説明

油圧式オートテンショナ

【課題】油圧式オートテンショナの組立ての容易化を図ることである。
【解決手段】プランジャ19、チェックバルブ25およびプランジャスプリング23が組み込まれたバルブスリーブ12の開口端に複数の曲げ起こし可能な爪片27を設けてプランジャ19を抜止めし、プランジャ19、プランジャスプリング23、チェックバルブ25およびバルブスリーブ12からなる分解可能な油圧ダンパユニットAを形成する。バルブスリーブ12内が作動油で満たされた油圧ダンパユニットAをシリンダ11内に挿入し、そのシリンダ11内に作動油を充填し、リターンスプリング18およびプッシュロッド16の組込み後、シリンダ11の上端開口をシール部材13の組込みにより密閉して油圧式オートテンショナの組立てとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関のカム軸駆動用ベルト伝動装置におけるタイミングベルトや補機駆動用ベルトの張力を一定に保持する油圧式オートテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内燃機関に組込まれたカム軸駆動用ベルト伝動装置においては、機関運転時の機関本体の熱膨張による軸間距離の変化や経年変化によるタイミングベルト(以下、単にベルトという)の伸びによって、そのベルトの張力が変化する。
【0003】
このため、上記のようなベルト伝動装置においては、ベルトに油圧式オートテンショナの調整力を付与し、ベルトの張力を一定に保持して、ベルトのバタツキによる異音の発生や歯飛びを防止するようにしている。
【0004】
上記油圧式オートテンショナとして、底付きスリーブが内嵌合されたシリンダの上部開口をシール部材の組込みにより密閉して、シリンダ内部に充填された作動油の油面上に空気溜りを設け、そのシール部材をスライド自在に貫通するプッシュロッドのスリーブ内部に位置する下端部に摺動可能なプランジャを設け、そのプランジャの下方に形成された圧力室内の油圧によるダンパ作用と、シリンダ内に組み込まれたリターンスプリングが上記プッシュロッドを外方に向けて押圧する作用によってベルトの張力を一定に保持するようにした気液二相構造の油圧式オートテンショナが従来から知られている。
【0005】
ところで、従来から知られているこの種の油圧式オートテンショナにおいては、その組立において、プッシュロッドの下端部に接続されたプランジャをスリーブ内に挿入する際に、スリーブ内に先に組込まれたプランジャスプリングや予め充填された作動油の影響を受けてプランジャに傾きを生じることが多く、オートテンショナの組立てに非常に手間がかかるという不都合があった。
【0006】
そのような不都合を解消するため、特許文献1においては、プランジャスプリングの自然状態での長さを、スリーブの開口端部内にプランジャの下部が挿入される状態で、そのプランジャの下面に当接することのない長さとし、そのプランジャスプリングをスリーブ内に挿入し、かつ、スリーブ内にプランジャスプリングが浸かる程度の作動油を充填し、一方、リターンスプリングおよびシール部材が嵌合されたプッシュロッドの下端部をプランジャの上部に形成されたロッド挿入孔に挿入して油圧ダンパユニットを形成し、その油圧ダンパユニットを上記プランジャを先にしてシリンダ内に挿入し、上記プッシュロッドの押し込みによりスリーブ内にプランジャを挿入した後、シリンダの上部開口から作動油を注入してシリンダの上部開口をシール部材で密閉するようにした油圧式オートテンショナの組立方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4251885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載された油圧式オートテンショナにおいては、スリーブに対するプランジャの挿入前および挿入後の2回に分けて作動油を注入する必要があり、しかも、スリーブ内にプランジャを挿入する際に圧力室に空気が残るため、空気抜きの作業が必要であり、油圧式オートテンショナの組立ての容易化を図る上において改善すべき点が残されていた。
【0009】
この発明の課題は、気液二相構造の油圧式オートテンショナの組立ての容易化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、この発明においては、下部が閉塞するシリンダの内部に鋼製の底付きのバルブスリーブを挿入し、そのバルブスリーブの内部にプランジャを摺動自在に組み込んで、その下方に圧力室と、上方にリザーバ室とを形成し、前記シリンダの上部開口を密封してシリンダの内部に封入された作動油上に空気溜りを形成するシール部材を設け、そのシール部材をスライド自在に貫通するプッシュロッドの下端部を前記プランジャの上部に形成されたロッド挿入孔に挿入し、前記プランジャには圧力室とリザーバ室とを連通する通路を設け、その通路に圧力室の圧力がリザーバ室の圧力より高くなると通路を閉じるチェックバルブを設け、前記圧力室にはプランジャをプッシュロッドに向けて付勢するプランジャスプリングを組込み、前記プッシュロッドをリターンスプリングによりシリンダの上端開口から突出する方向に向けて付勢した油圧式オートテンショナにおいて、前記プランジャがバルブスリーブの上側開口からぬけ出るのを防止する着脱可能な抜止め手段を設けて、バルブスリーブ、プランジャ、チェックバルブおよびプランジャスプリングからなる分解可能な油圧ダンパユニットを形成した構成を採用したのである。
【0011】
上記の構成からなる油圧式オートテンショナの組立てに際しては、油圧ダンパユニットをシリンダ内に挿入し、バルブスリーブがシリンダの底で支持される位置まで油圧ダンパユニットを挿入した後、シリンダの内部又は外部にリターンスプリングを組込み、さらに、シリンダ内に作動油を注入し、シール部材およびプッシュロッドの組付けを行うようにする。
【0012】
この場合、油圧ダンパユニットがシリンダ内に組付けられる前段階で、バルブスリーブ内が作動油で満たされているようにしたことにより、シリンダ内に対する作動油の注入は1回のみでよく、しかも、油圧ダンパユニットの組立て時にバルブスリーブ内の圧力室に空気が混入することがないため、シリンダへの油圧ダンパユニットの組付け後に空気抜きを行う作業を不要とすることができ、油圧式オートテンショナを簡単に組み立てることができる。
【0013】
ここで、油圧ダンパユニットのバルブスリーブ内への作動油の充填は、油圧ダンパユニットの形成後におけるバルブスリーブ内の真空引きによるものであってもよく、バルブスリーブ内に作動油を貯留した状態での油圧ダンパユニットの組立てによるものであってもよい。
【0014】
上記油圧ダンパユニットの形成に際しては、バルブスリーブの開口端にプランジャ上面と上下で対向する曲げ起こし可能な爪片を設けてプランジャを抜止めする方法や、バルブスリーブの開口端部の内径面に円筒体を着脱可能に嵌合してプランジャを抜止めする方法を採用することができる。
【0015】
爪片によるプランジャの抜止めに際し、その爪片を3本以上として周方向に等間隔に設けることにより、プランジャを確実に抜止めすることができる。
【0016】
円筒体の嵌合によるプランジャの抜止めに際し、その円筒体の一端にバルブスリーブの上面で支持されるフランジを設けておくと、そのフランジの押込みによってバルブスリーブの開口端部内に円筒体を嵌合することができるため、円筒体を簡単に取付けることができる。
【0017】
この場合、フランジの外径をバルブスリーブの外径より大径としておくことによって、そのフランジの外周部に指先を係合させることができるので、円筒体を簡単に取り外すことができる。
【0018】
この発明に係る油圧式オートテンショナにおいて、リターンスプリングは、リザーバ室内に組み込まれたものであってもよく、あるいは、シリンダの外側に組み込まれたものであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
この発明においては、上記のように、プランジャの抜止めによりバルブスリーブ、プランジャ、チェックバルブおよびプランジャスプリングを一体化して油圧ダンパユニットとしたことにより、油圧式オートテンショナを極めて簡単に組み立てることができる。
【0020】
また、油圧ダンパユニットを分解可能としたことによって、プランジャ、チェックバルブおよびプランジャスプリング等の内部部品の損傷による交換を可能とすることができる。
【0021】
さらに、油圧ダンパユニットの組付け前の状態でバルブスリーブ内が作動油で満たされるようにしたことにより、油圧式オートテンショナの組立てに際し、シリンダ内に対する作動油の注入は1回のみとすることができ、しかも、シリンダへの油圧ダンパユニットの組付け後に空気抜きの作業を不要とすることができるので、油圧式オートテンショナをより簡単に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明に係る油圧式オートテンショナの実施の形態を示す縦断面図
【図2】バルブスリーブ、プランジャ、チェックバルブおよびプランジャスプリングからなる油圧ダンパユニットの縦断面図
【図3】図2の平面図
【図4】プランジャ抜止め手段の他の例を示す断面図
【図5】プランジャ抜止め手段のさらに他の例を示す断面図
【図6】プランジャ抜止め手段のさらに他の例を示す断面図
【図7】プランジャ抜止め手段のさらに他の例を示す断面図
【図8】油圧式オートテンショナの他の例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、この発明に係る油圧式オートテンショナは、エンジンブロックに取付けられるシリンダ11を有している。シリンダ11はアルミ合金から形成されて底を有し、内部にはバルブスリーブ12が嵌合されている。バルブスリーブ12は鋼製とされ、底を有している。
【0024】
シリンダ11の上部開口はオイルシールからなるシール部材13の組み込みにより密閉されており、そのシール部材13はシリンダ11の上端部内周に取付けられた止め輪14によって抜止めされ、上記シール部材13によってシリンダ11の内部に充填された作動油の外部への漏洩が防止されている。また、作動油の油面上には空気溜り15が設けられている。
【0025】
シール部材13をスライド自在に貫通するプッシュロッド16には、バルブスリーブ12の上端開口から上方に位置する部分にシリンダ11の内径面に沿ってスライド可能なウェアリング17が嵌合され、そのウェアリング17とバルブスリーブ12の上端間に組み込まれたリターンスプリング18はプッシュロッド16をシリンダ11の上部開口から突出する方向に向けて付勢している。
【0026】
バルブスリーブ12の内部にはプランジャ19が摺動自在に組込まれ、そのプランジャ19の組込みによってバルブスリーブ12の内部は圧力室20とリザーバ室21とに仕切られている。
【0027】
プランジャ19は、ロッド挿入孔22を上面に有し、そのロッド挿入孔22内にプッシュロッド16の下端部が嵌合されている。また、プランジャ19は、圧力室20内に組込まれたプランジャスプリング23によってプッシュロッド16の下端部に押し付けられている。
【0028】
プランジャ19には、その下方に形成された圧力室20と上方に形成されたリザーバ室21を連通する通路24が形成され、その通路24の圧力室20側の開口部にチェックバルブ25が組込まれている。チェックバルブ25は、圧力室20内の圧力がリザーバ室21内の圧力より高くなると、通路24を閉じるようになっている。
【0029】
バルブスリーブ12とリターンスプリング18の下端部間には空気溜り15内の空気がバルブスリーブ12内から圧力室20内に侵入するのを防止するセパレータ26が組み込まれている。
【0030】
図2に示すように、バルブスリーブ12の上側開口端には複数の爪片27が内向きに形成され、その爪片27によりプランジャ19が抜止めされて、バルブスリーブ12、プランジャ19、チェックバルブ25およびプランジャスプリング23からなる油圧ダンパユニットAが形成されている。
【0031】
実施の形態では、バルブスリーブ12の上側開口端に4本の爪片27を周方向に等間隔に設けているが、爪片27の数は4本に限定されるものではなく、プランジャ19を確実に抜止めする上において少なくとも3本以上設けておくのが好ましい。
【0032】
上記複数の爪片27は曲げ起こし可能とされ、それぞれの爪片27の曲げ起こしによって油圧ダンパユニットAが分解可能とされ、バルブスリーブ12内に組付けられたプランジャ19等の各種の部品が損傷した際に交換し得るようになっている。
【0033】
油圧ダンパユニットAは、シリンダ11内に組付ける油圧式オートテンショナの組立て前の段階で、バルブスリーブ12内に作動油が満たされる。
【0034】
バルブスリーブ12内に対する作動油の封入に際し、作動油が入れられたタンク内に油圧ダンパユニットAを入れ、タンクごと真空引きを行なって油圧ダンパユニットA内に作動油を充填する注入方法を採用するようにしており、その作動油の注入後、チェックバルブ25を開放し、プランジャ19の押し込みによって圧力室20内の空気抜きを行うようにしている。
【0035】
別の方法として、バルブスリーブ12がシリンダ11の底で支持される位置まで油圧ダンパユニットAを挿入した後にシリンダ11ごと又は、シリンダ11内径部のみ真空引きを行って必要量の作動油を組立品内に注入する方法や、バルブスリーブ12内に作動油を貯留した状態でプランジャスプリング23やチェックバルブ25付きプランジャ19を組付ける方法を採用することができる。
【0036】
実施の形態で示す油圧式オートテンショナは上記の構造からなり、図1は、プッシュロッド16の上端部に形成された半径方向の貫通孔28とシリンダ11の上部に形成された半径方向のピン孔(図示省略)に跨るようにしてセットピン29を挿入して、プッシュロッド16を押し込み状態に保持した状態を示している。
【0037】
カム軸駆動用タイミングベルトの張力調整に際しては、エンジンブロックにシリンダ11を固定してセットピン29を引き抜き、リターンスプリング18の押圧により外方に移動するプッシュロッド16で揺動可能に支持された図示省略のプーリアームを押圧して、そのプーリアームにより回転自在に支持されたテンションプーリをベルトに押し付け、ベルトからプーリアームを介してプッシュロッド16に負荷される押し込み力を圧力室20内の作動油によるダンパ作用により吸収して、ベルトの張力を一定に保持する。
【0038】
油圧式オートテンショナの組立てに際しては、作動油が充填された図2に示す油圧ダンパユニットAをシリンダ11の上部開口から内部に挿入する。この時、バルブスリーブ12の開口を上向きとしてシリンダ11内に油圧ダンパユニットAを挿入し、バルブスリーブ12がシリンダ11の底で支持される位置まで油圧ダンパユニットAを挿入した後、シリンダ11内に、セパレータ26およびリターンスプリング18を組込み、そのリターンスプリング18の組込み前または組込み後にシリンダ11内に必要量の作動油を注入する。油圧ダンパユニットAをシリンダ11に挿入後に作動油を注入した方法では、既に必要量の作動油が注入されているため、追加の注入は必要がない。
【0039】
作動油の注入後、ウェアリング17やシール部材13が組付けられたプッシュロッド16をシリンダ11内に挿入し、そのプッシュロッド16の下端部をプランジャ19のロッド挿入孔22内に挿入し、かつ、シール部材13をシリンダ11の上端開口内に組み入れ、そのシリンダ11の上端部内に止め輪14を取付けることによってオートテンショナの組立てが完了する。
【0040】
上記のような油圧式オートテンショナの組立てにおいて、油圧ダンパユニットAのバルブスリーブ12内には作動油が予め満たされているため、シリンダ11内に対する作動油の注入は1回のみでよく、しかも、油圧ダンパユニットAの組立て時にバルブスリーブ12内に空気が混入することがないため、シリンダ11への油圧ダンパユニットAの組付け後において空気抜きを行う作業を不要とすることができる。このため、油圧式オートテンショナを極めて簡単に組み立てることができる。
【0041】
図2では、バルブスリーブ12の開口端に設けた複数の爪片27によってプランジャ19を抜止めしたが、プランジャ19の抜止めはこれに限定されるものではない。
【0042】
図4はプランジャ19を抜止めする抜止め手段の他の例を示す。この例においては、バルブスリーブ12の開口端部内に円筒体30を圧入してプランジャ19を抜止めしている。
【0043】
ここで、円筒体30は、金属材料からなるものであってもよく、あるいは、樹脂やゴム等の非金属材料からなるものであってもよい。その円筒体30はプランジャスプリング23の押圧力によって抜け出すことのない軽圧入とされて簡単に取り外すことができるようになっている。
【0044】
上記のような円筒体30の採用において、図5に示すように、円筒体30の一端にバルブスリーブ12の上面で支持されるフランジ31を設けておくと、そのフランジ31の押込みによってバルブスリーブ12の開口端部内に円筒体30を嵌合することができるため、円筒体30を簡単に取付けることができる。
【0045】
また、図6に示すように、円筒体30に、その先端から軸方向に延びる複数のスリット32を周方向に間隔をおいて形成して、隣接するスリット32間に弾性片33を設けることによって、バルブスリーブ12の開口端部内に対する円筒体30の圧入時、バルブスリーブ12の内径面に対する接触によって弾性片33が内方に弾性変形するため、円筒体30をより簡単に取付けることができる。
【0046】
さらに、図7に示すように、フランジ31の外径をバルブスリーブ12の外径より大径としておくと、そのフランジ31の外周部に工具や指先を係合させることができるので、円筒体30を簡単に取り外すことができる。この場合、シリンダ11の内径面は、上部が大径の段付き面として油圧ダンパユニットAの組込みを可能としておく。
【0047】
図1では、油圧式オートテンショナとして、リザーバ室21内にリターンスプリング18を組み込んだばね内装式のカム軸駆動用タイミングベルトの張力調整用油圧式オートテンショナを示したが、油圧式オートテンショナはこれに限定されない。例えば、図8に示すように、シリンダ11の外側にリターンスプリング18を組込み、そのリターンスプリング18の一方の端部をシリンダ11の下端部外周に設けられたばね座40で支持し、他方の端部をプッシュロッド16の先端部に取付けられたばね座41で受け、そのばね座41にプーリアーム連結用の連結片42が設けられた補機駆動用ベルトの張力調整用油圧式オートテンショナであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
A 油圧ダンパユニット
11 シリンダ
12 バルブスリーブ
13 シール部材
15 空気溜り
16 プッシュロッド
17 ウェアリング
18 リターンスプリング
19 プランジャ
20 圧力室
21 リザーバ室
22 ロッド挿入孔
23 プランジャスプリング
24 通路
25 チェックバルブ
27 爪片
30 円筒体
31 フランジ
32 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部が閉塞するシリンダの内部に鋼製の底付きのバルブスリーブを挿入し、そのバルブスリーブの内部にプランジャを摺動自在に組み込んで、その下方に圧力室と、上方にリザーバ室とを形成し、前記シリンダの上部開口を密封してシリンダの内部に封入された作動油上に空気溜りを形成するシール部材を設け、そのシール部材をスライド自在に貫通するプッシュロッドの下端部を前記プランジャの上部に形成されたロッド挿入孔に挿入し、前記プランジャには圧力室とリザーバ室とを連通する通路を設け、その通路に圧力室の圧力がリザーバ室の圧力より高くなると通路を閉じるチェックバルブを設け、前記圧力室にはプランジャをプッシュロッドに向けて付勢するプランジャスプリングを組込み、前記プッシュロッドをリターンスプリングによりシリンダの上端開口から突出する方向に向けて付勢した油圧式オートテンショナにおいて、
前記プランジャがバルブスリーブの上側開口からぬけ出るのを防止する着脱可能な抜止め手段を設けて、バルブスリーブ、プランジャ、チェックバルブおよびプランジャスプリングからなる分解可能な油圧ダンパユニットを形成したことを特徴とする油圧式オートテンショナ。
【請求項2】
前記油圧ダンパユニットの前記シリンダ内に組付けられる前段階で、バルブスリーブ内が作動油で満たされるようにした請求項1に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項3】
前記作動油が、油圧ダンパユニットの形成後におけるバルブスリーブ内の真空引きによる充填である請求項2に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項4】
前記油圧ダンパユニットが、バルブスリーブ内に作動油を貯留した状態での組立てである請求項2に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項5】
前記バルブスリーブの開口端にプランジャ上面と上下で対向する曲げ起こし可能な爪片を設けてプランジャを抜止めした請求項1乃至4のいずれかの項に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項6】
前記爪片が、周方向に間隔をおいて設けられた3本以上の数からなる請求項5に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項7】
前記バルブスリーブの開口端部の内径面に円筒体を着脱可能に嵌合してプランジャを抜止めした請求項1乃至4のいずれかの項に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項8】
前記円筒体が、金属材料または非金属材料からなる請求項7に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項9】
前記円筒体が、前記バルブスリーブの上面で支持されるフランジを一端に有してなる請求項7又は8に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項10】
前記フランジが、前記バルブスリーブの外径より大径とされた請求項9に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項11】
前記円筒体が、軸方向に延びるスリットを有して径方向に弾性変形可能とされた請求項7乃至9のいずれかの項に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項12】
前記リターンスプリングが、リザーバ室内に組み込まれてカム軸駆動用タイミングベルトの張力調整用とされた請求項1乃至11のいずれかの項に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項13】
前記リターンスプリングが、前記シリンダの外側に組み込まれ、前記プッシュロッドの先端部およびシリンダの後端部外周にそのリターンスプリングの端部を受けるばね座が設けられ、前記ロッド側ばね座にプーリアーム連結用の連結片が設けられて補機駆動用ベルトの張力調整用とされた請求項1乃至11のいずれかの項に記載の油圧式オートテンショナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−225425(P2012−225425A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93675(P2011−93675)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】