説明

油圧制御弁

【課題】アクチュエータの油圧をソレノイドに流す電流によって調圧することのできる油圧制御弁を提供する。
【解決手段】負荷圧を受ける可動体13と、可動体13を負荷圧に基づく荷重の作用方向とは反対方向に押圧する付勢部材17と、可動体13に対して電磁力を作用させる電磁コイル16と、可動体13の上方側から作用する荷重が下方側から作用する荷重より小さい場合に可動体13によって開弁方向に押圧されて、油圧源7から油圧供給部2に油圧を供給する第1弁体12と、可動体13の上方側から作用する荷重が下方側から作用する荷重に抗して移動した場合に開弁して負荷圧をドレーンさせる第2弁体14とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バルブを開閉することによってアクチュエータの油圧を供給もしくは排出してアクチュエータの油圧を制御する油圧制御弁に関し、特に通電されることによって電磁力を発生させるソレノイドを利用してバルブを開閉させる油圧制御弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圧油や空気などの流路を切り替える切替弁が知られている。その切替弁の一例として、特許文献1に記載された切替弁は、3つのポートを有し、それらの3つのポートを同時に連通させることなく、相互に連通させるポートを切り替える切替弁が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載された切替弁の具体的な構造は、第1および第2ならびに第3のポートを有し、第1のポートを閉じる弁体と、第3のポートを閉じる他の弁体と、それらの弁体を押すことによって各弁体を開弁するプランジャとを備えた切替弁であって、そのプランジャの動力として電流を流すことによって電磁力を発生させるソレノイドが設けられている。そして、ソレノイドに通電しない場合には、第1のポートを閉じている弁体がプランジャに押されて第1の弁体と第2の弁体とが連通するように構成され、また、ソレノイドに通電し始めると、第1のポートを閉じる弁体が第1のポートに密着し、その後、プランジャによって第3のポートを閉じる他の弁体が押されて、第3のポートが開いて第2のポートと第3のポートとが連通するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−101362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載された切替弁は、ソレノイドに通電するか否かによって開くポートを選択するように構成されている。そのため、特許文献1に記載された切替弁は、ソレノイドへの通電の有無によって開くポートが異なるように構成されているので、第1および第3のポートが閉じた状態を維持することができない。しかしながら、アクチュエータの油圧制御に用いられる制御弁は、アクチュエータに油圧を供給することができ、かつそのアクチュエータの油圧を排出することができ、さらに、アクチュエータの油圧を一定に保つことができる制御弁が要求される。
【0006】
また、特許文献1に記載された切替弁は、電磁力によって開閉状態を切り替えることができるが、調圧機能を備えていないので、ソレノイドに通電する電流によってアクチュエータの油圧を制御することができない。
【0007】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、アクチュエータの油圧をソレノイドに流す電流によって調圧することのできる油圧制御弁を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、油圧源から油圧供給部に油圧を供給する状態と前記油圧供給部の油圧を排出する状態とを少なくとも選択的に切り替えることのできる油圧制御弁において、前記油圧供給部の油圧である負荷圧を受ける可動体と、該可動体を前記負荷圧に基づく荷重の作用方向とは反対方向に押圧する付勢部材と、前記可動体に対して電流値に応じた推力を作用させることによって該可動体の移動方向に作用する荷重を増大もしくは減殺させる電磁コイルと、前記可動体に対する前記負荷圧に基づく荷重が該可動体に作用する方向の荷重が前記付勢部材が前記可動体を押圧する方向の荷重より小さい場合に前記可動体によって開弁方向に押圧されて、前記油圧源から前記油圧供給部に油圧を供給する第1弁体と、前記可動体に対する前記負荷圧に基づく荷重が該可動体に作用する方向の荷重が前記付勢部材が前記可動体を押圧する方向の荷重に抗して移動した場合に開弁して前記負荷圧をドレーンさせる第2弁体とを備えていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記可動体が移動した場合に、前記第1弁体もしくは前記第2弁体を開弁方向に押圧する押圧部材を更に備えていることを特徴とする油圧制御弁である。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記押圧部材を前記可動体の移動方向に押圧する他の付勢部材と、該他の付勢部材が前記押圧部材を押圧する方向とは反対方向に電流値に応じた推力を付与する他の電磁コイルとを更に備えていることを特徴とする油圧制御弁である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、可動体に油圧供給部の油圧である負荷圧と付勢部材の押圧力と電磁コイルで生じる推力とが作用する。そのため、電磁コイルに流す電流値を制御することによって、可動体に作用する荷重を変化させることができる。また、可動体に対するその可動体に負荷圧が作用する方向の荷重が付勢部材が可動体を押圧する方向の荷重より小さい場合に可動体によって第1弁体が押圧されて油圧源から油圧供給部に油圧が供給され、それとは反対に、可動体に対するその可動体に負荷圧が作用する方向の荷重が付勢部材が可動体を押圧する方向の荷重より小さい場合に可動体によって第2弁体が開弁して負荷圧をドレーンされる。したがって、可動体の移動方向に作用する荷重を増大もしくは減殺する電磁コイルに流す電流値を制御することによって可動体の動作を制御することができ、その結果、油圧供給部の油圧を制御することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、可動体が移動した場合に、第1弁体もしくは第2弁体を押圧する押圧部材が更に備えられているので、可動体の移動に要する力を制御することによって、第1弁体もしくは第2弁体を開弁することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、押圧部材を可動体の移動方向に押圧する他の付勢部材と、他の付勢部材が押圧部材を押圧する方向とは反対方向に電流に応じた推力を付与する他の電磁コイルが設けられているので、他の電磁コイルに流す電流値を制御することによって、押圧部材の位置を変更することができる。その結果、第1弁体もしくは第2弁体を開弁方向に押圧するまでの可動体の移動量を変更することができる。そのため、可動体に作用する付勢部材の押圧力を変更することができるので、第1弁体もしくは第2弁体を開弁する際の可動体に作用する荷重を変化させることができ、アクチュエータの油圧制御における不感帯域を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明に係る油圧制御弁の一例を示す断面図であり、アクチュエータの油圧が一定に保たれている状態を示す図である。
【図2】そのアクチュエータに油圧を供給している状態を示す図である。
【図3】そのアクチュエータの油圧を排出している状態を示す図である。
【図4】この発明に係る油圧制御弁の他の構成例を示す断面図であって、第1開閉機構が開弁した状態を示す図である。
【図5】その他の構成例におけるロッドが下降している状態を示す図である。
【図6】その他の構成例において、アクチュエータの油圧が一定に保たれている状態を示す図である。
【図7】その他の構成例において、アクチュエータの油圧を排出している状態を示す図である。
【図8】この発明に係る油圧制御弁の更に他の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎにこの発明に係る油圧制御弁の構成例について説明する。図1ないし3は、車両に搭載された無段変速機1に油圧を供給もしくは排出する油圧回路を示したものであり、その無段変速機1に付設されたアクチュエータ2に油圧を供給もしくは排出するために、この発明に係る油圧制御弁3が搭載されている。また、図1はアクチュエータ2に油圧を供給もしくは排出していない状態すなわちアクチュエータ2の油圧を一定に保つ状態、図2はアクチュエータ2に油圧を供給している状態、図3はアクチュエータ2の油圧を排出している状態を示している。
【0016】
まず、図に示す油圧制御弁3は、第1油圧室4と、第2油圧室5と、第3油圧室6との3つの油圧室が設けられている。また、第1油圧室4にはオイルポンプ7から油圧が供給される入力ポート8が形成され、第2油圧室5にはアクチュエータ2と連通する出力ポート9が形成され、第3油圧室6にはオイルパンもしくは他の部材(以下、単にオイルパン10と記す。)に油圧を排出するドレインポート11が形成されている。さらに、第1油圧室4と第2油圧室5とが後述する第1開閉機構12を介して連通し、第2油圧室5と第3油圧室6とが後述するプランジャ13に設けられた第2開閉機構14を介して連通するように構成されている。つまり、第1開閉機構12を開くことによって第1油圧室4と第2油圧室5とが連通して、オイルポンプ7からの油圧がアクチュエータ2に供給されるように構成されている。また、第2開閉機構14を開くことによって第2油圧室5と第3油圧室6とが連通して、アクチュエータ2の油圧が排出されるように構成されている。
【0017】
ここで、第1開閉機構12について具体的に説明する。まず、第1油圧室4と第2油圧室5とに連通した開口部4aが形成されている。また、開口部4aは第1油圧室4側の開口面積が大きく形成されている。さらに、第1油圧室4には、弁体12aとその弁体12aを開口部4a側に押し付けるように配置されたバネ12bとが設けられている。つまり、開口部4aにおける開口面積が大きく形成された部分が弁座12cとなり、弁体12aがその弁座12cに押し当てられたときに第1油圧室4から第2油圧室5への油圧の供給を遮断するように構成されている。これは従来知られたポペット型のバルブと同様の構成である。
【0018】
したがって、オイルポンプ7から供給される油圧とバネ力との合力が第1油圧室4から弁体12aに作用する。そのため、その合力より大きな力で第2油圧室5側から弁体12aを押し上げることによって弁体12aが弁座12cから離れて、第1油圧室4と第2油圧室5とを連通させることができる。
【0019】
つぎにプランジャ13の構成について説明する。プランジャ13は、油圧制御弁3の中心軸線に沿って第2油圧室5から第3油圧室6および第3油圧室6の第2油圧室5とは反対側に形成された空間15に亘って配置されている。また、そのプランジャ13には、上述した第1油圧室4と第2油圧室5を連通させる開口部4aの内径より外径が小さい突起部13aが一体に形成されている。さらに、このプランジャ13は、空間15の外周側に配置されたソレノイド16の電磁力によって、図に示す下側に力を受ける磁性材料で形成されている。なお、上記ソレノイド16の構成は従来知られたソレノイド16と同様の構成であって、鉄心16aに導線が巻かれて構成されたものであり、その導線に流す電流値に応じた電磁力が発生する。また、プランジャ13とソレノイド16との位置関係によって電磁力が変化しないように、鉄心16aは、図に示す上方に向かうにつれて外周面の直径が小さくなるように構成されている。
【0020】
そして、プランジャ13の第2油圧室5内に位置する箇所には、第2油圧室5とプランジャ13の内部に形成された空間部13bとが連通する開口部13cが形成されている。つまり、アクチュエータ2および第2油圧室5ならびに空間部13bが連通しているので、それぞれの油圧は同一となる。さらに、空間部13bの下方部には、中心軸線に沿って第3油圧室6側に向けて流路13dが形成され、その流路13dの空間部13bとは反対側の端部に交わり、かつ第3油圧室6に連通した貫通孔13eが形成されている。また、その空間部13bには上述した第1開閉機構12と同様の構成の第2開閉機構14が設けられている。つまり、空間部13bに設けられた弁体14aが、流路13dの空間部13b側の開口面積が大きく形成された弁座14bに、バネ14cによって押し当てられて空間部13bと流路13dとが遮断されるように構成されている。すなわち、第2油圧室5の油圧の排出を遮断するように構成されている。なお、空間部13bに設けられた弁体14aには、空間部13bに設けられたバネ14cのバネ力とアクチュエータ2の油圧とが空間部13b側から作用する。
【0021】
また、プランジャ13の軸線方向の略中央部の外周面と油圧制御弁3の内壁面とにダイアフラム17が連結されている。このダイアフラム17は、第2油圧室5と第3油圧室6とがプランジャ13の外周側で連通しないように設けられ、かつプランジャ13を押し上げる方向にバネ力を作用させるように設けられている。つまり、第2油圧室5と第3油圧室6とが、第2開閉機構14とダイアフラム17とで区画させるように構成されている。さらに、第3油圧室6の下方に形成された空間15の下面部から、油圧制御弁3の中心軸線に沿い、かつ流路13dの内部に亘ってロッド18が配置されている。
【0022】
つぎに上述した構成の油圧制御弁3の作用について説明する。まず、プランジャ13の動作について説明する。プランジャ13には、ダイアフラム17のバネ力が第1油圧室4側に作用し、それとは反対に、ソレノイド16に流す電流値に応じた電磁力とプランジャ13に作用する油圧とが、第3油圧室6側に作用する。したがって、プランジャ13を第1油圧室4側に押圧するバネ力と、プランジャを第3油圧室6側に移動させる方向に荷重を作用させる油圧と電磁力との合力とが釣り合っていると、プランジャ13が図1に示す位置で待機する。
【0023】
一方、プランジャ13を第1油圧室4側に押圧するバネ力がプランジャ13を第3油圧室6側に移動させる方向に荷重を作用させる力より大きい場合には、プランジャ13が第1油圧室4側に移動して突起部13aと弁体12aとが接触する。このときの弁体12aに作用する力は、弁体12aの第1油圧室4側からバネ力とオイルポンプ7から供給される油圧との合力が作用し、弁体12aの第2油圧室5側からプランジャ13に作用する力の合力と第2油圧室5の油圧、すなわちアクチュエータ2の油圧との合力が作用する。したがって、弁体12aの第2油圧室5側から作用する力が弁体12aの第1油圧室4側から作用する力より大きい場合には、弁体12aが弁座12cから離れて油圧が第2油圧室5に供給される。つまり、アクチュエータ2が増圧される。そして、第2油圧室5に油圧が供給されて増圧されると、プランジャ13を第3油圧室6側に移動させる力が大きくなる。その結果、弁体12aに第2油圧室5側から作用させる力が減少するので、弁体12aに上下から作用する力が釣り合って、もしくは弁体12aの第1油圧室4側から作用する力が相対的に大きくなって、弁体12aが弁座12cに押し戻される。
【0024】
それとは反対に、プランジャ13を第3油圧室6側に移動させる方向の力がプランジャ13を第1油圧室4側に押圧する力より大きい場合には、プランジャ13が第3油圧室6側に移動して空間部13bに設けられた弁体14aとロッド18とが接触する。このときの弁体14aに作用する力は、弁体14aの空間部13b側からバネ力と第2油圧室5の油圧が作用し、弁体14aの流路13d側からロッド18に突き上げられる力、すなわち電磁力とプランジャ13に作用する油圧との合力からダイアフラム17のバネ力を除した力の反力が作用する。したがって、弁体14aの流路13dから作用する力が弁体14aの空間部13b側から作用する力より大きい場合には、弁体14aが弁座14bから離れて油圧が第3油圧室6に排出される。つまり、アクチュエータ2が減圧される。そして、第2油圧室5の油圧が排出されて減圧されると、プランジャ13を第3油圧室6側に移動させる力が減少する。その結果、弁体14aに作用する力が釣り合って、もしくは弁体14aの空間部13b側から作用する力が相対的に大きくなって、弁体14aが弁座14cに押し戻される。
【0025】
上述したようにプランジャ13を動作させるためもしくは各弁体12a,14aを弁座12c,14bから離すためには、ソレノイド16の電磁力と第2油圧室5の油圧とを利用する。したがって、ソレノイド16に流す電流値によってプランジャ13の動作や弁体12a,14aの開弁動作を制御することができる。また、そのソレノイド16に流す電流値に応じて第1開閉機構12や第2開閉機構14が開いて、第2油圧室5の油圧が変化し、電磁力に応じた油圧となったときに第1開閉機構12や第2開閉機構14が閉じる。つまり、ソレノイド16に流す電流を制御することによってアクチュエータ2の油圧を制御することができる。また、プランジャ13に作用する力が釣り合うと、第1開閉機構12と第2開閉機構14とのそれぞれが閉じた状態となるので、第2油圧室5を封止することができ、その結果、アクチュエータ2の油圧を一定に保つことができる。
【0026】
上述したように構成された油圧制御弁3は、弁体14aが開弁するときのソレノイド16に流す電流値は、プランジャ13が第3油圧室6側に移動し始めるときのソレノイド16に流す電流値より不可避的に大きくなる。つまり、ダイアフラム17はプランジャ13を第1油圧室4側に押圧するように設けられているので、プランジャ13が第3油圧室6側に移動するにつれてダイアフラム17の変形量が大きくなり、その変形量に基づいて弾性力すなわちプランジャ13を第1油圧室4側に押圧する力が大きくなる。これは、弁体14aを弁座14bに押し付けるバネ力と弁体14aに作用する第2油圧室5の油圧との力が更に加わるためである。したがって、そのプランジャ13が第3油圧室6側に移動し始めるときのソレノイド16に流す電流値と弁体14aが開弁するときのソレノイド16に流す電流値との差が、この油圧制御弁3の不感帯域となる。
【0027】
一方、車両の走行状態などによって不感帯域が大きいことが要求される場合もあり、それとは反対に不感帯域が小さいことが要求される場合もある。そのため、上述した構成に加えて不感帯域を変更する機構を備えた他の構成例について説明する。図4ないし7は、他の構成例を説明するための断面図であり、上述した構成例との違いは、上述した構成例に加えてさらにソレノイド19が設けられ、そのソレノイド19の電磁力によって上述したロッド18の位置を変更することができる点である。
【0028】
ここで、上述した他の構成例について具体的に説明する。図4ないし図7に示す例では、上述した油圧制御弁3の下端部に、非磁性材料のストッパ20を挟んで、他のソレノイド19が設けられている。また、他のソレノイド19で生じる電磁力によって動作し、上述したロッド18と一体に形成された他のプランジャ21が設けられ、他のプランジャ21の下端部には、他のプランジャ21をストッパ20側に押し付けるバネ22が設けられている。なお、図4は第1開閉機構12が開弁しかつ他のプランジャ21が上昇している状態、図5は第1開閉機構12が開弁しかつ他のプランジャ21が図4の状態に対して下降している状態、図6はプランジャ13が下降して第1開閉機構12を閉弁した状態、図7はさらにプランジャ13が下降して第2開閉機構14が開弁した状態を示す図である。
【0029】
上述したように構成することによって、他のプランジャ21には、他のプランジャ21には、常時、図に示す下方から上方にバネ力を作用させて、そのバネ力に対向する方向に他のソレノイド19によって生じる電磁力を作用させることができる。そのため、他のソレノイド19に流す電流値を制御することによって他のプランジャ21およびロッド18の位置を変更することができる。その結果、ロッド18と第2開閉機構14の弁体14aとが接触する位置を変更することができるので、アクチュエータ2の油圧制御における不感帯域を変化させることができる。つまり、油圧振動が多くある場合であっても、プランジャ13とロッド18とが接触するまでのプランジャ13の移動量が多くなるようにすることによって、不感帯域を大きくすることができ、その結果、油圧振動によって頻繁に油圧を排出することがないので、油圧を供給するためのオイルポンプ7の駆動頻度を減らすことができ、ひいては車両の燃費を向上させることができる。
【0030】
なお、上述したストッパ20が非磁性材料であるのは、それぞれのソレノイド16,19で発生させた電磁力が干渉しないようにあるいは電磁力を作用させるプランジャ13(21)とは異なるプランジャ21(13)に電磁力を作用させないためである。さらに、ストッパ20を非磁性材料とすることによって、ストッパ20が着磁して他のプランジャ21の制御性に影響を与えることを抑制もしくは防止することができる。
【0031】
上述した各構成例では、プランジャ13に作用させる押圧力は、ダイアフラム17によって付与させるように構成されていたが、図8に示すように第3油圧室6の下方に形成された空間15にプランジャ13を上方に押し上げるようにバネ力を作用させるバネ23を利用してプランジャ13に押圧力を付与してもよい。その際には、第2油圧室5と第3油圧室6とが、プランジャ13の外周側で連通してしまうので、第2油圧室5と第3油圧室6の間にシール材24を設ければよい。
【0032】
また、上述した構成例では、第1開閉機構12側に入力ポート8を設け、第2開閉機構14側にドレインポート11を設けた構成としたが、第1開閉機構12側にドレインポートを設け、第2開閉機構14側に入力ポートを設けても良い。その場合には、ソレノイド16に流す電流値を増大させると、プランジャ13が下降し、それとは反対にソレノイド16に流す電流値を減少させると、プランジャ13が上昇するので、ソレノイド16に流す電流値に対するアクチュエータ2の油圧の変化が、上述した構成と反対となる。
【符号の説明】
【0033】
2…アクチュエータ、 3…油圧制御弁、 8…入力ポート、 9…出力ポート、 11…ドレインポート、 12…第1開閉機構、 13…プランジャ、 14…第2開閉機構、 16…ソレノイド、 17…ダイアフラム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧源から油圧供給部に油圧を供給する状態と前記油圧供給部の油圧を排出する状態とを少なくとも選択的に切り替えることのできる油圧制御弁において、
前記油圧供給部の油圧である負荷圧を受ける可動体と、
該可動体を前記負荷圧に基づく荷重の作用方向とは反対方向に押圧する付勢部材と、
前記可動体に対して電流値に応じた推力を作用させることによって該可動体の移動方向に作用する荷重を増大もしくは減殺させる電磁コイルと、
前記可動体に対する前記負荷圧に基づく荷重が該可動体に作用する方向の荷重が前記付勢部材が前記可動体を押圧する方向の荷重より小さい場合に前記可動体によって開弁方向に押圧されて、前記油圧源から前記油圧供給部に油圧を供給する第1弁体と、
前記可動体に対する前記負荷圧に基づく荷重が該可動体に作用する方向の荷重が前記付勢部材が前記可動体を押圧する方向の荷重に抗して移動した場合に開弁して前記負荷圧をドレーンさせる第2弁体と
を備えていることを特徴とする油圧制御弁。
【請求項2】
前記可動体が移動した場合に、前記第1弁体もしくは前記第2弁体を開弁方向に押圧する押圧部材を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の油圧制御弁。
【請求項3】
前記押圧部材を前記可動体の移動方向に押圧する他の付勢部材と、
該他の付勢部材が前記押圧部材を押圧する方向とは反対方向に電流値に応じた推力を付与する他の電磁コイルと
を更に備えていることを特徴とする請求項2に記載の油圧制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−140991(P2012−140991A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292611(P2010−292611)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】