説明

波長可変干渉フィルターの製造方法、波長可変干渉フィルター、光モジュール、および光分析装置

【課題】基板に生じる撓みを低減させた波長可変干渉フィルターの製造方法、波長可変干渉フィルター、光モジュール、および光分析装置を提供する。
【解決手段】固定基板11と、可動部121および保持部122を有する可動基板12と、固定反射膜16と、可動反射膜17と、固定反射膜16および可動反射膜17のギャップGを可変させる静電アクチュエーター14と、を備えた波長可変干渉フィルター1の製造方法であって、第一熱膨張係数を有する素材により、可動基板12よりも大きい剛性を有する固定基板11を製造する固定基板製造工程と、第一熱膨張係数よりも値が大きい第二熱膨張係数を有する素材により、可動基板12を製造する可動基板製造工程と、固定基板11および可動基板12を第一温度まで加熱した状態で接合する接合工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光から特定の波長の光を取り出す波長可変干渉フィルターの製造方法、波長可変干渉フィルター、光モジュール、および光分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の反射膜間で光を多重干渉させて、所望の波長の光を出射させる波長可変干渉フィルターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の光学フィルター装置(波長可変干渉フィルター)は、対向配置された第一基板、および第二基板を有し、これらの第一基板および第二基板の対向する面には、それぞれ可動ミラーおよび固定ミラーが設けられている。また、第一基板において、可動ミラーは、基板中央部の可動部(第1部分)に設けられ、この可動部は、外周部が、ダイヤフラム状の保持部(第2部分)に保持されることで、第二基板に対して進退可能となる。そして、第一基板および第二基板の互いに対向する面には、それぞれ、第一電極および第二電極が設けられている。
このような波長可変干渉フィルターでは、第一電極および第二電極間の間に電圧を印加すると、静電引力により第一基板の第二部分が第二基板側に撓み、可動ミラーおよび固定ミラーの間のギャップ寸法が変化する。これにより、波長可変干渉フィルターは、第一電極および第二電極間の電圧を制御することで、入射光から、ミラー間のギャップ寸法に応じた波長の光を取り出すことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−251105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の波長可変干渉フィルターでは、第一基板の可動部が、可撓性を有する保持部により保持されている。このような構成では、第一基板に形成される第一電極や可動ミラーの内部応力により、保持部が撓み、可動部が傾斜してしまう場合がある。
また、第一基板および第二基板を接合する接合工程において、第一基板に形成された接合膜と、第二基板に形成された接合膜とを接合させる接合方法をとる場合、これらの接合膜同士のアライメントのずれが生じることがある。この場合、基板にアライメントのずれに起因したモーメント力が発生する。第一基板の保持部にこのようなモーメント力が加わると、保持部が撓み、可動部が傾斜してしまうことがある。
さらには、環境温度等により、第一基板に撓みが生じ、可動部が傾斜してしまう場合もある。
以上のように、可動部が傾斜した場合、可動ミラーおよび固定ミラーのギャップ間隔を均一に保持することができず、波長可変干渉フィルターの分解能が低下してしまうという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、基板に生じる撓みを低減させた波長可変干渉フィルターの製造方法、波長可変干渉フィルター、光モジュール、および光分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の波長可変干渉フィルターの製造方法は、第一基板と、前記第一基板に対向し、可動部および前記可動部を前記第一基板に対して進退可能に保持する保持部を有する第二基板と、前記第一基板に設けられた第一反射膜と、前記可動部に設けられ、ギャップを介して前記第一反射膜に対向する第二反射膜と、前記ギャップの寸法を変化させるギャップ変更部と、を具備し、前記第一基板の剛性が前記第二基板の剛性よりも大きい波長可変干渉フィルターの製造方法であって、第一熱膨張係数を有する素材から前記第一基板を形成し、前記第一基板に前記第一反射膜を形成する第一基板製造工程と、前記第一熱膨張係数よりも値が大きい第二熱膨張係数を有する素材から前記第二基板を形成し、前記第二基板に前記第二反射膜を形成する第二基板製造工程と、前記第一基板製造工程で形成された前記第一基板、および前記第二基板製造工程で形成された前記第二基板を接合する接合工程と、を備え、前記接合工程は、前記第一基板および前記第二基板の双方を、所定の温度である第一温度まで加熱して、前記第一基板および前記第二基板を接合することを特徴とする。
【0007】
この発明では、可動部および保持部が設けられた第二基板は、第一基板の第一熱膨張係数よりも大きい第二熱膨張係数を有する第二母材により形成されている。そして、接合工程では、第一基板および第二基板の双方を、所定の第一温度まで加熱し、これらの基板が膨張した状態で接合する。このような製造方法では、接合後に波長可変干渉フィルターを常温に戻した際、第二基板の熱膨張係数が第一基板よりも大きいため、第二基板の収縮率が第一基板よりも大きくなる。
また、第一基板製造工程において、第一基板の剛性が、第二基板の剛性よりも大きくなるように、第一基板を製造する。ここで、第二基板よりも剛性が大きい第一基板を製造する方法としては、例えば、第一基板を第二基板よりも大きいヤング率の素材により形成することが挙げられ、第一基板および第二基板の素材として同程度のヤング率の素材を用いる場合では、第一基板を第二基板よりも大きい厚み寸法に形成する等が挙げられる。
このように、第一基板の剛性が第二基板よりも大きい場合、上述のように、第二基板の収縮率が大きく、収縮力(圧縮力)が加わった場合でも、第一基板は変形しない。一方、第二基板も、第一基板に接合されているため、収縮力による変形はしない。しかし、収縮力に対する反力である引張力が第二基板に作用し、第二基板の保持部は、この引張力により引っ張られた状態となる。ここで、膜の内部応力による撓み力や、環境温度の変化による撓み力、接合時のアライメントずれに起因する第二基板に作用する撓み力は、引張力に比べて十分小さい力となる。したがって、これらの撓み力が加わった場合でも、第二基板が撓むことがなく、可動部の傾斜を防止することができる。
これにより、可動部上に形成された第二反射膜の傾斜をも防止でき、第一反射膜および第二反射膜のギャップ寸法を均一にすることができる。よって、波長可変干渉フィルターの分解能の低下を防止することができる。
【0008】
本発明の波長可変干渉フィルターの製造方法では、前記第一温度は、前記第一反射膜および前記第二反射膜の耐熱温度以下であることが好ましい。
【0009】
本発明では、接合工程において、第一反射膜や第二反射膜の耐熱温度以下である第一温度まで、第一基板および第二基板を加熱して接合する。このような方法を用いることで、第一反射膜や第二反射膜が、熱により劣化してしまうことを防止でき、波長可変干渉フィルターの性能低下を抑えることができる。
【0010】
本発明の波長可変官署フィルターの製造方法では、前記接合工程において、シロキサンによるプラズマ重合膜を用いた活性化接合により、前記第一基板および前記第二基板を接合することが好ましい。
【0011】
この発明では、シロキサンによるプラズマ重合膜を用いた活性化接合を実施するため、温度によらず、紫外線照射により、容易にプラズマ重合膜を硬化させて接合させることができる。また、シロキサンによるプラズマ重合膜は、第一基板や第二基板として、いかなる素材を用いた場合でも、良好な密着性を示し、強い接合強度を得ることができる。したがって、接合工程の後、波長可変干渉フィルターを冷却した際、第二基板に収縮しようとする力が働いた場合でも第一基板と第二基板とが剥離せず、第二基板に引張力を作用させることができる。
【0012】
本発明の波長可変干渉フィルターは、第一基板と、前記第一基板に接合され、可動部および前記可動部を前記第一基板に対して進退可能に保持する保持部を有する第二基板と、前記第一基板に設けられた第一反射膜と、前記可動部に設けられ、ギャップを介して前記第一反射膜に対向する第二反射膜と、前記ギャップを変更させるギャップ変更部と、を具備し、前記第一基板は、前記第二基板よりも大きい剛性を有し、前記第二基板は、前記第一基板の第一熱膨張係数よりも値が大きい第二熱膨張係数を有し、引張力が作用した状態で前記第一基板に接合されていることを特徴とする。
【0013】
この発明では、第二基板に引張力が作用した状態で第一基板に接合されているため、上記した発明と同様に、膜の内部応力や、環境温度の変化、接合時のアライメントずれ等に起因する撓み力が第二基板に作用した場合でも、第二基板の撓みを防止することができる。
これにより、可動部上に形成された第二反射膜の傾斜をも防止でき、第一反射膜および第二反射膜のギャップ寸法を均一にすることができる。よって、波長可変干渉フィルターの分解能の低下を防止することができる。
【0014】
本発明の光モジュールは、上述したような波長可変干渉フィルターと、前記波長可変干渉フィルターにより取り出された光を検出する検出部と、を具備したことを特徴とする。
【0015】
この発明では、光モジュールは、上述したような波長可変干渉フィルターを備えている。波長可変干渉フィルターは、上記のように、第一反射膜および第二反射膜のギャップを変動させた場合でも、ギャップの寸法が均一となり、高分解能を維持することができる。
したがって、このような波長可変干渉フィルターを備えた光モジュールでは、高分解能で取り出された光を検出部で検出することができ、高精度な検出結果を得ることができる。
【0016】
本発明の光分析装置は、上述したような光モジュールと、前記光モジュールの前記検出部により検出された光に基づいて、前記光の光特性を分析する分析処理部と、を具備したことを特徴とする。
【0017】
ここで、光分析装置としては、上記のような光モジュールから出力される電気信号に基づいて、光モジュールに入射した光の色度や明るさなどを分析する光測定器、ガスの吸収波長を検出してガスの種類を検査するガス検出装置、受光した光からその波長の光に含まれるデータを取得する光通信装置などを例示することができる。
この発明では、光分析装置は、上述したような光モジュールを備えている。光モジュールは、上記のように、高分解能で取り出された光を検出して、高精度な検出結果を得ることができる。したがって、このような光モジュールを備えた光分析装置では、高精度な検出結果に基づいて、正確な光分析処理を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る第一実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す平面図。
【図2】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す断面図。
【図3】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの第一基板の製造工程を示す図。
【図4】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの第二基板の製造工程を示す図。
【図5】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの接合工程を示す図。
【図6】第二実施形態の測色装置の概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る第一実施形態を図面に基づいて説明する。
〔1.波長可変干渉フィルターの構成〕
図1は、本発明の波長可変干渉フィルター1の概略構成を示す平面図であり、図2は、波長可変干渉フィルター1の概略構成を示す断面図である。
波長可変干渉フィルター1は、図1に示すように、平面正方形状の板状の光学部材である。この波長可変干渉フィルター1は、本発明の第一基板である固定基板11と、本発明の第二基板である可動基板12を備えている。
これらの2枚の基板11,12は、互いに異なる熱膨張係数を有する素材により形成されている。これらの基板11,12の素材の組み合わせとしては、固定基板11の熱膨張係数(第一熱膨張係数)が、可動基板12の熱膨張係数(第二熱膨張係数)よりも小さくなるように選択される。この際、波長可変干渉フィルター1により分光させたい波長域における透過率や、基板の加工性等を考慮して、これらの基板11,12の素材を選択することが好ましく、例えば可視光域に対する光を波長可変干渉フィルター1により取り出したい場合では、可視光域に対する透過率が良好で、かつ、エッチング等の加工性に優れた材料が選択される。このような素材の組み合わせの一例として、本実施形態では、固定基板11としてUVグレード合成フューズドシリカ(第一熱膨張係数:0.55×10−6(/℃))、可動基板12としてBaK1又は N−BaK1(第二熱膨張係数:8.6×10−6(/℃))を用いる。
そして、これらの2つの基板11,12は、外周部近傍に形成される接合部113,123が、シロキサンを用いたプラズマ重合膜による活性化接合により接合されることで一体化される。
【0020】
固定基板11には、本発明の第一反射膜を構成する固定反射膜16が設けられ、可動基板12には、本発明の第二反射膜を構成する可動反射膜17が設けられている。ここで、固定反射膜16は、固定基板11の可動基板12に対向する面に固定され、可動反射膜17は、可動基板12の固定基板11に対向する面に固定されている。また、これらの固定反射膜16及び可動反射膜17は、ギャップGを介して対向配置されている。
さらに、固定基板11と可動基板12との間には、ギャップ変更部としての静電アクチュエーター14が設けられている。この静電アクチュエーター14は、固定反射膜16及び可動反射膜17の間のギャップGの寸法を調整するためのものであり、固定基板11側に設けられる固定電極141と、可動基板12側に設けられる可動電極142とを備えている。
【0021】
(1−1.固定基板の構成)
固定基板11は、可動基板12よりも大きい剛性を有する形状に形成されている。具体的には、固定基板11の厚み寸法は、例えば500μmに形成されており、可動基板12の厚み寸法よりも、大きく形成されている。
なお、本実施形態では、固定基板11および可動基板12は、ほぼ同程度のヤング率を有する素材により形成されるものであるため、上述のように、固定基板11の厚み寸法を可動基板12の厚み寸法より大きく形成し、剛性を大きくしているが、例えば固定基板11として、可動基板12よりも十分大きいヤング率を有する素材(例えば、サファイア等)により形成される場合であれば、上記寸法に限られず、より小さい厚み寸法に形成されていてもよい。
ここで、この固定基板11は、固定反射膜16や固定電極141の内部応力や環境温度の変化、アライメントずれ等に起因した撓み力が加わった場合でも、撓みが生じない十分な剛性を有する形状(厚み寸法)に形成され、静電アクチュエーター14により静電引力が加えられた場合でも変形しない。
【0022】
そして、この固定基板11には、図2に示すように、エッチング加工により、電極形成溝111及び反射膜固定部112が形成されている。
【0023】
電極形成溝111は、図1に示すような波長可変干渉フィルター1を厚み方向から見た平面視において、平面中心点を中心とした円形に形成されている。反射膜固定部112は、前記平面視において、電極形成溝111の中心部から可動基板12側に突出して形成される。
また、固定基板11には、電極形成溝111から、固定基板11の外周縁の頂点方向(例えば図1における左下方向、及び右上方向)に向かって延出する一対の引出形成溝(図示略)が設けられている。
【0024】
そして、固定基板11の電極形成溝111の溝底部である電極固定面111Aには、リング状の固定電極141が形成されている。固定電極141を構成する材料としては、導電性の材料であればよく、例えば、Au、Al、Crなどの金属やITOなどの透明導電性酸化物が挙げられる。
また、この固定電極141の外周縁から、一対の引出形成溝(図1では、右上方向)に沿って伸びる固定引出電極141Aが設けられている。この固定引出電極141Aは、固定電極141の成膜時に同時に形成されるものである。この固定引出電極141Aの先端には、固定電極パッド141Bが形成され、この固定電極パッド141Bが電圧制御部(図示略)に接続されている。なお、電圧制御部は、静電アクチュエーター14の固定電極141及び可動電極142に印加する電圧を制御するためのものである。
【0025】
反射膜固定部112は、上述したように、電極形成溝111と同軸上で、電極形成溝111よりも小さい径寸法となる円柱状に形成されている。なお、本実施形態では、図2に示すように、反射膜固定部112の可動基板12に対向する反射膜固定面112Aが、電極固定面111Aよりも可動基板12に近接して形成される例を示すが、これに限定されない。電極固定面111A及び反射膜固定面112Aの高さ位置は、反射膜固定面112Aに固定される固定反射膜16、及び可動基板12に形成される可動反射膜17の間のギャップGの寸法、固定電極141及び可動基板12に形成される後述の可動電極142の間の寸法、固定反射膜16や可動反射膜17の厚み寸法により適宜設定される。例えば反射膜16,17として、誘電体多層膜を用い、その厚み寸法が増大する場合、電極固定面111Aと反射膜固定面112Aとが同一面に形成される構成や、電極固定面111Aの中心部に、円柱凹溝上の反射膜固定溝が形成され、この反射膜固定溝の底面に反射膜固定面112Aが形成される構成などとしてもよい。
ただし、固定電極141及び可動電極142の間に作用する静電引力は、固定電極141及び可動電極142の距離の二乗に反比例する。したがって、これら固定電極141及び可動電極142の距離が近接するほど、印加電圧に対する静電引力も増大し、ギャップGの変動量も大きくなる。特に、本実施形態の波長可変干渉フィルター1のように、ギャップGの可変寸法が微小な場合(例えば250nm〜450nm)、ギャップGの制御が困難となる。したがって、上記のように、反射膜固定溝を形成する場合であっても、電極形成溝111の深さ寸法をある程度確保する方が好ましく、本実施形態では、例えば1μmに形成されることが好ましい。
【0026】
また、反射膜固定部112の反射膜固定面112Aは、波長可変干渉フィルター1を透過させる波長域をも考慮して、溝深さが設計されることが好ましい。例えば、固定反射膜16及び可動反射膜17の間のギャップGの初期値(固定電極141及び可動電極142間に電圧が印加されていない状態のギャップGの寸法)が450nmに設定され、固定電極141及び可動電極142間に電圧を印加することにより、ギャップGの寸法が例えば250nmになるまで可動反射膜17を変位させることが可能な設定とする場合、固定反射膜16及び可動反射膜17の膜厚及び反射膜固定面112Aや電極固定面111Aの高さ寸法は、ギャップGの寸法を250nm〜450nmの間で変位可能な値に設定されていればよい。
【0027】
そして、反射膜固定面112Aには、円形状に形成される固定反射膜16が固定されている。この固定反射膜16としては、金属の単層膜により形成されるものであってもよく、誘電体多層膜により形成されるものであってもよく、さらには、誘電体多層膜上にAg合金が形成される構成などとしてもよい。金属単層膜としては、例えばAg合金の単層膜を用いることができ、誘電体多層膜の場合は、例えば高屈折層をTiO、低屈折層をSiOとした誘電体多層膜を用いることができる。ここで、Ag合金の単層など金属単層により固定反射膜16を形成する場合、波長可変干渉フィルター1で分光可能な波長域として可視光全域をカバーできる反射膜を形成することが可能となる。また、誘電体多層膜により固定反射膜16を形成する場合、波長可変干渉フィルター1で分光可能な波長域がAg合金単層膜よりも狭いが、分光された光の透過率が大きく、透過率の半値幅も狭く分解能を良好にできる。
【0028】
さらに、固定基板11は、可動基板12に対向する上面とは反対側の下面において、固定反射膜16に対応する位置に図示略の反射防止膜(AR)が形成されている。この反射防止膜は、低屈折率膜及び高屈折率膜を交互に積層することで形成され、固定基板11の表面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させる。
【0029】
(1−2.可動基板の構成)
可動基板12は、厚みが例えば200μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。
具体的には、可動基板12は、図1に示すような平面視において、基板中心点を中心とした円形の可動部121と、可動部121と同軸であり可動部121を保持する保持部122と、を備えている。
【0030】
可動部121は、保持部122よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、可動基板12の厚み寸法と同一寸法である200μmに形成されている。また、可動部121は、反射膜固定部112に平行な可動面121Aを備え、この可動面121Aに、固定反射膜16とギャップGを介して対向する可動反射膜17が固定されている。
ここで、この可動反射膜17は、上述した固定反射膜16と同一の構成の反射膜が用いられる。
【0031】
さらに、可動部121は、可動面121Aとは反対側の上面において、可動反射膜17に対応する位置に図示略の反射防止膜(AR)が形成されている。この反射防止膜は、固定基板11に形成される反射防止膜と同様の構成を有し、低屈折率膜及び高屈折率膜を交互に積層することで形成される。
【0032】
保持部122は、可動部121の周囲を囲うダイヤフラムであり、例えば厚み寸法が50μmに形成され、可動部121よりも厚み方向に対する剛性が小さく形成されている。このため、保持部122は可動部121よりも撓みやすく、僅かな静電引力により固定基板11側に撓ませることが可能となる。この際、可動部121は、保持部122よりも厚み寸法が大きく、剛性が大きくなるため、静電引力により可動基板12を撓ませる力が作用した場合でも、可動部121の撓みはほぼなく、可動部121に形成された可動反射膜17の撓みも防止できる。
【0033】
そして、この保持部122の固定基板11に対向する面には、リング状の可動電極142が形成されている。可動電極142は、固定電極141と、約1μmの隙間を介して対向する。また、可動電極142は、固定電極141と同様の材料で構成される。
そして、可動電極142の外周縁の一部からは、可動引出電極142Aが外周方向に向かって形成されている。具体的には、可動引出電極142Aは、波長可変干渉フィルター平面視において、固定基板11に形成される一対の引出形成溝のうち、固定引出電極141Aが形成されていない他方の引出形成溝と対向する位置に設けられている。また、可動引出電極142Aは、先端部には、可動電極パッド142Bが形成され、前記電圧制御部に接続されている。
【0034】
〔2.波長可変干渉フィルターの製造方法〕
次に、上記波長可変干渉フィルター1の製造方法について、図面に基づいて説明する。
(2−1.固定基板製造工程(第一基板製造工程))
図3は、波長可変干渉フィルター1の固定基板11の製造工程を示す図である。
まず、固定基板11の製造素材である厚み寸法が500μmのUVグレード合成フューズドシリカにより構成された第一母材11Aを用意し、この第一母材11Aの表面を、表面粗さRaが1nm以下となるまで両面を精密研磨する。そして、第一母材11Aの一面側に電極形成溝111形成用のレジスト61を塗布して、塗布されたレジスト61をフォトリソグラフィ法により露光・現像して、図3(A)に示すように、電極形成溝111が形成される箇所をパターニングする。
次に、図3(B)に示すように、電極形成溝111を所望の深さにエッチングし、電極固定面111Aを形成する。なお、ここでのエッチングとしては、ウェットエッチングが用いられる。
そして、第一母材11Aの一面側に反射膜固定面112Aを形成するためのレジスト61を塗布して、塗布されたレジスト61をフォトリソグラフィ法により露光・現像して、図3(B)に示すように、反射膜固定面112Aが形成される箇所をパターニングする。
次に、図3(C)に示すように、反射膜固定面112Aを所望の位置までエッチングした後、レジスト61を除去することで、電極形成溝111及び反射膜固定部112が形成され、固定基板11の基板形状が決定される。
【0035】
この後、図3(D)に示すように、反射膜固定面112Aに、固定反射膜16を形成し、電極形成溝111に固定電極141(固定引出電極141A、及び固定電極パッド141Bを含む)を形成する。具体的には、固定反射膜16は、リフトオフプロセスにより成膜される。すなわち、フォトリソグラフィ法などにより、固定基板11上の反射膜形成部分以外にレジスト(リフトオフパターン)を成膜する。そして、固定反射膜16を成膜した後、リフトオフにより、反射膜固定面112A以外の反射膜を除去する。また、固定電極141、固定引出電極141A及び固定電極パッド141Bは、固定基板11上に形成した電極を構成する材料からなる膜に対してフォトリソグラフィ法及びエッチングを行うことにより、所望の位置に形成される。
さらに、図3(D)に示すように、第一接合膜113Aを接合部113に形成する。第一接合膜113Aは、ポリオルガノシロキサンを用いたプラズマCVD法により成膜されるプラズマ重合膜であり、厚み寸法は100nmとする。
以上により、固定反射膜16、固定電極141、および第一接合膜113Aを備えた固定基板11が製造される。
【0036】
(2−2.可動基板製造工程(第二基板製造工程))
次に、可動基板12の製造方法について説明する。
図4は、可動基板の製造工程の概略を示す断面図である。
可動基板12の形成では、まず、可動基板12の製造素材であるBak1により構成された第二母材12Aを用意し、切削等により、例えば厚み寸法を200μmの均一厚みに形成する。そして、第二母材12Aの表面を鏡面研磨加工することで、平均表面粗さRaが1nm以下の平滑面にする。
【0037】
次に、図4(A)に示すように、第二母材12Aの一面側(固定基板11に対向する面とは反対側の面)側にレジスト62を塗布する。
そして、フォトリソグラフィ法を用いて、保持部122を形成するためのレジストパターンを形成し、ウェットエッチングにより加工して、図4(B)に示すような可動部121及び保持部122を形成する。これにより、可動基板12の基板形状が決定される。
【0038】
その後、図4(C)に示すように、可動基板12の固定基板11に対向する面側の可動部121に対応する位置に可動反射膜17を形成し、保持部122に対応する位置に可動電極142(可動引出電極142A、及び可動電極パッド142Bを含む)を形成する。この可動反射膜17は、固定反射膜16と同様に、リフトオフプロセスにより成膜する。可動電極142、可動引出電極142A、及び可動電極パッド142Bは、固定電極141と同様にフォトリソグラフィ法及びエッチングにより形成する。
さらに、図4(C)に示すように、第二接合膜123Aを接合部123に形成する。第二接合膜123Aは、ポリオルガノシロキサンを用いたプラズマCVD法により成膜されるプラズマ重合膜であり、厚み寸法は100nmとする。
以上により、可動反射膜17、可動電極142、および第二接合膜123Aを備えた可動基板12が製造される。
ここで、可動基板12に可動反射膜17や可動電極142が成膜形成されると、可動反射膜17や可動電極142に作用する内部応力により、可動基板12が撓む。可動基板12が撓む方向は、可動反射膜17や可動電極142を構成する材料に応じて異なるが、固定基板11に近づく方向、または固定基板から離れる方向となる。
【0039】
(2−3.接合工程)
次に、上述の固定基板製造工程及び可動基板製造工程で形成された各基板11,12を下部プレート21及び上部プレート22を備える基板接合装置2を用いて接合する。
図5は、波長可変干渉フィルター1の接合工程の概略を示す断面図である。
基板接合装置2において、下部プレート21と上部プレート22とは上下で向き合い、互いに近接及び離間可能に配置されている。
下部プレート21は、図示しないヒーター等の加熱手段および吸着手段を有し、固定基板11の固定反射膜16などが形成された面とは反対側の面を該吸着手段で吸着して保持する。また、下部プレート21は、加熱手段で固定基板11を加熱する。吸着手段としては、下部プレート21の吸着面に複数の孔が形成され、この孔から真空吸着により固定基板11を吸着するものなどが挙げられる。
上部プレート22は、図示しないヒーター等の加熱手段および吸着手段を有し、可動基板12の可動反射膜17などが形成された面とは反対側の面を該吸着手段で吸着する。また、上部プレート22は、加熱手段で可動基板12を加熱する。吸着手段は、下部プレート21と同様のものが挙げられる。
【0040】
接合工程では、固定基板11および可動基板12を加熱した状態で接合する。
ここで、固定基板11および可動基板12の加熱温度(第一温度)は、固定反射膜16および可動反射膜17の光学特性(透過率および反射率)が低下する耐熱温度以下に設定される。ここで、反射膜の耐熱温度とは、固定基板11と可動基板12とを接合する経過時間において、反射膜のとしての性能に変化がない温度、または性能の変化を許容できる温度である。
また、加熱温度は、少なくとも、可動基板12の撓みを低減できるように、設定される必要がある。これには、膜の内部応力や、環境温度の変化、アライメントずれ等により発生する可動基板12を撓ませようとする力(撓み力)を、例えばシミュレーションや、実測データに基づいて算出する。そして、接合工程の後、基板11,12を常温に戻した状態で、可動基板12が受ける引張力が算出した撓み力以上となるように、固定基板11の第一熱膨張係数や基板サイズ、可動基板12の第二熱膨張係数や基板サイズに基づいて、加熱温度を設定する。
このような加熱温度の例として、例えば、固定反射膜16および可動反射膜17がAg合金により形成されている場合では、加熱温度は、Ag合金の耐熱温度以下である250℃に設定される。
【0041】
そして、接合工程では以下の手順により実施される。
まず、各基板11,12に形成された第一接合膜113A及び第二接合膜123Aを構成するプラズマ重合膜に活性化エネルギーを付与するために、Oプラズマ処理またはUV処理を行う。Oプラズマ処理は、例えば、O流量20cc/分、圧力4Pa、RFパワー50Wの条件で30秒間実施する。また、UV処理は、UV光源としてエキシマUV(波長172nm)を用いて例えば3分間処理を行う。なお、プラズマ重合膜に活性化エネルギーを付与するための処理としてOプラズマ処理、UV処理に限らず、Nプラズマ処理、Arプラズマ処理でもよい。
次に、固定基板11を下部プレート21にて吸着して保持し、可動基板12を上部プレート22にて吸着して保持する。この後、下部プレート21および上部プレート22のヒーターをそれぞれ駆動させ、下部プレート21および上部プレート22を、上述のように設定した加熱温度まで加熱する。これにより、固定基板11および可動基板12は、基板表面に沿う方向に膨張された状態となる。
その後、図5に示すように、可動反射膜17及び固定反射膜16が形成された面が向かい合うように下部プレート21に吸着された固定基板11及び上部プレート22に吸着された加熱状態の可動基板12のアライメントを行う。そして、第一接合膜113A及び第二接合膜123Aを重ね合わせて荷重をかけることにより、基板11,12同士を接合する。接合後は、固定基板11および可動基板12を常温に戻す。
これにより、波長可変干渉フィルター1が製造される。
【0042】
〔3.第一実施形態の作用効果〕
第一実施形態に係る波長可変干渉フィルター1の製造方法では、固定基板製造工程において、第二熱膨張係数よりも小さい第一熱膨張係数を有する第一母材11Aを用いて、可動基板12よりも厚み寸法が大きくて剛性が大きい固定基板11を製造する。また、可動基板製造工程において、第一熱膨張係数よりも大きい第二熱膨張係数を有する第二母材12Aを用いて、可動部121および保持部122を有する可動基板12を製造する。そして、接合工程において、これらの固定基板11および可動基板12を予め設定された加熱温度まで加熱し、加熱された状態で接合する。
このような製造方法では、接合工程において、固定基板11および可動基板12を所定の加熱温度まで加熱して膨張させるが、可動基板12の第二熱膨張係数が第一熱膨張係数よりも大きいため、可動基板12の膨張率が固定基板11の膨張率より大きくなる。したがって、波長可変干渉フィルター1の温度が常温に戻った際には、可動基板12は、固定基板11よりも大きい収縮力(圧縮力)を受ける。しかしながら、可動基板12は、当該可動基板12よりも大きい剛性を有する固定基板11に接合されており、また、固定基板11の可動基板12の収縮力による変形もないため、結果として、収縮力の反力となる引張力が可動基板12に作用する。これにより、例えば可動反射膜17や可動電極142による内部応力、環境温度の変化、接合時のアライメントずれ等によって、可動基板12に撓み力が発生したとしても、引張力によりこの撓み力が相殺され、保持部122が撓まない。よって、可動部121および可動反射膜17の傾斜が防止され、ギャップGの寸法を均一に保持することができ、波長可変干渉フィルター1の分解能の低下を防止することができる。
【0043】
また、接合工程では、加熱温度を、固定反射膜16や可動反射膜17の光学特性(透過率・反射率)の低下がない耐熱温度未満に設定して、固定基板11および可動基板12を加熱する。このため、加熱時の反射膜16,17の劣化を防止でき、波長可変干渉フィルター1の性能低下を防止することができる。
さらに、膜の内部応力や、環境温度の変化、アライメントずれ等により発生する可動基板12を撓ませようとする力(撓み力)を、例えばシミュレーションや、実測データに基づいて算出し、可動基板12に作用する引張力が、算出した撓み力以上となるように、加熱温度を設定している。このため、波長可変干渉フィルター1の製造時や通常使用時において、可動基板12に発生し得る撓み力に対して、その撓み力を相殺できる引張力を可動基板12に作用させることができ、より確実に可動基板12の撓みを防止できる。
【0044】
そして、接合工程では、シロキサンを有するプラズマ重合膜を用いた活性化接合により、固定基板11および可動基板12が接合される。
このような活性化接合では、温度条件に関わらず、紫外線照射により迅速に固定基板11および可動基板12を接合することができる。また、プラズマ重合膜と、各基板11,12との密着性が良好であるため、可動基板12に収縮力(圧縮力)が作用した際に、固定基板11および可動基板12の接合が剥離せず、可動基板12に確実に引張力を作用させることができる。したがって、より確実に可動基板12の撓みを防止することができる。
【0045】
[第二実施形態]
次に、上記第一実施形態の波長可変干渉フィルターを備えた光モジュール、および光モジュールを備えた光分析装置の一例として、本発明に係る第二実施形態の測色装置を図面に基づいて説明する。
図6は、第二実施形態の測色装置の概略構成を示すブロック図である。
【0046】
この測色装置200は、本発明の光分析装置であり、図1に示すように、検査対象Aに光を射出する光源装置210と、本発明の光モジュールである測色センサー220と、測色装置200の全体動作を制御する制御装置230とを備えている。そして、この測色装置200は、光源装置210から射出される光を検査対象Aにて反射させ、反射された検査対象光を測色センサー220にて受光し、測色センサー220から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度、すなわち検査対象Aの色を分析して測定する装置である。
【0047】
光源装置210は、光源211、複数のレンズ212(図1には1つのみ記載)を備え、検査対象Aに対して白色光を射出する。複数のレンズ212には、コリメーターレンズが含まれていてもよく、この場合、光源装置210は、光源211から射出された白色光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから検査対象Aに向かって射出する。
なお、本実施形態では、光源装置210を備える測色装置200を例示するが、例えば検査対象Aが液晶パネルなどの発光部材である場合、光源装置210が設けられない構成としてもよい。
【0048】
測色センサー220は、本発明の光モジュールを構成する。この測色センサー220は、図1に示すように、上記第一実施形態の波長可変干渉フィルター1と、波長可変干渉フィルター1を透過した光を受光して検出する検出部221と、波長可変干渉フィルター1に駆動電圧を印可する電圧制御部222と、を備えている。また、測色センサー220は、波長可変干渉フィルター1に対向する位置に、検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、内部に導光する図示しない入射光学レンズを備えている。そして、この測色センサー220は、波長可変干渉フィルター1により、入射光学レンズから入射した検査対象光のうち、所定波長の光のみを分光し、分光した光を検出部221にて受光する。
なお、波長可変干渉フィルター1については、上記第一実施形態と同様の構成であるため、ここでの説明は省略する。
【0049】
検出部221は、複数の光電交換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、検出部221は、制御装置230に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御装置230に出力する。
【0050】
電圧制御部222は、制御装置230からの入力される制御信号に基づいて、波長可変干渉フィルター1の静電アクチュエーター14に印加する電圧を制御する。
【0051】
制御装置230は、測色装置200の全体動作を制御する。
この制御装置230としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置230は、図1に示すように、光源制御部231、測色センサー制御部232、および本発明の分析処理部を構成する測色処理部233などを備えて構成されている。
光源制御部231は、光源装置210に接続されている。そして、光源制御部231は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置210に所定の制御信号を出力し、光源装置210から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部232は、測色センサー220に接続されている。そして、測色センサー制御部232は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー220にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー220に出力する。これにより、測色センサー220の電圧制御部222は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長のみを透過させるよう、静電アクチュエーター14への印加電圧を設定する。
測色処理部233は、検出部31により検出された受光量から、測定対象Aの色度を分析する。
【0052】
〔第二実施形態の作用効果〕
測色センサー220は、上記第一実施形態の波長可変干渉フィルター1と、検出部31と、を備えている。
ここで、上述したように、波長可変干渉フィルター1は、可動部121および可動反射膜17の傾斜が防止され、ギャップGの寸法を均一に保持することができる構成となっており、透過波長を変更した場合でも高分解能を維持することができる。
したがって、光モジュール220においても、高分解能で透過された透過光を検出部221で検出することができ、正確な光量を取得することができる。そして、このような光モジュール220を備えた測色装置200では、測色処理部233において、より高精度は色度分析を実施することができ、測定対象Aの正確な色度を測定することができる。
【0053】
[変形例]
なお、本発明は前述の第一および第二実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0054】
例えば、上記第二実施形態において、光モジュールとして、測色センサー3を例示し、光分析装置として測色装置1を例示したが、これに限定されない。
本発明の光モジュールとしては、波長可変干渉フィルター1により取り出された光を受光素子により受光することで、ガス特有の吸収波長を検出するガス検出モジュールとして用いることもでき、光分析装置として、ガス検出モジュールにより検出された吸収波長からガスの種類を判別するガス検出装置として用いることもできる。
さらには、例えば、光モジュールは、例えば光ファイバーなどの光伝達媒体により伝送された光から所望の波長の光を抽出する光通信モジュールとしても用いることができる。また、光分析装置として、このような光通信モジュールから抽出された光からデータをデコード処理し、光により伝送されたデータを抽出する光通信装置として用いることもできる。
【0055】
上記第一実施形態では、固定基板11をUVグレード合成フェーズドシリカにより、可動基板12をBaK1またはN−BaK1により形成する例を示したが、これに限定されない。すなわち、固定基板11の第一熱膨張係数が、可動基板12の第二膨張係数よりも小さいものであれば、いかなる素材の組み合わせを用いてもよく、上述したように、測定波長域や加工性に応じて、適宜選択されればよい。例えば、紫外域を測定対象波長域とした波長可変干渉フィルターでは、固定基板11をUVグレード合成フェーズドシリカ、可動基板12を水晶(第二熱膨張係数:7.10×10−6(/℃))などとしてもよく、遠赤外域を測定対象波長域とした波長可変干渉フィルターでは、固定基板11をシリコン(第一熱膨張係数:4.5×10−6(/℃))、可動基板12をセレン化亜鉛(第二熱膨張係数:7.60×10−6(/℃))などとしてもよい。
【0056】
また、ギャップ変更部として、静電アクチュエーター14を例示したが、これに限定されない。
例えば、固定電極141の代わりに、第一誘電コイルを配置し、可動電極142の代わりに第二誘電コイルまたは永久磁石を配置した誘電アクチュエーターを用いる構成としてもよい。例えば第一誘電コイルおよび永久磁石が設けられる構成では、第一誘電コイルに流す電流を入力値として磁力を発生させ、永久磁石との間で発生する引力または斥力により可動部121を変位させる。
さらに、静電アクチュエーター14の代わりに圧電アクチュエーターを用いる構成としてもよい。この場合、例えば保持部122に下部電極層、圧電膜、および上部電極層を積層配置させ、下部電極層および上部電極層の間に印加する電圧を入力値として可変させることで、圧電膜を伸縮させて保持部122を撓ませる。
【0057】
その他、接合工程において、固定基板11および可動基板12を下部プレート21および上部プレート22で吸着する前に予め加熱しておいて、その後、吸着手段で吸着するとともに、加熱手段で固定基板11および可動基板12を保温してもよい。
【0058】
そして、上記実施形態では、ダイヤフラム状の保持部122を例示したが、例えば、梁構造の保持部を複数設け、これらの梁構造の保持部により可動部121を保持する構成としてもよい。この場合、梁構造の保持部の撓みバランスを均一にするため、中心軸Oに対して等角度間で梁状の保持部を設けることが好ましい。
【0059】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【符号の説明】
【0060】
1…波長可変干渉フィルター、11…固定基板(第一基板)、12…可動基板(第二基板)、14…静電アクチュエーター(ギャップ変更部)、16…固定反射膜(第一反射膜)、17…可動反射膜(第二反射膜)、121…可動部、122…保持部、G…ギャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基板と、前記第一基板に対向し、可動部および前記可動部を前記第一基板に対して進退可能に保持する保持部を有する第二基板と、前記第一基板に設けられた第一反射膜と、前記可動部に設けられ、ギャップを介して前記第一反射膜に対向する第二反射膜と、前記ギャップの寸法を変化させるギャップ変更部と、を具備し、前記第一基板の剛性が前記第二基板の剛性よりも大きい波長可変干渉フィルターの製造方法であって、
第一熱膨張係数を有する素材から前記第一基板を形成し、前記第一基板に前記第一反射膜を形成する第一基板製造工程と、
前記第一熱膨張係数よりも値が大きい第二熱膨張係数を有する素材から前記第二基板を形成し、前記第二基板に前記第二反射膜を形成する第二基板製造工程と、
前記第一基板製造工程で形成された前記第一基板、および前記第二基板製造工程で形成された前記第二基板を接合する接合工程と、
を備え、
前記接合工程は、前記第一基板および前記第二基板の双方を、所定の温度である第一温度まで加熱して、前記第一基板および前記第二基板を接合する
することを特徴とする波長可変干渉フィルターの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の波長可変干渉フィルターの製造方法において、
前記第一温度は、前記第一反射膜および前記第二反射膜の耐熱温度以下である
ことを特徴とする波長可変干渉フィルターの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の波長可変干渉フィルターの製造方法において、
前記接合工程は、シロキサンによるプラズマ重合膜を用いた活性化接合により、前記第一基板および前記第二基板を接合する
ことを特徴とする波長可変干渉フィルターの製造方法。
【請求項4】
第一基板と、
前記第一基板に接合され、可動部および前記可動部を前記第一基板に対して進退可能に保持する保持部を有する第二基板と、
前記第一基板に設けられた第一反射膜と、
前記可動部に設けられ、ギャップを介して前記第一反射膜に対向する第二反射膜と、
前記ギャップを変更させるギャップ変更部と、を具備し、
前記第一基板は、前記第二基板よりも大きい剛性を有し、
前記第二基板は、前記第一基板の第一熱膨張係数よりも値が大きい第二熱膨張係数を有し、引張力が作用した状態で前記第一基板に接合されている
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項5】
請求項4に記載の波長可変干渉フィルターと、
前記波長可変干渉フィルターにより取り出された光を検出する検出部と、
を具備したことを特徴とする光モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の光モジュールと、
前記光モジュールの前記検出部により検出された光に基づいて、前記光の光特性を分析する分析処理部と、
を具備したことを特徴とする光分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−123187(P2012−123187A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273790(P2010−273790)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】