトラフルオロホウ酸塩、テトラフェニルホウ酸塩、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩、テトラキス[ビス(3,5−トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヘキサフルオロヒ酸塩又はヘキサフルオロアンチモン酸塩である。
【0025】
分散剤Dとして好ましくは使用される乳化剤は、ジアミン化合物A及びジカルボン酸化合物Bの全量の総和をその都度基準として、0.005〜20質量%、好ましくは0.01〜15質量%、特に0.1〜10質量%の全量で有利には使用される。
【0026】
分散剤Dとして、乳化剤に加えて又は乳化剤の代わりに使用される保護コロイドの全量は、ジアミン化合物A及びジカルボン酸化合物Bの全量の総和をその都度基準として、頻繁に0.1〜10質量%及びしばしば0.2〜7質量%である。
【0027】
しかしながら、好ましくは乳化剤、特に非イオン性乳化剤が分散剤Dとして使用される。
【0028】
本発明によれば、第一反応段階において、水に微溶の有機溶剤E及び/又はエチレン系不飽和モノマーFも場合により付加的に使用されることができる。
【0029】
適した溶剤Eは、炭素原子5〜30個を有する液状の脂肪族及び芳香族の炭化水素、例えばn−ペンタン及び異性体、シクロペンタン、n−ヘキサン及び異性体、シクロヘキサン、n−ヘプタン及び異性体、n−オクタン及び異性体、n−ノナン及び異性体、n−デカン及び異性体、n−ドデカン及び異性体、n−テトラデカン及び異性体、n−ヘキサデカン及び異性体、n−オクタデカン及び異性体、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クメン、o−、m−又はp−キシレン、メシチレン、並びに一般的に、30〜250℃の沸点範囲の炭化水素混合物である。同様に、ヒドロキシ化合物、例えば、炭素原子10〜28個を有する飽和及び不飽和の脂肪アルコール、例えばn−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール及びそれらの異性体又はセチルアルコール、エステル、例えば、酸部分に炭素原子10〜28個及びアルコール部分に炭素原子1〜10個を有する脂肪酸エステル又はカルボン酸部分に炭素原子1〜10個及びアルコール部分に炭素原子10〜28個を有するカルボン酸及び脂肪アルコールからなるエステルが使用可能である。もちろん、前記の溶剤の混合物を使用することも可能である。
【0030】
溶剤全量は、第一反応段階における水の全量をその都度基準として、60質量%まで、好ましくは0.1〜40質量%及び特に好ましくは0.5〜10質量%である。
【0031】
水に微溶の(gering in Wasser loeslichem)溶剤Eは、本明細書の範囲内で、溶剤E又は溶剤Eからなる混合物が、脱イオン水中に20℃及び1atm(絶対)で≦50g/l、好ましくは≦10g/l及び有利に≦5g/lの溶解度を有する場合であると理解されるべきである。
【0032】
エチレン系不飽和モノマーFとして、原則的に全てのラジカル重合可能なエチレン系不飽和化合物が考慮に値する。モノマーFとして、特に単純には、ラジカル重合可能なエチレン系不飽和モノマー、例えばエチレン、ビニル芳香族モノマー、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−クロロスチレン又はビニルトルエン類、ビニルアルコールと炭素原子1〜18個を有するモノカルボン酸とからなるエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニル−n−ブチラート、ビニルラウラート及びステアリン酸ビニル、好ましくは炭素原子3〜6個を有するα,β−モノエチレン系不飽和のモノカルボン酸及びジカルボン酸、例えば特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸と、一般的に炭素原子1〜12個、好ましくは1〜8個及び特に1〜4個を有するアルカノールとからなるエステル、例えば特にアクリル酸メチルエステル及びメタクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル及びメタクリル酸エチルエステル、アクリル酸−n−ブチルエステル及びメタクリル酸−n−ブチルエステル、アクリル酸イソブチルエステル及びメタクリル酸イソブチルエステル及びアクリル酸−2−エチルヘキシルエステル及びメタクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、マレイン酸ジメチルエステル又はマレイン酸−ジ−n−ブチルエステル、α,β−モノエチレン系不飽和カルボン酸のニトリル、例えばアクリロニトリル並びにC4〜8−共役ジエン、例えば1,3−ブタジエン及びイソプレンが考慮に値する。もちろん、前記のモノマーFの混合物も使用されることができる。挙げたモノマーFは、通例、本発明による方法により重合すべきモノマーFの全量を基準として、通常、≧50質量%、好ましくは≧80質量%又は有利に≧90質量%の割合を占める主モノマーを形成する。通例、これらのモノマーは、標準状態[20℃、1atm(絶対)]で、単に中程度ないし低い水への溶解度を有する。
【0033】
エチレン系不飽和モノマーFの重合により得ることができるポリマーの内部強さを通常高める別のモノマーFは、通常、エポキシ基、ヒドロキシ基、N−メチロール基又はカルボニル基を少なくとも1個、又は非共役のエチレン系不飽和二重結合を少なくとも2個有する。これらの例は、ビニル基2個を有するモノマー、ビニリデン基2個を有するモノマー並びにアルケニル基2個を有するモノマーである。その場合に、α,β−モノエチレン系不飽和モノカルボン酸との二価アルコールのジエステルが特に有利であり、それらのモノカルボン酸の中ではアクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。そのような非共役のエチレン系不飽和二重結合2個を有するモノマーの例は、アルキレングリコールジアクリラート及びアルキレングリコールジメタクリラート、例えばエチレングリコールジアクリラート、1,2−プロピレングリコールジアクリラート、1,3−プロピレングリコールジアクリラート、1,3−ブチレングリコールジアクリラート、1,4−ブチレングリコールジアクリラート及びエチレングリコールジメタクリラート、1,2−プロピレングリコールジメタクリラート、1,3−プロピレングリコールジメタクリラート、1,3−ブチレングリコールジメタクリラート、1,4−ブチレングリコールジメタクリラート並びにジビニルベンゼン、ビニルメタクリラート、ビニルアクリラート、アリルメタクリラート、アリルアクリラート、ジアリルマレアート、ジアリルフマラート、メチレンビスアクリルアミド、シクロペンタジエニルアクリラート、トリアリルシアヌラート又はトリアリルイソシアヌラートである。これに関連して特に重要であるのは、メタクリル酸−C1〜C8−ヒドロキシアルキルエステル及びアクリル酸−C1〜C8−ヒドロキシアルキルエステル、例えばn−ヒドロキシエチルアクリラート、n−ヒドロキシエチルメタクリラート、n−ヒドロキシプロピルアクリラート、n−ヒドロキシプロピルメタクリラート又はn−ヒドロキシブチルアクリラート及びn−ヒドロキシブチルメタクリラート並びにジアセトンアクリルアミド及びアセチルアセトキシエチルアクリラートもしくはアセチルアセトキシエチルメタクリラートのような化合物でもある。本発明によれば、前記のモノマーは、エチレン系不飽和モノマーFの全量を基準として、5質量%まで、しばしば0.1〜3質量%及び頻繁に0.5〜2質量%の量で使用される。
【0034】
モノマーFとして、シロキサン基を有するエチレン系不飽和モノマー、例えばビニルトリアルコキシシラン、例えばビニルトリメトキシシラン、アルキルビニルジアルコキシシラン、アクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、又はメタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、例えばアクリルオキシエチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン又はメタクリルオキシプロピルトリメトキシシランも使用可能である。これらのモノマーは、モノマーFの全量をその都度基準として、5質量%まで、しばしば0.01〜3質量%及び頻繁に0.05〜1質量%の全量で使用される。
【0035】
それに加えて、モノマーFとして、酸基及び/又はそれらの相応するアニオンを少なくとも1個有するそのようなエチレン系不飽和モノマーFS、又はアミノ基、アミド基、ウレイド基又はN−ヘテロ環式基及び/又は窒素上のプロトン化又はアルキル化されたそれらのアンモニウム誘導体を少なくとも1個を有するそのようなエチレン系不飽和モノマーFAが、付加的に使用されることができる。重合すべきモノマーFの全量を基準として、モノマーFSもしくはモノマーFAの量は、10質量%まで、頻繁に0.1〜7質量%及びしばしば0.2〜5質量%である。
【0036】
モノマーFSとして、酸基少なくとも1個を有するエチレン系不飽和モノマーが使用される。その場合に、酸基、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基及び/又はホスホン酸基であってよい。そのようなモノマーFSの例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸並びにn−ヒドロキシアルキルアクリラート及びn−ヒドロキシアルキルメタクリラートのリン酸モノエステル、例えばヒドロキシエチルアクリラート、n−ヒドロキシプロピルアクリラート、n−ヒドロキシブチルアクリラート及びヒドロキシエチルメタクリラート、n−ヒドロキシプロピルメタクリラート又はn−ヒドロキシブチルメタクリラートのリン酸モノエステルである。しかし、本発明によれば、酸基少なくとも1個を有する前記のエチレン系不飽和モノマーのアンモニウム塩及びアルカリ金属塩が使用されることもできる。アルカリ金属として、ナトリウム及びカリウムが特に好ましい。これらの例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩並びにヒドロキシエチルアクリラート、n−ヒドロキシプロピルアクリラート、n−ヒドロキシブチルアクリラート及びヒドロキシエチルメタクリラート、n−ヒドロキシプロピルメタクリラート又はn−ヒドロキシブチルメタクリラートのリン酸モノエステルの一アンモニウム塩及び二アンモニウム塩、一ナトリウム塩及び二ナトリウム塩及び一カリウム塩及び二カリウム塩である。
【0037】
好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸がモノマーFSとして使用される。
【0038】
モノマーFAとして、アミノ基、アミド基、ウレイド基又はN−ヘテロ環式基及び/又は窒素上のプロトン化又はアルキル化されたそれらのアンモニウム誘導体を少なくとも1個有するエチレン系不飽和モノマーが使用される。
【0039】
アミノ基少なくとも1個を有するモノマーFAの例は、2−アミノエチルアクリラート、2−アミノエチルメタクリラート、3−アミノプロピルアクリラート、3−アミノプロピルメタクリラート、4−アミノ−n−ブチルアクリラート、4−アミノ−n−ブチルメタクリラート、2−(N−メチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N−メチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N−エチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N−エチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N−n−プロピルアミノ)エチルアクリラート、2−(N−n−プロピルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N−イソプロピルアミノ)エチルアクリラート、2−(N−イソプロピルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N−t−ブチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N−t−ブチルアミノ)エチルメタクリラート(例えば、Elf Atochem社のNorsocryl(登録商標) TBAEMAとして商業的に入手可能)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリラート(例えば、Elf Atochem社のNorsocryl(登録商標) ADAMEとして商業的に入手可能)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリラート(例えば、Elf Atochem社のNorsocryl(登録商標) MADAMEとして商業的に入手可能)、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N,N−ジ−イソプロピルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジ−イソプロピルアミノ)エチルメタクリラート、3−(N−メチルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N−メチルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N−エチルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N−エチルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N−n−プロピルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N−n−プロピルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N−イソプロピルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N−イソプロピルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N−t−ブチルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N−t−ブチルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)プロピルアクリラート、3−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)プロピルメタクリラート、3−(N,N−ジ−イソプロピルアミノ)プロピルアクリラート及び3−(N,N−ジ−イソプロピルアミノ)プロピルメタクリラートである。
【0040】
アミド基少なくとも1個を有するモノマーFAの例は、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルメタアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルメタクリルアミド、N,N−ジ−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジ−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルアクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルメタクリルアミド、N−(3−N′,N′−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N′−メチレンビスアクリルアミド、N−(ジフェニルメチル)アクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、しかしまた、N−ビニルピロリドン及びN−ビニルカプロラクタムである。
【0041】
ウレイド基少なくとも1個を有するモノマーFAの例は、N,N′−ジビニルエチレン尿素及び2−(1−イミダゾリン−2−オンイル)エチルメタクリラート(例えば、Elf Atochem社のNorsocryl(登録商標)として商業的に入手可能)である。
【0042】
少なくとも1つのN−ヘテロ環式基を有するモノマーFAの例は、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール及びN−ビニルカルバゾールである。
【0043】
好ましくは、モノマーFAとして、次の化合物が使用される:2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルイミダゾール、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリラート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリラート、2−(N−t−ブチルアミノ)エチルメタクリラート、N−(3−N′,N′−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド及び2−(1−イミダゾリン−2−オンイル)エチルメタクリラート。
【0044】
水性反応媒体のpH値に依存して、前記の窒素含有モノマーFAの一部又は全量は、窒素上のプロトン化された第四級アンモニウム形で存在していてよい。
【0045】
窒素上に第四級アルキルアンモニウム構造を有するモノマーFAとして、例示的に、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド(例えば、Elf Atochem社のNorsocryl(登録商標) ADAMQUAT MC 80として商業的に入手可能)、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド(例えば、Elf Atochem社のNorsocryl(登録商標) MADQUAT MC 75として商業的に入手可能)、2−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルメタクリラート、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド(例えば、Elf Atochem社のNorsocryl(登録商標) ADAMQUAT BZ 80として商業的に入手可能)、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド(例えば、Elf Atochem社のNorsocryl(登録商標) MADQUAT BZ 75として商業的に入手可能)、2−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド、3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド、3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルアクリラートクロリド及び3−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルメタクリラートクロリドを挙げることができる。もちろん、挙げたクロリドの代わりに、相応するブロミド及びスルファートも使用されることができる。
【0046】
好ましくは、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルアクリラートクロリド及び2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリラートクロリドが使用される。
【0047】
もちろん、前記のエチレン系不飽和モノマーFSもしくはFAの混合物も使用されることができる。
【0048】
本発明によれば有利には、エチレン系不飽和モノマーFとして、
炭素原子1〜12個を有するアルカノールとのアクリル酸及び/又はメタクリル酸のエステル及び/又はスチレン 50〜99.9質量%、又は
スチレン及びブタジエン 50〜99.9質量%、又は
塩化ビニル及び/又は塩化ビニリデン 50〜99.9質量%、又は
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸(Versaticsaeure)のビニルエステル、長鎖脂肪酸のビニルエステル及び/又はエチレン 40〜99.9質量%
を含有するモノマー混合物が使用される。
【0049】
本発明によれば、同様に(溶剤Eに類似して)水への低い溶解度を有するエチレン系不飽和モノマーF又はモノマーFの混合物が好ましい。
【0050】
第一反応段階において場合により使用されるエチレン系不飽和モノマーFの量は、モノマーFの全量をその都度基準として、0〜100質量%、しばしば30〜90質量%及び頻繁に40〜70質量%である。
【0051】
溶剤E及び/又はエチレン系不飽和モノマーF及びそれらの量が第一反応段階において、水性媒体への溶剤E及び/又はエチレン系不飽和モノマーFの溶解度が、第一反応段階の反応条件下に、第一反応段階において場合により使用される溶剤E及び/又はモノマーFの全量をその都度基準として、≦50質量%、≦40質量%、≦30質量%、≦20質量%又は≦10質量%であり、ひいては別個の相として水性媒体中で存在するように選択される場合が有利である。好ましくは、第一反応段階は、溶剤E及び/又はモノマーFの存在で、しかしながら特に好ましくはモノマーFの存在及び溶剤Eの不在で行われる。
【0052】
溶剤E及び/又はモノマーFは、第一反応段階において、ジアミン化合物A及び/又はジカルボン酸化合物Bが水性媒体中に、第一反応段階の反応条件下に良好な溶解度を有する、すなわちそれらの溶解度が>50g/lもしくは≧100g/lである場合に特に使用される。
【0053】
本発明による方法は、ジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B並びに場合により溶剤E及び/又はモノマーFの少なくとも部分量が水性媒体中で、≦1000nmの平均液滴直径を有する分散相として(いわゆる水中油型ミニエマルション又は略してミニエマルション)存在する場合に有利に進行する。
【0054】
特に有利には、本発明による方法は第一反応段階において、まず最初にジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B、分散剤D並びに場合により溶剤E及び/又はモノマーFの少なくとも部分量を、水の部分量もしくは全量中へ導入し、その後、適した措置を用いて、ジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B並びに場合により溶剤E及び/又はモノマーFを含み、≦1000nmの平均液滴直径を有する分散相を製造し(ミニエマルション)、それに引き続いて水性媒体に、反応温度で、酵素Cの全量並びに水、ジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B、分散剤D並びに場合により溶剤Eの場合により残っている残量を添加するようにして行われる。しばしば、ジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B、分散剤D及び場合により溶剤Eの≧50質量%、≧60質量%、≧70質量%、≧80質量%、≧90質量%又はそれどころか全量が、水の≧50質量%、≧60質量%、≧70質量%、≧80質量%、≧90質量%又はそれどころか全量中へ導入され、≦1000nmの液滴直径を有する分散相が製造され、それに引き続いて水性媒体に、反応温度で、酵素Cの全量並びに水、ジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B、分散剤D及び場合により溶剤Eの場合により残っている残量が添加される。その場合に、酵素C並びに水、ジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B、分散剤D及び場合により溶剤Eの場合により残っている残量は、水性反応媒体に、不連続に一度に、不連続に数度に、並びに連続的に不変の又は変化する質量流量で添加されることができる。
【0055】
しばしば、ジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B及び場合により溶剤Eの全量並びに分散剤Dの少なくとも部分量は、水の主要量又は全量中へ導入され、かつミニエマルションの形成後に、反応温度で、酵素Cの全量、場合により水及び分散剤Dの残量と共に、水性反応媒体中へ添加される。
【0056】
本発明により有利に使用すべき水性ミニエマルションの分散相の液滴の平均の大きさは準弾性動的光散乱の原理により、例えばCoulter Scientific Instruments社のCoulter N4 Plus Particle Analysersを用いて、決定されることができる(自己相関関数の単峰性分析のいわゆるz−平均液滴直径dz)。前記測定は、非水性成分含量が約0.01質量%である希釈された水性ミニエマルションで行われる。その場合に、希釈は、前もって水性ミニエマルション中に含まれているジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B、並びに場合により水に微溶の有機溶剤E及び/又はエチレン系不飽和モノマーFで飽和されていた水を用いて行われる。後者の措置は、希釈に付随して液滴直径の変化が現れることを防止するはずである。
【0057】
本発明によれば、そのようにしていわゆるミニエマルションについて算出されたdzの値は、通常≦700nm、しばしば≦500nmである。本発明によれば、100nm〜400nmもしくは100nm〜300nmのdz範囲が好都合である。通常の場合に、本発明により使用すべき水性ミニエマルションのdzは≧40nmである。
【0058】
水性マクロエマルションからの水性ミニエマルションの一般的な製造は、当業者に知られている(P.L. Tang, E.D. Sudol, C.A. Silebi及びM.S. El-Aasser, Journal of Applied Polymer Science, 第43巻, p.1059-1066 [1991]参照)。
【0059】
このためには、例えば高圧ホモジナイザーが使用されることができる。成分の微細分布は、この機械中で、高い局所的エネルギー供給により達成される。2つの変法は、これに関して特に有用であることがわかっている。
【0060】
第一の変法の場合に、水性マクロエマルションは、ピストンポンプを介して1000bar超に圧縮され、引き続いて狭いスリットを経て放圧される。この作用は、ここでは、スリット中の高いせん断勾配及び圧力勾配及びキャビテーションの相互作用に基づいている。この原理により機能する高圧ホモジナイザーの一例は、Niro-Soavi高圧ホモジナイザー 型式NS1001L Pandaである。
【0061】
第二の変法の場合に、圧縮された水性マクロエマルションは、向かい合わされた2つのノズルを介して混合室中へ放圧される。微細分布作用は、ここでは、混合室中の流体力学的な比にとりわけ依存している。このホモジナイザータイプの一例は、Microfluidics Corpのマイクロフルイダイザー 型式M 120 Eである。この高圧ホモジナイザー中で、水性マクロエマルションは、空気式で運転されるピストンポンプを用いて、1200atmまでの圧力に圧搾され、いわゆる"相互作用室"を経て放圧される。"相互作用室"中で、乳濁液ジェットはマイクロチャネル系中で、2つのジェットに分割され、これらは180°の角度で互いに導かれる。この均質化様式により操作するホモジナイザーの別の例は、Nanojet Engineering GmbHのNanojet型式Expoである。しかしながら、Nanojetの場合に、固定チャネル系の代わりに、機械的に調節されることができる2つの均質化弁が取り付けられている。
【0062】
前記で説明された原理に加えて、しかし、均質化は例えば、超音波の適用(例えばBranson Sonifier II 450)によっても行われることができる。微細分布は、ここでは、キャビテーション機構に基づいてる。超音波を用いる均質化のためには、英国特許(GB-A)第22 50 930号明細書及び米国特許(US-A)第5,108,654号明細書に記載された装置も原則的に適している。その場合に、音波場中で製造される水性ミニエマルションの品質は、導入される音波出力にだけでなく、さらにその他のファクター、例えば混合室中の超音波の強度分布、滞留時間、温度及び乳化すべき物質の物理的性質、例えば粘性、界面張力及び蒸気圧にも依存する。生じる液滴の大きさは、その場合に、とりわけ、分散剤の濃度並びに均質化の際に供給されるエネルギーに依存し、故に例えば、均質化圧もしくは相応する超音波エネルギーの相応する変更により意図的に調節可能である。
【0063】
超音波を用いる常用のマクロエマルションからの本発明により有利に使用される水性ミニエマルションの製造のためには、特に、先の独国特許出願公開(DE)第197 56 874号明細書に記載された装置が有用であることがわかっている。これは、反応空間又は流動反応チャネル、及び超音波を反応空間もしくは流動反応チャネルに伝達するための少なくとも1つの手段を有する装置であり、その場合に超音波を伝達するための手段は、全反応空間、もしくは部分区間中の流動反応チャネルに均一に超音波が照射されることができるように設けられている。このためには、超音波を伝達するための手段の放射面(Abstrahlflaeche)が、本質的には反応空間の表面に相当するかもしくは、反応空間が流動反応チャネルの部分区間である場合には本質的にはチャネルの全幅にわたって延在するように、かつ放射面に対して本質的に垂直の反応空間の深さが、超音波伝達手段の最大の作用深さよりも少ないように設けられている。
【0064】
"反応空間の深さ"という概念は、ここでは、本質的には、超音波伝達手段の放射面と反応空間の底部との間の距離であると理解される。
【0065】
100mmまでの反応空間の深さが好ましい。有利には、反応空間の深さは70mm以下及び特に有利に50mm以下であるべきである。反応空間は原則的に、極めて少ない深さを有していてもよいが、しかしながら、できるだけ少ない閉塞の危険及び容易な洗浄性並びに高い生成物処理量に関して、例えば、高圧ホモジナイザーの場合に常用のスリット高さよりも本質的に大きく、かつたいてい10mm超である反応空間の深さが好ましい。反応空間の深さは有利には、例えばケーシング中へ異なる深さで浸漬する超音波伝達手段によって変えることができる。
【0066】
この装置の第一の実施態様によれば、超音波を伝達するための手段の放射面は、本質的には反応空間の表面に相当する。この実施態様は、本発明により使用されるミニエマルションのバッチ式製造に利用される。この装置を用いて、超音波を全反応空間に作用させることができる。反応空間中で、軸方向の音波放射圧により乱流が発生され、これは強力な横混合を生じさせる。
【0067】
第二の実施態様によれば、そのような装置は流動セルを有する。その場合に、ケーシングは、流入口及び流出口を有する流動反応チャネルとして構成されており、その場合に反応空間は流動反応チャネルの部分区間である。チャネルの幅は、流れ方向に対して本質的には垂直に走っているチャネルの大きさである。その中で、放射面は、流れ方向に対して横向きに流動チャネルの全幅を覆う。この幅に対して垂直の放射面の長さ、すなわち流れ方向の放射面の長さは、超音波の作用範囲を定義する。この第一の実施態様の有利な変法によれば、流動反応チャネルは、本質的には長方形の断面を有する。長方形の一面に、相応する寸法を有する同様に長方形の超音波伝達手段が取り付けられている場合には、特に有効でかつ均一な音波処理は保証されている。しかしながら、超音波場中で支配的な乱流比に基づいて、例えば、丸い伝達手段も欠点なく使用されることができる。さらに、唯一の超音波伝達手段の代わりに、流れ方向でみて直列接続されている複数の別個な伝達手段が配置されることができる。その場合に、放射面並びに反応空間の深さ、すなわち放射面と流動チャネルの底部との間の距離は変えることができる。
【0068】
特に有利には、超音波を伝達するための手段は、自由放射面の反対側の端部が超音波トランスデューサーと結合されているソノトロードとして構成されている。超音波は、例えば逆圧電効果の利用により、発生されることができる。その場合に、発生器を用いて、高周波電気振動(通常10〜100kHz、好ましくは20〜40kHzの範囲内)は発生され、圧電トランスデューサーを介して同じ周波数の機械振動に変換され、かつ伝達要素としてのソノトロードを用いて音波処理すべき媒体中へ放出(eingekoppelt)される。
【0069】
特に好ましくは、ソノトロードは、ロッド形で、軸方向に放射するλ/2(もしくはλ/2の倍数)−縦発振器として構成されている。そのようなソノトロードは、例えば、その振動ノードの一方に設けられたフランジを用いて、ケーシングの開口部中に固定されることができる。それに関して、ケーシング中へのソノトロードの引き込み線は、圧密に構成されていてよいので、音波処理は、反応空間中で高められた圧力下にも実施されることができる。好ましくは、ソノトロードの振動振幅は制御可能であり、すなわちその都度調節される振動振幅がオンラインで調査され、かつ場合により自動的に後制御される。目下の振動振幅の調査は、例えば、ソノトロードに取り付けられた圧電トランスデューサーによるか又は後接続された評価電子機器を有するストレインゲージにより、行われることができる。
【0070】
そのような装置の別の有利な構成によれば、反応空間中に、流動挙動及び混合挙動の改善のための内部構造物が設けられている。これらの内部構造物は、例えば、単純な邪魔板又は多種多様な多孔体であってよい。
【0071】
必要に応じて、混合はそのうえ、付加的な撹拌機によりさらに増強されることができる。有利には反応空間は温度制御可能である。
【0072】
前記の説明から、本発明により、水性媒体への溶解度が反応条件下に十分小さいそのような有機溶剤E及び/又はエチレン系不飽和モノマーFが、前記の量で≦1000nmの溶剤液滴及び/又はモノマー液滴を別個の相として形成するために、使用されることができることが明らかになる。さらにまた、形成される溶剤液滴及び/又はモノマー液滴の溶解能は、ジアミン化合物Aもしくはジカルボン酸化合物Bの少なくとも部分量、しかしながら好ましくは主要量を吸収するために、十分大きくなければならない。
【0073】
本発明による方法にとって重要であるのは、第一反応段階において、ジアミン化合物A及びジカルボン酸化合物Bに加えて、有機ジオール化合物G、ヒドロキシカルボン酸化合物H、アミノアルコール化合物I、アミノカルボン酸化合物K及び/又はヒドロキシル基、第一級又は第二級のアミノ基及び/又はカルボキシル基を1分子あたり少なくとも3個有する有機化合物Lが使用されることができることである。その場合に、個々の化合物G、H、I、K及びLの全量の総和が、ジアミン化合物A及びジカルボン酸化合物Bの全量の総和をその都度基準として、≦50質量%、好ましくは≦40質量%及び特に好ましくは≦30質量%、もしくはしばしば≧0.1質量%又は≧1質量%及び頻繁に≧5質量%であることが本質的である。
【0074】
ジオール化合物Gとして、本発明によれば、炭素原子2〜18個、好ましくは炭素原子4〜14個を有する分枝鎖状又は線状のアルカンジオール、炭素原子5〜20個を有するシクロアルカンジオール又は芳香族ジオールが使用される。
【0075】
適したアルカンジオールの例は、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール又は2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオールである。エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール又は1,12−ドデカンジオールが特に適している。
【0076】
シクロアルカンジオールの例は、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール(1,2−ジメチロールシクロヘキサン)、1,3−シクロ−ヘキサンジメタノール(1,3−ジメチロールシクロヘキサン)、1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−ジメチロールシクロヘキサン)又は2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールである。
【0077】
適した芳香族ジオールの例は、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,2−ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン又は1,7−ジヒドロキシナフタレンである。
【0078】
しかしながら、ジオール化合物Gとして、ポリエーテルジオール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレンオキシド単位≧4個を有する)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレンオキシド単位≧4個を有する)及びポリテトラヒドロフラン(ポリTHF)、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリエチレングリコール(エチレンオキシド単位≧4個を有する)も使用されることができる。ポリTHF、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールとして、数平均分子量(Mn)が通例200〜10000g/mol、好ましくは600〜5000g/molの範囲内である化合物が使用される。
【0079】
前記のジオール化合物の混合物も使用されることができる。
【0080】
ヒドロキシカルボン酸化合物Hとして、ヒドロキシカルボン酸及び/又はそれらのラクトンが使用されることができる。例示的に次のものを挙げることができる:グリコール酸、D−、L−、D,L−乳酸、6−ヒドロキシヘキサン酸(6−ヒドロキシカプロン酸)、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシカプロン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、それらの環状誘導体、例えばグリコリド(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、D−、L−、D,L−ジラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、ε−カプロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ドデカノリド(オキサシクロトリデカン−2−オン)、ウンデカノリド(オキサシクロドデカン−2−オン)又はペンタデカノリド(オキサシクロヘキサデカン−2−オン)。もちろん、異なるヒドロキシカルボン酸化合物Hの混合物も使用されることができる。
【0081】
アミノアルコール化合物Iとして、1個のみのヒドロキシ基及び1個の第二級又は第一級のアミノ基、しかしながら好ましくは1個の第一級アミノ基を有する、原則的に全ての有機化合物、しかしながら好ましくはC2〜C12−脂肪族、C5〜C10−脂環式又は芳香族の有機化合物が使用されることができる。例示的に、2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール、4−アミノブタノール、5−アミノペンタノール、6−アミノヘキサノール、2−アミノシクロペンタノール、3−アミノシクロペンタノール、2−アミノシクロヘキサノール、3−アミノシクロヘキサノール、4−アミノシクロヘキサノール並びに4−アミノメチルシクロヘキサンメタノール(1−メチロール−4−アミノメチルシクロヘキサン)を挙げることができる。もちろん、前記のアミノアルコール化合物Iの混合物も使用されることができる。
【0082】
本明細書の範囲内でアミノカルボン酸及び/又はそれらの相応するラクタム化合物であると理解されるべきであるアミノカルボン酸化合物Kも、ジアミン化合物A及びジカルボン酸化合物Bに加えて、使用されることができる。例示的に、天然に存在するアミノカルボン酸、例えばバリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、プロリン、セリン、チロシン、アスパラギン又はグルタミン並びに3−アミノプロピオン酸、4−アミノ酪酸、5−アミノ吉草酸、6−アミノカプロン酸、7−アミノエナント酸、8−アミノカプリル酸、9−アミノペラルゴン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノラウリン酸及びラクタムであるβ−プロピオラクタム、γ−ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、7−エナントラクタム、8−カプリロラクタム、9−ペラルゴラクタム、10−デカン酸ラクタム、11−ウンデカン酸ラクタム又はω−ラウリン酸ラクタムを挙げることができる。ε−カプロラクタム及びω−ラウリン酸ラクタムが好ましい。もちろん、前記のアミノカルボン酸化合物Kの混合物も使用されることができる。
【0083】
本発明による方法において場合により使用されることができる別の成分として、ヒドロキシル基、第一級又は第二級のアミノ基及び/又はカルボキシル基を1分子あたり少なくとも3個有する有機化合物Lを挙げることができる。例示的に次のものを挙げることができる:酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ポリエーテルトリオール、グリセリン、糖(例えばグルコース、マンノース、フルクトース、ガラクトース、グルコサミン、サッカロース、ラクトース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ゲンチアノース、ケストース、マルトトリオース、ラフィノース、トリメシン酸(1,3,5−ベンゼントリカルボン酸並びにそのエステル又は無水物)、トリメリト酸(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸並びにそのエステル又は無水物)、ピロメリト酸(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸並びにそのエステル又は無水物)、4−ヒドロキシイソフタル酸、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ビスヘキサメチレントリアミン、N,N′−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、ジエタノールアミン又はトリエタノールアミン。前記の化合物Lは、それらの1分子あたり少なくとも3個のヒドロキシル基、第一級又は第二級のアミノ基及び/又はカルボキシル基により、同時に少なくとも2個のポリアミド鎖中へ組み込まれることができ、そのために化合物Lはポリアミド形成の際に分岐作用もしくは架橋作用を有する。化合物Lの含量が高ければ高いほど、もしくはアミノ基、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基が1分子あたりにより多く存在しているほど、ポリアミド形成の際に分枝/架橋度はより高くなる。もちろん、この場合に化合物Lの混合物も使用されることができる。
【0084】
本発明によれば、有機ジオール化合物G、ヒドロキシカルボン酸化合物H、アミノアルコール化合物I、アミノカルボン酸化合物K及び/又はヒドロキシル基、第一級又は第二級のアミノ基及び/又はカルボキシル基を1分子あたり少なくとも3個有する有機化合物Lの混合物も使用されることができる。
【0085】
本発明により第一反応段階において、ジアミン化合物A及びジカルボン酸化合物Bに加えて前記の化合物G〜Lの少なくとも1つも使用される場合には、化合物A及びB並びにG〜Lの量が、カルボキシル基及び/又はそれらの誘導体(個々の化合物B、H、K及びLから)対アミノ基及び/又はヒドロキシル基及び/又はそれらの誘導体(個々の化合物A、G、H、I、K及びLから)の総和の当量比が、0.5〜1.5、通例0.8〜1.3、しばしば0.9〜1.1及び頻繁に0.95〜1.05であるように選択されることが顧慮されるべきである。当量比が1である、すなわち、カルボキシル基もしくはそれから誘導された基と同じ数のアミノ基及びヒドロキシル基が存在している場合が特に好都合である。より良好に理解するために、ジカルボン酸化合物B(遊離酸、エステル、ハロゲン化物又は無水物)が、カルボキシル基2当量、ヒドロキシカルボン酸化合物Hもしくはアミノカルボン酸化合物Kが、その都度カルボキシル基1当量及び有機化合物Lが、カルボキシル基を1分子あたり含有するのと同じ数の当量のカルボキシル基を有することとする。相応して、ジアミン化合物Aは、アミノ基2当量、ジオール化合物Gは、ヒドロキシル基2当量、ヒドロキシカルボン酸化合物Hは、ヒドロキシル基1当量、アミノカルボン酸化合物Kは、アミノ基1当量及び有機化合物Lは、ヒドロキシル基もしくはアミノ基を分子中に含有するのと同じ数の当量のヒドロキシル基もしくはアミノ基を有する。
【0086】
その場合に、本発明による方法のためには、酵素Cは、これらが特に、使用されるジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B、有機ジオール化合物G、ヒドロキシカルボン酸化合物H、アミノアルコール化合物I、アミノカルボン酸化合物K、ヒドロキシル基、第一級又は第二級のアミノ基及び/又はカルボキシル基を1分子あたり少なくとも3個有する有機化合物L、もしくは分散剤D、溶剤E及び/又はエチレン系不飽和モノマーFと相溶性であり、かつこれらにより失活されないように選択されることが自明に理解される。どの化合物A及びB並びにD〜Lが特定の酵素Cの場合に使用されることができるかは、当業者は知っているか又は当業者により単純な予備試験で決定されることができる。
【0087】
ジアミン化合物A及びジカルボン酸化合物Bに加えて、前記の化合物G、H、I、K及び/又はLの1つが使用される場合には、本発明による方法の第一反応段階は有利には、まず最初に、ジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B、化合物G、H、I、K及び/又はL、分散剤D及び場合により溶剤E及び/又はエチレン系不飽和モノマーFの少なくとも部分量が、水の少なくとも部分量中へ導入され、その後、適した措置を用いて、ジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B、化合物G、H、I、K及び/又はL並びに場合により溶剤E及び/又はエチレン系不飽和モノマーFを含み、≦1000nmの平均液滴直径を有する分散相が製造され(ミニエマルション)、それに引き続いて水性媒体に、反応温度で、酵素Cの全量並びにジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B、化合物G、H、I、K及び/又はL及び溶剤Eの場合により残っている残量が添加されるようにして行われる。しばしば、ジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B、化合物G、H、I、K及び/又はL、分散剤D並びに場合により溶剤Eの≧50質量%、≧60質量%、≧70質量%、≧80質量%、≧90質量%又はそれどころか全量が、水の≧50質量%、≧60質量%、≧70質量%、≧80質量%、≧90質量%又はそれどころか全量中へ導入され、引き続いて≦1000nmの液滴直径を有する分散相が製造され、それに引き続いて水性媒体に、反応温度で、酵素Cの全量並びにジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B、化合物G、H、I、K及び/又はL並びに溶剤Eの場合により残っている残量が添加される。その場合に、酵素C、場合により残っている残量のジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B、化合物G、H、I、K及び/又はL並びに溶剤Eは、水性反応媒体に、別個に又は一緒に、不連続に一度に、不連続に数度に、並びに連続的に不変の又は変化する質量流量で添加されることができる。
【0088】
本発明による方法の第一反応段階は、通例、20〜90℃、頻繁に35〜60℃及びしばしば45〜55℃の反応温度で、通例0.8〜10bar、好ましくは0.9〜2barの圧力(絶対値)で及び特に1atm(=1.01bar=大気圧)で行われる。
【0089】
さらに、第一反応段階において水性反応媒体が室温(20〜25℃)で≧2及び≦11、しばしば≧3及び≦9及び頻繁に≧6及び≦8のpH値を有する場合が有利である。特に、水性反応媒体中で、酵素Cが最適な作用を有するそのようなpH値(範囲)に調節される。これがどのpH値(範囲)であるかは、当業者は知っているか又は当業者により少ない予備試験で決定されることができる。pH値調節のための相応する措置、すなわち、酸、例えば硫酸、塩基、例えばアルカリ金属水酸化物、特に水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの水溶液又は緩衝物質、例えばリン酸二水素カリウム/リン酸水素二ナトリウム、酢酸/酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム/塩化アンモニウム、リン酸二水素カリウム/水酸化ナトリウム、ほう砂/塩酸、ほう砂/水酸化ナトリウム又はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/塩酸の相応する量の添加は、当業者によく知られている。
【0090】
本発明による方法のためには、澄明であり、かつしばしば飲用水品質を有する水が、通常使用される。しかしながら、有利には、本発明による方法のためには、脱イオン水が、及び第一反応段階において滅菌脱イオン水が、使用される。その場合に、第一反応段階における水量は、本発明により形成される水性ポリアミド分散液が、≦70質量%、しばしば≧1及び≦50質量%もしくは≧5及び≦35質量%及び頻繁に≧10及び≦30質量%のポリアミド固体含量に相応して、水性ポリアミド分散液をその都度基準として、≧30質量%、しばしば≧50及び≦99質量%もしくは≧65及び≦95質量%及び頻繁に≧70及び≦90質量%の含水量であるように選択される。本発明による方法が、第一反応段階において並びに第二反応段階において、有利に酸素不含の不活性ガス雰囲気下、例えば窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気下に、実施されることも挙げられる。
【0091】
本発明によれば有利には、第一反応段階の水性ポリアミド分散液に、酵素により触媒された重合反応の終了後もしくは終了時に、本発明により使用される酵素Cを失活させる(すなわち酵素Cの触媒作用を破壊するか又は阻害する)ことのできる助剤(不活性化剤)が添加される。不活性化剤として、それぞれの酵素Cを失活させることのできる全ての化合物が使用されることができる。不活性化剤として、しばしば、特に錯化合物、例えばニトリロ三酢酸又はエチレンジアミン四酢酸もしくはそれらのアルカリ金属塩又はアニオン性乳化剤、例えばドデシル硫酸ナトリウムが使用されることができる。それらの量は通常、それぞれの酵素Cを失活させるのにちょうど十分であるように算定される。しばしば、水性ポリアミド分散液を≧95℃又は≧100℃の温度に加熱することにより使用される酵素Cを失活させることも可能であり、その場合に、通例、沸騰反応を抑制するために不活性ガスは加圧下に押し込まれる。もちろん、特定の酵素Cを、水性反応媒体のpH値を変えることにより失活させることも可能である。
【0092】
本発明による方法により、第一反応段階において入手可能なポリアミドは、−70〜+200℃のガラス転移温度を有していてよい。使用目的に応じて、しばしば、ガラス転移温度が特定範囲内であるポリアミドが必要とされる。本発明による方法において使用される成分A及びB並びにG〜Lの適した選択により、ガラス転移温度が所望の範囲内であるポリアミドを意図的に製造することは当業者に可能である。
【0093】
ガラス転移温度Tgは、これがG. Kanig(Kolloid-Zeitschrift & Zeitschrift fuer Polymere、第190巻、p.1、等式1)に従い、分子量が増大するにつれて到達するガラス転移温度の極限値の意味である。ガラス転移温度は、DSC法により決定される(示差走査熱量測定法、20K/min、中点測定、DIN 53 765)。
【0094】
本発明による方法により入手可能な水性ポリアミド分散液のポリアミド粒子は、通例10〜1000nm、しばしば50〜700nm及び頻繁に100〜500nmである平均粒子直径を有する[累積z−平均値で示されている、準弾性光散乱(ISO規格 13 321)により決定]。
【0095】
本発明による方法により第一反応段階において得ることができるポリアミドは、通例、≧2000〜≦1000000g/mol、頻繁に≧3000〜≦500000g/mol又は≧5000〜≦100000g/mol及びしばしば≧5000〜≦50000g/mol又は≧6000〜≦30000g/molの範囲内の質量平均分子量を有する。質量平均分子量の決定は、DIN 55672-1に依拠してゲル浸透クロマトグラフィーを用いて行われる。
【0096】
第二反応段階において、エチレン系不飽和モノマーFが、第一反応段階において形成されたポリアミドを含有する水性媒体中でラジカル重合されることが方法にとって本質的である。その場合に、この重合は有利に、ラジカルにより開始される水性乳化重合の条件下に行われる。この方法は、何度も前に記載されており、故に当業者に十分に知られている[例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, 第8巻, p.659-677, John Wiley & Sons, Inc., 1987; D.C. Blackley, Emulsion Polymerisation, p.155-465, Applied Science Publishers, Ltd., Essex, 1975; D.C. Blackley, Polymer Latices, 第2版, 第1巻, p.33-415, Chapman & Hall, 1997; H. Warson, The Applications of Synthetic Resin Emulsions, p.49-244, Ernest Benn, Ltd., London, 1972; D. Diederich, Chemie in unserer Zeit 1990, 24, p.135-142, Verlag Chemie, Weinheim; J. Piirma, Emulsion Polymerisation, p.1-287, Academic Press, 1982; F. Hoelscher, Dipsersionen synthetischer Hochpolymerer, p.1-160, Springer-Verlag, Berlin, 1969及び独国特許出願公開(DE-A)第40 03 422号明細書参照]。ラジカルにより開始される水性乳化重合は通常、エチレン系不飽和モノマーが、通例、分散剤の併用下に水性媒体中で分散分布され、かつ少なくとも1つの水溶性ラジカル重合開始剤を用いて重合温度で重合されるようにして行われる。
【0097】
第二反応工程において安定な水性ポリマー分散液を得るために、分散剤D及その量が、第一反応段階において形成されたポリアミド粒子並びに第二反応段階の重合に使用されるエチレン系不飽和モノマーFをモノマー液滴の形で、並びにラジカル重合反応の際に形成されるポリマー粒子を水性媒体中で分散相として、安定化させることが可能であるように算定されていなければならない。その場合に、第二反応段階の分散剤Dは、第一反応段階の分散剤Dと同一であってよい。しかし、第二反応段階において別の分散剤Dが添加されることも可能である。分散剤Dの全量が水性媒体に既に第一反応段階において添加されていることも可能である。しかしながら、分散剤Dの部分量が、水性媒体に第二反応段階においてラジカル重合前、ラジカル重合中又はラジカル重合後に、特にラジカル重合前又はラジカル重合中に、添加されることも可能である。これは特に、第一反応段階において異なる又はより少ない量の分散剤Dが使用された場合又は第二反応段階においてエチレン系不飽和モノマーFの部分量又は全量が水性モノマー乳濁液の形で使用される場合である。どの分散剤Dが、及びこれらがどの量で、第二反応段階において有利に付加的に使用されるかは、当業者は知っているか又は当業者により単純な予備試験で決定されることができる。しばしば、第一反応段階において添加される分散剤Dの量は、本発明による方法において使用される分散剤全量をその都度基準として、≧1及び≦100質量%、≧20及び≦90質量%又は≧40及び≦70質量%及び第二反応段階においてそれに応じて≧0及び≦99質量%、≧10及び≦80質量%又は≧30及び≦60質量%である。
【0098】
分散剤Dとして好ましくは使用される乳化剤は、ジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B及びエチレン系不飽和モノマーFの全量の総和をその都度基準として、0.005〜20質量%、好ましくは0.01〜10質量%、特に0.1〜5質量%の全量で有利に使用される。
【0099】
分散剤Dとして乳化剤に加えて又は乳化剤の代わりに使用される保護コロイドの全量は、ジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B及びエチレン系不飽和モノマーFの全量の総和をその都度基準として、頻繁に0.1〜10質量%及びしばしば0.2〜7質量%である。
【0100】
しかしながら、好ましくは、乳化剤、特に非イオン性乳化剤が唯一の分散剤Dとして使用される。
【0101】
本発明による方法において使用される全水量は既に第一反応段階において使用されることができる。しかしながら、第一段階において及び第二反応段階において水の部分量を添加することも可能である。第二反応段階における水の部分量の添加は、特に、エチレン系不飽和モノマーFの添加が第二反応段階において水性モノマー乳濁液の形で及びラジカル開始剤の添加がラジカル開始剤の相応する水溶液又は水性分散液の形で行われる場合に行われる。その場合に、全水量は通例、本発明により形成される水性ポリマー分散液が、≦70質量%、しばしば≧1及び≦60質量%もしくは≧5及び<55質量%及び頻繁に≧10及び≦50質量%のポリマー固体含量に相応して、水性ポリマー分散液をその都度基準として、≧30質量%、しばしば≧40及び≦99質量%もしくは≧45及び≦95質量%及び頻繁に≧50及び≦90質量%の含水量を有するように選択される。しばしば、添加される水量は第一反応段階において、本発明による方法において使用される全水量をその都度基準として、≧10及び≦100質量%、≧40及び≦90質量%又は≧60及び≦80質量%及び第二反応段階においてそれに応じて≧0及び≦90質量%、≧10及び≦60質量%又は≧20及び≦40質量%である。
【0102】
本発明による方法において使用されるモノマーFの全量は、第一反応段階においてでも、第二反応段階においてでも、使用されることができる。しかしながら、モノマーFの部分量を、第一反応段階において及び第二反応段階において添加することも可能である。第二反応段階におけるモノマーFの部分量もしくは全量の添加は、特に、水性モノマー乳濁液の形で行われる。その場合に、モノマーFの全量は通例、本発明により形成される水性ポリマー分散液が、≦70質量%、しばしば≧1及び≦60質量%もしくは≧5及び≦55質量%及び頻繁に≧10及び≦50質量%のポリマー固体含量(=第一反応段階のポリアミド及び第二反応段階におけるエチレン系不飽和モノマーFの重合により得られるポリマーからなる総和)であるように選択される。しばしば、添加されるモノマーFの量は第一反応段階において、モノマーFの全量をその都度基準として、≧0及び≦100質量%、≧20及び≦90質量%又は≧40及び≦70質量%であり、かつ第二反応段階においてそれに応じて≧0及び≦100質量%、≧10及び≦80質量%又は≧30及び≦60質量%である。
【0103】
本発明によれば、ジアミン化合物A及びジカルボン酸化合物Bの全量の総和対エチレン系不飽和モノマーFの全量の量比は、通例1:99〜99:1、好ましくは1:9〜9:1及び有利に1:5〜5:1である。
【0104】
有利には、モノマーFの少なくとも部分量、しかしながら好ましくは全量が第一反応段階において使用される。このことは、第一反応段階において形成されるポリアミド粒子が、モノマーFを溶解して含有するか又はこれらで膨潤されているか、もしくはポリアミドがモノマーFの液滴中に溶解されているか又は分散されているという利点を有する。双方は、第一反応段階のポリアミド及び第二反応段階のポリマーから構成されているポリマー(ハイブリッド)粒子の形成に有利な影響を及ぼす。
【0105】
本発明による方法により第二反応段階においてモノマーFから入手可能なポリマーは、−70〜+150℃のガラス転移温度を有しうる。水性ポリマー分散液の予定される使用目的に応じて、しばしば、ガラス転移温度が特定範囲内であるポリマーが必要とされる。本発明による方法において使用されるモノマーFの適した選択により、ガラス転移温度が所望の範囲内であるポリマーを意図的に製造することは当業者に可能である。
【0106】
Fox(T.G. Fox, Bull. Am. Phys. Soc. 1956 [Ser. II] 1, p.123及びUllmann′s Encyclopaedie der technischen Chemie, 第19巻, p.18, 第4版, Verlag Chemie, Weinheim, 1980による)によれば、せいぜい弱く架橋された混合ポリマーのガラス転移温度については次のことが良好な近似で当てはまる:
1/Tg=x1/Tg1+x2/Tg2+ .... xn/Tgn
ここでx1、x2、.... xnは、モノマー1、2、.... nの質量分率を表し、かつTg1、Tg2、.... Tgnは、モノマー1、2、.... nの1つのみからその都度構成されているポリマーのガラス転移温度[ケルビン度]を表す。たいていのモノマーのホモポリマーのTg値は知られており、かつ例えばUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第5版, Vol. A21, p.169, Verlag Chemie, Weinheim, 1992に記載されており;ホモポリマーのガラス転移温度についてのさらなる出所は、例えば、J. Brandrup, E.H. Immergut, Polymer Handbook, 第1版, J. Wiley, New York, 1966; 第2版 J.Wiley, New York, 1975及び第3版 J. Wiley, New York, 1989である。
【0107】
本発明による方法にとって特徴的であるのは、第二反応段階におけるラジカルにより誘導される重合の開始のために、いわゆる水溶性ラジカル開始剤だけでなくいわゆる油溶性ラジカル開始剤も使用されることができることである。その場合に、水溶性ラジカル開始剤は、ラジカルにより開始される水性乳化重合の際に通常使用される通例全てのラジカル開始剤であると理解される一方で、油溶性ラジカル開始剤は、当業者が通常ラジカルにより開始される溶液重合の際に使用する全てのラジカル開始剤であると理解される。本明細書の範囲内で、水溶性ラジカル開始剤は、20℃及び大気圧で脱イオン水への≧1質量%の溶解度を有する全てのラジカル開始剤であると理解されるべきである一方で、油溶性ラジカル開始剤は、前記の条件下に<1質量%の溶解度を有する全てのラジカル開始剤であると理解される。しばしば、水溶性ラジカル開始剤は前記の条件下に≧2質量%、≧5質量%、又は≧10質量%の水への溶解度を有する一方で、油溶性ラジカル開始剤はしばしば、≦0.9質量%、≦0.8質量%、≦0.7質量%、≦0.6質量%、≦0.5質量%、≦0.4質量%、≦0.3質量%、≦0.2質量%又は≦0.1質量%の水への溶解度を有する。
【0108】
水溶性ラジカル開始剤は、その場合に、例えば、過酸化物並びにアゾ化合物であってよい。もちろん、レドックス開始剤系も考慮に値する。過酸化物として、原則的に、無機過酸化物、例えば過酸化水素又はペルオキソ二硫酸塩、例えばペルオキソ二硫酸の一アルカリ金属塩もしくは二アルカリ金属塩又は一アンモニウム塩もしくは二アンモニウム塩、例えばそれらの一ナトリウム塩及び二ナトリウム塩、一カリウム塩及び二カリウム塩又は一アンモニウム塩及び二アンモニウム塩又は有機過酸化物、例えばアルキルヒドロペルオキシド、例えばt−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンチルヒドロペルオキシド又はクミルヒドロペルオキシドが使用されることができる。アゾ化合物として、本質的には2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)及び2,2′−アゾビス(アミジノプロピル)二塩酸塩(AIBA、Wako ChemicalsのV-50に対応)が使用される。レドックス開始剤系用の酸化剤として、本質的には前記の過酸化物が考慮に値する。相応する還元剤として、低い酸化状態を有する硫黄化合物、例えばアルカリ金属亜硫酸塩、例えば亜硫酸カリウム及び/又は亜硫酸ナトリウム、アルカリ金属亜硫酸水素塩、例えば亜硫酸水素カリウム及び/又は亜硫酸水素ナトリウム、アルカリ金属メタ重亜硫酸塩、例えばメタ重亜硫酸カリウム及び/又はメタ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシラート、例えばカリウムホルムアルデヒドスルホキシラート及び/又はナトリウムホルムアルデヒドスルホキシラート、脂肪族スルフィン酸のアルカリ金属塩、特にカリウム塩及び/又はナトリウム塩及びアルカリ金属硫化水素物、例えば硫化水素カリウム及び/又は硫化水素ナトリウム、多価金属の塩、例えば硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、リン酸鉄(II)、エンジオール、例えばジヒドロキシマレイン酸、ベンゾイン及び/又はアスコルビン酸並びに還元糖類、例えばソルボース、グルコース、フルクトース及び/又はジヒドロキシアセトンが使用されることができる。
【0109】
好ましくは、水溶性ラジカル開始剤として、ペルオキソ二硫酸の一アルカリ金属塩もしくは二アルカリ金属塩又は一アンモニウム塩もしくは二アンモニウム塩、例えばペルオキシ二硫酸二カリウム、ペルオキシ二硫酸二ナトリウム又はペルオキシ二硫酸二アンモニウムが使用される。もちろん、前記の水溶性ラジカル開始剤の混合物を使用することも可能である。
【0110】
油溶性ラジカル開始剤として、例示的に、ジアルキルペルオキシドもしくはジアリールペルオキシド、例えばジ−t−アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、t−ブチルクメンペルオキシド、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキセン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン又はジ−t−ブチルペルオキシド、脂肪族及び芳香族のペルオキシエステル、例えばクミルペルオキシネオデカノアート、2,4,4−トリメチルペンチル−2−ペルオキシネオデカノアート、t−アミルペルオキシネオデカノアート、t−ブチルペルオキシネオデカノアート、t−アミルペルオキシピバラート、t−ブチルペルオキシピバラート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、t−ブチルペルオキシジエチルアセタート、1,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルペルオキシイソブタノアート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノアート、t−ブチルペルオキシアセタート、t−アミルペルオキシベンゾアート又はt−ブチルペルオキシベンゾアート、過酸化ジアルカノイルもしくは過酸化ジベンゾイル、例えばジイソブタノイルペルオキシド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン又は過酸化ジベンゾイル、並びにペルオキシカーボナート、例えばビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボナート、ビス(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボナート、ジ−t−ブチルペルオキシジカーボナート、ジセチルペルオキシジカーボナート、ジミリスチルペルオキシジカーボナート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボナート又はt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボナートを挙げることができる。
【0111】
好ましくは、油溶性ラジカル開始剤として、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート(Trigonox(登録商標) 21)、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、t−ブチルペルオキシベンゾアート(Trigonox(登録商標) C)、t−アミルペルオキシベンゾアート、t−ブチルペルオキシアセタート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノアート(Trigonox(登録商標) 42 S)、t−ブチルペルオキシイソブタノアート、t−ブチルペルオキシジエチルアセタート、t−ブチルペルオキシピバラート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボナート、(Trigonox(登録商標) BPIC)及びt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボナート(Trigonox(登録商標) 117)を含む群から選択される化合物が使用される。もちろん、前記の油溶性ラジカル開始剤の混合物を使用することも可能である。
【0112】
特に好ましくは、水溶性ラジカル開始剤が使用される。
【0113】
使用されるラジカル開始剤の全量は、モノマーFの全量をその都度基準として、0.01〜5質量%、しばしば0.5〜3質量%及び頻繁に1〜2質量%である。
【0114】
第二反応段階のラジカル重合反応のための反応温度として、− 使用されるラジカル開始剤にとりわけ依存して − 0〜170℃の全範囲が考慮に値する。その場合に、通例、50〜120℃、しばしば60〜110℃及び頻繁に≧70〜100℃の温度が使用される。第二反応段階のラジカル重合反応は、1atm(絶対)よりも小さい、1atm(絶対)と同じ又は1atm(絶対)よりも大きい圧力で実施されることができ、その場合に重合温度は100℃を上回ってよく、かつ170℃までであってよい。好ましくは、易揮発性モノマー、例えばエチレン、ブタジエン又は塩化ビニルは、高められた圧力下に重合される。その場合に、圧力は、1.2、1.5、2、5、10、15barであってよく、かつさらにより高い値を占めてよい。乳化重合が減圧で実施される場合には、950mbar、しばしば900mbar及び頻繁に850mbar(絶対)の圧力に調節される。有利に、ラジカル重合反応は、大気圧で不活性ガス雰囲気下に実施される。
【0115】
その場合に、第二反応段階のラジカル重合は通例、≧90質量%、有利に≧95質量%及び好ましくは≧98質量%のモノマーF転化率まで行われる。
【0116】
特に有利には、本発明による方法は、第一反応段階において、まず最初に、ジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B、分散剤D並びに場合により溶剤E及び/又はエチレン系不飽和モノマーFの少なくとも部分量が、水の少なくとも部分量中へ導入され、その後、適した措置を用いて、ジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B、並びに場合により溶剤E及び/又は場合によりエチレン系不飽和モノマーFを含み、≦1000nmの平均液滴直径を有する分散相が製造され、それに引き続いて水性媒体に、反応温度で、酵素Cの全量並びにジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B及び溶剤Eの場合により残っている残量が添加され、かつポリアミド形成の終了後に、第二反応段階において水、分散剤D及び/又はエチレン系不飽和モノマーFの場合により残っている残量並びにラジカル開始剤の全量が添加されるようにして行われる。その場合に、水、分散剤D及び/又はエチレン系不飽和モノマーFの場合により残っている残量並びにラジカル開始剤の全量の添加は、別個に又は一緒に、一度に、不連続に数度に又は連続的に不変の又は変化する質量流量で行われることができる。
【0117】
本発明による方法により入手可能な水性ポリマー分散液は有利に、接着剤、シーラント、プラスチックプラスター、紙塗工液、印刷インキ、化粧品及びペイントにおける成分として、革及びテキスタイルの仕上げ加工のため、繊維結合のため並びに鉱物質結合剤又はアスファルトの改質のために適している。
【0118】
さらに、本発明により入手可能な水性ポリマー分散液が、乾燥により相応するポリマー粉末へ変換されることができることが重要である。相応する乾燥法、例えば凍結乾燥又は噴霧乾燥は、当業者に知られている。
【0119】
本発明により入手可能なポリマー粉末は有利に、顔料として、プラスチック配合物における充填剤として、接着剤、シーラント、プラスチックプラスター、紙塗工液、印刷インキ、化粧品、粉体塗料及びペイントにおける成分として、革及びテキスタイルの仕上げ加工のため、繊維結合のため並びに鉱物質結合剤又はアスファルトの改質のために使用されることができる。
【0120】
本発明による方法は、ポリアミド並びにポリマーの生成物特性を一体にし、新規水性ポリマー分散液への単純かつ費用のかからない経路の可能性を開く。
【0121】
次の非限定的実施例は、本発明を説明するものである。
【0122】
実施例
窒素雰囲気下に室温(20〜25℃)で、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン(Laromin(登録商標) C260、BASF AG社の商品)1.4g(5.8mmol)、セバシン酸ジエチルエステル(98質量%、Sigma-Aldrich Inc.社)1.55g(5.8mmol)、スチレン1.85g(17.8mmol)及びヘキサデカン0.24gを、マグネチックスターラーを用いて撹拌することにより均質に混合した。この混合物中へ、撹拌しながら、Lutensol(登録商標) AT 50(非イオン性乳化剤、BASF AG社の商品)0.24g及び緩衝溶液(6.87のpH値を有し、脱イオン水中にリン酸二水素カリウム(KH2PO4)0.025mol/l及びリン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)0.025mol/lを含有する)23.8gからなる均質溶液を添加した。引き続いて、得られた不均質混合物を、マグネチックスターラーを用いて毎分60回転(rpm)で10分間撹拌し、その後、同様に窒素下に80ml広口びん(Steilbrustgefaess)中へ移し、Ultra-Turrax T25ユニット(Janke & Kunkel GmbH & Co. KG社製)を用いて20500rpmで30秒間撹拌した。その後、得られた液状不均質混合物を、≦1000nmの平均液滴直径を有する液滴へ変換するために、超音波プローブ(70 W; Bandelin electronic GmbH & Co. KG社のUW 2070装置)を用いて3分間、超音波処理にかけた。こうして製造されたミニエマルション中へ、窒素下に、カンジダ アンタルクチカ(Candida antarctica)タイプB由来のリパーゼ(Fluka AG社の商品)0.24g、Lutensol(登録商標) AT 50 0.14g及び前記の緩衝溶液14.4gから製造された均質な酵素混合物を一度に添加し、ついで得られた混合物を撹拌しながら50℃に加熱し、この混合物をこの温度で窒素雰囲気下に20時間撹拌した。
【0123】
これに引き続いて、酵素失活のために撹拌しながらドデシル硫酸ナトリウム0.05gを添加し、水性ポリアミド分散液を50℃でさらに30分間撹拌した。引き続いて、得られた水性ポリアミド分散液に、窒素雰囲気下にかつ撹拌しながらペルオキソ二硫酸ナトリウム0.03g及び脱イオン水0.27gからなる溶液を添加し、重合混合物を80℃に加熱し、この温度で2時間撹拌し、ついで、得られた水性ポリマー分散液を室温に冷却した。
【0124】
11.5質量%の固体含量を有する水性ポリマー分散液約44gが得られた。平均粒度は、270nmと測定された。ガラス転移温度は、55℃(ポリアミド)及び約100℃(ポリスチレン)と測定された。さらに、ポリマーは、155℃及び220℃で融点を有していた。
【0125】
固体含量は、定義された量の水性ポリマー分散液(約5g)を180℃で乾燥器中で恒量まで乾燥させることによって決定した。その都度2つの別個の測定を実施した。例に示された値は、双方の測定結果の平均値である。
【0126】
ポリマー粒子の平均粒子直径を、Malvern Instruments社、英国のAutosizer IICを用いて、23℃での0.005〜0.01質量%の水性ポリマー分散液の動的光散乱により決定した。測定された自己相関関数(ISO規格 13321)の累積評価(累積z−平均)の平均直径が報告される。
【0127】
ガラス転移温度もしくは融点の測定を、DIN 53765によりMettler-Toledo Intl. Inc.社のDSC820ユニット、TA8000シリーズを用いて行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ポリマー分散液の製造方法において、水性媒体中で、第一反応段階において、
a)ジアミン化合物A及び
b)ジカルボン酸化合物Bを、
次のもの:
c)ジアミン化合物A及びジカルボン酸化合物Bの重縮合反応を触媒する酵素C及び
d)分散剤D、
並びに場合により
e)水に微溶の有機溶剤E及び/又は
f)エチレン系不飽和モノマーF
の存在で、
反応させてポリアミドに変換し、それに引き続いてこのポリアミドの存在で第二反応段階においてエチレン系不飽和モノマーFをラジカル重合させることを特徴とする、水性ポリマー分散液の製造方法。
【請求項2】
第一反応段階において、ジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B、溶剤E及び/又はエチレン系不飽和モノマーFの少なくとも部分量が、水性媒体中で、≦1000nmの平均液滴直径を有する分散相として存在する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
まず最初に、ジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B、分散剤D、並びに場合により溶剤E及び/又はエチレン系不飽和モノマーFの少なくとも部分量を、水の少なくとも部分量中へ導入し、その後、適した措置を用いて、ジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B、並びに場合により溶剤E及び/又はエチレン系不飽和モノマーFを含み、≦1000nmの平均液滴直径を有する分散相を製造し、それに引き続いて、水性媒体に、反応温度で、酵素Cの全量並びにジアミン化合物A、ジカルボン酸化合物B及び溶剤Eの場合により残っている残量を添加する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ジアミン化合物A及びジカルボン酸化合物Bの量比を、ジカルボン酸化合物B対ジアミン化合物Aのモル比が0.5〜1.5であるように選択する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
第一反応段階において、ジアミン化合物A及びジカルボン酸化合物Bに加えて、有機ジオール化合物G、ヒドロキシカルボン酸化合物H、アミノアルコール化合物I、アミノカルボン酸化合物K及び/又はヒドロキシル基、第一級又は第二級のアミノ基及び/又はカルボキシル基を1分子あたり少なくとも3個有する有機化合物Lを使用する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
個々の化合物G、H、I、K及びLの全量が、ジアミン化合物A及びジカルボン酸化合物Bの全量を基準として、≦50質量%である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
化合物A及びB並びにG〜Lの量を、カルボキシル基及び/又はそれらの誘導体(個々の化合物B、H、K及びLから)対アミノ基及び/又はヒドロキシル基及び/又はそれらの誘導体(個々の化合物A、G、H、I、K及びLから)の総和の当量比が0.5〜1.5であるように選択する、請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
酵素Cとして加水分解酵素を使用する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
酵素Cとして、リパーゼ及び/又はカルボキシルエステラーゼを使用する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
分散剤Dとして、非イオン性乳化剤を使用する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
水性媒体が第一反応段階において、≧3及び≦9のpH値を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
ジアミン化合物Aとして、1,6−ジアミノヘキサン、1,12−ジアミノドデカン、2,2−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、3,3′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミンを使用し、かつジカルボン酸化合物Bとして、ブタン二酸、ヘキサン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸を使用する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
化合物A及びB並びに場合によりG〜Lを、得られるポリアミドが−50〜+200℃のガラス転移温度を有するように選択する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
第一反応段階において、溶剤E及び/又はエチレン系不飽和モノマーFを使用する、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
水に微溶の有機溶剤Eを、第一反応段階における水の全量を基準として、0.1〜40質量%の量で使用する、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
第一反応段階においてエチレン系不飽和モノマーFを使用するが、しかし溶剤Eを使用しない、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
エチレン系不飽和モノマーFが水への低い溶解度を有する、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
ジアミン化合物A及びジカルボン酸化合物Bの全量の総和対エチレン系不飽和モノマーFの全量の量比が1:99〜99:1である、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
エチレン系不飽和モノマーFとして、
炭素原子1〜12個を有するアルカノールとのアクリル酸及び/又はメタクリル酸のエステル及び/又はスチレン 50〜99.9質量%、又は
スチレン及びブタジエン 50〜99.9質量%、又は
塩化ビニル及び/又は塩化ビニリデン 50〜99.9質量%、又は
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸のビニルエステル、長鎖脂肪酸のビニルエステル及び/又はエチレン 40〜99.9質量%
を含有するモノマー混合物を使用する、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
反応混合物に、第一反応段階におけるポリアミド形成の終了後に、水、分散剤D及び/又はエチレン系不飽和モノマーFの場合により残っている残量並びにラジカル開始剤の全量を第二反応段階において添加する、請求項3から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
請求項1から20までのいずれか1項記載の方法により得られる、水性ポリマー分散液。
【請求項22】
接着剤、シーラント、プラスチックプラスター、紙塗工液、印刷インキ、化粧品及びペイントにおける成分として、革及びテキスタイルの仕上げ加工のため、繊維結合のため並びに鉱物質結合剤又はアスファルトの改質のための、請求項21記載の水性ポリマー分散液の使用。
【請求項23】
請求項21記載の水性ポリマー分散液を乾燥させることによる、ポリマー粉末の製造。
【請求項24】
顔料として、プラスチック配合物における充填剤として、接着剤、シーラント、プラスチックプラスター、紙塗工液、印刷インキ、化粧品、粉体塗料及びペイントにおける成分として、革及びテキスタイルの仕上げ加工のため、繊維結合のため並びに鉱物質結合剤又はアスファルトの改質のための、請求項23記載のポリマー粉末の使用。

【公表番号】特表2008−538786(P2008−538786A)
【公表日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504778(P2008−504778)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061418
【国際公開番号】WO2006/106138
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】