説明

油井管用鋼管内面乾燥ノズル

【課題】油井管用鋼管のねじ継手部内面ねじ部を従来に比べより短時間で、より均一に乾燥させることができる。また、油井管用鋼管の内面全長の乾燥にも適用できる。
【解決手段】ノズル4は、気流管5との連結管6の出口外周部に連結管6と傾角θ2をなすフランジ板8を設け、連結管6の内面側に通気孔板7を設け、通気孔板7に軸着されて連結管6と傾角θ1をなしてフランジ板8および連結管6出口と対面する皿状板9を設け、皿状板9とフランジ板8の周縁部同士が円周スリット状気流噴出口10を形成するよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油井管用鋼管内面乾燥ノズルに関し、とくに油井管用鋼管のねじ継手部内面の洗浄後の乾燥を高能率に行うための油井管用鋼管内面乾燥ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、管端ねじ部の洗浄乾燥を同一装置内で短時間に自動的に行うための管端ねじ部の洗浄乾燥装置が記載されている。この装置は、その移動(前進・後退)により鋼管を搬入・搬出し、鋼管搬入時に内向きに洗浄水を噴射して鋼管の管端ねじ部を洗浄可能な洗浄液噴射用リングノズルと、鋼管搬出時に内向きにエアを噴射して管端ねじ部の外面側を乾燥可能なエアブロー用リングノズルと、これらリングノズルの軸心方向に貫通して配装され鋼管搬出時にエアを噴射して管端ねじ部の内面側を乾燥可能なエアブロー用直線状ノズルとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6-11881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油井管として使用される継目無鋼管等の鋼管は、通常、管端に外面ねじ切りを施し、この外面ねじ部に、両側に内面ねじ部を設けたカップリングの一方の側の内面ねじ部を螺合してなるねじ継手部を有する。このねじ継手部は、その形成後あるいは検査前に、洗浄・乾燥を施されるが、そのときの内面乾燥にあたっては、従来、特許文献1に記載のエアブロー用直線状ノズルや、例えば図1に示すようなヘッダに複数方向の噴気管を設けた先端枝別れ型ノズル3が使用されていた。しかし、これら従来の内面乾燥ノズルを使用した乾燥工程では、油井管用鋼管のねじ継手部内面ねじ部の乾燥に長時間を要し、また、乾燥ムラが発生しやすく、これらの点が課題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)油井管用鋼管の内面に気流を吹き付けて乾燥させるノズルであって、気流管との連結管の出口外周部に前記連結管と傾角θ2をなすフランジ板を設け、前記連結管の内面側に通気孔板を設け、該通気孔板に軸着されて前記連結管と傾角θ1をなして前記フランジ板および前記連結管出口と対面する皿状板を設け、該皿状板と前記フランジ板の周縁部同士が円周スリット状気流噴出口を形成するよう構成したことを特徴とする油井管用鋼管内面乾燥ノズル。
(2)前記円周スリット状気流噴出口のスリット隙間を可変としたことを特徴とする(1)に記載の油井管用鋼管内面乾燥ノズル。
(3)前記傾角θ2が、前記傾角θ1よりも大きいことを特徴とする(1)、(2)のいずれか1項に記載の油井管用鋼管内面乾燥ノズル。
(4)前記傾角θ1およびθ2が、60°以上90°未満、または90°超120°以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の油井管用鋼管内面乾燥ノズル。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、油井管用鋼管のねじ継手部内面ねじ部を従来に比べより短時間で、より均一に乾燥させることができる。また、本発明は、油井管用鋼管の内面全長の乾燥にも適用でき、同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】従来例の内面乾燥ノズルを用いた乾燥工程を示す概略図
【図2】本発明例の油井管用鋼管内面乾燥ノズルを用いた乾燥工程を示す概略図
【図3】本発明例の油井管用鋼管内面乾燥ノズルの先端部構造を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0008】
図2は本発明例の油井管用鋼管内面乾燥ノズル(略して、本発明ノズル)4を用いた乾燥工程を示す概略図であり、図3は本発明ノズル4の先端部構造を示す概略図である。図2のように、本発明ノズル4は、油井管用鋼管1の内面に気流20を吹き付けて乾燥させるノズルである。本発明ノズル4は、図3のように、気流管5との連結管6の出口外周部に連結管6と傾角θ2(0°、90°は含まない)をなすように設けたフランジ板8と、連結管6の内面側に設けた通気孔板7と、通気孔板7に(例えば固定用ボルトナット11等で)軸着されて連結管6と傾角θ1(0°、90°は含まない)をなしてフランジ板8および連結管6の出口と対面するように設けた皿状板9とを有し、皿状板9とフランジ板8の周縁部同士が円周スリット状気流噴出口10を形成するよう構成したものである。
【0009】
気流20(気流の気体は乾燥エアが好ましい)は、気流管5の内側→連結管6の内側および連結管6内の通気孔板7に設けられた複数の通気孔7a→連結管6出口→フランジ板8と皿状板9との隙間、の順に通流し、円周スリット状気流噴出口10から噴出する。
【0010】
本発明ノズル4では、気流噴出口を円周スリット状としたから、乾燥エアが鋼管1内面全周に均一に吹き付けられる。そして、傾角θ1、傾角θ2を設けて気流を管軸に平行な方向から斜めの方向に転換して噴出させるようにしたから、乾燥エアが鋼管1内面長手方向に対して斜めの方向から吹き付けられて水滴の逆流を防止する。したがって、本発明によれば、従来と比べ、鋼管1内面の乾燥時間がより短くなり、かつ、より均一な乾燥状態が得られる。
【0011】
通気孔板7での圧損を小さくする観点から、複数の通気孔7aの断面積の総和を、気流管5の内径部の断面積以上とするのが好ましい。
【0012】
気体の噴出量および噴出圧力を調整しやすくする観点から、円周スリット状気流噴出口10のスリット隙間dを、例えば隙間調整ねじ12を適用するなどして、可変にしておくのが好ましい。なお、スリット隙間dは、50mm以下とするのがよい。
【0013】
傾角θ1、θ2の大小関係について、θ2≦θ1とすると噴出圧力確保の面で不利なので、θ2>θ1とするのが好ましい。より好ましくは、θ1+(5〜15)°≧θ2>θ1、である。
【0014】
図2のように本発明ノズル4を後退21させながら気流吹き付けを行う場合、管内の残留水滴をより効率良く管端開口から排出する観点から、θ1およびθ2は60°以上90°未満とするのが好ましく、一方、図示しないが、本発明ノズルを前進させながら気流吹き付けを行う場合、同様の観点から、θ1およびθ2は90°超120°以下とするのが好ましい。
【実施例】
【0015】
継目無鋼管の管端部を外面ねじ切り加工し、図2のようにねじ継手部2を設けた状態の鋼管1を対象として、内面を水洗浄後、θ1=60°、θ2=70°とした本発明ノズル4を用いて内面乾燥を行った(例Aとする)。その結果、例Aでは、図1のように従来の枝別れ型ノズル3を用いて乾燥を行った場合(例Bとする)と比べ、乾燥し終わるまでの所要時間が、例Bを100とした相対値で60に短縮した。また、乾燥工程後の内面をファイバスコープで観察したところ、例Bではねじの谷部に水滴が少ないながらも残っていたのに対し、例Aでは全く残っていなかった。
【符号の説明】
【0016】
1 鋼管(油井管用鋼管)
2 ねじ継手部
3 枝別れ型ノズル
4 本発明ノズル(本発明例の油井管用鋼管内面乾燥ノズル)
5 気流管
6 連結管
7 通気孔板
7a 通気孔
8 フランジ板
9 皿状板
10 円周スリット状気流噴出口
11 固定用ボルトナット
12 隙間調整ねじ
20 気流
21 後退

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油井管用鋼管の内面に気流を吹き付けて乾燥させるノズルであって、気流管との連結管の出口外周部に前記連結管と傾角θ2をなすフランジ板を設け、前記連結管の内面側に通気孔板を設け、該通気孔板に軸着されて前記連結管と傾角θ1をなして前記フランジ板および前記連結管出口と対面する皿状板を設け、該皿状板と前記フランジ板の周縁部同士が円周スリット状気流噴出口を形成するよう構成したことを特徴とする油井管用鋼管内面乾燥ノズル。
【請求項2】
前記円周スリット状気流噴出口のスリット隙間を可変としたことを特徴とする請求項1に記載の油井管用鋼管内面乾燥ノズル。
【請求項3】
前記傾角θ2が、前記傾角θ1よりも大きいことを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の油井管用鋼管内面乾燥ノズル。
【請求項4】
前記傾角θ1およびθ2が、60°以上90°未満、または90°超120°以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の油井管用鋼管内面乾燥ノズル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−115735(P2011−115735A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276430(P2009−276430)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】