説明

洗掘防護ブロック流失検知装置及び洗掘防護ブロック流失検知システム

【課題】橋脚の周囲の洗掘防護ブロックの流失を精度良く簡単に検出できるようにする。
【解決手段】橋脚12の底部の周囲の洗掘防護ブロック13の一部に、検知装置15を埋設する。検知装置15は、洗掘防護ブロック13の傾斜の大きさ、傾斜の方向、振動を感知し、これらの検知結果から、異常と判定された場合に、低周波電磁波を送信する。検知装置15からの低周波電磁波を受信するための受信装置16を設け、受信装置16を無線ネットワーク網17を介して、監視サーバ18と接続する。検知装置15の3軸加速度センサの加速度データを検出することで、傾斜の大きさ、傾斜の方向、振動を判定し、これらを総合して、異常を判定することで、異常の判定精度が向上し、また、洗掘防護ブロック13の流失を事前に察知できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋脚の周囲に複数設置される洗掘防護ブロックの流失を検出する洗掘防護ブロック流失検知装置及び洗掘防護ブロック流失検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道橋梁の橋脚周辺の洗掘防護工は、橋脚周辺に主に重量物を敷設することで、河床の洗掘を防止するものである。橋脚周辺に敷設する重量物は、コンクリート製のブロックで、洗掘防護ブロックと呼ばれる。洗掘防護ブロックは、橋脚周辺の河床変動や洗掘を制御する一方で、その敷設範囲の端部では、河床の低下や洗掘の影響から、敷設当初の状態から変状することがある。このような変状は、防護機能の低下につながり、増水時における橋脚基礎の安定性を低下させるおそれがある。また、増水時には変状が急激に進行し、洗掘防護ブロックが流失するおそれがある。したがって、洗掘防護ブロックの変状を検知することは、橋梁基礎の健全性をモニタリングする上で重要である。
【0003】
監視員が定期的に洗掘防護ブロックの状態をモニタリングする場合、流水面下の洗掘防護ブロックの状態を目視で確認することは、川面の光の反射あるいは雨の水の濁利などによって極めて困難である。一方、少しでも早く洗掘防護ブロックの変状を検知することが橋梁の安全には重要である。
そのため、洗掘防護ブロックの変状を検知するため、洗掘防護ブロックに対して検知装置を装着することが考えられる。
しかしながら、洗掘防護ブロックのように河床に設置される構造物の災害監視設備では、有線型のものでは、流下物や洗掘防護ブロックの変状や微小な移動によりケーブルが断線又は損傷する可能性がある。そこで、河床に設置される構造物の災害監視設備では、無線型のものを用いることが求められている。ところが、一般的な無線型の災害監視設備では、伝送路中の河川の水や土砂などで、電波が減衰し通信不能となる可能性があり、機能を満足できなくなるおそれがある。
【0004】
そこで、信号のやり取りに低周波の電磁波を用いて、河川や土砂等の自然環境の制約を回避した災害監視設備が提案されている。例えば、特許文献1には、傾斜状態を検出する傾斜センサの出力をトリガとして低周波磁界を送出する監視センサと監視センサが送出した低周波磁界を受信して斜面の変動や崩壊を感知して警報を発生する受信処理装置で構成されるシステムにおいて、監視センサにタイマを内蔵して定期的に低周波磁界を送出する機能と、送出する低周波磁界を各監視センサ固有のID情報で変調する機能を持たせ、受信処理装置において低周波磁界を復調してID情報を識別し、各監視センサからの定期的な低周波磁界の送出の有無を判定することで、監視センサの発振回路と発振コイルの健全性を把握する土砂災害監視装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−262851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示される土砂災害監視装置では、構造物の変状を傾斜で検出する方式を主に取っているが、洗掘防護ブロックの場合では河床変動による健全な姿勢変化と流失の危険性のある姿勢変化があり、一意に洗掘防護ブロックの傾斜角度で流失を判断できない。
【0007】
また、上述の土砂災害監視装置では、洗掘防護ブロックに傾斜を伴う変状が生じたことを検出することができるが、事前にこのような変状の兆候を検出することはできない。
【0008】
また、特に鉄道における橋梁をモニタリングする場合、橋梁の安定性が損なわれていると判定した場合に、鉄道の運行を止める必要があり、モニタリングの信頼性が求められる。上述の土砂災害監視装置では流下物が洗掘防護ブロックに衝突することで生じる振動により、変状を誤検出する可能性がある。
【0009】
上述の課題を鑑み、本発明は、橋脚の周囲に複数設置される洗掘防護ブロックの流失を精度良く簡単に検出できるようにした洗掘防護ブロック流失検知装置及び洗掘防護ブロック流失検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、本発明の洗掘防護ブロック流失検知装置は、橋脚の周囲に複数設置される洗掘防護ブロックにそれぞれ設けられ、当該洗掘防護ブロックの異常の有無を判定する洗掘防護ブロック流失検知装置であり、前記加速度検出装置は、X軸方向と、Y軸方向と、Z軸方向の3軸の加速度を検知する加速度検出装置と、前記3軸加速度検出手段により検出された3軸の加速度のデータから求められた傾斜の大きさと、傾斜の方向と、振動とを用いて、前記洗掘防護ブロックの異常の有無を判定する制御装置とを備えることを特徴とするである。
【0011】
本発明の洗掘防護ブロック流失検知装置は、上記発明において、1kHzから10kHzの周波数の低周波数電磁波により、自身の識別情報と異常情報を送信する送信器をさらに有することを特徴とする。
【0012】
本発明の洗掘防護ブロック流失検知装置は、前記洗掘防護ブロックの一部に設けられたことを特徴とする。
【0013】
本発明の洗掘防護ブロック流失検知装置は、制御装置が、所定時間継続した傾斜を検出した場合に異常と判定することを特徴とする。
【0014】
本発明の洗掘防護ブロック流失検知装置は、制御装置が、前記防護ブロックの振動を検出した場合に異常と判定することを特徴とする。
【0015】
本発明の洗掘防護ブロック流失検知システムは、橋脚の周囲に複数設置される洗掘防護ブロックの流失を検出する洗掘防護ブロック流失検知システムであって、橋脚の周囲に複数設置される洗掘防護ブロックに埋設され、前記洗掘防護ブロックの流失を検知する洗掘防護ブロック流失検知装置と、前記洗掘防護ブロック流失検知装置からの信号を低周波電磁波で伝送する送信装置及び受信装置と、前記洗掘防護ブロック流失検知装置からのデータを解析する解析手段とを備え、前記洗掘防護ブロック流失検知装置は、埋設された洗掘防護ブロックにかかる加速度を検出する加速度検出装置と、各加速度検出装置により検出された加速度のデータから前記洗掘防護ブロックの異常の有無を判定する制御装置とから構成されてなり、前記制御装置は、前記加速度検出装置から得られた加速度データから異常の有無を判定することを特徴とする。
【0016】
本発明の洗掘防護ブロック流失検知システムは、前記解析手段が、前記異常が発生したと判定された洗掘防護ブロックの数や位置を解析して、橋脚の危険性を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、洗掘防護ブロックの健全な姿勢変化と流失の危険性のある姿勢変化を識別して警報を判定するすることができ、信頼性が向上する。また、本発明によれば洗掘防護ブロックが流失する前に振動するという事前の兆候を検出することができ、事前の対策を実施することができる。また、本発明によれば、河川の水位上昇などの情報とともに複数の洗掘防護ブロックの挙動を複合的に評価し、正確な判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態が適用できる橋梁の説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の洗掘防護ブロック流失検知システムの構成を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の洗掘防護ブロック流失検知システムにおける検知装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の洗掘防護ブロック流失検知システムにおける受信装置の構成の構成を示すブロック図である。
【図5】洗掘防護ブロックの流失とその動きとの関係の説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の洗掘防護ブロック流失検知システムの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態が適用できる鉄道用の橋梁の一例を示すものである。図1において、橋梁11は、河川10の両岸に架け渡された鉄道用のもので、その両端が河川10の対岸に支持され、その中間部は、河川10の河床から植立された橋脚12により支持されている。
【0020】
橋脚12の底床の周辺には、図2に示すように、複数のコンクリート製の洗掘防護ブロック13が敷設されている。この洗掘防護ブロック13は、河川10を流れる水流により、河床の洗掘を防止するものである。この洗掘防護ブロック13の流失を検出するために、本発明の第1の実施形態においては、これら複数の洗掘防護ブロック13の一部に、検知装置15が埋設されている。
【0021】
なお、検知装置15は、洗掘防護ブロック13の全てに埋設しても良いし、図2に示すように、一部の洗掘防護ブロック13にだけ埋設しても良い。例えば、橋脚12の近くにある洗掘防護ブロック13にだけ、検知装置15を埋設しても良いし、また、所定間隔毎の洗掘防護ブロック13に、検知装置15を埋設しても良い。その他、検知装置15を埋設する洗掘防護ブロック13の配置は、橋脚12の大きさ及び形状、また河床の形状に対応して各種の配置パターンが考えられる。例えば、河床に凹凸が存在する領域における検知装置15が埋設された洗掘防護ブロック13の配置密度を、それ以外の領域における検知装置15が埋設された洗掘防護ブロック13の配置密度より高くする。また、増水した際に、川の流れにより最も水圧が印加される橋脚周辺の河床の領域に対して検知装置15が埋設された洗掘防護ブロック13の配置密度を、それ以外の領域における検知装置15が埋設された洗掘防護ブロック13の配置密度より高くする。また、チェス板の市松模様のように、検知装置15が埋設された洗掘防護ブロック13の辺が他と隣接しないように交互に配置する。上述した配置パターンにおいて、検知装置それぞれのID信号により、いずれの検知装置の埋設されている洗掘防護ブロックが流失したか否かを検出することができる。
【0022】
検知装置15は、洗掘防護ブロック13の傾斜の大きさ、傾斜の方向(X軸、Y軸及びZ軸から求められる傾きの方向)、振動を感知し、これらの検知結果から、異常と判定された場合に、例えば1kHzから10kHzの低周波電磁波(低周波磁界と呼ばれる)で送信するものである。また、図2に示すように、橋脚12には、検知装置15からの低周波電磁波を受信するための受信装置16が設けられている。1kHzから10kHzの低周波電磁波は、エネルギーが大地に吸収される割合が非常に低く、水や大地との境界での反射が起こりずらい。このため、川底や地中でも、通信が可能である。受信装置16は、無線ネットワーク網17を介して、監視サーバ18と通信を行っている。
【0023】
なお、ここでは、受信装置16を橋脚12に設置しているが、受信装置16の配置位置は、検知装置15からの低周波電磁波の到達範囲(例えば30m)であれば、どこに配置しても良い。また、受信装置16は、洪水の影響を受けない場所に設置することが望ましい。また、河川10に棒柱を立て、そこに受信装置16を設置するようにしても良い。また、受信装置16は複数設けるようにしても良い。
【0024】
図3は、検知装置15の内部構成の一例を示すものである。図3に示すように、検知装置15は、3軸加速度センサ21と、制御部23と、ID発生部24と、送信部25と、タイマ26と、送信アンテナ27とから構成される。
【0025】
3軸加速度センサ21は、X軸と、Y軸と、Z軸との3軸方向の加速度を検出するものである。3軸加速度センサ21からのX軸、Y軸、Z軸の各軸の加速度の検出信号(加速度データ)は、制御部23に送られる。
【0026】
制御部23は、3軸加速度センサ21からのX軸、Y軸、Z軸の各軸に印加された加速度(重力加速度を含む)の検出信号から、傾斜の大きさ、傾斜の方向、振動を検出して、異常の有無を判定する。すなわち、3軸加速度センサ21からの検出信号は加速度の検出信号であるから、3軸加速度センサ21からの検出信号を振動の周期より短い周期で検出し、その加速度データ(例えば、電圧波形)をそのまま振幅として検出することで振動しているか否かの判定を行い、一方、長い周期で加速度データを積分することにより、洗掘防護ブロックが配置された初期状態からの傾斜の変化を検出できる。また、制御部23は、振動が検出されていない場合、重力加速度のみによる、その時点の傾斜を検出することができる。上述した洗掘防護ブロックの傾斜は、X軸、Y軸、Z軸の各々の傾斜の大きさから、制御部23が求める。
【0027】
ここで、列車の橋の通過時において、橋自体の振動が橋脚を介して河床も振動し、この列車通過に起因する振動が、川の増水による水圧で洗掘防護ブロックが振動する場合と誤検出することを防止する必要がある。一般的に、列車に起因する振動が増水に起因する振動に比較して周波数が高いので、列車に起因する振動の周波数を検出しない周期により、振動検出を行うように構成しても良い。このように、列車の振動の周期よりも長い時定数をによる加速度センサからの加速度データの検出により、列車の振動による誤動作を抑制することができる。
【0028】
送信部25は、制御部23からの送信起動信号を受けると、1kHzから10kHzの低周波信号を発振する。また、送信部25は、タイマ26からのタイマ信号を受信すると、低周波信号を発振する。また、送信部25には、ID発生部24から機器固有のID(identification)信号が送られる。それ以外のときには、送信部25の動作は停止され、バッテリ(電源部30)の消費が抑えられている。
【0029】
送信部25からの発振信号は、ID発生部24からのID信号により変調され、送信アンテナ27から送信される。送信アンテナ27は、例えばコイルである。すなわち、送信アンテナ27としてコイルを使った場合には、送信部25からの発振信号が供給されると、コイルに時間的に変動する磁界が生じ、送信アンテナ27から、1kHzから10kHzの低周波電磁波が発生される。
電源部30は、例えばバッテリなどであり、検知部15内の各部に駆動電力を供給する。
【0030】
なお、送信信号をID信号で変調する際には、振幅変調を用いても良いし、また、ID信号に応じた周波数成分の信号を発生させるようにしても良い。
【0031】
図4は、受信装置16の構成を示すものである。図4に示すように、受信装置16は、受信アンテナ31と、受信処理部32と、ID検出部33と、無線インターフェース部34と、無線通信アンテナ35とから構成される。
【0032】
受信アンテナ31は、検知装置15からの低周波電磁波を受信するもので、受信アンテナ31としてはコイルが用いられる。受信アンテナ31の受信信号は、受信処理部32に送られる。受信処理部32の出力信号は、ID検出部33に送られる。ID検出部33により、受信信号が復調され、ID信号が検出される。ID検出部33で検出されたID信号は、無線インターフェース部34に送られる。
【0033】
無線インターフェース部34は、無線ネットワーク網17(図2参照)に接続するためのインターフェースである。無線通信アンテナ35は、無線ネットワーク網17を介してデータを送受信するためのアンテナである。無線ネットワーク網17としては、携帯電話ネットワークや、ワイヤレスLAN、移動高速通信網等である。ID検出部33で検出されたID信号は、無線インターフェース部34により、無線ネットワーク網17を介して、監視サーバ18に送られる。
【0034】
次に、本発明のシステムの動作の概要について説明する。図2に示したように、橋脚12の底部の周囲に、検知装置15が埋設された洗掘防護ブロック13が敷設される。検知装置15には、図3に示したように、3軸加速度センサ21が設けられている。
【0035】
動作確認のために、所定の周期で(例えば1日1回)、検知装置15からは、各装置の固有のID信号を変調した低周波電磁波が送信される。すなわち、図3に示した検知装置15のタイマ26により、所定の周期で、検知装置15からは、各装置の固有のID信号を変調した低周波電磁波が送信される。この低周波電磁波は、受信装置16で受信され、受信したID信号が無線ネットワーク網17を介して、監視サーバ18に送られる。
【0036】
台風等の増水時に、河川10を流れる水流により、洗掘防護ブロック13が流失すると、洗掘防護ブロック13が動き、洗掘防護ブロック13の傾斜が変化する。また、洗掘防護ブロック13が流失する危険性が増加すると、その予兆として洗掘防護ブロック13が特有の振動を起こす。
【0037】
洗掘防護ブロック13が傾斜したり、振動が生じたりすると、その傾斜や振動は、図3に示した検知装置15の3軸加速度センサ21で検出され、この検出信号が制御部23に送られる。制御部23で、その傾斜の大きさ、傾斜の方向、振動から、異常かどうかが判定され、これに応じて、制御部23から送信部25に送信起動信号が出力される。すなわち、制御部23は、配置された時点の傾斜と現時点の傾斜の差分が予め設定した傾斜閾値を超え、かつ傾斜の方向の差分が予め設定した方向閾値を超えた場合、洗掘防護ブロック13が配置された位置と異なる位置に移動したとして流失したと判定し、振動の振幅が予め設定した振幅閾値を超えた場合、流失する危険を有すると判定する。これにより、洗掘防護ブロック13の振動及び流失等の異常が発生すると、検知装置15からは、各装置の固有のID信号を変調した低周波電磁波が送信される。ここで、制御部23は、振動または傾斜の各々の異常に対応した異常情報を、送信部25を介して送信する。
【0038】
この低周波電磁波は、受信装置16で受信され、受信したID信号が無線ネットワーク網17を介して、監視サーバ18に送られる。監視サーバ18で、受信装置16からのデータが解析され、危険があると判断されると、警報が出力される。
このとき、監視サーバ18は、流されると橋脚の危険な状態のレベルの段階と、洗掘防護ブロック13の配置位置との対応が内部に予め設定されており、流された洗掘防護ブロック13の配置位置を検出し、この配置位置に対応したレベルの警報を出力するように構成してもよい。ここで、上記配置位置に配置されている洗掘防護ブロック13は、各々に固有に設定されているID信号により対応づけられているので、異常を通知する信号とともに送信されるID信号により、監視サーバ18は、いずれの位置の洗掘防護ブロックに異常が発生しているか否かの判定が行える。
また、監視サーバ18は、流されると危険な状態のレベルの段階と、流される洗掘防護ブロック13の数との対応が内部に予め設定されており、流された洗掘防護ブロック13の数を検出し、流された数に対応したレベルの警報を出力するように構成してもよい。
また、洗掘防護ブロック13振動に対しても、流失の場合と同様に危険な状態のレベルが設定されている。
【0039】
このように、本発明の第1の実施形態では、橋脚12の底部の周囲に、検知装置15が埋設された洗掘防護ブロック13が敷設して、その傾斜の大きさ、傾斜の方向、振動を検出することで、洗掘防護ブロック13の流失や流失の危険性が高いことを判定して、警報を出力することができる。
【0040】
図5は、洗掘防護ブロックの動きを説明するものである。図5において、洗掘防護ブロック13a、13bは、台風等の増水時に、異常が生じたり、流失した洗掘防護ブロックである。洗掘防護ブロック13c〜13eは、自然な状態で動いた洗掘防護ブロックである。また、洗掘防護ブロック13fは、流失の危険性が高いときに振動が生じている洗掘防護ブロックである。
【0041】
このように、洗掘防護ブロック13は、増水時ばかりでなく、自然な状態でも、その位置や角度は変化する。したがって、単純に、傾斜の大きさだけで、洗掘防護ブロック13が流失していると判定すると、誤検出になる。
【0042】
そこで、図3に示したように、本発明の第1の実施形態の検知装置15では、3軸加速度センサ21により、X軸方向と、Y軸方向と、Z軸方向との加速度を検出し、制御部23で、その傾斜の大きさ、傾斜の方向、振動を判定している。これにより、図5で、洗掘防護ブロック13a、13bで示した流失時の動きと、洗掘防護ブロック13c〜13eで示した自然な状態での動きを、傾斜の方向と傾斜の大きさから判別して、誤検出を防止できる。
【0043】
また、洗掘防護ブロック13fで示したように、洗掘防護ブロック13は、流失が生じる前に、特有の振動が生じる場合がある。本発明の第1の実施形態の検知装置15では、制御部23で、3軸加速度センサ21の出力から、この特有の振動が検出できる。このため、本発明の第1の実施形態の検知装置15では、洗掘防護ブロック13の流失を事前に察知できる。このように、3軸加速度センサ21の検出出力により、制御部23で、その傾斜の大きさ、傾斜の方向、振動を判定し、これらを総合して、異常を判定することで、異常の判定精度が向上し、また、洗掘防護ブロック13の流失を事前に察知できる。
【0044】
すなわち、制御部23は、3軸加速度センサ21の検出出力から、所定時間継続した傾斜を検出した場合に異常と判定することができる。また、制御部23は、3軸加速度センサ21の検出出力から、洗掘防護ブロック13の振動を検出した場合に、異常と判定することができる。また、制御部23は、所定位置の洗掘防護ブロック13の振動又は傾斜を検出した場合に異常と判定することができる。
【0045】
また、本発明の第1の実施形態の検知装置15では、図2に示したように、橋脚12の底部の周囲の複数の洗掘防護ブロック13に、検知装置15が埋設されている。そして、各検知装置15から送信される低周波電磁波には、固有のID信号が含められている。このため、監視サーバ18では、どの位置の洗掘防護ブロック13が流失しているかを判定することができる。これにより、流失した洗掘防護ブロック13の数や位置から、橋脚12の危険性を解析により判断できる。例えば、流失した洗掘防護ブロック13の数が所定数を越えたら、橋脚12の支持する際の危険性は高いと判定できる。また、橋脚12から遠い位置にある洗掘防護ブロック13が流失した場合には、橋脚12の支持する際の危険性は少なく、橋脚12に近い位置にある洗掘防護ブロック13が流失した場合には、橋脚12の支持する際の危険性は高いと判定できる。
【0046】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図6は、本発明の第2の実施形態における検知装置の構成を示すものである。本発明の第2の実施形態の検知装置115は、3軸加速度センサ121と、制御部123と、ID発生部124と、送信部125と、タイマ126と、送信アンテナ127と、水圧センサ128と、水圧判定部129とから構成される。3軸加速度センサ121、制御部123、ID発生部124、送信部125、タイマ126、送信アンテナ127、電源部130は、第1の実施形態における3軸加速度センサ21、制御部23、ID発生部24、送信部25、タイマ26、送信アンテナ27、電源部30と同様であり、その説明は省略する。
【0047】
本発明の第2の実施形態では、さらに、水圧センサ128及び水圧判定部129が設けられる。水圧センサ128により、周囲の水圧が検出され、水圧判定部129により、所定値以上の水圧かどうか、また水圧の変化量が設定値以上かどうかが判定される。
【0048】
台風等の増水時には、橋脚12の周囲の水位が上がり、また、その水圧が高くなる。また、洗掘防護ブロックが流出する場合、河川における水の流れに対し、洗掘防護ブロックの姿勢や位置が変化するため、洗掘防護ブロックの受ける水圧も変化する。よって、この実施形態では、水圧センサ128により周囲の水圧ならびに水圧の変化を検出して、洗掘防護ブロック13の流失を判定することで、より信頼性を上げることができる。また、水圧判定部129により所定値以上の水圧ならびに水圧の変化があると判定されたときには、タイマ126の間隔を短くすることで、より信頼性を上げることができる。
【0049】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 河川
11 橋梁
12 橋脚
13 洗掘防護ブロック
15 検知装置
16 受信装置
17 無線ネットワーク網
18 監視サーバ
21 3軸加速度センサ
23 制御部
24 ID発生部
25 送信部
26 タイマ
27 送信アンテナ
30、130 電源部
31 受信アンテナ
32 受信処理部
33 ID検出部
34 無線インターフェース部
35 無線通信アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋脚の周囲に複数設置される洗掘防護ブロックにそれぞれ設けられ、当該洗掘防護ブロックの異常の有無を判定する洗掘防護ブロック流失検知装置であり、
前記加速度検出装置は、X軸方向と、Y軸方向と、Z軸方向の3軸の加速度を検知する加速度検出装置と、
前記3軸加速度検出手段により検出された3軸の加速度のデータから求められた傾斜の大きさと、傾斜の方向と、振動とを用いて、前記洗掘防護ブロックの異常の有無を判定する制御装置と
を備える
ことを特徴とする洗掘防護ブロック流失検知装置。
【請求項2】
1kHzから10kHzの周波数の低周波数電磁波により、自身の識別情報と異常情報を送信する送信器をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の洗掘防護ブロック流失検知装置。
【請求項3】
前記加速度検出装置は、前記洗掘防護ブロックの一部に設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の洗掘防護ブロック流失検知装置。
【請求項4】
前記制御装置は、所定時間継続した傾斜を検出した場合に異常と判定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の洗掘防護ブロック流失検知装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記防護ブロックの振動を検出した場合に異常と判定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の洗掘防護ブロック流失検知装置。
【請求項6】
橋脚の周囲に複数設置される洗掘防護ブロックの流失を検出する洗掘防護ブロック流失検知システムであって、
橋脚の周囲に複数設置される洗掘防護ブロックに埋設され、前記洗掘防護ブロックの流失を検知する洗掘防護ブロック流失検知装置と、
前記洗掘防護ブロック流失検知装置からの信号を低周波電磁波で伝送する送信装置及び受信装置と、
前記洗掘防護ブロック流失検知装置からのデータを解析する解析手段とを備え、
前記洗掘防護ブロック流失検知装置は、
埋設された前記洗掘防護ブロックにかかる加速度を検出する加速度検出装置と、
各加速度検出装置により検出された加速度のデータから前記洗掘防護ブロックの異常の有無を判定する制御装置とから構成されてなり、
前記制御装置は、前記加速度検出装置から得られた加速度データから異常の有無を判定することを特徴とする洗掘防護ブロック流失検知システム。
【請求項7】
前記解析手段は、前記異常が発生したと判定された洗掘防護ブロックの数や位置を解析して、橋脚の危険性を判定することを特徴とする請求項6に記載の洗掘防護ブロック流失検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−12516(P2011−12516A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160084(P2009−160084)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(390027177)坂田電機株式会社 (16)
【Fターム(参考)】