説明

活性酸素除去剤

【課題】 活性酸素に基づく生活習慣病や成人病を防止し、抑制しうる活性酸素除去剤を提供する。
【解決手段】 松の葉、檜の葉、イチョウの葉、熊笹の葉及び茶の葉を必須に含む混合物を真空乾留して得られた植物混合抽出液とレモン圧搾液との混合液に、プロポリス、リンゴ酸及び酒石酸を配合して、人体内の活性酸素に対して除去効果を呈示させる。口臭防止キャンデー、口臭防止スプレー剤、口臭抑制ドリンク剤、室内臭気抑制散布液剤に活性酸素除去成分として含有させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はフィトンチッドエキスを有効成分として含有してなる活性酸素除去剤及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
フィトンチッドとは、一般に植物から発散され、他の生物に何らかの影響を与える植物由来の物質であると考えることができ(特許文献1、特許文献2、特許文献3)、いわゆる森林浴効果の主たる要因であると考えられている。
【0003】
これまでに知られているフィトンチッドの有効作用としては、(1)ストレスの緩和作用、(2)自律神経の安定作用、(3)消臭・抗菌作用、および(4)蚊やダニの忌避作用であるとされている。
【0004】
一方、我々人間は、四六時中、体外からも体内においても活性酸素・フリーラジカルに影響を受けている。最近の研究では、活性酸素・フリーラジカルは、老化、動脈硬化、糖尿病、がん、皮膚の変性などを引き起こす要因のひとつであることが解明されており、現代病の約90%影響を及ぼしていると言われている。
【0005】
また、活性酸素は、体内に侵入してきた異物を殺したり、死亡した細胞を体外に排出するなどの有益な作用と、その高い反応性からDNAを攻撃したり、老化の促進やメラニン生成に影響を及ぼすなどの有害作用を有することが知られている。人間が常時呼吸によって摂取した酸素のうち、約2%が活性酸素として体内に存在しているものと考えられており、体内での活性酸素の働きには、侵入してきた細菌などの病原体を排除する作用もあるが、活性酸素が過剰に作用すると、肌の老化、生活習慣病あるいは成人病の誘発につながることも知られている。
【0006】
活性酸素は、比較的寿命の長いO2-、H22、LOOH(過酸化脂質)と、寿命が短く反応性が大である12・OHとに分類することができる。これら活性酸素の中でも、O2-は反応性が比較的弱いとされているが、他の活性酸素の前駆体として働くため、例えば化粧品においてO2-の消去が重要視されている。
【0007】
最近、活性酸素から身を守る機能を有する物質が多くの食品から見いだされており、これらの物質はスカベンジャーと呼ばれている。
【0008】
【特許文献1】特開昭62−143997号公報
【特許文献2】特開平08−164192号公報
【特許文献3】特開2000−3427671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明はかかる状況において、適用容易で、広範囲に使用が可能なスカベンジャーを開発することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、森林浴効果が期待される種々の植物を原料としたフィトンチッドエキスが、活性酸素の除去効果を示し、新しいスカベンジャーとして適用しうるのではないかと考え、種々のフィトンチッド液について、DPPH(ジフェニルピクリルヒドラジル)ラジカル消去効果試験および活性酸素阻害(SOD)試験を行った。その結果、特開2000−342671号公報に記載されたフィトンチッドエキスが活性酸素除去作用を有することが明らかとなった。
【0011】
本発明に係る活性酸素除去剤は、松の葉、檜の葉、イチョウの葉、熊笹の葉及び茶の葉を必須に含む混合物を真空乾留して得られた植物混合抽出液とレモン圧搾液との混合液に、プロポリス、リンゴ酸及び酒石酸を配合してなり、人体内の活性酸素に対して除去効果を示すことを特徴とする。
【0012】
植物混合抽出液は黒松、赤松、エゾ松等のマツ科植物の葉、檜の葉、イチョウの葉、熊笹の葉及び茶の葉を必須に含む植物材料混合物を原料として真空乾留することによって得る。この植物混合抽出液にはポリフェノール、キンゴライド、フラボノイドが含まれている。
【0013】
植物材料混合物に含まれる各葉の割合は特に限定されず、任意に選択できるが、通常はほぼ等量とすることができる。また、植物材料混合物には必要に応じて樅の葉又は茎、楠の葉又は茎、白樺の樹皮、蓬の葉又は茎、根などの一種又は二種以上を含ませることができる。
【0014】
植物材料混合物を真空乾留するにあたり、植物材料混合物に含まれる余分な水分は予め乾燥によって除去しておくのが好ましい。真空乾留の温度条件は30°C〜800°Cの範囲内の温度から選ばれるのがよい。真空乾留によって得られた植物混合抽出液は真空蒸留によって精製するのがよく、例えば初留点30°C、終留点90°Cの留分を用いることができる。
【0015】
レモン圧搾液はレモン果実を機械的に圧搾して得られた液状物をいう。レモン圧搾液はは真空蒸留によって精製するのが好ましく、例えば初留点30°C、終留点90°Cの留分を用いることができる。このレモン圧搾液には必要に応じてブドウ果実の圧搾液を加えることができる。
【0016】
植物混合抽出液とレモン圧搾液とは任意の割合で混合したものを用いることができ、例えば容量比で前者3、後者1の割合で混合されたものを用いることができる。
【0017】
また、プロポリスは蜜蜂が花や樹皮から集めたヤニを噛みつづけることにより、このヤニと蜜蜂の唾液、酵素が混ざり合って形成される黒色を呈する固形物であり、濃縮フラボノイド、ミネラル類、ビタミン類、アミノ酸類、脂肪、有機酸等が含まれている。このプロポリスはアルコール抽出又は熱水抽出して使用する。熱水抽出したプロポリスは水に可溶である。
【0018】
本発明に係る活性酸素除去剤は植物混合抽出液とレモン圧搾液の混合液を50〜88重量%、プロポリスを2〜10重量%、リンゴ酸を5〜20重量%、酒石酸を5〜20重量%の範囲内から選ばれる割合で配合されるのが好ましい。
【0019】
使用にあたっては20〜1000倍程度に希釈して用いることができる。また、本発明に係る活性酸素除去剤は安定で、毒性が少ないので、種々の形態、例えば口臭防止キャンデー、口臭防止スプレー剤、口臭抑制ドリンク剤、室内臭気抑制散布液剤に活性酸素除去成分として含有させて用いることができる。含有割合は任意に選択できるが、少なくとも0.5重量%以上含有させるのが好ましく、例えば口臭防止キャンデーの場合には0.5重量%〜4重量%程度、口臭抑制ドリンク剤の場合には数%程度、口臭防止スプレー剤や室内臭気抑制散布液剤の場合には0.5重量%〜3重量%程度でよい。配合以外は特別に配慮する必要はなく、常法により各製品を得ることができる。
【0020】
松の葉、檜の葉、イチョウの葉、熊笹の葉及び茶の葉を必須に含む混合物を真空乾留して得られた植物混合抽出液とレモン圧搾液との混合液に、プロポリス、リンゴ酸及び酒石酸を配合したものは消臭剤として市販されているので、市販品をそのまま使用でき、例えば有限会社フィトンタオ壱壱八の販売にかかる製品PT−150−A、PT−150−AB、PT−150−D、PT−150−G等を挙げることができる。
【0021】
後述するように、松の葉、檜の葉、イチョウの葉、熊笹の葉及び茶の葉を必須に含む混合物を真空乾留して得られた植物混合抽出液について、エーテル抽出したのち、GC−MS分析機器による成分検索を行った結果、いずれも主成分として、酢酸/シジェン、プロパン酸、リナロール、ボルニル アセタート/2ーアセチルー5ーメチルフラン、ブタン酸、ツジョプセン/ベンジルホルマート、αーテルピノール/2ーブテン酸、グアイアコール、ベンジルアルコール/クパレン、βーフェネチルアルコール、セドロールおよびヘキサデカン酸等を含有することが明らかになった。
【0022】
〔実験例1〕 DPPHラジカル消去活性試験
各試料について、1mg/mlエタノール溶液を作製し、これらをエタノールで希釈することにより、7濃度の希釈系列(各0.2ml)を調整した。これに0.1mlのエタノールを加え、次いで0.2mM DPPHラジカルエタノール溶液0.05mlを加え、室温で30分間放置したのち、 マイクロプレートリーダー(CORONA、MTP−300)を用いてAbs.517nmの吸光度(A)を測定した。
また、ブランク試験として、試料の代わりにエタノールを用いて同様の操作を行い、吸光度(B)を測定した。
【0023】
DPPHラジカル消去率は次式に従い算出した。

DPPHラジカル消去率(%)=(1−A/B)×100

これらの消去率に基づいて、単位濃度1.0に対する50%消去濃度(50%Scavenging Concentration、SC )をプロビット法により算出した。
【0024】
結果を第1表に示す。
第1表
試料 ラジカル消去率(%) 50%消去濃度
PT−150−A 97.9 22
PT−150−AB 95.1 10
PT−150−D 100 8

【0025】
〔実験例2〕 活性酸素消去効果(SOD)試験(NBT還元法)
実験例1で使用したものと同様の各試料0.714mMをDMSO溶液0.1mlに溶解し、ついで、発色試薬として、キサンチン0.40mMとニトロブルーテトラゾニウム0.24mMを0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0)144.7mlに溶解し、調整した溶液1.0mlを加えた。さらに、この混合溶液に0.049mMのキサンチンオキシダーゼリン酸緩衝液0.2mlを加え、37℃の恒温水槽中で20分間放置したのち、反応停止液として、69mMの硫酸ドデシルにナトリウム2.0mlを加え、スーパーオキシドアニオンとニトロブルーテトラリゾウムの反応によって生成するジホルマザンを560nmに設定した分光光度計を用いて測定した。一方、コントロールとして、試料のかわりに、DMSO溶液0.1mlのみを用いる以外は同様の操作を行い、以下に示す式に従って活性酸素の阻害率を計算した。吸光度は、3回の測定結果から、それぞれ平均値を算出した。

活性酸素阻害率(%)=[(コントロールの吸光度)ー(検体の球光度)/(コントロールの吸光度) ]×100
【0026】
結果を第2表に示す。
第2表
試料 活性酸素消去率(%)
PT−150−A 22.4
PT−150−AB 41.3
PT−150−D 21.3
PT−150−G 59.1
【0027】
以上の結果から、DPPHラジカル消去効果、活性酸素消去効果とも、スカベンジャーとして市販のαートコフェロール(ビタミンE)に匹敵する結果を示した。
【0028】
〔実験例3〕 マウスを用いた急性経口毒性試験
実験例1で使用したものと同様の製品を検体として、OECD ガイドラインズ ホア ザ テスチング オブ ケミカルズ401(1987)に準拠し、マウスを用いた急性経口毒性試験(限度試験)を行った。
4週令のICR系雌雄マウスを、試験群及び対称群ともにそれぞれ10匹用い、検体投与前約4時間、絶食させた。体重を測定したのち、試験群には雌雄ともに20ml/Kgの用量を胃ゾンデを用いて強制単回経口投与した。対称群には雌雄ともに0.6mlの純水を同様に投与した。
観察期間は14日間とし、投与日は頻回、翌日から1日1回、観察した。投与後7日及び14日に体重を測定し、 iー検定により有意水準5%で群間の比較を行った。観察期間終了時にマウス全てを剖検した。
【0029】
試験結果は以下の通りである。
(1)雌雄ともに観察期間中に死亡例は認められなかった。
(2)雌雄ともに一般状態に異常は認められなかった。
(3)雌雄ともに各群間で体重増加に差は見られなかった。
(4)観察期間終了時の剖検では、雌雄とも、全ての試験動物の主要臓器に異常は見られなかった。
【0030】
本OECDガイドラインでは、検体が水溶液の場合、投与量は体重100g当たり2ml(20ml/Kg)を超えるべきではないと指示している。本試験では、この用量で死亡例は認められず、剖検時にも異常は認められなかった。したがって、検体のマウスにおける単回経口投与によるLD50値は、雌雄ともに20ml/Kg以上であるものと考えられた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
〔実施例1〕
水飴100部、PT-150-D3部を原料として、常法により、口臭防止キャンデーを製造した。
【0032】
〔実施例2〕
純精水100部、PT-150-D0.5部、深海層水1部を原料とし、常法により、口臭防止スプレーを製造した。
【0033】
〔実施例3〕
果汁液状果糖100部、生ロイヤルゼリー0.1部、クエン酸、クエン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ビタミンC、レモンフレバをそれぞれ1部、PT-150-D6部を原料とし、常法により、口臭防止ドリンク剤を製造した。
【0034】
〔実施例4〕
純精水100部、PT-150-A及びPT-150-D0.6部を原料とし、常法により、室内臭気抑制散布剤を製造した。この室内臭気抑制散布剤は室内の臭気を抑制する散布装置(特許第3067089号)によって室内に散布すると、呼吸に伴って人体に取り込むことができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、特定のフィトンチッドエキスが優れた活性酸素消去効果を示すという、新知見に基づくものである。従って、本発明によれば、現代社会において、今後ますます増加することが予測される活性酸素による生活習慣病や成人病の防止・抑制に大いに寄与しうるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
松の葉、檜の葉、イチョウの葉、熊笹の葉及び茶の葉を必須に含む混合物を真空乾留して得られた植物混合抽出液とレモン圧搾液との混合液に、プロポリス、リンゴ酸及び酒石酸を配合してなり、人体内の活性酸素に対して除去効果を示すことを特徴とする活性酸素除去剤。
【請求項2】
口臭防止キャンデーに活性酸素除去成分として含有されるようにした請求項1記載の活性酸素除去剤。
【請求項3】
口臭防止スプレー剤に活性酸素除去成分として含有されるようにした請求項1記載の活性酸素除去剤。
【請求項4】
口臭抑制ドリンク剤に活性酸素除去成分として含有されるようにした請求項1記載の活性酸素除去剤。
【請求項5】
室内臭気抑制散布液剤に活性酸素除去成分として含有されるようにした請求項1記載の活性酸素除去剤。

【公開番号】特開2006−249035(P2006−249035A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70744(P2005−70744)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(593066911)
【出願人】(505093703)
【Fターム(参考)】