洗濯機
【課題】洗濯機において商用電源の使用量を低減するとともに外槽の振動を低減する。
【解決手段】洗濯機に、筒状をなすシリンダ18と、該シリンダ18に相対的に直線往復動可能に支持されたロッド19と、該ロッド19に設置された磁性体21と、シリンダ18に設置されたコイル20と、該コイル20の両端に接続する負荷の大きさを調節する負荷量調節部24とから構成される発電・振動減衰装置17を設ける。
負荷量調節部24によりコイル20の両端に接続する負荷を大きくすることで発電・振動減衰装置17に発電作用を持たせる。またコイル20の両端に掛かる負荷を小さくする、もしくは短絡することで発電・振動減衰装置17に振動減衰作用を持たせることにより、発電作用と振動減衰作用を切替える。
【解決手段】洗濯機に、筒状をなすシリンダ18と、該シリンダ18に相対的に直線往復動可能に支持されたロッド19と、該ロッド19に設置された磁性体21と、シリンダ18に設置されたコイル20と、該コイル20の両端に接続する負荷の大きさを調節する負荷量調節部24とから構成される発電・振動減衰装置17を設ける。
負荷量調節部24によりコイル20の両端に接続する負荷を大きくすることで発電・振動減衰装置17に発電作用を持たせる。またコイル20の両端に掛かる負荷を小さくする、もしくは短絡することで発電・振動減衰装置17に振動減衰作用を持たせることにより、発電作用と振動減衰作用を切替える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、洗濯機に関するもので、例えば洗濯乾燥機のエネルギー効率の改善および低振動化の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温室効果ガスによる地球温暖化を抑制するために、化石燃料消費量の抑制や設備運用方法の改善・効率化等が促進されている。また、一般家庭においても、光熱費削減を目的とした省エネルギー化の意識が向上し、エネルギー効率のより高い家庭用電気製品がよく好まれている。
【0003】
洗濯乾燥機、例えばドラム式洗濯乾燥機は、略水平もしくは前方(衣類投入口)を上に向けて傾斜させたドラム内に衣類を投入して洗い、すすぎ、脱水、乾燥を行う。洗い、すすぎ、乾燥時にはドラムを低速で回転させ、ドラム下方に溜まった衣類を持ち上げて、ドラム上方から落下させるタンブリング動作を行う。このタンブリング動作により衣類に機械的な力を与えて洗浄を行っている。脱水時にはドラムを高速に回転させ、回転による遠心力で衣類から水分を衣類の外に押し出す遠心脱水を行う。なお、脱水時は振動が大きい程、エネルギーの損失が大きくなる。その後、加熱手段及び送風手段により、衣類に温風を吹き付け衣類に残った水分を蒸発させて乾燥を行う。
【0004】
このように、ドラムを回転させる動力、衣類を乾かすための加熱に必要な電力、乾燥ファンを運転させる動力として、電気エネルギーが必要になっている。特に、乾燥にかかる電力は大きく、省電力化が望まれている。(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−211386号公報
【特許文献2】特開2008−106830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1において太陽光発電装置は屋外に設置され、洗濯乾燥機は家の中に設置されることが多い。そのため、洗濯乾燥機に電力を供給するためには家の外と中をあらかじめつないだり、家の中もしくは壁の中に電線を配回したり、設備が大掛かりになるため望ましくない。
【0007】
また、特許文献2においても振動によって発電した電力が防振装置である動吸振器で消費されるため、洗濯乾燥機の消費電力を低減することができない。また、発電量によって動吸振器の防振性能が変わるため、減衰力を任意に変更することができない。
【0008】
本開示は、上記の状況を考慮してなされたものであり、商用電源の使用量を低減するとともに外槽の振動を低減し、乾燥機のエネルギー効率の改善および低振動化を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示では、洗い運転や脱水運転時などにおける外槽の振動をエネルギーに変換するものを提供する。
具体的には、衣類を収容するドラムと、前記ドラムを内包する外槽と、前記ドラムを回転駆動する駆動機構と、前記外槽を覆う筺体を有し、前記外槽を前記筺体に弾性支持する弾性支持部を有する洗濯乾燥機において、前記弾性支持部は、円筒状のシリンダと、前記シリンダ内を摺動するロッドと、前記シリンダの外周に配置されたコイルと、ロッドの先端に接続された磁性体、前記コイルの両端に接続する負荷の量を調整する負荷量調節部と、発電部からなり、外槽が振動するとシリンダ内をロッドが摺動する構成となっている。
弾性支持部は、負荷量調節部によってコイル両端の負荷を大きくすることで発電部による発電を行い、コイル両端の負荷を小さくすることで外槽の振動を低減することが可能である。このように負荷量調節部によって任意に発電と振動減衰を切替える構成とする。
【0010】
また、一例として負荷量調節部によって、ドラムの回転速度に応じて発電と振動減衰を切替えるようにしてもよい。例えば減衰力が必要となる共振回転速度付近でドラムが回転する場合、コイル両端の負荷を小さくすることで減衰力を発生させる。一方、共振回転速度付近以外でドラムが回転する場合、コイル両端の負荷を大きくして発電を行う。
【0011】
また、コイルの両端に蓄電池を接続することで発電した電力を蓄電し、必要に応じて制御装置の冷却ファンや乾燥ヒータなどに供給するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、発電・振動減衰装置を有し、外槽の振動に応じて発電を行うことができる。また発電・振動減衰装置の負荷を変化させることで発電から減衰装置に切替えることができ、外槽の振動を抑制することができる。
それにより、商用電源の使用量を低減するとともに外槽の振動を低減し、洗濯乾燥機のエネルギー効率の改善および低振動化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本開示の第1の実施形態に係る洗濯乾燥機を示す斜視図である。
【図2】本開示の第1の実施形態に係る洗濯乾燥機を示す右側面断面図である。
【図3】本開示の第1の実施形態に係る洗濯乾燥機の発電・振動減衰装置を示す図である。
【図4】(a),(b)は、一般的な振動の減衰力と伝達率の関係を示す図である。
【図5】本開示の第1の実施形態に係る洗濯乾燥機の制御部を示すブロック図である。
【図6】本開示の第1の実施形態に係る洗濯乾燥機の脱水運転を示すフローチャートである。
【図7】本開示の第2の実施形態に係る洗濯乾燥機の脱水運転を示すフローチャートである。
【図8】本開示の第3の実施形態に係る発電・振動減衰装置を示す図である。
【図9】本開示の第4の実施形態に係る発電・振動減衰装置を示す図である。
【図10】本開示の第4の実施形態に係る発電・振動減衰装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示を実施するための形態の例について、添付図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0015】
<1.第1の実施の形態>
以下、本開示の実施形態の例(以下、「実施形態例」ともいう。)について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態例に関わる洗濯乾燥機の外観図である。図2は、内部の構造を示すために筐体の一部を切断して示した側面図である。
【0016】
本実施形態では、洗濯乾燥機として、主にドラム式洗濯乾燥機に適用した例を説明する。
ドラム式洗濯乾燥機の外郭を構成する筐体1は、ベース1aの上に取り付けられており、左右の側板1b、前面カバー1c、背面カバー(図示せず)、上面カバー1d、下部前面カバー1fで構成されている。左右の側板1bは、コの字型の上補強材(図示せず)、前補強材(図示せず)、後補強材(図示せず)で結合されており、ベース1aを含めて箱状の筐体1を形成し、筐体として十分な強度を有している。
【0017】
ドア2は、前面カバー1cの略中央に設けた衣類を出し入れするための投入口を塞ぐためのもので、前補強材に設けたヒンジで開閉可能に支持されている。ドア開放ボタン2aを押すことでロック機構(図示せず)が外れてドアが開き、ドア2を前面カバー1cに押し付けることでロックされて閉じる。前補強材は、後述する外槽9の開口部と同心に、衣類を出し入れするための円形の開口部を有している。
【0018】
筐体1の上部中央に設けた操作・表示パネル3は、電源スイッチ4、操作スイッチ5、表示器6を備える。操作・表示パネル3は筐体1下部に設けた制御装置30に電気的に接続している。制御装置30には冷却ファン27が取り付けられている。
【0019】
図2に示すドラム8は、回転可能に支持されており、その外周壁および底壁に通水および通風のための多数の貫通孔を有し、前側端面に衣類を出し入れするための開口部8aを設けてある。開口部8aの外側にはドラム8と一体の流体バランサ8bを備えている。外周壁の内側には軸方向に延びるリフタ8cが複数個設けてあり、洗濯、乾燥時にドラム8を回転すると、衣類はリフタ8cと遠心力で外周壁に沿って持ち上がり、重力で落下するように動きを繰り返す。ドラム8の回転中心軸は、水平または開口部8a側が高くなるように傾斜している。
【0020】
円筒状の外槽9は、水槽9aと槽カバー9bで構成される。水槽9aの前方の開口部には槽カバー9bを設け、外槽9への貯水を可能にしている。外槽9はドラム8を同軸上に内包し、後側端面の外側中央にモータ10(駆動機構の一例)が取り付けられている。モータ10の回転軸は外槽9を貫通し、ドラム8と結合している。なお、外槽9の前側中央には、衣類を出し入れするための開口部9cを有している。
【0021】
外槽9の開口部9cと前補強材(図示せず)に設けた開口部は、ゴム製のパッキンであるベローズ11で接続しており、ドア2を閉じることで外槽9を水封する。外槽9の底面最下部には、排水口9dが設けてあり、排水ホース12が接続している。排水ホース12の途中には排水弁(図示せず)が設けてあり、排水弁を閉じて給水することで外槽9に水を溜め、排水弁を開いて外槽9内の水を機外へ排出する。外槽9の下部には振動検出装置9eを設けており、外槽9の振幅を測定している。測定した振幅とあらかじめ設定しているしきい値を比較し、振幅が大きい場合にはドラム8の回転を停止させて、安全な動作を行う構成としている。また、外槽9の前方にはカウンタウェイト9fが設置されており、カウンタウェイト9fを用いて外槽9の重量や慣性モーメントを増加させることで、衣類の偏りが発生した時の振動を低減している。
【0022】
乾燥ダクト13は、筐体1の背面内側に縦方向に設置され、該乾燥ダクト13の下部は外槽9の背面下方に設けた吸気口(図示せず)にゴム製のパッキン13aで接続される。乾燥ダクト13の上部は送風ユニット14に接続されている。送風ユニット14は筐体1の上部に前後方向に設置されており、送風用の乾燥ファン14aや乾燥ヒータ14bが組み込まれている。送風ユニット14の前方はゴム製のパッキン14cで外槽9の温風吹き出し口9gに接続されている。乾燥ファン14aにより乾燥ヒータ14bに風を送り、温風吹き出し口9gからドラム8内に温風を吹き付けることで衣類の乾燥を行う。
【0023】
外槽9は、下側をベース1aに固定された左右一対の弾性支持部15(防振支持機構の一例)によって防振支持されている。弾性支持部15は、バネ16(弾性部)と発電・振動減衰装置17で構成される。弾性部は、バネに限定されるものではなく、弾性を有する部材であれば油圧を利用するものなど種々の部材(手段)を適用できる。
【0024】
図3に、発電・振動減衰装置17の拡大図を示す。
発電・振動減衰装置17はシリンダ18と、ロッド19(軸)と、シリンダ18の外周に設置されたコイル20と、ロッド19の先端に設置された磁性体21と、コイル20に接続する発電回路17A(発電部の一例)によって構成される。シリンダ18の内部にはオイル22が封入されている。磁性体21には流路23が設けられており、シリンダ18とロッド19が相対運動した時に、オイル22が流路23を通過する構造となっている。オイル22が流路23を通過するときに生じる抵抗によって、シリンダ18は相対速度と逆向きの力を受けることになり、振動が減衰する。
【0025】
また、コイル20には発電回路17Aの切替えスイッチ24と整流回路25が接続されている。切替えスイッチ24は、負荷量調節部の一例であり、この切替えスイッチ24を切替えることによりコイル20の両端を短絡するか、整流回路25に接続するかを切替える。また整流回路25は蓄電池26に接続しており、整流回路25に流れる電流を蓄電する。蓄電池26には制御装置30の冷却ファン27などが接続され、蓄えられた電力を冷却ファン27等へ供給する。
【0026】
蓄電池26は筐体1に設置しても構わないが、カウンタウェイト9fの代わりに外槽9に設置することで、全体の重量を増加することなく、蓄電池26を設置することが可能となる。
【0027】
次に、発電・振動減衰装置17の動作について説明する。
洗濯時の衣類の落下や脱水時の衣類の偏りによって発生する遠心力によって外槽9が振動すると、外槽9に接続されているシリンダ18と筐体1に接続されている磁性体21が相対運動を行う。相対速度が生じた際にシリンダ18内のオイル22が磁性体21の流路23を通過する。この時に発生する流路抵抗によりシリンダ18は速度ベクトルと逆方向に力を受ける。これにより振動が減衰する。
【0028】
また、外槽9が振動すると、ロッド19に接続された磁性体21がシリンダ18内を往復運動し、コイル20との間に相対速度が生じる。この時、コイル20の両端が切替えスイッチ24によって短絡されている場合、コイル20には誘導起電力が生じ、磁性体21の運動を妨げる磁界が発生する。これにより、外槽9の振動を抑制することが可能となる。
【0029】
一方、切替えスイッチ24によって負荷(蓄電池26など)が接続された場合、発生した誘導起電力は蓄電池26に蓄えられる。この時発生する減衰力はコイル20の両端を短絡した場合よりも小さくなる。このように、切替えスイッチ24の切り替えにより、発電・振動減衰装置17の作用を発電と振動減衰に切替えることが可能である。発電された電力は制御装置30に接続された冷却ファン27などの電力として利用することができる。また、コイル20に対し磁性体21の運動を妨げる磁界が発生する向きに電流を流すことで、より大きな減衰力を発生させることができる。
【0030】
次に、振動の減衰比ζを変化させた時の振幅倍率と振動数比との関係、及び振動伝達率と振動数比との関係をそれぞれ、図4(a)及び(b)に示す。なお、振動数比は共振時の振動数との比で表わしたものである。また、振幅倍率は静的な力が加わったとき、つまり振動数比が0の時の変位との比で表わしたものである。振動伝達率も同様に静的な力が加わったときの伝達力との比で表わしたものである。
【0031】
図4(a)において振動数比が1付近となる場合では、減衰比ζが大きい程振幅倍率が小さい。一方、図4(b)においては、振動伝達率は振動数比が√2で減衰比ζに関わらず1となる。振動数比が√2以下では減衰比ζが大きい程伝達率は小さくなり、振動数比が√2以上では減衰比ζが小さい程伝達率は小さくなる。つまり、減衰比ζを大きくすると、共振近傍において外槽9の振幅や洗濯乾燥機の外への伝達力を小さくすることができるが、所定のドラム回転速度以上では伝達力が大きくなってしまう。従って、洗濯乾燥機のように振動数が変化する装置の場合、共振時の√2倍の回転速度を境に減衰比ζを変更することで伝達力を低減することができる。
【0032】
図5に示す制御系のブロック図を用いて、本開示に係る制御方法を説明する。
制御装置30は、制御部の一例であり、マイクロコンピュータ31を主体に構成され、運転制御を行う。制御装置30には、操作・表示パネル3、モータ10の回転速度を検出する回転速度検出部32、外槽9の振動を検出する振動検出装置9eなどが接続されている。振動検出装置9eの出力は振動量算出部33であらかじめ設定した、しきい値と比較される。また、回転速度検出部32の出力を回転速度算出部34で回転速度に変換する。制御装置30は各検出部から入力された出力やあらかじめ記録されている洗濯乾燥機の運転パターンに基づき、モータ10や切替えスイッチ24などの制御を行う。マイクロコンピュータ31が備えるメモリ36は、しきい値や設定値といった各種パラメータや制御プログラムを記憶している。
【0033】
発電装置制御部35は、回転速度算出部34によって求められるドラム8すなわちモータ10の回転速度と外槽9の振動量算出部33の出力を元に、切替えスイッチ24を切替えることで発電・振動減衰装置17の作用を、発電又は振動減衰に切替える。また、発電装置制御部35は、蓄電池26に蓄えられた電力を冷却ファン27やコイル20などに供給する制御を行う。
【0034】
ドラム8の回転速度があらかじめ設定した所定の回転速度(共振回転速度の√2倍程度で、ドラム式洗濯乾燥機の場合、一例として250〜500r/min程度)よりも小さい場合は、減衰力が大きい程、外槽9の振幅および筐体1や床面に伝わる力が小さくなる。そこで、発電装置制御部35は、回転速度算出部34の出力に基づいて上記所定の回転速度よりも小さいと判断した場合には、切替えスイッチ24の切り替えによりコイル20の両端を短絡し、発電・振動減衰装置17に減衰力を発生させ振動を抑制する。
【0035】
一方、ドラム8の回転速度が所定の回転速度よりも大きい場合は、減衰力が小さい程、筺体や床面に伝わる力が小さくなる。そこで、発電装置制御部35は、回転速度検出部32の出力に基づいて上記所定の回転速度よりも大きいと判断した場合には、切替えスイッチ24の切り替えによりコイル20に整流回路25を介して蓄電池26を接続し、発電を行う。このように制御することで、筺体や床に伝わる力を低減するとともに、発電を行うことができる。
【0036】
次に、発電・振動減衰装置17によって発電した電力の使用方法について述べる。
本開示の発電・振動減衰装置17は外槽9の振動によって発電するため、振動が発生する全ての運転工程で発電をすることが可能である。特に、脱水運転では振動の振幅が大きく、かつ回転数も高いため、発電効率が高い。
【0037】
洗濯乾燥機の場合、洗い、すすぎ、脱水工程中に発電した電力は蓄電池26に蓄えられ、乾燥工程中の乾燥ファン24aや乾燥ヒータ24bに使用することができる。一方、乾燥機能のない洗濯機の場合、洗い、すすぎ工程で発電した電力は蓄電池26に蓄えられ、制御装置30の冷却ファン27や操作・表示パネル3の電力として使用することができる。また、運転の最後に行う脱水運転では発電した電力を蓄電池26に蓄え、次回以降の運転時に使用することができる。
【0038】
また、洗濯機および洗濯乾燥機において、運転中は制御装置30の冷却ファン27や操作・表示パネル3の照明は常に使用されていることが多く、電力を消費している。そこで、発電した電力を冷却ファン27や操作・表示パネル3の電力として使用することで、発電量を変えることなく、蓄電池26の容量を小さくすることができる。
【0039】
このように、本開示の洗濯乾燥機は、洗濯乾燥機だけでなく、乾燥機能を有していない洗濯機にも適用可能である。
【0040】
蓄電池26の充電量は、制御装置30で監視し、充電量が最大とならないように制御を行う。充電量があらかじめ設定した値よりも多くなった場合、洗濯やすすぎ工程で使用する循環ポンプ(図示せず)や振動検出装置9eの電力として使用する。このように制御を行うことで蓄電池26の充電量を低下させ、蓄電池26の充電量が最大となり、発電した電力を蓄電できなくなることを防止することができる。脱水運転時には発電・振動減衰装置17に電力を供給することで、発電・振動減衰装置17の減衰力を増加させることができ、発電した電力を無駄にすることなく、より低振動な運転を行うことができる。
【0041】
本実施形態例における発電・振動減衰装置17の動作を、図6に示すフローチャートを用いて説明する。
制御装置30の制御の下、脱水を開始し、ステップS101で切替えスイッチ24によりコイル20を整流回路25を介して蓄電池26に接続し、発電する状態とする。ステップS102でドラム8の回転速度を上昇させる。ステップS103でドラム8の回転速度ωが所定の回転速度ω1と比較し、到達していなければ再度ドラム8の回転速度を上昇させる。ここで所定の回転速度ω1は共振回転速度よりも低い値とする。ドラム式洗濯乾燥機の場合は例えば80r/min〜150r/min程度となる。所定の回転速度ω1に到達した場合はステップS104に移行し、切替えスイッチ24を切替え、コイル20の両端を短絡もしくは接続する負荷を小さくし、発生する減衰力を大きくする。
【0042】
次に、ステップS105で回転速度を上昇させ、ステップS106でドラムの回転速度ωが所定の回転速度ω2以上であるか判定を行う。ここで所定の回転速度ω2は共振回転速度よりも大きい値とする。特に、√2倍程度であることが望ましく、ドラム式洗濯乾燥機の場合は300〜500r/minとなる場合が多い。所定の回転速度ω2よりも低い場合はステップS105に戻り、ドラム8の回転速度を上昇させる。所定の回転速度ω2よりも高い場合は次の工程に進む。
【0043】
回転速度が所定の回転速度ω2より高い場合は、ステップS107で切替えスイッチ24の切り替えを行い、コイル20の両端に整流回路25、蓄電池26を接続し発電を行う。次に、ステップS108でドラム8の回転速度を上昇させ、ステップS110でドラム8の回転速度が最終脱水回転速度ωfに到達しているか判定を行う。到達していない場合はステップS109に戻り、ドラム8の回転速度を上昇させる。ドラム8の回転速度が最終脱水回転速度ωfに到達している場合は、所定の脱水時間が経過したか判定し(ステップS110)、経過した場合はドラム8の回転を停止し(ステップS111)、終了する。
【0044】
本実施形態例では、コイル20の両端に整流回路25を介して蓄電池26を接続したが、整流回路25の先に直接冷却ファン27などの負荷を接続することで、蓄電池26を設置することなく電力を回収するようにしてもよい。あるいは、発電しない時は冷却ファン27を駆動する電力は商用電源から使い、発電する時は発電した電力を直接使用するように切り替えて使ってもよい。
【0045】
また、本実施形態例では減衰力を変化させる際に、切替えスイッチ24を用いて2段階に変えているが、コイル20の両端に可変抵抗などを接続し、任意に減衰力を切替えてもよい。
【0046】
次に、発電と振動減衰を切替える際の動作について述べる。
切り替え動作を行う際にコイル20と磁性体21の相対速度が大きいと、減衰力が切り替わった際に衝撃が発生してしまう。この衝撃は外槽9などに伝わり騒音の原因となる。そこで、外槽9の振動を測定する振動検出装置9eの出力からコイル20と磁性体21の相対速度を推定し、相対速度が所定の値以下となる場合に切り替えを行う。このようにすることで減衰力が切り替わる際の衝撃を低減することができる。
【0047】
本実施形態例では、発電・振動減衰装置17にオイル22による粘性減衰の機能を付加したが、必ずしもオイル22による減衰作用を持つ必要はない。また、磁性体21の外周に摺動部などを設け、シリンダ18と摺動部の摩擦による減衰作用を付加してもよい。
【0048】
上述した第1の実施形態例によれば、発電・振動減衰装置を有し、外槽の振動によって発電を行う構成を備え、発電した電力は蓄電池に蓄えられる。
これにより、例えば、洗い工程およびすすぎ工程中は、制御装置の冷却ファンや操作・表示パネル、循環ポンプなどの電力として使用することができる。脱水運転中においても制御装置の冷却ファンや操作・表示パネルの他に振動検出装置の電力などとしても利用することができる。また、乾燥工程では消費電力の大きい乾燥ファンや乾燥ヒータの電力として利用することができる。
それゆえ、商用電源からの電力の使用量を低減することができる。また、発電・振動減衰装置の負荷を変化させることで発電から減衰装置に切替えることができ、外槽の振動を抑制することが可能である。
【0049】
<2.第2の実施の形態>
第1の実施形態例ではドラム8の回転速度に応じた発電・振動減衰装置17の制御を行ったが、ドラム8の回転速度に関わらず、振動の大きさが小さい場合には振動を抑制する必要が小さいと判断し、発電・振動減衰装置17の作用を発電に切替えることで発電量を増加する、すなわち消費電力量を低減することが可能である。そこで、第2の実施形態例では、発電装置制御部35が振動量算出部33の出力に応じて切替えスイッチ24を制御する構成を採る。振動量算出部33の出力があらかじめ設定したしきい値よりも小さいと判断した場合には、切替えスイッチ24の切り替えによりコイル20に整流回路25を介して蓄電池26を接続し、発電を行う。一方、振動量算出部33の出力があらかじめ設定したしきい値よりも大きい場合には、切替えスイッチ24を切替えることで発電・振動減衰装置17に減衰作用を持たせる。
【0050】
本実施形態例の制御を、図7のフローチャートに示す。
制御装置30の制御の下、脱水を開始し、ステップS201で切替えスイッチ24を切替え、コイル20を整流回路25を介して蓄電池26に接続し、発電する状態とする。ステップS202で回転速度を上昇させる。ステップS203で振動検出装置9eの出力Vとあらかじめ設定したしきい値Sを比較し、出力Vがしきい値Sよりも大きい場合はステップS204に進む。しきい値Sを回転速度ごとに設定することで、より振動の小さい運転を行うことができる。ステップS204で切替えスイッチ24を切替え、コイル20の両端を短絡もしくは接続する負荷を小さくし、発生する減衰力を大きくする。
【0051】
一方、振動検出装置9eの出力Vがしきい値よりも小さい場合には、ステップS205で切替えスイッチ24の切り替えを行い、コイル20の両端に整流回路25を介して蓄電池26を接続し発電を行う。次に、ステップS206でドラム8の回転速度ωが最終脱水回転速度ωfに到達しているか判定を行い、到達していない場合はステップS202に戻り、ドラム8の回転速度を上昇させる。ドラム8の回転速度ωが最終脱水回転速度ωfに到達している場合は、所定の脱水時間が経過したか判定し(ステップS207)、経過した場合はドラムの回転を停止し(ステップS208)、終了する。このような運転制御を行うことで発電量を増やすことができる。
【0052】
次に、洗い、すすぎ運転時の動作について説明する。
洗い運転やすすぎ運転において、外槽9の振動は主に衣類の落下によって生じる。制御装置30は、振動検出装置9eの出力とあらかじめ設定したしきい値を比較し、しきい値以下と判断した場合には、切替えスイッチ24を切替え発電・振動減衰装置17で発電する。一方、しきい値以上と判断した場合には、床に伝わる振動を低減するために、切替えスイッチ24を切替え、振動を減衰する。このように本開示の発電・振動減衰装置17は脱水時以外においても発電を行うことができる。
【0053】
<3.第3の実施の形態>
次に、本開示に係る第3の実施形態例を説明する。
図8に、弾性支持部15の他の構成を示す。弾性支持部15は、防振支持部40と発電・振動減衰装置41とで構成される。防振支持部40は既存のオイルダンパや摩擦ダンパであり、伸縮する際に減衰力を発生する機構となっている。その他の発電回路17Aなどの構成は第1の実施例の形態と同様の構成にしている。
【0054】
本実施形態例では油圧ダンパを例として説明する。防振支持部40はシリンダ42と、ロッド43と、該ロッド43の先端に設置されたピストン44と、シリンダ42に封入されたオイル45によって構成される。シリンダ42内はピストン44によって2つに区切られている。ピストン44にはオイル45が通過するための流路46が配置されている。外槽9の振動によってピストン44が上下に振動するとオイル45が流路46を通過し、ピストンを挟んで反対側の部屋に移動する。この時に発生する流路抵抗によりロッドは速度ベクトルと逆向きの力を受け、振動が減衰する。
【0055】
発電・振動減衰装置41の磁性体47は、第1の実施形態例とは異なり流路を設けず、シリンダ18内にオイルは封入していない構成とする。発電・振動減衰装置41を防振支持部40に対して並列に、防振支持部40の伸縮に合わせて伸縮するように、接続部48を介して接続する。このような構成とすることによって、発電機能や減衰力調整機能を持たない防振支持部40に対して発電機能、減衰力切替え機能を持たせることが可能となる。また、このように防振支持部40の伸縮方向と発電・振動減衰装置17の伸縮方向を平行になるように接続することにより、発電・振動減衰装置17に掛かる横力が小さくなり、発電・振動減衰装置17の強度を低くすることができる。
【0056】
<4.第4の実施の形態>
次に、発電・振動減衰装置17を用いた振動検出について説明する。振動検出を行う場合の発電・振動減衰装置17の構成を、図9および図10に示す。
図9は、電流検出を行う場合の発電・振動減衰装置17の構成を示す。発電・振動減衰装置17の発電回路17Bに電流検出装置60を設ける。この電流検出装置60により外槽9の振動により発生した電流を測定する。発生する電流はコイル20と磁性体21の相対速度に比例する。従って、発生した電流を測定することで外槽9の振動を推定することができる。これにより、従来振動センサを設けて外槽9の振動を把握していたが、本実施形態例の構成とすることで振動センサを設置することなく外槽9の振動の把握が可能となる。
【0057】
また、切替えスイッチ24によって発電・振動減衰装置17の減衰力を切替える際に発生する衝撃を低減するために、切替えるタイミングはコイル20と磁性体21の相対速度が0に近い方が望ましいことを前述の実施形態例において述べた。本実施形態例の構成であれば、電流検出装置60の出力から上記相対速度を求めることが可能であるため、振動検出装置9eを用いることなく減衰力を切替えるタイミングを決めることができる。
【0058】
次に、図10に、電圧検出を行う場合の発電・振動減衰装置17の構成を示す。発電・振動減衰装置17の発電回路17Cに電圧検出装置61と抵抗62を設ける。この電圧検出装置61により外槽9の振動により発生した電圧を測定する。電圧検出装置63の出力から誘導起電力を求めることができる。誘導起電力はコイル20と磁性体21の相対速度に比例するため、測定した電圧から振動の大きさを求めることができる。これにより、従来振動センサを設けて外槽9の振動を把握していたが、本実施形態例の構成とすることで振動センサを設置することなく外槽9の振動の把握が可能となる。
【0059】
<5.その他>
なお、上述した第1〜第4の実施形態例における一連の処理は、ハードウェアにより実行することができるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ(MPU等)、または、各種の機能を実行するためのプログラムをインストールしたコンピュータにより、実行可能である。
【0060】
また、本明細書において、時系列的な処理を記述する処理ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)をも含むものである。
【0061】
以上、本開示は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の変形例、応用例を取り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
1…筐体、2…ドア、8…ドラム、9…外槽、9e…振動検出装置、10…モータ、15…弾性支持部、16…バネ、17…発電・振動減衰装置、17A〜17C…発電回路、18…コイル、19…磁性体、26…蓄電池、30…制御装置、32…回転速度検出部
【技術分野】
【0001】
本開示は、洗濯機に関するもので、例えば洗濯乾燥機のエネルギー効率の改善および低振動化の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温室効果ガスによる地球温暖化を抑制するために、化石燃料消費量の抑制や設備運用方法の改善・効率化等が促進されている。また、一般家庭においても、光熱費削減を目的とした省エネルギー化の意識が向上し、エネルギー効率のより高い家庭用電気製品がよく好まれている。
【0003】
洗濯乾燥機、例えばドラム式洗濯乾燥機は、略水平もしくは前方(衣類投入口)を上に向けて傾斜させたドラム内に衣類を投入して洗い、すすぎ、脱水、乾燥を行う。洗い、すすぎ、乾燥時にはドラムを低速で回転させ、ドラム下方に溜まった衣類を持ち上げて、ドラム上方から落下させるタンブリング動作を行う。このタンブリング動作により衣類に機械的な力を与えて洗浄を行っている。脱水時にはドラムを高速に回転させ、回転による遠心力で衣類から水分を衣類の外に押し出す遠心脱水を行う。なお、脱水時は振動が大きい程、エネルギーの損失が大きくなる。その後、加熱手段及び送風手段により、衣類に温風を吹き付け衣類に残った水分を蒸発させて乾燥を行う。
【0004】
このように、ドラムを回転させる動力、衣類を乾かすための加熱に必要な電力、乾燥ファンを運転させる動力として、電気エネルギーが必要になっている。特に、乾燥にかかる電力は大きく、省電力化が望まれている。(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−211386号公報
【特許文献2】特開2008−106830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1において太陽光発電装置は屋外に設置され、洗濯乾燥機は家の中に設置されることが多い。そのため、洗濯乾燥機に電力を供給するためには家の外と中をあらかじめつないだり、家の中もしくは壁の中に電線を配回したり、設備が大掛かりになるため望ましくない。
【0007】
また、特許文献2においても振動によって発電した電力が防振装置である動吸振器で消費されるため、洗濯乾燥機の消費電力を低減することができない。また、発電量によって動吸振器の防振性能が変わるため、減衰力を任意に変更することができない。
【0008】
本開示は、上記の状況を考慮してなされたものであり、商用電源の使用量を低減するとともに外槽の振動を低減し、乾燥機のエネルギー効率の改善および低振動化を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示では、洗い運転や脱水運転時などにおける外槽の振動をエネルギーに変換するものを提供する。
具体的には、衣類を収容するドラムと、前記ドラムを内包する外槽と、前記ドラムを回転駆動する駆動機構と、前記外槽を覆う筺体を有し、前記外槽を前記筺体に弾性支持する弾性支持部を有する洗濯乾燥機において、前記弾性支持部は、円筒状のシリンダと、前記シリンダ内を摺動するロッドと、前記シリンダの外周に配置されたコイルと、ロッドの先端に接続された磁性体、前記コイルの両端に接続する負荷の量を調整する負荷量調節部と、発電部からなり、外槽が振動するとシリンダ内をロッドが摺動する構成となっている。
弾性支持部は、負荷量調節部によってコイル両端の負荷を大きくすることで発電部による発電を行い、コイル両端の負荷を小さくすることで外槽の振動を低減することが可能である。このように負荷量調節部によって任意に発電と振動減衰を切替える構成とする。
【0010】
また、一例として負荷量調節部によって、ドラムの回転速度に応じて発電と振動減衰を切替えるようにしてもよい。例えば減衰力が必要となる共振回転速度付近でドラムが回転する場合、コイル両端の負荷を小さくすることで減衰力を発生させる。一方、共振回転速度付近以外でドラムが回転する場合、コイル両端の負荷を大きくして発電を行う。
【0011】
また、コイルの両端に蓄電池を接続することで発電した電力を蓄電し、必要に応じて制御装置の冷却ファンや乾燥ヒータなどに供給するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、発電・振動減衰装置を有し、外槽の振動に応じて発電を行うことができる。また発電・振動減衰装置の負荷を変化させることで発電から減衰装置に切替えることができ、外槽の振動を抑制することができる。
それにより、商用電源の使用量を低減するとともに外槽の振動を低減し、洗濯乾燥機のエネルギー効率の改善および低振動化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本開示の第1の実施形態に係る洗濯乾燥機を示す斜視図である。
【図2】本開示の第1の実施形態に係る洗濯乾燥機を示す右側面断面図である。
【図3】本開示の第1の実施形態に係る洗濯乾燥機の発電・振動減衰装置を示す図である。
【図4】(a),(b)は、一般的な振動の減衰力と伝達率の関係を示す図である。
【図5】本開示の第1の実施形態に係る洗濯乾燥機の制御部を示すブロック図である。
【図6】本開示の第1の実施形態に係る洗濯乾燥機の脱水運転を示すフローチャートである。
【図7】本開示の第2の実施形態に係る洗濯乾燥機の脱水運転を示すフローチャートである。
【図8】本開示の第3の実施形態に係る発電・振動減衰装置を示す図である。
【図9】本開示の第4の実施形態に係る発電・振動減衰装置を示す図である。
【図10】本開示の第4の実施形態に係る発電・振動減衰装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示を実施するための形態の例について、添付図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0015】
<1.第1の実施の形態>
以下、本開示の実施形態の例(以下、「実施形態例」ともいう。)について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態例に関わる洗濯乾燥機の外観図である。図2は、内部の構造を示すために筐体の一部を切断して示した側面図である。
【0016】
本実施形態では、洗濯乾燥機として、主にドラム式洗濯乾燥機に適用した例を説明する。
ドラム式洗濯乾燥機の外郭を構成する筐体1は、ベース1aの上に取り付けられており、左右の側板1b、前面カバー1c、背面カバー(図示せず)、上面カバー1d、下部前面カバー1fで構成されている。左右の側板1bは、コの字型の上補強材(図示せず)、前補強材(図示せず)、後補強材(図示せず)で結合されており、ベース1aを含めて箱状の筐体1を形成し、筐体として十分な強度を有している。
【0017】
ドア2は、前面カバー1cの略中央に設けた衣類を出し入れするための投入口を塞ぐためのもので、前補強材に設けたヒンジで開閉可能に支持されている。ドア開放ボタン2aを押すことでロック機構(図示せず)が外れてドアが開き、ドア2を前面カバー1cに押し付けることでロックされて閉じる。前補強材は、後述する外槽9の開口部と同心に、衣類を出し入れするための円形の開口部を有している。
【0018】
筐体1の上部中央に設けた操作・表示パネル3は、電源スイッチ4、操作スイッチ5、表示器6を備える。操作・表示パネル3は筐体1下部に設けた制御装置30に電気的に接続している。制御装置30には冷却ファン27が取り付けられている。
【0019】
図2に示すドラム8は、回転可能に支持されており、その外周壁および底壁に通水および通風のための多数の貫通孔を有し、前側端面に衣類を出し入れするための開口部8aを設けてある。開口部8aの外側にはドラム8と一体の流体バランサ8bを備えている。外周壁の内側には軸方向に延びるリフタ8cが複数個設けてあり、洗濯、乾燥時にドラム8を回転すると、衣類はリフタ8cと遠心力で外周壁に沿って持ち上がり、重力で落下するように動きを繰り返す。ドラム8の回転中心軸は、水平または開口部8a側が高くなるように傾斜している。
【0020】
円筒状の外槽9は、水槽9aと槽カバー9bで構成される。水槽9aの前方の開口部には槽カバー9bを設け、外槽9への貯水を可能にしている。外槽9はドラム8を同軸上に内包し、後側端面の外側中央にモータ10(駆動機構の一例)が取り付けられている。モータ10の回転軸は外槽9を貫通し、ドラム8と結合している。なお、外槽9の前側中央には、衣類を出し入れするための開口部9cを有している。
【0021】
外槽9の開口部9cと前補強材(図示せず)に設けた開口部は、ゴム製のパッキンであるベローズ11で接続しており、ドア2を閉じることで外槽9を水封する。外槽9の底面最下部には、排水口9dが設けてあり、排水ホース12が接続している。排水ホース12の途中には排水弁(図示せず)が設けてあり、排水弁を閉じて給水することで外槽9に水を溜め、排水弁を開いて外槽9内の水を機外へ排出する。外槽9の下部には振動検出装置9eを設けており、外槽9の振幅を測定している。測定した振幅とあらかじめ設定しているしきい値を比較し、振幅が大きい場合にはドラム8の回転を停止させて、安全な動作を行う構成としている。また、外槽9の前方にはカウンタウェイト9fが設置されており、カウンタウェイト9fを用いて外槽9の重量や慣性モーメントを増加させることで、衣類の偏りが発生した時の振動を低減している。
【0022】
乾燥ダクト13は、筐体1の背面内側に縦方向に設置され、該乾燥ダクト13の下部は外槽9の背面下方に設けた吸気口(図示せず)にゴム製のパッキン13aで接続される。乾燥ダクト13の上部は送風ユニット14に接続されている。送風ユニット14は筐体1の上部に前後方向に設置されており、送風用の乾燥ファン14aや乾燥ヒータ14bが組み込まれている。送風ユニット14の前方はゴム製のパッキン14cで外槽9の温風吹き出し口9gに接続されている。乾燥ファン14aにより乾燥ヒータ14bに風を送り、温風吹き出し口9gからドラム8内に温風を吹き付けることで衣類の乾燥を行う。
【0023】
外槽9は、下側をベース1aに固定された左右一対の弾性支持部15(防振支持機構の一例)によって防振支持されている。弾性支持部15は、バネ16(弾性部)と発電・振動減衰装置17で構成される。弾性部は、バネに限定されるものではなく、弾性を有する部材であれば油圧を利用するものなど種々の部材(手段)を適用できる。
【0024】
図3に、発電・振動減衰装置17の拡大図を示す。
発電・振動減衰装置17はシリンダ18と、ロッド19(軸)と、シリンダ18の外周に設置されたコイル20と、ロッド19の先端に設置された磁性体21と、コイル20に接続する発電回路17A(発電部の一例)によって構成される。シリンダ18の内部にはオイル22が封入されている。磁性体21には流路23が設けられており、シリンダ18とロッド19が相対運動した時に、オイル22が流路23を通過する構造となっている。オイル22が流路23を通過するときに生じる抵抗によって、シリンダ18は相対速度と逆向きの力を受けることになり、振動が減衰する。
【0025】
また、コイル20には発電回路17Aの切替えスイッチ24と整流回路25が接続されている。切替えスイッチ24は、負荷量調節部の一例であり、この切替えスイッチ24を切替えることによりコイル20の両端を短絡するか、整流回路25に接続するかを切替える。また整流回路25は蓄電池26に接続しており、整流回路25に流れる電流を蓄電する。蓄電池26には制御装置30の冷却ファン27などが接続され、蓄えられた電力を冷却ファン27等へ供給する。
【0026】
蓄電池26は筐体1に設置しても構わないが、カウンタウェイト9fの代わりに外槽9に設置することで、全体の重量を増加することなく、蓄電池26を設置することが可能となる。
【0027】
次に、発電・振動減衰装置17の動作について説明する。
洗濯時の衣類の落下や脱水時の衣類の偏りによって発生する遠心力によって外槽9が振動すると、外槽9に接続されているシリンダ18と筐体1に接続されている磁性体21が相対運動を行う。相対速度が生じた際にシリンダ18内のオイル22が磁性体21の流路23を通過する。この時に発生する流路抵抗によりシリンダ18は速度ベクトルと逆方向に力を受ける。これにより振動が減衰する。
【0028】
また、外槽9が振動すると、ロッド19に接続された磁性体21がシリンダ18内を往復運動し、コイル20との間に相対速度が生じる。この時、コイル20の両端が切替えスイッチ24によって短絡されている場合、コイル20には誘導起電力が生じ、磁性体21の運動を妨げる磁界が発生する。これにより、外槽9の振動を抑制することが可能となる。
【0029】
一方、切替えスイッチ24によって負荷(蓄電池26など)が接続された場合、発生した誘導起電力は蓄電池26に蓄えられる。この時発生する減衰力はコイル20の両端を短絡した場合よりも小さくなる。このように、切替えスイッチ24の切り替えにより、発電・振動減衰装置17の作用を発電と振動減衰に切替えることが可能である。発電された電力は制御装置30に接続された冷却ファン27などの電力として利用することができる。また、コイル20に対し磁性体21の運動を妨げる磁界が発生する向きに電流を流すことで、より大きな減衰力を発生させることができる。
【0030】
次に、振動の減衰比ζを変化させた時の振幅倍率と振動数比との関係、及び振動伝達率と振動数比との関係をそれぞれ、図4(a)及び(b)に示す。なお、振動数比は共振時の振動数との比で表わしたものである。また、振幅倍率は静的な力が加わったとき、つまり振動数比が0の時の変位との比で表わしたものである。振動伝達率も同様に静的な力が加わったときの伝達力との比で表わしたものである。
【0031】
図4(a)において振動数比が1付近となる場合では、減衰比ζが大きい程振幅倍率が小さい。一方、図4(b)においては、振動伝達率は振動数比が√2で減衰比ζに関わらず1となる。振動数比が√2以下では減衰比ζが大きい程伝達率は小さくなり、振動数比が√2以上では減衰比ζが小さい程伝達率は小さくなる。つまり、減衰比ζを大きくすると、共振近傍において外槽9の振幅や洗濯乾燥機の外への伝達力を小さくすることができるが、所定のドラム回転速度以上では伝達力が大きくなってしまう。従って、洗濯乾燥機のように振動数が変化する装置の場合、共振時の√2倍の回転速度を境に減衰比ζを変更することで伝達力を低減することができる。
【0032】
図5に示す制御系のブロック図を用いて、本開示に係る制御方法を説明する。
制御装置30は、制御部の一例であり、マイクロコンピュータ31を主体に構成され、運転制御を行う。制御装置30には、操作・表示パネル3、モータ10の回転速度を検出する回転速度検出部32、外槽9の振動を検出する振動検出装置9eなどが接続されている。振動検出装置9eの出力は振動量算出部33であらかじめ設定した、しきい値と比較される。また、回転速度検出部32の出力を回転速度算出部34で回転速度に変換する。制御装置30は各検出部から入力された出力やあらかじめ記録されている洗濯乾燥機の運転パターンに基づき、モータ10や切替えスイッチ24などの制御を行う。マイクロコンピュータ31が備えるメモリ36は、しきい値や設定値といった各種パラメータや制御プログラムを記憶している。
【0033】
発電装置制御部35は、回転速度算出部34によって求められるドラム8すなわちモータ10の回転速度と外槽9の振動量算出部33の出力を元に、切替えスイッチ24を切替えることで発電・振動減衰装置17の作用を、発電又は振動減衰に切替える。また、発電装置制御部35は、蓄電池26に蓄えられた電力を冷却ファン27やコイル20などに供給する制御を行う。
【0034】
ドラム8の回転速度があらかじめ設定した所定の回転速度(共振回転速度の√2倍程度で、ドラム式洗濯乾燥機の場合、一例として250〜500r/min程度)よりも小さい場合は、減衰力が大きい程、外槽9の振幅および筐体1や床面に伝わる力が小さくなる。そこで、発電装置制御部35は、回転速度算出部34の出力に基づいて上記所定の回転速度よりも小さいと判断した場合には、切替えスイッチ24の切り替えによりコイル20の両端を短絡し、発電・振動減衰装置17に減衰力を発生させ振動を抑制する。
【0035】
一方、ドラム8の回転速度が所定の回転速度よりも大きい場合は、減衰力が小さい程、筺体や床面に伝わる力が小さくなる。そこで、発電装置制御部35は、回転速度検出部32の出力に基づいて上記所定の回転速度よりも大きいと判断した場合には、切替えスイッチ24の切り替えによりコイル20に整流回路25を介して蓄電池26を接続し、発電を行う。このように制御することで、筺体や床に伝わる力を低減するとともに、発電を行うことができる。
【0036】
次に、発電・振動減衰装置17によって発電した電力の使用方法について述べる。
本開示の発電・振動減衰装置17は外槽9の振動によって発電するため、振動が発生する全ての運転工程で発電をすることが可能である。特に、脱水運転では振動の振幅が大きく、かつ回転数も高いため、発電効率が高い。
【0037】
洗濯乾燥機の場合、洗い、すすぎ、脱水工程中に発電した電力は蓄電池26に蓄えられ、乾燥工程中の乾燥ファン24aや乾燥ヒータ24bに使用することができる。一方、乾燥機能のない洗濯機の場合、洗い、すすぎ工程で発電した電力は蓄電池26に蓄えられ、制御装置30の冷却ファン27や操作・表示パネル3の電力として使用することができる。また、運転の最後に行う脱水運転では発電した電力を蓄電池26に蓄え、次回以降の運転時に使用することができる。
【0038】
また、洗濯機および洗濯乾燥機において、運転中は制御装置30の冷却ファン27や操作・表示パネル3の照明は常に使用されていることが多く、電力を消費している。そこで、発電した電力を冷却ファン27や操作・表示パネル3の電力として使用することで、発電量を変えることなく、蓄電池26の容量を小さくすることができる。
【0039】
このように、本開示の洗濯乾燥機は、洗濯乾燥機だけでなく、乾燥機能を有していない洗濯機にも適用可能である。
【0040】
蓄電池26の充電量は、制御装置30で監視し、充電量が最大とならないように制御を行う。充電量があらかじめ設定した値よりも多くなった場合、洗濯やすすぎ工程で使用する循環ポンプ(図示せず)や振動検出装置9eの電力として使用する。このように制御を行うことで蓄電池26の充電量を低下させ、蓄電池26の充電量が最大となり、発電した電力を蓄電できなくなることを防止することができる。脱水運転時には発電・振動減衰装置17に電力を供給することで、発電・振動減衰装置17の減衰力を増加させることができ、発電した電力を無駄にすることなく、より低振動な運転を行うことができる。
【0041】
本実施形態例における発電・振動減衰装置17の動作を、図6に示すフローチャートを用いて説明する。
制御装置30の制御の下、脱水を開始し、ステップS101で切替えスイッチ24によりコイル20を整流回路25を介して蓄電池26に接続し、発電する状態とする。ステップS102でドラム8の回転速度を上昇させる。ステップS103でドラム8の回転速度ωが所定の回転速度ω1と比較し、到達していなければ再度ドラム8の回転速度を上昇させる。ここで所定の回転速度ω1は共振回転速度よりも低い値とする。ドラム式洗濯乾燥機の場合は例えば80r/min〜150r/min程度となる。所定の回転速度ω1に到達した場合はステップS104に移行し、切替えスイッチ24を切替え、コイル20の両端を短絡もしくは接続する負荷を小さくし、発生する減衰力を大きくする。
【0042】
次に、ステップS105で回転速度を上昇させ、ステップS106でドラムの回転速度ωが所定の回転速度ω2以上であるか判定を行う。ここで所定の回転速度ω2は共振回転速度よりも大きい値とする。特に、√2倍程度であることが望ましく、ドラム式洗濯乾燥機の場合は300〜500r/minとなる場合が多い。所定の回転速度ω2よりも低い場合はステップS105に戻り、ドラム8の回転速度を上昇させる。所定の回転速度ω2よりも高い場合は次の工程に進む。
【0043】
回転速度が所定の回転速度ω2より高い場合は、ステップS107で切替えスイッチ24の切り替えを行い、コイル20の両端に整流回路25、蓄電池26を接続し発電を行う。次に、ステップS108でドラム8の回転速度を上昇させ、ステップS110でドラム8の回転速度が最終脱水回転速度ωfに到達しているか判定を行う。到達していない場合はステップS109に戻り、ドラム8の回転速度を上昇させる。ドラム8の回転速度が最終脱水回転速度ωfに到達している場合は、所定の脱水時間が経過したか判定し(ステップS110)、経過した場合はドラム8の回転を停止し(ステップS111)、終了する。
【0044】
本実施形態例では、コイル20の両端に整流回路25を介して蓄電池26を接続したが、整流回路25の先に直接冷却ファン27などの負荷を接続することで、蓄電池26を設置することなく電力を回収するようにしてもよい。あるいは、発電しない時は冷却ファン27を駆動する電力は商用電源から使い、発電する時は発電した電力を直接使用するように切り替えて使ってもよい。
【0045】
また、本実施形態例では減衰力を変化させる際に、切替えスイッチ24を用いて2段階に変えているが、コイル20の両端に可変抵抗などを接続し、任意に減衰力を切替えてもよい。
【0046】
次に、発電と振動減衰を切替える際の動作について述べる。
切り替え動作を行う際にコイル20と磁性体21の相対速度が大きいと、減衰力が切り替わった際に衝撃が発生してしまう。この衝撃は外槽9などに伝わり騒音の原因となる。そこで、外槽9の振動を測定する振動検出装置9eの出力からコイル20と磁性体21の相対速度を推定し、相対速度が所定の値以下となる場合に切り替えを行う。このようにすることで減衰力が切り替わる際の衝撃を低減することができる。
【0047】
本実施形態例では、発電・振動減衰装置17にオイル22による粘性減衰の機能を付加したが、必ずしもオイル22による減衰作用を持つ必要はない。また、磁性体21の外周に摺動部などを設け、シリンダ18と摺動部の摩擦による減衰作用を付加してもよい。
【0048】
上述した第1の実施形態例によれば、発電・振動減衰装置を有し、外槽の振動によって発電を行う構成を備え、発電した電力は蓄電池に蓄えられる。
これにより、例えば、洗い工程およびすすぎ工程中は、制御装置の冷却ファンや操作・表示パネル、循環ポンプなどの電力として使用することができる。脱水運転中においても制御装置の冷却ファンや操作・表示パネルの他に振動検出装置の電力などとしても利用することができる。また、乾燥工程では消費電力の大きい乾燥ファンや乾燥ヒータの電力として利用することができる。
それゆえ、商用電源からの電力の使用量を低減することができる。また、発電・振動減衰装置の負荷を変化させることで発電から減衰装置に切替えることができ、外槽の振動を抑制することが可能である。
【0049】
<2.第2の実施の形態>
第1の実施形態例ではドラム8の回転速度に応じた発電・振動減衰装置17の制御を行ったが、ドラム8の回転速度に関わらず、振動の大きさが小さい場合には振動を抑制する必要が小さいと判断し、発電・振動減衰装置17の作用を発電に切替えることで発電量を増加する、すなわち消費電力量を低減することが可能である。そこで、第2の実施形態例では、発電装置制御部35が振動量算出部33の出力に応じて切替えスイッチ24を制御する構成を採る。振動量算出部33の出力があらかじめ設定したしきい値よりも小さいと判断した場合には、切替えスイッチ24の切り替えによりコイル20に整流回路25を介して蓄電池26を接続し、発電を行う。一方、振動量算出部33の出力があらかじめ設定したしきい値よりも大きい場合には、切替えスイッチ24を切替えることで発電・振動減衰装置17に減衰作用を持たせる。
【0050】
本実施形態例の制御を、図7のフローチャートに示す。
制御装置30の制御の下、脱水を開始し、ステップS201で切替えスイッチ24を切替え、コイル20を整流回路25を介して蓄電池26に接続し、発電する状態とする。ステップS202で回転速度を上昇させる。ステップS203で振動検出装置9eの出力Vとあらかじめ設定したしきい値Sを比較し、出力Vがしきい値Sよりも大きい場合はステップS204に進む。しきい値Sを回転速度ごとに設定することで、より振動の小さい運転を行うことができる。ステップS204で切替えスイッチ24を切替え、コイル20の両端を短絡もしくは接続する負荷を小さくし、発生する減衰力を大きくする。
【0051】
一方、振動検出装置9eの出力Vがしきい値よりも小さい場合には、ステップS205で切替えスイッチ24の切り替えを行い、コイル20の両端に整流回路25を介して蓄電池26を接続し発電を行う。次に、ステップS206でドラム8の回転速度ωが最終脱水回転速度ωfに到達しているか判定を行い、到達していない場合はステップS202に戻り、ドラム8の回転速度を上昇させる。ドラム8の回転速度ωが最終脱水回転速度ωfに到達している場合は、所定の脱水時間が経過したか判定し(ステップS207)、経過した場合はドラムの回転を停止し(ステップS208)、終了する。このような運転制御を行うことで発電量を増やすことができる。
【0052】
次に、洗い、すすぎ運転時の動作について説明する。
洗い運転やすすぎ運転において、外槽9の振動は主に衣類の落下によって生じる。制御装置30は、振動検出装置9eの出力とあらかじめ設定したしきい値を比較し、しきい値以下と判断した場合には、切替えスイッチ24を切替え発電・振動減衰装置17で発電する。一方、しきい値以上と判断した場合には、床に伝わる振動を低減するために、切替えスイッチ24を切替え、振動を減衰する。このように本開示の発電・振動減衰装置17は脱水時以外においても発電を行うことができる。
【0053】
<3.第3の実施の形態>
次に、本開示に係る第3の実施形態例を説明する。
図8に、弾性支持部15の他の構成を示す。弾性支持部15は、防振支持部40と発電・振動減衰装置41とで構成される。防振支持部40は既存のオイルダンパや摩擦ダンパであり、伸縮する際に減衰力を発生する機構となっている。その他の発電回路17Aなどの構成は第1の実施例の形態と同様の構成にしている。
【0054】
本実施形態例では油圧ダンパを例として説明する。防振支持部40はシリンダ42と、ロッド43と、該ロッド43の先端に設置されたピストン44と、シリンダ42に封入されたオイル45によって構成される。シリンダ42内はピストン44によって2つに区切られている。ピストン44にはオイル45が通過するための流路46が配置されている。外槽9の振動によってピストン44が上下に振動するとオイル45が流路46を通過し、ピストンを挟んで反対側の部屋に移動する。この時に発生する流路抵抗によりロッドは速度ベクトルと逆向きの力を受け、振動が減衰する。
【0055】
発電・振動減衰装置41の磁性体47は、第1の実施形態例とは異なり流路を設けず、シリンダ18内にオイルは封入していない構成とする。発電・振動減衰装置41を防振支持部40に対して並列に、防振支持部40の伸縮に合わせて伸縮するように、接続部48を介して接続する。このような構成とすることによって、発電機能や減衰力調整機能を持たない防振支持部40に対して発電機能、減衰力切替え機能を持たせることが可能となる。また、このように防振支持部40の伸縮方向と発電・振動減衰装置17の伸縮方向を平行になるように接続することにより、発電・振動減衰装置17に掛かる横力が小さくなり、発電・振動減衰装置17の強度を低くすることができる。
【0056】
<4.第4の実施の形態>
次に、発電・振動減衰装置17を用いた振動検出について説明する。振動検出を行う場合の発電・振動減衰装置17の構成を、図9および図10に示す。
図9は、電流検出を行う場合の発電・振動減衰装置17の構成を示す。発電・振動減衰装置17の発電回路17Bに電流検出装置60を設ける。この電流検出装置60により外槽9の振動により発生した電流を測定する。発生する電流はコイル20と磁性体21の相対速度に比例する。従って、発生した電流を測定することで外槽9の振動を推定することができる。これにより、従来振動センサを設けて外槽9の振動を把握していたが、本実施形態例の構成とすることで振動センサを設置することなく外槽9の振動の把握が可能となる。
【0057】
また、切替えスイッチ24によって発電・振動減衰装置17の減衰力を切替える際に発生する衝撃を低減するために、切替えるタイミングはコイル20と磁性体21の相対速度が0に近い方が望ましいことを前述の実施形態例において述べた。本実施形態例の構成であれば、電流検出装置60の出力から上記相対速度を求めることが可能であるため、振動検出装置9eを用いることなく減衰力を切替えるタイミングを決めることができる。
【0058】
次に、図10に、電圧検出を行う場合の発電・振動減衰装置17の構成を示す。発電・振動減衰装置17の発電回路17Cに電圧検出装置61と抵抗62を設ける。この電圧検出装置61により外槽9の振動により発生した電圧を測定する。電圧検出装置63の出力から誘導起電力を求めることができる。誘導起電力はコイル20と磁性体21の相対速度に比例するため、測定した電圧から振動の大きさを求めることができる。これにより、従来振動センサを設けて外槽9の振動を把握していたが、本実施形態例の構成とすることで振動センサを設置することなく外槽9の振動の把握が可能となる。
【0059】
<5.その他>
なお、上述した第1〜第4の実施形態例における一連の処理は、ハードウェアにより実行することができるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ(MPU等)、または、各種の機能を実行するためのプログラムをインストールしたコンピュータにより、実行可能である。
【0060】
また、本明細書において、時系列的な処理を記述する処理ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)をも含むものである。
【0061】
以上、本開示は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の変形例、応用例を取り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
1…筐体、2…ドア、8…ドラム、9…外槽、9e…振動検出装置、10…モータ、15…弾性支持部、16…バネ、17…発電・振動減衰装置、17A〜17C…発電回路、18…コイル、19…磁性体、26…蓄電池、30…制御装置、32…回転速度検出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内において衣類を収容するドラムと、
前記ドラムを内包する外槽と、
前記ドラムを回転駆動する駆動機構と、
前記外槽を前記筐体に弾性支持する防振支持機構と、を有し、
前記防振支持機構は、弾性部と発電・振動減衰装置で構成され、
前記発電・振動減衰装置は、筒状をなすシリンダと、前記シリンダに相対的に直線往復動可能に支持されたロッドと、前記ロッドに設置された磁性体と、前記シリンダに設置されたコイルと、前記コイルの両端に接続する負荷の大きさを調節する負荷量調節部と、発電を行う発電部で構成され、
前記負荷量調節部により前記コイルの両端に接続する負荷を大きくすることで前記発電・振動減衰装置に発電作用を持たせ、また前記コイルの両端に掛かる負荷を小さくする、もしくは短絡することで前記発電・振動減衰装置に振動減衰作用を持たせることにより、前記発電作用と前記振動減衰作用を切替える
洗濯機。
【請求項2】
前記ドラムの回転速度を検出する回転速度検出部を有し、前記ドラムの回転速度に応じて前記発電作用と前記振動減衰作用を切替える
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記外槽の振動を検出する振動検出装置を有し、前記外槽の振動に応じて前記発電作用と前記振動減衰作用を切替える
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記発電・振動減衰装置により発電された電力を蓄える蓄電装置を備える
請求項2に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記発電・振動減衰装置の発電部で発電した起電力を測定する電圧測定装置もしくは前記起電力に応じた電流を測定する電流測定装置を、さらに有し、
前記振動検出装置は、前記電圧測定装置もしくは電流測定装置の出力から前記外槽の振動の振幅を推定する
請求項3に記載の洗濯機。
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内において衣類を収容するドラムと、
前記ドラムを内包する外槽と、
前記ドラムを回転駆動する駆動機構と、
前記外槽を前記筐体に弾性支持する防振支持機構と、を有し、
前記防振支持機構は、弾性部と発電・振動減衰装置で構成され、
前記発電・振動減衰装置は、筒状をなすシリンダと、前記シリンダに相対的に直線往復動可能に支持されたロッドと、前記ロッドに設置された磁性体と、前記シリンダに設置されたコイルと、前記コイルの両端に接続する負荷の大きさを調節する負荷量調節部と、発電を行う発電部で構成され、
前記負荷量調節部により前記コイルの両端に接続する負荷を大きくすることで前記発電・振動減衰装置に発電作用を持たせ、また前記コイルの両端に掛かる負荷を小さくする、もしくは短絡することで前記発電・振動減衰装置に振動減衰作用を持たせることにより、前記発電作用と前記振動減衰作用を切替える
洗濯機。
【請求項2】
前記ドラムの回転速度を検出する回転速度検出部を有し、前記ドラムの回転速度に応じて前記発電作用と前記振動減衰作用を切替える
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記外槽の振動を検出する振動検出装置を有し、前記外槽の振動に応じて前記発電作用と前記振動減衰作用を切替える
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記発電・振動減衰装置により発電された電力を蓄える蓄電装置を備える
請求項2に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記発電・振動減衰装置の発電部で発電した起電力を測定する電圧測定装置もしくは前記起電力に応じた電流を測定する電流測定装置を、さらに有し、
前記振動検出装置は、前記電圧測定装置もしくは電流測定装置の出力から前記外槽の振動の振幅を推定する
請求項3に記載の洗濯機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−245330(P2012−245330A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121903(P2011−121903)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】
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