説明

流体動圧軸受装置及びその製造方法

【課題】ハウジングを樹脂で形成した場合であっても、ハウジングのクリープ変形による蓋部材の固定力の低下を防止し、高精度に設定されたスラスト軸受隙間の精度を長期間にわたって維持する。
【解決手段】蓋部材10をハウジング7に対して軸方向移動させることにより、第1スラスト軸受部及び第2スラスト軸受部のスラスト軸受隙間を所定寸法に設定し、この状態で蓋部材10とハウジング7とを仮固定する。仮固定した状態で、樹脂製のハウジング7の内周面7aと蓋部材10の外周面10bとの間の隙間に介在させた接着剤を硬化させ、両者を隙間接着により固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受隙間の潤滑流体に生じる圧力で軸部材を相対回転自在に支持する流体動圧軸受装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体動圧軸受装置は、その高回転精度および静粛性から、各種ディスク駆動装置(例えばHDD等の磁気ディスク駆動装置、CD,DVD,ブルーレイディスク等の光ディスク駆動装置、あるいはMD,MO等の光磁気ディスク駆動装置等)のスピンドルモータや、レーザビームプリンタのポリゴンスキャナモータ、プロジェクタのカラーホイールモータ、あるいは電子機器等の冷却ファンモータ等に好適に使用される。このような流体動圧軸受装置として、軸部材の外周面と軸受スリーブの内周面との間のラジアル軸受隙間に生じる潤滑油の圧力により軸部材をラジアル方向に支持すると共に、軸受スリーブの一端面とこれに対向する軸部材のフランジ部の一端面との間のスラスト軸受隙間、及び、蓋部材の端面とこれに対向するフランジ部の他端面との間のスラスト軸受隙間に生じる潤滑油の圧力により軸部材をスラスト方向に支持する構成が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、ハウジングの軸方向一端部にインロー部(段部)を設け、蓋部材をインロー部に嵌め合わせることで、ハウジングに対して蓋部材を位置決めし、これによりスラスト軸受隙間を所定寸法に設定している。このような蓋部材の位置決め方法では、蓋部材の位置決め精度(すなわちスラスト軸受隙間の精度)が、ハウジング、軸受スリーブ、蓋部材等の加工精度、特にハウジングに形成されるインロー部の加工精度に大きく依存する。このため、蓋部材を高精度に位置決めしようとすると、各部材の加工精度を高める必要があり、加工コストが高くなる。
【0004】
これに対し特許文献2には、ハウジングの内周に配した軸部材の両端面に軸受スリーブ及び蓋部材をそれぞれ当接させてスラスト軸受隙間を0の状態としてから、予め規定したスラスト軸受隙間の分だけ蓋部材をハウジングに対して軸方向移動させ、この位置で蓋部材をハウジングに固定することにより、スラスト軸受隙間を設定する方法が示されている。この方法によれば、各部材の加工精度によることなく、スラスト軸受隙間を高精度に設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−83323号公報
【特許文献2】特開2003−239951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、蓋部材をハウジングに対して軸方向移動させることでスラスト軸受隙間を設定する場合は、スラスト軸受隙間を設定した状態で蓋部材とハウジングとを確実に固定することが必要となる。例えば上記特許文献2では、ハウジングと蓋部材とを例えば圧入+接着により固定している。このように圧入力を伴う固定方法では、長期間の使用に伴ってハウジングが圧入力により変形する、いわゆるクリープ変形が生じる恐れがある。特に、ハウジングを樹脂で形成した場合は、金属で形成した場合と比べて強度が低いため、クリープ変形が生じやすい。ハウジングがクリープ変形すると、ハウジングと蓋部材との間の締め代が小さくなるため、両者の固定力、特に蓋部材の抜去力(蓋部材をハウジングから抜去するために要する力)が低下する。このため、蓋部材がハウジングに対して位置ズレを起し、スラスト軸受隙間の寸法精度の低下、ひいてはスラスト軸受部による支持力の低下を招く恐れがある。
【0007】
以上の事情から、本発明が解決すべき課題は、蓋部材をハウジングに対して軸方向移動させることでスラスト軸受隙間が設定された流体動圧軸受装置において、ハウジングを樹脂で形成した場合であっても、蓋部材のハウジングに対する固定力を長期間にわたって維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、軸部及びフランジ部を有する軸部材と、内周に軸部が挿入された軸受スリーブと、内周面に軸受スリーブが固定され、軸方向両端部を開口した樹脂製のハウジングと、ハウジングの軸方向一方の開口部を閉塞する蓋部材と、軸部の外周面と軸受スリーブの内周面との間のラジアル軸受隙間に生じる潤滑流体の圧力で軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部と、軸受スリーブの一端面とこれに対向するフランジ部の一端面との間のスラスト軸受隙間に生じる潤滑流体の圧力で軸部材をスラスト方向に支持する第1スラスト軸受部と、蓋部材の端面とこれに対向するフランジ部の他端面との間のスラスト軸受隙間に生じる潤滑流体の圧力で軸部材をスラスト方向に支持する第2スラスト軸受部とを備えた流体動圧軸受装置であって、蓋部材をハウジングに対して軸方向移動させることで第1スラスト軸受部及び第2スラスト軸受部のスラスト軸受隙間を所定寸法に設定し、この状態で蓋部材の外周面とハウジングの内周面とを隙間接着により固定したことを特徴とする。
【0009】
このように、本発明の流体動圧軸受装置では、ハウジングの内周面と蓋部材の外周面とが隙間接着により固定されている。すなわち、ハウジングと蓋部材との固定力が、ハウジングの内周面と蓋部材の外周面との間の隙間に介在した接着剤によって受け持たれているため、ハウジングのクリープ変形により固定力が低下することはなく、長期間にわたって優れた固定力を維持することができる。従って、ハウジングに対して蓋部材を軸方向移動させることにより高精度に設定したスラスト軸受隙間の精度を、長期間にわたって維持することができる。
【0010】
上記のように、蓋部材とハウジングとを隙間接着する場合、蓋部材をハウジングに対して軸方向移動させてスラスト軸受隙間を所定寸法に設定した状態で、接着剤が硬化するまで蓋部材をハウジングに対して位置決めする必要が生じる。すなわち、上記の流体動圧軸受装置は、ハウジングの所定位置に固定された軸受スリーブの端面を基準として蓋部材をハウジングに対して軸方向に移動させることにより、第1スラスト軸受部及び第2スラスト軸受部のスラスト軸受隙間を所定寸法に設定するステップと、第1スラスト軸受部及び第2スラスト軸受部のスラスト軸受隙間を所定寸法に設定した状態で、ハウジングに蓋部材を仮固定するステップと、ハウジングに蓋部材を仮固定した状態で、ハウジングの内周面と蓋部材の外周面との隙間に介在させた接着剤を硬化させるステップとを経て製造することができる。
【0011】
蓋部材とハウジングとの仮固定は、例えば固定治具を用いて行うことができる。この場合、固定治具で仮固定した状態のまま、蓋部材及びハウジングを加熱して接着剤を硬化させれば、スラスト軸受隙間を高精度に設定した状態を確実に維持しながら蓋部材をハウジングに固定することができる。
【0012】
また、蓋部材とハウジングとの仮固定は、例えば、ハウジングの外周面を圧迫し、ハウジングの内周面の一部を内径向きに突出させて蓋部材の外周面に当接させることにより行うことができる。この場合、蓋部材をハウジングに対して軸方向に移動させて、第1スラスト軸受部及び第2スラスト軸受部のスラスト軸受隙間を所定寸法に設定した後、ハウジングの外周面を圧迫して蓋部材を仮固定することができる。あるいは、ハウジングの外周面を圧迫して内周面の円周方向一部を内径向きに突出させた後、蓋部材をハウジングに対して軸方向に移動させることにより、第1スラスト軸受部及び第2スラスト軸受部のスラスト軸受隙間を所定寸法に設定すると共に、蓋部材をハウジングに仮固定することができる。
【0013】
上記のように、ハウジングの内周面の一部を内径向きに突出させて蓋部材の外周面に当接させることにより蓋部材とハウジングとを仮固定する場合、ハウジングの内周面の円周方向に離隔した複数箇所と蓋部材の外周面とが、締め代をもって当接した状態となる。この締め代は、ハウジングと蓋部材との間の接着剤が固化するまでの間、蓋部材がハウジングに対してずれない程度の保持力を有していればよく、完成後の流体動圧軸受装置における蓋部材の固定力は、もっぱら接着剤で受け持たれる。
【0014】
上記のように、ハウジングと蓋部材とを部分的に締め代をもって当接させる場合、蓋部材の外周面に内径向きの負荷が加わる。この負荷により蓋部材が変形すると、蓋部材の端面が面するスラスト軸受隙間の精度が低下する恐れがある。かかる不具合を避けるために、蓋部材は、剛性の高い材料で形成することが好ましく、例えば金属のプレス成形品や、焼結金属製、あるいは、芯金入りの樹脂成形品とすることが好ましい。これらの場合、金属により蓋部材の剛性が確保されると共に、スラスト軸受隙間に面する蓋部材の端面を型成形することができるため、スラスト軸受隙間の精度が高められる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、蓋部材とハウジングとを隙間接着により固定することで、樹脂製のハウジングのクリープ変形による蓋部材の固定力の低下を回避できるため、蓋部材をハウジングに対して軸方向移動させることで高精度に設定されたスラスト軸受隙間の精度を長期間にわたって維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】流体動圧軸受装置を組み込んだモータの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る流体動圧軸受装置の断面図である。
【図3】軸受スリーブの断面図である。
【図4】軸受スリーブの下面図である。
【図5】蓋部材の上面図である。
【図6】(a)は蓋部材とハウジングとの固定部を示す断面図であり、(b)は(a)図のX−X線における断面図である。
【図7】図6(a)の拡大断面図である。
【図8】蓋部材がハウジングの中心から水平方向にずれた状態の断面図である。
【図9】(a)〜(c)は、ハウジング、軸受スリーブ、軸部材、及び、蓋部材の組付体を組み立てる様子を示す断面図である。
【図10】固定治具の断面図である。
【図11】他の例の固定治具の断面図である。
【図12】他の例の固定治具の断面図である。
【図13】(a)は他の例の固定治具の断面図であり、(b)は(a)図をY方向から見た平面図である。
【図14】ハウジング及び蓋部材の平面図であり、(a)はハウジングが略楕円形状に変形した様子、(b)はハウジングが3円弧形状に変形した様子、(c)はハウジングが4円弧形状に変形した様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る流体動圧軸受装置1が組み込まれたモータを示す。このモータは、例えば2.5インチHDDのディスク駆動装置に用いられるスピンドルモータであり、軸部材2を回転自在に支持する流体動圧軸受装置1と、軸部材2に装着されたディスクハブ3と、流体動圧軸受装置1が取り付けられたブラケット6と、半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5とを備えている。ステータコイル4はブラケット6に取り付けられ、ロータマグネット5はディスクハブ3に取り付けられる。ディスクハブ3には、磁気ディスク等のディスクDが所定の枚数(図示例では2枚)保持される。ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間の電磁力でロータマグネット5が回転し、これによりディスクハブ3、ディスクD、および軸部材2が一体となって回転する。
【0019】
流体動圧軸受装置1は、図2に示すように、軸部材2と、内周に軸部材2を挿入した軸受スリーブ8と、軸方向両端を開口した筒状のハウジング7と、ハウジング7の軸方向一方の開口部を閉塞する蓋部材10と、ハウジング7の軸方向他方の開口部をシールするシール部9とを備える。本実施形態では、ハウジング7とシール部9が一体成形されている。尚、以下では、軸方向でシール部9側を上側、蓋部材10側を下側として説明を進める。
【0020】
軸部材2は、軸部2aと、軸部2aの下端に設けられたフランジ部2bとからなる。軸部2aの外周面2a1は平滑な円筒面状に形成され、その軸方向中間部に、他の領域よりも僅かに小径な逃げ部2a2が形成される。フランジ部2bは、軸部2aの下端部から外径に突出した円盤形状をなし、その両端面2b1,2b2は平坦に形成される。軸部材2は、例えばステンレス鋼等の金属で形成され、軸部2a及びフランジ部2bが切削加工により一体に形成される。この他、軸部2aとフランジ部2bとを金属で別体に形成した後、両者を溶接等により接合して一体化したり、軸部2aを金属、フランジ部2bを樹脂で形成したりすることもできる。
【0021】
軸受スリーブ8は、例えば銅を主成分とする焼結金属で円筒状に形成される。この他、黄銅等の軟質金属で軸受スリーブ8を形成することも可能である。
【0022】
軸受スリーブ8の内周面8aには、例えば図3に示すように、軸方向に離隔した2つの領域にヘリングボーン形状の動圧溝8a1,8a2がそれぞれ形成される。上側の動圧溝8a1は軸方向非対称に形成されており、具体的には、丘部(図3にクロスハッチングで示す)の軸方向中央部の円筒部分より上側領域の軸方向寸法X1が、下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっている(X1>X2)。下側の動圧溝8a1は軸方向対称に形成されている。
【0023】
軸受スリーブ8の下側端面8bには、例えば図4に示すようなポンプインタイプのスパイラル形状の動圧溝8b1が形成されている。軸受スリーブ8の外周面8dには、軸方向溝8d1が軸方向全長にわたって形成され、本実施形態では、例えば3本の軸方向溝8d1が円周方向に等配される。軸受スリーブ8の上側端面8cには、半径方向溝8c1が半径方向全長にわたって形成され、本実施形態では、例えば3本の半径方向溝8c1が円周方向に等配される。
【0024】
ハウジング7は、樹脂で形成され、本実施形態では樹脂の射出成形で形成される。ハウジング7は、図2に示すように円筒状に形成され、ハウジング7の円筒状内周面7aには、軸受スリーブ8の外周面8dが隙間接着、圧入、接着剤介在下の圧入等により固定される。また、ハウジング7の円筒状内周面7aの下端部には、蓋部材10が隙間接着により固定される。
【0025】
シール部9は、ハウジング7の上端部に一体に設けられる。シール部9の内周面9aは、下方に向けて縮径したテーパ面状に形成され、軸部材2の軸部2aの円筒状外周面2a1との間に、下方に向けて径方向幅を漸次縮小した楔形状のシール空間Sを形成する。このシール空間Sの毛細管力により、ハウジング7の内部に充満された潤滑油の漏れ出しを防止する。シール部9の下側端面9bは、軸受スリーブ8の上側端面8cと当接している。
【0026】
蓋部材10は、例えば金属のプレス加工で円盤状に形成される。蓋部材10の上側端面10aには、例えば図5に示すように、ポンプインタイプのスパイラル形状の動圧溝10a1が形成される。この動圧溝10a1は、蓋部材10のプレス加工と同時に、上側端面10aに型成形される。
【0027】
蓋部材10は、ハウジング7に対して軸方向移動させて第1スラスト軸受部T1及び第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間を所定寸法に設定した状態で、ハウジング7の内周面7aに固定される。すなわち、ハウジング7の内周面7aは、スラスト軸受隙間を所定寸法に設定するための蓋部材10の軸方向移動を許容する形状とされる。本実施形態では、ハウジング7の内周面7aが径一定の円筒面状とされる。この円筒状内周面7aに固定された蓋部材10は、上側端面10aの全面が潤滑油と接触しており、他部材(例えば軸受スリーブ8やハウジング7)と当接していない。
【0028】
蓋部材10は、ハウジング7の内周面7aに隙間接着により固定される。具体的には、図6(a)に誇張して示すように、蓋部材10の外周面10bとハウジング7の内周面7aとを微小隙間δを介して嵌合し、微小隙間δに介在させた接着剤G(例えば熱硬化性接着剤)により、蓋部材10をハウジング7の所定位置に固定する。接着剤Gは、図6(b)に示すように、微小隙間δの全周にわたって介在している。また、接着剤Gは、微小隙間δの軸方向のなるべく広範囲に介在されることが好ましく、本実施形態では、図7に拡大して示すように、接着剤Gが微小隙間δの軸方向全域に介在され、接着剤Gの上下端部が蓋部材10の外周面10bの上下端に形成された面取り部10c,10dに達している。微小隙間δは、蓋部材10とハウジング7との固定力に必要とされる量の接着剤Gを介在可能な程度に設定され、例えば本実施形態では、片側10μm(直径差20μm)程度に設定される。このように、蓋部材10とハウジング7とを微小隙間δに介在された接着剤Gで固定することで、本実施形態のようにハウジング7が樹脂で形成された場合でも、ハウジング7のクリープ変形により蓋部材10の固定力(抜去力)が低下する事態が回避される。
【0029】
上記のように蓋部材10をハウジング7の内周面7aに隙間接着した場合、図8に示すように、ハウジング7の内周面7aに対して蓋部材10が半径方向にずれることがある。この場合、ハウジング7と蓋部材10との間の微小隙間δが円周方向で不均一となるが、微小隙間δの全周に接着剤Gを介在させることで、ハウジング7と蓋部材10とを強固に固定することができる。また、蓋部材10がハウジング7に対して半径方向にずれても、ハウジング7に対する軸方向位置、及び、フランジ部2bの下側端面2b2に対する平行度が精度良く設定されていれば、スラスト軸受隙間の精度には影響しない。
【0030】
以上のようにして、軸受スリーブ8の内部気孔を含めたハウジング7の内部の空間に潤滑油を充満させることにより、図2に示す流体動圧軸受装置1が完成する。このとき、潤滑油の油面はシール空間Sの内部に保持される。
【0031】
軸部材2が回転すると、軸受スリーブ8の内周面8aと軸部2aの外周面2a1との間にラジアル軸受隙間が形成される。そして、動圧溝8a1,8a2により上記ラジアル軸受隙間の潤滑油の圧力が高められ、この圧力(動圧作用)により軸部材2をラジアル方向に回転自在に非接触支持するラジアル軸受部R1,R2が構成される。
【0032】
これと同時に、軸受スリーブ8の下側端面8bとフランジ部2bの上側端面2b1との間、及び、蓋部材10の上側端面10aとフランジ部2bの下側端面2b2との間に、それぞれスラスト軸受隙間が形成される。そして、動圧溝8b1,10a1により上記スラスト軸受隙間の潤滑油の圧力が高められ、この圧力(動圧作用)により軸部材2を両スラスト方向に回転自在に非接触支持するスラスト軸受部T1,T2が構成される。
【0033】
このとき、軸受スリーブ8の外周面8dに形成された軸方向溝8d1及び上側端面8cに形成された半径方向溝8c1により、潤滑油が流通可能な連通路が形成される。この連通路により、ハウジング7の内部に満たされた潤滑油に局部的な負圧が発生する事態を防止できる。特に本実施形態では、図3に示すように、上側の動圧溝8a1が軸方向非対称な形状に形成されているため、軸部材2の回転に伴ってラジアル軸受隙間の潤滑油が下方に押し込まれ、上記の連通路を介して潤滑油が循環し、これにより局部的な負圧の発生を確実に防止できる。
【0034】
以下、上記構成の流体動圧軸受装置の製造方法を、蓋部材10とハウジング7との固定方法を中心に説明する。
【0035】
まず、図9(a)に示すように、ハウジング7の内周に軸受スリーブ8を挿入し、軸受スリーブ8をシール部9に当接させ、この状態で軸受スリーブ8の外周面8dとハウジング7の内周面7aとを固定する。そして、図9(b)に示すように、軸受スリーブ8の内周に軸部材2を挿入し、ハウジング7の内周面7aの開口端部(蓋部材10を固定する部分)に熱硬化性接着剤を塗布する。その後、図9(c)に示すように、ハウジング7の内周面7aと蓋部材10の外周面10bとを隙間を介して嵌合させる。図9(c)に示す状態で、軸部材2のフランジ部2bの両端面2b1,2b2は、それぞれ軸受スリーブ8及び蓋部材10と当接しており、すなわち、第1及び第2スラスト軸受部T1,T2のスラスト軸受隙間が0の状態となっている。また、ハウジング7の内周面7aと蓋部材10の外周面10bとの間の隙間には、接着剤が介在している。この接着剤が固化していない状態のハウジング7、軸受スリーブ8、軸部材2、及び蓋部材10の組付体Aを、図10に示す固定治具20に装着する。組付体Aは、図2に示す流体動圧軸受装置1と上下が反対になっており、ここでは図10の上下方向を用いて説明する。
【0036】
固定治具20は、組付体Aを下方から支持する支持部21と、ハウジング7を上方から押さえるハウジング押さえ部22と、蓋部材10を上方から押さえる蓋押さえ部23と、軸部材2を押し上げる押し上げ手段とを主に備える。本実施形態では、押し上げ手段が、軸部材2の端部に当接する押し上げピン24と、押し上げピン24を押し上げる押し上げネジ25と、押し上げピン24を下方に付勢するスプリング26と、押し上げピン24を支持部21に固定する固定ネジ27とで構成される。
【0037】
組付体Aの固定治具20への装着は以下のように行われる。まず、組付体Aが、支持部21の支持穴21aに装着される。このとき、ハウジング7の外周面と支持穴21aの内周面とは隙間を介して嵌合している。この状態で、ハウジング押さえ部22でハウジング7を下方に押さえて固定する。すなわち、ハウジング7を、支持部21とハウジング押さえ部22とで挟持して固定する。本実施形態では、ハウジング押さえ部22がハウジング7の端面に上方から当接し、ハウジング押さえ部22の自重によりハウジング7が下方に押さえられる。
【0038】
このとき、蓋部材10は蓋押さえ部23により下向きに押さえられる。本実施形態では、蓋押さえ部23がスプリング23aにより下向きに付勢され、スプリング23aの付勢力で蓋部材10が下向きに押さえられる。これにより、軸部材2のフランジ部2bの両端面2b1,2b2にそれぞれ蓋部材10及び軸受スリーブ8が当接した状態、すなわちスラスト軸受隙間が0の状態が維持される。
【0039】
この状態で、押し上げネジ25を上方に押し込んで押し上げピン24を上昇させ、軸部材2を押し上げる。これにより、蓋部材10がスプリング23aの付勢力に反して上方に押し上げられ、蓋部材10がハウジング7に対して軸方向移動(上昇)する。このときの軸部材2の押し上げ量は所定寸法に設定され、具体的には、第1及び第2スラスト軸受部T1,T2のスラスト軸受隙間のねらい値の合計量に設定される。こうして、軸部材2及び蓋部材10を所定寸法だけ押し上げた状態で、固定ネジ27により押し上げピン24を支持部21に固定する。このとき、蓋部材10は、軸部材2で下方から支持されると共に、蓋押さえ部23で上方から押さられており、これにより蓋部材10がハウジング7に対して所定位置で位置決めされる。以上により、スラスト軸受隙間が設定された状態で、ハウジング7に対して蓋部材10が仮固定される。
【0040】
蓋部材10とハウジング7とが仮固定された組付体Aが、固定治具20と共に加熱炉(図示省略)に搬入され、蓋部材10とハウジング7との間に介在した接着剤を硬化させる。このように、組付体Aを固定治具20と共に加熱炉に搬入することで、固定治具20によりスラスト軸受隙間を高精度に設定した状態で、蓋部材10をハウジング7に固定できる。以上により、スラスト軸受隙間の設定、及び、蓋部材10のハウジング7への固定が完了する。
【0041】
蓋部材10のハウジング7への固定方法は、上記の実施形態に限られない。以下、固定方法の他の例を説明するが、上記の実施形態と同様の構成及び機能を有する箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
例えば、図11に示す固定治具30は、軸部材2を押し上げる押し上げ手段が上記の実施形態と異なる。具体的には、軸部材2の下方に設けられ、水平方向に対して傾斜した傾斜面31aを上面に有する押し上げ治具31と、押し上げ治具31を水平方向にスライドさせるシリンダ32と、押し上げ治具31の傾斜面31aと軸部材2との間に介在されたスライドボール33とで、押し上げ手段が構成される。この固定治具30に組付体Aを固定した後、シリンダ32を退入させ、押し上げ治具31を図中右側にスライドさせると、傾斜面31aに沿ってスライドボール33が押し上げられ、これにより押し上げピン24が押し上げられる。
【0043】
また、上記の実施形態では、ハウジング押さえ部22が自重によりハウジング7を上方から押さえる構成となっているが、これに限られない。例えば図12に示す固定治具40は、支持部21の外周面に雄ネジ部21bを形成すると共に、ハウジング押さえ部22の内周面に雌ネジ部22aを形成し、両者をネジ固定している。このように、ハウジング押さえ部22が、自重ではなくネジ固定によりハウジング7を押さえる構成であることにより、固定治具40の設置方向が限定されず、例えば図12のように組付体Aの軸方向を水平に配置することが可能となる。尚、図示例では、ハウジング押さえ部22の支持部21と反対側(図中左側)に付勢手段(図示例ではスプリング22c)を設け、この付勢手段でハウジング押さえ部22を支持部21側(図中右側)に付勢することにより、ハウジング押さえ部22によるハウジング7の固定を補助している。
【0044】
また、ハウジング7と蓋部材10との仮固定の方法は上記に限られない。例えば図13に示す固定治具50は、ハウジング7の外周面を圧迫して内周面を変形させることにより、蓋部材10をハウジング7に仮固定するものである。具体的に、固定治具50は、支持部21と、ハウジング押さえ部22と、ハウジング7の外周面を圧迫する締付部51とを備える。ハウジング押さえ部22は、支持部21の端面にボルト等で固定され、ハウジング7の端面の少なくとも一部を押さえることによりハウジング7を支持部21とで挟持して固定するものである。
【0045】
締付部51は、図13(b)に示すように、ハウジング7の外周を囲むように設けられ、円周方向一箇所をスリットPで分断された環状部51aと、環状部51aのスリットPの両側部分から外径に延びた突出部51b,51bと、スリットPが小さくなるように突出部51b,51bを締め付ける締付手段(図示省略)とを備える。図示例では、締付部451の環状部51a及び突出部51bが、支持部21と一体に形成されている。環状部51aの内径寸法は、スリットPが広がった状態ではハウジング7の外径寸法よりも大きく、スリットPが閉じた状態ではハウジング7の外径寸法よりも小さくなる。
【0046】
上記構成の固定治具50の支持部21に組付体Aを配置し、ハウジング押さえ部22でハウジング7を支持部21に固定した後、図示しない押し上げ手段により軸部材2を所定寸法だけ押し上げる。本実施形態では、押し上げ手段が固定治具50と別体に設けられている。
【0047】
軸部材2及び蓋部材10をハウジング7に対して所定寸法だけ押し上げた状態で、締付部51の突出部51b,51bを締付手段で締め付ける。これにより、突出部51b,51bが円周方向に接近してスリットPが小さくなり、環状部51aが小径化する。これにより、環状部51aでハウジング7の外周面を締め付け、ハウジング7の内周面7aの一部を内径向きに突出させる。本実施形態では、締付部51によりハウジング7が略直径方向両側から圧迫され、図14(a)に誇張して示すように、ハウジング7の内周面7aが略楕円形状(2個の円弧を組み合わせた形状)となる。この略楕円形状の内周面7aの円周方向に離隔した複数箇所Q(図示例では2箇所)を、蓋部材10の外周面10bに締め代をもって当接させることにより、蓋部材10がハウジング7に仮固定される。
【0048】
この状態で、固定治具50と共に組付体Aが加熱炉に搬入されて加熱され、接着剤が硬化される。本実施形態では、軸部材2を押し上げる押し上げ手段が、蓋部材10のハウジング7への仮固定に関与していないため、固定治具50を押し上げ手段から分離しても、蓋部材10とハウジング7との仮固定状態を維持することができる。従って、固定治具50及び組付体Aを押し上げ手段から分離して加熱炉内に搬入することができるため、搬入作業が容易化されると共に、加熱炉内の省スペース化を図ることができる。
【0049】
上記のように、ハウジング7の外周面を圧迫して、ハウジング7の内周面7aを蓋部材10の外周面10bに押し付けて仮固定する場合、蓋部材10は、ハウジング7から受ける圧迫力で変形しない程度の強度を有する必要がある。例えば、本実施形態のように、蓋部材10を金属で形成すれば、十分な強度を付与することができる。特に、蓋部材10を金属のプレス成形品とすれば、蓋部材10のプレス成形と同時に、端面10aに動圧溝10a1を形成することができる。この他、蓋部材10を焼結金属で形成したり、芯金を有する樹脂成形品とした場合も、蓋部材10の強度と動圧溝10a1の成形性の双方の利点を得ることができる。
【0050】
尚、蓋部材10を焼結金属で形成する場合、焼結金属の気孔率は5%以下とすることが好ましい。これによれば、蓋部材10に要求される強度を得ることができ、且つ、焼結金属内の気孔を独立気孔として油漏れを防止できる。また、ハウジングの内部に満たされた潤滑油が焼結金属の内部気孔を介して外部に漏れださないように、焼結金属に封孔処理を施すこともできる。
【0051】
また、上記の実施形態では、図13(a)に示すように、ハウジング7の内周面を略楕円形状に変形させる場合を示しているが、これに限らず、締付部51の構成(特に環状部51aの形状)を工夫することにより、図13(b)に示すような3円弧形状や、図13(c)に示すような4円弧形状とすることもできる。図13(b)及び(c)に示すように、ハウジング7と蓋部材10との接触点Qを3箇所以上とすることで、蓋部材10とハウジング7との芯出しを行うことができる。
【0052】
また、ハウジング7の外周面を圧迫して蓋部材10を仮固定するにあたり、上記の実施形態では、蓋部材10をハウジング7に対して押し上げてスラスト軸受隙間を所定寸法に設定した後、ハウジング7の外周面を圧迫して蓋部材10を仮固定しているが、これに限られない。例えば、図12に示すように固定治具50の支持部21に組付体Aを配置してハウジング押さえ部22でハウジング7を固定した後、ハウジング7の外周面を圧迫して内周面を非円形に変形させ、その後、蓋部材10をハウジング7に対して軸方向に移動させてもよい。先に示した仮固定方法(蓋部材を押し上げてスラスト軸受隙間を設定した後、ハウジングを変形させる)によれば、蓋部材をハウジングに対して押し上げる際に、押し上げを妨げる負荷が加わらないため、押し上げ手段の押し上げ力が小さくて済む。一方、後に示した仮固定方法(ハウジングを変形させた後、蓋部材を押し上げる)によれば、スラスト軸受隙間の設定と蓋部材の仮固定とを同時に完了させることができるため、ハウジングを変形させるときに蓋部材がずれてスラスト軸受隙間の精度が低下する恐れを回避できる。
【0053】
また、上記の実施形態では、図2に示すように、ハウジング7とシール部9とが一体に形成されているが、これらを別体に形成した後、接着や圧入等で固定してもよい。
【0054】
また、上記の実施形態では、ラジアル軸受隙間の潤滑油に動圧作用を発生させるラジアル動圧発生部として、図3に示すようなヘリングボーン形状の動圧溝8a1,8a2が形成されているが、これに限られない。例えば、軸受スリーブ8の内周面8aに他の形状の動圧溝(軸方向に延びる動圧溝など)を形成したり、内周面8aを複数の円筒面を組み合わせた多円弧形状とすることで、ラジアル動圧発生部を構成してもよい。あるいは、ラジアル軸受隙間を介して対向する軸受スリーブ8の内周面8a及び軸部材2の外周面2a1の双方を平滑な円筒面状とすることで、いわゆる真円軸受を構成してもよい。この場合、ラジアル軸受隙間の潤滑油に積極的に動圧作用を発生させるラジアル動圧発生部は設けられないが、軸部材2の相対回転に伴う潤滑油の流動によりラジアル軸受隙間の潤滑油の圧力が高められる。
【0055】
また、上記の実施形態では、スラスト軸受隙間の潤滑油に動圧作用を発生させるスラスト動圧発生部として、図4及び図5に示すようなスパイラル形状の動圧溝8b1,10a1が形成されているが、これに限らず、例えば他の形状の動圧溝(ヘリングボーン形状の動圧溝など)を形成してもよい。
【0056】
また、上記の実施形態では、ラジアル動圧発生部を軸受スリーブ8の内周面に形成しているが、この面とラジアル軸受隙間を介して対向する軸部材2の軸部2aの外周面2a1にラジアル動圧発生部を形成してもよい。同様に、スラスト動圧発生部を、軸部材2のフランジ部2bの両端面2b1,2b2に形成してもよい。
【0057】
また、潤滑流体は潤滑油に限らず、空気や磁性流体等を使用することもできる。
【符号の説明】
【0058】
1 流体動圧軸受装置
2 軸部材
7 ハウジング
8 軸受スリーブ
9 シール部
10 蓋部材
20 固定治具
21 支持部
22 ハウジング押さえ部
23 蓋押さえ部
24 押し上げピン
25 押し上げネジ
26 スプリング
27 固定ネジ
30 固定治具
31 押し上げ治具
32 シリンダ
33 スライドボール
40 固定治具
50 固定治具
51 締付部
A 組付体
D ディスク
G 接着剤
P スリット
Q 接触点
R1,R2 ラジアル軸受部
S シール空間
T1,T2 スラスト軸受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部及びフランジ部を有する軸部材と、内周に前記軸部が挿入された軸受スリーブと、内周面に前記軸受スリーブが固定され、軸方向両端部を開口した樹脂製のハウジングと、前記ハウジングの軸方向一方の開口部を閉塞する蓋部材と、前記軸部の外周面と前記軸受スリーブの内周面との間のラジアル軸受隙間に生じる潤滑流体の圧力で前記軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部と、前記軸受スリーブの一端面とこれに対向する前記フランジ部の一端面との間のスラスト軸受隙間に生じる潤滑流体の圧力で前記軸部材をスラスト方向に支持する第1スラスト軸受部と、前記蓋部材の端面とこれに対向する前記フランジ部の他端面との間のスラスト軸受隙間に生じる潤滑流体の圧力で前記軸部材をスラスト方向に支持する第2スラスト軸受部とを備えた流体動圧軸受装置であって、
前記蓋部材を前記ハウジングに対して軸方向移動させることで前記第1スラスト軸受部及び第2スラスト軸受部のスラスト軸受隙間を所定寸法に設定し、この状態で前記蓋部材の外周面と前記ハウジングの内周面とを隙間接着により固定したことを特徴とする流体動圧軸受装置。
【請求項2】
前記ハウジングの内周面の円周方向に離隔した複数箇所と前記蓋部材の外周面とが、締め代をもって当接している請求項1記載の流体動圧軸受装置。
【請求項3】
前記蓋部材が金属のプレス成形品である請求項2記載の流体動圧軸受装置。
【請求項4】
前記蓋部材が焼結金属製である請求項2記載の流体動圧軸受装置。
【請求項5】
前記蓋部材が芯金入り樹脂成形品である請求項2記載の流体動圧軸受装置。
【請求項6】
軸部及びフランジ部を有する軸部材と、内周に前記軸部が挿入された軸受スリーブと、内周面に前記軸受スリーブが固定され、軸方向両端部を開口した樹脂製のハウジングと、前記ハウジングの軸方向一方の開口部を閉塞する蓋部材と、前記軸部の外周面と前記軸受スリーブの内周面との間のラジアル軸受隙間に生じる潤滑流体の圧力で前記軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部と、軸受スリーブの端面とこれに対向する前記フランジ部の一端面との間のスラスト軸受隙間に生じる潤滑流体の圧力で前記軸部材をスラスト方向に支持する第1スラスト軸受部と、前記蓋部材の端面とこれに対向する前記フランジ部の他端面との間のスラスト軸受隙間に生じる潤滑流体の圧力で前記軸部材をスラスト方向に支持する第2スラスト軸受部とを備えた流体動圧軸受装置を製造するための方法であって、
前記ハウジングの内周面に固定された前記軸受スリーブの端面を基準として前記蓋部材を前記ハウジングに対して軸方向に移動させることにより、前記第1スラスト軸受部及び第2スラスト軸受部のスラスト軸受隙間を所定寸法に設定するステップと、前記第1スラスト軸受部及び第2スラスト軸受部のスラスト軸受隙間を所定寸法に設定した状態で、前記ハウジングに前記蓋部材を仮固定するステップと、前記ハウジングに前記蓋部材を仮固定した状態で、前記ハウジングの内周面と前記蓋部材の外周面との隙間に介在させた接着剤を硬化させるステップとを経て行われる流体動圧軸受装置の製造方法。
【請求項7】
固定治具を用いて前記蓋部材を前記ハウジングに仮固定し、前記固定治具で仮固定した状態のまま、前記蓋部材及び前記ハウジングを加熱して接着剤を硬化させる請求項6記載の流体動圧軸受装置の製造方法。
【請求項8】
前記ハウジングの外周面を圧迫することにより、前記ハウジングの内周面の円周方向一部を内径向きに突出させて前記蓋部材の外周面に当接させ、これにより前記蓋部材を前記ハウジングに仮固定する請求項6又は7記載の流体動圧軸受装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1スラスト軸受部及び第2スラスト軸受部のスラスト軸受隙間を所定寸法に設定した後、前記蓋部材を前記ハウジングに仮固定する請求項8記載の流体動圧軸受装置の製造方法。
【請求項10】
前記ハウジングの外周面を圧迫して内周面の円周方向一部を内径向きに突出させた後、前記蓋部材を前記ハウジングに対して軸方向に移動させることにより、前記第1スラスト軸受部及び第2スラスト軸受部のスラスト軸受隙間の設定と、前記蓋部材の前記ハウジングへの仮固定とを同時に完了させる請求項8記載の流体動圧軸受装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−247279(P2011−247279A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117572(P2010−117572)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】