説明

油圧駆動装置および油圧駆動装置を備えた作業機械

【課題】作業者の急激な操作入力により発生する油圧アクチュエータのハンチングを抑制することができる油圧駆動装置を提供する。
【解決手段】油圧駆動装置は、可変容量型の油圧ポンプPと、油圧ポンプPの容量を変化させて油圧ポンプの吐出油量を制御するポンプ制御手段150とを有し、ポンプ制御手段150は、容量制御油圧を用いて油圧ポンプPの可変容量を変化させる容量シリンダ151と、油圧アクチュエータに作用する負荷油圧を用いて容量制御油圧を作り出すレギュレータバルブRとを備え、レギュレータバルブRは、負荷油圧が変動したときに、負荷油圧の変動の影響を抑えて容量制御油圧を作り出す油圧変動抑制手段を備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧アクチュエータにより駆動される建設用作業装置により所要の作業を行うように構成される作業機械に搭載される油圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業機械として、例えば、走行自在に構成された走行体上に、油圧モータにより旋回駆動される旋回台を備え、この旋回台にエンジンもしくは電気モータ駆動の油圧ポンプにより供給される圧油を利用した油圧アクチュエータにより駆動されるブームやアーム、バケット等からなる作業装置が設けられたパワーショベル等が広く知られている。このように、油圧ポンプから吐出される圧油を利用する作業機械のなかには、油圧アクチュエータの負荷油圧に応じて油圧ポンプの吐出油圧を変動させるロードセンシング機能を備えた油圧駆動装置を備えて構成されたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9‐287173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなロードセンシング機能を備えた油圧駆動装置では、作業者の急激なアクチュエータ操作入力により油圧アクチュエータの負荷油圧が急激に変動すると、油圧ポンプの吐出油圧の制御も急激に行われるため、油圧アクチュエータのハンチングが発生するという課題がある。また、このようにハンチングが発生すると、作業機械が振動して作業者がゆり動かされるため、さらに油圧アクチュエータのハンチングを増大させるという課題もある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、作業者の急激な操作入力により発生する油圧アクチュエータのハンチングを抑制することができる油圧駆動装置、およびこの油圧駆動装置を備えた作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る油圧駆動装置は、可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出される圧油により駆動される油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプの容量を変化させて前記油圧ポンプの吐出油量を制御するポンプ制御手段とを有し、前記ポンプ制御手段は、容量制御油圧を用いて前記油圧ポンプの可変容量を変化させるポンプ容量制御手段(例えば、実施形態における容量シリンダ151)と、前記油圧アクチュエータに作用する負荷油圧を用いて前記容量制御油圧を作り出す容量制御調圧手段(例えば、実施形態におけるレギュレータバルブR,R′,R″)とを備え、前記容量制御油圧は、前記油圧ポンプの吐出油圧が前記負荷油圧よりも所定圧だけ高くなるように前記油圧ポンプの可変容量を変動させるように調圧設定され、前記容量制御調圧手段は、前記負荷油圧が変動したときに、前記負荷油圧の変動の影響を抑えて前記容量制御油圧を作り出す油圧変動抑制手段を備えて構成される。
【0007】
なお、上記構成の油圧駆動装置において、作業者のアクチュエータ操作入力に応じて供給されるパイロット油圧を用いて前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される油圧を制御する油圧供給制御手段を有し、前記油圧変動抑制手段は、前記アクチュエータ操作入力に応じて前記パイロット油圧に生じる変動を用いて、前記容量制御油圧を作るために前記容量制御調圧手段に供給される前記負荷油圧の変動を抑制し、その変動が抑制された前記負荷油圧を用いて前記容量制御油圧を作り出すように構成される。
【0008】
また、上記構成の油圧駆動装置において、前記油圧変動抑制手段は、前記負荷油圧を検出する負荷油圧検出手段(例えば、実施形態における圧力センサ205)と、前記負荷油圧検出手段により検出された前記負荷油圧に対応する検出信号に基づいて、前記負荷油圧の変動率よりも低い変動率の変動抑制油圧を作り出す変動抑制調圧手段(例えば、実施形態における負荷圧制御部210および減圧バルブ220)とを備え、前記変動抑制調圧手段により作り出された前記変動抑制油圧を用いて前記容量制御油圧を作り出すように構成される。
【0009】
また、上記構成の油圧駆動装置において、前記油圧変動抑制手段は、前記容量制御油圧を作るために前記容量制御調圧手段に供給される前記負荷油圧の油路に設けられたアキュムレータ(例えば、実施形態におけるアキュムレータ310)を備え、前記アキュムレータにより変動が抑制された前記負荷油圧を用いて前記容量制御油圧を作り出すように構成される。
【0010】
また、上記目的を達成するため、第2の本発明に係る作業機械は、上記のように構成された油圧駆動装置と、前記油圧アクチュエータにより駆動される建設用作業装置とを備え、前記建設用作業装置により所要の作業を行うように構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る油圧駆動装置によれば、油圧アクチュエータに作用する負荷油圧を用いて、油圧ポンプの可変容量を変化させるための容量制御油圧を作り出す容量制御調圧手段が、負荷油圧が変動したときに、その負荷油圧の変動の影響を抑えて容量制御油圧を作り出す油圧変動抑制手段を備えて構成されるため、油圧アクチュエータの負荷油圧が急激に変動したときに、その変動に応じて容量制御油圧が急激に変動することを抑えることができる。したがって、油圧ポンプの吐出油量を急激に変動させることなく、油圧アクチュエータをスムーズに駆動させることができ、油圧アクチュエータのハンチングを抑制することができる。
【0012】
なお、上記油圧駆動装置において、油圧変動抑制手段は、アクチュエータ操作入力に応じて油圧供給制御手段のパイロット油圧に生じる変動を用いて、容量制御油圧を作るために容量制御調圧手段に供給される負荷油圧の変動を抑制し、その変動が抑制された負荷油圧を用いて容量制御油圧を作り出すように構成されることが好ましい。作業者がアクチュエータ操作入力を行うと、その操作入力に応じてパイロット油圧および負荷油圧が同期して変動することになるため、負荷油圧の変動分をパイロット油圧の変動分を用いて抑制することができる。そのため、作業者の急激な操作入力により負荷油圧が急激に変動したときに、その変動に応じて容量制御油圧が急激に変動することを抑えることができる。したがって、油圧ポンプの吐出油量を急激に変動させることなく、油圧アクチュエータをスムーズに駆動させることができ、油圧アクチュエータのハンチングを抑制することができる。
【0013】
また、上記油圧駆動装置において、油圧変動抑制手段は、負荷油圧検出手段により検出された負荷油圧に対応する検出信号に基づいて、負荷油圧の変動率よりも低い変動率の変動抑制油圧を作り出す変動抑制調圧手段を備え、変動抑制調圧手段により作り出された変動抑制油圧を用いて容量制御油圧を作り出すように構成されることが好ましい。このように構成すれば、負荷油圧の変動率よりも低い変動率の変動抑制油圧を用いて容量制御油圧を作り出すため、負荷油圧が急激に変動したときに、その変動に応じて容量制御油圧が急激に変動することを抑えることができる。したがって、油圧ポンプの吐出油量を急激に変動させることなく、油圧アクチュエータをスムーズに駆動させることができ、油圧アクチュエータのハンチングを抑制することができる。
【0014】
また、上記油圧駆動装置において、油圧変動抑制手段は、容量制御油圧を作るために容量制御調圧手段に供給される負荷油圧の油路に設けられたアキュムレータを備え、このアキュムレータにより変動が抑制された負荷油圧を用いて容量制御油圧を作り出すように構成されることが好ましい。このように構成すれば、負荷油圧が急激に変動したときに、その負荷油圧の変動分をアキュムレータにより吸収することができるため、負荷油圧の変動に応じて容量制御油圧が急激に変動することを抑えることができる。したがって、油圧ポンプの吐出油量を急激に変動させることなく、油圧アクチュエータをスムーズに駆動させることができ、油圧アクチュエータのハンチングを抑制することができる。
【0015】
第2の本発明に係る作業機械によれば、上述の油圧駆動装置を備えて構成されるため、上述したように油圧アクチュエータのハンチングを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る油圧駆動装置の第1実施形態を示す油圧回路図である。
【図2】本発明に係る油圧駆動装置を備えた作業機械の一例として示すパワーショベルの外観斜視図である。
【図3】上記パワーショベルにおける駆動制御系のブロック図である。
【図4】本発明に係る油圧駆動装置の第2実施形態を示す油圧回路図である。
【図5】本発明に係る油圧駆動装置の第3実施形態を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。本発明に係る油圧駆動装置を搭載した作業機械の一例として、パワーショベルPSの外観斜視図を図2に示し、このパワーショベルPSにおける駆動制御系のブロック図を図3に示しており、まず、これらの図面を参照してパワーショベルPSの概要構成を説明する。
【0018】
パワーショベルPSは、走行可能に構成された走行装置1と、走行装置1に水平旋回可能に設けられた旋回台2と、旋回台2に取り付けられた作業装置3とを有して構成される。
【0019】
走行装置1は、駆動輪11、従動輪12およびこれら両輪に掛け回されて地盤に設置する履帯13等からなるクローラ機構10を、車体フレーム15の左右に設けて構成される。左右のクローラ機構10,10には、各々駆動輪11,11を回転駆動する左走行モータ81aおよび右走行モータ81bが設けられており、左右の走行モータ81a,81bの回転(回転方向および回転速度)を制御することにより任意方向に走行可能に構成されている。
【0020】
車体フレーム15の中央上部には、図示省略する旋回駆動機構を介して旋回台2の本体フレーム20が水平旋回自在に取り付けられ、旋回駆動機構に設けられた旋回モータ86を正転または逆転させることにより、走行装置1に対して旋回台2を右旋回(平面視における時計回り)または左旋回(平面視における反時計回り)に水平旋回可能になっている。本体フレーム20には、前方に突出して作業装置ブラケット21が形成されており、ここに作業装置3としてショベル装置30が取り付けられている。
【0021】
ショベル装置30は、作業装置ブラケット21に上下揺動自在に枢結され、ブームシリンダ83の伸縮作動により起伏動可能に設けられたブーム33と、ブーム33の先端部に上下揺動自在に枢結され、アームシリンダ84の伸縮作動により屈伸動可能に設けられたアーム34と、アーム34の先端部に上下揺動自在に枢結され、バケットシリンダ85の伸縮作動により揺動可能に設けられたバケット35とを有して構成される。
【0022】
旋回台2の本体フレーム20上に、作業者が搭乗するオペレータキャビン25が設けられている。オペレータキャビン25の内部には、作業者が着座するオペレータシート26と、走行装置1の作動操作を行う左右一対の走行操作レバー27a,27bと、旋回台2および作業装置3(ショベル装置30)の作動操作を行う左右の作業操作レバー28a,28bと、各操作レバーに対する操作に基づいて各部の作動を制御する制御コントローラ40が設けられている。また、オペレータキャビン後方の車体カバー22内には、エンジンもしくは電気モータ等からなる動力装置4(図1を参照)、および動力装置4により駆動される油圧ポンプ等からなる油圧駆動装置が設けられている。
【0023】
走行操作レバー27a,27bおよび作業操作レバー28a,28bには、各操作レバーの位置状態(中立位置からの傾倒操作方向及び操作量)を検出する操作検出器27as,27bs,28as,28bsがそれぞれ設けられており、各操作検出器により検出された操作信号が制御コントローラ40に入力される。なお、操作検出器は、各操作レバーの位置状態を検出可能な構成であればよく、例えば、操作装置として油圧式のコントロールバルブを用いる場合には、操作レバーの一状態に応じて変動するパイロット信号圧を検出する圧力センサを用いて構成され、操作装置として電気式のジョイスティックを用いる場合には、操作レバーの位置状態に応じて変動する電気抵抗を検出するポテンショメータを用いて構成される。
【0024】
制御コントローラ40は、走行操作レバー27a,27bおよび作業操作レバー28a,28bの各操作検出器から入力される操作信号に基づいて指令信号を生成し、その指令信号を後述する油圧駆動装置に出力して走行装置1や旋回台2、作業装置3等の各部の作動を制御する。
【0025】
このように概要構成されたパワーショベルPSでは、左右の走行操作レバー27a,27bを中立位置から前・後に傾倒操作することにより、制御コントローラ40から油圧駆動装置に指令信号を出力し、その指令信号に基づいて当該油圧駆動装置が左右の走行モータ81a,81bに供給する圧油の供給量および供給方向を制御し、車両を任意方向に移動させることができる。また、左右の作業操作レバー28a,28bを中立位置から前・後・左・右に傾倒操作することにより、制御コントローラ40からの指令信号に基づいて、油圧駆動装置が旋回モータ86および作業装置3の各シリンダ83,84,85に供給する圧油の供給量および供給方向を制御し、ショベル装置30による地盤の掘削等を行うことができる。以下、パワーショベルの油圧駆動装置について説明する。
【0026】
油圧駆動装置100は、図1および図3に示すように、斜板Sの傾斜を変えて容量を変えることが可能な油圧ポンプPと、油圧ポンプPから各油圧アクチュエータに供給される圧油の供給制御を行う制御バルブ群60と、操作レバーの傾倒操作により制御コントローラ40から出力される指令信号を受けて駆動し、油圧源から供給される作動油圧をパイロット圧として制御バルブ群60に出力するリモコンバルブ群50と、油圧ポンプPの可変容量を変化させて油圧ポンプPの吐出油量を制御するポンプ制御手段150とを有して構成される。
【0027】
リモコンバルブ群50は、左走行操作レバー27aの傾倒操作により駆動される左走行リモコンバルブ51aと、右走行操作レバー27bの傾倒操作により駆動される右走行リモコンバルブ51bと、左右の作業操作レバー28a,28bの傾倒操作により駆動されるブームリモコンバルブ53、アームリモコンバルブ54、バケットリモコンバルブ55および旋回リモコンバルブ56とを有して構成され、各操作レバーの操作方向および操作量に応じたパイロット圧をパイロット油路を介して制御バルブ群60の各制御バルブに出力する。なお、図1においては、ブームリモコンバルブ53、アームリモコンバルブ54、バケットリモコンバルブ55および旋回リモコンバルブ56の図示は省略し、左右の走行リモコンバルブ51a,51bのみを示している。
【0028】
左走行リモコンバルブ51aの左走行パイロット油路57,57′間には第1連通パイロット油路91が設けられ、この第1連通パイロット油路91に第1シャトル弁101が設けられている。右走行リモコンバルブ51bの右走行パイロット油路58,58′間には第2連通パイロット油路92が設けられ、この第2連通パイロット油路92に第2シャトル弁102が設けられている。
【0029】
第1連通パイロット油路91は第1シャトル弁101を介して第3連通パイロット油路93に繋がり、第2連通パイロット油路92は第2シャトル弁102を介して第4連通パイロット油路94に繋がっている。第3および第4連通パイロット油路93,94は、第3シャトル弁103を介して後述するレギュレータバルブRにパイロット圧を出力するための第1レギュレータパイロット油路95に繋がっている。
【0030】
第1〜第3シャトル弁101〜103は、作用する油圧のうち高い方の油圧を第3および第4連通パイロット油路93,94および第1レギュレータパイロット油路95に導くように構成されている。このため、レギュレータバルブRには、第1および第2シャトル弁101,102により選択された第1および第2連通パイロット油路91,92内の油圧、すなわち左走行パイロット油路57,57′および右走行パイロット油路58,58′内の油圧のうち高い方の油圧(以下、パイロット2次圧という)がパイロット圧として作用する。
【0031】
制御バルブ群60は、左走行リモコンバルブ51aから出力されたパイロット圧により駆動される左走行制御バルブ61aと、右走行リモコンバルブ51bから出力されたパイロット圧により駆動される右走行制御バルブ61bと、ブームリモコンバルブ53から出力されたパイロット圧により駆動されるブーム制御バルブ63と、アームリモコンバルブ54から出力されたパイロット圧により駆動されるアーム制御バルブ64と、バケットリモコンバルブ55から出力されたパイロット圧により駆動されるバケット制御バルブ65と、旋回リモコンバルブ56から出力されたパイロット圧により駆動される旋回制御バルブ66とを有して構成され、油圧ポンプPから供給される油圧(以下、ポンプ圧という)の供給制御を行って各油圧アクチュエータを作動させる。なお、図1においては、ブーム制御バルブ63、アーム制御バルブ64、バケット制御バルブ65および旋回制御バルブ66の図示は省略し、左右の走行制御バルブ61a,61bのみを示している。
【0032】
各制御バルブ61a,61b,63〜66は、4ポート3位置の方向制御弁であり、ポンプ圧油路70を介して油圧ポンプPにそれぞれ繋がっている。左走行制御バルブ61aは、ポンプ圧油路70から分岐してポンプ圧を供給する第1油路71に繋がり、この第1油路71を左走行モータ81aと左走行制御バルブ61a間に繋がる一対の左走行油路67,67′のどちらか一方に連通させる。左走行油路67,67′間には第1連通油路121が設けられ、この第1連通油路121に第4シャトル弁104が設けられている。
【0033】
右走行制御バルブ61bは、ポンプ圧油路70から分岐してポンプ圧を供給する第2油路72に繋がり、この第2油路72を右走行モータ81bと右走行制御バルブ61b間に繋がる一対の右走行油路68,68′のどちらか一方に連通させる。右走行油路68,68′間には第2連通油路122が設けられ、この第2連通油路122に第5シャトル弁105が設けられている。
【0034】
なお、図1では図示を省略しているが、ブーム制御バルブ63、アーム制御バルブ64、バケット制御バルブ65は、ポンプ圧油路70から分岐してポンプ圧を供給する第3〜第5油路のそれぞれに繋がり、第3〜第5油路のそれぞれを各シリンダ83,84,85のボトム室およびロッド室間と各制御バルブ間に繋がる一対のシリンダ油路のどちらか一方に連通させる。各々のシリンダ油路間には第3〜第5連通油路のそれぞれが設けられ、これらの第3〜第5連通油路に第6〜第8シャトル弁がそれぞれ設けられている。また、旋回制御バルブ66は、ポンプ圧油路70から分岐してポンプ圧を供給する第6油路に繋がり、この第6油路を旋回モータ86と旋回制御バルブ66間に繋がる一対の旋回油路のどちらか一方に連通させる。旋回油路間には第6連通油路が設けられ、この第6連通油路に第9シャトル弁が設けられている。
【0035】
第1連通油路121は第4シャトル弁104を介して第7連通油路127に繋がり、第2連通油路122は第5シャトル弁105を介して第8連通油路128に繋がっている。第7および第8連通油路127,128は第10シャトル弁110を介して第9連通油路129に繋がり、この第9連通油路129は第11シャトル弁111を介してレギュレータバルブRにパイロット圧を出力するための第2レギュレータパイロット油路135に繋がっている。なお、上記第3〜第6連通油路は、第6〜第9シャトル弁、第10連通油路130および第11シャトル弁111等を介して第2レギュレータパイロット油路135に繋がっている。第2レギュレータパイロット油路135は、レギュレータバルブRにおける上記第1レギュレータパイロット油路95の反対側に繋がっている。
【0036】
第4〜第11シャトル弁104〜111は、作用する油圧のうち高い方の油圧を第7〜第10連通油路127〜130および第2レギュレータパイロット油路135に導くように構成されている。このため、レギュレータバルブRには、第4〜第9シャトル弁により選択された第1〜第6連通油路内の油圧、すなわち各油圧アクチュエータの負荷油圧のうち最も高い油圧(以下、最高負荷圧という)がパイロット圧として作用する。この最高負荷圧は、上述したパイロット2次圧に対向する方向からレギュレータバルブRに作用する。
【0037】
各制御バルブにポンプ圧を供給する第1〜第6油路よりも上流側(油圧ポンプP側)のポンプ圧油路70には、この油路70から分岐してレギュレータバルブRに繋がる第7油路77および第8油路78が設けられ、第7油路77に流量制御バルブ140が設けられている。また、第1〜第6油路よりも上流側のポンプ圧油路70には、この油路70から分岐してポンプ圧をパイロット圧としてレギュレータバルブRに出力するための第3レギュレータパイロット油路79が設けられている。この第3レギュレータパイロット油路79を介して出力されるポンプ圧は、上述したパイロット2次圧と同一方向から、すなわち上述した最高負荷圧と対向する方向からレギュレータバルブRに作用する。
【0038】
流量制御バルブ140は、ポンプ圧油路70(第7油路77)内のポンプ圧に応じて駆動される比例流量制御弁であり、ポンプ圧が所定圧よりも大きくなると圧油をレギュレータバルブRに供給し、レギュレータバルブRを介して後述する容量シリンダ151に導くことで油圧ポンプPの吐出量を減少させ、高負荷時のエンジンストールを防止するように構成されている。
【0039】
ポンプ制御手段150は、油圧を用いて油圧ポンプPの可変容量を変化させる容量シリンダ151と、上述した最高負荷圧、パイロット2次圧およびポンプ圧を用いて容量シリンダ151に供給される油圧を作り出すレギュレータバルブRとを有して構成される。
【0040】
容量シリンダ151は、内部に摺動可能に配設され油圧ポンプPの斜板Sに接続されたプランジャ152を有し、レギュレータバルブRから供給される油圧(以下、容量制御圧という)によりプランジャ152が摺動して斜板Sの傾きを変えることで油圧ポンプPの容量を変化させるように構成されている。なお、油圧ポンプPの回転数は一定であり、斜板Sの傾きを変えることで油圧ポンプPから吐出される油量(ポンプ圧)が変動する。
【0041】
レギュレータバルブRは、内部に摺動可能に配設されたスプールを有し、ポンプ圧油路70内のポンプ圧がスプールの一方の第1端部に作用し、上述したパイロット2次圧がスプールの一方の第2端部に作用し、上述した最高負荷圧がスプールの他方の端部に作用して、ポンプ圧およびパイロット2次圧によりスプールに働く力と最高負荷圧によりスプールに働く力との差によりスプールを摺動させて容量シリンダ151に供給される容量制御圧を作り出すように構成されている。レギュレータバルブRにより作り出される容量制御圧は、ポンプ圧が最高負荷圧よりも所定圧だけ高くなるように容量シリンダ151において油圧ポンプPの可変容量を変化させるように調圧設定される。
【0042】
容量シリンダ151とレギュレータバルブRとを繋ぐ油路155には、この油路155から分岐して油タンクTに繋がる排出油路156が設けられており、この排出油路156に絞り弁157が設けられている。
【0043】
各制御バルブにポンプ圧を供給する第1〜第6油路よりも上流側(本実施形態では、第3レギュレータパイロット油路79と同じ位置)のポンプ圧油路70には、この油路70から分岐して油タンクTに繋がるリリーフ油路80が設けられている。このリリーフ油路80には、ポンプ圧油路70内のポンプ圧が所定のリリーフ圧を超えないように調整するリリーフバルブ160が設けられている。
【0044】
このように構成される油圧駆動装置100の作動について、左右の走行モータ81a,81bを回転駆動して車両を移動させる場合について説明する。まず、左右の走行操作レバー27a,27bが操作されると、各操作レバーの操作検出器27as,27bsから操作信号が制御コントローラ40に入力され(図3を参照)、制御コントローラ40は各操作レバーの操作方向および操作量に応じた指令信号を左右の走行リモコンバルブ51a,51bにそれぞれ出力する。
【0045】
上記指令信号を受けた左走行リモコンバルブ51aは、左走行操作レバー27aの操作方向および操作量に応じたパイロット圧を左走行パイロット油路57,57′を介して左走行制御バルブ61aに出力する。左走行制御バルブ61aは、上記パイロット圧に応じて駆動し、ポンプ圧油路70から分岐した第1油路71を左走行油路67,67′のどちらか一方に連通させて油圧ポンプPから供給されるポンプ圧を左走行モータ81aに供給し、左走行モータ81aを回転駆動させる。
【0046】
また、上記指令信号を受けた右走行リモコンバルブ51bは、右走行操作レバー27bの操作方向および操作量に応じたパイロット圧を右走行パイロット油路58,58′を介して右走行制御バルブ61bに出力する。右走行制御バルブ61bは、上記パイロット圧に応じて駆動し、ポンプ圧油路70から分岐した第2油路72を右走行油路68,68′のどちらか一方に連通させて油圧ポンプPから供給されるポンプ圧を右走行モータ81bに供給し、右走行モータ81bを回転駆動させる。
【0047】
このとき、左右の走行モータ81a,81bに油圧を供給する左走行油路67,67′および右走行油路68,68′内の油圧は、第1および第2連通油路121,122、第7〜第9連通油路127〜129、第4および第5シャトル弁104,105、ならびに、第10および第11シャトル弁110,111を介して、第2レギュレータパイロット油路135に伝わる。第2レギュレータパイロット油路135には作業装置3の各シリンダ83〜85および旋回モータ86に油圧を供給する各油路内の油圧も伝わるようになっており、各油圧アクチュエータの負荷油圧のうち最も高い油圧(最高負荷圧)が第2レギュレータパイロット油路135を介してレギュレータバルブRにパイロット圧として作用する。
【0048】
また、左右の走行制御バルブ61a,61bにパイロット圧を出力する左走行パイロット油路57,57′および右走行パイロット油路58,58′内の油圧は、第1〜第4連通パイロット油路91〜94および第1〜第3シャトル弁101〜103を介して第1レギュレータパイロット油路95に伝わり、左右の走行パイロット油路内の油圧のうち高い方の油圧(パイロット2次圧)が第1レギュレータパイロット油路95を介して上記最高負荷圧と対向する方向からレギュレータバルブRにパイロット圧として作用する。
【0049】
さらに、ポンプ圧油路70内のポンプ圧が第3レギュレータパイロット油路79を介して上記パイロット2次圧と同一方向、すなわち上記最高負荷圧と対向する方向からレギュレータバルブRにパイロット圧として作用する。
【0050】
そのため、レギュレータバルブRは、ポンプ圧およびパイロット2次圧によりスプールに働く力と最高負荷圧によりスプールに働く力の差によりスプールを移動させて容量シリンダ151に供給される容量制御圧を作り出し、容量シリンダ151は、その容量制御圧を受けてポンプ圧が最高負荷圧よりも所定圧だけ高くなるように油圧ポンプPの可変容量を変化させる。その結果、左右の走行モータ81a,81bに作用する負荷に抗して左右の走行モータ81a,81bが回転駆動できる必要油量が油圧ポンプPから吐出される。
【0051】
ここで、左右の走行モータ81a,81bに最高負荷圧が作用している状態で車両が移動していると想定し、その状態から左右の走行操作レバー27a,27bの少なくとも一方が急激に操作された場合について説明する。
【0052】
まず、左右の走行操作レバー27a,27bの少なくとも一方が急激に操作されると、その急激な操作に応じて制御バルブにパイロット圧を出力する走行パイロット油路内の油圧が急激に変動し、その変動に応じて第1レギュレータパイロット油路95を介してレギュレータバルブRに作用するパイロット2次圧が急激に変動することになる。
【0053】
具体的には、左走行操作レバー27aが急激に操作され、左走行パイロット油路57,57′内の油圧が右走行パイロット油路58,58′内の油圧よりも大きく変動したとすると、その変動した左走行パイロット油路57,57′内の油圧(以下、変動パイロット2次圧という)が第1レギュレータパイロット油路95を介してレギュレータバルブRにパイロット圧として作用する。一方、右走行操作レバー27bが急激に操作され、右走行パイロット油路58,58′内の油圧が左走行パイロット油路57,57′内の油圧よりも大きく変動した場合には、その変動した右走行パイロット油路58,58′内の油圧(変動パイロット2次圧)が第1レギュレータパイロット油路95を介してレギュレータバルブRにパイロット圧として作用する。
【0054】
また、左右の走行操作レバー27a,27bの少なくとも一方が急激に操作されると、その急激な操作に応じて制御バルブが急激に駆動され、走行モータに繋がる一対の走行油路内の油圧、すなわち走行モータに作用する負荷圧が急激に変動し、その変動に応じて第2レギュレータパイロット油路135を介してレギュレータバルブRに作用する最高負荷圧が急激に変動することになる。このとき、最高負荷圧の変動は、当該走行操作レバーの操作により生じる上記パイロット2次圧の変動と同期したものとなる。
【0055】
具体的には、左走行操作レバー27aが急激に操作され、左走行モータ81aの負荷油圧が右走行モータ81bの負荷圧よりも大きく変動したとすると、その変動した左走行モータ81aの負荷圧(以下、変動最高負荷圧という)が第2レギュレータパイロット油路135を介して上記変動パイロット2次圧と対向する方向からレギュレータバルブRにパイロット圧として作用する。一方、右走行操作レバー27bが急激に操作され、右走行モータ81bの負荷油圧が左走行モータ81aの負荷油圧よりも大きく変動した場合には、その変動した右走行モータ81bの負荷圧(変動最高負荷圧)が第2レギュレータパイロット油路135を介して上記変動パイロット2次圧と対向する方向からレギュレータバルブRにパイロット圧として作用する。
【0056】
このように本発明に係る油圧駆動装置100では、作業者の急激な操作により左右の走行モータ81a,81bの少なくとも一方の負荷圧が急激に変動してレギュレータバルブRにパイロット圧として変動最高負荷圧が作用すると、この変動最高負荷圧と同期して変動した変動パイロット2次圧が変動最高負荷圧と対向する方向からレギュレータバルブRにパイロット圧として作用する。そのため、作業者の急激な操作により走行モータの負荷圧が急激に変動したときに、レギュレータバルブRにパイロット圧として作用する最高負荷圧の変動分をパイロット2次圧の変動分が打ち消すように作用するため、レギュレータバルブRにより作り出される容量制御圧が急激に変動することを抑えることができる。したがって、油圧ポンプPから吐出される油量を急激に変動させることなく、左右の走行モータ81a,81bをスムーズに回転駆動させることができ、左右の走行モータ81a,81bのハンチングを抑制することができる。
【0057】
なお、上述の第1実施形態では、図1に示すように、左右の走行モータ81a,81bのハンチングを低減させるため、左右の走行制御バルブ61a,61bにパイロット圧を出力する左右の走行パイロット油路内の油圧(パイロット2次圧)を第1レギュレータパイロット油路95を介してレギュレータバルブRにパイロット圧として作用させるように構成されているが、本発明はこのような構成に限定されない。例えば、旋回モータ86のハンチングを低減させるためには、旋回制御バルブ66にパイロット圧を出力する旋回パイロット油路内の油圧をレギュレータバルブRにパイロット圧として作用させるように構成してもよい。すなわち、ハンチングを低減させたい油圧アクチュエータに供給される作動油の供給制御を行う制御バルブにパイロット圧を出力するパイロット油路内の油圧をレギュレータバルブにパイロット圧として作用させるように構成すればよい。
【0058】
次に、本発明に係る油圧駆動装置の第2実施形態について説明する。なお、上述した第1実施形態と同様の構成要素については、同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。油圧駆動装置200は、図3および図4に示すように、油圧ポンプPと、制御バルブ群60と、リモコンバルブ群50と、ポンプ制御手段150と、各油圧アクチュエータの負荷油圧のうち最も高い油圧(最高負荷圧)を検出する圧力センサ205と、圧力センサ205からの検出信号に基づいてレギュレータバルブR′に作用させるパイロット圧を制御する負荷圧制御部210および減圧バルブ220とを有して構成される。
【0059】
上述した第1実施形態と同様に、左走行モータ81aと左走行制御バルブ61a間に繋がる一対の左走行油路67,67′間に設けられた第1連通油路121は第4シャトル弁104を介して第7連通油路127に繋がり、右走行モータ81bと右走行制御バルブ61b間に繋がる一対の右走行油路68,68′間に設けられた第2連通油路122は第5シャトル弁105を介して第8連通油路128に繋がっている。
【0060】
第7および第8連通油路127,128は第10シャトル弁110を介して第9連通油路129に繋がり、この第9連通油路129は第11シャトル弁111を介して圧力センサ205に繋がる負荷圧検出油路201に繋がっている。なお、図4では図示を省略しているが、作業装置3の各シリンダと各制御バルブ間に繋がる一対のシリンダ油路にそれぞれ設けられた第3〜第5連通油路、および旋回モータ86と旋回制御バルブ66間に繋がる一対の旋回油路に設けられた第6連通油路は、第6〜第9シャトル弁、第10連通油路130および第11シャトル弁111等を介して負荷圧検出油路201に繋がっている。
【0061】
第4〜第11シャトル弁104〜111は、作用する油圧のうち高い方の油圧を第7〜第10連通油路127〜130および負荷圧検出油路201に導くように構成されている。このため、圧力センサ205には、第4〜第9シャトル弁により選択された第1〜第6連通油路内の油圧、すなわち各油圧アクチュエータの負荷油圧のうち最も高い油圧(最高負荷圧)が検出圧として入力される。圧力センサ205は、電気通信線(ケーブル)により負荷圧制御部210に接続されており、各油圧アクチュエータの負荷油圧のうちの最高負荷圧を検出し、その最高負荷圧に応じた検出信号を負荷圧制御部210に出力する。
【0062】
負荷圧制御部210は、圧力センサ205から出力された検出信号、すなわち各油圧アクチュエータの負荷油圧のうちの最高負荷圧に基づいて指令信号を作り出し、その指令信号を減圧バルブ220に出力してこの減圧バルブ220の作動を制御する。
【0063】
流量制御バルブ140よりも上流側の第7油路77には、この油路77から分岐してレギュレータバルブR′にパイロット圧を出力するための第4レギュレータパイロット油路215が設けられ、第4レギュレータパイロット油路215に減圧バルブ220が設けられている。第4レギュレータパイロット油路215は、レギュレータバルブR′における第3レギュレータパイロット油路79(レギュレータバルブR′にパイロット圧としてポンプ圧を出力するための油路)の反対側に繋がっている。このため、第4レギュレータパイロット油路215を介して出力されるパイロット圧は、第3レギュレータパイロット油路79を介して出力されるパイロット圧(ポンプ圧)と対向する方向からレギュレータバルブR′に作用する。
【0064】
減圧バルブ220は、負荷圧制御部210から出力された指令信号に応じて駆動される電磁比例減圧弁であり、上記指令信号に応じて第4レギュレータパイロット油路215内の油圧を調整し、その油圧をレギュレータバルブR′にパイロット圧として作用させるように構成されている。なお、第4レギュレータパイロット油路215および減圧バルブ220を介してレギュレータバルブR′に作用するパイロット圧を、以下、フィードバック圧という。
【0065】
レギュレータバルブR′は、内部に摺動可能に配設されたスプールを有し、ポンプ圧油路70内のポンプ圧がスプールに一方の端部に作用し、上述したフィードバック圧がスプールの他方の端部に作用して、ポンプ圧によりスプールに働く力とフィードバック圧によりスプールに働く力との差によりスプールを摺動させて容量シリンダ151に供給される容量制御圧を作り出すように構成されている。レギュレータバルブR′により作り出される容量制御圧は、ポンプ圧が最高負荷圧よりも所定圧だけ高くなるように容量シリンダ151において油圧ポンプPの可変容量を変化させるように調圧設定される。
【0066】
このように構成される油圧駆動装置200の作動について、左右の走行モータ81a,81bを回転駆動して車両を移動させる場合について説明する。まず、左右の走行操作レバー27a,27bが操作されると、上述した第1実施形態と同様に、各操作レバーの操作検出器27as,27bsから操作信号が制御コントローラ40に入力され(図3を参照)、制御コントローラ40は各操作レバーの操作方向および操作量に応じた指令信号を左右の走行リモコンバルブ51a,51bにそれぞれ出力する。
【0067】
上記指令信号を受けた左右の走行リモコンバルブ51a,51bは、走行操作レバー27a,27bの操作方向および操作量に応じたパイロット圧を走行パイロット油路57,57′,58,58′を介して左右の走行制御バルブ61a,61bにそれぞれ出力する。左走行制御バルブ61aは、上記パイロット圧に応じて駆動し、ポンプ圧油路70から分岐した第1油路71を左走行油路67,67′のどちらか一方に連通させて油圧ポンプPから供給されるポンプ圧を左走行モータ81aに供給し、左走行モータ81aを回転駆動させる。また、右走行制御バルブ61bは、上記パイロット圧に応じて駆動し、ポンプ圧油路70から分岐した第2油路72を右走行油路68,68′のどちらか一方に連通させて油圧ポンプPから供給されるポンプ圧を右走行モータ81bに供給し、右走行モータ81bを回転駆動させる。
【0068】
このとき、左右の走行モータ81a,81bにポンプ圧を供給する左走行油路67,67′および右走行油路68,68′内の油圧は、第1および第2連通油路121,122、第7〜第9連通油路127〜129、第4および第5シャトル弁104,105、ならびに、第10および第11シャトル弁110,111を介して負荷圧検出油路201に伝わる。負荷圧検出油路201には作業装置3の各シリンダ83〜85および旋回モータ86にポンプ圧を供給する各油路内の油圧も伝わるようになっており、各油圧アクチュエータの負荷油圧のうち最も高い油圧(最高負荷圧)が負荷圧検出油路201を介して圧力センサ205に入力され、圧力センサ205は検出した最高負荷圧に応じた検出信号を負荷圧制御部210に出力する。
【0069】
圧力センサ205からの検出信号を受けた負荷圧制御部210は当該検出信号に基づいて作り出した指令信号を減圧バルブ220に出力し、減圧バルブ220は上記指令信号に応じてポンプ圧油路70(第7油路77)から分岐した第4レギュレータパイロット油路215内の油圧(ポンプ圧)を調整する。このように減圧バルブ220により調整された油圧(フィードバック圧)がレギュレータバルブR′にパイロット圧として作用する。また、ポンプ圧油路70内のポンプ圧が第3レギュレータパイロット油路79を介して上記フィードバック圧と対向する方向からレギュレータバルブR′にパイロット圧として作用する。
【0070】
そのため、レギュレータバルブR′は、ポンプ圧によりスプールに働く力とフィードバック圧によりスプールに働く力との差によりスプールを移動させて容量シリンダ151に供給される容量制御圧を作り出し、容量シリンダ151は、その容量制御圧を受けてポンプ圧が最高負荷圧よりも所定圧だけ高くなるように油圧ポンプPの可変容量を変化させる。その結果、左右の走行モータ81a,81bに作用する負荷に抗して左右の走行モータ81a,81bが回転駆動できる必要油量が油圧ポンプPから吐出される。
【0071】
ここで、左右の走行モータ81a,81bに最高負荷圧が作用している状態で車両が移動していると想定し、その状態で左右の走行モータ81a,81bの少なくとも一方の負荷圧が急激に変動した場合について説明する。
【0072】
左右の走行モータ81a,81bの少なくとも一方の負荷圧、すなわち左走行油路67,67′および右走行油路68,68′の少なくとも一方の油圧が急激に変動すると、その変動に応じて負荷圧検出油路201内の最高負荷圧および圧力センサ205を介して負荷圧制御部210に入力される検出信号も急激に変動することになる。このとき、負荷圧制御部210は、上記検出信号に基づいて、減圧バルブ220により調整されてレギュレータバルブR′に作用させるフィードバック圧の変動率が上記最高負荷圧の変動率よりも低い変動率となるように、減圧バルブ220に出力する指令信号を作り出し(例えば、最高負荷圧の変動の逆位相となる信号を用いて指令信号を作り出す)、この指令信号を減圧バルブ220に出力する。そのため、減圧バルブ220は第4レギュレータパイロット油路215内の油圧を緩やかに調整し、このように調整されたフィードバック圧(最高負荷圧の変動率よりも低い変動率のフィードバック圧)がポンプ圧と対向する方向からレギュレータバルブR′にパイロット圧として作用し、レギュレータバルブR′は容量シリンダ151に供給される容量制御圧を作り出し、容量シリンダ151はその容量制御圧を用いてポンプ圧が最高負荷圧よりも所定圧だけ高くなるように油圧ポンプPの可変容量を変化させる。
【0073】
このように本発明に係る油圧駆動装置200では、走行モータの負荷圧が急激に変動したときに、レギュレータバルブR′にパイロット圧として作用させるフィードバック圧の変動率が負荷圧の変動率よりも低い変動率となるように制御されるため、レギュレータバルブR′により作り出される容量制御圧が急激に変動することを抑えることができる。したがって、油圧ポンプPから吐出される油量を急激に変動させることなく、左右の走行モータ81a,81bをスムーズに回転駆動させることができ、左右の走行モータ81a,81bのハンチングを抑制することができる。
【0074】
なお、上述した第2実施形態では、図4に示すように、第7油路77から分岐して第4レギュレータパイロット油路215が設けられているが、第4レギュレータパイロット油路215は、各制御バルブにポンプ圧を供給する第1〜第6油路よりも上流側(油圧ポンプP側)のポンプ圧油路70から分岐して設けられてもよい。
【0075】
次に、本発明に係る油圧駆動装置の第3実施形態について説明する。なお、上述した第1実施形態と同様の構成要素については、同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。油圧駆動装置300は、図3および図5に示すように、油圧ポンプPと、制御バルブ群60と、リモコンバルブ群50と、ポンプ制御手段150と、レギュレータバルブR″にパイロット圧を出力するための第2レギュレータパイロット油路135に設けられたアキュムレータ310とを有して構成される。
【0076】
各油圧アクチュエータの負荷油圧のうち最も高い油圧(最高負荷圧)をレギュレータバルブR″にパイロット圧として導く第2レギュレータパイロット油路135にはアキュムレータ310が設けられている。このため、第2レギュレータパイロット油路135を介して出力されるパイロット圧(最高負荷圧)は、第3レギュレータパイロット油路79を介して出力されるパイロット圧(ポンプ圧)と対向する方向からレギュレータバルブR″に作用するとともに、アキュムレータ310に作用する。
【0077】
レギュレータバルブR″は、内部に摺動可能に配設されたスプールを有し、ポンプ圧油路70内のポンプ圧がスプールに一方の端部に作用し、上述した最高負荷圧がスプールの他方の端部に作用して、ポンプ圧によりスプールに働く力と最高負荷圧によりスプールに働く力との差によりスプールを摺動させて容量シリンダ151に供給される容量制御圧を作り出すように構成されている。レギュレータバルブR″により作り出される容量制御圧は、ポンプ圧が最高負荷圧よりも所定圧だけ高くなるように容量シリンダ151において油圧ポンプPの可変容量を変化させるように調圧設定される。
【0078】
このように構成される油圧駆動装置300の作動について、左右の走行モータ81a,81bを回転駆動して車両を移動させる場合について説明する。まず、左右の走行操作レバー27a,27bが操作されると、上述した第1および第2実施形態と同様に、各操作レバーの操作検出器27as,27bsから操作信号が制御コントローラ40に入力され(図3を参照)、制御コントローラ40は各操作レバーの操作方向および操作量に応じた指令信号を左右の走行リモコンバルブ51a,51bにそれぞれ出力する。
【0079】
上記指令信号を受けた左右の走行リモコンバルブ51a,51bは、走行操作レバー27a,27bの操作方向および操作量に応じたパイロット圧を走行パイロット油路57,57′,58,58′を介して走行制御バルブ61a,61bにそれぞれ出力する。左走行制御バルブ61aは、上記パイロット圧に応じて駆動し、ポンプ圧油路70から分岐した第1油路71を左走行油路67,67′のどちらか一方に連通させて油圧ポンプPから供給されるポンプ圧を左走行モータ81aに供給し、左走行モータ81aを回転駆動させる。また、右走行制御バルブ61bは、上記パイロット圧に応じて駆動し、ポンプ圧油路70から分岐した第2油路72を右走行油路68,68′のどちらか一方に連通させて油圧ポンプPから供給されるポンプ圧を右走行モータ81bに供給し、右走行モータ81bを回転駆動させる。
【0080】
このとき、左右の走行モータ81a,81bにポンプ圧を供給する左走行油路67,67′および右走行油路68,68′内の油圧は、第1および第2連通油路121,122、第7〜第9連通油路127〜129、第4および第5シャトル弁104,105、ならびに、第10および第11シャトル弁110,111を介して第2レギュレータパイロット油路135に伝わる。第2レギュレータパイロット油路135には作業装置3の各シリンダ83〜85および旋回モータ86にポンプ圧を供給する各油路内の油圧も伝わるようになっており、各油圧アクチュエータの負荷油圧のうち最も高い油圧(最高負荷圧)が第2レギュレータパイロット油路135を介してレギュレータバルブR″にパイロット圧として作用するとともに、アキュムレータ310に作用する。また、ポンプ圧油路70内のポンプ圧が第3レギュレータパイロット油路79を介して上記最高負荷圧と対向する方向からレギュレータバルブRにパイロット圧として作用する。
【0081】
そのため、レギュレータバルブR″は、ポンプ圧によりスプールに働く力と最高負荷圧によりスプールに働く力との差によりスプールを移動させて容量シリンダ151に供給される容量制御圧を作り出し、容量シリンダ151は、その容量制御圧を受けてポンプ圧が最高負荷圧よりも所定圧だけ高くなるように油圧ポンプPの可変容量を変化させる。その結果、左右の走行モータ81a,81bに作用する負荷に抗して左右の走行モータ81a,81bが回転駆動できる必要油量が油圧ポンプPから吐出される。
【0082】
ここで、左右の走行モータ81a,81bに最高負荷圧が作用している状態で車両が移動していると想定し、その状態で左右の走行モータ81a,81bの少なくとも一方の負荷圧が急激に変動した場合について説明する。
【0083】
左右の走行モータ81a,81bの少なくとも一方の負荷圧、すなわち左走行油路67,67′および右走行油路68,68′の少なくとも一方の油圧が急激に変動すると、その変動に応じて第2レギュレータパイロット油路135を介してレギュレータバルブR″に作用するパイロット圧(最高負荷圧)も急激に変動することになる。このように急激に変動した最高負荷圧は、レギュレータバルブR″にパイロット圧として作用するとともに、アキュムレータ310に作用する。このとき、アキュムレータ310は当該最高負荷圧の変動分を吸収するように作動する。そのため、レギュレータバルブR″は、アキュムレータ310により変動が抑制された最高負荷圧を用いて容量シリンダ151に供給される容量制御圧を作り出し、容量シリンダ151は、その容量制御圧を用いてポンプ圧が最高負荷圧よりも所定圧だけ高くなるように油圧ポンプPの可変容量を変化させる。
【0084】
このように本発明に係る油圧駆動装置300では、左右の走行モータ81a,81bの少なくとも一方の負荷油圧が急激に変動してレギュレータバルブR″にパイロット圧として作用する最高負荷圧が急激に変動すると、アキュムレータ310が当該最高負荷圧の変動分を吸収するように作動するため、レギュレータバルブR″により作り出される容量制御圧が急激に変動することを抑えることができる。したがって、油圧ポンプPから吐出される油量を急激に変動させることなく、左右の走行モータ81a,81bをスムーズに回転駆動させることができ、左右の走行モータ81a,81bのハンチングを低減させることができる。
【0085】
なお、上述した第2および第3実施形態において、各制御バルブは、各リモコンバルブから出力されるパイロット圧(油圧)により駆動される油圧パイロット式方向制御弁で構成されているが、各制御バルブは、各操作レバーの操作方向および操作量に応じてコントローラから出力される電気信号により駆動される電磁操作式方向制御弁で構成してもよい。
【0086】
また、上述した実施形態では、走行モータの負荷圧が急激に変動した場合について説明したが、作業装置3の各シリンダ83〜85および旋回モータ86の負荷油圧が急激に変動したときも同様にしてハンチングを低減させることができる。
【0087】
また、上述した実施形態では、図1等に示すように、ポンプ圧油路70の上流側から第8油路78、第7油路77、第3レギュレータパイロット油路79の順に各油路78〜79が設けられているが、これは特に限定されるものではなく、各油路78〜70はポンプ圧油路70内のポンプ圧を導くように設けられればよい。
【0088】
また、上述した実施形態では、本発明に係る油圧駆動装置を適用した作業機械の一例としてパワーショベルを示したが、本発明はパワーショベルに限られるものではなく、深礎掘削機やアースオーガ等についても同様に適用し、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0089】
PS パワーショベル(作業機械)
P 油圧ポンプ
R,R′,R″ レギュレータバルブ(容量制御調圧手段)
61a 左走行制御バルブ(油圧供給制御手段)
61b 右走行制御バルブ(油圧供給制御手段)
81a 左走行モータ(油圧アクチュエータ)
81b 右走行モータ(油圧アクチュエータ)
95 第1レギュレータパイロット油路(油圧変動抑制手段)
100,200,300 油圧駆動装置
150 ポンプ制御手段
151 容量シリンダ(ポンプ容量制御手段)
205 圧力センサ(油圧変動抑制手段、負荷油圧抑制手段)
210 負荷圧制御部(油圧変動抑制手段、変動抑制調圧手段)
220 減圧バルブ(油圧変動抑制手段、変動抑制調圧手段)
310 アキュムレータ(油圧変動抑制手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出される圧油により駆動される油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプの容量を変化させて前記油圧ポンプの吐出油量を制御するポンプ制御手段とを有する油圧駆動装置であって、
前記ポンプ制御手段は、容量制御油圧を用いて前記油圧ポンプの可変容量を変化させるポンプ容量制御手段と、前記油圧アクチュエータに作用する負荷油圧を用いて前記容量制御油圧を作り出す容量制御調圧手段とを備え、
前記容量制御油圧は、前記油圧ポンプの吐出油圧が前記負荷油圧よりも所定圧だけ高くなるように前記油圧ポンプの可変容量を変動させるように調圧設定され、
前記容量制御調圧手段は、前記負荷油圧が変動したときに、前記負荷油圧の変動の影響を抑えて前記容量制御油圧を作り出す油圧変動抑制手段を備えていることを特徴とする油圧駆動装置。
【請求項2】
作業者のアクチュエータ操作入力に応じて供給されるパイロット油圧を用いて前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される油圧を制御する油圧供給制御手段を有し、
前記油圧変動抑制手段は、前記アクチュエータ操作入力に応じて前記パイロット油圧に生じる変動を用いて、前記容量制御油圧を作るために前記容量制御調圧手段に供給される前記負荷油圧の変動を抑制し、その変動が抑制された前記負荷油圧を用いて前記容量制御油圧を作り出すように構成されることを特徴とする請求項1に記載の油圧駆動装置。
【請求項3】
前記油圧変動抑制手段は、前記負荷油圧を検出する負荷油圧検出手段と、前記負荷油圧検出手段により検出された前記負荷油圧に対応する検出信号に基づいて、前記負荷油圧の変動率よりも低い変動率の変動抑制油圧を作り出す変動抑制調圧手段とを備え、前記変動抑制調圧手段により作り出された前記変動抑制油圧を用いて前記容量制御油圧を作り出すように構成されることを特徴とする請求項1に記載の油圧駆動装置。
【請求項4】
前記油圧変動抑制手段は、前記容量制御油圧を作るために前記容量制御調圧手段に供給される前記負荷油圧の油路に設けられたアキュムレータを備え、前記アキュムレータにより変動が抑制された前記負荷油圧を用いて前記容量制御油圧を作り出すように構成されることを特徴とする請求項1に記載の油圧駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の油圧駆動装置と、前記油圧アクチュエータにより駆動される建設用作業装置とを備え、前記建設用作業装置により所要の作業を行うように構成されることを特徴とする作業機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−107664(P2012−107664A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255669(P2010−255669)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000150154)株式会社竹内製作所 (50)
【Fターム(参考)】