説明

油圧式エレベータの安全弁装置およびその動作状態確認方法

【課題】落下防止弁が作動したときの衝撃を緩和し、油圧シリンダの上昇時の立ち上がり特性を改善するとともに、安全弁装置の動作状況のチェックを容易に行えること。
【解決手段】落下防止弁31が、油圧シリンダと主弁との間の管路に設けられ、異常時において油圧シリンダから排出される圧油の流れを遮断する。落下防止弁31に発生する差圧によって動作し、当該落下防止弁による圧油の流れの遮断特性を緩やかにするための補助弁33が設けられる。補助弁33は、差圧によって移動するスプール52と、スプールの両端部にそれぞれ設けられ、差圧がないときのスプールのストローク位置および差圧が発生したときのスプールの移動量を設定するためのバネ部材58a,58bと、スプールのストローク位置に応じて流路面積が可変調整される可変絞り流路61と、差圧によるスプールの移動量が所定以上になったことを検知するストロークセンサSE1,2とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主弁の制御により油圧シリンダ内に圧油を給排してかごを昇降させる油圧式エレベータの安全弁装置およびその動作状態確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧エレベータは、電動機により駆動される油圧ポンプ、乗りかごを昇降駆動する油圧シリンダ、油圧ポンプまたは油タンクと油圧シリンダとの間に接続されて圧油の給排を制御する主弁装置などから構成される。
【0003】
油圧シリンダを上昇させるときには、電動機の回転速度を制御してまたは制御弁により油圧ポンプからの吐出量を可変することによって、油圧シリンダに供給される圧油の流量を調整して油圧シリンダの上昇速度を制御する。油圧シリンダを下降させるときには、主弁装置をオンして油圧シリンダ内の圧油が主弁装置を通って油タンクに排出されるように制御する。油圧シリンダから排出される圧油の流量を調整することにより、油圧シリンダの下降速度が制御される。
【0004】
従来において、乗りかごおよび油圧シリンダの下降時における主弁による圧油制御が異常となった場合に、乗りかごを即時に停止させてその落下を防止するための落下防止弁が、安全弁装置として設けられている(特許文献1)。
【0005】
図11は従来の油圧式エレベータ80の油圧回路図である。
【0006】
図11において、油圧ポンプ81から送出される圧油は、主弁装置82および落下防止弁83を含む主管路KMを経由して、油圧シリンダ86に供給される。これによって乗りかごは上昇する。主弁装置82の切り換えによって、油圧シリンダ86から排出される圧油は、落下防止弁83および主弁装置82を経由して油タンク87に戻る。これによって乗りかごは下降する。
【0007】
落下防止弁83は、ハウジング91の穴の内部を密に摺動するピストン92によって第1の弁室RC11と第2の弁室RC12とに仕切られている。ピストン92には弁体93が一体に設けられており、弁体93が弁座94に密接することによって、第2の弁室RC12は第3の弁室RC13から遮断される。第1の弁室RC11には、ピストン92を第2の弁室RC12の方へ付勢するバネ95が設けられている。
【0008】
落下防止弁83は、チェック機能を持っており、油圧シリンダ86に圧油を供給するときには、主管路KMの圧力によって弁体93が開く。油圧シリンダ86から圧油が排出されるときには、第1の弁室RC11の圧力が低いときにはピストン92が主管路KMの圧力に押されて図の上方へ移動し、弁体93が弁座94から離れて流路が開く。しかし、第1の弁室RC11の圧力が主管路KMの圧力よりも高いかまたは同じときには、バネ95の付勢力も加わって、ピストン92が図の下方へ移動し、弁体93が弁座94に押し付けられて流路が閉じる。
【0009】
オリフィス85は、パイロット流路KP11の流量を絞り、電磁切換え弁84は、ソレノイドがオフのときにパイロット流路KP12を遮断しオンのときにパイロット流路KP12を流通させる。したがって、電磁切換え弁84がオンのときには、パイロット流路KP11がオリフィス85で絞られるので第1の弁室RC11の圧力が低下し、電磁切換え弁84がオフすると、オリフィス85の存在に関係なく第1の弁室RC11の圧力が高くなる。電磁切換え弁84は、油圧式エレベータが停止しているときおよび上昇中はオフであり、下降時にオンとなるように制御される。
【0010】
乗りかごの下降中、つまり油圧シリンダ86の下降中は、落下防止弁83の弁体93は開いているが、異常が発生すると、主弁装置82が遮断されるとともに、電磁切換え弁84がオフとなり、落下防止弁83の弁体93が閉じられる。これによって、主弁装置82が万が一動作しなかった場合でも、落下防止弁83による主管路KMの遮断によって、油圧シリンダ86の下降、つまり乗りかごの落下が防止される。
【0011】
このように、特許文献1の安全弁装置では、主弁に万が一の故障が発生した場合のために、主弁とは別に落下防止弁83を設け、安全のための弁装置の二重化が図られている。
【0012】
また、特許文献1に開示された安全弁装置には、落下防止弁83が作動したときの衝撃を緩和するために、落下防止弁83の作動時における当該落下防止弁83による圧力降下を差圧ΔPとして検出し、当該落下防止弁83による圧油の流れの遮断特性を緩やかにするための、補助弁が設けられている。
【0013】
図12において、補助弁333は、スプール352のストローク位置に応じてパイロット流路KP11における流量を調整する、絞り調整弁の機能を有する。つまり、補助弁333は、ハウジング351の穴の内部をスプール352が密に摺動することによって、パイロット流路KP11の途中のポートPT1とポートPT2との間の油室における流路を絞り調整する。スプール352には、テーパ面部354に続いてランド部355が設けられており、ポートPT1から流入する流路面積は、ポートPT1に対向するテーパ面部354の位置によって決定される。ポートPT1にランド部355が対向した場合には流路が遮断される。
【0014】
ハウジング351の穴の左端部の油室に通じるポートには、パイロット流路KP4が接続されている。その油室には、スプール352を右方向に付勢するバネ358が設けられ、その付勢力を調整するための調整ネジ359が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−196534
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、特許文献1に開示された安全弁装置では、これによって落下防止弁83が作動したときの衝撃が緩和されるが、次の問題がある。
【0017】
すなわち、特許文献1で提案された補助弁では、差圧ΔPによってスプール352を移動させるためのバネ358が、ハウジング351の穴の左端部の油室のみに設けられている。スプール352は、差圧ΔPがないときにはバネ358の付勢力によって右端側に押しつけられ、差圧ΔPが発生すると、バネ358の付勢力に抗して左側へ移動する。
【0018】
このような構造であるから、差圧ΔPによってスプール352を正確にかつ応答性よく移動させるためには、精度の極めて高いバネ358を用いる必要があった。つまり、精度の低いバネを用いた場合には、差圧ΔPが小さいときにスプール352が移動しないいわゆる不感帯が大きくなってしまう。
【0019】
また、油圧シリンダ86の上昇開始時に、主弁装置82から主管路KMに圧油が供給されても、第1の弁室RC11の圧油がすぐには排出されないため、弁体93の開放が遅れる。この点においても、油圧シリンダ86の上昇時の立ち上がり特性に問題があった。また、差圧ΔPが大きくなるため圧力損失が発生し、そこにエネルギーのロスが生じていた。
【0020】
また、特許文献1に開示された安全弁装置では、安全弁装置が確実に動作するか否かという、動作状況のチェックを行えないという問題がある。
【0021】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、落下防止弁が作動したときの衝撃を緩和し、油圧シリンダの上昇時の立ち上がり特性を改善するとともに、安全弁装置の動作状況のチェックを容易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る実施形態の装置は、主弁の制御により油圧シリンダ内に圧油を給排してかごを昇降させる油圧式エレベータの安全弁装置であって、前記油圧シリンダと前記主弁との間の管路に設けられ、異常時において前記油圧シリンダから排出される圧油の流れを遮断する落下防止弁と、前記落下防止弁に発生する差圧によって動作し、当該落下防止弁による圧油の流れの遮断特性を緩やかにするための補助弁と、を有し、前記補助弁は、前記差圧によって移動するスプールと、前記スプールの両端部にそれぞれ設けられ、前記差圧がないときの前記スプールのストローク位置および前記差圧が発生したときの前記スプールの移動量を設定するためのバネ部材と、前記スプールのストローク位置に応じて流路面積が可変調整される可変絞り流路と、前記差圧による前記スプールの移動量が所定以上になったことを検知するストロークセンサと、を有する。
【0023】
好ましくは、前記主弁が開状態となり、前記落下防止弁が閉状態となって、前記ストロークセンサが検知を行ったときに、前記補助弁および前記落下防止弁の動作が正常であるとする信号を出力する、動作確認装置が設けられる。
【0024】
また好ましくは、前記ストロークセンサは、前記油圧シリンダがかごを昇降させる通常の動作による差圧によっては検知することがなく、通常の動作による差圧を越えたときに検知を開始する。
【0025】
また好ましくは、前記ストロークセンサは、前記スプールから軸方向に突出して設けられた先端チップと、当該補助弁のハウジングの側から突出して前記先端チップに対向するように設けられた接点部材と、を有し、前記スプールの移動によって前記先端チップと前記接点部材とが接触しまたは分離するように構成される。
【0026】
また好ましくは、前記先端チップまたは前記接点部材の少なくとも一方が、軸方向に移動可能でありかつバネ部材によって互いに接触する方向に付勢される。
【0027】
なお、本発明における「かご」には、エレベータ用の乗りかごの他に、荷物などを運搬するためのパレットや支持板などが含まれる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、落下防止弁が作動したときの衝撃を緩和し、油圧シリンダの上昇時の立ち上がり特性を改善するとともに、安全弁装置の動作状況のチェックを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る油圧式エレベータの油圧回路の例を示す図である。
【図2】油圧式エレベータの安全弁装置の回路を示す図である。
【図3】補助弁の構造の例を示す断面図である。
【図4】ストロークセンサの検知動作の例を示す図である。
【図5】各部の動作状態の例を示すタイミング図である。
【図6】補助弁の構造の他の例を示す断面図である。
【図7】図6の補助弁の一部を拡大し示す断面図である。
【図8】補助弁の構造のさらに他の例を示す断面図である。
【図9】安全弁装置の動作確認の手順の例を示すフローチャートである。
【図10】安全弁装置の動作確認の手順の他の例を示すフローチャートである。
【図11】従来の油圧式エレベータの油圧回路図である。
【図12】従来の補助弁の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1において、油圧式エレベータ1は、油圧ポンプ11、主弁装置12、フィルタ13、安全弁装置14、油圧シリンダ15、油タンク16、および制御装置17などからなっている。
【0031】
油圧ポンプ11は、図示しない電動機によって回転駆動される。回転速度を制御することによって圧油の吐出量を制御し、これによって乗りかごの上昇時の速度を制御することが可能である。
【0032】
また、電動機を停止した状態で、主弁装置12を制御することによって、油圧シリンダ15から排出される圧油の流量を制御し、これによって乗りかごの下降時の速度を制御することが可能である。また、上昇時および下降時のいずれにおいても、高速と低速とを切り換えて制御することが可能である。これらの制御は制御装置17によって行われる。
【0033】
主弁装置12は、チェック弁21、チェック付き流量調整弁22、流量調整弁23、および圧力調整弁24などからなる。乗りかごの上昇時には、油圧ポンプ11からの圧油がチェック弁21を経由して主管路KMに送出され、フィルタ13および安全弁装置14を経て油圧シリンダ15に供給される。流量調整弁23によって流量の調整が可能である。
【0034】
乗りかごの下降時には、油圧シリンダ15から主管路KMに排出される圧油は、安全弁装置14およびフィルタ13を経由し、チェック付き流量調整弁22を経て油タンク16に戻る。フィルタ13は、主管路KM中の異物の除去などを行う。
【0035】
図2において、安全弁装置14は、落下防止弁31、電磁切換え弁32、補助弁33、オリフィス34、オリフィス35、フィルタ36、およびフィルタ37などから構成される。
【0036】
落下防止弁31は、ハウジング41に設けられた円柱状の穴の内部を密に摺動するピストン42によって第1の弁室RC1と第2の弁室RC2とに仕切られている。ピストン42には弁体43が一体に設けられており、弁体43が弁座44に密着することによって、第2の弁室RC2と第3の弁室RC3とが互いに遮断される。第1の弁室RC1には、ピストン42を第2の弁室RC2の方へ付勢するバネ45が設けられている。
【0037】
落下防止弁31は、チェック機能を持っており、油圧シリンダ15に圧油を供給するときには、主管路KMの油圧力によって弁体43が開く。油圧シリンダ15から圧油が排出されるときには、第1の弁室RC1の圧力が低いときにはピストン42が主管路KMの圧力に押されて図2の上方へ移動し、弁体43が弁座44から離れて流路が開く。しかし、第1の弁室RC1の圧力が主管路KMの圧力よりも高いかまたは同じときには、バネ45の付勢力も加わって、ピストン42が図2の下方へ移動し、弁体43が弁座44に押し付けられて流路が閉じる。
【0038】
図3に示されるように、補助弁33は、スプール52のストローク位置Lに応じてパイロット流路KP1における流量を調整するという、絞り調整弁の機能を有する。つまり、補助弁33は、ハウジング51の穴の内部をスプール52が密に摺動することによって、パイロット流路KP1の途中のポートPT1とポートPT2との間の油室HR1における流路を絞り調整する。
【0039】
つまり、スプール52には、ランド部55が設けられており、ポートPT1から流入する流路面積は、ポートPT1に対向するランド部55の位置によって決定される。ポートPT1には、図2に示すような穴61が設けられており、ランド部55の位置によって穴61の塞がれる部分が変化する。これにより、スプール52のストローク位置Lに応じて流路面積が可変調整される。ポートPT1の穴61の全体にランド部55が対向した場合には、流路が遮断される。
【0040】
ハウジング51の穴の右端部の油室HR2に通じるポートPT3にもパイロット流路KP1が接続され、スプール52の右側の端面にパイロット流路KP1の圧力が加わるようになっている。また、スプール52には、シールのためのパッキン57およびラビリンス溝53、56が設けられている。
【0041】
ハウジング51の穴の左端部の油室HR3に通じるポートPT4には、パイロット流路KP4が接続されている。油室HR3には、スプール52を右方向に付勢するバネ58aが設けられ、その付勢力を調整するための調整ネジ59aが設けられている。
【0042】
ハウジング51の穴の右端部の油室HR2には、スプール52を左方向に付勢するバネ58bが設けられ、その付勢力を調整するための調整ネジ59bが設けられている。
【0043】
これら、2つのバネ58a、58bによって、差圧ΔPがない自由状態におけるストローク位置LN、つまり油室HR2と油室HR3との間に差圧がないときのスプール52のストローク位置LNが設定され、かつ、差圧が発生したときのスプール52の移動量が設定される。
【0044】
つまり、そのようなストローク位置LNは、バネ58a、58bの自由長さおよびバネ定数などによって設定され、また、調整ネジ59a,59bの調整位置(ストローク位置)によっても可変される。
【0045】
なお、調整ネジ59a,59bは、スプール52の最大の移動量を規制する規制部材を兼ねている。つまり、本実施形態において、スプール52は、調整ネジ59a,59bの先端部に当接した場合にはそれ以上移動しないようになっており、スプール52のストローク長さが調整ネジ59a,59bによって規制されている。
【0046】
スプール52のストローク位置Lを検出するために、ストロークセンサSE1,2が設けられている。これらストロークセンサSE1,SE2は、例えばスプール52の移動量が所定以上になったことを検出し、それぞれ検出したときに検出信号S1,S2を出力する。
【0047】
すなわち、図4に示すように、ストロークセンサSE1は、スプール52がストローク位置LNよりも図3の左方へ移動し、所定のストローク位置L1を越えたときにオンとなり、それ以外はオフとなる検出信号S1を出力する。
【0048】
また、ストロークセンサSE2は、スプール52がストローク位置LNよりも図3の左方へ移動し、所定のストローク位置L2を越えたときにオフとなり、それ以外はオンとなる検出信号S2を出力する。
【0049】
図4に示すように、安全弁装置14および油圧式エレベータ1の通常の動作では、スプール52のストローク位置Lは通常動作ストローク範囲LNH内である。つまり、通常の動作における乗りかごの下降時には、スプール52はストローク位置LNよりも少し左側にまで移動し、通常の動作における乗りかごの上昇時には、スプール52はストローク位置LNよりも少し右側にまで移動する。
【0050】
ストロークセンサSE1,SE2の検出信号S1,S2は、通常の動作においては、オンオフの変化はない。つまり、通常の動作においては、差圧ΔPが余り大きくなることがなく、通常の動作において生じる差圧ΔPの範囲内においては、ストロークセンサSE1の検出信号S1はオフの状態を維持しており、ストロークセンサSE2の検出信号S2はオンの状態を維持している。
【0051】
そして、ストロークセンサSE1,SE2は、通常の動作による差圧を越えたときに、検知を開始する。つまり、通常の動作における乗りかごの下降時に生じる差圧を越えたときに、スプール52のストローク位置Lは通常動作ストローク範囲LNHを越え、まずストロークセンサSE2がオンからオフに変化し、その後にストロークセンサSE1がオフからオンに変化する。
【0052】
このように、ストロークセンサSE1,2は、いずれも、差圧によるスプール52の移動量が所定以上になったことを検知し、それぞれのタイミングで検出信号S1,S2を変化させる。
【0053】
なお、ストロークセンサSE1,2の検知のタイミングは、上に述べたように互いに少しずれているが、同じタイミングで検知するようにしてもよい。
【0054】
ストロークセンサSE1,2として、磁気近接センサ、静電容量検出センサ、光電センサ、超音波センサ、リミットスイッチ、その他のセンサを用いることが可能である。
【0055】
パイロット流路KP1とパイロット流路KP4とは、それぞれ、落下防止弁31の第2の弁室RC2または第3の弁室RC3に接続されているため、第2の弁室RC2と第3の弁室RC3との差圧ΔPが、補助弁33の油室HR1,2と油室HR3との間に加わることとなる。
【0056】
差圧ΔPがほぼ「0」である場合には、スプール52は2つのバネ58a、58bの付勢力が釣り合ったストローク位置LNで静止し、その状態ではポートPT1は半分程度が解放されており、パイロット流路KP1は大きくは絞られていない。但し、オリフィス34によって、パイロット流路KP1における最小限の絞りが与えられ、つまり最大流量が制限され、パイロット流路KP3が解放された場合には、第1の弁室RC1に圧力の低下が発生するようになっている。
【0057】
油圧シリンダ15からの圧油の排出時において、差圧ΔPが増大するにつれて、つまりパイロット流路KP1の圧力が上昇するにつれて、スプール52はバネ58aに抗して左方向に移動し、その移動量(ストローク)ΔLに応じて、ランド部55によってポートPT1の部分が塞がれて行き、その結果、パイロット流路KP1が絞られていくこととなる。
【0058】
パイロット流路KP1が絞られるにしたがって、圧油がパイロット流路KP1を介して落下防止弁31の第1の弁室RC1に流入する際に、その単位時間当たりの流入量が少なくなることから、流入に時間がかかり、ピストン42および弁体43の移動速度が遅くなる。したがって、それに応じて、落下防止弁31における弁体43による流路の遮断が緩やかに行われることとなる。
【0059】
なお、補助弁33によってパイロット流路KP1が完全に遮断された場合であっても、それと並列に接続されたパイロット流路KP2のオリフィス35によって、最小限の流量が確保されるようになっている。
【0060】
換言すれば、パイロット流路KP1,2について、絞り量は補助弁33によって調整され、その最大絞り(最小流量)はオリフィス35によって制限され、最小絞り(最大流量)はオリフィス34によって制限される。
【0061】
また、油圧シリンダ15への圧油の供給時において、初期状態では落下防止弁31が閉じており、差圧ΔPが大きい。この状態から、落下防止弁31が開くためには、第1の弁室RC1内の圧油を排出する必要がある。
【0062】
その際に、差圧ΔPが大きいため、つまりパイロット流路KP4の圧力が大きいため、補助弁33において、スプール52はバネ58bに抗して右方向に移動し、その移動量(ストローク)に応じて、ポートPT1の穴61がランド部55から開放され、つまり流路面積が大きくなり、その結果、パイロット流路KP1が開放される。これにより、第1の弁室RC1内の圧油は、パイロット流路KP1およびポートPT1を経由して、油圧シリンダ15の方へ迅速に排出される。
【0063】
その結果、落下防止弁31が高速で開放され、油圧シリンダ15への圧油の供給時における圧油の流れの立ち上がり特性が速くなる。
【0064】
このように、補助弁33において、スプール52の両側に2つのバネ58a、58bを対向させることにより、差圧ΔPがないときにはスプール52の位置をニュートラル状態(ストローク位置LN)とする。そして、差圧ΔPが発生したときに、差圧ΔPの正負の両方向に対し、スプール52にリニアな動きを持たせることができる。つまり、スプール52は、差圧ΔPにほぼ比例して敏感に移動し、不感帯がなくなる。
【0065】
これにより、油圧シリンダ15の下降時において、差圧ΔPにともなってポートPT1の流路面積の調整を行い、絞り量の調整を行うことができる。また、油圧シリンダ15の上昇開始時において、差圧ΔPによるポートPT1の流路面積の増大を図り、パイロット流路KP1の管路抵抗を低減することにより、落下防止弁31の開放の立ち上がりを速く且つ開放を円滑に行う。これにより、油圧シリンダ15の上昇時の立ち上がり特性が改善され、また、落下防止弁31による圧力損失が低減され、エネルギーのロスが抑制される。
【0066】
また、2つのバネ58a、58bは、互いに対向しかつ圧縮した状態で取り付けられるので、調整ネジ59a,59bによって初期の付勢力を調整することにより、バネ58a、58bの寸法およびバネ定数などのバラツキを吸収することができる。したがって、バネ58a、58bの精度が低い場合であっても、調整ネジ59a,59bによる調整によってスプール52のストローク位置LNおよび移動量ΔLを精密に調整することができる。
【0067】
また、スプール52の移動量(全ストローク)が、バネが1つの場合の2倍となるとともに、スプール52は、異常時のみでなく通常の運転時において移動するので、パッキン57の劣化とスプール52の長期間にわたる静止状態とに起因するスプール52の固着現象を回避することができる。これにより、補助弁33において安定した作動が確保できる。
【0068】
図5において、電動機がオンし、主弁装置12に上昇高速の信号を送ると、油圧シリンダ15は高速で上昇し、上昇低速の信号だけになると、油圧シリンダ15は低速で上昇し、やがて次の階で停止する。この間において、電磁切換え弁32はオフしており、落下防止弁31の差圧ΔPは油圧シリンダ15の速度にほぼ対応して正の範囲で増減し、スプール52は差圧ΔPに応じて右方へ移動し、ポートPT1の流路面積はほぼ最大を維持する。
【0069】
主弁装置12に下降高速の信号を送ると、油圧シリンダ15は高速で下降し、下降低速の信号だけになると、油圧シリンダ15は低速で下降し、やがて次の階で停止する。この間において、電磁切換え弁32はオンしており、落下防止弁31の差圧ΔPは油圧シリンダ15の速度にほぼ対応して負の範囲で増減し、スプール52は差圧ΔPに応じて左方へ移動し、ポートPT1の流路面積は絞られる。
【0070】
油圧式エレベータ1は、上のように構成されているので、電磁切換え弁32がオンのときには、パイロット流路KP1が補助弁33で絞られ、第1の弁室RC1の圧力が低下する。電磁切換え弁32がオフすると、第1の弁室RC1の圧力は、主管路KMのパイロット流路KP1の側とほぼ同じに高くなる。電磁切換え弁32は、油圧式エレベータ1が下降時正常に運転されている間はオンであり、何らかの異常が生じたときにオフとなるように制御される。
【0071】
例えば、乗りかごが所定のフロアで停止する際に、その停止位置が許容された範囲を越えた場合などである。これらの異常は、適所に設けられたセンサにより検出され、その検出信号に基づいて異常信号が生成される。
【0072】
乗りかごの下降中、つまり油圧シリンダ15の下降中は、落下防止弁31の弁体43は開いているが、異常が発生すると、主弁装置12が遮断されるとともに、電磁切換え弁32がオフとなり、落下防止弁31の弁体43が閉じられる。これによって、乗りかごの落下が防止される。
【0073】
しかも、そのときに、弁体43が閉じられるにしたがってパイロット流路KP1の圧力が高くなり、差圧ΔPが大きくなるので、パイロット流路KP1が絞られ、その結果、第1の弁室RC1に流入する圧油の流量が少なくなり、弁体43による主管路KMの遮断が急激に行われることなく、主管路KMの流量が滑らかに減少し、油圧シリンダ15および乗りかごに与える衝撃が緩和される。
【0074】
さらに、乗りかごが正常に下降しているときにも、差圧ΔPに応じて補助弁33の絞り量が可変され、絞り量に応じて落下防止弁31の第1の弁室RC1の圧力が調整され、これによって弁体43の開口度合いが調整される。そのため、弁体43の開口度合いが従来のように常にフルオープンとなることがなく、主管路KMの流量にほぼ比例した開口度合いとなり、異常時において落下防止弁31による遮断するときの弁体43の応答性が向上する。
【0075】
なお、上のように油圧式エレベータ1が正常に運転されている間においては、図4に示したように、スプール52のストローク位置Lは通常動作ストローク範囲LNH内であり、ストロークセンサSE1,SE2の検出信号S1,S2にオンオフの変化はない。
【0076】
さて、ストロークセンサSE1,2の検出信号S1,2を用いることによって、補助弁33、安全弁装置14、および主弁装置12の動作状況のチェックを容易に行うことができる。動作状況のチェックには、安全弁装置14のチェック(チェック1)と、主弁装置12のチェック(チェック2)とがある。
【0077】
まず、チェック1について説明する。
【0078】
すなわち、油圧式エレベータ1の下降運転中に何らかの異常が生じたときに、電磁切換え弁32がオフとなるが、電磁切換え弁32のオフによって落下防止弁31が閉じる。落下防止弁31が確実に閉じた場合には、その瞬間に大きな差圧ΔPが発生するので、この大きな差圧ΔPを検出することによって、落下防止弁31が確実に閉じたことをチェックすることができる。
【0079】
そこで、本実施形態においては、落下防止弁31が閉じたときに発生する大きな差圧ΔPを、ストロークセンサSE1,2によって検出する。
【0080】
すなわち、大きな差圧ΔPが発生すると、スプール52はバネ58aに抗して図3の左方端にまで移動する。そのときに、ストロークセンサSE2はオンからオフに変化し、ストロークセンサSE1はオフからオンに変化する。
【0081】
したがって、チェックに当たって、まず、ストロークセンサSE1がオフでありストロークセンサSE2がオンである、通常動作時とする。このとき、主弁装置12を開としておく。また、油圧ポンプ11は停止させておく。この状態で、電磁切換え弁32をオフしたときに、ストロークセンサSE1がオンとなりかつストロークセンサSE2がオフとなれば、落下防止弁31が閉じて大きな差圧ΔPが発生したこと、およびその差圧ΔPによってスプール52が所定の動作を行ったことが検証される。
【0082】
つまり、このような検証を行うことにより、補助弁33および安全弁装置14が正常に動作することを容易にチェックすることができる。
【0083】
後は、落下防止弁31が閉じた状態において、漏れがないかどうかをチェックしておけばよい。漏れがないかどうかのチェックは、例えば、所定の経過時間における乗りかごの沈下量が規定量以内であるかどうかを確認すればよい。
【0084】
すなわち、チェック1では、図9に示すように、電磁切換え弁32をオフし(#11)、主弁装置12を開とし、油圧ポンプ11を停止させる(#12)。ストロークセンサSE1の検出信号S1がオンとなりかつストロークセンサSE2の検出信号S2がオフとなり(#13でイエス)、乗りかごの沈下量が規定量以内であれば(#14でイエス)、安全弁装置14は正常であると判断する(#15)。ステップ#13または14においてノーであれば、安全弁装置14が異常であると判断する(#16)。
【0085】
次に、チェック2について説明する。
【0086】
電磁切換え弁32をオンとし、主弁装置12をオフとする。また、油圧ポンプ11は停止させておく。この状態では、落下防止弁31は閉じた状態となる。落下防止弁31が閉じた状態で、主弁装置12に漏れがなければ、差圧ΔPはゼロとなる。したがって、補助弁33のスプール52はニュートラルのストローク位置LNであり、ストロークセンサSE1はオフ、ストロークセンサSE2はオンとなる。
【0087】
もし主弁装置12に漏れがある場合には、落下防止弁31が閉じているので、差圧ΔPが生じ、補助弁33のスプール52が差圧ΔPによって移動し、その結果、ストロークセンサSE1がオンになりストロークセンサSE2がオフとなる。
【0088】
したがって、ストロークセンサSE1,2の検出信号S1,2によって、主弁装置12に漏れがないかどうか、つまり主弁装置12が正常に動作するか否かを容易にチェックすることができる。
【0089】
これと同時に、補助弁33のスプール52が正常な動作をしていること、および電磁切換え弁32が正常に動作していることも確認されたこととなる。
【0090】
後は、その状態において、所定の経過時間における乗りかごの沈下量が規定量以内であるかどうかを確認すればよい。
【0091】
すなわち、チェック2では、図10に示すように、主弁装置12を閉とし、油圧ポンプ11を停止させ、電磁切換え弁32をオンする(#21)。ストロークセンサSE1の検出信号S1がオンとなりかつストロークセンサSE2の検出信号S2がオフとなり(#22でイエス)、乗りかごの沈下量が規定量以内であれば(#23でイエス)、主弁装置12は正常であると判断する(#24)。ステップ#22または23においてノーであれば、主弁装置12が異常であると判断する(#25)。
【0092】
なお、ストロークセンサSE1,2のオンまたはオフの状態は、検出信号S1,2の状態を適当な表示装置に表示させ、または検出信号S1,2によって適当な表示灯を点灯させまたはブザーなどを鳴らすようにしておくことによって、容易に確認できる。そのような表示装置、表示灯、またはブザーなどは、制御装置17に設けられている。したがって、制御装置17は、本発明における動作確認装置の一例である。
【0093】
なお、制御装置17は、上に述べたような電気部品の他、操作スイッチ、CPU、メモリ、その周辺回路素子、プリント基板、およびその他の電気回路素子などのハードウエアおよびソフトウエアなどを含んで構成することが可能である。
【0094】
また、上のチェック1,2における補助弁33のスプール52のストローク位置Lは、1つのストロークセンサSE1のみでも確認することが可能である。しかし、2つのストロークセンサSE1,2のアンド(論理積)をとることによって、確認の信頼性が格段に向上する。
【0095】
このように、本実施形態の油圧式エレベータ1は、乗りかごの落下防止のための安全装置として、主弁装置12による落下防止と安全弁装置14による落下防止との二重の落下防止が備えられている。しかも、それら二重の落下防止が確実に動作するか否かを、それぞれ独立してチェックすることができるのである。
【0096】
このようなチェックを含むモニタリングを、例えば1日に1回以上行うことによって、主弁装置12、安全弁装置14ともに、正常に動作するか、油漏れがないかなどがチェックされ、2重系ブレーキとして運用されることとなる。
【0097】
次に、補助弁33の具体例について説明する。ここでは、第1の実施例の補助弁33B、および第2の実施例の補助弁33Cを説明する。なお、補助弁33B,33Cにおいて、上に述べた補助弁33と同じ機能を有する部分については、同じ符号を付しまたは「B」「C」を追加した符号を付して説明を省略しまたは簡略化することがある。
【0098】
まず、第1の実施例の補助弁33Bについて説明する。
【0099】
図6および図7に示す補助弁33Bにおいて、ハウジング51Bに設けられた孔の左側には、スリーブ121,122が挿入され、ボスネジ部材123がハウジング51Bにネジ込まれて取り付けられる。ボスネジ部材123には、配線の保護のためにゴムなどからなるカバー126が被せられる。
【0100】
スリーブ121には、周方向の4ヵ所に孔が設けられ、これがポートPT1となる。スリーブ122には、周方向の4ヵ所に切り欠きが設けられ、これがポートPT2となる。また、スリーブ122の他の周方向の4ヵ所に孔が設けられ、これがポートPT4となる。
【0101】
スリーブ121,122の内周面には、スプール52Bが摺動可能に挿入される。スプール52Bは、2つのバネ58aB、58bBによって、差圧ΔPがない自由状態におけるストローク位置LNが設定され、かつ、差圧ΔPが発生したときのスプール52Bの移動量が設定される。
【0102】
スプール52Bの左右に、接点式のストロークセンサSE1B,2Bが形成されている。
【0103】
まず、ストロークセンサSE1Bについて説明する。
【0104】
スプール52Bの左端面には、コンタクトチップ131がネジ込まれている。コンタクトチップ131には、その先端部に径小孔が、径小孔に続いて径大孔が、それぞれ設けられる。径小部、径大部、および径小部からなる3段の円柱状の先端チップ132が、コンタクトチップ131の径大孔内に摺動可能に挿入され、かつその先端の径小部が径小孔から軸方向左側の外方に突出している。先端チップ132は、コンタクトチップ131の径大孔に装着された圧縮バネ133によって、軸方向左側に付勢されている。
【0105】
他方、ボスネジ部材123には、その中心部に設けられたネジ孔に、調整ネジ部材135がネジ込まれている。調整ネジ部材135のネジ部には、圧着端子136を挟んでナット137が締め付けられ、これによって固定される。
【0106】
調整ネジ部材135の中心部に設けられた孔には、タイボルト138が挿通される。タイボルト138の右端部には雄ネジが設けられ、絶縁カラー139を挟んだ状態で、その雄ネジに接点部材140が締め付けられている。絶縁カラー139は、調整ネジ部材135の右端の開口部の内周面に嵌まり込み、これによって、タイボルト138を調整ネジ部材135の内周面に接触しない状態で支持する。
【0107】
タイボルト138の左端部には雄ネジが設けられ、絶縁カラー141を挟んだ状態で、その雄ネジにナット142が締め付けられ、さらに圧着端子143を挟んでロックナット144が締め付けられている。
【0108】
絶縁カラー141は、調整ネジ部材135の左端の開口部の内周面に嵌まり込み、これによって、タイボルト138を調整ネジ部材135の内周面に接触しない状態で支持する。
【0109】
ハウジング51B、スリーブ121,122、ボスネジ部材123、スプール52B、コンタクトチップ131、先端チップ132、圧着端子136、ナット137、タイボルト138、接点部材140、ナット142,144、および圧着端子143は、金属材料または導電材料からなる。特に、先端チップ132および接点部材140には、接点として相応しい材料が用いられる。
【0110】
したがって、先端チップ132は、コンタクトチップ131、スプール52B、スリーブ121,122、ハウジング51B、およびボスネジ部材123を介して圧着端子136と電気的に接続されている。
【0111】
また、接点部材140は、タイボルト138、およびナット142を介して圧着端子143と電気的に接続されている。
【0112】
図の状態からスプール52Bが左方に移動したとき、その移動量が所定以上になると、先端チップ132が接点部材140に当接する。スプール52Bがさらに左方に移動すると、先端チップ132は接点部材140に当接した状態で停止し、圧縮バネ133が圧縮する。
【0113】
先端チップ132が接点部材140に当接した状態では、それらが電気的に接続されるので、圧着端子136と圧着端子143との間が道通する(オンする)ことになる。
【0114】
つまり、先端チップ132と接点部材140とのオンオフによる「a接点」が構成されており、これらによって「a接点」のストロークセンサSE1Bが形成されている。
【0115】
ストロークセンサSE1Bは、スプール52Bの移動量が所定以上になったときにオンし、検出信号S1を出力する。圧着端子136,143にそれぞれ電線を接続しておくことによって、検出信号S1が取り出される。
【0116】
先端チップ132が接点部材140に当接する位置は、ナット137を緩めた状態で、調整ネジ部材135を回転させることによって調整することができる。つまり、調整ネジ部材135によって、図4におけるストローク位置L1を調整することができる。
【0117】
次に、ストロークセンサSE2Bについて説明する。
【0118】
スプール52Bの右端面には、コンタクトチップ151がネジ込まれている。コンタクトチップ151には、その先端部に径小孔が、径小孔に続いて径大孔が、それぞれ設けられる。3段の円柱状の先端チップ152が、コンタクトチップ151の径大孔内に摺動可能に挿入され、かつその先端の径小部が径小孔から軸方向右側の外方に突出している。先端チップ152は、コンタクトチップ151の径大孔に装着された圧縮バネ153によって、軸方向右側に付勢されている。
【0119】
ハウジング51Bに設けられた孔の右側の開口部には、ボスネジ部材124がネジ込まれている。
【0120】
ボスネジ部材124には、その中心部に設けられた孔には、タイボルト158が挿通される。タイボルト158の左端部には雄ネジが設けられ、絶縁カラー159を挟んだ状態で、その雄ネジに接点部材160が締め付けられている。絶縁カラー159は、ボスネジ部材124の左端の開口部の内周面に嵌まり込み、これによって、タイボルト158をボスネジ部材124の内周面に接触しない状態で支持する。
【0121】
タイボルト158の右端部には雄ネジが設けられ、絶縁カラー161を挟んだ状態で、その雄ネジにナット162が締め付けられ、さらに圧着端子163を挟んでロックナット164が締め付けられている。
【0122】
絶縁カラー161は、ボスネジ部材124の右端の開口部の内周面に嵌まり込み、これによって、タイボルト158をボスネジ部材124の内周面に接触しない状態で支持する。
【0123】
コンタクトチップ151、先端チップ152、タイボルト158、接点部材160、ナット162,164、および圧着端子163は、金属材料または導電材料からなる。
【0124】
したがって、先端チップ152は、コンタクトチップ151、スプール52B、スリーブ121,122、ハウジング51B、およびボスネジ部材123を介して圧着端子136と電気的に接続されている。
【0125】
また、接点部材160は、タイボルト158、およびナット162を介して圧着端子163と電気的に接続されている。
【0126】
図6の状態では、先端チップ152と接点部材160とが当接し、それらが電気的に接続されている。つまり、圧着端子136と圧着端子163との間が道通(オン)している。なお、先端チップ152は接点部材160によって右方へ押され、圧縮バネ153を圧縮した状態である。
【0127】
図6の状態からスプール52Bが左方に移動したとき、その移動量が所定以上になると、先端チップ152が接点部材160から離れ、圧着端子136と圧着端子163との間が非道通(オフ)となる。
【0128】
つまり、先端チップ152と接点部材160とのオンオフによる「b接点」が構成されており、これらによって「b接点」のストロークセンサSE2Bが形成されている。
【0129】
ストロークセンサSE2Bは、スプール52Bの移動量が所定以上になったときにオフし、検出信号S2を出力する。圧着端子136,163にそれぞれ電線を接続しておくことによって、検出信号S2が取り出される。
【0130】
なお、図6において、ポートPT1とポートPT3とを接続する流路171には、穴加工の後の開口部を塞ぐためのプラグ172,173がネジ込まれている。また、各部材のシールが必要な箇所にはそれぞれOリングなどのパッキンが装着されている。
【0131】
次に、第2の実施例の補助弁33Cについて説明する。
【0132】
図8に示すように、第2の実施例の補助弁33Cでは、第1の実施例の補助弁33Bと同じ構成の1つのストロークセンサSE1Bのみが設けられている。つまり、第2の実施例の補助弁33Cは、第1の実施例の補助弁33BからストロークセンサSE2Bを除去した構造である。
【0133】
補助弁33Cでは、スプール52Cの右端面に設けられたボス251が、ボスネジ部材124の先端部225と対向する。これによって、スプール52Cの右側のストローク端が規制される。
【0134】
補助弁33B,33Cによると、機械的なストロークセンサSE1Bによって、スプール52B,Cのストローク位置Lを確実に検出することができ、安全弁装置14などの動作状況のチェックを容易に行うことができる。
【0135】
特に、補助弁33Bでは、2つのストロークセンサSE1B,2Bが設けられているので、スプール52Bのストローク位置Lの検出の信頼性が極めて高い。
【0136】
上に述べた実施形態および実施例において、補助弁33,33B,33Cの絞り調整が適度であれば、オリフィス34,34B、35,35Bを省略することも可能である。
【0137】
その他、補助弁33,33B,33C、安全弁装置14、主弁装置12、制御装置17、および油圧式エレベータ1の全体または各部の構造、形状、寸法、個数、材質、回路などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0138】
1 油圧式エレベータ
11 油圧ポンプ
12 主弁装置(主弁)
14 安全弁装置
17 制御装置(動作確認装置)
31 落下防止弁(遮断弁装置)
32 電磁切換え弁(切換え弁)
33,33B,33C 補助弁
35 オリフィス(絞り弁)
52,52C,52C スプール
55 ランド部(可変絞り流路)
61 穴(可変絞り流路)
58a,58b,58aB,58bB バネ(バネ部材)
SE1,SE2,SE1B,SE2B ストロークセンサ
51B ハウジング
132 先端チップ
133 圧縮バネ(バネ部材)
140 接点部材
ΔP 差圧
KM 主管路(管路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主弁の制御により油圧シリンダ内に圧油を給排してかごを昇降させる油圧式エレベータの安全弁装置であって、
前記油圧シリンダと前記主弁との間の管路に設けられ、異常時において前記油圧シリンダから排出される圧油の流れを遮断する落下防止弁と、
前記落下防止弁に発生する差圧によって動作し、当該落下防止弁による圧油の流れの遮断特性を緩やかにするための補助弁と、
を有し、
前記補助弁は、
前記差圧によって移動するスプールと、
前記スプールの両端部にそれぞれ設けられ、前記差圧がないときの前記スプールのストローク位置および前記差圧が発生したときの前記スプールの移動量を設定するためのバネ部材と、
前記スプールのストローク位置に応じて流路面積が可変調整される可変絞り流路と、
前記差圧による前記スプールの移動量が所定以上になったことを検知するストロークセンサと、
を有することを特徴とする油圧式エレベータの安全弁装置。
【請求項2】
前記主弁が開状態となり、前記落下防止弁が閉状態となって、前記ストロークセンサが検知を行ったときに、前記補助弁および前記落下防止弁の動作が正常であるとする信号を出力する、動作確認装置が設けられている、
請求項1記載の油圧式エレベータの安全弁装置。
【請求項3】
前記ストロークセンサは、前記油圧シリンダがかごを昇降させる通常の動作による差圧によっては検知することがなく、通常の動作による差圧を越えたときに検知を開始する、
請求項1または2記載の油圧式エレベータの安全弁装置。
【請求項4】
前記ストロークセンサは、
前記スプールから軸方向に突出して設けられた先端チップと、
当該補助弁のハウジングの側から突出して前記先端チップに対向するように設けられた接点部材と、を有し、
前記スプールの移動によって前記先端チップと前記接点部材とが接触しまたは分離するように構成されている、
請求項1ないし3のいずれかに記載の油圧式エレベータの安全弁装置。
【請求項5】
前記先端チップまたは前記接点部材の少なくとも一方が、軸方向に移動可能でありかつバネ部材によって互いに接触する方向に付勢されている、
請求項4記載の油圧式エレベータの安全弁装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の油圧式エレベータの安全弁装置の動作状態確認方法であって、
前記主弁を開とした状態で前記落下防止弁を閉じたときに、前記ストロークセンサが前記検知を行った場合に、前記安全弁装置の動作状態が正常であるとする、
ことを特徴とする安全弁装置の動作状態確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−148583(P2011−148583A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10756(P2010−10756)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000204240)株式会社TAIYO (63)
【Fターム(参考)】