説明

洗浄装置

【課題】ワークの保持手段自体による陰の部分を解消するとともに、そのワークに対する保持作用及び洗浄作用の安定化を図り、長期間の稼働により搬送チェーン等の無端状走行帯に伸びが生じたとしても、ワークの各停止位置における洗浄作用に支障が生じることのない洗浄装置を提供する。
【解決手段】ワークが載置されるワーク載置部と、ワークの上面を押えつける押圧部材と、洗浄媒体を噴射する噴射ノズルとを備え、ワーク載置部7に載置されたワーク1を押圧部材19により押えつけながら洗浄媒体を吹付ける洗浄装置において、押圧部材19を噴射ノズル20と一体的に設け、それらの押圧部材19と噴射ノズル20を移動させることにより、押圧部材19による陰の問題を解消するとともに、ワーク載置部を移動するための搬送チェーン等の無端状走行帯の伸びに起因する押圧部材19や噴射ノズル20の移動上の問題を解消する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄装置に関する。より詳しくは、洗浄対象であるワークの保持手段自体の陰になって洗浄や水切り作業ができなくなる領域を解消すべく改良した洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の改良技術に関し、ワークを載置する回転テーブルの回転中心から偏心した位置に該回転テーブルの回転方向と一致する方向に回転可能なローラ等からなる押圧部材によってワークを押圧保持しながら、噴射ノズルから洗浄液を吹付けて洗浄作業をしたりエア等を吹付けて水切り作業を行う洗浄装置が開示されている(特許文献1参照)。ところで、この従来技術は、押圧部材がワークの回転中心から偏心した位置に当接し、その当接部分がワークに対して常に移動することから、保持手段自体の陰となって洗浄ないし水切り作業ができなくなる問題が解消される点で有効である。しかしながら、前記回転テーブルが搬送チェーンを介して間欠的に移動され、それぞれの停止位置において駆動側のギヤに連係して回転駆動されるように構成されていたため、長期間の稼働による搬送チェーン等の無端状走行帯の伸びによって、停止位置における駆動側のギヤとの連係に狂いが生じて回転動作に問題が生じ、洗浄作用に支障が生じるといった技術的課題があった。
【特許文献1】特開2004−113836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上のような従来の技術的状況に鑑み、更に改良を重ねて、ワークの保持手段自体による陰の問題を解消するとともに、そのワークに対する保持作用及び洗浄作用の安定化を図り、長期間の稼働により搬送チェーン等の無端状走行帯に伸びが生じたとしても、ワークの各停止位置における洗浄作用に支障が生じることのない洗浄装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するため、請求項1の発明では、ワークが載置されるワーク載置部と、ワークの上面を押えつける押圧部材と、洗浄媒体を噴射する噴射ノズルとを備え、前記ワーク載置部に載置されたワークを押圧部材により押えつけながら洗浄媒体を吹付けて洗浄を行う洗浄装置において、前記押圧部材を噴射ノズルと一体的に設け、それらの押圧部材と噴射ノズルを移動させることにより、前記押圧部材によって押えつける位置を変更しながら洗浄を行うという技術手段を採用した。すなわち、押圧部材及び噴射ノズル側を移動させるように構成することにより、ワークに対する保持動作及び洗浄作用の安定化を図るとともに、ワーク載置部を移動する搬送チェーン等の無端状走行帯の伸びに起因する問題も解消し得るように改良した点に特徴を有する。因みに、洗浄媒体は液体でも気体でもよく、ここにいう洗浄にはエア等を吹付けて水切りを行う場合も含む。前記押圧部材と噴射ノズルは、ワーク上面に対して垂直方向に回転中心を有する回転体に対して、その回転中心から偏心した位置に設けることができる(請求項2)。前記回転中心を挟んで押圧部材と噴射ノズルを設けてもよい(請求項3)。ワーク上面に沿って移動する移動体に押圧部材と噴射ノズルを設ける形態も可能である(請求項4)。前記噴射ノズルによる洗浄媒体の吹付け位置を挟んで移動の前後位置を押えつけるように前記押圧部材を設けてもよい(請求項5)。ワークを搬送する搬送手段に前記ワーク載置部を設けて、その搬送手段による停止位置のワークに対して前記押圧部材による押圧作用を付与するように構成できる(請求項6)。
【発明の効果】
【0005】
本発明においては、押圧部材を噴射ノズルと一体的に設け、それらの押圧部材と噴射ノズルを移動させることにより、ワークを押えつける位置を変更しながら洗浄を行うように構成したので、次の効果を得ることができる。
(1)ワークの保持手段自体による陰の問題を解消することができ、ワークの全面に対する的確な洗浄作用が可能である。
(2)押圧部材を噴射ノズルと一体的に設けて移動させるので、ワークに対するより安定した保持作用及び洗浄作用が得られる。
(3)押圧部材及び噴射ノズル側を移動させるように構成したので、ワーク載置部を移動する搬送チェーン等の無端状走行帯の伸びに起因する従来の問題を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、電力計用の透明カバーなどのように有底状のワークの洗浄に好適であるが、これに限らず押圧可能な上面を有するワークに対する広い適用が可能である。図1は本発明が適用される洗浄システム全体のレイアウトを例示した概略平面図である。図示のように、電力計用の透明カバーなどの適宜のワーク1は供給コンベヤ2を介して供給され、ストッパ3により規制される所定位置において反転移載機構4のハンド5により挟持された上、表裏を反転しながら搬入部6に位置するワーク載置部7上に載置され、しかる後そのワーク載置部7が各作業部へ移動して順次所期の処理が実行されるように構成されている。なお、各作業部への移動は、ワーク載置部7を支持したチェーン等からなる搬送手段8の間欠的な駆動により実行される。しかして、搬入部6のワーク載置部7上に載置されたワーク1は、ワーク載置部7を支持した搬送手段8によりシャッタ9,10で仕切られた洗浄空間へ移動され、先ず作業部Aにおいて内面及び外面の双方の表面に対する洗浄作業が行われる。ここでは、一体的に設けられた押圧部材と噴射ノズルを回転中心から偏心させた状態で回転することにより、押圧部材による陰の問題を解消しながら噴射ノズルからの洗浄媒体による吹付け洗浄が行われる。この場合、前記洗浄媒体に温水を使用すれば、ラベル等のノリが加温され剥がれやすくなる。次に作業部B,Cに順次移動され、ワーク1の外表面に残存するラベル等の付着物に対する剥離作業が行われる。ここでは、ワーク上面に沿って直線的に移動する移動体に押圧部材と噴射ノズルを設け、それらの押圧部材と噴射ノズルを往復移動させることにより、押圧部材による陰の問題を解消しながら噴射ノズルからの強力な噴射媒体の吹付け作用によりラベル等の付着物に対する剥離作業が行われる。本例ではワーク1の上面を2つの部分に分割し、作業部B,Cにおいてそれらの部分に対する剥離作業が行われることになる。
【0007】
次に、ワーク1はシャッタ10,11で仕切られた水切り空間へ移動され、作業部D,Eにおいて水切り作業が繰返し実行される。ここでは、押圧部材と噴射ノズルを回転中心から偏心させた状態で回転することにより、押圧部材による陰の問題を解消しながら噴射ノズルからの高速エアによる水切り作業が行われる。しかして、作業部D,Eにおける水切り作業が完了したワーク1は、搬送手段8の間欠駆動によるワーク載置部7の移動により搬出部12へ移送され、反転移載機構13のハンド14によって挟持された上、表裏を反転して元の状態に戻しながら排出コンベヤ15上に載置されて順次排出されることになる。なお、図中16はワーク載置部7に形成されたワーク1の内面洗浄用の開口部を示したものである。
【実施例】
【0008】
図2及び図3は本発明を適用した第1実施例を示したものであり、図2はその外面洗浄部を示した要部構成図、図3は内面洗浄部を示した要部拡大構成図である。図2に示したように、本実施例においては、チェーンからなる搬送手段8に支持されたワーク載置部7の各停止位置の上方に、ワーク1の上面に対して垂直方向に回転中心を有する回転軸17を設置し、その下端部に設けた取付部材18を介して回転中心から偏心した位置にローラからなる押圧部材19と噴射ノズル20を回転軸17を挟んで両側に配設している。回転軸17は軸受21によって回転可能に支持され、モータ22、プーリ23、ベルト24及びプーリ25を介して回転駆動されるように構成されている。軸受21は上下部が昇降用シリンダ26により昇降可能に構成された昇降用支持枠27,28に固定され、その昇降用支持枠27,28を昇降して、押圧部材19をワーク1の上面に押し当てることにより、高さの異なるワーク1に対しても対応し得るように構成されている。図中29は軸受21の昇降用軸受、30は昇降軸31の昇降用軸受である。なお、回転軸17は内部に供給路32を備え、ロータリジョイント33を経由して洗浄液供給側と接続するとともに、可撓性供給管34を介して噴射ノズル20に接続している。しかして、所定位置にワーク載置部7が移動し、回転軸17の下方にワーク1が搬送された場合には、前記昇降用シリンダ26により昇降用支持枠27,28を下降させ、押圧部材19によりワーク1の上面を押圧した状態においてモータ22により回転軸17を回転し、ワーク1の上面に対する押圧部材19の当接位置を変えながら噴射ノズル20からの洗浄液を吹付けることにより、ワーク1に対する外面洗浄が実行されることになる。その場合、上面の高さが異なるワーク1であっても、噴射ノズル20とワーク1の上面との距離が同じとなり、均一な洗浄作用が得られる。
【0009】
図3に示したように、ワーク載置部7の各停止位置の下方にも、垂直方向に回転中心を有する回転軸35が設置され、その上端部に設けた取付部材36を介して内面用の噴射ノズル37が配設されている。回転軸35は軸受38により回転可能に支持され、噴射ノズル37が旋回してワーク1内面に対する吹付け方向を周方向に変化させながら内面全体に対する洗浄ができるように構成されている。また、回転軸35は昇降可能に支持され、噴射ノズル37による吹付け高さを調整できるように構成されている。図示のように、回転軸35及び取付部材36の内部には供給路39,40が形成され、ロータリジョイント41を経由して供給される洗浄液を噴射ノズル37へ供給するように構成されている。図中42,43はベベルギヤで、これらのベベルギヤ42,43を介してモータ44、プーリ45、ベルト46、プーリ47及び回転軸48を経由して伝達される回転力が回転軸35に付与されるように構成されている。
【0010】
図4及び図5は本発明を適用した第2実施例を示したものであり、図4は外面洗浄部を示した要部構成図、図5はその要部拡大側面図である。図示のように、本実施例の場合には、チェーンからなる搬送手段8に支持されたワーク載置部7の各停止位置の上方に、押圧部材49及び噴射ノズル50が、ボールネジを用いた往復移動機構51の作動部52から垂下した支持部材53の下部に昇降用シリンダ54を介して支持された状態に配設されている。そして、その押圧部材49によってワーク1の上面を押圧支持した状態で往復移動させながら噴射ノズル50からの洗浄液を吹付けることにより、ワーク1に対する外面洗浄が実行されるように構成されている。なお、この場合、噴射ノズル50からの洗浄液の噴射圧を高めて強力な高速吹付けを行うことにより、ワーク1の表面に付着したラベル等の付着物の剥離除去も可能である。図中55は往復移動機構51のネジ軸駆動用のモータであり、このモータ55の回転駆動力によりネジ軸が回転して作動部52を往復移動するように構成されている。また、昇降用シリンダ54を介して押圧部材49を昇降してワーク1の上面に当接させることにより、高さの異なるワーク1に対しても上面を押圧支持し得るように構成されている。その押圧部材49は、図4のように逆T字状からなり図5に示したように昇降用シリンダ54の作動軸56に取付板57を介して設置された両側の支持部58,59と、それらの支持部58,59の移動方向の前端部及び後端部に配設された計4個のローラ60から構成され、洗浄作業中はその中の少なくとも1個のローラ60がワーク1の上面を押圧支持する範囲内で往復移動されることになる。また、前記噴射ノズル50は、押圧部材49の逆T字状の支持部58,59に固着された支持板61,62に形成された円弧状の長孔と取付板63に形成された直線状の長孔の交差部に貫通されたボルトとナットにより、その噴射角度と噴射高さを調整できるように取付けられている。この場合、押圧部材49により噴射ノズル50からの洗浄液の吹付け位置を挟んで移動の前後位置を押えつけることが可能である。
【0011】
なお、前記往復移動機構51は、図4に示したようにレール64,65により機枠66に対して搬送手段8の搬送方向に移動できるように構成された支持基板67上に、図5に示した支持フレーム68を介して設置されている。また、支持基板67側にはラック69が設けられ、機枠66側に設置されたハンドル70を備えたピニオン71と歯合している。したがって、本実施例の場合には、ハンドル70を手動操作して支持基板67を搬送手段8の搬送方向に移動して往復移動機構51の位置を調整することにより、押圧部材49や噴射ノズル50の位置をワーク1の停止位置に適応させることが可能である。そして、その調整後の往復移動機構51の位置は、クランプ72によって固定できるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明が適用される洗浄システム全体のレイアウトを例示した概略平面図である。
【図2】本発明を適用した第1実施例の外面洗浄部を示した要部構成図である。
【図3】同実施例の内面洗浄部を示した要部拡大構成図である。
【図4】本発明を適用した第2実施例の外面洗浄部を示した要部構成図である。
【図5】同実施例を示した要部拡大側面図である。
【符号の説明】
【0013】
1…ワーク、2…供給コンベヤ、3…ストッパ、4…反転移載機構、5…ハンド、6…搬入部、7…ワーク載置部、8…搬送手段、9〜11…シャッタ、12…搬出部、13…反転移載機構、14…ハンド、15…排出コンベヤ、16…開口部、17…回転軸、18…取付部材、19…押圧部材、20…噴射ノズル、21…軸受、22…モータ、23…プーリ、24…ベルト、25…プーリ、26…昇降用シリンダ、27,28…昇降用支持枠、29,30…昇降用軸受、31…昇降軸、32…供給路、33…ロータリジョイント、34…可撓性供給管、35…回転軸、36…取付部材、37…噴射ノズル、38…軸受、39,40…供給路、41…ロータリジョイント、42,43…ベベルギヤ、44…モータ、45…プーリ、46…ベルト、47…プーリ、48…回転軸、49…押圧部材、50…噴射ノズル、51…往復移動機構、52…作動部、53…支持部材、54…昇降用シリンダ、55…モータ、56…作動軸、57…取付板、58,59…支持部、60…ローラ、61,62…支持板、63…取付板、64,65…レール、66…機枠、67…支持基板、68…支持フレーム、69…ラック、70…ハンドル、71…ピニオン、72…クランプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが載置されるワーク載置部と、ワークの上面を押えつける押圧部材と、洗浄媒体を噴射する噴射ノズルとを備え、前記ワーク載置部に載置されたワークを押圧部材により押えつけながら洗浄媒体を吹付けて洗浄を行う洗浄装置において、前記押圧部材を噴射ノズルと一体的に設け、それらの押圧部材と噴射ノズルを移動させることにより、前記押圧部材によって押えつける位置を変更しながら洗浄を行うように構成したことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
ワーク上面に対して垂直方向に回転中心を有する回転体に、その回転中心から偏心した位置に前記押圧部材と噴射ノズルを設けた請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記回転中心を挟んで押圧部材と噴射ノズルを設けた請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
ワーク上面に沿って移動する移動体に押圧部材と噴射ノズルを設けた請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記噴射ノズルによる洗浄媒体の吹付け位置を挟んで移動の前後位置を押えつけるように前記押圧部材を設けた請求項4に記載の洗浄装置。
【請求項6】
ワークを搬送する搬送手段に前記ワーク載置部が設けられ、その搬送手段による停止位置のワークに対して前記押圧部材による押圧作用が付与されるように構成した請求項1〜5のいずれか一項に記載の洗浄装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−244965(P2007−244965A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70058(P2006−70058)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(393028357)シブヤマシナリー株式会社 (77)
【Fターム(参考)】