説明

水素吸蔵合金タンクシステム

【課題】水素吸蔵合金の特性を利用したエネルギー貯蔵・反応列利用複合システムにおいて、反応熱を高効率で利用する。
【解決手段】水素供給源11からの水素を水素吸蔵合金タンクA、B、C、D内に蓄え、水素負荷12に対して蓄えた水素を供給可能な水素吸蔵合金タンクシステムであって、対となる水素吸蔵合金タンクA、Cと水素吸蔵合金タンクB、Dにおいて、一方の水素吸蔵合金タンクの水素吸蔵過程終了後と他方の水素吸蔵合金タンクの水素吸蔵過程開始前、または一方の水素吸蔵合金タンクの水素放出過程終了後と他方の水素吸蔵合金タンクの水素放出過程開始前との間に、対となるタンク相互間で熱交換が行なわれる。各水素吸蔵合金タンクA、B、C、Dにおける水素放出時の冷熱は、熱交換器2を介して、冷熱利用系3に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次エネルギーとしての水素を体積的に高密度に貯蔵する、水素吸蔵合金タンクシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電所の電力負荷率の向上、並びにエネルギーコスト及び炭酸ガス排出量の低減の観点から、深夜電力によりエネルギーを貯蔵し、昼間に利用するエネルギーの貯蔵・供給システムが種々提案されている。実用化されている代表的な技術として、水蓄熱システム及び氷蓄熱システム等があるが、水素吸蔵合金は、二次エネルギーとしての水素を体積的に高密度に貯蔵することができ、また水素の吸蔵と放出を可逆的に繰り返すことが容易なため、それを利用して高密度のエネルギーの貯蔵・供給システムを構築できる。
【0003】
水素吸蔵合金は、通常、密閉容器であるタンク内に収容されて使用される。タンク内で十分に活性化処理された水素吸蔵合金は、タンク内の所定の温度・圧力によって水素を吸蔵・放出する特性を持つ。そしてタンク内に水素を供給して昇圧させると、水素吸蔵合金は水素平衡圧力(水素吸蔵合金の水素ガスの吸蔵・放出に対する平衡圧力)を維持しようとタンク内の水素を吸蔵する。その際に水素吸蔵合金は発熱反応を起こす。発熱によって水素吸蔵合金が加熱されると、温度に応じて水素吸蔵合金の水素平衡圧力が高くなり、タンク内の圧力が高くなる。水素の供給元よりもタンク内の圧力が高くなるとそれ以上水素をタンクに供給できなくなる。そのためタンク内に配備された配管を通じて、水素吸蔵合金よりも低温の水を循環させて除熱することで、水素平衡圧力を低下させて連続的に水素を吸蔵させることができる。但し、水素吸蔵の総量が当該水素吸蔵合金の限界量を超えると、水素平衡圧力が急激に高くなり、除熱してもそれ以上の水素を吸蔵できなくなる。
【0004】
一方、タンク内を減圧させると、水素吸蔵合金は水素平衡圧力を維持しようと水素をタンク内に放出する。その際に水素吸蔵合金は吸熱反応を起こす。吸熱によって水素吸蔵合金が冷却されると、温度に応じて水素平衡圧力が低くなり、タンク内の圧力が徐々に低くなる。水素の放出先よりもタンク内の圧力が低くなるとそれ以上タンクから水素を放出できなくなる。そのためタンク内に配備した配管を通じて、水素吸蔵合金よりも高温の水を循環させて加熱することで、水素平衡圧力を上昇させて連続的に水素を放出させることができる。但し、水素放出の総量が当該水素吸蔵合金の限界量を超えると、水素平衡圧力が急激に低くなり、加熱してもそれ以上の水素を放出できなくなる。
【0005】
このように水素吸蔵合金は、水素放出時には吸熱反応、水素吸蔵時には発熱反応を起こすため、当該水素の吸蔵・放出時の反応熱を水素の貯蔵以外の目的に利用することができる。かかる水素吸蔵合金の特性を活用して構築される、エネルギー貯蔵・反応熱利用複合システムとしては、例えば次のようなシステムが考えられる。すなわち、夜間に安価な深夜電力により水を電気分解し、発生した水素を水素吸蔵合金に吸蔵する。一方昼間には、水素吸蔵合金から水素を放出し、その水素を燃料とした燃料電池により建物の電力需要を賄う。そのような二次エネルギーとしての水素を貯蔵すると共に、水素の吸蔵・放出に伴う反応熱を、たとえば改組吸蔵合金を内蔵したタンクとの間で熱交換する水を循環させることでこれを取り出し、建物の熱需要に利用するシステムである。これをより具体化して提案されたものに、特許文献1に開示された技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−71959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、供給電力の平準化を図るために、前記した水素吸蔵合金の特性を巧みに利用したものであるが、水素放出時の吸熱反応を一般空調用の冷熱に利用できる温度にする場合、水素吸蔵合金の組成に起因する特性及び循環水の水量にもよるが、循環水出口温度を5〜7℃程度(冷熱需要に必要な現実的温度)とした場合、水素放出時の水素吸蔵合金の運転温度(循環水入口温度)は12℃程度であり、他方、水素吸蔵時の発熱反応を一般の冷却塔で除熱できる温度の37℃とすれば、概ね水素吸蔵時の水素吸蔵合金の運転温度(循環水入口温度)は32℃程度になる。
【0008】
このような冷熱利用時の現実的な運転条件を設定したとき、水素吸蔵過程から水素放出過程に切り替えて、放出の際に発生する冷熱を利用するには、水素吸蔵合金を20℃程度冷却する必要がある。かかる場合、水素吸蔵合金自らの放出時の吸熱反応で冷却することができるが、水素吸蔵合金が12℃以下に冷却されるまで、水素吸蔵合金の反応熱の冷熱利用はできなくなる。したがってシステムからのエネルギー利用量が低下する。
【0009】
また、水素放出過程から水素吸蔵過程に切り替える際には、水素吸蔵合金を20℃程度加熱する必要がある。前記した冷熱利用を目的としたシステムでは、水素吸蔵時の反応熱を冷却塔で除熱することを想定しており、水素吸蔵時の反応熱を利用することを想定していないため、システムからのエネルギー利用量の低下にはならない。しかし、水素吸蔵過程の反応熱(温熱)を利用するシステムを構築した場合、水素吸蔵合金が所定の温度(例えば60℃)以上に加熱されるまで、水素吸蔵合金の反応熱の温熱利用はできなくなる。したがってこの場合は、熱利用の観点からは、システムからのエネルギー利用量が低下する。
【0010】
さらにまた大規模なビル等に水素吸蔵合金を利用したエネルギー貯蔵・供給システムを適用しようとする場合、大量の水素吸蔵合金が必要になり、それを貯蔵するために巨大なタンクが必要になる。水素吸蔵合金は大量の水素を安全に貯蔵できるというメリットがあるが、質量が極めて大きい。巨大なタンクを一箇所に設置する場合、重量増に伴う建築構造物の強化、装置の設置工事の負担増を招いてしまう。また圧力容器に係る規制に留意しなければならず、管理コストの上昇を招き、今後の普及を阻む恐れがある。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、前記したような水素吸蔵合金の特性を利用したエネルギー貯蔵・反応熱利用複合システムにおいて、反応熱を高効率で利用でき、しかも大規模なビル等に適用しても、前記した質量の問題を緩和することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明は、水素吸蔵合金を内蔵するタンクを備え、水素供給源からの水素を前記水素吸蔵合金内に蓄え、水素負荷に対して前記蓄えた水素を供給可能な水素吸蔵合金タンクシステムであって、水素吸蔵合金タンクの対を形成する偶数の水素吸蔵合金タンクと、熱利用系との間で熱交換を行なう熱交換器に接続される水の往管、還管に各々接続され、各水素吸蔵合金タンクとの間で熱交換を行なうための個別往管、個別還管とを有している。そして前記対となる水素吸蔵合金タンクにおいて、一方の水素吸蔵合金タンクの水素吸蔵過程終了後と他方の水素吸蔵合金タンクの水素吸蔵過程開始前、または一方の水素吸蔵合金タンクの水素放出過程終了後と他方の水素吸蔵合金タンクの水素放出過程開始前との間に、対となるタンク相互間で熱交換が行なわれることを特徴としている。
【0013】
本発明の水素吸蔵合金タンクシステムにおいては、水素供給源(例えば水電解装置)からの水素が水素吸蔵合金内に蓄えられ、水素負荷(例えば燃料電池)に対しては、水素吸蔵合金内に蓄えられた水素が供給される。そして水素吸蔵合金の水素吸蔵、水素放出の際に発生した温熱、冷熱は、個別往管、往管を流れる水を介して熱交換器へ移動し、熱交換器によって熱利用系へと供給可能である。したがって、当該外部配管に、冷熱を利用する冷房装置等や、温熱を利用する暖房装置などを接続することで、これらの熱需要の全部または一部を担うことができる。そして、例えば、対となる水素吸蔵合金タンクにおいて、一方の水素吸蔵合金タンクの水素吸蔵過程終了後と他方の水素吸蔵合金タンクの水素吸蔵過程開始前に、これら対となるタンク相互間で熱交換が行なわれるので、水素吸蔵過程終了後の高温タンクと、水素放出終了後の低温タンクとの間で熱交換され、水素吸蔵終了後のタンクは降温し、水素放出終了後の低温タンクは昇温する。したがって、水素吸蔵過程終了後のタンクが次に水素放出過程を実施する際、当該放出過程の際に発生する冷熱を、前記熱交換器を介して熱利用系で利用できるまでの時間が、吸蔵後、放出の際の自己冷却によって達成するまでの時間よりも短縮でき、その結果、水素吸蔵、放出によって発生した顕熱を無駄なく利用することができる。
【0014】
例えば、既述した水素放出時の吸熱反応を、熱利用系として一般空調用の冷熱に利用する場合に即して説明すれば、従来、水素吸蔵過程から水素放出過程に切り替える際には、水素吸蔵合金を32℃から12℃へと20℃程度冷却する必要があったのが、吸蔵過程終了後の32℃のタンクと、例えば放出過程終了後の12℃のタンクを熱交換することで、タンクの温度は22℃となっているので、10℃冷却すればよいことになる。したがってその分、吸蔵過程終了から水素放出過程における冷熱利用可能温度である12℃にするまでの時間が短縮され、結果としてシステムから外部に取り出せる冷熱利用量を高めることができる。
【0015】
同様に、水素吸蔵過程の発熱反応を利用して温熱を熱利用系(例えば一般空調用の温熱に利用する系)に対して供給する場合においても、水素放出過程終了後の低温タンクと水素吸蔵過程終了後のタンクとを熱交換することで、温熱利用できる温度に達する時間を短縮でき、水素吸蔵合金からの発熱量のうち顕熱ロスで利用できない量を半減させることができる。
【0016】
そして本発明の水素吸蔵合金タンクシステムにおいては、水素吸蔵合金タンクの対を形成する偶数の水素吸蔵合金タンクによって、全体としてみれば、1台の巨大な水素吸蔵合金タンクを偶数に分割した構成となっており、建築構造物への重量負荷の分散化、装置の設置工事の簡素化が可能になる。
【0017】
前記熱利用系は冷熱利用系配管であり、前記往管及び還管は、冷却塔との間に配管された冷却水配管と熱交換を行なう他の熱交換器にも接続され、前記水は、前記熱交換器または他の熱交換器との間で切り替え供給可能であってもよい。
【0018】
前記熱利用系は、例えば温水コイルに通ずる温熱利用系配管であってもよい。
【0019】
前記対となる水素吸蔵合金タンク相互間では、個別往管と個別還管、および個別還管と個別往管とが接続されて循環水配管が形成され、前記熱交換は、当該循環水配管を流れる水によって行なわれるようにしてもよい。この場合、前記水素供給源および水素負荷と、各水素吸蔵合金タンクとの間に各々配管された水素配管、並びに前記循環水配管には夫々制御弁が設けられ、これら制御弁と、前記循環水配管に設けられた循環ポンプによって、水素吸蔵合金タンクにおける水素吸蔵、水素放出および熱交換のタイミングが個別に制御されるようにしてもよい。
【0020】
前記対となる水素吸蔵合金タンク相互間には、タンク内を互いに加熱・冷却できるヒートパイプが設けられ、前記熱交換は、当該ヒートパイプによって行なわれるようにしてもよい。この場合、前記水素供給源および水素負荷と、各水素吸蔵合金タンクとの間に各々配管された水素配管、並びに前記ヒートパイプには夫々制御弁が設けられ、これら制御弁によって、水素吸蔵合金タンクにおける水素吸蔵、水素放出および熱交換のタイミングが個別に制御されるようにしてもよい。
【0021】
前記対となる水素吸蔵合金タンク相互間には、気液の密度差によってタンク内を一方で加熱、他方で冷却できる冷媒、ここでは例えばフロン系冷媒の循環路が設けられ、前記熱交換は、当該循環路によって行なわれるようにしてもよい。この場合、前記水素供給源および水素負荷と、各水素吸蔵合金タンクとの間に各々配管された水素配管、並びに前記循環路には夫々制御弁が設けられ、これら制御弁によって、水素吸蔵合金タンクにおける水素吸蔵、水素放出および熱交換のタイミングが個別に制御されるようにしてもよい。
【0022】
水素吸蔵合金タンクの数は、2対以上の偶数、すなわち4台以上あってもよく、かかる場合、一対の水素吸蔵合金タンク相互間で熱交換している間、他の対における一の水素吸蔵合金タンクにおいて水素吸蔵過程または水素放出過程が行なわれるようにすることで、熱交換過程を実施している間も、あたかも1台の水素吸蔵合金タンクのように、連続的に水素吸蔵運転、水素放出運転、あるいは水素吸蔵と水素放出の繰返運転を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、水素吸蔵合金の特性を利用したエネルギー貯蔵・反応熱利用複合システムにおいて、反応熱を高効率で利用でき、しかも大規模なビル等に適用しても、質量を分散させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態にかかる水素吸蔵合金タンクシステムの構成の概略を示す説明図である。
【図2】各水素吸蔵合金タンクシステムの吸蔵過程、放出過程、熱交換過程と、そのときの各バルブの開閉状態を示すタイミングチャートである。
【図3】対となる水素吸蔵合金タンク間の熱交換にヒートパイプを用いた水素吸蔵合金タンクシステムの構成の概略を示す説明図である。
【図4】対となる水素吸蔵合金タンク間の熱交換に冷媒の自然循環配管を用いた水素吸蔵合金タンクシステムの構成の概略を示す説明図である。
【図5】温熱利用系に適用した水素吸蔵合金タンクシステムの構成の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本実施の形態にかかる水素吸蔵合金タンクシステムについて説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる水素吸蔵合金タンクシステムの系統の概略を示しており、この実施の形態は、水素吸蔵合金の反応熱(水素放出時の冷熱)を冷熱利用系に用いるシステムであり、4台の水素吸蔵合金タンクA、B、C、Dを有するシステムとして構成され、水素吸蔵合金タンクA、Cが1つの対を構成し、水素吸蔵合金タンクB、Dが他の1つの対を構成している。
【0026】
各水素吸蔵合金タンクA、B、C、Dは、同一構成であり、気密性を有するタンク内部に水素吸蔵合金(図示せず)を収容している。各水素吸蔵合金タンクA、B、C、Dには、水素配管10を介して、例えば水電解装置などの水素供給源11からの水素が供給可能であり、供給された水素は、タンク内の水素吸蔵合金で貯蔵することが可能である。またタンク内の水素吸蔵合金に貯蔵された水素は、例えば燃料電池などの水素負荷12に対して、供給可能である。水素配管10は、本管10aと、本管10aと水素供給源11との間に配管された枝管10b、本管10aと水素負荷12との間に配管された枝管10c、本管10aと各水素吸蔵合金タンクA、B、C、D内に配管された枝管10d、10e、10f、10gとを有している。各枝管10b、10c、10d、10e、10f、10gには、各々対応する制御弁としてのバルブV1、V2、V3、V4、V5、V6が設けられている。
【0027】
水素吸蔵合金タンクAには、個別還管21、個別往管22が配管されており、個別還管21に流れる水は、熱交換部A1(たとえばタンクに巡らされた配管)においてタンクと熱交換された後、個別往管22から、往管1に流れるようになっている。往管1は熱交換器2と接続されており、往管1から熱交換器2に入った冷媒、この例では水は、冷熱利用系3に通ずる配管4内の冷媒と熱交換されて、その後還管5へと流れ、還管5から再び個別還管21に流れる。したがって、水素吸蔵合金タンクAと熱交換器2との間には、個別還管21、熱交換部A1、個別往管22、往管1、熱交換器2、還管5、個別還管21という水の循環系が構成されている。かかる水の循環は、たとえば還管5に設けられたポンプ6によって行なわれる。
【0028】
同様に、他の水素吸蔵合金タンクB、C、Dにも各々個別還管21、対応する熱交換部B1、C1、D1、個別往管22が配管されている。
【0029】
水素吸蔵合金タンクA、B、C、Dの各個別還管21には、各々対応するバルブV7a、V8a、V9a、V10aが設けられ、水素吸蔵合金タンクA、B、C、Dの各個別往管22には、各々対応するバルブV7b、V8b、V9b、V10bが設けられている。
【0030】
対となる水素吸蔵合金タンクA、C間では、水素吸蔵合金タンクAの個別還管21と水素吸蔵合金タンクCの個別往管22とが、配管23によって接続され、水素吸蔵合金タンクAの個別往管22と水素吸蔵合金タンクCの個別還管21とが、配管24によって接続されている。これによってバルブV7a、V7b、V9a、V9bを閉止することで、水素吸蔵合金タンクAの個別還管21→熱交換部A1→個別往管22→配管24→水素吸蔵合金タンクCの個別還管21→熱交換部C1→個別往管22→配管23→水素吸蔵合金タンクAの個別還管21という水の循環系が構成される。かかる循環は、たとえば配管23に設けたポンプ25によって行なわれる。配管24には、制御弁としてのバルブV11aが設けられ、一方配管23には、制御弁としてのバルブV11bが設けられている。
【0031】
他の対となる水素吸蔵合金タンクB、D間では、水素吸蔵合金タンクBの個別還管21と水素吸蔵合金タンクDの個別往管22とが、配管26によって接続され、水素吸蔵合金タンクBの個別往管22と水素吸蔵合金タンクDの個別還管21とが、配管27によって接続されている。これによって、バルブV8a、V8b、V10a、V10bを閉止することで、水素吸蔵合金タンクBの個別還管21→熱交換部B1→個別往管22→配管27→水素吸蔵合金タンクDの個別還管21→熱交換部D1→個別往管22→配管26→水素吸蔵合金タンクDの個別還管21という水の循環系が構成される。かかる循環は、たとえば配管26に設けたポンプ28によって行なわれる。配管27には、制御弁としてのバルブV12aが設けられ、一方配管26には、制御弁としてのバルブV12bが設けられている。
【0032】
往管1には、分岐した分岐往管1aが接続され、この分岐往管1aの水は、他の熱交換器31において、冷却塔32において除熱され冷却水配管33を流れる冷却水と熱交換され、分岐還管5aに戻って来る。往管1の熱交換器31寄りの箇所には、制御弁としてのバルブV13aが設けられ、同じく還管5には制御弁としてのバルブV13bが設けられ、分岐往管1aには、制御弁としてのバルブV14aが設けられ、同じく分岐還管5aには制御弁としてのバルブV14bが設けられている。
【0033】
また水素吸蔵合金タンクA、B、C、Dのタンク内の圧力は常に高圧ガスの適用下限圧力(1.1 MPa(abs))を下回るようにし、水素の供給先である水素負荷12の圧力(燃料電池とすると一般的に0.15〜0.2 MPa(abs))を上回るように設定される。これによって、高圧ガスの規制法令を適用されずに、発生熱の空調冷熱への利用が可能な水素吸蔵合金システムとして構築できる。
【0034】
本実施の形態にかかる水素吸蔵合金タンクシステムの配管系は以上のような系統を有しており、制御弁としてのバルブV1〜V14b、ポンプ6.25,28は、制御装置(図示せず)によって、その開閉タイミング、動作タイミングが制御されている。次に本実施の形態にかかる水素吸蔵合金タンクシステムの運転例について説明する。
【0035】
この運転例は、1日24時間において、0時から12時までは水素吸蔵合金タンクA、B、C、D全体として水素吸蔵過程を実施し、12時から24時までは水素吸蔵合金タンクA、B、C、D全体として水素放出過程を実施するものである。すなわち、0時から12時までは水素供給源11から水素が供給され、これを水素吸蔵合金タンクA、B、C、Dのいずれかで吸蔵する運転を行い、12時から24時までは水素吸蔵合金タンクA、B、C、Dのいずれかで放出運転を行なって、水素負荷13に対して、水素を供給することが行なわれる。
【0036】
そして個別のタンクの運転例については、図2のチャートに示したように、まず、0時から3時までは水素供給源11からの水素は、水素吸蔵合金タンクAにて吸蔵され、3時から6時までは水素吸蔵合金タンクBにて吸蔵され、6時から9時までは水素吸蔵合金タンクCにて吸蔵され、9時から12時までは水素吸蔵合金タンクDにて吸蔵される。そして水素吸蔵合金タンクAにて水素が吸蔵される際に、発生する反応熱(温熱)は、熱交換部A1、個別往管22、往管1、熱交換器31、還管5、個別還管21を介して循環する循環水によって、熱交換器31において、冷却塔32からの冷却水と熱交換され、除熱される。このときのバルブの開閉状況は、図2のチャートに示したように、バルブV1、V3、V7、V14a、V14bが開、他のバルブは全て閉である。なお図3のチャートにおける下段のバルブ開閉状況を示す表において、○は開、無印は閉を示しており、同期して開閉する1対のバルブ、たとえばV14a、V14bなどは、表中は一括して単に「V14」と記載した。
【0037】
同様に、水素吸蔵合金タンクB、C、Dにて水素が吸蔵されている間に発生する反応熱(温熱)も、順次熱交換器31を介して冷却塔32で除熱される。
【0038】
そして3時から6時まで水素吸蔵合金タンクBにて水素が吸蔵されている間、水素吸蔵過程を終えた水素吸蔵合金タンクAと、水素吸蔵合金タンクAの対となる、水素吸蔵過程開始前の水素吸蔵合金タンクCとの間では、水素吸蔵合金タンクAの個別還管21→熱交換部A1→個別往管22→配管24→水素吸蔵合金タンクCの個別還管21→熱交換部C1→個別往管22→配管23→水素吸蔵合金タンクAの個別還管21によって構成される水の循環系により、熱交換される。これによって、水素吸蔵過程を終えて高温となっている水素吸蔵合金タンクAの熱が、水素吸蔵合金タンクCへと移動し、水素吸蔵合金タンクCは昇温し、水素吸蔵合金タンクAは降温する。その結果、水素吸蔵合金タンクAは、外部からのエネルギーを付与することなく、次の水素放出過程を実施する場合に、速やかに(熱交換しない場合の半分の時間で)所定の温度(例えば10〜12℃)まで降温させることができ、適切に水素放出過程を実施できるとともに、熱交換部A1を通じて循環水により、所定の冷熱を取り出すことができる。すなわち熱交換器2を介して冷熱利用系3に供する冷熱を取り出すことができる。
【0039】
かかるプロセスと同様に、6時〜9時までの間、水素吸蔵合金タンクCにて水素が吸蔵されている間、水素吸蔵過程を終えた水素吸蔵合金タンクBと、水素放出過程開始前の水素吸蔵合金タンクDとの間で熱交換される。
【0040】
そして12時以降は、システムとしては水素放出運転に入り、12時〜15時の間は、既述したように、水素吸蔵合金タンクCとの熱交換を終えて降温した水素吸蔵合金タンクAが、水素放出過程を実施し、その際発生する冷熱は、循環水を通じて、個別往管22、往管1を経て、熱交換器2を介し、冷熱利用系3に供される。このとき、図2のチャートに示したように、予め水素吸蔵合金タンクCとの熱交換を終えて水素吸蔵合金タンクAの温度はある程度低下しているので、冷熱取り出しに必要な温度まで低下する時間が短く、その分顕熱ロスが少ない。したがってシステムからのエネルギーの利用効率は高いものである。
【0041】
以後、同様にして、15時〜18時の間は、水素吸蔵合金タンクBが水素放出運転を実施し、18時〜21時の間は水素吸蔵合金タンクCが水素放出運転を実施し、21時〜24時の間は水素吸蔵合金タンクDが水素放出運転を実施する。そしてその間、水素放出運転を実施している水素吸蔵合金タンクからは、放出時に発生する冷熱が循環水によって取り出され、個別往管22、往管1を経て、熱交換器2を介し、冷熱利用系3に供される。
【0042】
また15時から18時まで水素吸蔵合金タンクBにて水素が放出されている間、水素放出過程を終えた水素吸蔵合金タンクAと、水素吸蔵合金タンクAの対となる、水素放出過程開始前の水素吸蔵合金タンクCとの間では、水素吸蔵合金タンクAの個別還管21→熱交換部A1→個別往管22→配管24→水素吸蔵合金タンクCの個別還管21→熱交換部C1→個別往管22→配管23→水素吸蔵合金タンクAの個別還管21によって構成される水の循環系により、熱交換される。これによって、水素放出過程を終えて低温となっている水素吸蔵合金タンクAの冷熱が、水素吸蔵合金タンクCへと移動し、水素吸蔵合金タンクCは降温し、水素吸蔵合金タンクAは昇温する。その結果、水素吸蔵合金タンクAは、外部からのエネルギーを付与することなく、次の水素吸蔵過程を実施する場合に、速やかに(熱交換しない場合の半分の時間で)所定の温度(例えば32℃)まで昇温させることができ、適切に水素吸蔵過程を実施できるとともに、熱交換部A1を通じて循環水により、所定の温熱を速やかに取り出すことができる。
【0043】
このように本実施の形態によれば、水素吸蔵後のタンクと水素吸蔵前のタンク、あるいは水素放出後のタンクと水素放出前のタンクを、循環水を介して熱交換することにより反応熱の顕熱ロスを半減し、空調等に利用できる反応熱量を、理論的に、倍増することができる。すなわち、全体として1の巨大なタンクを4分割して、順次、熱交換による熱回収運転を実施するようにしたので、水素吸蔵合金からの発熱量のうち、顕熱ロスで利用できない量を半減させることができる。しかもシステム全体して4台の水素吸蔵合金タンクA、B、C、Dを備え、3時間ごとにこれらの運転を切り替えるようにしたので、24時間連続して、水素吸蔵運転、次いで水素放出運転を実施することができる。
【0044】
さらにまた、システム全体しては、1の巨大なタンクを4台に分割したことになるので、何かしらの原因で水素吸蔵合金が劣化したり、あるいはタンクが破損したりした場合、通常は全ての水素吸蔵合金タンクを交換する必要があるが、実施の形態の場合には、交換するのは、実質的に4分割されたうちの1台のタンクのみで済む。したがって、故障リスクを1/4に低減することができる。そしてシステム全体しては、質量の大きい水素吸蔵合金タンクを、1/4の大きさのタンクに分けて配置することになるから、大きさ、耐重量の点で、設置場所の自由度が向上し、それに伴って必要な工事も大掛かりなものとならない。
【0045】
ところで、水素吸蔵合金は、吸蔵過程あるいは放出過程において、その時点でのタンク内の水素残量を外部から容易に把握することができない。そのため一般的には質量流量計(マスフローメータ)を水素配管10に設置し、水素流量の積算値を計測して把握する。しかしながら質量流量計は非常に高価であり、且つ誤差が生じやすいことから、使用せずにシステムを構築することができれば、大きなメリットが生まれる。
【0046】
この点に関し、質量流量計を使用せずに水素残量を把握する方法としては、水素吸蔵合金タンクA、B、C、Dと外部との物質や熱の出入りを断熱材等で遮断して、タンク内の温度が定常になるまで待って温度と圧力を計測する方法が提案できる。この場合、予め求めておいた水素吸蔵合金の温度−圧力の特性線図を元に、定常での温度と圧力から、タンクの水素残量を特定することができる。しかし、タンク内の温度が定常になるまでには、一般的に数十分から数時間を要し、その間は水素の吸蔵・放出を行うことができない。また、一般的な水素吸蔵合金には、プラトー領域(水素吸蔵量が増加しても圧力が変化しない平坦な部分)が存在するため、温度が定常になっても水素残量を特定できない場合がある。

【0047】
その点、実施の形態にかかる水素吸蔵合金タンクによれば、システム全体としてみれば、タンクが4分割されているので、凡その水素残量を把握することができる。すなわち、4分割の場合、未使用タンクが2台あれば、少なくとも50%以上は残量があることを把握できる。この場合、分割数を増やすほど、より正確な水素残量を把握することができる。
【0048】
前記実施の形態では、対となる水素吸蔵合金タンクAと水素吸蔵合金タンクC、水素吸蔵合金タンクBと水素吸蔵合金タンクDとの間の熱交換を実施するに当たり、個別往管22、個別還管21との間に配管した配管23、24、ならびに配管26,27を用い、各々ポンプ25、28を作動させて、循環水を循環させることで、これを実施するようにしたが、かかる水の循環配管系に替えて、図3に示したようなヒートパイプ41、42を用いてもよい。
【0049】
すなわち、図3に示したシステムでは、対となる水素吸蔵合金タンクAと水素吸蔵合金タンクCとの間には、複数のヒートパイプ41が設けられ、水素吸蔵合金タンクBと水素吸蔵合金タンクDとの間には、複数のヒートパイプ42が設けられている。これらヒートパイプ41、42は、管の内壁に毛細管構造を持たせた金属製のパイプであり、内部は真空で少量の水もしくはR−134a等の冷媒が封入された構造を有している。かかるヒートパイプ41、42を対となる水素吸蔵合金タンクAと水素吸蔵合金タンクC、水素吸蔵合金タンクBと水素吸蔵合金タンクDとの間に渡し設けることにより、ヒートパイプ41、42の各一端から他端へ高速で効率良く熱を移動させることができる。すなわち、水素吸蔵合金タンクAと水素吸蔵合金タンクCの間の熱交換、水素吸蔵合金タンクBと水素吸蔵合金タンクDとの間の熱交換を、速やかに行なうことができる。しかも図1の例で使用していた循環水を循環させるためのポンプ25、28は不要で、しかもこれらポンプを作動させるための動力エネルギーも不要となり、より省エネルギー化が図られる。なお熱交換過程の実施は、各ヒートパイプ41、42に設けたバルブV21、V22の開閉で制御される。
【0050】
さらに前記した循環水配管やヒートパイプに替えて、図4に示したように、対となる水素吸蔵合金タンクAと水素吸蔵合金タンクCの間、水素吸蔵合金タンクBと水素吸蔵合金タンクDとの間に、各々独立した冷媒の自然循環配管51、52を設けてもよい。
【0051】
この自然循環配管51、52内には、例えばR−134aなどの冷媒が封入されており、気液の密度差によって2つのタンク間で、一方で加熱、他方で冷却でき、ヒートパイプと同様、循環用のポンプや、当該ポンプを作動させるための動力エネルギーも要さず、対となるタンク間での熱交換を実施することができる。なお熱交換過程の実施は、各自然循環配管51、52に設けられたバルブV23、V24の開閉で制御される。
【0052】
前記したシステム例は、いずれも冷熱利用系に適用したものであったが、もちろん本発明は、温熱利用系にも適用が可能である。図5は、図1に示したシステム構成の主要部を利用して、温熱利用系に適用した例を示し、図5中、図1と同一符号で示される部材、構成は、既述の実施の形態と同一のものを示している。
【0053】
この図5のシステム例では、熱交換器2において往管1からの水と熱交換される対象が、温熱利用系7に流れる温水となっている。したがって、各水素吸蔵合金タンクA、B、C、Dにおける水素吸蔵運転の際に発生した、例えば60℃の循環水が、熱交換器2において、温熱利用系7からの戻り温水(例えば50℃)と熱交換され、これによって例えば55℃に昇温した温水が、温熱利用系7へと送られ、他方55℃に降温した循環水は、還管5から各水素吸蔵合金タンクA、B、C、Dへと戻される。
【0054】
なおこのシステム例において、各水素吸蔵合金タンクA、B、C、Dが水素放出運転を実施した際に発生する、例えば30〜40℃の冷熱は、機械の冷却等によって得られる、例えば40℃以上の低温廃熱系61を熱源として、熱交換機器62によって加熱される。
【0055】
なお前記したシステム例は、水素吸蔵合金の吸蔵、放出時の温度差が、概ね20〜30℃である合金を用いたので、冷熱利用系と温熱利用系とを、各々異なったシステム例として構成したものであったが、前記温度差が、例えば40℃以上の合金を用いたり、あるいは2種類の温度特性の異なる2種類の合金(例えば放出時と吸蔵時とでは、12℃〜32℃、35℃〜55℃の温度の高低差がある異種の水素吸蔵合金)を個別に収容した、より多数、例えば8台の水素吸蔵合金タンクを用意して、冷熱利用系と温熱利用系とで、運転する水素吸蔵合金タンクの種類を切り替えるようにすれば、1のシステムで、冷熱利用と温熱利用の双方に対応することができる。
【実施例1】
【0056】
図1に示したシステム例を、下記の条件で運転した際の結果について説明する。
[計算条件]
(1)水素吸蔵合金の質量:50kg
(2)タンク(SUS)の質量:100kg
(3)銅配管(全ての水配管系に用いた配管):2m×48本(12.7mmφ、厚さ1mm)+8m
(4)前記銅配管の内部には、水が充填されているものと仮定
(5)合金の水素利用率:80%
(6)水素吸蔵タンクの吸蔵・放出運転時の温度差:20℃(高温32℃、低温12℃)
【0057】
[物性値]
(1)水素吸蔵合金の反応熱:28kJ/mol−H
(2)水素吸蔵合金の理論水素吸蔵量:0.156Nm/kg
(3)水素吸蔵合金の比熱:0.41kJ/(kg・K)
(4)SUSの比熱:0.50kJ/(kg・K)
(5)銅の比熱:0.38kJ/(kg・K)
(6)銅の密度:0.0089kg/m
(7)水の比熱:4.2kJ/(kg・K)
(8)水の密度:1,000 kg/m
【0058】
[反応熱と熱容量の比較]
(1)合金の反応熱Q
= 0.156Nm/kg×50kg×0.8×44.64mol
−H/Nm×28kJ/mol−H=7,800kJ
(2)温度差20℃のときの熱容量
水素吸蔵合金の熱容量C=0.41kJ/(kg・K)×50kg×20K=410kJ
タンクの熱容量C=0.50kJ/(kg・K)×100kg×20
=1,000kJ
銅配管の熱容量C=0.38kJ/(kg・K)×{(12.7×3.14×1)/1000000×(2×48+8)}×0.0089kg/m×20K=0.00028kJ
銅配管内の水の熱容量C=4.2kJ/(kg・K)×{(12.7/2)×3.14/1000000×(2×48+8)}×1,000kg/m×20K=1,106kJ
全ての熱容量C20=C+C+C+C=410+1000+0.00028+1106=2516kJ
に対する割合C20/Q=2516/7800=32%
(3)温度差10℃のときの熱容量
熱容量C10 =C20/2=2516/2=1,258kJ
に対する割合C10/Q =1258/7800=16%
【0059】
代表例として、前記条件で計算した結果、水素吸蔵合金からの反応熱のうち、顕熱ロスで利用できない割合は、対となる水素吸蔵合金間で熱交換を行なわない運転で32%であるのに対して、本実施の形態では16%に低減されることが確認できた。なおここでの計算条件は、タンクの肉厚や内部構造によって変わるものではあるが、大凡の目安となる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、水素を二次エネルギーとして貯蔵し、かつ水素吸蔵合金の反応熱を熱利用系に利用するエネルギー貯蔵・反応熱利用複合システムにおいて有用である。
【符号の説明】
【0061】
1 往管
2、31 熱交換器
3 冷熱利用系
4 配管(冷熱利用系)
5 還管
6、25、28 ポンプ
7 温熱利用系
10 水素配管
11 水素供給源
12 水素負荷
21 個別還管
22 個別往管
23、24、26、27 配管(循環系)
32 冷却塔
33 冷却水配管
41、42 ヒートパイプ
51、52 自然循環配管
A、B、C、D 水素吸蔵合金タンク
A1、B1、C1、D1 熱交換部
V1〜V14、V21〜V24 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素吸蔵合金を内蔵するタンクを備え、水素供給源からの水素を前記水素吸蔵合金内に蓄え、水素負荷に対して前記蓄えた水素を供給可能な水素吸蔵合金タンクシステムであって、
水素吸蔵合金タンクの対を形成する偶数の水素吸蔵合金タンクと、
熱利用系に通ずる外部配管との間で熱交換を行なう熱交換器に接続される水の往管、還管に各々接続され、各水素吸蔵合金タンクとの間で熱交換を行なうための個別往管、個別還管とを有し、
前記対となる水素吸蔵合金タンクにおいて、一方の水素吸蔵合金タンクの水素吸蔵過程終了後と他方の水素吸蔵合金タンクの水素吸蔵過程開始前、または一方の水素吸蔵合金タンクの水素放出過程終了後と他方の水素吸蔵合金タンクの水素放出過程開始前との間に、対となるタンク相互間で熱交換が行なわれることを特徴とする、水素吸蔵合金タンクシステム。
【請求項2】
前記熱利用系は冷熱利用系であり、前記往管及び還管は、冷却塔との間に配管された冷却水配管と熱交換を行なう他の熱交換器にも接続され、前記水は、前記熱交換器または他の熱交換器との間で切り替え供給可能であることを特徴とする、請求項1に記載の水素吸蔵合金タンクシステム。
【請求項3】
前記熱利用系は温熱利用系であることを特徴とする、請求項1に記載の水素吸蔵合金タンクシステム。
【請求項4】
前記対となる水素吸蔵合金タンク相互間では、個別往管と個別還管、および個別還管と個別往管とが接続されて循環水配管が形成され、前記熱交換は、当該循環水配管を流れる水によって行なわれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の水素吸蔵合金タンクシステム。
【請求項5】
前記水素供給源および水素負荷と、各水素吸蔵合金タンクとの間に各々配管された水素配管、並びに前記循環水配管には夫々制御弁が設けられ、これら制御弁と、前記循環水配管に設けられた循環ポンプによって、水素吸蔵合金タンクにおける水素吸蔵、水素放出および熱交換のタイミングが個別に制御されることを特徴とする、請求項4に記載の水素吸蔵合金タンクシステム。
【請求項6】
前記対となる水素吸蔵合金タンク相互間には、タンク内を一方で加熱、他方で冷却できるヒートパイプが設けられ、前記熱交換は、当該ヒートパイプによって行なわれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の水素吸蔵合金タンクシステム。
【請求項7】
前記水素供給源および水素負荷と、各水素吸蔵合金タンクとの間に各々配管された水素配管、並びに前記ヒートパイプには夫々制御弁が設けられ、これら制御弁によって、水素吸蔵合金タンクにおける水素吸蔵、水素放出および熱交換のタイミングが個別に制御されることを特徴とする、請求項6に記載の水素吸蔵合金タンクシステム。
【請求項8】
前記対となる水素吸蔵合金タンク相互間には、気液の密度差によってタンク間を一方で加熱、他方で冷却できる冷媒の循環路が設けられ、前記熱交換は、当該循環路によって行なわれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の水素吸蔵合金タンクシステム。
【請求項9】
前記水素供給源および水素負荷と、各水素吸蔵合金タンクとの間に各々配管された水素配管、並びに前記循環路には夫々制御弁が設けられ、これら制御弁によって、水素吸蔵合金タンクにおける水素吸蔵、水素放出および熱交換のタイミングが個別に制御されることを特徴とする、請求項8に記載の水素吸蔵合金タンクシステム。
【請求項10】
2対以上の偶数の水素吸蔵合金タンクを有し、一対の水素吸蔵合金タンク相互間で熱交換している間、他の対における一の水素吸蔵合金タンクにおいて水素吸蔵過程または水素放出過程が行なわれることを特徴とする、請求項1〜9に記載の水素吸蔵合金タンクシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−99511(P2011−99511A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254351(P2009−254351)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19〜21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構エネルギー使用合理化技術戦略的開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】