説明

水素を反応生成物とする反応を行うための反応装置、及び方法

反応装置は、水素(H)を反応生成物とする反応を行うための反応室を有する。反応装置は、燃焼室、及び反応室と燃焼室との間に与えられた水素透過性膜を有する。燃焼室には供給チャンネルが配備されている。供給チャンネルは、例えば、管状の供給管として設計されている。供給チャンネルには、空気のような酸素(O)含有流体を燃焼室へ供給するための横供給孔が開けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素(H)を反応生成物とする反応を行うための反応室、燃焼室、及び前記反応室と前記燃焼室との間に配備された水素透過性膜を有する反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
WO 03/031325には、天然ガスから合成ガス〔シンガス(syngas)]を製造するための、所謂、改質反応器が記載されている。シンガスは、実質的に一酸化炭素(CO)及び水素(H)を含むガス混合物である。この改質反応器は、天然ガス(CH)及び水(HO)の供給流のための入口、及びシンガスのための出口を具えた反応室を有する。反応室は、実質的に水素に対してだけ透過性の膜により周囲方向に境界がつけられている。膜は透過物室により取り巻かれ、その室は燃焼室も形成する。燃焼室は空気入り口及び出口孔を有する。
【0003】
操作中、天然ガス及び水の供給流を反応室へ送り、そこで所謂水蒸気改質反応が行われる。この過程で、一酸化炭素及び水素が天然ガス及び水から形成される。実質的にシンガスを含む生成物流が反応室で生成する。生成物流は反応室の出口から出る。
【0004】
水蒸気改質は吸熱反応なので、反応を維持するためには熱を供給しなければならない。水素透過膜を通って運ばれる水素の量は、反応室及び燃焼室中の水素の分圧に依存する。水素の分圧は、水素モル分率×絶対圧力によって決定される。操作中、反応室中の水素の分圧は、燃焼室中の分圧よりも高い。その結果、形成された或る量の水素が反応室からその膜を通って出て、燃焼室へ行くであろう。更に、燃焼室には空気入り口から空気が供給され、燃焼室で水素の燃焼が行われる。この過程で熱が放出され、それが吸熱水蒸気改質に熱を与え、反応室の温度を水蒸気改質に充分な高さに維持するのを確実にする。
【0005】
形成された水素の一部分は反応室を加熱するため燃焼されるので、別の燃焼室は不必要である。就中、生成した水素が捕捉される透過物室及び燃焼室は、一つの室に纏められている。これにより設計が簡単になる。更に、燃焼反応は透過物側の水素分圧を低下するので、透過物側の水素の一部分の燃焼により膜を通る水素の輸送が増大する。更に、形成された水素の一部分の燃焼は、別の燃焼室で、ある量の天然ガスを燃焼することにより必要な熱を与える場合と比較して優れた効率を与えることができる。
【0006】
しかし、透過物室又は燃焼室中では、燃焼室全体に亙り不均一に分布した燃焼が起きる。空気入り口は燃焼室の一端に近く与えられているので、空気入り口近くの燃焼は、その空気入り口から離れたところの燃焼とは異なった仕方で進行する。その結果、反応室中の温度が反応室全体に亙り均一に分布しなくなり、その上、反応室中の温度は夫々の場合で局部的に異なることがある。局部的温度ピークが反応室中に生ずる。反応室全体に亙る温度差は、その反応室中で行われる水蒸気改質に影響を与える。これは、水蒸気改質の制御性に悪影響を与える。更に、不均一な温度分布は、触媒及び膜の稼働寿命及び安定性を損なうことがある。温度ピークは反応装置の壁にも悪影響を与えることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、改良された反応装置を与えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明に従い、燃焼室に供給チャンネルを与え、その供給チャンネルに、燃焼室へ酸素(O)含有流体を供給するための横供給孔を与えることにより達成される。酸素含有流体は、例えば空気である。供給孔は空気を燃焼室全体に亙り一層均一に分布し、空気が燃焼室全体に亙って分布するように供給される。その結果、燃焼室中の水素の燃焼は計量され、制御される。これにより、燃焼室、膜、及び反応室中に、一層均一に分布した温度を与えることになる。更に、膜を通る水素の透過も一層均一になる。従って、反応室中の水蒸気改質過程は一層均一になる。
【0009】
EP967005には、メタノールのような炭化水素を水蒸気改質するための反応器が記載されていることが認められる。この反応器は、酸化室と、その酸化室の下流に配置された改質室を有し、それらの室は偏向空間により相互に接続されている。酸化室と改質室との間には緻密な熱伝導性隔壁が存在する。改質室にはその隔壁とは反対側に水素透過性膜がある。水素排出室は、その膜の透過物側に位置する。
【0010】
酸化室及び改質室は、膜の供給側に二つの工程を形成する。メタノールを酸化室へ供給し、そこで供給メタノールの一部を酸化する。このために酸素が必要であり、それは横供給孔を具えた供給管を通って供給される。酸化中、熱が放出され、この熱が熱伝導性隔壁により改質室中の吸熱水蒸気改質へ伝達される。供給メタノールの燃焼しなかった部分は酸化室を出て、偏向空間を通り、改質室へ入る。酸化室の入り口か、又は偏向空間に水を供給することは、改質室中に水が存在することを意味し、それにより水蒸気改質を行うことができる。この方法で形成された水素は、膜を通り、水素排出室へ送られる。
【0011】
横供給孔を具えた供給管は、酸化室へ均一に分布させる仕方で供給された空気を計量する。改質室中の水蒸気改質は酸素の供給を調節することにより制御することができる。酸素供給が増大すると一層多くのメタノールが酸化され、伝達される熱が増加する。逆に、もし改質室中の温度が高過ぎると、酸素供給、従って、伝達される熱を減少することができ、その結果、改質室中の温度が希望の改質温度へ低下する。
【0012】
しかし、横供給孔を具えた供給管は、水素透過性膜の透過物側に存在するのではなく、その膜の供給側の酸化室中に存在する。酸化室は改質室を加熱するための別の加熱室を形成する。更に、供給メタノールの燃焼が起き、透過した水素の燃焼は起きない。更に、熱は膜を越えて伝達されるのではない。このことは、膜の透過物側の水素分圧が比較的高いことを意味し、それは膜を通る水素の輸送に悪影響を与える。
【0013】
更に、US4990714には、供給水蒸気が流体分配器を通って供給される反応領域を有する反応器が記載されていることが認められる。反応領域では、水素を反応生成物とする吸熱反応が行われる。形成された水素は、水素透過性膜を通り、反応領域を取り巻く燃焼領域中へ拡散する。空気は供給管を通って燃焼領域へ流入し、そこで水素の燃焼が起きる。放出された熱は反応領域へ伝達される。しかし、空気は、横供給孔を具えた供給チャンネルにより燃焼領域へ分布されるように供給されるのではない。流体分配器は供給水蒸気だけを配送し、燃焼領域中ではなく、反応領域中に配備されている。
【0014】
更に、WO 2004/022480には、水蒸気改質により水素を製造するための装置が記載されていることが認められる。この装置は、無炎分配燃焼(flameless distributed combustion)(FDC)を用いた隔膜水蒸気改質反応器である。この反応器は、環状反応室により取り巻かれた中心透過物室を有する。透過物室と反応室とは、水素透過性膜により互いに分離されている。反応室は、FDC管が中に配備された外側加熱室により取り巻かれている。反応室と加熱室との間には、緻密な隔壁が存在する。
【0015】
操作中、天然ガス及び水を応室へ供給し、その中で水蒸気改質が行われる。形成された水素は膜を通って中心透過物室へ拡散する。膜を通る水素の輸送を促進するため、フラッシュガスを透過物室を通って流すことができる。水素は、中心透過物室の出口から出る。
【0016】
吸熱改質反応を進行し続けるため、天然ガスの燃焼を加熱室で行う。空気は燃焼室の一つの頂端部に流入させ、一方天然ガスは、FDC管により加熱室全体に亙り分布させる。燃焼により放出された熱は反応室へ伝達され、その結果、反応室内の温度は水蒸気改質に充分な高さに維持される。
【0017】
一つの態様として、燃焼室を水素透過性膜の透過物側に位置させる。燃焼室は、反応室から水素透過性膜を通って輸送される水素を燃焼するように設計することができる。その結果、燃焼室中の水素分圧は透過物側では低下し、そのため水素透過性膜を通る水素の輸送が増大することになる。
【0018】
一つの態様として、燃焼室を水素透過性膜により反応室と熱的に接触させる。例えば、水素の燃焼により発生した熱を膜を通る熱伝導により反応室へ伝達する。
【0019】
本発明に従い、酸素(O)含有流体、例えば、空気のための入り口孔で、横供給孔を有する供給チャンネルに接続された入り口孔を燃焼室に与えることができる。その入り口孔は燃焼室の方へは直接開口しておらず、酸素含有流体は、入り口孔から前記横供給孔を有する供給チャンネルを通って分布した仕方で燃焼室に流入する。
【0020】
本発明によれば、燃焼室にフラッシュ流体のための入り口を設けるのが好ましい。フラッシュ流体は、例えば、水蒸気及び/又は窒素を含み、それは空気のような酸素(O)含有流体と混合されていても、いなくてもよい。フラッシュ流体のための入り口は第二入り口孔を形成する。操作中、フラッシュ流は燃焼室を通って流れることができる。フラッシュ流は、水素透過性膜を通る水素の輸送を促進する。
【0021】
本発明の一つの態様として、燃焼室には、反応室から水素透過性膜を通って輸送される少なくとも水素のための出口が与えられている。その出口は、例えば、純粋水素か又はフラッシュ流体と混合された水素を排出することができる。反応装置は水素を製造するために用いることができる。その場合、水素は出来るだけ膜を通して燃焼室へ取り出す。その場合、水素は透過物側の主要な生成物を形成する。次にその水素はその出口から燃焼室へ流出する。その出口を通って燃焼生成物の水(HO)も燃焼室を出る。なぜなら、水素の燃焼は水を生じ、それも排出されるからである。
【0022】
本発明により、反応室に供給流を供給するための供給点を設けることができる。特に、供給流はメタン及び水を含む。しかし、供給流は、水との吸熱反応により反応生成物として水素を生ずるどのような炭化水素でも含むことができる。例えば、メタノール/水混合物も用いることができる。更に、供給流は、例えば、反応室に流入する前に改質又は予備改質のような部分的反応を供給流が既に受けている事により、一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素を含んでいてもよい。
【0023】
本発明の一つの態様として、反応室に、反応しなかった供給流及び反応により形成された生成物及び副生成物、例えば、CO、HO、H、CH、及びCOを排出するための排出部又は排出点を配備する。反応装置はシンガスを製造するために用いることもできる。その場合、反応室中の吸熱反応に熱を与えるのに必要な量の水素だけが膜を通って燃焼室へ送られる。その時、かなりの量の一酸化炭素、水素、及び二酸化炭素が反応室中に存在する。反応室の排出部からシンガスが流出する。
【0024】
更に、反応室には触媒床を配備することができる。床状の触媒は、反応室中の反応に有利な効果を与える。その外、透過物側、即ち、燃焼室中の酸化反応も触媒により維持することもできる。
【0025】
本発明により、供給チャンネルは種々のやり方で設計することができる。例えば、供給チャンネルは、横供給孔を伴う管状の供給管を有する。更に、供給チャンネルは、互いに離れて配置された二枚の板の間に形成することができ、それらの板には供給孔が設けられている。
【0026】
本発明によれば、反応室は吸熱反応用に設計されているのが好ましい。この場合、横供給孔は、燃焼室での水素の燃焼による熱発生が、反応室での前記吸熱反応に必要な熱条件に適合するような仕方で設計することができる。しかし、その事は、その熱発生が必要な熱条件と局部的に正確に同じでなければならないことを意味するものではない。
【0027】
特に、供給孔の大きさ及び/又はそれらの間の距離及び/又はそれらの供給チャンネル上の位置は、燃焼室での熱発生が反応室で必要な熱条件に適合するようなものになっている。入り口孔の大きさ及び/又はそれらの間の距離及び/又は供給チャンネル上のそれらの位置は、設計パラメーターを構成する。それらの最適化により、反応室中の温度ピークが殆ど起きないようにすることができる。そのような設計パラメーターは、さもなければ、反応室中で発熱反応が行われる場合、希望の温度分布を達成するように用いることができる。
【0028】
もし供給チャンネルが管状の供給管の形態になっているならば、供給孔は、その長手方向に分布させることができる。板の間に形成された供給チャンネルは、例えば、その板の全表面に亙って分布した供給孔を有する。実際には、供給孔は通常互いに実質的に不均等な距離で与えられている。その場合、供給孔の分布は不均一である。
【0029】
本発明に従い、反応室に酸素(O)含有流体を供給するための供給部又は供給点を設けることができる。この事は、反応室中で供給流の一部分を酸化することができるが、透過水素の酸化も燃焼室で行われることを意味する。この事は、例えば、アンモニア製造の場合に有利である。
【0030】
本発明の特別な態様として、複数の水素透過性膜で、夫々の膜が燃焼室の境界になっている水素透過性膜、燃焼室間に広がる反応室、及び酸素(O)含有流体を供給するための横供給孔を備えた供給チャンネルを有する夫々の燃焼室が配備された反応容器が提供される。この反応容器は、例えば、工業的規模で水素を反応生成物とする吸熱反応を遂行するのに適している。
【0031】
ここでは反応容器が、供給流のための供給孔で、水素透過性膜を境界とする燃焼室間の反応室中へ開いた供給孔を持つようにすることができる。燃焼室間の空間は共通の反応室を形成し、その中で水素を形成する吸熱反応が行われる。水素は反応室から膜を透過し、反応容器の反応室中に分布する燃焼室に入る。
【0032】
本発明に従い、水素透過性膜は管状燃焼室を定めることができる。この具体例での水素透過性膜は管状である。その管状膜の内部に燃焼室が広がっている。燃焼室は膜の外側が反応室で取り巻かれている。
【0033】
本発明の特別な態様として、夫々の管状の供給管には、反応器の一端部へフラッシュ流体を通過させるための少なくとも一つの中心管が備えられており、その中心管は、供給管の内部に伸び、その中心管の末端部近くに各燃焼室のフラッシュ流体のための入り口が設けられている。供給管及び中心管は、この場合、二つの実質的に同心状のチャンネルを形成する。もし反応器が垂直状態に設定されているならば、中心管の内部を通るチャンネルはフラッシュ流体を下方へ流し、その底からフラッシュ流体は燃焼室を通って上方へ流れる。操作中、空気は中心管の外側で、供給管の内部に存在する環状チャンネルを通って流れる。空気を供給するための供給孔を形成する孔が、供給管の壁に開けられている。燃焼室は、供給管の壁と水素透過性膜との間に位置している。
【0034】
本発明は、水素(H)が反応生成物として形成される反応を行うための方法で:
− 反応室及び燃焼室で、水素透過性膜で互いに分離されており、前記燃焼室が横供給孔を備えた酸素(O)含有流体のための供給チャンネルを有する、反応室及び燃焼室を与えること;
− 前記反応室で前記反応を行うこと;
− 前記反応室からの水素を前記水素透過性膜を通って前記燃焼室へ移動又は輸送すること;
− 前記供給チャンネルの前記供給孔を通って前記燃焼室へ前記酸素(O)含有流体を供給すること;
− 前記燃焼室である量の水素を燃焼して熱を発生させること;
− 前記熱を前記反応室へ伝達すること;
を含む方法にも関する。
【0035】
熱は種々のやり方で反応室へ伝達することができる。例えば、熱は燃焼室から反応室へ水素透過性膜を通る熱伝導により伝達される。
【0036】
本発明によれば、反応室で行われる反応は吸熱性にし、反応室へ伝達される熱をその吸熱反応を維持するために用いるようにすることができる。吸熱反応は、炭化水素の転化、脱水素化、又は水蒸気改質のような、水素を反応生成物とするどのような吸熱平衡反応にでもすることができる。脱水素化の一例はプロパンからプロペンへの脱水素化である。
【0037】
更に、反応室で行われる反応は発熱性でもよい。その場合、発熱反応は燃焼室と反応室の両方で行われる。本発明は、反応室でそのような発熱反応を行うのにも適している。
【0038】
本発明によれば、燃焼室の出口から水素を排出することができる。この場合、それは水素の製造に関する。
【0039】
この方法では、燃焼室から排出された水素は発電のためのガスタービンへ供給することができる。従って、本発明は、上に記載した型の反応装置を有する発電システムにも関し、コンプレッサー、燃焼空間、及びタービンを有するガスタービンで、反応装置の燃焼室、特にその出口がガスタービンの燃焼空間に、そこへ水素を供給する目的で接続されているガスタービンにも関する。本発明による反応装置を用いて生成された水素は、発電所のガスタービンへ送ることができる。従って、本発明は、ガスタービンで発電するために、本発明による反応装置を用いて生成した水素を使用することにも関する。
【0040】
更に、本発明により、燃焼室から排出された水素を窒素と一緒にアンモニア(NH)を製造するためのアンモニア反応器へ送ることができる。本発明は、上記型の反応装置を有するアンモニア製造のためのシステムにも関し、アンモニア反応器で、前記反応装置の燃焼室、特にその出口がアンモニア反応器に接続されており、実質的に3:1の比で水素と窒素とを混合した物を供給するアンモニア反応器にも関する。本発明による反応装置で生成した水素は、アンモニアの製造で用いるのにも特に適している。従って、本発明は、本発明による反応装置を用いて生成した水素をアンモニア製造のために使用することにも関する。
【0041】
本発明は、更にシンガスの製造に用いることができる。この場合、シンガスは反応室から排出部を通って排出される。前記シンガスは、発電所で発電するための燃料に用いることができる。従って、本発明は、本発明による反応装置を用いて製造されたシンガスをガスタービンによる発電のために使用することにも関する。
【0042】
勿論、水素製造とシンガス製造との組合せも可能である。この場合、燃焼室からの水素と、反応室からのシンガスとの同時排出が行われる。
【0043】
次に、本発明を、付図を参照して一層詳細に説明する。
【0044】
水素(H)を反応生成物とする反応を行うための反応装置が、全体的に1で示されている。装置1の操作原理が図1に図式的に示されている。
【0045】
装置1は、供給流のための供給部又は供給点17を備えた反応室2を有する。供給流は、例えば、天然ガス(CH)及び水(HO)の混合物を含む。勿論、供給流は、水素(H)を放出することができるどのような他のガス混合物を含んでいてもよい。
【0046】
供給流の所謂水蒸気改質は、例えば、反応室2の中で行われる。水蒸気改質は吸熱平衡反応であり、それにより一酸化炭素(CO)及び水素が天然ガス及び水から形成される。一酸化炭素及び水素はシンガスを形成する。反応式では:
CH+HO+熱 ⇔ CO+3H
【0047】
形成された一酸化炭素は、反応室2で供給流からの水と反応し、二酸化炭素(CO)及び水素を形成する。この平衡反応は、水性ガスシフト反応と呼ばれている。反応式では:
CO+HO ⇔ CO+3H
【0048】
これらの二つの平衡反応は、反応室2中で全反応として次のようになる:
CH+2HO+熱 ⇔ CO+4H
【0049】
反応室2は、触媒粒子7の触媒床を有する。触媒床は反応室2中で水蒸気改質を支える。
【0050】
反応室2は水素透過性膜3を境界とする。膜3は実質的に水素透過性であるが、例えば、二酸化炭素に対しては障壁を形成する。水素透過性膜3は、例えば、パラジウム又は銀又はそれらの材料の合金の層22を有する(図3参照)。水素分子は、そのような層の金属格子を通って拡散することができる。層22は、一つ以上のセラミック中間層を用いて又は用いずに、セラミック層又は金属層のような基体層23に適用されている。
【0051】
透過物側の水素分圧より高い水素分圧が、反応室2中に行き亙っている。水蒸気改質で形成された水素は、膜3を通って反応室2を出るであろう。その水素は、次に装置1の燃焼室5へ入る。膜3を通る水素の透過は、矢印Aで図式的に示されている。膜3は、反応室2と燃焼室5との間に与えられている。燃焼室5は、膜3の透過物側に位置している。
【0052】
更に、反応室2は、濃縮流を排出するための排出部又は排出点18を有する。濃縮流は、反応生成物、反応しなかった供給流、及び副生成物、例えば、CO、HO、H、CH、及びCOを含む。
【0053】
膜3の透過物側にある燃焼室5は、水蒸気(HO)及び/又は窒素(N)のようなフラッシュ流体のための入り口14を有する。そのようなフラッシュ流体の流れは、屡々スイープ(sweep)と呼ばれている。燃焼室5を通るフラッシュ流体の流れは膜3を通る水素の輸送をかなり改善する結果になる。
【0054】
この具体例の燃焼室5は、管状の供給管9を有する。供給管9は、燃焼室5へ空気を供給するための一連の横供給孔10を有する。場合により、空気の代わりに、どのような他の酸化性流体、特にどのような酸素含有流体でも導入することができる。例えば、供給管9は、水蒸気が添加されている空気、又は欠乏した空気を燃焼室5へ供給することもできる。この空気供給は、矢印Cで図式的に示されている。
【0055】
供給孔10は、供給管9に沿って長手方向に分布している。供給孔10は、供給管9の全長に沿って存在している。隣り合った供給孔10の間隔は、図中どの場合でもほぼ同じであるように示されているが、その距離は通常異なっているであろう。なぜなら、その距離は、反応室に必要な熱条件に燃焼室での熱発生を適合させる設計パラメーターの一つだからである。
【0056】
管状の供給管9により、空気が燃焼室5の全体に亙って分布するように空気を供給する。供給された空気は、膜3を通って燃焼室5へ入った水素と混合する。その結果、例えば、20%の量の水素が燃焼するであろう。
【0057】
その過程で放出された熱は、反応室2中の供給流に伝達される。この熱移動は、矢印Bで図式的に示されている。供給孔は空気を燃焼室5の全体に亙り実質的に均一に分布させるので、放出される熱も実質的に均一に分布する。燃焼室5には実質的に均一な温度が行き亙っている。燃焼室5での熱発生は、結局、反応室2中の吸熱水蒸気改質に必要な熱条件に適合する。その結果、反応室2中の水蒸気改質は制御された仕方で進行するであろう。更に、管状の供給管中の空気への熱伝導も起きるであろう。
【0058】
更に、燃焼室5は、燃焼しなかった水素のための出口15を有する。燃焼生成物と同様に、フラッシュ流体も出口15から燃焼室5を出ることができ、この場合、それは実質的に水を含む。
【0059】
反応室2及び燃焼室5中の流れは図1では向流状になっている。その代わりに、それらの流れは並流、又は平行流にすることができる。同じ事は管状の供給管中の流れにも当てはまり、それは反応室2及び/又は燃焼室5中の流れに対し並流、又は平行流、又は向流にすることができる。
【0060】
図2は、水素とのガス混合物を製造するための装置の一具体例を示しており、その装置は工業的規模で用いることができる。図2〜5では、図1の部品と同じ部品は、同じ参照番号で示されている。
【0061】
図2に示した水素とのガス混合物を製造するための装置1は、反応容器20を有する。反応容器20は直立した周囲の壁を有し、それは底部31及び頂部32により閉ざされている。反応容器20は頂部32にフラッシュ流体のための入り口孔24を有し、フラッシュ流体は、例えば、水蒸気及び窒素を含む。濃縮流のための排出孔28が底部31に与えられている。
【0062】
反応容器20の周囲の壁は、供給流を供給するための供給孔27を有する。供給流は、水素を放出することができるどのようなガス混合物を含んでいてもよい。この具体例では、供給流は天然ガス及び水を含む。空気を供給するための入り口孔21が反応容器20の周囲の壁に与えられている。透過物流のための横出口25も反応容器20の周囲の壁に与えられている。
【0063】
反応容器20の内部には複数の管状燃焼室5が吊るされている。各管状燃焼室5は、自立した水素透過性膜3を境界としている。膜3は膜管を形成する。触媒粒子7の触媒床を具えた反応室2は、前記膜管3の間に広がっている(図3参照)。
【0064】
図3及び4に最も明確に例示されているように、各燃焼室5には管状の供給管9が配備されている。供給管9は、夫々空気のための入り口孔21に接続されている。各管状の供給管9は空気を供給するための横供給孔10を有し、供給孔10は供給管9の周囲の壁に開けられている。供給孔10は、各供給管9の長手方向に沿って分布している。空気は燃焼室5の高さ全体に亙り供給孔10を通って分布される。これは、反応室2全体に亙る温度分布にとって特に有利である。
【0065】
各管状の供給管9は、反応容器20の底部31へフラッシュ流体を送るための中心管30を有する。各供給管9の中心管30は、フラッシュ流体のための入り口孔24に接続されている。フラッシュ流体は、前記入り口孔24から中心管30を通り、反応容器20の底部31へ流れる。燃焼室5のフラッシュ流体のための入り口14は、底部31近くに位置している。スイープはその底部から燃焼室5を通って上方へ流れる。空気は入り口孔21から、中心管30と供給管9との間の環状チャンネル中へ流入する。
【0066】
反応室2では、供給流が、例えば、水蒸気改質により転化される。その過程で水素が形成される。水素は膜3を通って燃焼室5へ透過する。水素の一部は燃焼室5での燃焼のための燃料として働く。残りの水素はフラッシュ流体により透過物として上方へ運ばれる。透過物は燃焼室5を出口15から出る。燃焼室5の出口15は反応容器20の出口孔25に接続されており、透過物が排出される結果になる。
【0067】
この水素とのガス混合物を製造するための装置は、少なくとも二つの用途、即ち、発電及びアンモニア製造の用途を有する。
【0068】
発電の場合、装置1から排出される水素は、発電所のガスタービンで燃焼される燃料の一部分である。
【0069】
アンモニア製造の場合、装置1から排出される水素はアンモニア反応器へ供給される。アンモニア(NH)を製造するためには、燃焼室へ供給される空気の量を一定にする。供給空気は窒素を含み、その量は、アンモニア製造のための窒素(N)対水素(H)の比が実質的に1:3なので限定されている。このことは、燃焼室で燃焼できる水素部分が比較少ないことを意味する。その理由から、特にアンモニア製造の場合、別の燃焼空間のような付加的加熱ユニットが付加されていることがある。空気又は酸素を反応室へ供給し、そこで供給流の発熱的転化が行われるようにすることができる。例えば、熱を発生させるため或る量の天然ガスを反応室で燃焼する。
【0070】
勿論、本発明は、上に記載した具体例に限定されるものではない。例えば、反応室を燃焼室内部の中心に位置させることができる。その場合、膜管の外側に燃焼室を与える。本発明による反応装置は、平坦な形態をもつこともできる。その場合の膜及び供給チャンネルは平坦になり、燃焼室はそれらの間に広がる。
【0071】
本発明は、反応室での反応生成物として水素が形成され、水素選択性膜を通って水素が反応から除去されると平衡が移行するあらゆる平衡反応も含む。除去された水素は、結局第二反応室へ送られる。第二反応室では水素を消費する反応が行われ、その反応の反応物を供給チャンネルの横供給孔を通って供給する。
【0072】
第二反応室では、種々の反応、例えば、燃焼反応を行うことができる。この場合の第二反応室は燃焼室を形成し、その燃焼室へ酸素(O)含有流体を供給する。
【0073】
もし反応室で吸熱平衡反応が行われているならば、燃焼室での燃焼はその吸熱反応を維持するための熱を発生する。更に、透過物側の水素の分圧は低くなったままになる。燃焼室中の水素の低い分圧は、膜を通る水素の輸送にとって有利である。
【0074】
反応室中の反応は吸熱性である必要はない。反応室で発熱反応が行われる場合には、透過物側の水素の燃焼は、透過物側及び供給側のガスの温度の上昇をもたらす。酸素含有ガスを計量して供給することにより、少なくとも燃焼室中の温度上昇は一様になる。そのような反応の一例は水性ガスシフト反応である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、本発明により水素を反応生成物とする反応を遂行する操作原理を図式的に示す図である。
【図2】図2は、本発明により水素とのガス混合物を製造するための反応容器を示す図である。
【図3】図3は、図2のIII部分の詳細な図である。
【図4】図4は、図2のIV部分の詳細な図である。
【図5】図5は、図2のV部分の詳細な図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素(H)を反応生成物とする反応室を行うための反応室(2)、燃焼室(5)、及び前記反応室(2)と前記燃焼室(5)との間に与えられた水素透過性膜(3)を有する反応装置(1)であって、前記燃焼室(5)には供給チャンネル(9)が与えられ、その供給チャンネル(9)には前記燃焼室(5)へ酸素(O)含有流体を供給するための横供給孔(10)が開けられていることを特徴とする、反応装置(1)。
【請求項2】
燃焼室(5)が水素透過性膜(3)の透過物側に位置する。請求項1に記載の反応装置。
【請求項3】
燃焼室(5)が水素透過性膜(3)を通って反応室(2)から運び出された水素を燃焼するように設計されている、請求項1又は2に記載の反応装置。
【請求項4】
燃焼室(5)が水素透過性膜(3)により反応室(2)と熱的に接触している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項5】
燃焼室(5)が酸素(O)含有流体のための入り口孔(11)を備え、その入り口孔(11)が横供給孔(10)を有する供給チャンネル(9)に接続されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項6】
燃焼室(5)が、水蒸気及び/又は窒素及び/又は酸素(O)含有流体、例えば空気のようなフラッシュ流体のための入り口(14)を備えている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項7】
燃焼室(5)が、水素透過性膜(3)を通って反応室(2)から運び出される少なくとも水素のための出口(15)を備えている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項8】
反応室(2)が、供給流を供給するための供給部(17)を備えている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項9】
反応室(2)が、反応しなかった供給流、反応生成物、及び副生成物、例えば、CO、HO、H、CH、及びCOを排出するための排出部(18)を備えている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項10】
反応室(2)及び/又は燃焼室(5)に、触媒床が与えられている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項11】
供給チャンネルが管状の供給管(9)を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項12】
反応室(2)が吸熱反応のために設計されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項13】
横供給孔(10)が、燃焼室(5)中での水素の燃焼による熱発生が反応室(2)中での吸熱反応に必要な熱条件に適合するような仕方で設計されている、請求項12に記載の反応装置。
【請求項14】
供給孔(10)が、互いに実質的に不均等な間隔で与えられている、請求項1〜13のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項15】
酸素(O)含有流体を供給するための供給部が、反応室(2)に与えられている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項16】
複数の水素透過性膜(3)で、夫々の膜が燃焼室(5)の境界になっている水素透過性膜が配備された反応容器(20)を有し、然も、前記燃焼室(5)の間に反応室(2)が広がり、各燃焼室(5)には、酸素(O)含有流体を前記燃焼室へ供給するための横供給孔(10)を備えた供給チャンネル(9)が与えられている、請求項1〜15のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項17】
反応容器(20)が、供給流のための供給孔(27)で、水素透過性膜(3)を境界とする燃焼室(5)間の反応室(2)中へ開いた供給孔を有する、請求項16に記載の反応装置。
【請求項18】
水素透過性膜(3)が夫々反応容器(20)中に実質的に垂直に吊るされている、請求項16又は17に記載の反応装置。
【請求項19】
水素透過性膜(3)が管状燃焼室(5)の境界になっている、請求項1〜18のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項20】
各管状の供給管(9)に、反応容器(20)の一端部(31)へフラッシュ流体を通過させるための少なくとも一つの中心管(30)が配備されており、前記中心管(30)が、供給管(9)の内部に伸び、前記中心管(30)の末端部(31)近くに各燃焼室(5)のフラッシュ流体のための入り口(14)が設けられている、請求項17〜19のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項21】
水素(H)が反応生成物として形成される反応を行う方法において:
− 反応室(2)及び燃焼室(5)で、水素透過性膜(3)で互いに分離されており、前記燃焼室(5)が横供給孔(10)を備えた酸素(O)含有流体のための供給チャンネル(9)を有する、反応室及び燃焼室を与えること;
− 前記反応室(2)で前記反応を行うこと;
− 前記反応室(2)からの水素を前記水素透過性膜(3)を通って前記燃焼室(5)へ運ぶこと;
− 前記供給チャンネル(9)の前記供給孔(10)を通って前記燃焼室(5)へ酸素(O)含有流体を供給すること;
− 前記燃焼室(5)で、前記水素透過性膜(3)を通って運ばれた、ある量の水素を燃焼して熱を放出させること;
− 前記熱を前記反応室(2)へ伝達すること;
を含む方法。
【請求項22】
熱が水素透過性膜(3)を通る熱伝導により燃焼室(5)から反応室(2)へ伝達される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
反応室(2)で行われる反応が吸熱性であり、反応室(2)へ伝達された熱を前記吸熱反応を維持するために用いられる、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
反応室(2)で行われる反応が発熱性である、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
反応室(2)で行われる反応が平衡反応である、請求項21〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
水蒸気及び/又は窒素及び/又は空気のような酸素(O)含有流体のようなフラッシュ流体を燃焼室(5)を通って供給する、請求項21〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
水素を、燃焼室(5)から出口(15)を通って排出する、請求項21〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
燃焼室(5)から排出された水素を発電のためのガスタービンへ供給する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
燃焼室(5)から排出された水素を、窒素と一緒にアンモニア(NH)を製造するためのアンモニア反応器へ供給する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
シンガスが反応室(2)から排出部(18)を通って排出される、請求項21〜26のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2009−535292(P2009−535292A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509463(P2009−509463)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【国際出願番号】PCT/NL2007/050192
【国際公開番号】WO2007/142518
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(505007434)ステフティング エネルギーオンデルゾエク セントラム ネーデルランド (5)
【Fターム(参考)】