説明

活性種の生成方法及び生成装置

【課題】過酸化水素の注入や紫外線の照射を行なうことなく活性種を生成し、且つ活性種の生成率を制御可能な活性種の生成方法及び生成装置を提供する。
【解決手段】供給されるガスに電圧を印加することによって液外から液中に伸展する放電により活性種を生成する方法において、前記電圧を印加する際の周波数を制御することにより活性種の生成率を制御する。尚、前記活性種の生成率の制御の際には、周波数3〜24kHzが使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電により活性種を生成する方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、上下水処理施設、化学工場、薬品工場、食品工場等において、細菌類、カビ類および酵母などの殺菌、アルデヒド、イオウ化合物、窒素化合物等の臭気物質の脱臭、し尿や染料廃液の脱色、有機溶剤などの有害物質を無害化するためにオゾン・活性種による処理が多く提案されている。とりわけオゾンよりも酸化力の強いOHラジカルと呼ばれる活性種を水中に生成させ、このOHラジカルを用いて分解処理を行なう、促進酸化処理(AOP、Advanced Oxidation Process)の技術開発が行なわれている。
【0003】
このようなオゾン・活性種による促進酸化処理技術には、オゾンと過酸化水素の作用を利用したものがあり、提案されている手法ではTOC除去量に対して過酸化水素を添加し、オゾン処理の後段ほど過酸化水素の添加量を減らしていき、活性種の生成の制御がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、オゾンとUV(紫外線)を利用したものもあり、提案されている手法においては、オゾン処理の後段にUV装置を設置し、UV強度計や溶存オゾン濃度計を用いてUV照射を制御し、活性種の生成を制御している(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
このような過酸化水素や紫外線を用いる手法においては、過酸化水素の注入設備や、紫外線の照射設備をオゾン処理設備に併設する必要がある。過酸化水素は消防法第2条第7項及び別表第1第6類2号により危険物第6類(酸化性液体)に指定されている。また、重量%で6%を越える濃度の水溶液は毒物及び劇物取締法により劇物に指定されているため、十分な安全対策を行なう必要がある。
【0006】
また、UVを照射する場合、活性種の生成量はUVの照射線量に影響を受け、設備が大きくなるほど適切なUV照射を行なうことは困難になる。
【0007】
そして、オゾン処理に加えて過酸化水素の注入や紫外線の照射を行なうという操作が加わるため、システムが複雑化するといった問題が考えられる。
【0008】
さらに、オゾン・活性種による処理を行なうために液中放電を利用した手法が提案されており、提案されている手法では、対向するように配設された線状電極と平板電極との間にパルスパワーを印加することによって、電極間に満たされた水道水中にストリーマ状放電及びアーク放電を生成させる。このストリーマ状放電及びアーク放電により、活性種、オゾン、紫外線、衝撃波等が生成される。こうして生成された各種活性種によって、液体中に含まれる有機物や細菌等の汚染物が分解処理されることになる(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
ところが、この手法では、オゾンと活性種の使い分けができず、被処理物に応じて最適な活性種の生成の制御が困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−267077号公報
【特許文献2】特開2000−51875号公報
【特許文献3】特開2001−104958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記過酸化水素や紫外線を用いる手法においては、過酸化水素の注入設備や、紫外線の照射設備をオゾン処理設備に併設する必要があり、且つシステムが複雑化するといった問題が生じている。
【0012】
前記液中放電においては、活性種が生成されるものの、オゾンと活性種の使い分けができず、活性種の生成の制御が困難といった問題がある。
【0013】
本発明は、以上のような従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、過酸化水素の注入や紫外線の照射を行なうという操作を伴なうことなく活性種を生成し、且つ活性種の生成率の制御可能な活性種の生成方法及び生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
供給されるガスに電圧を印加することによって液外から液中に伸展する放電により活性種を生成する方法において、前記電圧を印加する際の周波数を制御することによって活性種の生成率を制御することを第1の特徴とする。
【0015】
前記放電がストリーマ状放電、アーク放電、火花放電、コロナ放電、グロ−放電、プラズマ生成放電、誘電体バリア放電、沿面放電のうち少なくとも一つの放電形態を含むことを第2の特徴とし、前記周波数が3〜24kHzの間で制御されることを第3の特徴とする。
【0016】
前記活性種がOHラジカルであることを第4の特徴とし、前記ガスが少なくとも酸素を含むガスであることを第5の特徴とする。
【0017】
液接する液相側と、気体と接する気相側を有し酸化アルミニウム・二酸化ケイ素のうちの少なくとも1種である多孔質構造体と、前記多孔質構造体の気相側に密設される電極と、前記多孔質構造体の気相側から任意のガスを供給する圧入手段と、前記電極に交流電圧を印加する電源とを備え、前記電極に交流電圧を印加することによって、前記多孔質構造体の少なくとも微細孔内で生じる微細気泡内で放電を生起せしめる活性種の生成装置において、前記電源は制御部を備え、前記電圧を印加する際の周波数を制御することにより活性種の生成率を制御することを第6の特徴とする。
【0018】
前記装置において、前記放電がストリーマ状放電、アーク放電、火花放電、コロナ放電、グロ−放電、プラズマ生成放電、誘電体バリア放電、沿面放電のうち少なくとも一つの放電形態を含むことを第7の特徴とし、前記装置において、前記周波数が3〜24kHzの間で制御されることを第8の特徴とする。
【0019】
前記装置において、前記活性種がOHラジカルであることを第9の特徴とし、前記ガスが少なくとも酸素を含むガスであることを第10の特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は以上のような構造をしており、以下の優れた効果が得られる。
【0021】
(1)液界面で放電させることから、過酸化水素の注入や紫外線の照射を行なうという操作を伴なうことなく、活性種、特にOHラジカルを生成することが制御可能である。
(2)過酸化水素の注入や紫外線の照射を行なわないため、過酸化水素の注入設備や、紫外線の照射設備を併設する必要が無く、省スペース且つ低コストである活性種生成装置が作製可能である。
(3)印加電圧の周波数を変えて放電を行なうことから、活性種の生成が制御可能であり、オゾンと活性種の使い分けにより、種々の被処理液の性質に応じて適切なオゾン・活性種処理が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一の実施形態の活性種生成装置を示した図である。
【図2】図1の多孔質構造体の構造を表した図である。
【図3】本発明の第二の実施形態の活性種生成装置を示した図である。
【図4】本発明の実施例1から実施例5及び比較例2から3における経過時間毎の積算生成オゾン量の推移を示したグラフである。
【図5】本発明の実施例1から実施例5及び比較例2から3における経過時間毎の積算排オゾン量の推移を示したグラフである。
【図6】本発明の実施例1から実施例5及び比較例2から3における経過時間毎の積算消費オゾン量の推移を示したグラフである。
【図7】本発明の実施例1から実施例5及び比較例2から3における経過時間毎の積算メチレンブルー脱色量の推移を示したグラフである。
【図8】本発明の実施例1から実施例5及び比較例2から3における各脱色率での脱色効率の推移を示したグラフである。
【図9】本発明の実施例1から実施例5及び比較例2における脱色率30、40、50%時点での各周波数での脱色効率を示したグラフである。
【図10】本発明の実施例2における発光スペクトルの測定結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施形態1)
以下、本発明における第一の実施形態について図1から図3を基に説明するが、本発明が本実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0024】
本発明に使用される活性種とは、反応性の高い原子、分子、イオン、ラジカル等を意味し、例えば酸素原子(O)、水素原子(H)、オゾン(O)、過酸化水素(H)、スーパーオキシドアニオン(・O−)、ヒドロペルオキシルラジカル(HO・)、ヒドロキシルラジカル(・OH)、が挙げられる。上記以外にもOOHラジカル、OHラジカル、オゾニドイオンラジカル(O−)、ヒドロトリオキシルラジカル(HO・)など多種存在し、反応性が高い性能を有していればよく、特に限定されるものではない。
【0025】
図1において、本発明の活性種生成装置1は、多孔質構造体2、台座6、メッシュ状電極7、高電圧配線管8からなり、水槽9の内部に設置されている。
【0026】
多孔質構造体2は、酸化アルミニウムを用いた親水性化合物からなり、接液する液相側4と気体と接する気相側5を有している。多孔質構造体2は、中空筒状の塩化ビニル樹脂製の高電圧配線管8の先端に、中心に孔加工を施した略矩形のアクリル製の台座6を介して密着設置されている。高電圧配線管8の筒内上部に位置する多孔質構造体2の気相側5には、メッシュ状電極7が密接されている。多孔質構造体2は接着剤等で台座6に固定される。
【0027】
さらに、図2に示すように、多孔質構造体2は内部に微細孔3を有し、その径は、1μm〜50μmである。多孔質構造体2の材質は、酸化アルミニウム系、二酸化ケイ素系、シラス多孔質ガラス、セラミックス、樹脂、などが好ましく、特に、酸化アルミニウム系が優れている。
【0028】
また、多孔質構造体2の形状は平板状である。平板状であることにより多孔質構造体2の製作が容易である。
【0029】
台座6は、略矩形で、厚みは1mm〜50mmである。台座6は厚みがあり中心に孔加工を施したものであれば良く、形状は円盤状、多角形等でもかまわない。材質は、アクリル製が好ましいが、ガラスなどでも良く、耐オゾン性で耐熱性の高い絶縁体であれば特に限定されるものではない。
【0030】
台座6に密接されているメッシュ状電極7は、高電圧配線管8内の配線を通して高電圧電源13と接続されている。メッシュ状電極7に用いられるメッシュの材質は、銅、SUSなどがあり、特に銅が望ましい。メッシュの形状は、平織りや綾織りがあるが、曲げ強度が優れている綾織りが好ましい。また、メッシュは目開き及び線径が1mm以下であることが好ましい。
【0031】
高電圧配線管8は、外部の原料ガス15と連結されている。本実施形態で供給される原料ガス15は、酸素ガスである。他に用いられるガスとしては、空気、不活性ガスなどがあるが、特に酸素ガスが好ましい。高電圧配線管8は筒状であれば良く、材質は、塩化ビニル樹脂などの樹脂が好ましいがガラスなどでもよく、耐オゾン性で耐熱性の高い絶縁体であれば特に限定されるものではない。
【0032】
塩化ビニル樹脂製の水槽9は、上部に被処理液を導入する被処理液導入口10、下部に処理後の処理液を排出させる処理液排出口11が設けられ、さらにオゾン濃度計12が装備されている。また水槽9には、接地電極14が接続されている。材質は、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂などの樹脂が好ましいが、ガラスなどのような耐オゾン性のものであればよく特に限定されるものではない。
【0033】
高電圧電源13は、電源部13aと制御部13bで構成されている。電源部13aは、高電圧配線管8内の配線を通してメッシュ状電極7と接続されていて、メッシュ状電極7に電圧を印加する。制御部13bは、電源部13aが出力する印加電圧の大きさ、電圧の印加時間、パルス間隔周波数を設定できるようになっていて、設定条件にしたがって電源部13aを制御する。
【0034】
この構成において、高電圧電源13からメッシュ状電極7を通じて、多孔質構造体2に電圧が特定の周波数で印加され、一方で、外部から原料ガス15が送り込まれる。電圧を印加することによって、多孔質構造体2とメッシュ状電極7との微小間隔、多孔質構造体2の微細孔3内、および液相側4の多孔質構造体2の微細孔3部表面に生じる微細気泡内での放電を行うことによってオゾン、ラジカルのうち少なくともいずれか一種が生成される。印加する電圧の周波数が3kHzより低いと放電が困難であり、一方、周波数が24kHzより高いと一般的に放電開始電圧は低くなり、生成オゾン濃度は高くなるが、活性種の生成効率が低くなるため、オゾン・活性種処理を行なうためには24kHz以下が好ましい。ただし、オゾンの生成を行なう場合には24kHzより高い周波数でもよい。
周波数が高くなりすぎると気泡内の気液界面での放電が頻繁となり、OH・+OH・+M⇒H202+M、でOH・の分解が起きていると考えられる(OH・はOHラジカルを示している)。したがって単位時間当たりの気体分子に対する周波数によって放電を制御することにより、活性種の生成が制御されるものと考えられる。
【0035】
(実施形態2)
次に、本発明における第二の実施形態について図3を基に説明するが、本発明が本実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0036】
本実施形態においては、第一の実施形態の多孔質構造体2の近傍に気泡せん断機16を設置する。多孔質構造体2の近傍であればよいが、特に多孔質構造体2の微細孔3部表面より上部に設置することが好ましい。また、本実施形態においては、気泡せん断機16を用いるが、攪拌機を用いてもよい。さらに、気泡せん断機16と攪拌機の両方用いてもよい。気泡せん断機16を設置し、水槽9を樹脂製タンク17に変えたこと以外は、第二の実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0037】
この構成において、多孔質構造体2の微細孔3部表面より発生する気泡18は、多孔質構造体2の微細孔3部表面の近傍に設置された気泡せん断機16のせん断により、微細化され、液体に大量に溶解される。本実施形態において、活性種生成装置1は熱可塑性樹脂製または熱硬化性樹脂製タンク17内に内蔵される。
【実施例】
【0038】
次に、本発明の実施形態を用いてメチレンブルー脱色試験を行なった。その結果について以下に示す。
【0039】
本試験においては、被処理物質としてメチレンブルーを用い、水道水8Lにメチレンブルー40mg溶解させ5mg/Lメチレンブルー水溶液とした。脱色試験時の生成オゾン濃度、排オゾン濃度、吸光度を測定し、積算生成オゾン量、積算排オゾン量、積算メチレンブルー脱色量を算出し、積算消費オゾン量当たりのメチレンブルー脱色量を比較することにより、ラジカル発生量の大小を算出した。測定装置及び試験方法を以下に示す。ここで言うところの消費オゾン量とは生成オゾン量から排オゾン量を差し引いたオゾン量のことである。
【0040】
[気相オゾン濃度の測定]
気相オゾン濃度計:東亜ディーケーケー社製 OZ−30
[吸光度測定]
吸光度計:HACH社製 DR2400
波長660nmでの吸光度を測定し、脱色率を算出した。
[発光スペクトル測定]
マルチチャンネル分光器:Ocean Optics製 型式USB4F01756 波長域178.1〜890.6nm
【0041】
本発明におけるメチレンブルー脱色試験は実施例1から実施例5及び比較例1から比較例2のそれぞれについて行なった。その試験結果を図4〜図9に示す。
【0042】
[実施例1]
図1のように、活性種生成装置1を水道水8Lが入った水槽9に入れ、高電圧配線管8に酸素ガスを風量3L/minで送り込みながら、電圧(6〜9kV)を周波数3kHzで印加し放電を行なった。多孔質構造体2として、多孔質アルミナ誘電体を用い、多孔質構造体2の液相側4の微細孔3部の表面が気液界面に対して0度(多孔質構造体2の表面が上向き)となるように配置した。積算生成オゾン量の経時変化を図4、排オゾン濃度の経時変化を図5、積算消費オゾン量の経時変化を図6、メチレンブルー脱色量の経時変化を図7に示した。また、各脱色率での脱色効率を算出し、図8に示した。
【0043】
[実施例2]
周波数を6kHzにしたこと以外は実施例1と同様にして行い、積算生成オゾン量の経時変化を図4、排オゾン濃度の経時変化を図5、積算消費オゾン量の経時変化を図6、メチレンブルー脱色量の経時変化を図7に示した。また、各脱色率での脱色効率を算出し、図8に示した。
【0044】
[実施例3]
周波数を12kHzにしたこと以外は実施例1と同様にして行い、積算生成オゾン量の経時変化を図4、排オゾン濃度の経時変化を図5、積算消費オゾン量の経時変化を図6、メチレンブルー脱色量の経時変化を図7に示した。また、各脱色率での脱色効率を算出し、図8に示した。
【0045】
[実施例4]
周波数を18kHzにしたこと以外は実施例1と同様にして行い、積算生成オゾン量の経時変化を図4、排オゾン濃度の経時変化を図5、積算消費オゾン量の経時変化を図6、メチレンブルー脱色量の経時変化を図7に示した。また、各脱色率での脱色効率を算出し、図8に示した。
【0046】
[実施例5]
周波数を24kHzにしたこと以外は実施例1と同様にして行い、積算生成オゾン量の経時変化を図4、排オゾン濃度の経時変化を図5、積算消費オゾン量の経時変化を図6、メチレンブルー脱色量の経時変化を図7に示した。また、各脱色率での脱色効率を算出し、図8に示した。
【0047】
[比較例1]
周波数を60kHzにしたこと以外は実施例1と同様にして行ったが、放電が確認できず、オゾンの生成がみられなかったため、メチレンブルーは脱色されなかった。
【0048】
[比較例2]
周波数を30kHzにしたこと以外は実施例1と同様にして行い、積算生成オゾン量の経時変化を図4、排オゾン濃度の経時変化を図5、積算消費オゾン量の経時変化を図6、メチレンブルー脱色量の経時変化を図7に示した。また、各脱色率での脱色効率を算出し、図8に示した。
【0049】
[比較例3]
市販オゾナイザ(無声放電式オゾン発生管:電圧11kV)を使用したこと以外は実施例1と同様にして行い、積算生成オゾン量の経時変化を図4、排オゾン濃度の経時変化を図5、積算消費オゾン量の経時変化を図6、メチレンブルー脱色量の経時変化を図7に示した。また、各脱色率での脱色効率を算出し、図8に示した。
【0050】
メチレンブルー脱色試験において、図7より、消費オゾン量当りのメチレンブルー脱色量を比較すると、活性種よりもオゾンの生成率が高いと考えられる市販オゾナイザのメチレンブルー脱色量を上回る条件は周波数3kHz(実施例1)から周波数24kHz(実施例5)の条件であることが確認できる。すなわち、同じ消費オゾン量で比較すると、同消費オゾン量であるにも関わらずメチレンブルー脱色量が多いということは、オゾン以外でメチレンブルーを脱色する活性種の存在が示唆され、実施例1から5においてはその活性種生成率が高いことが推測される。
また、特に脱色率30〜50%までの直線的に反応が進行する段階においては、周波数12kHzが最大のメチレンブルー脱色効率を示していることが分かる。したがって、周波数60Hz(比較例1)ではオゾンの生成も無いことから、オゾンおよび活性種の生成を行なう為には印加する電圧の周波数が60Hzより高く30kHz未満が適しており、さらに好ましくは3kHz以上24kHz以下が良い。
【0051】
ラジカル生成の確認のために、発光スペクトル測定を行なった。OHラジカルは280nmと310nm付近に強いバンドスペクトルを持つ光を放つと言われ、OHラジカルを多く含む発光では発光色が近紫外となる。一例として、実施例2と同条件における発光スペクトル測定結果を図10に示した。310nm付近にスペクトルが確認された為、OHラジカルが生成されていると考えられる。
【符号の説明】
【0052】
1 活性種生成装置
2 多孔質構造体
3 微細孔
4 液相側
5 気相側
6 台座
7 メッシュ状電極
8 高電圧配線管
9 水槽
10 被処理液導入口
11 処理液排出口
12 オゾン濃度計
13 高電圧電源
13a 電源部
13b 制御部
14 接地電極
15 原料ガス
16 気泡せん断機
17 樹脂製タンク
18 気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給されるガスに電圧を印加することによって液外から液中に伸展する放電により活性種を生成する方法において、前記電圧を印加する際の周波数を制御することにより活性種の生成率を制御することを特徴とする活性種の生成方法。
【請求項2】
前記放電がストリーマ状放電、アーク放電、火花放電、コロナ放電、グロ−放電、プラズマ生成放電、誘電体バリア放電、沿面放電のうち少なくとも一つの放電形態を含むことを特徴とする請求項1に記載の活性種の生成方法。
【請求項3】
前記周波数が、3〜24kHzの間で制御されることを特徴とする請求項1叉は2に記載の活性種の生成方法。
【請求項4】
前記活性種がOHラジカルであることを特徴とする請求項1乃至3に記載の活性種の生成方法。
【請求項5】
前記ガスが少なくとも酸素を含むガスであることを特徴とする請求項1乃至4に記載の活性種の生成方法。
【請求項6】
液接する液相側と、気体と接する気相側を有し酸化アルミニウム・二酸化ケイ素のうちの少なくとも1種である多孔質構造体と、前記多孔質構造体の気相側に密設される電極と、前記多孔質構造体の気相側から任意のガスを供給する圧入手段と、前記電極に交流電圧を印加する電源とを備え、前記電極に交流電圧を印加することによって、前記多孔質構造体の少なくとも微細孔内で生じる微細気泡内で放電を生起せしめる活性種の生成装置において、前記電源は制御部を備え、前記電圧を印加する際の周波数を制御することにより活性種の生成率を制御することを特徴とする活性種の生成装置。
【請求項7】
前記放電がストリーマ状放電、アーク放電、火花放電、コロナ放電、グロ−放電、プラズマ生成放電、誘電体バリア放電、沿面放電のうち少なくとも一つの放電形態を含むことを特徴とする請求項6に記載の活性種の生成装置。
【請求項8】
前記周波数が、3〜24kHzの間で制御されることを特徴とする請求項6叉は7に記載の活性種の生成装置。
【請求項9】
前記活性種がOHラジカルであることを特徴とする請求項6乃至8に記載の活性種の生成装置。
【請求項10】
前記ガスが少なくとも酸素を含むガスであることを特徴とする請求項6乃至9に記載の活性種の生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−176347(P2012−176347A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39884(P2011−39884)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000117102)旭有機材工業株式会社 (235)
【出願人】(504224153)国立大学法人 宮崎大学 (239)
【Fターム(参考)】