説明

油圧駆動装置

【課題】油圧ポンプ本体によって油圧的に駆動される油圧モータ本体が作業機を作動的に駆動するように構成された油圧駆動装置において、油圧駆動装置の耐久性向上を図ると共に、作業機の駆動開始をスムーズに行う。
【解決手段】駆動源によって作動的に駆動される油圧ポンプ本体と、前記油圧ポンプ本体に流体接続された油圧モータ本体とを備え、前記油圧モータ本体によって作業機を作動的に駆動する油圧駆動装置であって、前記油圧モータ本体から前記作業機へ至る伝動経路に、前記作業機の駆動をON/OFFするON/OFF操作に応じて動力伝達状態又は動力遮断状態となる摩擦板式クラッチ機構を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ポンプ本体及び油圧モータ本体を備え、前記油圧モータ本体によって作業機を作動的に駆動する油圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ポンプ本体及び油圧モータ本体を備え、前記油圧モータ本体によって作業機を作動的に駆動する油圧駆動装置は、従来から公知である(例えば、下記特許文献1参照)。
詳しくは、前記特許文献1に記載の油圧駆動装置は、吸引側がリザーバタンクに流体接続された状態で駆動源によって作動的に駆動される油圧ポンプ本体と、吸引側が供給ラインを介して前記油圧ポンプ本体の吐出側に流体接続された油圧モータ本体と、前記油圧モータ本体からの吐出油を前記リザーバタンクへ戻すリターンラインと、前記供給ラインに介挿された切換弁とを備え、前記切換弁が前記油圧ポンプ本体から前記油圧モータ本体への作動油の供給を係合又は遮断することによって、前記油圧モータ本体を選択的に駆動又は駆動停止させ得るようになっている。
【0003】
しかしながら、前記従来構成においては、前記油圧モータ本体を支持するモータ軸が直接的に作業機に作動連結されており、前記作業機の駆動状態又は駆動停止状態の切り換えは、前記油圧ポンプ本体から前記油圧モータ本体への作動油の供給又は供給停止を切り換えることによって行われている為、前記作業機の駆動開始時に前記油圧駆動装置に急激に負荷が掛かり、該油圧駆動装置の耐久性が悪化するという問題があった。斯かる問題は、特に、前記油圧駆動装置が、ブレードタイプのモア装置や除雪機等の慣性量の大きい作業機に適用される場合に顕著になる。
【0004】
又、前記従来構成においては、前記作業機を駆動状態から駆動停止状態へ移行した際に該作業機の回転停止に長時間を要し、さらには、前記作業機の駆動停止状態においても該作業機が外力によって意に反して回転する恐れがあった。
【特許文献1】米国特許第3,918,240号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、駆動源によって作動的に駆動される油圧ポンプ本体と、前記油圧ポンプ本体に流体接続された油圧モータ本体とを備え、前記油圧モータ本体によって作業機を作動的に駆動する油圧駆動装置であって、該油圧駆動装置の耐久性向上を図ると共に、前記作業機の駆動開始をスムーズに行える油圧駆動装置の提供を、一の目的とする。
又、本発明は、前記作業機を駆動状態から駆動停止状態へ移行させた際に該作業機の回転を可及的速やかに停止させると共に、前記作業機の駆動停止状態の際に該作業機が意に反して回転することを有効に防止し得る油圧駆動装置の提供を、他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成する為に、駆動源によって作動的に駆動される油圧ポンプ本体と、前記油圧ポンプ本体に流体接続された油圧モータ本体とを備え、前記油圧モータ本体によって作業機を作動的に駆動する油圧駆動装置であって、前記油圧モータ本体から前記作業機へ至る伝動経路に、前記作業機の駆動をON/OFFするON/OFF操作に応じて動力伝達状態又は動力遮断状態となる摩擦板式クラッチ機構を備えた油圧駆動装置を提供する。
【0007】
好ましくは、前記クラッチ機構は油圧の作用を受けて動力伝達状態となる油圧作動型とされ、前記クラッチ機構へ作動油を供給するクラッチ作動ラインには油圧漸増構造が備えられる。
【0008】
好ましくは、前記摩擦板式クラッチ機構と背反的に作動して前記作業機に制動力を作動的に付加する摩擦板式ブレーキ機構を備え得る。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、油圧モータ本体から作業機へ至る伝動経路に、作業機の駆動をON/OFFするON/OFF操作に応じて動力伝達状態又は動力遮断状態となる摩擦板式クラッチ機構を備えたので、作業機の駆動開始時に油圧駆動装置に急激に付加が掛かることを防止でき、該油圧駆動装置の耐久性を向上させることができる。さらに、前記作業機の駆動開始をスムーズに行うことができる。
【0010】
前記クラッチ機構が油圧作動型とされている場合において、前記クラッチ機構へ作動油を供給するクラッチ作動ラインに油圧漸増構造を備えれば、油圧駆動装置の耐久性をより向上させ得ると共に、作業機の駆動開始をよりスムーズに行うことができる。
【0011】
又、前記摩擦板式クラッチ機構と背反的に作動して前記作業機に制動力を作動的に付加する摩擦板式ブレーキ機構を備えれば、前記作業機の駆動状態から駆動停止状態への移行を可及的速やかに行うことができると共に、前記作業機の駆動停止状態の際に該作業機が意に反して回転することを有効に防止できる。さらに、前記作業機の駆動状態から駆動停止状態への移行時において、前記作業機に急激に制動力が掛かることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施の形態に係る油圧駆動装置100が適用された作業車輌1Aの側面図を示す。
又、図2に、前記作業車輌1Aのうち前記油圧駆動装置を含む部分の油圧回路図を、図3に、前記作業車輌1Aのうち残りの部分の油圧回路図を示す。図2にX,Yは図3におけるX,Yにそれぞれ流体接続されている。
さらに、図4に、図1におけるIV−IV線に沿った横断平面図を示す。
【0013】
本実施の形態においては、前記作業車輌1Aは、図1〜図4に示すように、胴体屈折(articulate)式の乗用芝刈り機とされている。
具体的には、前記作業車輌1は、車輌前後方向一方側(本実施の形態においては前方)に配設された第1フレーム11と、車輌前後方向他方側(本実施の形態においては後方)に配設された第2フレーム12であって、前記第1フレーム11に対して略垂直方向に沿った枢支軸10回り揺動自在に連結された第2フレーム12と、車輌前後方向一方側に配設された左右一対の第1駆動輪21L,21Rと、車輌前後方向他方側に配設された左右一対の第2駆動輪22L,22Rと、前記第1及び第2フレーム11,12の一方(図示の形態においては第2フレーム12)に支持された駆動源30と、前記駆動源30によって作動的に駆動される少なくとも一つの走行系油圧ポンプ本体42を有する走行系油圧ポンプユニット40と、前記左右一対の第1駆動輪21L,21Rを駆動する少なくとも一つの走行系油圧モータ本体52を有する第1車軸駆動装置50であって、前記第1フレーム11に連結された第1車軸駆動装置50と、前記左右一対の第2駆動輪22L,22Rを駆動する少なくとも一つの走行系油圧モータ本体を有する第2車軸駆動装置60であって、前記第2フレーム12に連結された第2車軸駆動装置60と、前記駆動源30によって作動的に駆動される作業機系油圧ポンプ本体120及び前記作業機系油圧ポンプ本体120によって油圧的に駆動される作業機系油圧モータ本体220を有する前記油圧駆動装置100と、前記作業機系油圧モータ本体220によって作動的に駆動されるモア装置等の作業機70とを備えている。
【0014】
本実施の形態においては、前記作業車輌1Aは、図3に示すように、さらに、ステアリングホイール等の人為操作可能な操舵部材5に連動して、前記第1フレーム11を前記第2フレーム12に対して前記枢支軸10回りに揺動させる油圧操舵装置15と、前記作業機70を昇降させる油圧昇降装置16とを備えている。
【0015】
前記走行系油圧ポンプユニット40は、図2及び図4に示すように、前記駆動源30に作動連結された走行系ポンプ軸41と、前記走行系ポンプ軸41に相対回転不能に支持された前記走行系油圧ポンプ本体42と、前記走行系ポンプ軸41を支持すると共に前記走行系油圧ポンプ本体42を収容するポンプ空間を形成する走行系ポンプケース43とを備えている。
【0016】
前記走行系油圧ポンプ本体42は、前記第1車軸駆動装置50における少なくとも一つの前記油圧モータ本体52、及び、前記第2車軸駆動装置60における少なくとも一つの前記油圧モータ本体62と共働して走行系HSTを形成するように、前記各油圧モータ本体52,62と流体接続されている。
【0017】
本実施の形態においては、図2に示すように、前記第1車軸駆動装置50は、前記左右の第1駆動輪21L,21Rをそれぞれ駆動する左右の第1ホイールモータ装置50L,50Rを備えている。そして、前記左右の第1ホイールモータ装置50L,50Rは、それぞれ、走行系第1油圧モータ本体52を有している。
同様に、前記第2車軸駆動装置60は、前記左右の第2駆動輪22L,22Rをそれぞれ駆動する左右の第2ホイールモータ装置60L,60Rを備えている。そして、前記左右の第2ホイールモータ装置60L,60Rは、それぞれ、走行系第2油圧モータ本体62を有している。
【0018】
従って、前記走行系油圧ポンプ本体42は、図2に示すように、閉回路を形成するように前記一対の走行系第1油圧モータ本体52及び前記一対の走行系第2油圧モータ本体62と流体接続されている。
具体的には、前記走行系油圧ポンプ本体42の前進時吐出側ポートは、第1作動油ライン55aを介して前記一対の走行系第1油圧モータ本体52の前進時吸引側ポートの双方に流体接続されている。
前記一対の走行系第1油圧モータ本体52の前進時吐出側ポートの双方は、第2作動油ライン55bを介して前記一対の走行系第2油圧モータ本体62の前進時吸引側ポートの双方に流体接続されている。
そして、前記一対の走行系第2油圧モータ本体62の前進時吐出側ポートの双方は、第3作動油ライン55cを介して前記走行系油圧ポンプ本体42の前進時吸引側ポートに流体接続されている。
【0019】
前記走行系ポンプケース43には、図2に示すように、前記第1作動油ライン55aの一部を形成する前進時高圧側作動油路47aと、前記第3作動油ライン55cの一部を形成する前進時低圧側作動油路47bとが設けられている。
さらに、前記ポンプケース43には、油圧源から前記走行系HSTの閉回路に作動油を補給する為の走行系チャージラインの一部を形成する走行系チャージ油路47cであって、前記油圧源から前記閉回路への油の流れを許容し且つ逆向きの流れを防止する走行系チェック弁47hが介挿された走行系チャージ油路47cと、前記前進時高圧側作動油路47a及び前記前進時低圧側作動油路47bの間を流体接続するバイパス油路47dであって、切換弁47eによって選択的に連通又は遮断されるバイパス油路47dと、一端部が前記ポンプケース43の内部空間に流体接続され且つ他端部が前記走行系チェック弁47hより補給油流れ方向上流側において前記走行系チャージ油路47cに流体接続された自吸油路47fとが設けられている。
なお、図2中の符号47gは、前記走行系チャージラインの油圧を設定する走行系チャージリリーフ弁である。
【0020】
前記走行系ポンプケース43は、図4に示すように、前記走行系油圧ポンプ本体42を囲繞するケース本体44であって、前記走行系油圧ポンプ本体42が挿通し得る開口が設けられたケース本体44と、前記開口を閉塞するように前記ケース本体44に着脱可能に連結されるポートブロック45とを有しており、前記各油路は前記ポートブロック45に形成されている。
【0021】
本実施の形態においては、前記走行系ポンプケース43は、図4に示すように、前記走行系ポンプ軸41が前記駆動源30に作動連結され得る状態で、前記駆動源30に連結されたフライホイールカバー36に固定される。
詳しくは、図2及び図4に示すように、前記駆動源30の出力部30aにはフライホイール本体35が連結されており、前記走行系ポンプ軸41は、前記フライホイール本体35を介して該駆動源30に作動連結されている。
そして、前記走行系ポンプケース43は、前記フライホイール本体35を外部からカバーするように前記駆動源30に連結された前記フライホイールカバー36に固定されている。
【0022】
本実施の形態においては、前記走行系ポンプ軸41は、ダンパー機能を有する軸連結機構38を介して、前記フライホイール本体35に作動連結されている。
詳しくは、図4に示すように、前記フライホイール本体35には、剛性の出力部材37が連結されている。
前記軸連結機構38は、前記出力部材37に連結された弾性部材38aと、前記弾性部材38aに連結された剛性の軸連結部材38bとを有している。
前記軸連結部材38bには、前記走行系ポンプ軸41の入力端部に設けられたスプラインと係合するスプラインが設けられている。
【0023】
このように、前記走行系ポンプ軸41を前記弾性部材38aを介して前記フライホイール本体35に作動連結することにより、前記弾性部材38aによるダンパー作用によって、前記駆動源30の出力の角速度変動が前記走行系ポンプ軸41へ伝播することを有効に防止することができる。
【0024】
本実施の形態においては、前記走行系油圧ポンプ本体42は吸引/吐出量が可変とされた可変容積型とされている。
即ち、前記走行系油圧ポンプユニット40は、前記構成に加えて、外部操作に基づき前記走行系油圧ポンプ本体42の吸引/吐出量を変更させる走行系出力調整部材46(図2参照)を有している。
前記走行系出力調整部材46は、例えば、前記走行系油圧ポンプ本体42におけるピストンの進退動作範囲を画する可動斜板46a(図4参照)と、前記可動斜板46aを傾転動作させ得るように該可動斜板46aに作動連結された制御軸46b(図1参照)とを有している。
【0025】
前記制御軸46bは、運転席近傍に備えられた人為操作可能な走行変速操作部材6(図1参照)に作動連結されている。
なお、本実施の形態においては、前記可動斜板46aは、中立位置を挟んで正逆双方向に傾転可能とされている。
即ち、前記走行変速操作部材6を前進方向へ操作すると前記可動斜板46aは前進方向へ傾転し、且つ、前記走行変速操作部材6を後進方向へ操作すると前記可動斜板46aは後進方向へ傾転するようになっている。なお、本実施の形態においては、前記変速操作部材6をシーソーペダル式に構成したが、前進専用、後進専用それぞれの2ペダル式でも構わない。
【0026】
本実施の形態においては、前記走行系油圧ポンプユニット40は、さらに、前記構成に加えて、前記ポンプ軸41によって作動的に駆動される第1補助ポンプ本体48a及び第2補助ポンプ本体48bを備えている。
【0027】
図2に示すように、前記第1補助ポンプ本体48aは、前記走行系HSTに対して作動油を補給するチャージポンプとして作用している。
前記第2補助ポンプ本体48bは、図2及び図3に示すように前記油圧操舵装置15及び前記油圧昇降装置16に対して作動油を供給している。
前記第1補助ポンプ本体48aは、例えば、トロコイドポンプとされ、前記第2補助ポンプ本体48bは、例えば、ギヤポンプとされ得る。
【0028】
なお、前記作業車輌1Aは、図2に示すように、外部タンク90を有しており、前記第1及び第2補助ポンプ本体48a,48bは前記外部タンク90を油源として作用するように構成されている。
【0029】
ここで、本実施の形態に係る前記油圧駆動装置100について説明する。
図5に、前記油圧駆動装置100の油圧回路図を示す。
前記油圧駆動装置100は、図2,図4及び図5に示すように、前記駆動源30によって作動的に駆動される作業機系油圧ポンプ本体120と、前記作業機系油圧ポンプ本体120によって流体的に駆動され且つ前記作業機70を作動的に駆動する作業機系油圧モータ本体220と、前記作業機系油圧モータ本体220から前記作業機70へ至る伝動経路に介挿されたクラッチ機構500とを備えている。
【0030】
詳しくは、前記油圧駆動装置100は、図4及び図5に示すように、前記駆動源30に作動的に連結される作業機系ポンプ軸110と、前記作業機系ポンプ軸110に相対回転不能に支持された前記作業機系油圧ポンプ本体120と、前記作業機系油圧ポンプ本体120から吐出される作動油によって油圧的に駆動される前記作業機系油圧モータ本体220と、前記作業機系油圧モータ本体220によって作動的に回転駆動され、前記作業機70へ向けて回転動力を出力する作業機系モータ軸210と、前記作業機系モータ軸210から前記作業機70の伝動経路に介挿された前記クラッチ機構500とを有している。
【0031】
本実施の形態に係る前記油圧駆動装置100においては、前記作業機系油圧ポンプ本体120及び作業機系油圧モータ本体220が互いに離間配置可能とされている。
具体的には、前記油圧駆動装置100は、図1,図2及び図4に示すように、前記作業機系油圧ポンプ本体120を有する作業機系油圧ポンプユニット100Aと、前記作業機系油圧モータ本体220を有する作業機系油圧モータユニット200Aとを備えている。
【0032】
前記作業機系油圧ポンプユニット100Aは、図2及び図4に示すように、前記駆動源30に作動連結される前記作業機系ポンプ軸110と、前記作業機系ポンプ軸110に相対回転不能に支持された前記作業機系油圧ポンプ本体120と、前記作業機系ポンプ軸110を軸線回り回転自在に支持すると共に前記作業機系油圧ポンプ本体120を収容する作業機系ポンプケース130とを備えている。
【0033】
前記作業機系ポンプケース130は、図4に示すように、前記作業機系油圧ポンプ本体120を囲繞するような形状とされた作業機系ポンプケース本体131と、前記作業機系ポンプケース本体131に連結される作業機系ポンプ側ポートブロック135とを備えている。
【0034】
前記作業機系ポンプケース本体131は、前記作業機系ポンプ軸110の軸線と直交する方向に延びる端壁132と、前記端壁132の周縁部から前記作業機系ポンプ軸110の軸線方向に延びる周壁133とを有し、前記周壁133の自由端側に前記油圧ポンプ本体120が挿通可能な開口が設けられている。
前記作業機系ポンプ側ポートブロック135は、前記開口を閉塞するように前記作業機系ポンプケース本体131に着脱可能に連結されている。
【0035】
前記作業機系ポンプケース130は、前記作業機系ポンプ軸110が前記駆動源30に作動連結され得る状態で設置箇所に固定されるようになっている。
本実施の形態においては、図4に示すように、前記作業機系ポンプケース130は、前記作業機系ポンプ軸110が前記走行系ポンプ軸41と略平行となるように、前記フライホイールカバー36に連結された第1取付ブラケット181に固定されている。
詳しくは、前記作業機系ポンプケース本体131の前記端壁132には取付フランジ132aが設けられており、前記作業機系ポンプケース130は前記取付フランジ132aを介して前記第1取付ブラケット181に固定されている。
【0036】
なお、図4中の符号182は、前記第1取付ブラケット181と対向するように前記フライホイールカバー36に連結された第2取付ブラケットであり、前記作業機系ポンプ軸110に相対回転不能に外挿された入力軸115が、前記第1及び第2取付ブラケット181,182に支持されている。
【0037】
前記作業機系ポンプ軸110は、入力端部を形成するように一端部が外方へ延在された状態で前記作業機系ポンプケース130に軸線回り回転自在に支持されている。
前記作業機系ポンプ軸110の前記入力端部は、作業機系伝動機構170を介して前記駆動源30に作動連結されている。
【0038】
前記作業機系伝動機構170は、図2及び図4に示すように、前記駆動源30から前記走行系ポンプ軸41へ至る伝動経路を形成する伝動部材(本実施の形態においては前記出力部材37)に相対回転不能に設けられたプーリー等の駆動側部材171と、前記作業機系ポンプ軸110に相対回転不能に設けられたプーリー等の従動側部材172と、前記駆動側部材171及び前記従動側部材172に巻き回されたプーリー,コグベルト又はチェーン等の伝動部材173とを有し得る。
【0039】
前記作業機系油圧ポンプ本体120は、例えば、アキシャルピストンタイプとされる。
即ち、前記作業機系油圧ポンプ本体120は、前記作業機系ポンプ軸110に相対回転不能に支持されたシリンダブロックと、前記シリンダブロックに前記ポンプ軸110を基準にして軸線回り相対回転不能且つ軸線方向進退可能に支持された複数のピストンとを有し得る。
【0040】
前記作業機系油圧ポンプユニット100Aは、さらに、図2に示すように、前記作業機系油圧ポンプ本体120の容積量を変化させる容積調整機構150を備えている。
前記容積調整機構150は、例えば、前記作業機系油圧ポンプ本体120から吐出される作動油の方向を切り換える為に備えられる。
即ち、本実施の形態においては、図2に示すように、前記作業機系油圧ポンプ本体120及び前記作業機系油圧モータ本体220は、一対の第1及び第2作業機系油圧ライン301a,301bを介して閉回路を形成するように流体接続されている。
斯かる構成においては、前記容積調整機構150によって前記作業機系油圧ポンプ本体120の作動油吐出方向を切り換え可能とすることにより、前記作業機70を作業方向に回転させる作業状態と、前記作業機70を作業方向とは反対方向に回転させる反転状態とを容易に得ることができる。
なお、前記反転状態は、例えば、前記作業機70がモア装置や除雪機である場合において、石等の不要物が挟まった際に、前記不要物を除去する際に有効に使用され得る。
【0041】
前記容積調整機構150は、図4に示すように、前記ピストンの自由端部と直接又は間接的に係合した状態で前記作業機系ポンプ軸110と直交する揺動軸線回りに傾転可能とされた可動斜板151と、前記作業機系ポンプケース130に前記揺動軸線回り回転自在に支持された制御軸であって、軸線回りの回転によって前記可動斜板151を傾転させ得るように該可動斜板に作動連結された制御軸とを有し得る。
【0042】
前記容積調整機構150の前記作業状態又は前記反転状態の切換は、例えば、運転席近傍に備えられた人為操作可能な切換操作部材(図示略)であって、前記制御軸に作動連結された切換操作部材によって行われる。
詳しくは、前記制御軸が軸線回り第1位置に位置されると、前記可動斜板151は作業位置に位置し、これにより、前記作業機系油圧ポンプ本体120は、前記作業機70を作業方向へ回転させる方向に、仕様により設定される作業機70の回転速度に応じた所定油量を吐出する。
一方、前記制御軸が軸線回り第2位置に位置されると、前記可動斜板151は反転位置に位置し、これにより、前記作業機系油圧ポンプ本体120は、前記作業機70を反転方向へ回転させる方向に、仕様により設定される所定油量を吐出する。
斯かる構成において、前記切換操作部材は、人為操作に基づき前記制御軸を前記第1位置及び前記第2位置に位置させ得るように該制御軸に作動連結されている。
好ましくは、前記切換操作部材は、前記制御軸を前記第1位置及び前記第2位置に保持するディテント機能を有すると共に、前記ディテント機能を解除して前記制御軸の前記第1位置又は前記第2位置への切換操作を行えるように構成される。
【0043】
本実施の形態においては、前記作業機系油圧ポンプユニット100Aは、図2及び図4に示すように、さらに、前記クラッチ機構500に対する作動油の油圧源となる作業機系補助ポンプ本体190を有している。
前述の通り、本実施の形態においては、図2及び図4に示すように、前記作業機系油圧ポンプ本体120及び前記作業機系油圧モータ本体220は閉回路を形成するように流体接続されており、前記閉回路に作動油を補給する為の構成が必要となる。
この点に鑑み、前記作業機系補助ポンプ本体190は、前記クラッチ機構500に対する作動油の油圧源として作用すると共に、前記閉回路に対する補給油の油圧源としても作用している。
【0044】
前記作業機系補助ポンプ本体190は、前記作業機系ポンプ軸110によって作動的に駆動され得る。
具体的には、図4に示すように、前記作業機系ポンプ軸110は、入力端部を形成する一端部とは反対側の他端部も前記作業機系ポンプケース130から外方へ延在されている。そして、前記作業機系補助ポンプ本体190は、前記作業機系ポンプ軸110の他端部によって駆動されている。
【0045】
このように、本実施の形態においては、前記作業機系油圧ポンプユニット100Aは前記作業機系補助ポンプ本体190を有している。従って、前記作業機系ポンプケース130は、さらに、図4に示すように、前記作業機系補助ポンプ本体190を囲繞する作業機系補助ポンプケース139を有している。
なお、本実施の形態においては、前記作業機系ポンプ軸110は、図4に示すように、前記一端部が前記作業機系ポンプケース本体131から外方へ延在して前記入力端部を形成し、且つ、前記他端部が前記作業機系ポンプ側ポートブロック135から外方へ延在して前記作業機系補助ポンプ本体190を駆動する出力端部を形成している。従って、前記作業機系補助ポンプケース139は、前記作業機系補助ポンプ本体190を囲繞するように前記作業機系ポンプ側ポートブロック135に連結されている。
【0046】
なお、本実施の形態においては、前記クラッチ機構500に対する作動油の油圧源及び前記閉回路に対する補給油の油圧源として作用する前記作業機系補助ポンプ本体190を前記油圧駆動装置100に備えたが、当然ながら、前記油圧源として、前記第1補助ポンプ本体48a又は前記第2補助ポンプ本体48b等の外部のポンプを利用することも可能である。
【0047】
図6に、図1におけるV−V線に沿った前記作業機系油圧モータユニット200Aの縦断側面図を示す。
図2,図5及び図6に示すように、前記作業機系油圧モータユニット200Aは、前記作業機系油圧ポンプ本体120によって油圧的に駆動される前記作業機系油圧モータ本体220と、前記作業機系油圧モータ本体220によって軸線回りに回転駆動される前記作業機系モータ軸210と、前記作業機系モータ軸210を軸線回り回転自在に支持すると共に前記作業機系油圧モータ本体220を収容する作業機系モータケース230とを備えている。
【0048】
本実施の形態においては、前記クラッチ機構500は、前記作業機系油圧モータユニット200Aに備えられている。
即ち、本実施の形態においては、前記作業機系油圧モータユニット200Aは、図5及び図6に示すように、前記構成に加えて、前記クラッチ機構500と、前記作業機系モータ軸210から前記クラッチ機構500の駆動側へ動力を伝達する伝動機構580と、前記クラッチ機構500の従動側に作動連結され、前記作業機70へ向けて回転動力を出力する出力軸650と、前記クラッチ機構500及び前記伝動機構580を収容すると共に前記出力軸650を支持するクラッチケース600とを備えている。
【0049】
前記作業機系モータケース230は、図6に示すように、前記作業機系油圧モータ本体220が挿通可能な開口を有する作業機系モータケース本体231と、前記開口を閉塞するように前記作業機系モータケース本体231に連結される蓋部材235とを備えている。
本実施の形態においては、図6に示すように、前記作業機系モータケース230は、前記クラッチケース600に着脱可能に連結されている。
【0050】
本実施の形態においては、前記作業機系油圧モータ本体220は、図5に示すように、ギヤモータとされている。
前記ギヤモータ型の作業機系油圧モータ本体220は、互いに噛合された一対の第1及び第2モータギヤ221,222を有している。
なお、当然ながら、前記作業機系油圧モータ本体220として、アキシャルピストンタイプを採用することも可能である。
【0051】
前記作業機系モータ軸210は、前記一対の第1及び第2モータギヤ221,221の一方(図示の形態においては第1モータギヤ221)を相対回転不能に支持し、且つ、一端部が出力端部を形成するように外方へ延在された状態で、前記作業機系モータケース230に軸線回り回転自在に支持されている。
【0052】
前記作業機系油圧モータユニット200Aは、前記出力軸650が前記作業機70の入力軸71aに作動連結されるように、設置箇所に固定される。
本実施の形態においては、図1,図5及び図6に示すように、前記作業車輌1Aは、前記作業機70として複数のブレードを持ったモア装置を備えている。従って、前記作業機系油圧モータユニット200Aは、前記出力軸650から前記モア装置70へ至る伝動経路の構造簡略化の為に、前記モア装置70に固定されている。
【0053】
詳しくは、前記モア装置70は、図1,図5及び図6に示すように、略垂直方向に沿った入力軸71a及び前記入力軸71aに相対回転不能に支持された刈刃71bを有する刈刃アッセンブリ71と、前記刈刃アッセンブリ71を外部から保護する刈刃カバー72とを有している。
なお、本実施の形態においては、前記モア装置70は、前記刈刃アッセンブリ71を複数個、有している。
従って、前記モア装置70は、複数の前記刈刃アッセンブリ71及び前記刈刃カバー72に加えて、前記出力軸650から動力が入力される一の刈刃アッセンブリ(以下、入力側刈刃アッセンブリという)から他の刈刃アッセンブリ(以下、従動側刈刃アッセンブリという)へ動力を伝達する伝動機構と、前記伝動機構を外部から保護する伝動カバー76とを有している。
【0054】
本実施の形態においては、前記伝動機構はプーリー伝動機構75とされている。
詳しくは、前記プーリー伝動機構75は、図6に示すように、前記入力側刈刃アッセンブリ71の入力軸71aに相対回転不能に支持された駆動側プーリー75aと、前記従動側刈刃アッセンブリの入力軸に相対回転不能に支持された従動側プーリー(図示せず)と、前記駆動側プーリー71a及び従動側プーリーに巻き回されたベルト等の伝動体75bとを有している。
【0055】
前記プーリー伝動機構75は、図5に示すように、前記刈刃カバー72より上方側に配置されている。
従って、前記伝動カバー76は、前記プーリー伝動機構75を覆うように前記刈刃カバー72の上面に固着されている。
そして、前記作業機系油圧モータユニット200Aは、前記出力軸650が前記入力側刈刃アッセンブリ71の入力軸71aに連結された状態で、前記伝動カバー76に固定されている。
なお、前記作業車輌1Aが、前記作業機70として、機体の前部にオーガ、ブロア及びシュータを有し、前記オーガで雪を掻き集め、掻き集めた雪を前記ブロアで跳ね上げ、跳ね上げた雪を前記シュータで投雪するように構成された除雪装置とされている場合には、前記作業機系油圧モータユニット200Aを前記除雪装置に固定し、前記出力軸650にて前記オーガ及び前記ブロアを駆動するように構成され得る。
【0056】
前記クラッチ機構500は、図6に示すように、前記作業機系モータ軸210に前記伝動機構580を介して作動連結された駆動側部材510と、前記出力軸650に相対回転不能に支持された従動側部材560と、前記駆動側部材510に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持された駆動側摩擦板520と、前記駆動側摩擦板520と対向した状態で前記従動側部材560に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持された従動側摩擦板530とを備えた摩擦板型とされている。
【0057】
本実施の形態においては、前記クラッチ機構500は、作動油の供給を受けると前記駆動側摩擦板520及び前記従動側摩擦板530を含むクラッチ摩擦板群が摩擦係合することで前記作業機系モータ軸210から前記入力側刈刃アッセンブリ71の入力軸71aへ動力伝達され、且つ、作動油の供給が停止されると前記クラッチ摩擦板群の摩擦係合が解除され前記動力伝達が遮断される油圧作動型とされている。
従って、前記クラッチ機構500は、前記構成に加えて、作動油の油圧を受けて前記クラッチ摩擦板群を摩擦係合させるクラッチピストン540と、前記クラッチピストン540を前記クラッチ摩擦板群から離間する方向へ付勢する戻しバネ550とを備えている。
【0058】
本実施の形態においては、前記伝動機構580はギヤ列を有している。
具体的には、前記伝動機構580は、図5及び図6に示すように、前記作業機系モータ軸210に対して相対回転不能とされた第1伝動ギヤ581と、前記第1伝動ギヤ581に噛合された状態で前記駆動側部材510に対して相対回転不能とされた第2伝動ギヤ582とを含んでいる。
なお、本実施の形態においては、図6に示すように、前記第2伝動ギヤ582は前記駆動側部材510に一体形成されている。
【0059】
前記クラッチケース600は、前記作業機系モータ軸210が前記出力軸650と略平行となるように前記作業機系モータケース230を支持した状態で、前記伝動カバー76に連結されている。
詳しくは、前記クラッチケース600は、図6に示すように、前記ギヤ列580を収容するギヤ収容部600Aと、前記クラッチ機構500を収容するクラッチ収容部600Bと、前記作業機系モータケース230を支持するモータケース支持部600Cとを有している。
【0060】
具体的には、前記クラッチケース600は、前記ギヤ列580の軸線方向一方側の端面を覆う第1端壁部601aと、前記ギヤ列580の外周を覆うように前記第1端面部601aの周縁から軸線方向他方側へ延びる第1周壁部602aと、前記ギヤ列580における前記第1伝動ギヤ581の軸線方向他方側の端面を覆うように前記第1周縁部602aの軸線方向他方側の端部が前記作業機系モータ軸210と直交する方向へ延びる第2端壁部601bと、前記第2端壁部601bから軸線方向他方側へ延びる第2周壁部602bと、前記第2周壁部602bの軸線方向他方側を閉塞する第3端壁部601cとを有している。
【0061】
前記クラッチケース600において、前記第1端壁部601a,前記第1周壁部602a及び前記第2端壁部601bによって画される内部空間が前記ギヤ収容部600Aとして作用し、前記第2端壁601bの外表面が前記モータケース支持部600Cとして作用し、前記第2周壁部602b及び前記第3端壁部601cによって画される内部空間が前記クラッチ収容部600Bとして作用している。
なお、本実施の形態においては、前記クラッチケース600は、ケース本体610と、前記ケース本体610に着脱可能に連結される蓋部材620及びクラッチ側ポートブロック630とを有しており、前記ケース本体610が前記第1周壁部602a,前記第2端壁部601b及び前記第2周壁部602bを一体的に有し、前記蓋部材620が前記第1端壁部601aとして作用し、前記クラッチ側ポートブロック630が前記第3端壁部601cとして作用している。
【0062】
前記作業機系モータケース230は、前記作業機系モータ軸210の出力端部が前記ギヤ収容部600A内に突入されるように、前記第2端壁部601bに支持されている。
斯かる構成によれば、前記第2周壁部602b回りのデッドスペースを前記作業機系モータケース230の設置空間として有効に利用することができる。
【0063】
前記出力軸650は、前記作業機系モータ軸210と略平行な状態で前記第1端壁部601a及び前記第3端壁部601cによって支持されている。
前記出力軸650は、出力端部を形成する一端部が前記第1端壁部601aを貫通して外方へ延在されており、且つ、前記一端部とは反対側の他端部は前記第3端壁部601cを形成する前記クラッチ側ポートブロック630内で終焉されている。
【0064】
前記出力部650には、前記クラッチ機構500に対して作動油を供給する下記クラッチ作動ライン310の一部を形成する軸線油路が形成されている。
又、前記クラッチ側ポートブロック630にも、前記クラッチ作動ライン310の一部を形成する油路が形成されている。
前記油路及び前記軸線油路は、前記出力軸の他端部を軸受する領域に形成されたロータリージョイントを介して互いに流体接続されている。
【0065】
前記第1伝動ギヤ581は、前記作業機系モータ軸210に相対回転不能に支持された状態で前記ギヤ収容部600A内に収容されている。
前記駆動側部材510に一体形成された前記第2伝動ギヤ582は、前記出力軸650に相対回転自在に支持された状態で前記ギヤ収容部600A内に収容されている。
前記クラッチ機構は、前記クラッチ収容部600B内に位置するように前記出力軸650に支持されている。
【0066】
さらに、本実施の形態に係る油圧駆動装置100は、前記構成に加えて、前記クラッチ機構500と背反的に作動して前記作業機70に制動力を作動的に付加するブレーキ機構700を備えている。
前記ブレーキ機構700は、図5及び図6に示すように、前記作業機系油圧モータユニット200Aに備えられている。
【0067】
詳しくは、前記ブレーキ機構700は、前記クラッチケース600に前記出力軸650回り回転不能に支持された固定側摩擦板710と、前記固定側摩擦板710と対向された状態で前記出力軸650に相対回転不能に支持された回転側摩擦板720と、前記固定側摩擦板710及び前記回転側摩擦板720を含むブレーキ摩擦板群に対して接離可能とされたブレーキピストン730であって、前記クラッチピストン540に連動連結されたブレーキピストン730とを備えている。
【0068】
前記ブレーキピストン730は、前記クラッチピストン540が作動油の油圧によって前記戻しバネ550の付勢力に抗して前記クラッチ摩擦板群を摩擦係合させる際には前記ブレーキ摩擦板群から離間され、且つ、前記クラッチピストン540への作動油の供給が停止された該クラッチピストン540が前記戻しバネ550の付勢力によって前記クラッチ摩擦板群から離間される際には前記ブレーキ摩擦板群を摩擦係合させるように、前記クラッチピストン540に連動連係されている。
【0069】
ここで、前記油圧駆動装置100の油圧回路について説明する。
図5に示すように、前記作業機系油圧ポンプ本体120は、一方が吸引ポートとして作用し且つ他方が吐出ポートとして作用する一対の第1及び第2ポンプ側ポート120a,120bを有している。
同様に、前記作業機系油圧モータ本体220は、一方が吸引ポートして作用し且つ他方が吐出ポートとして作用する一対の第1及び第2モータ側ポート220a,220bを有している。
【0070】
前記油圧駆動装置100は、一端部が前記一対のポンプ側ポート120a,120bのうち前記作業機70を作業方向に回転させる際(以下、作業時という)に吐出ポートとして作用する側の第2ポンプ側ポート120bに流体接続され、且つ、他端部が前記一対の第1及び第2モータ側ポート220a,220bのうち作業時に吸引ポートとして作用する第1モータ側ポート220aに流体接続された前記第1作業機系油圧ライン301aと、一端部が前記一対の第1及び第2モータ側ポート220a,220bのうち作業時に吐出ポートとして作用する第2モータ側ポート220bに流体接続され且つ他端部が前記一対のポンプ側ポート120a,120bのうち作業時に吸引ポートとして作用する側の第1ポンプ側ポート120aに流体接続された前記第2作業機系油圧ライン301bと、一端部が油圧源に流体接続され且つ他端部が前記クラッチ機構500に流体接続されたクラッチ作動ライン310と、前記クラッチ作動ラインに介挿されたクラッチ切換弁320と、前記クラッチ機構500の作動油圧を設定するクラッチ用リリーフ弁330とを備えている。
【0071】
前記クラッチ切換弁320は、前記クラッチ作動ライン310のうち該クラッチ切換弁320より上流側及び下流側にそれぞれ位置する上流側ライン311及び下流側ライン312を流体接続させる作動油供給状態と、前記下流側ライン312をドレンライン315に流体接続させる作動油排出状態とを選択的にとり得るように構成されている。
本実施の形態においては、前記クラッチ切換弁320は、作動油排出状態の際に、前記下流側ライン312に加えて前記上流側ライン311も前記ドレンライン315に流体接続させている。
【0072】
前記クラッチ切換弁320の状態制御は、運転席近傍に備えられる作業機駆動入切レバー等の作業機操作部材7のON/OFF操作を検出するON/OFFスイッチ8からの信号に基づき、コントローラ2によって行われる。(図1及び図5参照)。
即ち、前記作業機70のON操作時には前記クラッチ切換弁320は作動油供給状態とされ、これにより、前記クラッチ機構500は動力伝達状態となる。
一方、前記作業機70のOFF操作時には前記クラッチ切換弁320は作動油排出状態とされ、これにより、前記クラッチ機構500は動力遮断状態となる。
【0073】
このように、本実施の形態に係る油圧駆動装置100は、前記作業機系油圧モータ本体220から前記作業機70へ至る伝動経路に摩擦板式クラッチ機構500を備え、前記作業機70のON操作時には前記クラッチ機構500が動力伝達状態となり且つ前記作業機70のOFF操作時には前記クラッチ機構500が動力遮断状態となるように構成されているので、前記作業機70の駆動開始時に該油圧駆動装置100に急激に負荷が生じることを有効に防止でき、前記作業機70の駆動開始をスムーズに行うことができる。
【0074】
即ち、従来の油圧駆動装置においては、作業機系モータ軸が直接的に作業機に作動連結されており、作業機の駆動状態又は駆動停止状態の切り換えは、作業機系油圧ポンプ本体から作業機系油圧モータ本体への作動油の供給又は供給停止を切り換えることによって行われていた。
斯かる従来構成によれば、作業機を駆動停止状態から駆動状態へ移行させる駆動開始時に、油圧駆動装置に急激に負荷が掛かり、該油圧駆動装置の耐久性が悪化する恐れがある。特に、前記作業機として、ブレードタイプのモア装置や除雪機等の慣性量の大きい作業機が用いられている場合には、その恐れが大である。
【0075】
これに対し、本実施の形態においては、前述の通り、前記作業機系モータ軸210から前記作業機70へ至る伝動経路に、前記作業機70の駆動をON/OFFするON/OFF操作に応じて動力伝達状態又は動力遮断状態となる前記摩擦板式クラッチ機構500が備えられている。
斯かる構成によれば、前記作業機70を駆動停止状態から駆動状態へ移行させる駆動開始時に、前記クラッチ摩擦板群が滑りながら摩擦係合を開始し始め、最終的に完全に摩擦係合する。従って、前記作業機70の駆動開始時において、前記作業機系モータ軸210から前記作業機70へ徐々に動力伝達されることになり、前記油圧駆動装置100に急激に負荷が掛かることを有効に防止でき、前記作業機70の駆動開始をスムーズに行うことができる。
【0076】
前述の通り、本実施の形態においては、前記クラッチ機構500は油圧作動型とされている。
斯かる構成においては、好ましくは、前記クラッチ作動ライン310に油圧漸増構造を備えることができ、これにより、前記作業機70の駆動開始をよりスムーズに行うことができる。
本実施の形態においては、図5に示すように、前記下流側ライン312にアキュームレータ340が備えられており、該アキュームレータ340によって該下流側ライン312の油圧が前記クラッチ用リリーフ弁330によって設定される作動油圧まで徐々に漸増するように構成されている。
なお、本実施の形態においては、図5に示すように、前記クラッチ用リリーフ弁330及び前記アキュームレータ340は前記作業機系油圧モータユニット200Aに装着され、前記クラッチ切換弁320は前記作業機系油圧ポンプユニット100Aに装着されている。
また、前記下流側ライン312に絞りを設けて前記クラッチ機構500への供給油量を制限することも可能である。
【0077】
前記油圧漸増構造は、前記構成に限定されるものではなく、種々の構成を採用し得る。
例えば、前記クラッチ用リリーフ弁330及び前記アキュームレータ340に代えてディレイリリーフ弁を採用することも可能であるし、前記アキュームレータ340を削除すると共に、前記クラッチ切換弁に代えて電磁比例制御式のクラッチ切換弁を採用することも可能である。
【0078】
さらに、本実施の形態においては、前述の通り、前記クラッチ機構500と背反的に作動して前記作業機70に制動力を作動的に付加する前記ブレーキ機構700を備えている。
従って、前記作業機70を駆動状態から駆動停止状態へ移行した際に該作業機70の回転停止時間を短縮化できると共に、前記作業機70の駆動停止状態において該作業機70が外力によって意に反して回転することを有効に防止できる。
又、前記ブレーキ機構700として摩擦板式ブレーキ機構を用いている為、前記作業機70の駆動状態から駆動停止状態への移行時に、前記ブレーキ摩擦板群が滑りながら摩擦係合を開始し始め、最終的に完全に摩擦係合する。従って、前記作業機70を駆動状態から駆動停止状態へ移行させる際に、前記作業機70に対して徐々に制動力が付加されることになり、前記作業機70に急激に制動力が掛かることを有効に防止できる。
【0079】
前述の通り、本実施の形態に係る油圧駆動装置100は、前記クラッチ機構500に対する作動油の油圧源として作用すると共に、前記作業機系油圧ポンプ本体120及び前記作業機系油圧モータ本体220を含む前記閉回路に対する補給油の油圧源として作用する前記作業機系補助ポンプ本体190を有している。
従って、前記油圧駆動装置100は、図5に示すように、前記油圧回路に加えて、さらに、一端部がリザーバタンク90等の油源に流体接続され且つ他端部が前記作業機系補助ポンプ本体190の吸引側に流体接続された吸引ライン370と、一端部が前記補助ポンプ本体190の吐出側に流体接続された吐出ライン375と、一端部が前記吐出ライン375に流体接続され且つ他端部がチャージ用チェック弁385を介して前記一対の作業機系油圧ライン301a,301bの少なくとも一方に流体接続された作業機系チャージライン380とを有している。
【0080】
図5に示すように、前記クラッチ作動ライン310は、前記吐出ライン375に流体接続されている。
詳しくは、前記吐出ライン375はリリーフ弁376によって所定油圧に設定されている。
そして、前記作業機系チャージライン380及び前記クラッチ作動ライン310は、図5に示すように、それぞれ、減圧弁377及び絞り378を介して、前記吐出ライン375に流体接続されている。
斯かる構成を備えることにより、前記作業機系補助ポンプ本体190からの圧油を、前記作業機系チャージライン380及び前記クラッチ作動ライン310の双方に有効に供給することができる。
【0081】
なお、図2及び図5中の符号361,362は、それぞれ、前記作業機系ポンプケース130内の油及び前記作業機系モータケース230内の油を前記リザーブタンク90へ排出する為のポンプ側ドレンライン及びモータ側ドレンラインである。
【0082】
実施の形態2
以下、本発明の他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図7に、本実施の形態に係る油圧駆動装置101の油圧回路図を示す。
なお、図7中、前記実施の形態1におけると同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0083】
図7に示すように、本実施の形態に係る油圧駆動装置101は、前記作業機系油圧ポンプ本体120及び前記作業機系油圧モータ本体220が開回路を形成するように流体接続されている。
【0084】
具体的には、前記油圧駆動装置101は、図7に示すように、一端部が前記リザーバタンク90等の油源に流体接続され且つ他端部が前記作業機系油圧ポンプ本体120の吸引ポート120inに流体接続された吸引ライン420と、一端部が前記作業機系油圧ポンプ本体120の吐出ポート120outに流体接続された吐出ライン430と、一端部が前記第1及び第2モータ側ポート220a,220bのうち作業時に吸引ポートとして作用する第1モータ側ポート220aに流体接続された第1作業機系油圧ライン401aと、前記第1及び第2モータ側ポート220a,220bのうち作業時に吐出ポートとして作用する第2モータ側ポート220bに流体接続された第2作業機系油圧ライン401bと、一端部が前記リザーバタンク90に流体接続された排出ライン440とを備えている。
【0085】
本実施の形態においては、図7に示すように、前記作業機系油圧ポンプ本体120として固定容積型ポンプ本体を採用しつつ、前記作業機70を反転方向へも駆動可能とする為に、さらに、下記構成を備えている。
即ち、前記油圧駆動装置101は、図7に示すように、前記吐出ライン430を前記第1作業機系油圧ライン401aに流体接続させ且つ前記第2作業機系油圧ライン401bを前記排出ライン440に流体接続させる作業状態と、前記吐出ライン430を前記第2作業機系油圧ライン401bに流体接続させ且つ前記第1作業機系油圧ライン401aを前記排出ライン440に流体接続させる反転状態とを選択的に取り得る切換弁450を有している。
前記切換弁450は、例えば、人為操作に応じて作業状態又は反転状態が選択的に切り替わるように構成される。
本実施の形態においては、前記切換弁450は、前記作業機系油圧ポンプユニット100Aに装着されている。
【0086】
なお、前記油圧駆動装置101においては、前述の通り、前記作業機系油圧ポンプ本体120及び前記作業機系油圧モータ本体220は開回路を介して流体接続されている。
従って、前記作業機系補助ポンプ本体120は前記クラッチ機構500に対する作動油の油圧源としてのみ利用されている。
具体的には、前記吐出ライン375は前記クラッチ作動ライン310に流体接続されている。
【0087】
又、本実施の形態においては、図7に示すように、前記クラッチ切換弁320,前記クラッチ用リリーフ弁330及び前記アキュームレータ340は全て前記作業機系油圧モータユニット200Aに装着されている。
【0088】
本実施の形態に係る油圧駆動装置101においても、前記実施の形態1におけると同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る油圧駆動装置が適用された作業車輌の側面図である。
【図2】図2は、図1に示す作業車輌の油圧回路図であり、前記油圧駆動装置を含む一部分を示している。
【図3】図3は、図1に示す作業車輌の油圧回路図であり、図2に示す一部分以外の他の部分を示している。
【図4】図4は、図1におけるIV−IV線に沿った横断平面図である。
【図5】図5は、前記実施の形態1に係る油圧駆動装置の油圧回路図である。
【図6】図6は、図1におけるVI−VI線に沿った縦断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態2に係る油圧駆動装置の油圧回路図である。
【符号の説明】
【0090】
30 駆動源
70 作業機
100,101 油圧駆動装置
120 作業機系油圧ポンプ本体
220 作業機系油圧モータ本体
340 アキュームレータ(油圧漸増構造)
500 摩擦板式クラッチ機構
700 摩擦板式ブレーキ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源によって作動的に駆動される油圧ポンプ本体と、前記油圧ポンプ本体に流体接続された油圧モータ本体とを備え、前記油圧モータ本体によって作業機を作動的に駆動する油圧駆動装置であって、
前記油圧モータ本体から前記作業機へ至る伝動経路に、前記作業機の駆動をON/OFFするON/OFF操作に応じて動力伝達状態又は動力遮断状態となる摩擦板式クラッチ機構を備えたことを特徴とする油圧駆動装置。
【請求項2】
前記クラッチ機構は油圧の作用を受けて動力伝達状態となる油圧作動型とされており、
前記クラッチ機構へ作動油を供給するクラッチ作動ラインには油圧漸増構造が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の油圧駆動装置。
【請求項3】
前記摩擦板式クラッチ機構と背反的に作動して前記作業機に制動力を作動的に付加する摩擦板式ブレーキ機構を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の油圧駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−256006(P2008−256006A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96009(P2007−96009)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000125853)株式会社 神崎高級工機製作所 (210)
【Fターム(参考)】