説明

汚泥等含水物の高速乾燥用パドルドライヤー

【課題】大きなエネルギーを要する加熱は焼却炉の廃熱を利用して省エネルギー的に調達し、産業として高速大量処理しても、詰まり・焼付き・火災等のトラブルを予防し、耐久性がなければない。また、その構造は汚泥等含水物の種類や高速大量処理の諸条件に柔軟に対応できるようにすると共に、低コストで実現せねばならない。
【解決手段】鉄枠基台20の上部に、上板30と内板31と外板32と側板33とで乾燥室36とその外周を覆ってU字断面空間38を形成し、前記乾燥室36の内部を水平に貫く主軸40には複数のパドル41を設けて回転させると共に乾燥内部ファン15で撹拌し、前記U字断面空間38には熱風を通すことで主要な解決ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は汚泥等含水物を焼却炉の廃熱を利用して、省エネルギー的に高速乾燥させ肥料等有用な材に加工するパドルドライヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥等含水物とは、家庭排出生ゴミ、し尿処理場の沈殿物、産業排出沈殿物、畜産排出糞類等、一般的に水分を50%以上含んでおり貯蔵や運搬が困難であるが、乾燥させて軽量化し、もしくは粒状化・粉体化すれば肥料や建材になるものを指している。
【0003】
パドルドライヤーについては、筒状の容器の中に汚泥等含水物を入れて、熱を加えて回転乾燥する方式が知られているが熱効率が上がらなかった。
【0004】
加熱は重油を焚くものが多く、制御が簡単な電気ヒーターを用いたものもあった。しかし、大きなエネルギーを要する加熱は何れもCO2排出を余儀なくされ、高速大量処理には適さなかった。
(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0005】
【特許文献1】 特開2004−330159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、大きなエネルギーを要する加熱は焼却炉の廃熱を利用して省エネルギー的に調達し、産業として高速大量処理しても、詰まり・焼付き・火災等のトラブルを予防し、耐久性がなければない。
【0007】
また、その構造は汚泥等含水物の種類や高速大量処理の諸条件に柔軟に対応できるようにすると共に、低コストで実現せねばならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題にたいして、鉄枠基台20の上部に、上板30と内板31と外板32と側板33とで乾燥室36とその外周を覆ってU字断面空間38を形成し、前記乾燥室36の内部を水平に貫く主軸40には複数のパドル41を設けて回転させると共に乾燥内部ファン15で撹拌し、前記U字断面空間38には熱風を通すことで主要な解決ができる。
【0009】
さらにまた、乾燥室36は上板30の中央の一端に供給口11を、内板31の中央の他の一端に外板32を貫く排出口14を設けること、U字断面空間38は上板30の供給口11脇に風入口12を、その上板30の長方形の対角部に風出口13を設けること、熱風の供給源は焼却炉60であり、上板30の供給口11に連結する構造とすること、パドル41はアーム42とスクレーパー43とからなり、スクレーパー43は扇形であり、アーム42は梯子形で中央部は主軸40に溶接されていること、スクレーパー43はボルト44が溶接されており、ボルト44はアーム42の梯子端のねじ孔に嵌っていて、スクレーパー半径Rとスクレーパー進み角θを所望する量に調整した後、ナット45で固着する構造にするのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
前述のような手段をとることにより、産業として高速大量処理しても、詰まり・焼付き・火災等のトラブルを防止することができた。
大きなエネルギーを要する加熱については焼却炉の廃熱を利用して省エネルギー的であり、脱水熱効率が高く、CO2排出を増大することなく解決できた。
【0011】
また、U字断面空間構造とパドル構造は高速大量処理の諸条件に柔軟に対応でき、しかも低コストで実現できた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のパドルドライヤーの実施例を示す中央断面図である。
【図2】本発明の図1のA−A矢視断面図である。
【図3】本発明の図1のB−B矢視断面図である。
【図4】本発明のシステム構成を示す組織図である。
【図5】本発明のパドル部品の実施例を示す3面図で、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は現場において数値計算をし、試行錯誤しながら、最適化したものである。以下実施例として詳細に開示していく。
【実施例】
【0014】
図1、図2、図3により、本発明のパドルドライヤー10の基本構成を説明する。
鉄枠基台20はパドルドライヤー10の高さを調整し、地面に固定するものでアングル鋼材が使われる。その上部に、上板30と内板31と外板32と側板33とで主要部である乾燥室36とその外周を覆ってU字断面空間38を形成する。主要部の板材は全てSUS304鋼板の厚さ5mmを使用して耐久性を増している。外気に触れる上板30と外板32と側板33の外側は、炉材用耐熱ウールまたはロックウールを巻いて薄板で止め、放熱を最小にしている。
かくして、標準型は全幅5000mm、全高3750mm、奥行き2250mmに収めることができた。
【0015】
乾燥室36の内部を水平に貫く主軸40は、鉄枠基台20に設けたモーターMの回転を減速機21で大きく減速し、さらに駆動スプロケット22、駆動チェン23、従動スプロケット24を介して減速して、30rpm〜120rpmで回転させている。またモーターMは11kw、可変速であるインバーター型を用いる事が多い。汚泥等含水物は乾燥が進むと粘性が増し主軸40は大きなトルクを受けることから、ガス管150A(内径150mm)でSUS304を用いている。主軸40を支持する主ベアリング25もまた耐熱で大容量のものにしている。
【0016】
主軸40には20本程のパドル41を設けて内板31の内側を回転させ、スクレーパー半径Rは800mmとした。
必然的であるが内板31の形状もU字型であるのが特徴であり、下部は半円筒の樋で、上部は垂直に開いている。この空間には2個の乾燥内部ファン15を設けており、乾燥室36の内部を10m/s程度の強風で撹拌して、汚泥等含水物と内板31との熱伝達効率を上げることに役立っている。
また、U字型上部のこの乾燥空間は、実験的に悪条件を試みたが、円筒型で発生するような、詰まり・焼付き・火災等のトラブルは発生しなかった。
【0017】
U字型上部のこの乾燥空間に沸騰して溜まる水蒸気は、完全に水蒸気である汚泥の場合は、上板30からそのまま大気に放出する。臭気を伴う場合は、後述する焼却炉60へ戻すことが多い。活性炭や酸化触媒を用いることもあり、多岐にわたるため図示していない。
U字断面空間38には熱風を通すことで内板31を加熱し、乾燥を促進する。U字断面空間38の内部は、随所に柱や導風板を溶接して間隔を保っている。
【0018】
図4によって、熱風およびエネルギーと周辺システムを説明する。
パドルドライヤー10の乾燥室36は、上板30の中央の一端に供給口11を設け、汚泥等含水物をホッパ50に受けて堆積したものを、スクリューコンベア51で供給制御弁を介して供給する。
汚泥等含水物の含水率は85%程度のものまで扱い、供給能力は1320kg/hである。
内板31の中央の他の一端に外板32を貫く排出口14を設けられ、排出制御弁81を介して製品サイロ80に一旦堆積し、適宜運搬車90で出荷する。排出能力は含水率30%のもので283kg/hである。
【0019】
U字断面空間38は上板30の供給口11脇に風入口12を設け、焼却炉60からの熱風を受け入れる。その温度は、焼却炉60の出口で815℃、風入口12で600℃であった。その風量は6420ノルマル立方メートル/hで、この量がそのままU字断面空間38を通り貫ける。
【0020】
上板30の長方形の対角部に風出口13が設けてあり、その温度は300℃であった。風出口13を出た熱風はまだ利用する事もあるが、最終的には集塵機70を通して大気に放出する。
集塵機70は、高温ではサイクロン型、200℃以下ならバグフィルター型が適当である。
【0021】
図5によって、主軸40に溶接されている20本程のパドル41の一つを詳細に説明する。
パドル41は、アーム42とスクレーパー43とからなり、スクレーパー43は扇形であり、アーム42は梯子形で中央部は主軸40に溶接されている。
普通のスクレーパーは、内板31に弾性的に接して削ぎ落とす作用をさすが、本発明では、一定の間隔を保って撹拌し、下流に向けて速度Vで送る役目をさせている。
一定の間隔とは10mm〜20mmで調整している。
【0022】
スクレーパー43はボルト44が溶接されており、ボルト44はアーム42の梯子端のねじ孔に嵌っていて、スクレーパー一定の間隔とスクレーパー進み角θを所望する量に調整した後、ナット45で固着する構造にしている。
スクレーパー進み角θについては5度〜45度で使われ、平均すると10度程度であるが、実験中に進み角θは不揃いであることが好結果を生み出すことが分ってきた。理由は定かではないが、各スクレーパーの送りのムラで空気撹拌が良くなるためらしい。
梯子端のねじ孔は両端にきってあるが、本件実施例では片端で行っている。
【0023】
モーターMの回転速度をNrpm、消費電力をPkwとすると、Pは(N×sinθ)に比例する。
汚泥等含水物の送り速度をVとすると、Vは(N×cosθ)に比例する。
汚泥等含水物の脱水量をWとすると、Wは滞留時間に比例するから、(N×cosθ)には反比例する。
この関係から、Nとθの調整で、従来の数倍の高速乾燥が可能になった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、省エネ、省資材であり、即産業に利用が可能である。
【符号の説明】
【0025】
10 パドルドライヤー
11 供給口
12 風入口
13 風出口
14 排出口
15 乾燥内部ファン
20 鉄枠基台
21 減速機
22 駆動スプロケット
23 駆動チェン
24 従動スプロケット
25 主ベアリング
30 上板
31 内板
32 外板
33 側板33
36 乾燥室
38 U字断面空間
40 主軸
41 パドル
42 アーム
43 スクレーパー
44 ボルト
45 ナット
50 ホッパ
51 スクリューコンベア
52 供給制御弁
60 焼却炉
70 集塵機
80 製品サイロ
81 排出制御弁
90 運搬車
M モーター
R スクレーパー半径
θ スクレーパー進み角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄枠基台20の上部に、上板30と内板31と外板32と側板33とで乾燥室36とその外周を覆ってU字断面空間38を形成し、前記乾燥室36の内部を水平に貫く主軸40には複数のパドル41を設けて回転させると共に乾燥内部ファン15で撹拌し、前記U字断面空間38には熱風を通してなる汚泥等含水物の高速乾燥用パドルドライヤー。
【請求項2】
請求項1において、前記乾燥室36は上板30の中央の一端に供給口11を、内板31の中央の他の一端に外板32を貫く排出口14を設けた汚泥等含水物の高速乾燥用パドルドライヤー。
【請求項3】
請求項1において、前記U字断面空間38は上板30の供給口11脇に風入口12を、その上板30の長方形の対角部に風出口13を設けた汚泥等含水物の高速乾燥用パドルドライヤー。
【請求項4】
請求項1において、前記熱風の供給源は焼却炉60であり、上板30の供給口11に連結する構造の汚泥等含水物の高速乾燥用パドルドライヤー。
【請求項5】
請求項1において、前記パドル41はアーム42とスクレーパー43とからなり、スクレーパー43は扇形であり、アーム42は梯子形で中央部は主軸40に溶接されている汚泥等含水物の高速乾燥用パドルドライヤー。
【請求項6】
請求項5において、前記スクレーパー43はボルト44が溶接されており、ボルト44はアーム42の梯子端のねじ孔に嵌っていて、スクレーパー半径Rとスクレーパー進み角θを所望する量に調整した後、 ナット45で固着する構造の汚泥等含水物の高速乾燥用パドルドライヤー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−137273(P2012−137273A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294869(P2010−294869)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(591214044)村松風送設備工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】