波長可変干渉フィルター、光学モジュールおよび電子機器
【課題】反射膜同士が貼りつき難くする波長可変干渉フィルターを提供する。
【解決手段】第1基板10と第2基板20との間に第1反射膜14と第2反射膜24と静電アクチュエーター40とを含んで密閉された第1空洞部45と、第2基板20と第3基板30との間に密閉された第2空洞部46と、を備え、第1空洞部45内および第2空洞部46内は大気圧より小さい圧力で保持され、第1空洞部45内の圧力は、第2空洞部46内の圧力より大きく形成する。
【解決手段】第1基板10と第2基板20との間に第1反射膜14と第2反射膜24と静電アクチュエーター40とを含んで密閉された第1空洞部45と、第2基板20と第3基板30との間に密閉された第2空洞部46と、を備え、第1空洞部45内および第2空洞部46内は大気圧より小さい圧力で保持され、第1空洞部45内の圧力は、第2空洞部46内の圧力より大きく形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変干渉フィルター、光学モジュールおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
入射した光から特定の波長の光を選択して射出する、波長可変干渉フィルター(以下、エタロンと呼ぶことがある)が知られている。
特許文献1には、ギャップを介して二つの反射膜を対向させ、このギャップ寸法を変えることで、ギャップ寸法に対応した波長の光を分光する波長可変干渉フィルターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−12218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の波長可変干渉フィルターでは、フィルター全体を真空(減圧雰囲気)にして封止する例示がなされている。フィルター全体を減圧雰囲気にすることで、反射膜の劣化防止および基板が移動する際の空気抵抗をなくして迅速なギャップ寸法の設定が期待される。
しかしながら、反射膜が対向する空間を減圧状態にすると、反射膜を形成した基板に圧力がかかって変形し、小さなギャップ寸法を介して対向する反射膜同士が貼りつき易くなるという課題が生ずる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる波長可変干渉フィルターは、透光性の第1基板と、前記第1基板の一方の面に対向し、前記第1基板と接合される透光性の第2基板と、前記第2基板の前記第1基板と向かい合う面とは反対の面に対向して、前記第2基板と接合される透光性の第3基板と、を有し、前記第2基板に設けられ、前記第1基板に対向する平面を有する可動部と、前記第2基板に設けられ、前記可動部を保持し前記可動部を前記第1基板の厚み方向に移動可能とする薄肉部と、前記可動部の前記平面および前記第1基板の前記第2基板側の面に、ギャップを介して対向配置される一対の反射膜と、前記第1基板および前記第2基板の互いに対向する面に、ギャップを介して対向する一対の駆動電極を有する静電アクチュエーターと、前記第1基板と前記第2基板との間に前記一対の反射膜と前記静電アクチュエーターとを含んで密閉された第1空洞部と、前記第2基板と前記第3基板との間に密閉された第2空洞部と、を備え、前記第1空洞部内および前記第2空洞部内は大気圧より小さい圧力で保持され、前記第1空洞部内の圧力は、前記第2空洞部内の圧力より大きいことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第1基板と第2基板との間に一対の反射膜と静電アクチュエーターとを含んで密閉された第1空洞部と、第2基板と第3基板との間に密閉された第2空洞部と、を備えている。そして、第1空洞部内および第2空洞部内は大気圧より小さい圧力で保持され、第1空洞部内の圧力は、第2空洞部内の圧力より大きくなるように設定されている。
このため、第1空洞部と第2空洞部の圧力の差の分だけ、第2基板は第1空洞部から第2空洞部に向かって斥力が働いた状態で保持されている。つまり、反射膜が形成された第2基板の可動部は、もう一方の反射膜が形成された第1基板とは離れる方向に力が働く。よって、一対の反射膜も同様に両者が離れる方向に力が働き、小さなギャップ寸法を介して対向する反射膜同士が貼りつきにくくする効果がある。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターにおいて、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に、前記第2基板の方向に突出する接続電極を備え、前記第1空洞部内で前記第2基板に形成された前記駆動電極と前記接続電極とが接続されていることが望ましい。
【0009】
この構成によれば、第1基板に形成された第2基板の方向に突出する接続電極を用いて、接続電極と第2基板に形成された駆動電極とが第1空洞部内で接続されている。
このように、第2基板の方向に突出する接続電極を用いる簡単な構成で、第1基板と第2基板とを電気的に接続することができるため、複雑な配線構造を回避することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターにおいて、前記第1基板に、前記第1基板の厚み方向に貫通する第1貫通電極および第2貫通電極が設けられ、前記第1貫通電極と前記第1基板に形成された前記駆動電極とが接続され、前記第2貫通電極と前記第1基板に形成された前記接続電極とが接続されていることが望ましい。
【0011】
この構成によれば、第1基板を貫通する第1貫通電極および第2貫通電極が設けられ、第1貫通電極と第1基板に形成された駆動電極とが接続され、第2貫通電極と第1基板に形成された接続電極とが接続されている。
このように第1基板を貫通する穴の内部に導電材料が充填された貫通電極を用いることで、密閉状態を損なうことなく第1空洞部内が大気圧より小さい圧力(減圧状態)を保ち、第1空洞部内から第1基板の外周部に確実に配線をすることができる。
【0012】
[適用例4]本適用例にかかる光学モジュールは、透光性の第1基板と、前記第1基板の一方の面に対向し、前記第1基板と接合される透光性の第2基板と、前記第2基板の前記第1基板と向かい合う面とは反対の面に対向して、前記第2基板と接合される透光性の第3基板と、を有し、前記第2基板に設けられ、前記第1基板に対向する平面を有する可動部と、前記第2基板に設けられ、前記可動部を保持し前記可動部を前記第1基板の厚み方向に移動可能とする薄肉部と、前記可動部の前記平面および前記第1基板の前記第2基板側の面に、ギャップを介して対向配置される一対の反射膜と、前記第1基板および前記第2基板の互いに対向する面に、ギャップを介して対向する一対の駆動電極を有する静電アクチュエーターと、前記第1基板と前記第2基板との間に前記一対の反射膜と前記静電アクチュエーターとを含んで密閉された第1空洞部と、前記第2基板と前記第3基板との間に密閉された第2空洞部と、前記反射膜を透過した光を受光する受光部と、を備え、前記第1空洞部内および前記第2空洞部内は大気圧より小さい圧力で保持され、前記第1空洞部内の圧力は、前記第2空洞部内の圧力より大きいことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、反射膜同士が貼り付きにくい波長可変干渉フィルターと、反射膜を透過した光を受光する受光部とを備えている。
このため、反射膜間の適正なギャップを保持でき、信頼性の高い光学モジュールを提供できる。
【0014】
[適用例5]本適用例にかかる電子機器は、透光性の第1基板と、前記第1基板の一方の面に対向し、前記第1基板と接合される透光性の第2基板と、前記第2基板の前記第1基板と向かい合う面とは反対の面に対向して、前記第2基板と接合される透光性の第3基板と、を有し、前記第2基板に設けられ、前記第1基板に対向する平面を有する可動部と、前記第2基板に設けられ、前記可動部を保持し前記可動部を前記第1基板の厚み方向に移動可能とする薄肉部と、前記可動部の前記平面および前記第1基板の前記第2基板側の面に、ギャップを介して対向配置される一対の反射膜と、前記第1基板および前記第2基板の互いに対向する面に、ギャップを介して対向する一対の駆動電極を有する静電アクチュエーターと、前記第1基板と前記第2基板との間に前記一対の反射膜と前記静電アクチュエーターとを含んで密閉された第1空洞部と、前記第2基板と前記第3基板との間に密閉された第2空洞部と、前記反射膜を透過した光を受光する受光部と、前記受光部により受光された光に基づいて、前記光の特性を分析する分析処理部と、を備え、前記第1空洞部内および前記第2空洞部内は大気圧より小さい圧力で保持され、前記第1空洞部内の圧力は、前記第2空洞部内の圧力より大きいことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、反射膜同士が貼り付きにくい波長可変干渉フィルターと、反射膜を透過した光を受光する受光部と、光の特性を分析する分析処理部とを備えている。
このため、反射膜間の適正なギャップを保持でき、信頼性の高い分光分析装置などの電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態におけるエタロンの構成を示す平面図。
【図2】第1実施形態におけるエタロンの構成を示す断面図。
【図3】第1実施形態におけるエタロンの構成を示す断面図。
【図4】第1実施形態におけるエタロンの製造方法を説明する製造工程図。
【図5】第1実施形態におけるエタロンの変形例を示す断面図。
【図6】第2実施形態における電子機器としての測色装置の構成を示すブロック図。
【図7】第3実施形態における電子機器としてのガス検出装置の構成を示す断面図。
【図8】第3実施形態におけるガス検出装置の回路ブロック図。
【図9】第4実施形態における電子機器としての食物分析装置の構成を示すブロック図。
【図10】第5実施形態における電子機器としての分光カメラの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の寸法の割合を適宜変更している。
[第1実施形態]
【0018】
以下、第1実施形態のエタロンを図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態のエタロンの構成を示すブロック図である。図2は図1のX−X断線に沿う断面図である。図3は図1のY−Y断線に沿う断面図である。
【0019】
(エタロンの構成)
図1に示すように、エタロン5は、平面視で正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン5は、図2、図3に示すように、第1基板10、第2基板20および第3基板30を備えている。
これらの第1基板10、第2基板20および第3基板30は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などの透光性の基材からなり、板状の基材をエッチングすることにより形成されている。
そして、エタロン5は、第1基板10と第2基板20とが接合され、第2基板20と第3基板30とが接合されて一体に構成される。この接合には、第1基板10、第2基板20および第3基板30の接合部分に設けられた接合膜41が結合することにより固定される。接合膜41としては、ポリオルガノシロキサンを主材料としたプラズマ重合膜が採用されている。
また、上記以外の接合方法では、接着剤などの粘着性材料による接合、金属膜による接合などが利用できる。
【0020】
第1基板10は、厚みが例えば500μmの基材をエッチング加工して形成される。この第1基板10には、エッチングにより第1基板10の中央に円形の第1凹部11が設けられ、中央部に反射膜形成部13、その周りに同心円状に電極形成部12が形成されている。電極形成部12は反射膜形成部13より深くエッチングされ、円柱状の反射膜形成部13が突出した形状となっている。そして、電極形成部12の外縁より第1基板10の対角となる2方向に引き出し溝12a,12bが形成されている。この引き出し溝12a,12bは電極形成部12と同じ深さに形成されている。
また、電極形成部12の外縁には、第2基板20との接合において第2基板20を支持する支持部16が設けられている。
【0021】
反射膜形成部13の上には第1反射膜14が形成されている。この第1反射膜14は光の反射特性と透過特性とを有し、AgやAg合金などの金属膜により例えば50nmの厚みで形成されている。なお、第1反射膜14を誘電体多層膜で構成しても良い。
電極形成部12には、第1駆動電極15が形成されている。第1駆動電極15は平面視で第1反射膜14を取り巻くように円環状に形成されている。そして、第1駆動電極15は引き出し溝12aに沿って形成された引き出し電極15aに接続されている。
第1駆動電極15および引き出し電極15aは導電膜であり、例えばITO膜が用いられる。また、これらの導電膜はCr膜を下地とし、その上にAu膜を積層したCr/Au膜などを用いても良い。
【0022】
また、引き出し電極15aは第1基板10の厚み方向に貫通する第1貫通電極18aに接続されている。第1貫通電極18aは第1基板10を貫通する貫通穴にCu、Alなどの導電性材料が充填されて形成されている。
そして、第1基板10の引き出し電極15aを形成した面と反対の面には、第1貫通電極18aに接続する接続パッド19が形成されている。
このようにして、第1基板10の一方の面に形成した引き出し電極15aと他方の面に形成した接続パッド19との電気的導通が、第1貫通電極18aを介して行うことが可能である。
【0023】
さらに、第1基板10の引き出し溝12bには突起部12cが設けられている。この突起部12cは、上面が平坦で第1基板10の支持部16と同じ高さに形成されている。そして、突起部12cの上面から引き出し溝12bに沿って接続電極17が形成されている。接続電極17は導電膜であり、例えばITO膜が用いられる。また、これらの導電膜はCr膜を下地とし、その上にAu膜を積層したCr/Au膜などを用いても良い。
【0024】
また、接続電極17は、第1基板10の厚み方向に貫通する第2貫通電極18bに接続されている。第2貫通電極18bは第1基板10を貫通する貫通穴にCu、Alなどの導電性材料が充填されて形成されている。
そして、第1基板10の接続電極17を形成した面と反対の面には、第2貫通電極18bに接続する接続パッド19が形成されている。
このようにして、第1基板10の一方の面に形成した接続電極17と他方の面に形成した接続パッド19との電気的導通が、第2貫通電極18bを介して行うことが可能である。
また、支持部16の上面には接合膜41が形成されている。
【0025】
第2基板20は、正方形状の板状基材を用い、例えば、厚みが200μmの基材の一面をエッチングにより加工することで形成される。
この第2基板20には、基板中央を中心とする円柱状の可動部21と、その周りに可動部21を保持する薄肉部22と、が形成されている。
薄肉部22は、第1基板10と対向する面とは反対の面に円環状の第2凹部23が形成され、可動部21の厚みより薄くなるように形成されている。
このように、第2基板20はダイヤフラム構造を持ち、可動部21が第2基板20の厚み方向に移動しやすいように構成されている。
また、第2基板20の外周縁には第1基板10および第2基板20との接合において両者を支持する支持部26が設けられている。
【0026】
そして、第2基板20の第1基板10に対向する面には、第2反射膜24、第2駆動電極25および引き出し電極25aが形成されている。
第2反射膜24は光の反射特性と透過特性とを有し、第1反射膜14と対向し可動部21に円形状に設けられている。第2反射膜24の材料として第1反射膜14と同様に、AgまたはAg合金が用いられる。なお、第2反射膜24は例えば50nmの厚みに形成されている。このように、第1基板10の第1反射膜14と第2基板20の第2反射膜24とでエタロン5における対向する一対の反射膜が構成される。なお、第2反射膜24を誘電体多層膜で構成しても良い。
【0027】
第2駆動電極25は第1駆動電極15と対向する薄肉部22に設けられている。この第2駆動電極25は第2反射膜24を取りまくように、円環状に形成されている。このように、第1基板10の第1駆動電極15と第2基板20の第2駆動電極25とが対向し、両者でエタロン5における静電アクチュエーター40が構成される。
そして、第2駆動電極25から第1基板10の接続電極17の方向に伸びた引き出し電極25aが形成されている。第1基板10と第2基板20とが接合されることで、引き出し電極25aは接続電極17と接触し、両者が接続される。
第2駆動電極25、引き出し電極25aは導電膜であり、例えばITO膜が用いられる。また、これらの導電膜はCr膜を下地とし、その上にAu膜を積層したCr/Au膜などを用いても良い。
そして、第2基板20の支持部26の上下面には、第1基板10と第2基板20とを接合する接合膜41がそれぞれ形成されている。
【0028】
第3基板30は、正方形状の板状基材を用い、例えば、厚みが150μmの基材の一面をエッチングにより加工することで形成される。
第3基板30には、第2基板20と対向する面に円形に凹んだ第3凹部31が形成され、第2基板20の可動部21の変位による干渉を防止している。
また、第3基板30の外周縁には第2基板20との接合において、第2基板20を支持する支持部36が設けられている。
そして、第3基板30の支持部36の下面には、第2基板20と接合する接合膜41が形成されている。
【0029】
第1基板10と第2基板20とは、接合膜41により接合され、第1基板10と第2基板20との間に第1空洞部45が画定される。
第1空洞部45は密閉され、第1空洞部45内は減圧されており、大気圧より小さい圧力で保持されている。この第1空洞部45内には一対の反射膜(第1反射膜14および第2反射膜24)と静電アクチュエーター40(第1駆動電極15および第2駆動電極25)を含んでいる。
さらに、第1空洞部45内には第1基板10の突起部12cに形成された接続電極17を含み、第2基板20に形成された引き出し電極25aと接続している。
【0030】
第2基板20と第3基板30とは、接合膜41により接合され、第2基板20と第3基板30との間に第2空洞部46が画定される。
第2空洞部46は密閉され、第2空洞部46内は減圧されており、大気圧より小さい圧力で保持されている。
そして、第1空洞部45内の圧力は、第2空洞部46内の圧力より大きく設定されている。このため、第2基板20は厚み方向に、第1空洞部45と第2空洞部46の圧力の差分だけ第1基板10と離れるように斥力を受ける。
【0031】
上記のエタロン5では、対向する第1反射膜14と第2反射膜24とのギャップ寸法を変えるために、静電アクチュエーター40を駆動させると、静電力により第1駆動電極15と第2駆動電極25とが引き合い、第2基板20の薄肉部22が撓んで、可動部21が第1基板10に近づくように変位する。可動部21には第2反射膜24が設けられ、第1反射膜14と第2反射膜24との間のギャップ寸法を調整することができる。
そのとき、第1空洞部45内および第2空洞部46内の圧力は減圧されていることから、可動部21の移動に際して空気抵抗が働かず、可動部21が迅速に移動(変位)することができる。
【0032】
なお、エタロン5は、第1駆動電極15と第2駆動電極25との距離が第1反射膜14と第2反射膜24との距離より大きく形成されている。例えば、第1駆動電極15と第2駆動電極25の間に電圧を印加しない初期状態において、第1駆動電極15と第2駆動電極25との距離が1μm、第1反射膜14と第2反射膜24との距離(ギャップ寸法)が0.5μmに設定されている。このため、第1駆動電極15と第2駆動電極25との間のギャップ寸法が微小となったときに急激に引っ張る力が増加するプルイン現象を抑制する構成となっている。
【0033】
(エタロンの製造方法)
以下、上記エタロンの製造方法の一例について説明する。
図4はエタロンの製造方法を説明する製造工程図である。ここでは、各基板の接合手順について説明する。
まず、図4(a)に示すように、所定の加工が施された第2基板20と第3基板30を用意する。第2基板20の支持部26の上下面にはプラズマ重合膜などの接合膜41が形成されている。また、第3基板30の支持部36にはプラズマ重合膜などの接合膜41が形成されている。
第2基板20および第3基板30の接合をするそれぞれの接合膜41に対して活性化エネルギーを与えるために活性化処理を行う。活性化処理としてO2プラズマ処理、UV処理などが行われる。
【0034】
そして、図4(b)に示すように、減圧された減圧容器48内にて第2基板20と第3基板30を重ね合わせて荷重をかけることで第2基板20と第3基板30の接合を行う。このとき、第2基板20と第3基板30とで画定される第2空洞部46内は大気圧よりも圧力が低い状態で密閉される。このため、この接合された構造体は、大気圧中では第2空洞部46内が減圧状態であるので第2基板20の可動部21は第3基板30に近づく方向に力を受ける。
【0035】
次に、図4(c)に示すように、第2基板20と第3基板30を接合した構造体と、所定の加工が施された第1基板10を用意する。
第1基板10の支持部16の上面にはプラズマ重合膜などの接合膜41が形成されている。
第1基板10および第2基板20の接合をするそれぞれの接合膜41に対して活性化エネルギーを与えるために活性化処理を行う。活性化処理としてO2プラズマ処理、UV処理などが行われる。
【0036】
そして、図4(d)に示すように、第2基板20と第3基板30とを接合した構造体と第1基板10を、減圧された減圧容器48内にて重ね合わせて荷重をかけることで接合が行われる。このとき、第1基板10と第2基板20とで画定される第1空洞部45内は大気圧よりも圧力が低い状態で密閉される。
また、このときの減圧容器内の圧力は第2基板20と第3基板30とを接合したときの圧力よりも大きい圧力に保持され、第1空洞部45内の圧力は第2空洞部46内の圧力に比べて大きい状態である。
このことから、第1基板10、第2基板20、第3基板30が接合された状態では、第1空洞部45と第2空洞部46の圧力の差の分だけ、第2基板20は第1空洞部45から第2空洞部46に向かって斥力が働いた状態で保持されている。
【0037】
以上、本実施形態のエタロン5は、第1基板10と第2基板20との間に第1反射膜14と第2反射膜24と静電アクチュエーター40とを含んで密閉された第1空洞部45と、第2基板20と第3基板30との間に密閉された第2空洞部46と、を備えている。そして、第1空洞部45内および第2空洞部46内は大気圧より小さい圧力で保持され、第1空洞部45内の圧力は、第2空洞部46内の圧力より大きくなるように設定されている。
このため、第2反射膜24が形成された第2基板20の可動部21は、もう一方の第1反射膜14が形成された第1基板10とは離れる方向に力が働く。よって、第1反射膜14と第2反射膜24とは両者が離れる方向に力が働き、小さなギャップ寸法を介して対向する第1反射膜14と第2反射膜24とが貼りつきにくくする効果がある。
【0038】
また、第1基板10と第2基板20との間に画定された第1空洞部45は密閉されていることから、外部から流入したごみが第1反射膜14、第2反射膜24や第1駆動電極15、第2駆動電極25などに付着することがなく、それぞれの機能の低下を防止することができる。
【0039】
そして、エタロン5は、第1基板10に形成された第2基板20の方向に突出する接続電極17を用いて、接続電極17と第2基板20に形成された第2駆動電極25とが第1空洞部45内で接続されている。
このように接続電極17を用いることで簡単な構成で、第1基板10と第2基板20とを電気的に接続することができるため、複雑な配線構造を回避することができる。
【0040】
さらに、第1基板10を貫通する第1貫通電極18aおよび第2貫通電極18bが設けられ、第1貫通電極18aと第1基板10に形成された第1駆動電極15とが接続され、第2貫通電極18bと第1基板10に形成された接続電極17とが接続されている。
このように第1基板10を貫通する穴の内部に導電材料が充填された貫通電極を用いることで、密閉状態を損なうことなく第1空洞部45内が大気圧より小さい圧力(減圧状態)を保ち、第1空洞部45内から第1基板10の外周部に確実に配線をすることができる。
【0041】
(変形例)
次に、第1実施形態の変形例について説明する。第1実施形態では各基板をガラスなどの基材を用いたが、この変形例では基板を各基板の接合の容易性を考慮してガラスおよびシリコンを用いている。本変形例では第1実施形態と同様な構成については第1実施形態と同符号を付し説明を省略する。
図5は第1実施形態におけるエタロンの変形例を示す断面図である。
エタロン6は、シリコンで形成された第1基板50と、ガラスで形成された第2基板60と、ガラスで形成された第3基板70と、第2基板60と第3基板70の間にシリコン基板71を備えている。また、シリコン基板の他に、シリコン膜を利用することもできる。
【0042】
本変形例の各基板は、減圧雰囲気内で陽極接合にて接合される。まず、第2基板60と第3基板70の間にシリコン基板71を挟み、減圧された減圧容器内で第2基板60、シリコン基板71、第3基板70を重ねて加熱をし、ガラスからなる第2基板60および第3基板70にマイナスの電圧を印加して行う。この接合により、第2基板60と第3基板70との間に第2空洞部46が画定されて密閉される。
【0043】
次に、第2基板60、シリコン基板71、第3基板70の接合された構造体と第1基板50を同様に減圧容器内で陽極接合する。この接合により、第1基板50と第2基板60との間に第1空洞部45が画定されて密閉される。ここで、第1空洞部45内の圧力は、第2空洞部46内の圧力より大きく設定されている。このため、第2基板60は厚み方向で、第1基板50と離れるように斥力を受けた状態で保持されている。
なお、本変形例における基板の材質を逆にしても良い。つまり、第1基板をガラス、第2基板をシリコン、第3基板をシリコン、第2基板と第3基板の間にガラス基板、としても良い。
【0044】
以上、本変形例のエタロン6は第1実施形態と同様の効果を有し、さらに、各基板の接合に陽極接合を利用することができるため、接合膜を必要とせず、接合の信頼性が向上する利点がある。
[第2実施形態]
【0045】
次に、上記第1実施形態で説明したエタロンを使用した、光学モジュールおよび電子機器について説明する。第2実施形態では、測定物の色度を測定する測色装置を例にとって説明する。
図6は測色装置の構成を示すブロック図である。
測色装置80は、検査対象Aに光を照射する光源装置82と、測色センサー84(光学モジュール)と、測色装置80の全体動作を制御する制御装置86とを備える。
この測色装置80は、検査対象Aに光源装置82から光を照射し、検査対象Aから反射された検査対象光を測色センサー84にて受光し、測色センサー84から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度を分析して測定する装置である。
【0046】
光源装置82は、光源91、複数のレンズ92(図6には1つのみ図示)を備え、検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ92には、コリメーターレンズが含まれてもよく、この場合、光源装置82は、光源91から射出された光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから検査対象Aに向かって射出する。
なお、本実施形態では、光源装置82を備える測色装置80を例示するが、例えば検査対象Aが発光部材である場合、光源装置82を設けずに測色装置を構成してもよい。
【0047】
光フィルターモジュールとしての測色センサー84は、エタロン(波長可変干渉フィルター)5と、静電アクチュエーターに印加する電圧を制御し、エタロン5で透過させる光の波長を変える電圧制御部94と、エタロン5を透過した光を受光する受光部93と、を備える。
また、測色センサー84は、検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、エタロン5に導光する光学レンズ(図示せず)を備えている。そして、この測色センサー84は、光学レンズに入射した検査対象光をエタロン5で所定波長帯域の光に分光し、分光した光が受光部93にて受光される。
受光部93は、フォトダイオードなどの光電変換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光部93は制御装置86に接続され、生成した電気信号を受光信号として制御装置86に出力する。
【0048】
電圧制御部94は、制御装置86からの入力される制御信号に基づいて、静電アクチュエーターに印加する電圧を制御する。
【0049】
制御装置86は、測色装置80の全体動作を制御する。この制御装置86としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置86は、光源制御部95、測色センサー制御部97、および測色処理部96(分析処理部)などを備えて構成されている。
【0050】
光源制御部95は、光源装置82に接続されている。そして、光源制御部95は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置82に所定の制御信号を出力し、光源装置82から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部97は、測色センサー84に接続されている。そして、測色センサー制御部97は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー84にて受光させる光の波長を設定し、この波長の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー84に出力する。これにより、測色センサー84の電圧制御部94は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長を透過させるよう、静電アクチュエーターへの印加電圧を設定する。
【0051】
測色処理部96は、測色センサー制御部97を制御して、エタロン5の反射膜間のギャップ寸法を変動させて、エタロン5を透過する光の波長を変化させる。また、測色処理部96は、受光部93から入力される受光信号に基づいて、エタロン5を透過した光量を取得する。そして、測色処理部96は、上記により得られた各波長の受光量に基づいて、検査対象Aから反射された光の色度を算出する。
【0052】
このように、本実施形態の電子機器としての測色装置80および光学モジュールとしての測色センサー84は、反射膜同士が貼り付きにくいエタロン5を有していることから、適正な反射膜間のギャップを適正に維持でき、信頼性が高い。
以上、第2実施形態では、電子機器として測色装置80を例示したが、その他、様々な分野に波長可変干渉フィルター、光学モジュール、電子機器を用いることができる。
例えば、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムとして用いることができる。このようなシステムとしては、例えば、エタロン(波長可変干渉フィルター)を用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響希ガス検出器などのガス検出装置を例示できる。
[第3実施形態]
【0053】
以下、ガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
【0054】
図7は、エタロンを備えたガス検出装置の一例を示す断面図である。
図8は、ガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、図7に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、および排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、エタロン(波長可変干渉フィルター)5、および受光素子137(受光部)等を含む検出部(光フィルターモジュール)と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッター135Bと、レンズ135C,135D,135Eと、により構成されている。
【0055】
また、図8に示すように、ガス検出装置100には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部139が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
さらに、ガス検出装置100の制御部138は、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、エタロン5を制御するための電圧制御部146、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、および排出手段133を制御する排出ドライバー回路150などを備えている。
【0056】
次に、ガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
【0057】
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光が射出される。また、光源135Aには、温度センサーや光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度や光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。
【0058】
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、およびレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光がエタロン5に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部146を制御し、エタロン5に印加する電圧を調整し、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光をエタロン5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。
信号処理部144は、上記のようにして得られた検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光のスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定し、物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
【0059】
なお、図7、図8において、ラマン散乱光をエタロン5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光フィルターモジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置100を本発明の光分析装置とする。このような構成でも、本発明のエタロンを用いてガスの成分を検出することができる。
【0060】
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物や生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
[第4実施形態]
【0061】
次に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
【0062】
図9は、エタロン5を利用した電子機器の一例である食物分析装置の構成を示すブロック図である。
この食物分析装置200は、検出器(光フィルターモジュール)210と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光するエタロン(波長可変干渉フィルター)5と、分光された光を検出する撮像部(受光部)213と、を備えている。
また、制御部220は、光源211の点灯・消灯制御、点灯時の明るさの制御を実施する光源制御部221と、エタロン5を制御する電圧制御部222と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224と、記憶部225と、を備えている。
【0063】
この食物分析装置200は、装置を駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通ってエタロン5に入射する。エタロン5は電圧制御部222の制御により所望の波長を分光可能な電圧が印加されており、分光された光が、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部222を制御してエタロン5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
【0064】
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、およびその含有量を求める。また、得られた食物成分および含有量から、食物カロリーや鮮度等をも算出することができる。さらに、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、さらには、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
【0065】
また、図9において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、自動車運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる。また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
さらには、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
【0066】
さらには、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、電子機器としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光フィルターモジュールに設けられたエタロンにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光フィルターモジュールを備えた光分析装置により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
[第5実施形態]
【0067】
また、他の電子機器として、本発明のエタロン(波長可変干渉フィルター)により光を分光して、分光画像を撮像する分光カメラ、分光分析機などにも適用できる。このような分光カメラの一例として、エタロンを内蔵した赤外線カメラが挙げられる。
図10は、分光カメラの構成を示す斜視図である。分光カメラ300は、図10に示すように、カメラ本体310と、撮像レンズユニット320と、撮像部330とを備えている。
カメラ本体310は、利用者により把持、操作される部分である。
撮像レンズユニット320は、カメラ本体310に設けられ、入射した画像光を撮像部330に導光する。また、この撮像レンズユニット320は、対物レンズ321、結像レンズ322、およびこれらのレンズ間に設けられたエタロン5を備えて構成されている。
撮像部330は、受光素子により構成され、撮像レンズユニット320により導光された画像光を撮像する。
このような分光カメラ300では、エタロン5により撮像対象となる波長の光を透過させることで、所望波長の光の分光画像を撮像することができる。
【0068】
さらには、本発明のエタロンをバンドパスフィルターとして用いてもよく、例えば、発光素子が射出する所定波長域の光のうち、所定の波長を中心とした狭帯域の光のみを分光して透過させる光学式レーザー装置としても用いることができる。
また、本発明のエタロンを生体認証装置として用いてもよく、例えば、近赤外領域や可視領域の光を用いた、血管や指紋、網膜、虹彩などの認証装置にも適用できる。
【0069】
さらには、光学モジュールおよび電子機器を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、エタロンにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
【0070】
上記に示すように、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、および電子機器は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、本発明のエタロンは、上述のように、1つのデバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光フィルターモジュールや光分析装置の小型化を促進でき、例えば、携帯用や車載用として好適に用いることができる。
【0071】
本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更することができる。そして、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有するものにより可能である。
【符号の説明】
【0072】
5,6…エタロン(波長可変干渉フィルター)、10…第1基板、11…第1凹部、12…電極形成部、12a…引き出し溝、12b…引き出し溝、12c…突起部、13…反射膜形成部、14…第1反射膜、15…第1駆動電極、15a…引き出し電極、16…支持部、17…接続電極、18a…第1貫通電極、18b…第2貫通電極、19…接続パッド、20…第2基板、21…可動部、22…薄肉部、23…第2凹部、24…第2反射膜、25…第2駆動電極、25a…引き出し電極、26…支持部、30…第3基板、31…第3凹部、36…支持部、40…静電アクチュエーター、41…接合膜、45…第1空洞部、46…第2空洞部、48…減圧容器、50…第1基板、60…第2基板、70…第3基板、71…シリコン基板、80…電子機器としての測色装置、100…電子機器としてのガス検出装置、200…電子機器としての食物分析装置、300…電子機器としての分光カメラ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変干渉フィルター、光学モジュールおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
入射した光から特定の波長の光を選択して射出する、波長可変干渉フィルター(以下、エタロンと呼ぶことがある)が知られている。
特許文献1には、ギャップを介して二つの反射膜を対向させ、このギャップ寸法を変えることで、ギャップ寸法に対応した波長の光を分光する波長可変干渉フィルターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−12218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の波長可変干渉フィルターでは、フィルター全体を真空(減圧雰囲気)にして封止する例示がなされている。フィルター全体を減圧雰囲気にすることで、反射膜の劣化防止および基板が移動する際の空気抵抗をなくして迅速なギャップ寸法の設定が期待される。
しかしながら、反射膜が対向する空間を減圧状態にすると、反射膜を形成した基板に圧力がかかって変形し、小さなギャップ寸法を介して対向する反射膜同士が貼りつき易くなるという課題が生ずる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる波長可変干渉フィルターは、透光性の第1基板と、前記第1基板の一方の面に対向し、前記第1基板と接合される透光性の第2基板と、前記第2基板の前記第1基板と向かい合う面とは反対の面に対向して、前記第2基板と接合される透光性の第3基板と、を有し、前記第2基板に設けられ、前記第1基板に対向する平面を有する可動部と、前記第2基板に設けられ、前記可動部を保持し前記可動部を前記第1基板の厚み方向に移動可能とする薄肉部と、前記可動部の前記平面および前記第1基板の前記第2基板側の面に、ギャップを介して対向配置される一対の反射膜と、前記第1基板および前記第2基板の互いに対向する面に、ギャップを介して対向する一対の駆動電極を有する静電アクチュエーターと、前記第1基板と前記第2基板との間に前記一対の反射膜と前記静電アクチュエーターとを含んで密閉された第1空洞部と、前記第2基板と前記第3基板との間に密閉された第2空洞部と、を備え、前記第1空洞部内および前記第2空洞部内は大気圧より小さい圧力で保持され、前記第1空洞部内の圧力は、前記第2空洞部内の圧力より大きいことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第1基板と第2基板との間に一対の反射膜と静電アクチュエーターとを含んで密閉された第1空洞部と、第2基板と第3基板との間に密閉された第2空洞部と、を備えている。そして、第1空洞部内および第2空洞部内は大気圧より小さい圧力で保持され、第1空洞部内の圧力は、第2空洞部内の圧力より大きくなるように設定されている。
このため、第1空洞部と第2空洞部の圧力の差の分だけ、第2基板は第1空洞部から第2空洞部に向かって斥力が働いた状態で保持されている。つまり、反射膜が形成された第2基板の可動部は、もう一方の反射膜が形成された第1基板とは離れる方向に力が働く。よって、一対の反射膜も同様に両者が離れる方向に力が働き、小さなギャップ寸法を介して対向する反射膜同士が貼りつきにくくする効果がある。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターにおいて、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に、前記第2基板の方向に突出する接続電極を備え、前記第1空洞部内で前記第2基板に形成された前記駆動電極と前記接続電極とが接続されていることが望ましい。
【0009】
この構成によれば、第1基板に形成された第2基板の方向に突出する接続電極を用いて、接続電極と第2基板に形成された駆動電極とが第1空洞部内で接続されている。
このように、第2基板の方向に突出する接続電極を用いる簡単な構成で、第1基板と第2基板とを電気的に接続することができるため、複雑な配線構造を回避することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターにおいて、前記第1基板に、前記第1基板の厚み方向に貫通する第1貫通電極および第2貫通電極が設けられ、前記第1貫通電極と前記第1基板に形成された前記駆動電極とが接続され、前記第2貫通電極と前記第1基板に形成された前記接続電極とが接続されていることが望ましい。
【0011】
この構成によれば、第1基板を貫通する第1貫通電極および第2貫通電極が設けられ、第1貫通電極と第1基板に形成された駆動電極とが接続され、第2貫通電極と第1基板に形成された接続電極とが接続されている。
このように第1基板を貫通する穴の内部に導電材料が充填された貫通電極を用いることで、密閉状態を損なうことなく第1空洞部内が大気圧より小さい圧力(減圧状態)を保ち、第1空洞部内から第1基板の外周部に確実に配線をすることができる。
【0012】
[適用例4]本適用例にかかる光学モジュールは、透光性の第1基板と、前記第1基板の一方の面に対向し、前記第1基板と接合される透光性の第2基板と、前記第2基板の前記第1基板と向かい合う面とは反対の面に対向して、前記第2基板と接合される透光性の第3基板と、を有し、前記第2基板に設けられ、前記第1基板に対向する平面を有する可動部と、前記第2基板に設けられ、前記可動部を保持し前記可動部を前記第1基板の厚み方向に移動可能とする薄肉部と、前記可動部の前記平面および前記第1基板の前記第2基板側の面に、ギャップを介して対向配置される一対の反射膜と、前記第1基板および前記第2基板の互いに対向する面に、ギャップを介して対向する一対の駆動電極を有する静電アクチュエーターと、前記第1基板と前記第2基板との間に前記一対の反射膜と前記静電アクチュエーターとを含んで密閉された第1空洞部と、前記第2基板と前記第3基板との間に密閉された第2空洞部と、前記反射膜を透過した光を受光する受光部と、を備え、前記第1空洞部内および前記第2空洞部内は大気圧より小さい圧力で保持され、前記第1空洞部内の圧力は、前記第2空洞部内の圧力より大きいことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、反射膜同士が貼り付きにくい波長可変干渉フィルターと、反射膜を透過した光を受光する受光部とを備えている。
このため、反射膜間の適正なギャップを保持でき、信頼性の高い光学モジュールを提供できる。
【0014】
[適用例5]本適用例にかかる電子機器は、透光性の第1基板と、前記第1基板の一方の面に対向し、前記第1基板と接合される透光性の第2基板と、前記第2基板の前記第1基板と向かい合う面とは反対の面に対向して、前記第2基板と接合される透光性の第3基板と、を有し、前記第2基板に設けられ、前記第1基板に対向する平面を有する可動部と、前記第2基板に設けられ、前記可動部を保持し前記可動部を前記第1基板の厚み方向に移動可能とする薄肉部と、前記可動部の前記平面および前記第1基板の前記第2基板側の面に、ギャップを介して対向配置される一対の反射膜と、前記第1基板および前記第2基板の互いに対向する面に、ギャップを介して対向する一対の駆動電極を有する静電アクチュエーターと、前記第1基板と前記第2基板との間に前記一対の反射膜と前記静電アクチュエーターとを含んで密閉された第1空洞部と、前記第2基板と前記第3基板との間に密閉された第2空洞部と、前記反射膜を透過した光を受光する受光部と、前記受光部により受光された光に基づいて、前記光の特性を分析する分析処理部と、を備え、前記第1空洞部内および前記第2空洞部内は大気圧より小さい圧力で保持され、前記第1空洞部内の圧力は、前記第2空洞部内の圧力より大きいことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、反射膜同士が貼り付きにくい波長可変干渉フィルターと、反射膜を透過した光を受光する受光部と、光の特性を分析する分析処理部とを備えている。
このため、反射膜間の適正なギャップを保持でき、信頼性の高い分光分析装置などの電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態におけるエタロンの構成を示す平面図。
【図2】第1実施形態におけるエタロンの構成を示す断面図。
【図3】第1実施形態におけるエタロンの構成を示す断面図。
【図4】第1実施形態におけるエタロンの製造方法を説明する製造工程図。
【図5】第1実施形態におけるエタロンの変形例を示す断面図。
【図6】第2実施形態における電子機器としての測色装置の構成を示すブロック図。
【図7】第3実施形態における電子機器としてのガス検出装置の構成を示す断面図。
【図8】第3実施形態におけるガス検出装置の回路ブロック図。
【図9】第4実施形態における電子機器としての食物分析装置の構成を示すブロック図。
【図10】第5実施形態における電子機器としての分光カメラの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の寸法の割合を適宜変更している。
[第1実施形態]
【0018】
以下、第1実施形態のエタロンを図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態のエタロンの構成を示すブロック図である。図2は図1のX−X断線に沿う断面図である。図3は図1のY−Y断線に沿う断面図である。
【0019】
(エタロンの構成)
図1に示すように、エタロン5は、平面視で正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン5は、図2、図3に示すように、第1基板10、第2基板20および第3基板30を備えている。
これらの第1基板10、第2基板20および第3基板30は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などの透光性の基材からなり、板状の基材をエッチングすることにより形成されている。
そして、エタロン5は、第1基板10と第2基板20とが接合され、第2基板20と第3基板30とが接合されて一体に構成される。この接合には、第1基板10、第2基板20および第3基板30の接合部分に設けられた接合膜41が結合することにより固定される。接合膜41としては、ポリオルガノシロキサンを主材料としたプラズマ重合膜が採用されている。
また、上記以外の接合方法では、接着剤などの粘着性材料による接合、金属膜による接合などが利用できる。
【0020】
第1基板10は、厚みが例えば500μmの基材をエッチング加工して形成される。この第1基板10には、エッチングにより第1基板10の中央に円形の第1凹部11が設けられ、中央部に反射膜形成部13、その周りに同心円状に電極形成部12が形成されている。電極形成部12は反射膜形成部13より深くエッチングされ、円柱状の反射膜形成部13が突出した形状となっている。そして、電極形成部12の外縁より第1基板10の対角となる2方向に引き出し溝12a,12bが形成されている。この引き出し溝12a,12bは電極形成部12と同じ深さに形成されている。
また、電極形成部12の外縁には、第2基板20との接合において第2基板20を支持する支持部16が設けられている。
【0021】
反射膜形成部13の上には第1反射膜14が形成されている。この第1反射膜14は光の反射特性と透過特性とを有し、AgやAg合金などの金属膜により例えば50nmの厚みで形成されている。なお、第1反射膜14を誘電体多層膜で構成しても良い。
電極形成部12には、第1駆動電極15が形成されている。第1駆動電極15は平面視で第1反射膜14を取り巻くように円環状に形成されている。そして、第1駆動電極15は引き出し溝12aに沿って形成された引き出し電極15aに接続されている。
第1駆動電極15および引き出し電極15aは導電膜であり、例えばITO膜が用いられる。また、これらの導電膜はCr膜を下地とし、その上にAu膜を積層したCr/Au膜などを用いても良い。
【0022】
また、引き出し電極15aは第1基板10の厚み方向に貫通する第1貫通電極18aに接続されている。第1貫通電極18aは第1基板10を貫通する貫通穴にCu、Alなどの導電性材料が充填されて形成されている。
そして、第1基板10の引き出し電極15aを形成した面と反対の面には、第1貫通電極18aに接続する接続パッド19が形成されている。
このようにして、第1基板10の一方の面に形成した引き出し電極15aと他方の面に形成した接続パッド19との電気的導通が、第1貫通電極18aを介して行うことが可能である。
【0023】
さらに、第1基板10の引き出し溝12bには突起部12cが設けられている。この突起部12cは、上面が平坦で第1基板10の支持部16と同じ高さに形成されている。そして、突起部12cの上面から引き出し溝12bに沿って接続電極17が形成されている。接続電極17は導電膜であり、例えばITO膜が用いられる。また、これらの導電膜はCr膜を下地とし、その上にAu膜を積層したCr/Au膜などを用いても良い。
【0024】
また、接続電極17は、第1基板10の厚み方向に貫通する第2貫通電極18bに接続されている。第2貫通電極18bは第1基板10を貫通する貫通穴にCu、Alなどの導電性材料が充填されて形成されている。
そして、第1基板10の接続電極17を形成した面と反対の面には、第2貫通電極18bに接続する接続パッド19が形成されている。
このようにして、第1基板10の一方の面に形成した接続電極17と他方の面に形成した接続パッド19との電気的導通が、第2貫通電極18bを介して行うことが可能である。
また、支持部16の上面には接合膜41が形成されている。
【0025】
第2基板20は、正方形状の板状基材を用い、例えば、厚みが200μmの基材の一面をエッチングにより加工することで形成される。
この第2基板20には、基板中央を中心とする円柱状の可動部21と、その周りに可動部21を保持する薄肉部22と、が形成されている。
薄肉部22は、第1基板10と対向する面とは反対の面に円環状の第2凹部23が形成され、可動部21の厚みより薄くなるように形成されている。
このように、第2基板20はダイヤフラム構造を持ち、可動部21が第2基板20の厚み方向に移動しやすいように構成されている。
また、第2基板20の外周縁には第1基板10および第2基板20との接合において両者を支持する支持部26が設けられている。
【0026】
そして、第2基板20の第1基板10に対向する面には、第2反射膜24、第2駆動電極25および引き出し電極25aが形成されている。
第2反射膜24は光の反射特性と透過特性とを有し、第1反射膜14と対向し可動部21に円形状に設けられている。第2反射膜24の材料として第1反射膜14と同様に、AgまたはAg合金が用いられる。なお、第2反射膜24は例えば50nmの厚みに形成されている。このように、第1基板10の第1反射膜14と第2基板20の第2反射膜24とでエタロン5における対向する一対の反射膜が構成される。なお、第2反射膜24を誘電体多層膜で構成しても良い。
【0027】
第2駆動電極25は第1駆動電極15と対向する薄肉部22に設けられている。この第2駆動電極25は第2反射膜24を取りまくように、円環状に形成されている。このように、第1基板10の第1駆動電極15と第2基板20の第2駆動電極25とが対向し、両者でエタロン5における静電アクチュエーター40が構成される。
そして、第2駆動電極25から第1基板10の接続電極17の方向に伸びた引き出し電極25aが形成されている。第1基板10と第2基板20とが接合されることで、引き出し電極25aは接続電極17と接触し、両者が接続される。
第2駆動電極25、引き出し電極25aは導電膜であり、例えばITO膜が用いられる。また、これらの導電膜はCr膜を下地とし、その上にAu膜を積層したCr/Au膜などを用いても良い。
そして、第2基板20の支持部26の上下面には、第1基板10と第2基板20とを接合する接合膜41がそれぞれ形成されている。
【0028】
第3基板30は、正方形状の板状基材を用い、例えば、厚みが150μmの基材の一面をエッチングにより加工することで形成される。
第3基板30には、第2基板20と対向する面に円形に凹んだ第3凹部31が形成され、第2基板20の可動部21の変位による干渉を防止している。
また、第3基板30の外周縁には第2基板20との接合において、第2基板20を支持する支持部36が設けられている。
そして、第3基板30の支持部36の下面には、第2基板20と接合する接合膜41が形成されている。
【0029】
第1基板10と第2基板20とは、接合膜41により接合され、第1基板10と第2基板20との間に第1空洞部45が画定される。
第1空洞部45は密閉され、第1空洞部45内は減圧されており、大気圧より小さい圧力で保持されている。この第1空洞部45内には一対の反射膜(第1反射膜14および第2反射膜24)と静電アクチュエーター40(第1駆動電極15および第2駆動電極25)を含んでいる。
さらに、第1空洞部45内には第1基板10の突起部12cに形成された接続電極17を含み、第2基板20に形成された引き出し電極25aと接続している。
【0030】
第2基板20と第3基板30とは、接合膜41により接合され、第2基板20と第3基板30との間に第2空洞部46が画定される。
第2空洞部46は密閉され、第2空洞部46内は減圧されており、大気圧より小さい圧力で保持されている。
そして、第1空洞部45内の圧力は、第2空洞部46内の圧力より大きく設定されている。このため、第2基板20は厚み方向に、第1空洞部45と第2空洞部46の圧力の差分だけ第1基板10と離れるように斥力を受ける。
【0031】
上記のエタロン5では、対向する第1反射膜14と第2反射膜24とのギャップ寸法を変えるために、静電アクチュエーター40を駆動させると、静電力により第1駆動電極15と第2駆動電極25とが引き合い、第2基板20の薄肉部22が撓んで、可動部21が第1基板10に近づくように変位する。可動部21には第2反射膜24が設けられ、第1反射膜14と第2反射膜24との間のギャップ寸法を調整することができる。
そのとき、第1空洞部45内および第2空洞部46内の圧力は減圧されていることから、可動部21の移動に際して空気抵抗が働かず、可動部21が迅速に移動(変位)することができる。
【0032】
なお、エタロン5は、第1駆動電極15と第2駆動電極25との距離が第1反射膜14と第2反射膜24との距離より大きく形成されている。例えば、第1駆動電極15と第2駆動電極25の間に電圧を印加しない初期状態において、第1駆動電極15と第2駆動電極25との距離が1μm、第1反射膜14と第2反射膜24との距離(ギャップ寸法)が0.5μmに設定されている。このため、第1駆動電極15と第2駆動電極25との間のギャップ寸法が微小となったときに急激に引っ張る力が増加するプルイン現象を抑制する構成となっている。
【0033】
(エタロンの製造方法)
以下、上記エタロンの製造方法の一例について説明する。
図4はエタロンの製造方法を説明する製造工程図である。ここでは、各基板の接合手順について説明する。
まず、図4(a)に示すように、所定の加工が施された第2基板20と第3基板30を用意する。第2基板20の支持部26の上下面にはプラズマ重合膜などの接合膜41が形成されている。また、第3基板30の支持部36にはプラズマ重合膜などの接合膜41が形成されている。
第2基板20および第3基板30の接合をするそれぞれの接合膜41に対して活性化エネルギーを与えるために活性化処理を行う。活性化処理としてO2プラズマ処理、UV処理などが行われる。
【0034】
そして、図4(b)に示すように、減圧された減圧容器48内にて第2基板20と第3基板30を重ね合わせて荷重をかけることで第2基板20と第3基板30の接合を行う。このとき、第2基板20と第3基板30とで画定される第2空洞部46内は大気圧よりも圧力が低い状態で密閉される。このため、この接合された構造体は、大気圧中では第2空洞部46内が減圧状態であるので第2基板20の可動部21は第3基板30に近づく方向に力を受ける。
【0035】
次に、図4(c)に示すように、第2基板20と第3基板30を接合した構造体と、所定の加工が施された第1基板10を用意する。
第1基板10の支持部16の上面にはプラズマ重合膜などの接合膜41が形成されている。
第1基板10および第2基板20の接合をするそれぞれの接合膜41に対して活性化エネルギーを与えるために活性化処理を行う。活性化処理としてO2プラズマ処理、UV処理などが行われる。
【0036】
そして、図4(d)に示すように、第2基板20と第3基板30とを接合した構造体と第1基板10を、減圧された減圧容器48内にて重ね合わせて荷重をかけることで接合が行われる。このとき、第1基板10と第2基板20とで画定される第1空洞部45内は大気圧よりも圧力が低い状態で密閉される。
また、このときの減圧容器内の圧力は第2基板20と第3基板30とを接合したときの圧力よりも大きい圧力に保持され、第1空洞部45内の圧力は第2空洞部46内の圧力に比べて大きい状態である。
このことから、第1基板10、第2基板20、第3基板30が接合された状態では、第1空洞部45と第2空洞部46の圧力の差の分だけ、第2基板20は第1空洞部45から第2空洞部46に向かって斥力が働いた状態で保持されている。
【0037】
以上、本実施形態のエタロン5は、第1基板10と第2基板20との間に第1反射膜14と第2反射膜24と静電アクチュエーター40とを含んで密閉された第1空洞部45と、第2基板20と第3基板30との間に密閉された第2空洞部46と、を備えている。そして、第1空洞部45内および第2空洞部46内は大気圧より小さい圧力で保持され、第1空洞部45内の圧力は、第2空洞部46内の圧力より大きくなるように設定されている。
このため、第2反射膜24が形成された第2基板20の可動部21は、もう一方の第1反射膜14が形成された第1基板10とは離れる方向に力が働く。よって、第1反射膜14と第2反射膜24とは両者が離れる方向に力が働き、小さなギャップ寸法を介して対向する第1反射膜14と第2反射膜24とが貼りつきにくくする効果がある。
【0038】
また、第1基板10と第2基板20との間に画定された第1空洞部45は密閉されていることから、外部から流入したごみが第1反射膜14、第2反射膜24や第1駆動電極15、第2駆動電極25などに付着することがなく、それぞれの機能の低下を防止することができる。
【0039】
そして、エタロン5は、第1基板10に形成された第2基板20の方向に突出する接続電極17を用いて、接続電極17と第2基板20に形成された第2駆動電極25とが第1空洞部45内で接続されている。
このように接続電極17を用いることで簡単な構成で、第1基板10と第2基板20とを電気的に接続することができるため、複雑な配線構造を回避することができる。
【0040】
さらに、第1基板10を貫通する第1貫通電極18aおよび第2貫通電極18bが設けられ、第1貫通電極18aと第1基板10に形成された第1駆動電極15とが接続され、第2貫通電極18bと第1基板10に形成された接続電極17とが接続されている。
このように第1基板10を貫通する穴の内部に導電材料が充填された貫通電極を用いることで、密閉状態を損なうことなく第1空洞部45内が大気圧より小さい圧力(減圧状態)を保ち、第1空洞部45内から第1基板10の外周部に確実に配線をすることができる。
【0041】
(変形例)
次に、第1実施形態の変形例について説明する。第1実施形態では各基板をガラスなどの基材を用いたが、この変形例では基板を各基板の接合の容易性を考慮してガラスおよびシリコンを用いている。本変形例では第1実施形態と同様な構成については第1実施形態と同符号を付し説明を省略する。
図5は第1実施形態におけるエタロンの変形例を示す断面図である。
エタロン6は、シリコンで形成された第1基板50と、ガラスで形成された第2基板60と、ガラスで形成された第3基板70と、第2基板60と第3基板70の間にシリコン基板71を備えている。また、シリコン基板の他に、シリコン膜を利用することもできる。
【0042】
本変形例の各基板は、減圧雰囲気内で陽極接合にて接合される。まず、第2基板60と第3基板70の間にシリコン基板71を挟み、減圧された減圧容器内で第2基板60、シリコン基板71、第3基板70を重ねて加熱をし、ガラスからなる第2基板60および第3基板70にマイナスの電圧を印加して行う。この接合により、第2基板60と第3基板70との間に第2空洞部46が画定されて密閉される。
【0043】
次に、第2基板60、シリコン基板71、第3基板70の接合された構造体と第1基板50を同様に減圧容器内で陽極接合する。この接合により、第1基板50と第2基板60との間に第1空洞部45が画定されて密閉される。ここで、第1空洞部45内の圧力は、第2空洞部46内の圧力より大きく設定されている。このため、第2基板60は厚み方向で、第1基板50と離れるように斥力を受けた状態で保持されている。
なお、本変形例における基板の材質を逆にしても良い。つまり、第1基板をガラス、第2基板をシリコン、第3基板をシリコン、第2基板と第3基板の間にガラス基板、としても良い。
【0044】
以上、本変形例のエタロン6は第1実施形態と同様の効果を有し、さらに、各基板の接合に陽極接合を利用することができるため、接合膜を必要とせず、接合の信頼性が向上する利点がある。
[第2実施形態]
【0045】
次に、上記第1実施形態で説明したエタロンを使用した、光学モジュールおよび電子機器について説明する。第2実施形態では、測定物の色度を測定する測色装置を例にとって説明する。
図6は測色装置の構成を示すブロック図である。
測色装置80は、検査対象Aに光を照射する光源装置82と、測色センサー84(光学モジュール)と、測色装置80の全体動作を制御する制御装置86とを備える。
この測色装置80は、検査対象Aに光源装置82から光を照射し、検査対象Aから反射された検査対象光を測色センサー84にて受光し、測色センサー84から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度を分析して測定する装置である。
【0046】
光源装置82は、光源91、複数のレンズ92(図6には1つのみ図示)を備え、検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ92には、コリメーターレンズが含まれてもよく、この場合、光源装置82は、光源91から射出された光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから検査対象Aに向かって射出する。
なお、本実施形態では、光源装置82を備える測色装置80を例示するが、例えば検査対象Aが発光部材である場合、光源装置82を設けずに測色装置を構成してもよい。
【0047】
光フィルターモジュールとしての測色センサー84は、エタロン(波長可変干渉フィルター)5と、静電アクチュエーターに印加する電圧を制御し、エタロン5で透過させる光の波長を変える電圧制御部94と、エタロン5を透過した光を受光する受光部93と、を備える。
また、測色センサー84は、検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、エタロン5に導光する光学レンズ(図示せず)を備えている。そして、この測色センサー84は、光学レンズに入射した検査対象光をエタロン5で所定波長帯域の光に分光し、分光した光が受光部93にて受光される。
受光部93は、フォトダイオードなどの光電変換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光部93は制御装置86に接続され、生成した電気信号を受光信号として制御装置86に出力する。
【0048】
電圧制御部94は、制御装置86からの入力される制御信号に基づいて、静電アクチュエーターに印加する電圧を制御する。
【0049】
制御装置86は、測色装置80の全体動作を制御する。この制御装置86としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置86は、光源制御部95、測色センサー制御部97、および測色処理部96(分析処理部)などを備えて構成されている。
【0050】
光源制御部95は、光源装置82に接続されている。そして、光源制御部95は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置82に所定の制御信号を出力し、光源装置82から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部97は、測色センサー84に接続されている。そして、測色センサー制御部97は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー84にて受光させる光の波長を設定し、この波長の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー84に出力する。これにより、測色センサー84の電圧制御部94は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長を透過させるよう、静電アクチュエーターへの印加電圧を設定する。
【0051】
測色処理部96は、測色センサー制御部97を制御して、エタロン5の反射膜間のギャップ寸法を変動させて、エタロン5を透過する光の波長を変化させる。また、測色処理部96は、受光部93から入力される受光信号に基づいて、エタロン5を透過した光量を取得する。そして、測色処理部96は、上記により得られた各波長の受光量に基づいて、検査対象Aから反射された光の色度を算出する。
【0052】
このように、本実施形態の電子機器としての測色装置80および光学モジュールとしての測色センサー84は、反射膜同士が貼り付きにくいエタロン5を有していることから、適正な反射膜間のギャップを適正に維持でき、信頼性が高い。
以上、第2実施形態では、電子機器として測色装置80を例示したが、その他、様々な分野に波長可変干渉フィルター、光学モジュール、電子機器を用いることができる。
例えば、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムとして用いることができる。このようなシステムとしては、例えば、エタロン(波長可変干渉フィルター)を用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響希ガス検出器などのガス検出装置を例示できる。
[第3実施形態]
【0053】
以下、ガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
【0054】
図7は、エタロンを備えたガス検出装置の一例を示す断面図である。
図8は、ガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、図7に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、および排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、エタロン(波長可変干渉フィルター)5、および受光素子137(受光部)等を含む検出部(光フィルターモジュール)と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッター135Bと、レンズ135C,135D,135Eと、により構成されている。
【0055】
また、図8に示すように、ガス検出装置100には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部139が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
さらに、ガス検出装置100の制御部138は、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、エタロン5を制御するための電圧制御部146、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、および排出手段133を制御する排出ドライバー回路150などを備えている。
【0056】
次に、ガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
【0057】
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光が射出される。また、光源135Aには、温度センサーや光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度や光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。
【0058】
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、およびレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光がエタロン5に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部146を制御し、エタロン5に印加する電圧を調整し、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光をエタロン5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。
信号処理部144は、上記のようにして得られた検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光のスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定し、物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
【0059】
なお、図7、図8において、ラマン散乱光をエタロン5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光フィルターモジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置100を本発明の光分析装置とする。このような構成でも、本発明のエタロンを用いてガスの成分を検出することができる。
【0060】
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物や生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
[第4実施形態]
【0061】
次に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
【0062】
図9は、エタロン5を利用した電子機器の一例である食物分析装置の構成を示すブロック図である。
この食物分析装置200は、検出器(光フィルターモジュール)210と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光するエタロン(波長可変干渉フィルター)5と、分光された光を検出する撮像部(受光部)213と、を備えている。
また、制御部220は、光源211の点灯・消灯制御、点灯時の明るさの制御を実施する光源制御部221と、エタロン5を制御する電圧制御部222と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224と、記憶部225と、を備えている。
【0063】
この食物分析装置200は、装置を駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通ってエタロン5に入射する。エタロン5は電圧制御部222の制御により所望の波長を分光可能な電圧が印加されており、分光された光が、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部222を制御してエタロン5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
【0064】
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、およびその含有量を求める。また、得られた食物成分および含有量から、食物カロリーや鮮度等をも算出することができる。さらに、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、さらには、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
【0065】
また、図9において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、自動車運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる。また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
さらには、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
【0066】
さらには、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、電子機器としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光フィルターモジュールに設けられたエタロンにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光フィルターモジュールを備えた光分析装置により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
[第5実施形態]
【0067】
また、他の電子機器として、本発明のエタロン(波長可変干渉フィルター)により光を分光して、分光画像を撮像する分光カメラ、分光分析機などにも適用できる。このような分光カメラの一例として、エタロンを内蔵した赤外線カメラが挙げられる。
図10は、分光カメラの構成を示す斜視図である。分光カメラ300は、図10に示すように、カメラ本体310と、撮像レンズユニット320と、撮像部330とを備えている。
カメラ本体310は、利用者により把持、操作される部分である。
撮像レンズユニット320は、カメラ本体310に設けられ、入射した画像光を撮像部330に導光する。また、この撮像レンズユニット320は、対物レンズ321、結像レンズ322、およびこれらのレンズ間に設けられたエタロン5を備えて構成されている。
撮像部330は、受光素子により構成され、撮像レンズユニット320により導光された画像光を撮像する。
このような分光カメラ300では、エタロン5により撮像対象となる波長の光を透過させることで、所望波長の光の分光画像を撮像することができる。
【0068】
さらには、本発明のエタロンをバンドパスフィルターとして用いてもよく、例えば、発光素子が射出する所定波長域の光のうち、所定の波長を中心とした狭帯域の光のみを分光して透過させる光学式レーザー装置としても用いることができる。
また、本発明のエタロンを生体認証装置として用いてもよく、例えば、近赤外領域や可視領域の光を用いた、血管や指紋、網膜、虹彩などの認証装置にも適用できる。
【0069】
さらには、光学モジュールおよび電子機器を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、エタロンにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
【0070】
上記に示すように、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、および電子機器は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、本発明のエタロンは、上述のように、1つのデバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光フィルターモジュールや光分析装置の小型化を促進でき、例えば、携帯用や車載用として好適に用いることができる。
【0071】
本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更することができる。そして、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有するものにより可能である。
【符号の説明】
【0072】
5,6…エタロン(波長可変干渉フィルター)、10…第1基板、11…第1凹部、12…電極形成部、12a…引き出し溝、12b…引き出し溝、12c…突起部、13…反射膜形成部、14…第1反射膜、15…第1駆動電極、15a…引き出し電極、16…支持部、17…接続電極、18a…第1貫通電極、18b…第2貫通電極、19…接続パッド、20…第2基板、21…可動部、22…薄肉部、23…第2凹部、24…第2反射膜、25…第2駆動電極、25a…引き出し電極、26…支持部、30…第3基板、31…第3凹部、36…支持部、40…静電アクチュエーター、41…接合膜、45…第1空洞部、46…第2空洞部、48…減圧容器、50…第1基板、60…第2基板、70…第3基板、71…シリコン基板、80…電子機器としての測色装置、100…電子機器としてのガス検出装置、200…電子機器としての食物分析装置、300…電子機器としての分光カメラ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の第1基板と、
前記第1基板の一方の面に対向し、前記第1基板と接合される透光性の第2基板と、
前記第2基板の前記第1基板と向かい合う面とは反対の面に対向して、前記第2基板と接合される透光性の第3基板と、を有し、
前記第2基板に設けられ、前記第1基板に対向する平面を有する可動部と、
前記第2基板に設けられ、前記可動部を保持し前記可動部を前記第1基板の厚み方向に移動可能とする薄肉部と、
前記可動部の前記平面および前記第1基板の前記第2基板側の面に、ギャップを介して対向配置される一対の反射膜と、
前記第1基板および前記第2基板の互いに対向する面に、ギャップを介して対向する一対の駆動電極を有する静電アクチュエーターと、
前記第1基板と前記第2基板との間に前記一対の反射膜と前記静電アクチュエーターとを含んで密閉された第1空洞部と、
前記第2基板と前記第3基板との間に密閉された第2空洞部と、を備え、
前記第1空洞部内および前記第2空洞部内は大気圧より小さい圧力で保持され、
前記第1空洞部内の圧力は、前記第2空洞部内の圧力より大きい
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に、前記第2基板の方向に突出する接続電極を備え、
前記第1空洞部内で前記第2基板に形成された前記駆動電極と前記接続電極とが接続されている
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項3】
請求項2に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第1基板に、前記第1基板の厚み方向に貫通する第1貫通電極および第2貫通電極が設けられ、
前記第1貫通電極と前記第1基板に形成された前記駆動電極とが接続され、
前記第2貫通電極と前記第1基板に形成された前記接続電極とが接続されている
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項4】
透光性の第1基板と、
前記第1基板の一方の面に対向し、前記第1基板と接合される透光性の第2基板と、
前記第2基板の前記第1基板と向かい合う面とは反対の面に対向して、前記第2基板と接合される透光性の第3基板と、を有し、
前記第2基板に設けられ、前記第1基板に対向する平面を有する可動部と、
前記第2基板に設けられ、前記可動部を保持し前記可動部を前記第1基板の厚み方向に移動可能とする薄肉部と、
前記可動部の前記平面および前記第1基板の前記第2基板側の面に、ギャップを介して対向配置される一対の反射膜と、
前記第1基板および前記第2基板の互いに対向する面に、ギャップを介して対向する一対の駆動電極を有する静電アクチュエーターと、
前記第1基板と前記第2基板との間に前記一対の反射膜と前記静電アクチュエーターとを含んで密閉された第1空洞部と、
前記第2基板と前記第3基板との間に密閉された第2空洞部と、
前記反射膜を透過した光が受光される受光部と、を備え、
前記第1空洞部内および前記第2空洞部内は大気圧より小さい圧力で保持され、
前記第1空洞部内の圧力は、前記第2空洞部内の圧力より大きい
ことを特徴とする光学モジュール。
【請求項5】
透光性の第1基板と、
前記第1基板の一方の面に対向し、前記第1基板と接合される透光性の第2基板と、
前記第2基板の前記第1基板と向かい合う面とは反対の面に対向して、前記第2基板と接合される透光性の第3基板と、を有し、
前記第2基板に設けられ、前記第1基板に対向する平面を有する可動部と、
前記第2基板に設けられ、前記可動部を保持し前記可動部を前記第1基板の厚み方向に移動可能とする薄肉部と、
前記可動部の前記平面および前記第1基板の前記第2基板側の面に、ギャップを介して対向配置される一対の反射膜と、
前記第1基板および前記第2基板の互いに対向する面に、ギャップを介して対向する一対の駆動電極を有する静電アクチュエーターと、
前記第1基板と前記第2基板との間に前記一対の反射膜と前記静電アクチュエーターとを含んで密閉された第1空洞部と、
前記第2基板と前記第3基板との間に密閉された第2空洞部と、
前記反射膜を透過した光が受光される受光部と、
前記受光部により受光された光に基づいて、前記光の特性が分析される分析処理部と、を備え、
前記第1空洞部内および前記第2空洞部内は大気圧より小さい圧力で保持され、
前記第1空洞部内の圧力は、前記第2空洞部内の圧力より大きい
ことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
透光性の第1基板と、
前記第1基板の一方の面に対向し、前記第1基板と接合される透光性の第2基板と、
前記第2基板の前記第1基板と向かい合う面とは反対の面に対向して、前記第2基板と接合される透光性の第3基板と、を有し、
前記第2基板に設けられ、前記第1基板に対向する平面を有する可動部と、
前記第2基板に設けられ、前記可動部を保持し前記可動部を前記第1基板の厚み方向に移動可能とする薄肉部と、
前記可動部の前記平面および前記第1基板の前記第2基板側の面に、ギャップを介して対向配置される一対の反射膜と、
前記第1基板および前記第2基板の互いに対向する面に、ギャップを介して対向する一対の駆動電極を有する静電アクチュエーターと、
前記第1基板と前記第2基板との間に前記一対の反射膜と前記静電アクチュエーターとを含んで密閉された第1空洞部と、
前記第2基板と前記第3基板との間に密閉された第2空洞部と、を備え、
前記第1空洞部内および前記第2空洞部内は大気圧より小さい圧力で保持され、
前記第1空洞部内の圧力は、前記第2空洞部内の圧力より大きい
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に、前記第2基板の方向に突出する接続電極を備え、
前記第1空洞部内で前記第2基板に形成された前記駆動電極と前記接続電極とが接続されている
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項3】
請求項2に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第1基板に、前記第1基板の厚み方向に貫通する第1貫通電極および第2貫通電極が設けられ、
前記第1貫通電極と前記第1基板に形成された前記駆動電極とが接続され、
前記第2貫通電極と前記第1基板に形成された前記接続電極とが接続されている
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項4】
透光性の第1基板と、
前記第1基板の一方の面に対向し、前記第1基板と接合される透光性の第2基板と、
前記第2基板の前記第1基板と向かい合う面とは反対の面に対向して、前記第2基板と接合される透光性の第3基板と、を有し、
前記第2基板に設けられ、前記第1基板に対向する平面を有する可動部と、
前記第2基板に設けられ、前記可動部を保持し前記可動部を前記第1基板の厚み方向に移動可能とする薄肉部と、
前記可動部の前記平面および前記第1基板の前記第2基板側の面に、ギャップを介して対向配置される一対の反射膜と、
前記第1基板および前記第2基板の互いに対向する面に、ギャップを介して対向する一対の駆動電極を有する静電アクチュエーターと、
前記第1基板と前記第2基板との間に前記一対の反射膜と前記静電アクチュエーターとを含んで密閉された第1空洞部と、
前記第2基板と前記第3基板との間に密閉された第2空洞部と、
前記反射膜を透過した光が受光される受光部と、を備え、
前記第1空洞部内および前記第2空洞部内は大気圧より小さい圧力で保持され、
前記第1空洞部内の圧力は、前記第2空洞部内の圧力より大きい
ことを特徴とする光学モジュール。
【請求項5】
透光性の第1基板と、
前記第1基板の一方の面に対向し、前記第1基板と接合される透光性の第2基板と、
前記第2基板の前記第1基板と向かい合う面とは反対の面に対向して、前記第2基板と接合される透光性の第3基板と、を有し、
前記第2基板に設けられ、前記第1基板に対向する平面を有する可動部と、
前記第2基板に設けられ、前記可動部を保持し前記可動部を前記第1基板の厚み方向に移動可能とする薄肉部と、
前記可動部の前記平面および前記第1基板の前記第2基板側の面に、ギャップを介して対向配置される一対の反射膜と、
前記第1基板および前記第2基板の互いに対向する面に、ギャップを介して対向する一対の駆動電極を有する静電アクチュエーターと、
前記第1基板と前記第2基板との間に前記一対の反射膜と前記静電アクチュエーターとを含んで密閉された第1空洞部と、
前記第2基板と前記第3基板との間に密閉された第2空洞部と、
前記反射膜を透過した光が受光される受光部と、
前記受光部により受光された光に基づいて、前記光の特性が分析される分析処理部と、を備え、
前記第1空洞部内および前記第2空洞部内は大気圧より小さい圧力で保持され、
前記第1空洞部内の圧力は、前記第2空洞部内の圧力より大きい
ことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−83850(P2013−83850A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224592(P2011−224592)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]