説明

注型用エポキシ樹脂組成物、イグニッションコイルおよびその製造方法

【課題】高い信頼性を有しながら、安価かつ生産性良く製造できるイグニッションコイル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)シリカ粉末、(C)硬化剤、(D)硬化促進剤および(E)ゴム粒子を含有する注型用エポキシ樹脂組成物であって、前記(B)成分の含有量が、組成物全体の50〜75質量%であり、前記(B)成分中に、粒径1μm未満の粒子含有量が0.1%未満で、体積平均粒径が10〜30μmの球状シリカ粉末が30〜85質量%含まれ、かつ、繊維質の含有量が、組成物全体の1質量%以下である注型用エポキシ樹脂組成物、そのような注型用エポキシ樹脂組成物によって注型されてなり、かつ、最外部にケースを具備しないイグニッションコイル、さらには、そのようなイグニッションコイルの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注型用エポキシ樹脂組成物、イグニッションコイルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用イグニッションコイルにおいては、コイル構成部品の保護、絶縁のため、鉄心と一次コイルおよび二次コイルで構成したコイル本体をケースに収納するとともに、このケース内にエポキシ樹脂組成物を注型し硬化させている(例えば、特許文献1,2参照。)。エポキシ樹脂組成物の注型にあたっては、ボイドなどが生じないように真空注型が一般的である。
【0003】
近年、自動車用イグニッションコイルは、多機能化が進むとともに、信頼性に対する要求がますます高まってきている。他方、コストの低減および生産性の向上に対する要求も高まってきている。しかしながらこれらの要求に応え得る技術は未だ得られていない。
【特許文献1】特開2002−15928号公報
【特許文献2】特開平7−126493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、高い信頼性を有しながら、従来に比べて安価にかつ生産性良く製造することができるイグニッションコイルおよびその製造方法、さらには、そのようなイグニッションコイルの製造に使用される注型用エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の請求項1に記載の発明の注型用エポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)シリカ粉末、(C)硬化剤、(D)硬化促進剤および(E)ゴム粒子を含有する注型用エポキシ樹脂組成物であって、前記(B)成分の含有量が、組成物全体の50〜75質量%であり、前記(B)成分中に、粒径1μm未満の粒子含有量が0.1%未満で、体積平均粒径が10〜30μmの球状シリカ粉末が30〜85質量%含まれ、かつ、繊維質の含有量が、組成物全体の1質量%以下であることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の注型用エポキシ樹脂組成物において、(A)エポキシ樹脂および(B)シリカ粉末を含有する主剤成分と、(C)硬化剤、(D)硬化促進剤および(E)ゴム粒子を含有する硬化剤成分とからなることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の注型用エポキシ樹脂組成物において、前記(A)成分中に、脂環式エポキシ樹脂が10〜50質量%含まれることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の注型用エポキシ樹脂組成物において、60℃における粘度が1〜12Pa・sであり、示差走査熱量測定法により測定される初期発熱温度および最大発熱量がそれぞれ70〜100℃および40〜100J/gであり、硬化後の曲げ弾性率が7000〜15000N/mmであることを特徴とする。
【0009】
また、本願の請求項5に記載の発明のイグニッションコイルは、請求項1乃至4のいずれか1項記載の注型用エポキシ樹脂組成物によって注型されてなり、かつ、最外部にケースを具備しないことを特徴とする。
【0010】
さらに、本願の請求項6に記載の発明のイグニッションコイルの製造方法は、磁気コア、1次コイルおよび2次コイルを備えたコイル本体を注型用金型内に配置した後、前記金型内に請求項1乃至4のいずれか1項記載の注型用エポキシ樹脂組成物を真空下で注型し硬化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い信頼性を有しながら、従来に比べて安価にかつ生産性良く製造することができるイグニッションコイルおよびその製造方法、さらには、そのようなイグニッションコイルの製造に使用される注型用エポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の注型用エポキシ樹脂組成物に用いられる各成分について説明する。
【0013】
本発明に用いられる(A)成分のエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば、分子構造、分子量などに制限されることなく一般に使用されているものを広く用いることができる。具体的には、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのフェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換ビスフェノールなどのジグリシジルエーテル、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸などのポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸などの過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;シクロヘキサン誘導体などのエポキシ化によって得られる脂環式エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0014】
本発明においては、(A)成分中に脂環式エポキシ樹脂を10〜50質量%含有させることが好ましい。すなわち、脂環式エポキシ樹脂を使用することにより、組成物の粘度を低下させ、また、ガラス転移点を高くすることができる。さらに、脂環式エポキシ樹脂は沸点が比較的高いため、高温で真空成型する際に揮発しにくく、真空成型性を高めることができる。ただし、(A)成分中の割合が10質量%に満たないと、その効果が十分に得られず、また、50質量%を超えると、脂環式エポキシ樹脂の反応性が硬化触媒に悪影響を及ぼすおそれがある。また、硬化物の靭性が低下し、脆くなるおそれもある。したがって、脂環式エポキシ樹脂は、(A)成分中に10〜50質量%含ませることが好ましい。
【0015】
なお、(A)成分として、前述したもの以外にも、例えば、液状のモノエポキシ樹脂や、難燃性を付与するため、臭素系のエポキシ樹脂などを使用することができる。液状のモノエポキシ樹脂は併用成分として使用される。
【0016】
本発明に用いられる(B)成分のシリカ粉末としては、溶融シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカなどが挙げられる。
【0017】
本発明においては、この(B)成分中に、粒径1μm未満の粒子含有量が0.1%未満で、体積平均粒径が10〜30μmの球状シリカ粉末を30〜85質量%含ませることが必要である。この条件を満足しない場合、つまり、粒径1μm未満の粒子含有量が0.1%未満で、体積平均粒径が10〜30μmの球状シリカ粉末の(B)成分における含有量が30質量%に満たないかもしくは85質量%を超えた場合には、硬化物の弾性率が低下し、割れやすくなる。また、(B)成分を、組成物全体の50〜75質量%配合させることが必要であり、配合量が組成物全体の50質量%に満たないと、硬化物の機械的強度が不足し、逆に75質量%を超えると、組成物の粘度が増大し、含浸不足となって、本発明の効果が得られなくなる。
【0018】
本発明に用いられる(C)成分の硬化剤としては、前記した(A)成分のエポキシ樹脂と反応し、硬化させることができるものであれば、特に制限されることなく使用することができる。具体的には、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸やこれらの誘導体などの酸無水物;フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂などのアラルキル型フェノ−ル樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂、これらの変性樹脂、例えばエポキシ化もしくはブチル化したノボラック型フェノール樹脂など、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、パラキシレン変性フェノール樹脂、トリフェノールアルカン型フェノール樹脂、多官能型フェノール樹脂などのフェノール樹脂硬化剤などが挙げられる。その他、ジシアンアミド、イミダゾール、アルミニウムキレート、BFのようなルイス酸のアミン錯体なども使用可能である。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。本発明においては、なかでも、酸無水物が好ましく、特にメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸の使用が好ましい。
【0019】
この(C)成分の硬化剤の配合量は、(A)成分のエポキシ樹脂を硬化させることができる量であればよいが、好ましくは(A)成分のエポキシ樹脂100質量部に対して80〜120質量部の範囲が好ましい。配合量が80質量部未満では、耐熱性が低下し、逆に120質量部を超えると、コイルに対する接着性が低下する。
【0020】
本発明に用いられる(D)成分の硬化促進剤としては、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進する作用を有するものであれば、特に制限されることなく使用することができる。具体的には、2‐エチル‐4‐メチルイミダゾール、2‐ヘプタデシルイミダゾール、2‐メチルイミダゾール、2‐エチルイミダゾール、2‐フェニルイミダゾール、2‐フェニル‐4‐メチルイミダゾール、4‐メチルイミダゾール、4‐エチルイミダゾール、2‐フェニル‐4‐ヒドロキシメチルイミダゾール、1‐シアノエチル‐2‐メチルイミダゾール、1‐シアノエチル‐2‐エチル‐4‐メチルイミダゾール、2‐フェニル‐4‐メチル‐5‐ヒドロキシメチルイミダゾール、2‐フェニル‐4、5‐ジヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、α‐メチルベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、2‐(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの3級アミン類、1,8‐ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン‐7(DBU)、1,5‐ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン‐5などのジアザビシクロアルケンおよびその誘導体、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィンなどホスフィン類などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。本発明においては、イミダゾール化合物、DBUなどの3級アミン類が好ましい。この(D)成分の硬化促進剤は、(C)成分の硬化剤の種類により適宜配合される。
【0021】
本発明に用いられる(E)成分のゴム粒子は、組成物に主として耐クラック性を付与するために配合される成分である。この(E)成分としては、安定性の観点から、コアシェル構造を有するものが好ましく使用される。市販品を例示すると、パラロイドEXL2314(呉羽化学工業(株)製 商品名)、スタフィロイドAC−3355、スラフィロイドAC−3816(以上、ガンツ化成(株)製 商品名)などが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0022】
この(E)成分のゴム粒子は、(A)成分のエポキシ樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部配合することが好ましく、0.3〜3質量部配合することがより好ましい。配合量が0.1質量部に満たないと、耐クラック性を十分に付与することができず、また、5質量部を超えると、コイル含浸性が低下する。
【0023】
本発明の注型用エポキシ樹脂組成物には、(B)シリカ粉末以外の無機充填剤の1種以上を、本発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて配合することができる。このような無機充填剤としては、例えばアルミナ、ジルコン、タルク、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタンホワイト、クレー、ベンガラ、炭化珪素、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニアなどの粉末、これらを球形化したビーズ、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素などが挙げられる。
【0024】
さらに、本発明の封止用樹脂組成物には、以上の各成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて、この種の組成物に一般に配合される、脂環式エポキシなどの反応性希釈剤、カップリング剤、沈降防止剤、カーボンブラックなどの着色剤、消泡剤、三酸化アンチモンなどを配合することができる。
【0025】
但し、本発明の目的のためには、繊維質成分は、組成物全体の1質量%以下と、実質的に含有させないようにすることが重要である。繊維質成分の含有量が、組成物全体の1質量%を超えると、コイルへの含浸性が低下し、本発明による効果が得られなくなる。
【0026】
本発明の注型用エポキシ樹脂組成物は、60℃における粘度が1〜12Pa・sであることが好ましく、3〜6Pa・sであることがより好ましい。60℃における粘度が1Pa・sに満たないと、無機充填剤の沈降が生じやすく、逆に12Pa・sを超えると、コイルへの含浸性が低下する。また、示差走査熱量測定(DSC)法により測定される初期発熱温度および最大発熱量が、それぞれ70〜100℃および40〜100J/gであることが好ましい。示差走査熱量測定(DSC)法により測定される初期発熱温度および最大発熱量のいずれか一方でも、前記範囲に満たないと、所定の硬化条件において十分な硬化物特性が得られないおそれがある。さらに、硬化後の曲げ弾性率が7000〜15000N/mmであることが好ましく、9000〜13000N/mmであることがより好ましい。硬化後の曲げ弾性率が7000N/mmに満たないと、金型離型時に割れが発生するおそれがあり、逆に15000N/mmを超えると、靭性に劣り、成形性が不良となる。
【0027】
本発明のエポキシ樹脂組成物を注型材料として調製するにあたっては、通常の方法を用いることができる。すなわち、例えば、(A)エポキシ樹脂に、(B)シリカ粉末、および、前述した必要に応じて配合される各種成分を、ミキサーなどによって十分に混合することにより主剤成分を調製する一方、(C)硬化剤、(D)硬化促進剤および(E)ゴム粒子を十分に混合することにより硬化剤成分を調製すればよい。主剤成分と硬化剤成分は、使用に際し、ミキサーなどにより均一に混合される。
【0028】
本発明のイグニッションコイルは、上記の注型用エポキシ樹脂組成物によって注型されたものである。上記注型用エポキシ樹脂組成物を用いることにより、従来、必要とした外装材のケースを使用せず、金型を用いて製造することができる。
【0029】
すなわち、磁気コア、1次コイル、2次コイルなどの所要のコイル構成部品を組立て、注型用金型内に配置した後、この金型内に上記注型用エポキシ樹脂組成物を真空下で注型し、加熱硬化させることにより製造することができる。なお、注型用金型には、ゲートからランナへの接続箇所に注入樹脂を一時滞留させるための樹脂液溜を有し、かつ、末端にベントを有する構造のものを使用することが好ましい。また、注型条件としては、射出時の樹脂温度120〜150℃、樹脂粘度0.1〜2Pa・s、部品1個当たりの樹脂充填速度5〜20cm/secが好ましい。
【実施例】
【0030】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において「部」は「質量部」を示すものとする。
【0031】
実施例1
ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としてEP4100E(旭電化化学工業(株)製 商品名)70部、脂環式エポキシ樹脂としてERL4221(ダウ・ケミカル(株)製 商品名)30部、破砕シリカ粉末としてヒューズレックスRD−8(平均粒径15μm;(株)龍森製 商品名)240部、球状シリカ粉末としてMSR−15(平均粒径15μm;(株)龍森製 商品名;球状シリカ粉末(I)と表記)350部、消泡剤としてTSA720(GE東芝シリコーン(株)製 商品名)0.1部およびシランカップリング剤としてA−187(日本ユニカー社製 商品名)0.5部を、1時間真空混練して主剤成分とした。また、酸無水物としてHN2000(日立化成(株)製 商品名)100部、硬化促進剤としてカオーライザーNo.20(花王(株)製 商品名;硬化促進剤(I)と表記)1部、同アデカハードナーEHC−30(旭電化工業(株)製 商品名;硬化促進剤(II)と表記)2部およびゴム粒子としてパラロイドEXL2314(呉羽化学工業(株)製 商品名)5を混合して硬化剤成分とした。これらの主剤成分および硬化剤成分を均一に混合して注型用エポキシ樹脂組成物を得た。
【0032】
実施例2
破砕シリカ粉末のヒューズレックスRD−8の配合量を90部、球状シリカ粉末のMSR−15の配合量を500部に変えた以外は実施例1と同様にして注型用エポキシ樹脂組成物を得た。
【0033】
実施例3
破砕シリカ粉末のヒューズレックスRD−8の配合量を420部、球状シリカ粉末のMSR−15の配合量を150部に変えた以外は実施例1と同様にして注型用エポキシ樹脂組成物を得た。
【0034】
実施例4
ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂のEP4100Eの配合量を100部とし、かつ、脂環式エポキシ樹脂のERL4221を未配合とした以外は実施例1と同様にして注型用エポキシ樹脂組成物を得た。
【0035】
実施例5
ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂のEP4100Eの配合量を40部、脂環式エポキシ樹脂のERL4221の配合量を60部に変えた以外は実施例1と同様にして注型用エポキシ樹脂組成物を得た。
【0036】
実施例6
球状シリカ粉末のMSR−15を未配合とした以外は実施例1と同様にして注型用エポキシ樹脂組成物を得た。
【0037】
比較例1
破砕シリカ粉末のヒューズレックスRD−8の配合量を590部とし、かつ、球状シリカ粉末のMSR−15を未配合とした以外は実施例1と同様にして注型用エポキシ樹脂組成物を得た。
【0038】
比較例2
破砕シリカ粉末のヒューズレックスRD−8の配合量を90部とし、かつ、球状シリカ粉末のMSR−15に代えて、球状シリカ粉末のFB−5D(平均粒径6μm;(株)電気化学工業製 商品名;球状シリカ粉末(II)と表記)を500部配合した以外は実施例1と同様にして注型用エポキシ樹脂組成物を得た。
【0039】
比較例3
破砕シリカ粉末のヒューズレックスRD−8の配合量を400部とし、かつ、球状シリカ粉末のMSR−15を未配合とした以外は実施例1と同様にして注型用エポキシ樹脂組成物を得た。
【0040】
上記各実施例および各比較例で得られた注型用エポキシ樹脂組成物について、下記に示す方法で各種特性を評価した。
【0041】
[粘度]
注型用エポキシ樹脂組成物の粘度をB型粘度計(10rpm)を用いて、60℃で測定した。
[初期発熱温度、最大発熱量]
DSC(示差走査熱量計)を用い、10℃/minの速度で昇温して測定した。
[ガラスビーズ含浸性]
図1に示すように、試験管11内にガラスビーズ(粒径400μm)12を10g投入し、試験管11上部に加圧用シリンダー13を設け、注型用エポキシ樹脂組成物14を100g投入し、片側を真空ポンプ(図示なし)に接続して約1〜2Torrで減圧した後、試験管11をリボンヒータ15で150℃に加熱しながら、注型用エポキシ樹脂組成物14を7MPaで加圧し、そのときのガラスビーズ12の注型用エポキシ樹脂組成物14の取り込み量を測定した。なお、加圧用シリンダー13はリボンヒータ15で60℃に加熱した。
[曲げ弾性率、曲げ強さ]
注型用エポキシ樹脂組成物を150℃で1.5時間加熱し硬化させて試験片を作製した後、この試験片についてJIS C 2105に準じて、25℃にて測定した。
[ガラス転移点]
注型用エポキシ樹脂組成物を150℃で1.5時間加熱し硬化させて試験片を作製した後、この試験片を10℃/minで250℃まで昇温し、TMA(熱機械分析装置)を用いて測定した。
[コイル含浸性、表面外観、表面強度]
注型用エポキシ樹脂組成物を金型内に真空下で注型してコイル(ボビン径18mm、巻線径45μm、巻数15000)に含浸させ、150℃で10分間加熱し硬化させた後、金型から取り出し、さらに150℃で1時間硬化させて、コイルの切断面および表面のボイドの有無を目視にて観察した。また、1mの高さから落下させ、表面の割れ(クラック)の有無を目視にて観察した。なお、比較例3は、PP(ポリプロピレン)ケース(ケース外径23mm)を使用してコイルを作製した。
【0042】
これらの結果を注型用エポキシ樹脂組成物の組成とともに表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1からも明らかなように、本発明に係る注型用エポキシ樹脂組成物は、含浸性が良好で、信頼性の高い硬化物が得られることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】ガラスビーズ含浸性の測定方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0046】
11…試験管、12…ガラスビーズ、14…注型用エポキシ樹脂組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)シリカ粉末、(C)硬化剤、(D)硬化促進剤および(E)ゴム粒子を含有する注型用エポキシ樹脂組成物であって、
前記(B)成分の含有量が、組成物全体の50〜75質量%であり、前記(B)成分中に、粒径1μm未満の粒子含有量が0.1%未満で、体積平均粒径が10〜30μmの球状シリカ粉末が30〜85質量%含まれ、かつ、繊維質の含有量が、組成物全体の1質量%以下であることを特徴とする注型用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
(A)エポキシ樹脂および(B)シリカ粉末を含有する主剤成分と、(C)硬化剤、(D)硬化促進剤および(E)ゴム粒子を含有する硬化剤成分とからなることを特徴とする請求項1記載の注型用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分中に、脂環式エポキシ樹脂が10〜50質量%含まれることを特徴とする請求項1または2記載の注型用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
60℃における粘度が1〜12Pa・sであり、示差走査熱量測定法により測定される初期発熱温度および最大発熱量がそれぞれ70〜100℃および40〜100J/gであり、硬化後の曲げ弾性率が7000〜15000N/mmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の注型用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の注型用エポキシ樹脂組成物によって注型されてなり、かつ、最外部にケースを具備しないことを特徴とするイグニッションコイル。
【請求項6】
磁気コア、1次コイルおよび2次コイルを備えたコイル本体を注型用金型内に配置した後、前記金型内に請求項1乃至4のいずれか1項記載の注型用エポキシ樹脂組成物を真空下で注型し硬化させることを特徴とするイグニッションコイルの製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−91471(P2009−91471A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263859(P2007−263859)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】