説明

永久レジスト用感光性エレメント、レジストパターンの形成方法、プリント配線板及び半導体素子

【課題】水銀灯を光源とする全波長露光だけでなく波長365や405nmの光を含むレーザに対しても、高い感度及び解像度で良好な開口形状のレジストパターンを形成することが可能であり、ハロゲンフリー化に対応可能なアルカリ現像型感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 感光層が、(A)カルボキシル基を有する樹脂、(B)ハロゲンを有しないヘキサアリールビイミダゾールを含む光重合開始剤、(C)増感色素、(D)アクリル基又はメタクリル基を有する光重合性モノマー、及び(E)熱硬化性樹脂、を含有し、感光層の膜厚方向における吸光度が、365nmで0.3以上1.7以下、405nmで0.5以上1.5以下、450nmで0.05以下である、永久レジスト用感光性エレメント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久レジスト用感光性エレメント、レジストパターンの形成方法、プリント配線板及び半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電気及び電子部品の小型化、軽量化、及び多機能化に伴い、それを構成する半導体素子
や半導体パッケージ、プリント配線基板が高精細化されている。そのため、ソルダーレジストやフォトビア法に用いる感光性樹脂コート層を形成するための感光性樹脂は、更なる高解像度化が求められている。また同時に、スループットを向上して低コスト化を図るために、感光性樹脂の高感度化も望まれている。
【0003】
プリント配線板の分野における感光性永久レジストとしては、液状のソルダーレジストが広く用いられている。ソルダーレジストの光重合開始剤としては、露光時の酸素阻害の影響を抑えるため、表面硬化性の良いものが選定される。
【0004】
一方、欧州連合によって提案されたRoHS指令が2006年から施行される。感光性永久レジストは最終製品中にも含まれるため、このRoHS指令に対応するべく、ハロゲンフリー化が要求されている。日本プリント基板工業会(JPCA)は、ダイオキシンの発生原因と考えられているハロゲン原子を含有しないハロゲンフリー製品の基準を、材料中のハロゲン含有量をトータルで1500ppm以下、塩素、臭素等の各ハロゲン単体で900ppm以下と規定している。
【0005】
ハロゲンフリー化に対応するために、ノンハロゲンでかつ表面硬化性の良い光重合開始剤、例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(I−907)や、2−ベンジル−2−メチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(I−369)が感光性永久レジストに用いられている。しかし、この光重合開始剤は、高感度化のために配合量を増加させるとレジストパターンの形状が悪化する傾向にあり、近年の高解像度化の要求を満たすことが困難になっている。
【0006】
ところで、携帯電話などの電子機器の急激な世代交代に伴い、フォトマスクを用いた従来のレジストパターンの形成方法ではフォトマスクを頻繁に作り替える必要があり、1枚の基板当たりのフォトマスクのコストが増大することが懸念されている。
【0007】
そこで、CAD等で作成した回路パターンをレーザ光により直接描画する、ダイレクトイメージングによる露光方法が注目されている。このダイレクトイメージングは、フォトマスクを必要としないため、少量多品種の生産が効率的に行える点で優れている。さらに、ダイレクトイメージングは、フォトマスクを使わないことから、導体配線パターンと永久レジストの開口部の位置合わせの工程が省略でき、スケーリング補正も容易であるという利点も有する。この位置合わせは、近年の高精細化の進行に伴いより重要となっている。加えて、フォトマスクへの異物の付着、汚れ、傷の管理の必要がなくなる等、多くの利点がある。
【0008】
ダイレクトイメージングの光源としては、例えば、364nmの光を発振するUVアルゴンガスレーザや、355nmの光を発振する固体UVレーザが用いられている。また、近年、波長405nmの光を発振する、長寿命で高出力な窒化ガリウム系青色レーザ光源が入手可能になり、これもレジストパターン形成のための露光光源として使用されるようになってきた。Texas Instruments社によりDLP(Digital Light Processing)システムが提唱され、さらにこの方式を応用したダイレクトイメージングがBall Semiconductorから提案されており、露光装置メーカ各社で製品化が始まっている。
【0009】
しかしながら、従来の感光性樹脂組成物は、波長365nmの光を中心とした水銀灯光源の全波長露光に適合するように設計されており、水銀灯光源の波長365nm以下の光を99.5%以上カットした活性光線や、半導体レーザの波長405nmの光(以下青紫色レーザ)による露光に対しては、十分な感度及び解像度を発現しないという問題がある。
【0010】
そこで、ダイレクトイメージングに対応した試みとして、従来型の光重合開始剤に増感剤を組み合わせる方法や、405nmに大きな吸収波長を有するチタノセン化合物を光重合開始剤として用いる方法(特許文献1)が提案されている。
【0011】
また、感光性樹脂組成物を用いたソルダーレジストの分野においては、複数の異なる方式の露光機に対して同様の開口形状が形成可能な、いわゆるマルチパーパスタイプのソルダーレジストが望まれている。通常、1種類の半導体パッケージに対して複数の基板メーカがインターポーザー基板を供給するが、1種類の半導体パッケージに対して通常1種類のソルダーレジストが認定されてこれが使用される。そのため、基板メーカが適用する露光法は、認定されたソルダーレジストに適合するものに限定される。例えば、ある半導体パッケージに通常露光用のソルダーレジストが認定された場合、複数の基板メーカは露光法として通常露光を選択しなければならない。通常露光だけでなく、平行光露光機やステップ・アンド・リピート方式の露光機でも同様の開口形状を与えるマルチパーパスタイプのソルダーレジストがあれば、これを用いることにより各基板メーカは自社のプロセスに適合した露光法を選択することが可能となる。
【特許文献1】特開平3−223759号公報
【特許文献2】特許第2931693号公報
【特許文献3】特許第2757528号公報
【特許文献4】特許第2972373号公報
【特許文献5】特許第3215718号公報
【特許文献6】特許第3312756号公報
【特許文献7】米国特許3390996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
永久レジストは、感光層を備える感光性エレメントを用いて形成することができる。しかしながら、従来、ハロゲンフリー化に対応した感光性エレメントであって、水銀灯を光源とする全波長露光ばかりでなく波長365又は405nmの光を含むレーザに対しても十分な感度及び解像度と良好なレジストパターンの開口形状が得られるものは知られていなかった。そのため、いわゆるマルチパーパスタイプの永久レジスト用感光性エレメントは上市されていなかった。
【0013】
そこで、本発明は、水銀灯を光源とする全波長露光だけでなく波長365や405nmの光を含むレーザに対しても、高い感度及び解像度で良好な開口形状のレジストパターンを形成することが可能であり、ハロゲンフリー化に対応可能な永久レジスト用感光性エレメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決するべく、ハロゲンを有しないヘキサアリールビイミダゾール等の特定の成分を配合した上で、感光層の吸光度に着目して鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。
【0015】
すなわち、本発明は、感光層を備える感光性エレメントであって、当該感光層が、(A)カルボキシル基を有する樹脂、(B)ハロゲンを有しないヘキサアリールビイミダゾールを含む光重合開始剤、(C)増感色素、(D)アクリル基又はメタクリル基を有する光重合性モノマー、及び(E)熱硬化性樹脂、を含有し、当該感光層の膜厚方向における吸光度が、365nmで0.3以上1.7以下、405nmで0.5以上1.5以下、450nmで0.05以下である、永久レジスト用感光性エレメントである。
【0016】
上記本発明に係る感光性エレメントは、上記(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の各成分を感光層の吸光度が上記特定範囲となるように配合して構成されている。これにより、この感光性エレメントは、水銀灯を光源とする全波長露光だけでなく波長365や405nmの光を含むレーザに対しても、高い感度及び解像度で良好な開口形状のレジストパターンを形成することが可能で、ハロゲンフリー化に対応可能なものであり、永久レジストを形成するために適した構成を有する。
【0017】
上記ヘキサアリールビイミダゾールは、下記一般式(I)又は(II)で表される化合物であることが好ましい。式(I)及び(II)中、R、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、フェニル基又は水素原子を示す。
【0018】
【化1】

【0019】
(C)成分は、ピラゾリン、ジアルコキシアントラセン、クマリン、キサントン及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
【0020】
(A)成分は、感光性の不飽和二重結合を2個以上有することが好ましい。
【0021】
(E)成分は、ブロックイソシアネート、ポリエポキシ化合物、ビスマレイミド及びオキセタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
【0022】
上記感光層は、(F)無機フィラー及び有機フィラーのうち少なくとも一方を更に含有することが好ましい。
【0023】
本発明に係る感光性エレメントは支持体を備え、該支持体上に当該感光層が設けられていてもよい。
【0024】
本発明に係るレジストパターンの形成方法は、上記いずれかの感光性エレメントが備える感光層を絶縁基板上に設けられた導体層を覆うように積層し、積層された感光層を波長405nmの光を含むレーザを用いたダイレクトイメージングにより露光する工程と、露光された感光層から、アルカリ現像液を用いた現像によりレジストパターンを形成させる工程と、を備える。
【0025】
この方法によれば、レーザ光を用いたダイレクトイメージングであっても高い感度及び解像度で良好な開口形状のレジストパターンを形成することが可能である。
【0026】
本発明に係るプリント配線板は、絶縁基板と、該絶縁基板上に設けられた回路パターンを有する導体層と、該導体層を覆うように形成された、該導体層の一部が露出するような開口部が形成されている永久レジスト層と、を備え、永久レジスト層が、上記いずれかの感光性エレメントが備える感光層の硬化物からなる。
【0027】
また、本発明に係る半導体素子は、絶縁基板と、該絶縁基板上に設けられた回路パターンを有する導体層と、該導体層を覆うように形成された、該導体層の一部が露出するような開口部が形成されている永久レジスト層と、を備え、永久レジスト層が、上記いずれかの感光性エレメントが備える感光層の硬化物からなる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、水銀灯を光源とする全波長露光だけでなく波長365や405nmの光を含むレーザに対しても、高い感度及び解像度で良好な開口形状のレジストパターンを形成することが可能であり、ハロゲンフリー化に対応可能な永久レジスト用感光性エレメントが提供される。ダイレクトイメージングによって露光を行う場合のスループットはレーザの走査速度に依存するため、従来に比べてレーザに対する高い感度を有する感光層を備える本発明の感光性樹脂組成物を用いることで、より大きなスループットが得られる。
【0029】
本発明の感光性エレメントは、イエローランプ下での安定性にも優れ、形成されるレジストパターンの密着性も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0031】
図1は、本発明に係る感光性エレメントの一実施形態を示す模式断面図である。図1に示す感光性エレメント1は、支持体11と、支持体11上に設けられた感光層12と、感光層12上に積層された保護フィルム13と、を備える。感光性エレメント1は、プリント配線板や半導体素子等の永久レジストを形成するために好適に用いられる。
【0032】
支持体11は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の重合体から形成されたシートである。保護フィルム13は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体フィルムから形成されたフィルムである。
【0033】
感光層12の厚みは、用途により異なるが、乾燥後の厚みで1〜100μm程度であることが望ましい。
【0034】
感光層12は、(A)カルボキシル基を有する樹脂、(B)ハロゲンを有しないヘキサアリールビイミダゾール、(C)増感色素、(D)アクリル基又はメタクリル基を有する光重合性モノマー、及び(E)熱硬化性樹脂を含有する。すなわち、感光層12は、液状のソルダーレジスト等に用いられていた従来の光重合開始剤(例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(I−907)や2−ベンジル−2−メチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(I−369))に代えて、ノンハロゲンのビスイミダゾール二量体を増感色素と組合わせて用いたものである。
【0035】
感光層12の膜厚方向における吸光度は、365nmで0.3以上1.7以下、405nmで0.5以上1.5以下、450nmで0.05以下である。各波長における吸光度がこれら特定範囲未満であると、形成されるレジストパターンの開口部の底部に残渣が残りやすく、これら特定範囲を超えるとアンダーカットになりやすい。また、450nmでの吸光度が0.05を超えるとイエロー光下での安定性が低下する。同様の観点から、この吸光度は、365nmで0.3以上1.5以下、405nmで0.5以上1.2以下、450nmで0.04以下であることが好ましく、365nmで0.3以上1.2以下、405nmで0.5以上1.1以下、450nmで0.03以下であることがさらに好ましい。
【0036】
感光層12の吸光度は、UV分光計を用いて測定することができる。この場合、例えば、UV分光計の測定側に保護フィルム13を除去した感光性エレメントを、レファレンス側に支持フィルムを配置した状態で吸光度モードにより700〜300nmの範囲を連続測定し、得られた吸収スペクトルから365nm、405nm、450nmにおける吸光度の値を読み取ることにより、吸光度が求められる。
【0037】
当業者には明らかなように、(B)成分のヘキサアリールビイミダゾールや、(C)成分の増感色素の種類及び配合量を適宜調整することにより、吸光度が上記特定範囲内となるように制御することができる。
【0038】
(A)成分のカルボキシル基を有する樹脂は、カルボキシル基を有するポリマー、プレポリマー等からなる。(A)成分の重量平均分子量Mwは、5000〜100000であることが好ましい。(A)成分の具体例としては、アクリルポリマ、フェノキシポリマが挙げられる。
【0039】
アクリルポリマは、アクリル基又はメタクリル基を有する単量体に由来する単量体単位から主として構成されるポリマーである。カルボキシル基を有するアクリルポリマは、例えば、カルボキシル基を有する重合性単量体と、カルボキシル基を有しない重合性単量体との共重合により得られる。カルボキシル基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、ケイヒ酸、クロトン酸、イタコン酸が挙げられる。カルボキシル基を有しない単量体としては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ビニルトルエン、N−ビニルピロリドン、α−メチルスチレン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートが挙げられる。重合は、有機溶剤中でアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、過酸化ベンゾイル等の重合開始剤を用いて一般的な溶液重合により行うことができる。
【0040】
(A)成分は、カルボキシル基及び感光性官能基を有する感光性プレポリマを含んでいてもよい。この感光性プレポリマは感光性の不飽和二重結合2個以上有することが好ましい。感光性プレポリマとしては、エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸のエステル化物に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を付加した付加反応物等が好適に用いられる。この場合のエポキシ化合物としては例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型とエピクロルヒドリンを反応させて得られるビスフェノール型エポキシ化合物が適しており、日本化薬社製ZAR−1035、ZFR−1185、チバ・ガイギ社製GY−260,255、XB−2615等のビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノールA型、アミノ基含有、脂環式あるいはポリブタジエン変性等のエポキシ化合物が好適に用いられる。また、フェノール、クレゾール、ハロゲン化フェノール及びアルキルフェノール類とホルムアルデヒドとを酸性触媒下で反応して得られるノボラック類とエピクロルヒドリンを反応させて得られるノボラック型エポキシ化合物も適しいる。ノボラック型エポキシ樹脂としては、日本化薬社製PCR−1050、東都化成社製YDCN−701,704、YDPN−638,602、ダウケミカル社製DEN−431,439、チバ・ガイギ社製EPN−1299、大日本インキ化学工業社製N−730、770、865、665、673、VH−4150,4240、日本化薬社製EOCN−120、BRENが挙げられる。また、ビスフェノール型、ノボラック型エポキシ化合物以外にも、例えばサリチルアルデヒド−フェノールあるいはクレゾール型エポキシ化合物(日本化薬社製EPPN502H、FAE2500等)が好適に用いられる。また、例えば油化シェル社製エピコート828、1007、807、大日本インキ化学工業社製エピクロン840、860、3050、ダウ・ケミカル社製DER−330、337、361、ダイセル化学工業社製セロキサイド2021、三菱ガス化学社製TETRAD−X,C、日本曹達社製EPB−13、27、あるいは特開平8−260008号公報に記してあるポリアミド、ポリアミドイミド系エポキシ化合物も使用できる。これらの混合物あるいはブロック共重合物も使用できる。
【0041】
エポキシ化合物と反応させるための上記不飽和モノカルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸や、飽和若しくは不飽和多塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート又は飽和若しくは不飽和二塩基酸と不飽和モノグリシジル化合物との半エステル化合物との反応物が挙げられる。この反応物としては、例えばフタル酸、テトラヒドロフタル酸、へキサヒドロフタル酸、マレイン酸、コハク酸とヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートを常法により等モル比で反応させて得られる反応物が挙げられる。これらの不飽和モノカルボン酸は単独又は混合して用いることができる。これらの中でも、アクリル酸が好ましい。
【0042】
エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸のエステル化物に付加させる飽和又は不飽和多塩基酸無水物としては、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、コハク酸、トリメリット酸等の無水物が用いられる。
【0043】
(B)成分は、ハロゲンを有しないヘキサアリールビイミダゾールを含む光重合開始剤である。ヘキサアリールビイミダゾールは、例えば、上記一般式(I)又は(II)で表される。ヘキサアリールビイミダゾールとしては、これら式で表される化合物の1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0044】
式(I)又は(II)で表されるビイミダゾールの好適な具体例としては、2,2−ビス(2−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビイミダゾール、2,2−ビス(2−メトキシフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビイミダゾール、2,2−ビス(2−エトキシフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビイミダゾール、2,2−ビス(2−メチルエステルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビイミダゾール、2,2−ビス(2−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビイミダゾール、2−(1−ナフチル)4,5−ジフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2−ビス(2,3,4−トリメトキシフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビイミダゾール、2,4,5−トリフェニル−ビスイミダゾール二量体が挙げられる。ただし(B)成分はこれらに限られるものではない。
【0045】
(B)成分は、ヘキサアリールビイミダゾール以外の光重合開始剤を更に含んでいてもよい。この場合の他の光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ケタール系、アシルホスフィンオキサイド、パーオキサイド系、チタノセン系などのラジカル光重合開始剤が挙げられる。より具体的には、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−モルホリノフェノン)−ブタノン−1,2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−メチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1などが挙げられる。
【0046】
(C)成分の増感色素としては、ピラゾリン、ジアルコキシアントラセン、クマリン及びキサントン及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。特にこれらのうち吸収極大波長が370〜400nmの間にあるものを主成分とすることが好ましい。
【0047】
特に、増感色素としては、ビラゾリン誘導体が特に好ましい。ピラゾリン誘導体の具体例としては、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1,5−ビス−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−ピラゾリン、1−(4−tert−オクチル−フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−オクチル−スチリル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリン、1,5−ビス−(4−tert−オクチル−フェニル)−3−(4−tert−オクチル−スチリル)−ピラゾリン、1−(4−ドデシル−フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ドデシル−スチリル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−ドデシル−フェニル)−3−(4−ドデシル−スチリル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−オクチル−フェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(4−tert−オクチル−スチリル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−ドデシル−フェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(4−ドデシル−スチリル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−ドデシル−フェニル)−3−(4−tert−オクチル−スチリル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−tert−オクチル−フェニル)−3−(4−ドデシル−スチリル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−(2,4−ジブチル−フェニル)−3−(4−ドデシル−スチリル)−5−(4−ドデシル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−スチリル)−5−(3,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,6−ジ−tert−ブチル−スチリル)−5−(2,6−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,5−ジ−tert−ブチル−スチリル)−5−(2,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,6−ジ−n−ブチル−スチリル)−5−(2,6−ジ−n−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(3,4−ジ−tert−ブチル−フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−(3,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−スチリル)−5−(3,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(3,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−スチリル)−5−(3,5−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリンなどが挙げられる。これらの化合物は、例えば日本化学工業所製のものが入手可能である。これらの化合物は、例えば、特許第2931693号公報、特許第2757528号公報、特許第2972373号公報、特許第3215718号公報、特許第3312756号公報に記載されている。
【0048】
上記以外の増感色素としては例えば、オキサゾール類、ベンゾオキサゾール類、チアゾール類、トリアゾール類、スチルベン類、トリアジン類、チオフェン類が挙げられる。
【0049】
以上のような増感色素は、それぞれ単独で又は二種類以上を組み合わせて使用される。
【0050】
(C)成分の配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して0.01〜10質量部とすることが好ましく、0.05〜5質量部とすることがより好ましく、0.1〜2重量部とするのが特に好ましい。この配合量が0.01質量部未満では感度や解像性が低下する傾向があり、10質量部を超えると良好な形状を得られ難くなる傾向がある。
【0051】
(D)成分はアクリル基又はメタクリル基を有する光重合性モノマーであって、カルボキシル基を有しないものである。(D)成分の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのモノあるいは多官能(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエチレングリコールあるいはプロピレングリコール付加物のモノ又は多官能(メタ)アルリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のモノあるいは多官能(メタ)アクリレート、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独あるいは混合系で使用される。光重合性モノマーの種類は、要求される特性によって種々変えることができる。
【0052】
(E)成分は、加熱により架橋構造を形成する熱硬化性樹脂である。この熱硬化性樹脂は、140℃〜200℃で反応して架橋することが好ましい。熱硬化性樹脂としては、ブロックイソシアネート基を有するブロックイソシアネート、複数のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物、ビスマレイミド、オキセタン、ベンゾオキサジン、メラミン樹脂等がある。(E)成分は特に、ブロックイソシアネート、ポリエポキシ化合物、ビスマレイミド及びオキセタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
【0053】
ブロックイソシアネートは、常温では不活性であるが加熱されたときにブロック剤が可逆的に解離してイソシアネート基を再生する化合物である。ブロックイソシアネートの市販品としては、スミジュールBL−3175、デスモジュールTPLS−2957、TPLS−2062、TPLS−2957、TPLS−2078、BL4165、TPLS2117、BL1100,BL1265、デスモサーム2170、デスモサーム2265(住友バイエルウレタン株式会社製商品名)、コロネート2512、コロネート2513、コロネート2520(日本ポリウレタン工業株式会社製商品名)が挙げられる。
【0054】
ポリエポキシ化合物としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、ビスフェノールS型、フェノールノボラック、クレボールノボラック等のエポキシ化合物がある。これらは、例えば、ジャパンエポキシレジン社製の、エピコート828、エピコート834、エピコート1004、エピコート152、YL−931、YX−4000、YX−8000、東都化成社製のエポトートYD−011、YD−012、YD−0127、ZX−1063として商業的に入手可能である。
【0055】
ビスマレイミドは、分子中にマレイミド基を少なくとも2個以上有する化合物である。ビスマレイミドの具体例としては、例えば、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−トルイレンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4’−(3,3’−ジメチル−ビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4’−(3,3’−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4’−(3,3’−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−3,3’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、1,1−ビス(2−メチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)−5−t−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−マレイミドフェノキシ)−2−(1,1−ジメチルエチル)ベンゼン)、4,4’−メチレン−ビス(1−(4−マレイミドフェノキシ)−2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)ベンゼン)、4,4’−メチレン−ビス(1−(4−マレイミドフェノキシ)−2,6−ジ−s−ブチルベンゼン)、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−マレイミドフェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、4,4’−メチレンビス(1−(マレイミドフェノキシ)−2−ノニルベンゼン)、4,4’−(1−メチルエチリデン)−ビス(1−(マレイミドフェノキシ)−2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)ベンゼン)、4,4’−(2−エチルヘキシリデン)−ビス(1−(マレイミドフェノキシ)−ベンゼン)、4,4’−(1−メチルヘプチリデン)−ビス(1−(マレイミドフェノキシ)−ベンゼン)、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(マレイミドフェノキシ)−3−メチルベンゼン)、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3−メチル−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)メタン、ビス(3−エチル−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)メタン、3,8−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)−トリシクロ−(5,2,1,02.6)デカン、4,8−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)−トリシクロ−(5,2,1,02.6)デカン、3,9−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)−トリシクロ−(5,2,1,02.6)デカン、4,9−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)−トリシクロ−(5,2,1,02.6)デカン、1,8ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)メンタン、1,8ビス(3−メチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)メンタン、1,8−ビス(3,5−ジメチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)メンタンが挙げられる。これらは単独、あるいは併用して使用することができる。
【0056】
(A)成分の配合量は、感光層12全体量に対して10〜70質量%であることが好ましく、30〜50質量%であることがより好ましい。(A)成分の配合量が10質量%未満であると感光層12の流動性が高くなって、乾燥後のタックが強くなる傾向にあり、70質量%を超えると流動性が低くなって、導体回路の被覆性や密着性が低下する傾向にある。また、感光層12のタックが低くなりすぎ、割れが発生し易くなる傾向になる。
【0057】
(B)成分の配合量は、感光層12全体量に対して1〜10重量%であることが好ましく、2〜5質量%であることがより好ましい。(B)成分の配合量が1質量%未満と感度が低下したり良好なレジスト形状が得られ難くなる傾向にあり、10質量%を超えると在留量が多くなりはんだ耐熱性等の硬化物の諸特性を下げる傾向にある。
【0058】
(D)成分の配合量は、感光層12全体量に対して1〜60質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。(D)成分の配合量が1質量%未満であると組成物中の光重合性ビニル基濃度が低くなって感度が低下したり耐現像液性や硬化膜の強度が低下する傾向にあり、60質量%を超えると硬化物が脆くなる傾向にある。また、感光性樹脂組成物を乾燥させた後のタックが強くなる傾向にある。
【0059】
(E)成分の配合量は、感光層12全体量に対して1〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。(E)成分が1質量%未満であると硬化物が脆くなり、密着性が低下し、絶縁特性、強度が得られなくなる傾向にある。40質量%を超えると架橋密度が高くなりすぎ、耐クラック性が低下する傾向にある。
【0060】
より高い感度を得るために、感光層12は、必要に応じて水素供与体を更に含有していてもよい。水素供与体は、光によって励起された開始剤、及び開始剤から発生したラジカルに水素を供与できる化合物である。このような材料については米国特許3,390,996号明細書で論じられている。水素供与体としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等の脂肪族アミン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソブチル、4,4−ジメチルアミノベンゾフェノン等の芳香族アミンや、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール等のチオール化合物が挙られる。また、水素供与体としてロイコ染料を用いることもできる。このロイコ染料成分の配合量を適正化することにより、レジスト層全体の硬化度を向上させることができる。感度、イエローランプ下での安定性を考慮すると、アリールグリシン系の化合物、メルカプト化合物が好ましい。より好ましくは、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体が用いられる。
【0061】
水素供与体の配合量は、(B)成分の総量に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましく、2〜4質量部であることが特に好ましい。
【0062】
感光層12は、密着性、硬度等の特性を向上する目的で、必要に応じて(G)無機フィラー及び有機フィラーのうち少なくとも一方を含有していてもよい。無機フィラーとしては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、粉状酸化珪素、無定形シリカ、タルク、クレー、焼成カオリン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母粉等の無機充填剤が使用できる。有機フィラーとしては、例えば、ジアリルフタレート、ジアリルフタレートプレポリマ、アクリルゴム、ニトリルゴム(NBR)、シリコーン粉末、ナイロン粉末、エアロジル、オーベン、ベントン、モンモリロナイト等がある。
【0063】
無機フィラー又は有機フィラーの配合量は、感光層12全体量に対して、好ましくは0〜70質量%である。
【0064】
感光層12は、特に銅等の金属との密着が必要とされる場合、密着性向上剤としてメラミン、トリアジン化合物及びその誘導体を含有することが望ましい。例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン−フェノール−ホルマリン樹脂、四国化成工業社製;2MZ−AZINE,2E4MZ−AZINE,C11Z−AZINE、2MA−OK等が密着性向上剤として用いられる。あるいはエチルジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−キシリル−S−トリアジン等のトリアジン誘導体類が挙げられる。これらの化合物は銅回路との密着性を上げて耐PCT性を向上させ、電食性にも効果がある。
【0065】
密着性向上剤の配合量は、感光層12全体量に対して、0.1%〜10質量%であることが好ましい。
【0066】
感光層12は、必要に応じてフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオジングリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの着色剤を含有していてもよい。更にハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤、ベントン、モンモリロナイト、エアロジル、アミドワックス等のチキソ性付与剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤、レベリング剤、及びイミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤のような添加剤類を用いることができる。
【0067】
感光性エレメント1は、例えば、感光層12を構成する上述の各成分を含有する感光性樹脂組成物を支持体11上に均一な厚さに塗布して感光層12を形成させ、感光層12上に保護フィルム13を積層することによって得られる。
【0068】
感光性樹脂組成物は、必要に応じて、溶剤に溶解して粘度を調整した溶液の状態で支持体11に塗布される。例えば、固形分30〜70質量%程度の感光性樹脂組成物の溶液を支持体に塗布して感光性エレメント1を得ることができる。この場合、塗布された溶液から加熱等により大部分の溶剤が除去される。
【0069】
上記溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール類、ベンジルアルコール、シクロヘキサン等の炭化水素類、ジアセトンアルコール、3−メトキシ−1−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルペンチルケトン、メチルヘキシルケトン、エチルブチルケトン、ジブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、3−ヒドロキシ−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、6−ヒドロキシ−2−ヘキサノン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテル類及びそのアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類及びそのアセテートジエチレングリコールジアルキルエーテル類、トリエチレングリコールアルキルエーテル類、プロピレングリコールアルキルエーテル類及びそのアセテート、ジプロピレングリコールアルキルエーテル類、トルエン、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル等のカルボン酸エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、乳酸メチル、乳酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、炭酸プロピレンなどの溶剤又はこれらの混合溶剤が挙げられる。
【0070】
図2は、本発明に係るレジストパターンの形成方法の一実施形態を示す工程図である。本実施形態は、絶縁基板22上に設けられた導体層23を覆うように形成された感光層12を、波長405nmの光を含むレーザ5を用いたダイレクトイメージングにより露光する工程(図2の(c))と、露光された感光層12から、アルカリ現像液を用いた現像によりレジストパターン24を形成させる工程(図2の(d))と、を備える。本実施形態によれば、絶縁基板22と、絶縁基板22上に設けられた回路パターンを有する導体層23と、導体層23を覆うように形成された、導体層23の一部が露出するような開口部が形成されている永久レジスト層24と、を備えるプリント配線板2が得られる。すなわち、本実施形態の場合、レジストパターンがプリント配線板の永久レジスト層として形成される。
【0071】
図2の(a)に示される配線板3は、絶縁基板22と、絶縁基板22の一方面に設けられた回路パターンを有する導体層23と、絶縁基板22の他方面に設けられた回路パターンを有しない導体層21とを備える。配線板3は、両面金属積層板(例えば、両面銅張積層板)の片面をエッチングする公知の方法等により、得られる。
【0072】
図2の(b)に示されるように、配線板3の導体層23側の面上に感光層12が形成される。感光層12は、例えば、感光性エレメント1の保護フィルム13を剥離して感光層12が配線板3に密着するように圧着させ、支持体11を剥離することにより、配線板3上に積層される。
【0073】
次いで、図2の(c)に示すように、積層された感光層12が、波長405nmの光を含むレーザ5を用いたダイレクトイメージングにより露光される。このとき、レーザ5を移動させつつ照射することにより、感光層12が画像状に露光され、露光された部分の硬化が進行する。
【0074】
最後に、アルカリ現像液を用いた現像により未露光部を除去して、図2の(d)に示すように開口部26が形成された永久レジスト層24を形成させる。アルカリ現像液としては、レジストパターンの形成において通常用いられるアルカリ水溶液等が用いられる。現像は、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により行うことができる。現像の後、レジストパターンに対して更に露光してもよいし、加熱(後加熱工程)による後硬化を更に行ってもよい。
【0075】
プリント配線板2においては、永久レジスト層24に導体層23が露出する開口部26が形成されている。これにより、CSPやBGA等の実装部品を、回路パターンを有する導体層23にはんだ等により接合することができ、いわゆる表面実装が可能となる。永久レジスト層24は、接合のためのはんだ付けの際に、導体層の不必要な部分にはんだが付着することを防ぐためのソルダーレジストとしての役割を有しており、また、実装部品接合後においては、導体層23を保護するための永久マスクとして機能する。
【0076】
上記実施形態に係るレジストパターンの形成方法は、永久レジスト層を備える半導体素子の製造方法としても好適に適用される。本発明の感光性樹脂組成物等を用いて形成される半導体素子は、機械的特性に十分優れるものであり、さらには耐熱衝撃性や耐電食性に優れる。
【0077】
本発明に係る感光性エレメントは、リジッド及びフレキシブルプリント配線板、並びにBGA、CSP、TCP等のパッケージ用のソルダーレジストあるいは多層材のビルドアップ材として特に有用であるが、その他にも塗料、ガラス、セラミック、プラスチック、紙等のコーティング材にも使用できる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下、「部」及び「%」は、いずれも質量基準による。
【0079】
感光性樹脂組成物の調製
(A)、(B)、(D)、(E)成分と水素供与体を表1に示す材料及び配合量となるように配合し、(C)成分を表2に示す材料及び表3に示す配合量となるように配合して、実施例及び比較例の感光性樹脂組成物の溶液を調製した。表1において、カルボン酸含有ポリマーは、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル及びスチレンの共重合体(重量平均分子量70000、酸価150mgKOH/g)であり、カルボン酸含有感光性ポリマーはテトラヒドロキシ無水フタル酸変性エポキシアクリレート(日本化薬(株)製ZER−1158)である。表1及び表2に示される配合量の数値は全て質量部である。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
感光性エレメントの作製
上記で調製した感光性樹脂組成物の溶液を16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上に均一に塗布し、95℃の熱風対流式乾燥機を用いて10分間加熱することにより溶剤を除去して、感光層を形成させた。感光層にに膜厚25μmのポリエチレンフィルムを保護フィルムとして貼り合わせて、感光性エレメントを得た。感光層の膜厚は30μmであった。
【0084】
感光層の吸光度の測定
感光性エレメントから保護フィルムを剥がし、これを(株)日立製作所製228A型WビームUV分光光度計の測定側に置き、レファレンス側に支持フィルムを置いた。そして、吸光度モードにより700〜300nmの範囲を連続測定して吸収スペクトルを得た。得られた吸収スペクトルから365nm、405nm、450nmにおける吸光度の値を読み取った。
【0085】
感度、解像度及びレジストパターンの開口形状
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、両面に銅箔を有する日立化成工業株式会社製商品名MCL−E−679FG(商品名))の銅表面を、#600相当のブラシを持つ研磨機(三啓株式会社製)を用いて研磨し、水洗後、空気流で乾燥した。続いて、感光性エレメントを、ポリエチレンフィルムを剥してからプレス式真空ラミネータ(名機製作所製、商品名MVLP−500)を用いて、上板温度50℃、下板温度50℃、真空度5hPa以下、プレス時間30秒で銅張積層板の銅表面上に熱圧着した。
【0086】
そして、5kWショートアークランプを光源とする平行光露光機(オーク製作所製、製品名EXM−1201)を用い、DI(ダイレクトイメージング)方式を想定して波長365nm又は405nmでの露光を行った。365nmでの露光はバンドパスフィルタを、405nmでの露光はシグマ光機社製シャープカットフィルターSCF−100S−39Lをそれぞれ用いて行った。また、超高圧水銀灯を用いた全波長露光も行った。
【0087】
露光後、室温で10分間放置してから、ポリエチレンテレフタレートを除去し、30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間スプレー現像して、未露光部の感光層を除去した。スプレー現像後、株式会社オーク製作所製紫外線照射装置を使用して1J/cmの紫外線照射を行い、さらに160℃/60分間加熱処理を行い、永久マスクレジストパターン(永久レジスト層)が形成された配線基板を得た。
【0088】
日立化成工業株式会社製の41段ステップタブレットにて20/21段でレジストパターンを形成可能となるために必要とされる露光量を感度として求めた。また、この露光量で形成されたレジストパターンを光学顕微鏡により観察し、ライン・アンド・スペースとして残ったライン幅(μm)を解像度として求めた。観察の際、レジストパターンの開口形状も確認した。
【0089】
イエロー光安定性
実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた感光性エレメントを黄色蛍光灯(日立製作所製、黄色蛍光灯、FLRラピッド,光波長:500nm以上,40W)下1.5mの距離にて72時間放置したのち、前記の方法で感度を算出し、得られたST段数が放置前と比べて±2段以内の場合に安定であると評価した。
【0090】
表4に実施例1〜4、比較例1〜4の評価結果をまとめて示す。
【0091】
【表4】

【0092】
表4に示されるように、実施例1〜4は、波長が365、405nm付近のダイレクトイメージングおよび超高圧水銀灯の全波長露光のいずれにおいても、高い感度及び解像度を発現するとともに、良好な開口形状を与えた。更に、実施例の感光性樹脂組成物はイエローランプ下での安定性にも優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に係る感光性エレメントの一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係るレジストパターンの形成方法の一実施形態を示す工程図である。
【符号の説明】
【0094】
1…感光性エレメント、2…プリント配線板、3…配線板、11…支持体、12…感光層、13…保護フィルム、21…導体層、23…導体層、24…レジストパターン(永久レジスト層)、26…開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光層を備える感光性エレメントであって、
当該感光層が、
(A)カルボキシル基を有する樹脂、
(B)ハロゲンを有しないヘキサアリールビイミダゾールを含む光重合開始剤、
(C)増感色素、
(D)アクリル基又はメタクリル基を有する光重合性モノマー、及び
(E)熱硬化性樹脂、を含有し、
当該感光層の膜厚方向における吸光度が、365nmで0.3以上1.7以下、405nmで0.5以上1.5以下、450nmで0.05以下である、永久レジスト用感光性エレメント。
【請求項2】
前記ヘキサアリールビイミダゾールが、下記一般式(I)又は(II)で表される化合物である、請求項1記載の感光性エレメント。
【化1】


[式(I)及び(II)中、R、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ジアルキルアミノ基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、フェニル基又は水素原子を示す。]
【請求項3】
前記(C)成分が、ピラゾリン、ジアルコキシアントラセン、クマリン、キサントン及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項1又は2記載の感光性エレメント。
【請求項4】
前記(A)成分が、感光性の不飽和二重結合を2個以上有する、請求項1〜3いずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項5】
前記(E)成分が、ブロックイソシアネート、ポリエポキシ化合物、ビスマレイミド及びオキセタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項6】
当該感光層が、(F)無機フィラー及び有機フィラーのうち少なくとも一方を更に含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項7】
支持体を備え、該支持体上に当該感光層が設けられている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性エレメントが備える感光層を絶縁基板上に設けられた導体層を覆うように積層し、積層された前記感光層を波長405nmの光を含むレーザを用いたダイレクトイメージングにより露光する工程と、
露光された前記感光層から、アルカリ現像液を用いた現像によりレジストパターンを形成させる工程と、
を備えるレジストパターンの形成方法。
【請求項9】
絶縁基板と、
該絶縁基板上に設けられた回路パターンを有する導体層と、
該導体層を覆うように形成された、該導体層の一部が露出するような開口部が形成されている永久レジスト層と、を備え、
前記永久レジスト層が、請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性エレメントが備える感光層の硬化物からなる、プリント配線板。
【請求項10】
絶縁基板と、
該絶縁基板上に設けられた回路パターンを有する導体層と、
該導体層を覆うように形成された、該導体層の一部が露出するような開口部が形成されている永久レジスト層と、を備え、
前記永久レジスト層が、請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性エレメントが備える感光層の硬化物からなる、半導体素子。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−164126(P2007−164126A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136624(P2006−136624)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】