説明

注入ガン

【課題】塗料を循環させつつ、この塗料とエアとを選択的に吐出できる注入ガンを提供すること。
【解決手段】注入ガン60は、塗料およびエアを選択的に吐出する。具体的には、この注入ガン60は、円筒状のガン本体61と、このガン本体61の内部に摺動可能に設けられた円筒状の塗料シャフト62と、この塗料シャフト62の内部に摺動可能に設けられたエアシャフト63と、を備え、ガン本体61には、塗料が流通する塗料供給路611および塗料排出路612が貫通して形成され、ガン本体61および塗料シャフト62には、それぞれ、エアが流通するエア供給路614およびエア供給路622が貫通して形成され、塗料シャフト62の外周面には、塗料シャフト62の先端がガン本体61の先端まで前進した状態で、塗料供給路611の貫通位置から塗料排出路612の貫通位置に至る凹部623が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料およびエアを吐出する注入ガン、及びこの注入ガンを使用したインモールドコート方法に関する。詳しくは、インモールドコート装置において、塗料およびエアを吐出する注入ガン、及びこの注入ガンを使用したインモールドコート方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の車体は、いわゆる静電塗装により塗装される。この静電塗装では、導電性の車体を陰極にし、かつ、塗料タンクを陽極にした状態で、車体を塗料に浸すことで、電気泳動により車体の表面に塗膜を形成する。ここで、自動車の車種によっては、例えばテールゲートなどの部品を樹脂製とする場合がある。この場合、この部品を静電塗装することになるが、樹脂は非導電性であるため、この部品の意匠面に塗料を電着させるための導電性の材料膜を形成する必要がある。
【0003】
このような材料膜は、従来より、インモールドコーティング(IMC)法により形成される。このIMC法とは、製品形状のキャビティを有する金型に樹脂を射出成形した後、この射出成形品の意匠面に材料膜を形成する方法であり、金型に樹脂を充填し製品形状に射出成形する射出工程と、この金型内に塗料を注入し射出成形品の意匠面に塗膜を形成する型内塗装工程とを有する。
【0004】
具体的には、この射出工程では、まず、可動型を固定型に型締めして、可動型と固定型との間に製品形状のキャビティを形成する。次に、このキャビティ内に熱可塑性樹脂を所定の射出圧力で射出し、樹脂を硬化させ製品形状に成形する。
次に、型内塗装工程では、まず、可動型をコアバックして、樹脂と固定型の型面との間にクリアランスを形成する。次に、固定型に設けられた注入ガンで、このクリアランスに塗料を注入した後、可動型を固定型に再び型締めし、この塗料を硬化させる。次に、可動型を固定型から離間し、成形品を取り出す。
以上のようにして、射出成形品の表面に塗膜を形成する。
【0005】
しかしながら、上述の型内塗装工程のように、可動型をコアバックして微小なクリアランスを形成するには、この可動型を高い精度で移動させるための設備が必要となる。
そこで、可動型をコアバックさせることなく射出成形品の表面に塗膜を形成できる塗装方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
まず、キャビティに樹脂を充填することにより、射出圧力、すなわち保圧を、通常の射出成形における保圧に比して低くした状態で射出成形する。ここで保圧とは、樹脂の温度が低下する際の樹脂の凝固収縮を担保する2次射出の圧力を示し、略ゼロが好ましい。
次に、キャビティ内に圧縮ガスを供給することにより、樹脂の意匠面と型面との間にクリアランスを形成する。次に、このクリアランスに塗料を供給することにより、樹脂の表面に塗膜を形成する。
【0007】
ここで、特許文献1に示された塗装方法では、以下のような射出成形装置が用いられる。
すなわち、射出成形装置は、固定型および可動型を有し、これら金型の一方には、キャビティに連通する注入路が形成され、この注入路から、圧縮ガスまたは塗料が選択的に吐出される。
【特許文献1】特開2002−219732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この特許文献1には、圧縮ガスと塗料とを選択的に吐出させるための注入ガンの機構については具体的に開示されていない。
また、塗料の硬化を防止するため、塗料を常に循環させておく必要がある。このため、塗料を循環させつつ、この塗料と圧縮ガスとを選択的に吐出できる注入ガンの開発が望まれていた。
【0009】
本発明は、塗料を循環させつつ、この塗料とエアとを選択的に吐出できる注入ガンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の注入ガンは、金型で構成されたキャビティ内へ塗料およびガス(例えば、後述のエア)を選択的に吐出する注入ガン(例えば、後述の注入ガン60)であって、前記キャビティ内に臨む円筒状のガン本体(例えば、後述のガン本体61)と、このガン本体の内部に摺動可能に設けられた円筒状の塗料シャフト(例えば、後述の塗料シャフト62)と、この塗料シャフトの内部に摺動可能に設けられたガスシャフト(例えば、後述のエアシャフト63)と、を備え、前記塗料シャフトの摺動動作及び前記ガスシャフトの摺動動作を制御する制御手段(例えば、後述の制御装置80)が接続され、前記ガン本体には、塗料が流通する塗料供給路(例えば、後述の塗料供給路611)および塗料排出路(例えば、後述の塗料排出路612)が貫通して形成され、前記ガン本体および前記塗料シャフトには、ガスが流通するガス供給路(例えば、後述のエア供給路614およびエア供給路622)が貫通して形成され、前記塗料シャフトの外周面には、当該塗料シャフトの先端が前記ガン本体の先端まで前進した状態で、前記塗料供給路の貫通位置から前記塗料排出路の貫通位置に至る凹部(例えば、後述の凹部623)が形成されていることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、塗料もガスも吐出しない場合には、塗料シャフトおよびガスシャフトの先端を、ガン本体の先端まで前進させておく。この状態では、塗料を塗料供給路に供給しても、この塗料は、塗料供給路、凹部、塗料排出路を通って循環するので、塗料が硬化するのを防止できる。
この状態から、ガスを吐出する場合には、塗料シャフトを後退させずに、ガスシャフトのみを後退させる。ガス供給路は塗料シャフトの内壁面に到達しているので、ガスシャフトをガス供給路の貫通位置よりも後退させると、ガスは、ガス供給路から塗料シャフトの内部を通って、ガン本体の先端から吐出される。
【0012】
一方、塗料を吐出する場合には、塗料シャフトおよびガスシャフトを後退させる。塗料供給路および塗料排出路はガン本体の内壁面に到達しているので、塗料シャフトを塗料供給路の貫通位置よりも後退させると、凹部が塗料供給路の貫通位置からずれて、塗料は、塗料供給路からガン本体の内部を通って、ガン本体の先端から吐出される。
以上のように、この発明によれば、塗料シャフトおよびガスシャフトを進退させることにより、塗料またはガスを選択的に吐出させることができる。
【0013】
本発明のインモールドコート方法は、注入ガンを用いて成形品の表面に皮膜を形成するインモールドコート方法であって、前記キャビティ内に溶融した熱可塑性の樹脂を供給する供給工程と、前記供給工程により供給された樹脂が完全に凝固する前に、前記注入ガンとして上記注入ガンを用いて、前記キャビティ内にガスを吐出し、前記金型の型面と樹脂の表面との間に空隙を形成するとともに、樹脂の裏面側を前記金型の型面に密着させるガス吐出工程と、前記注入ガンを用いて、前記ガス吐出工程で形成された空隙に塗料を吐出し、樹脂の表面に皮膜を形成するインモールド工程と、を含む。
【0014】
この発明によれば、ガス吐出工程において、溶融樹脂が完全に凝固する前に、注入ガンでキャビティ内にガスを吐出し、金型の型面と樹脂の表面との間に空隙を形成するとともに、樹脂の裏面側の前記金型の型面に密着させる。さらに、インモールド工程において、ガス吐出工程で形成された空隙に注入ガンで塗料を吐出し、樹脂の表面に皮膜を形成した。これにより、成形品の裏面にひけが発生するのを抑制しつつ、塗料で皮膜を形成することで成形品の表面にひけが露出するのを防止できる。また、ここで、塗料シャフトおよびガスシャフトを進退させることで、塗料またはガスを選択的に吐出できる注入ガンを使用することにより、成形品の製造にかかるサイクルタイムを低減できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の注入ガンによれば、塗料を循環させることができると共に、塗料シャフトおよびガスシャフトを進退させることで、この塗料またはガスを選択的に吐出させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るインモールドコート装置10の概略構成を示す図である。
インモールドコート装置10は、製品形状のキャビティを有する金型20と、この金型20のキャビティ内に溶融樹脂を供給する射出装置30と、金型20のキャビティ内にエアおよび塗料を注入する注入装置50とを備え、樹脂および塗料による2層成形を行う。
【0018】
図2は、金型20の構成を示す断面図である。
金型20は、固定型21と、この固定型21に対して進退可能な可動型22とを含んで構成される。これら固定型21および可動型22の間には、製品形状をかたどったキャビティCが形成される。ここで、可動型22のキャビティCを形成する型面223は、成形品の表側の面、すなわち意匠面に対応し、固定型21のキャビティCを形成する型面213は、成形品の裏側の面に対応する。
【0019】
固定型21には、射出装置30に連結されて該射出装置30から供給された溶融樹脂を、キャビティC内に導入する樹脂供給路215が、複数形成されている。各樹脂供給路215には、それぞれ、樹脂供給路215を開閉するバルブゲート(図示せず)が設けられている。射出装置30から供給されてキャビティC内に射出される溶融樹脂の量は、これらバルブゲートを開閉することにより調整可能となっている。また、樹脂供給路215に溶融樹脂を供給するスクリューフィーダ(図示せず)が、各樹脂供給路215の上流側に設けられている。射出装置30から供給されてキャビティC内に射出される溶融樹脂の単位時間当たりの充填量は、これらスクリューフィーダの速度を、増減することにより調整可能となっている。
【0020】
可動型22には、注入装置50からキャビティC内にエアおよび塗料を注入するための貫通孔が形成されている。この貫通孔には、注入装置50の後述の注入ガン60が設けられている。
また、これら固定型21および可動型22には、それぞれ、ヒータが設けられており、固定型21および可動型22の温度を独立して調整することが可能となっている。
【0021】
図1に戻って、射出装置30は、熱可塑性樹脂材料が投入されるホッパ31と、このホッパ31内の樹脂材料を混練しながら固定型21内へ押し出すスクリュー32と、上述のバルブゲートを開閉制御するバルブゲートコントローラ33と、を備える。
【0022】
スクリュー32の先端部は固定型21に連結されており、このスクリュー32により押し出された溶融樹脂は、固定型21の各樹脂供給路215に供給されるようになっている。上述のように、このスクリュー32により押し出された溶融樹脂において、これらスクリュー32の速度を増減することにより、単位時間当たりの充填量が調整可能となっている。
【0023】
バルブゲートコントローラ33は、スクリュー32の押し出し量、および、キャビティC内の圧力などに応じて、固定型21内の各バルブゲートを開閉制御し、キャビティC内に射出する溶融樹脂の量を調整する。また、このバルブゲートコントローラ33は、固定型21内の各バルブゲートを独立して開閉制御することが可能となっている。また、スクリュー32の押し出し量、すなわちスクリュー32の進退ストローク量をセンシングすることで、キャビティC内に射出する溶融樹脂の量を把握できる。
【0024】
注入装置50は、エアおよび塗料を金型20内のキャビティCに注入する注入ガン60と、この注入ガン60にエアおよび塗料を供給する供給装置70と、これら注入ガン60および供給装置70を制御する制御装置80とを含んで構成される。
【0025】
供給装置70は、注入ガン60に塗料を供給するポンプ72および計量シリンダ73と、注入ガン60にエアを供給するコンプレッサ74と、注入ガン60に冷却水を供給するチラー75と、を備える。
【0026】
ポンプ72は、塗料タンクに貯留された塗料を汲み上げて計量シリンダ73に圧送する。計量シリンダ73は、ポンプ72により圧送された塗料を所定量だけ計量し、この計量された塗料を、塗料供給管76を介して注入ガン60に供給する。
また、注入ガン60から排出された塗料は、塗料排出管77を介してポンプ72に帰還される。これにより、計量シリンダ73により計量された塗料は、計量シリンダ73、塗料供給管76、注入ガン60、塗料排出管77、およびポンプ72を循環する。
【0027】
コンプレッサ74は、エアを圧縮し、この圧縮したエアを、エア供給管79を介して注入ガン60に供給する。
チラー75は、冷却水を所定の冷却温度に保ちつつ、この冷却水を冷却水配管78を介して、注入ガン60の後述のガン本体61に形成された冷却水循環路に流通させ、注入ガン60を冷却する。
【0028】
次に、図3から図6を参照して、注入ガン60の構成について説明する。
図3は、注入ガン60の構成を示す断面図であり、図4は、注入ガン60の構成を示す正面図である。
【0029】
注入ガン60は、ガン本体61と、塗料シャフト62と、エアシャフト63とを備え、供給装置70から供給されたエアおよび塗料を選択的に吐出する。
【0030】
ガン本体61は、略円筒状であり、その内部には、塗料シャフト62およびエアシャフト63が収納される。このガン本体61には、塗料が流通する塗料供給路611および塗料排出路612が貫通して形成されている。これら塗料供給路611および塗料排出路612には、それぞれ、供給装置70の塗料供給管76および塗料排出管77が連結されている。
【0031】
ガン本体61には、エアが流通するエア供給路614が貫通して形成されている。このエア供給路614には、供給装置70のエア供給管79が連結されている。また、このガン本体61には、冷却水が流通する冷却水循環路(図示せず)が形成されている。この冷却水循環路は、供給装置70の冷却水配管78に連結されている。
【0032】
ガン本体61の先端部は、塗料供給管76から供給された塗料、および、エア供給管79から供給されたエアを吐出する吐出部616となっている。また、このガン本体61の内部には、塗料シャフト62の後述の第1ピストン621が摺動する第1シリンダ618が形成されている。
【0033】
塗料シャフト62は、円筒状であり、ガン本体61の内部に摺動可能に設けられている。この塗料シャフト62には、エアが流通するエア供給路622が貫通して形成されている。また、塗料シャフト62の外周面には、塗料供給路611の貫通位置から塗料排出路612の貫通位置に至る凹部623が形成されている。また、この塗料シャフト62の先端部には、エアシャフト63の外径よりも小さい内径を有するエア吐出孔626が形成されている。
【0034】
この塗料シャフト62の基端側には、略円筒状の基部624を介して、第1ピストン621が設けられている。また、この基部624の内部には、エアシャフト63の後述の第2ピストン631が摺動する第2シリンダ625が形成されている。
【0035】
ここで、第1ピストン621をガン本体61の先端側に前進させた状態では、塗料シャフト62の先端面は、ガン本体61の吐出部616の先端面と略面一になる。この状態では、ガン本体61の塗料供給路611と塗料排出路612は、凹部623を介して連通し、塗料の循環流路を形成する。
【0036】
エアシャフト63は、略棒状であり、塗料シャフト62の内部に摺動可能に設けられている。エアシャフト63の基端側には、第2ピストン631が設けられている。ここで、上述のように、塗料シャフト62のエア吐出孔626の内径は、エアシャフト63の外径よりも小さくなっている。これにより、エアシャフト63をガン本体61の先端側に前進させた状態では、エア吐出孔626はエアシャフト63の先端部により塞がれた状態となる。
【0037】
以上のように構成された注入ガン60の動作について説明する。
図5は、注入ガン60のエア吐出時における構成を示す断面図であり、図6は、注入ガン60の塗料吐出時における構成を示す断面図である。
【0038】
注入ガン60でエアを吐出させる場合には、図5に示すように、まず、第1ピストン621をガン本体61の先端側に前進させて、塗料を塗料供給路611、凹部623、および塗料排出路612を循環させる。次に、第2ピストン631をガン本体61の基端側へ退避させる。すると、ガン本体61のエア供給路614、および、塗料シャフト62のエア供給路622を介して、塗料シャフト62の内部に充填されたエアが、塗料シャフト62のエア吐出孔626から吐出される。
【0039】
注入ガン60で塗料を吐出させる場合には、図6に示すように、まず、第2ピストン631をガン本体61の先端側へ前進させ、エア吐出孔626を塞ぐ。次に、第1ピストン621を、ガン本体61の基端側へ退避させ、塗料シャフト62の先端面を、ガン本体61の塗料供給路611の貫通位置よりも、塗料排出路612側へ埋没させる。すると、塗料供給路611が露出し、塗料は、ガン本体61の内部を通って、吐出部616から吐出される。
【0040】
以上のようして、第1ピストン621および第2ピストン631を進退させて、塗料シャフト62およびエアシャフト63を進退させることにより、塗料またはエアを選択的に吐出させることができる。
【0041】
また、これら塗料シャフト62の第1ピストン621、および、エアシャフト63の第2ピストン631の進退は、制御装置80(図1参照)により制御可能となっている。具体的には、これら第1ピストン621および第2ピストン631には、制御装置80に駆動可能に接続された図示しないアクチュエータが連結されており、これにより、塗料シャフト62およびエアシャフト63を進退制御可能となっている。
【0042】
次に、図7から図10を参照して、以上のように構成されたインモールドコート装置10により、樹脂および塗料を2層成形する工程について説明する。
【0043】
まず、図7に示すように、可動型22を固定型21に当接させて、これら可動型22および固定型21を図示しない型締め装置で型締めし、キャビティCを形成する。
次に、射出装置30を制御して溶融樹脂をキャビティC内に射出充填する。この溶融樹脂を射出する工程では、キャビティCの容積よりも少ない量の樹脂を射出する。つまり、保圧を略ゼロとする。これにより、後に塗膜を形成するために必要な空隙の確保を容易にする。
また、この溶融樹脂を射出する工程では、可動型22の温度を、固定型21の温度よりも低い状態にする。本実施形態では、例えば、可動型22の温度を100℃とし、固定型21の温度を120℃とする。このようにして可動型22の温度を固定型21の温度よりも低くすることにより、溶融樹脂の可動型22側、すなわち意匠面側の凝固を促進させる。
【0044】
次に、図8に示すように、注入ガン60からエアを吐出させて、溶融樹脂の意匠面側と、可動型22の型面223との間に空隙25を形成すると共に、キャビティC内の溶融樹脂を固定型21の型面213に密着させる。ここで、溶融樹脂を固定型21の型面213に密着させることにより、製品の裏面にひけが生じるのを防止できる。
次に、可動型22および固定型21の温度を所定の冷却温度まで低下させ、溶融樹脂を冷却する。ここで、製品の裏面に密着した溶融樹脂が冷却されて固化する際、その意匠面側には空間が形成されるので、塗料を充填して完成した成形品を軽量化できる。
【0045】
次に、図9に示すように、可動型22と固定型21とを型締めしたまま、注入ガン60からキャビティC内に塗料を吐出し、上記の工程で形成された空隙25に塗料を充填する。これにより、製品の意匠面にはひけのない塗膜が形成される。
次に、図10に示すように、所定の冷却工程を行い、塗料を硬化させた後、可動型22を固定型21から離間し、樹脂と塗料で2層成形された製品を脱型する。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
【0047】
上記実施形態では、固定型21に樹脂供給路215を設けた例を示したが、これに限らず、可動型に樹脂供給路を設けてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、製品の意匠面側となる可動型22の温度を、製品の裏面側となる固定型21の温度より低くすることで型内の樹脂に温度差を設けたが、これに限らない。例えば、2つの型を略等しい温度にしつつ、離型効果が高い比較的低温のエアを一方の型側から吐出することで、型内の樹脂に温度差を設けてもよい。また、例えば、比較的高温のエアを吐出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係るインモールドコート装置10の概略構成を示す図である。
【図2】前記実施形態に係る金型の構成を示す断面図である。
【図3】前記実施形態に係る注入ガンの構成を示す断面図である。
【図4】前記実施形態に係る注入ガンの構成を示す正面図である
【図5】前記実施形態に係る注入ガンのエア吐出時における構成を示す断面図である。
【図6】前記実施形態に係る注入ガンの塗料吐出時における構成を示す断面図である。
【図7】前記実施形態に係る金型の断面を示す図である。
【図8】前記実施形態に係る金型の断面を示す図である。
【図9】前記実施形態に係る金型の断面を示す図である。
【図10】前記実施形態に係る金型の断面を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
10…インモールドコート装置
20…金型
21…固定型
22…可動型
30…射出装置
50…注入装置
60…注入ガン
61…ガン本体
611…塗料供給路
612…塗料排出路
614…エア供給路
616…吐出部
618…第1シリンダ
62…塗料シャフト
621…第1ピストン
622…エア供給路
623…凹部
624…基部
625…第2シリンダ
626…エア吐出孔
63…エアシャフト
631…第2ピストン
70…供給装置
80…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型で構成されたキャビティ内へ塗料およびガスを選択的に吐出する注入ガンであって、
前記キャビティ内に臨む円筒状のガン本体と、
このガン本体の内部に摺動可能に設けられた円筒状の塗料シャフトと、
この塗料シャフトの内部に摺動可能に設けられたガスシャフトと、を備え、
前記塗料シャフトの摺動動作及び前記ガスシャフトの摺動動作を制御する制御手段が接続され、
前記ガン本体には、塗料が流通する塗料供給路および塗料排出路が貫通して形成され、
前記ガン本体および前記塗料シャフトには、ガスが流通するガス供給路が貫通して形成され、
前記塗料シャフトの外周面には、当該塗料シャフトの先端が前記ガン本体の先端まで前進した状態で、前記塗料供給路の貫通位置から前記塗料排出路の貫通位置に至る凹部が形成されていることを特徴とする注入ガン。
【請求項2】
注入ガンを用いて成形品の表面に皮膜を形成するインモールドコート方法であって、
前記キャビティ内に溶融した熱可塑性の樹脂を供給する供給工程と、
前記供給工程により供給された樹脂が完全に凝固する前に、前記注入ガンとして請求項1に記載の注入ガンを用いて、前記キャビティ内にガスを吐出し、前記金型の型面と樹脂の表面との間に空隙を形成するとともに、樹脂の裏面側を前記金型の型面に密着させるガス吐出工程と、
前記注入ガンを用いて、前記ガス吐出工程で形成された空隙に塗料を吐出し、樹脂の表面に皮膜を形成するインモールド工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の注入ガンを使用したインモールドコート方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−6227(P2009−6227A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168599(P2007−168599)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】