説明

洗浄装置

【課題】本発明の課題は、従来よりも洗浄能力を向上させた、ダイコーター用洗浄装置を提供することである。
【解決手段】ダイコーターのスリットノズル先端部を洗浄するための洗浄装置であって、洗浄ユニットと、該洗浄ユニットをスリットノズルの幅方向に沿って移動させる洗浄ユニット移動手段とを備え、該洗浄ユニットは、洗浄液と搬送気体との混合流体を噴射して前記スリットノズル先端部を洗浄する二流体ノズル群と、洗浄によって生じ前記スリットノズル先端部に付着した洗浄廃液を除去するエアーナイフ群と、噴射された気体および洗浄廃液を排出する排出手段とを有し、前記二流体ノズル群は、噴射範囲が狭いラウンドスプレーノズルと、噴射範囲が広いフラットスプレーノズルとを少なくとも含む2種類以上のスプレーノズルの組合せを含むものであることを特徴とする洗浄装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイコーターのスリットノズル先端部に付着する塗液かすを洗浄除去するための洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スリット状のダイから塗液を吐出して塗工を行うダイコーターは、高精度の塗工が能率的に行えることから、さまざまな分野で応用されている。長尺のシート状物に連続的に塗工する場合と異なり、板状物に塗工する場合には塗工動作が間歇的になるため、スリットノズル先端に付着した塗液が乾燥固化して塗液かすとなり、これが筋むらの原因になったり、塗膜に混入して異物付着の原因となることがあった。この問題を防止するために、定期的にスリットノズルの先端を洗浄し、塗液かすを除去するための洗浄装置が必要となる。
【0003】
本出願人の出願による特許文献1に記載された洗浄装置付塗布装置は、スリットノズル先端部の外側に洗浄薬液と不活性ガスを混合した二流体を噴出する1個以上の二流体ノズルと、不活性ガスを噴出する液切りノズルの2組をスリットノズル先端部の外側を挟み込むように設置し、さらに洗浄の過程で発生したミスト状廃液を強制排気する排気部とを有する洗浄ヘッドを具備することを特徴とする洗浄装置付塗布装置である。
【0004】
特許文献1には、洗浄ヘッドに用いられている二流体ノズルの仕様について、実施例として噴出口が円形状のものを3ヶ所設けた旨記載されている(6ページ、段落0022)。しかしながら、近年における基板寸法の大型化に伴い、ダイコーターのスリットノズル寸法も長大化しており、このため洗浄ヘッドの洗浄性能についてもより高度なものが要求されるようになってきたため、特許文献1に記載された仕様に基づく洗浄ヘッドでは、洗浄性能の面で十分とはいえなくなってきた。
【特許文献1】特開2006-281101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、従来よりも洗浄能力を向上させた、ダイコーター用洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、ダイコーターのスリットノズル先端部を洗浄するための洗浄装置であって、洗浄ユニットと、該洗浄ユニットをスリットノズルの幅方向に沿って移動させる洗浄ユニット移動手段とを備え、該洗浄ユニットは、洗浄液と搬送気体との混合流体を噴射して前記スリットノズル先端部を洗浄する二流体ノズル群と、洗浄によって生じ前記スリットノズル先端部に付着した洗浄廃液を除去するエアーナイフ群と、噴射された気体および洗浄廃液を排出する排出手段とを有し、前記二流体ノズル群は、噴射範囲が狭いラウンドスプレーノズルと、噴射範囲が広いフラットスプレーノズルとを少なくとも含む2種類以上のスプレーノズルの組合せを含むものであることを特徴とする洗浄装置である。
【0007】
また請求項2に記載の発明は、前記二流体ノズル群が、噴射範囲が狭く噴射衝撃力の大なるラウンドスプレーノズルと、噴射範囲が広く噴射衝撃力の小なるフラットスプレーノズルとを少なくとも含む2種類以上のスプレーノズルの組合せを、複数含むものであることを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置である。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、前記エアーナイフ群が、スリットノズル先端部に付着した洗浄廃液を下方向に向かって除去する上部エアーナイフとスリットノズル先端部に付着した洗浄廃液を斜め下方向に向かって除去する下部エアーナイフとを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄装置である。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、前記二流体ノズルならびに前記エアーナイフに供給する気体が不活性ガスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る洗浄装置は、ダイコーターのスリットノズル先端部を洗浄するための洗浄装置であって、洗浄ユニットと、該洗浄ユニットをスリットノズルの幅方向に沿って移動させる洗浄ユニット移動手段とを備え、該洗浄ユニットは、洗浄液と搬送気体との混合流体を噴射して前記スリットノズル先端部を洗浄する二流体ノズル群と、洗浄によって生じ前記スリットノズル先端部に付着した洗浄廃液を除去するエアーナイフ群と、噴射された気体および洗浄廃液を排出する排出手段とを有するものであるから、洗浄ユニットは、洗浄ユニット移動手段の仕様を変更するだけで、異なる長さのスリットノズルを有するダイコーターに対して共通に取り付け可能であり、汎用性の高いものである。
【0011】
また、本発明に係る洗浄装置の洗浄ユニットは、噴射範囲が狭いラウンドスプレーノズルと、噴射範囲が広いフラットスプレーノズルとを少なくとも含む2種類以上のスプレーノズルの組合せを含むものであるため、噴射範囲の広いフラットスプレーノズルによって広い範囲に付着した塗液かすを除去できるとともに、噴射範囲の狭いラウンドスプレーノズルによって特定の部分に付着しやすい塗液かすを重点的に洗浄することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る洗浄装置の洗浄ユニットが、噴射範囲が狭く噴射衝撃力の大なるラウンドスプレーノズルと、噴射範囲が広く噴射衝撃力の小なるフラットスプレーノズルとを少なくとも含む2種類以上のスプレーノズルの組合せを、複数含むものである場合には、洗浄力が格段に強化され、その結果ダイコーターのスリットノズル先端の洗浄不良に起因する塗工不良の発生を防止することができるばかりでなく、従来よりも長さの長いスリットノズルを有するダイコーターに対しても、従来よりも高速で洗浄することによって、従来と同じタクトタイムでの洗浄動作が可能となる。
【0013】
また、前記噴射範囲が狭く噴射衝撃力の大なるラウンドスプレーノズルと、噴射範囲が広く噴射衝撃力の小なるフラットスプレーノズルとを組合せた場合には、少量の洗浄液で十分な洗浄効果が得られるので、洗浄液の使用量が少なくて済むという効果がある。
【0014】
また、前記エアーナイフ群が、スリットノズル先端部に付着した洗浄廃液を下方向に向かって除去する上部エアーナイフとスリットノズル先端部に付着した洗浄廃液を斜め下方向に向かって除去する下部エアーナイフとを含む場合には、洗浄後の洗浄廃液の除去が確実に行われ、除去残りによる塗工不良の発生を防止する効果が高まる。
【0015】
また、前記二流体ノズルならびに前記エアーナイフに供給する気体が不活性ガスである場合には、塗液が酸素によって硬化阻害を生じるような性質のものであっても、問題なく使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図面に従って、本発明に係る洗浄装置の実施形態について説明する。
図2は、ダイコーターのスリットノズル6と洗浄ユニット1の関係を示す断面説明図であ
り、図3は、ダイコーターのスリットノズル6と洗浄ユニット1の関係を示す斜視説明図である。図2に示されたように、スリットノズル6には、マニホールド8とスリット9が設けられており、図示されていない送液ポンプから供給された塗液10がマニホールド8とスリット9を経由してスリットノズル先端部7から全幅方向にわたって一定の塗膜厚さで被塗工物表面に塗布される。
【0017】
被塗工物が巻取紙や巻取布、金属コイル等の連続した巻取状の物品であって、これらに対して、塗液を連続的に塗工する場合には、スリットノズルの先端が汚れることは殆どないが、被塗工物が板状の物品である場合には、塗工が間歇的にならざるを得ないため、スリットノズル先端部7に付着した塗液が乾燥して塗液かす11となり、すじむら等の塗工不良の原因となったり、塗液かすが塗膜に混入して異物付着の原因となったりする問題が発生する。
そこで、定期的あるいは、1回の塗工毎にスリットノズル先端部7を洗浄装置によって洗浄することが必要となる。
【0018】
図3に示したように、本発明に係る洗浄装置は、ダイコーターのスリットノズル6の先端部7を洗浄するための洗浄装置であって、洗浄ユニット1と、該洗浄ユニットをスリットノズル6の幅方向に沿って移動させる洗浄ユニット移動手段13とを備えている。洗浄ユニット1は、スリットノズル6の先端部7を両側から挟みこむように配置され、スリットノズル先端部7を洗浄しながら、スリットノズル6の幅方向に沿って、水平に移動する。ダイコーターのスリットノズル6は、一般的に先端がとがったV字型の断面形状を有しているが、本発明に係る洗浄装置を構成する洗浄ユニット1は、このV字型の断面にわずかな隙間をもって嵌合する断面形状を有している。
【0019】
洗浄ユニット移動手段13としては、洗浄ユニット1をスリットノズル先端部7に沿って水平に移動させることができるものであれば、特にその仕様、構造は限定されるものではないが、停止位置の正確さや、起動時、走行時および停止時の速度制御性、耐久性等を考慮すると、サーボモーターとボールねじを内蔵した直動ユニットやリニアモーターを内蔵した直動ユニット等の精密直動機器を用いることが好ましい。
直動ユニットとして、必要なストロークを有するものを選択すれば、異なるダイコーターに対して共通の洗浄ユニットを使用することができるので、汎用性の高い洗浄装置が実現できる。
【0020】
スリットノズル6と洗浄ユニット1とを所定の位置関係にセットする方法には、洗浄装置を所定の場所に設置しておいて、スリットノズル6を洗浄装置の位置に移動する方法と、逆にスリットノズル6を固定ないしは上下動のみとし、洗浄装置をスリットノズルの位置に移動する方法、またはこれらを組合せた方法等がある。どのような方法をとるかは任意であり、目的とするダイコーターの仕様や使用条件によって決定される。
【0021】
図1は、本発明に係る洗浄装置を構成する洗浄ユニットの一実施形態を示す斜視説明図である。
本実施形態における洗浄ユニット1は、洗浄液と搬送気体との混合流体を噴射してスリットノズル先端部7を洗浄する二流体ノズル群と、洗浄によって生じスリットノズル先端部7に付着した洗浄廃液を除去するエアーナイフ群と、噴射された気体および洗浄廃液を排出する排出手段とを有し、前記二流体ノズル群は、噴射範囲が狭いラウンドスプレーノズル2と、噴射範囲が広いフラットスプレーノズル3とを含む2種類のスプレーノズルの組合せ16を、2組含むものである。
【0022】
図1に示された実施形態においては、洗浄室18の片側の壁面に、1個のラウンドスプレーノズル2と1個のフラットスプレーノズル3とからなるスプレーノズルの組合せ16
が2組配置されて二流体ノズル群を形成しており、図1では、示されていないが、反対側の壁面には、反対側のスリットノズル先端部を洗浄するために同様の二流体ノズル群が1群設置されている。図1に示された実施形態においては、スプレーノズルの組合せが2組みで二流体ノズル群を形成しているが、洗浄能力をそれ程必要としない場合には、1組みをもって二流体ノズル群としてもよい。
【0023】
洗浄室18は、洗浄ユニット1の内部に設けられた空間であり、この洗浄室18の中でスリットノズル先端部7の洗浄が行われる。
洗浄室18の内部には、二流体ノズルから洗浄液が噴射され、スリットノズル先端部7に付着した塗液かす11を溶解除去する。塗液かす11を溶解した洗浄液は、洗浄廃液となってスリットノズル表面に付着しているので、これをエアーナイフによって剥離除去する。洗浄室18の下部には、排出手段である排出ダクト12が接続されており、洗浄室内に噴射された洗浄液や発生した洗浄廃液やエアーナイフから噴射された気体等を洗浄室内から吸引除去する。
【0024】
図4(a)は、ラウンドスプレーノズル2のスプレーパターン14を示す模式図であり、図4(b)は、フラットスプレーノズル3のスプレーパターン15を示す模式図である。ラウンドスプレーノズル2は、このように噴霧範囲が狭く設計されており、例えば噴射距離3mmにおける噴霧範囲が直径3mm程度の円形である。フラットスプレーノズル3は、噴霧範囲が広く設計されたものであり、例えば噴射距離3mmにおける噴霧範囲が10mm×50mm程度の楕円形状や直径10mm程度の円形のものである。これらの違いは、主にスプレーノズルのチップ形状の違いによる。
【0025】
これらの2種類のスプレーノズルを組合せることにより、それぞれ単体ではなし得ない効果が生じる。すなわち、フラットスプレーノズル3によって広範囲に付着した塗液かす11を膨潤させ、ラウンドスプレーノズル2によって特定の箇所に付着した塗液かす11を溶解除去することにより、効率よく塗液かす11の溶解除去が行われるのである。
【0026】
ラウンドスプレーノズル2において、噴霧範囲が狭く、噴霧衝撃力が大きいものとしては、例えば噴射距離3mmにおける噴霧範囲が直径3mm程度の円形であり、噴霧衝撃力が15〜17mN(ミリニュートン)程度のものがある。フラットスプレーノズル3において、噴霧衝撃力は小さいが、噴霧範囲は広いものとしては、例えば、噴射距離3mmにおける噴霧範囲が10mm×50mm程度の楕円形状であり、噴霧衝撃力が0.6〜1.5mN程度のものがある。
【0027】
この例では、噴射される洗浄液の絶対量としては、どちらの種類もほぼ同じ量であるが、このように相反する性質のスプレーノズルを組合せることによって、単一のスプレーノズルの組合せでは得られない、広い範囲にわたる強力な洗浄効果を発揮することが可能となり、さらにこのスプレーノズルの組合せ16を2組以上配列することによって、短時間の洗浄でも十分な洗浄効果を得ることが可能となるので、長いスリットノズルを洗浄する場合であっても、高速で洗浄することが可能となり、従って洗浄に要する時間が短くて済む。
【0028】
また、このように、噴霧範囲が狭く、噴霧衝撃力が大きいラウンドスプレーノズルと、噴霧衝撃力は小さいが、噴霧範囲は広いフラットスプレーノズルを組合せた場合、少ない量の洗浄液で高い洗浄効果を得ることができるため、使用する洗浄液の量が少なくて済むという利点がある。
【0029】
図5(a)、(b)、(c)は、スプレーノズルの配列例を示す模式図である。
図5(a)は、図1に示した洗浄ユニットにおけるスプレーノズルの配列を示す模式図で
あり、1個のラウンドスプレーノズル2と1個のフラットスプレーノズル3からなるスプレーノズルの組合せ16を斜めに2組配列している。配列は、洗浄ユニット移動方向17に対して平行に2組並べて配置され、ひとつの二流体ノズル群を形成している。
この実施形態における洗浄ユニット1には、スリットノズル6の両側を洗浄するためにこの組合せからなる二流体ノズル群がさらに1群存在するが、スリットノズルの形状によっては、片側からの洗浄によるだけで十分な場合もある。
【0030】
図5(b)は、スプレーノズルの配列の他の例を示す模式図である。
この例では、1個のラウンドスプレーノズル2と1個のフラットスプレーノズル3からなるスプレーノズルの組合せ16を水平にして、高さ方向に2組並べて配列している。
図5(c)は、同様にしてスプレーノズルの配列の他の例を示す模式図である。
この例では、2個のラウンドスプレーノズル2と1個のフラットスプレーノズル3からなるスプレーノズルの組合せ16を水平にして、高さ方向に2組並べて配列している。
【0031】
このように、スプレーノズルの配列としては、ラウンドスプレーノズルとフラットスプレーノズルの2種類のスプレーノズルを少なくとも含む組合せとすることに大きな意味があり、この組合せをどのように配置するかについては、スリットノズルの構造や、塗液かすの付着しやすい場所、あるいは、塗液かすの付着する範囲等に応じて、適宜決定すればよい。スプレーノズルの配列を容易に変更することができるように、スプレーノズルチップを簡単に交換できるような構造にしておくことは、有益である。
またスプレーノズルの取り付け角度を変えられるようにしておくことにより、さらに最適な洗浄効果を得ることが可能となる場合がある。
【0032】
図1に示されたように、洗浄ユニット1には、上部エアーナイフ4と2本の下部エアーナイフ5が設けられており、これらがエアーナイフ群を形成している。エアーナイフは、二流体ノズル群から噴射された洗浄液が塗液かす11を溶解することによって生じた洗浄廃液がスリットノズル6の表面に付着しているので、この洗浄廃液をスリットノズル6の表面から除去し、さらに乾燥する作用を有している。
【0033】
エアーナイフは、スリットノズル6の表面に付着した洗浄廃液を排出手段である排出ダクト12の方向に押しやることによって、効率よく洗浄廃液を集めて除去するものであり、洗浄ユニット1の上部にあって洗浄廃液を下方向に向かって押しやる働きをするエアーナイフと洗浄ユニット1の進行方向後方にあって洗浄廃液を前方に向かって押しやる働きをするエアーナイフの少なくとも2本のエアーナイフが存在することが望ましい。
【0034】
図1に示された洗浄ユニット1の実施形態においては、洗浄動作が一方向のみに移動しながら行われるものであるから、下部エアーナイフ5は、洗浄室18の進行方向後方にのみ配置されているが、洗浄動作を往復両方向で行う場合には、洗浄室18の両側に配置する必要がある。
【0035】
図1に示された洗浄ユニット1の実施形態においては、洗浄ユニット1の上部に水平に設けられた上部エアーナイフ4と、洗浄ユニットの進行方向後方に斜めに設けられた2本の下部エアーナイフ5が設置されている。下部エアーナイフ5は、この実施形態に見られるように、洗浄ユニットの進行方向に対して前傾した角度に設けることによって、垂直方向に設けた場合よりも効率的に洗浄廃液の除去を行うことができる。この時の前傾角度は、経験的に55°〜75°の範囲が好ましい。この実施形態のように下部エアーナイフ5を複数設けることによって、洗浄廃液の除去残りを防止する効果が向上する。
【0036】
図1に示された洗浄ユニット1には、下部に排出ダクト12が設けられている。
排出ダクト12は、図示されない排気ファンによって吸引されており、洗浄ユニット内に
噴射された気体と洗浄ユニット内で発生した洗浄廃液を外部に排出するための排出手段として作用する。洗浄廃液は、実際には大量の気体と混合しているため、液体というよりもミスト状の状態となって排出される。この洗浄廃液ミストに含まれる洗浄液成分は、回収装置によって回収される。
【0037】
洗浄ユニット1には、図には示されていないが、洗浄液を供給する洗浄液供給口と搬送気体を供給する搬送気体供給口が二流体ノズル1個毎にそれぞれ1個設けられており、洗浄液は、加圧された洗浄液タンクからバルブ、フィルター等を経由してフレキシブルホースによって洗浄液供給口に供給される。また搬送気体は、搬送気体供給源から、バルブ、圧力調整弁、フィルター等を経由して同様にフレキシブルホースによって搬送気体供給口に供給される。
【0038】
洗浄液は、使用する塗液に応じて選択されるものであり、塗液を良く溶解する溶媒を主成分とするものを使用する。洗浄液として、塗液の溶解性を重視したものと、乾燥性を重視したものとの2種類の洗浄液をこの順番に噴射することによって洗浄性能と乾燥性能とを両立することもできる。
【0039】
二流体ノズルに用いる搬送気体としては、水分を除去したドライエアーや、水分と微粒子を除去したクリーンドライエアーを使用することが望ましい。塗液が一部の紫外線硬化型塗料に見られるように、酸素によって硬化阻害を生じるような性質を持ったものである場合には、搬送気体として窒素ガス等の不活性ガスを使用することが望ましい。
このことは、エアーナイフに使用する気体についても同様である。
以下実施例に基づき、本発明に係る洗浄装置についてさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0040】
大型液晶ディスプレイ用カラーフィルターの製造ラインにおいて、ガラス基板にカラーレジストを塗布するために用いるダイコーターの洗浄装置を作成した。洗浄ユニットとして、図1に示された構造を有する洗浄ユニットを用いた。以下に、詳細な仕様を示す。
ガラス基板 厚さ0.7mm 無アルカリガラス サイズ2,460mm×2,160mm
スリットノズルの幅寸法 2,454mm(有効幅)
塗工液の種類 RGB顔料分散レジスト(顔料、樹脂、モノマー、開始剤等含
む)
洗浄液の成分 シクロヘキサノン/酢酸ブチル混合溶液
搬送気体 窒素ガス
エアーナイフ用気体 同上
洗浄ユニット移動手段 1ウェイスキャン方式 ストローク2,550mm
洗浄ユニット移動速度 400mm/sec
洗浄タクトタイム 6.4sec(毎回洗浄)
二流体ノズル群の構成 (ラウンドスプレー1個+フラットスプレー1個)×2×両側
ラウンドスプレーの仕様 洗浄液量 25mL/min
空気量 2.5L(normal)/min
空気圧力 0.065MPa
液圧力 0.019MPa
噴霧範囲 直径約3mm(距離3mm)
噴射衝撃力 最大17.4mN
フラットスプレーの仕様 洗浄液量 25mL/min
空気量 2.0L(normal)/min
空気圧力 0.18MPa
液圧力 0.055MPa
噴霧範囲 直径約10mm(距離3mm)
噴射衝撃力 最大1.5mN
エアーナイフの仕様
上部エアーナイフ 空気圧力 0.6MPa
空気量 15L(normal)/min(1本当り)
下部エアーナイフ 前傾角度 50°×2本(片側)
空気圧力 0.6MPa
空気量 7.0L(normal)/min(1本当り)
上記の洗浄装置を用いて、300枚のガラス基板に連続的に塗工を行ったところ、スリットノズルの汚染に起因する塗工不良の発生は、見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る洗浄装置を構成する洗浄ユニットの1実施形態を示す斜視説明図。
【図2】ダイコーターのスリットノズルと洗浄ユニットの関係を示す断面説明図。
【図3】ダイコーターのスリットノズルと洗浄ユニットの関係を示す斜視説明図。
【図4】(a)ラウンドスプレーノズルのスプレーパターンの一例を示す模式図。(b)フラットスプレーノズルのスプレーパターンの一例を示す模式図。
【図5】(a)図1に示した洗浄ユニットにおけるスプレーノズルの配列を示す模式図。(b)スプレーノズルの配列の他の例を示す模式図。(c)スプレーノズルの配列の他の例を示す模式図。
【符号の説明】
【0042】
1・・・洗浄ユニット
2・・・ラウンドスプレーノズル
3・・・フラットスプレーノズル
4・・・上部エアーナイフ
5・・・下部エアーナイフ
6・・・スリットノズル
7・・・スリットノズル先端部
8・・・マニホールド
9・・・スリット
10・・・塗液
11・・・塗液かす
12・・・排出ダクト
13・・・洗浄ユニット移動手段
14・・・ラウンドスプレーノズルのスプレーパターン
15・・・フラットスプレーノズルのスプレーパターン
16・・・スプレーノズルの組合せ
17・・・洗浄ユニット移動方向
18・・・洗浄室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイコーターのスリットノズル先端部を洗浄するための洗浄装置であって、洗浄ユニットと、該洗浄ユニットをスリットノズルの幅方向に沿って移動させる洗浄ユニット移動手段とを備え、該洗浄ユニットは、洗浄液と搬送気体との混合流体を噴射して前記スリットノズル先端部を洗浄する二流体ノズル群と、洗浄によって生じ前記スリットノズル先端部に付着した洗浄廃液を除去するエアーナイフ群と、噴射された気体および洗浄廃液を排出する排出手段とを有し、前記二流体ノズル群は、噴射範囲が狭いラウンドスプレーノズルと、噴射範囲が広いフラットスプレーノズルとを少なくとも含む2種類以上のスプレーノズルの組合せを含むものであることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記二流体ノズル群は、噴射範囲が狭く噴射衝撃力の大なるラウンドスプレーノズルと、噴射範囲が広く噴射衝撃力の小なるフラットスプレーノズルとを少なくとも含む2種類以上のスプレーノズルの組合せを、複数含むものであることを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記エアーナイフ群は、スリットノズル先端部に付着した洗浄廃液を下方向に向かって除去する上部エアーナイフとスリットノズル先端部に付着した洗浄廃液を斜め下方向に向かって除去する下部エアーナイフとを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記二流体ノズルならびに前記エアーナイフに供給する気体が不活性ガスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−51839(P2010−51839A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216346(P2008−216346)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】